(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139270
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】電動グラブ装置
(51)【国際特許分類】
B66C 3/02 20060101AFI20220915BHJP
B66C 13/16 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B66C3/02 F
B66C13/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039568
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000154598
【氏名又は名称】株式会社福島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大和田 直
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AA02
3F004AB08
3F004AB14
3F004AC03
3F004AC04
3F004AG06
3F004EA35
3F004PB09
(57)【要約】
【課題】不要な追い掴み動作を回避できるグラブ装置を提供する。
【解決手段】電動グラブ装置1は、クレーン2に接続されるガーダ3と、ガーダ3に対して回動自在に設けられた複数のバケット4と、各バケット4に回動自在に連結されたスライドバー5と、スライドバー5を移動させて各バケット4を回動させるボールネジ6と、ボールネジ6を駆動することにより、各バケット4を開駆動及び閉駆動するサーボモータ7と、サーボモータ7の駆動を制御するモータ制御部16とを備える。モータ制御部16は、閉駆動に際し、サーボモータ7をトルク制御で駆動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンに接続されるガーダと、
前記ガーダに対して回動自在に設けられた複数のバケットと、
各バケットに回動自在に連結されたリンク部材と、
前記リンク部材を移動させて各バケットを回動させるボールネジと、
前記ボールネジを駆動することにより、各バケットを開方向に駆動して開く開駆動及び該開駆動後に各バケットを閉方向に回動して対象物を掴む閉駆動を行うサーボモータと、
前記サーボモータの駆動を制御するモータ制御部とを備え、
前記モータ制御部は、前記閉駆動に際し、前記サーボモータをトルク制御で駆動するものであることを特徴とする電動グラブ装置。
【請求項2】
前記モータ制御部は、
前記バケットによる所望の掴み量に対応する値が入力される所望量入力部と、
前記所望量入力部に入力された値に基づいて前記開駆動による前記バケットの開き量を設定する開き量設定部とを備え、
前記開駆動に際しては、前記開き量設定部により設定された前記開き量となるように前記サーボモータを駆動するものであることを特徴とする請求項1に記載の電動グラブ装置。
【請求項3】
前記モータ制御部は、
前記バケットが対象物を掴んで前記ガーダが前記クレーンで吊り下げられたときの電動グラブ装置の重量を計測する重量計測部を備え、
前記開き量設定部は、前記所望量入力部に入力された値に加え、前記重量計測部により計測された重量に基づいて該バケットの前記開駆動による開き量を設定するものであることを特徴とする請求項2に記載の電動グラブ装置。
【請求項4】
前記モータ制御部は、
前記バケットによる所望の掴み量に対応する値が入力される所望量入力部と、
前記バケットが対象物を掴んで前記ガーダがクレーンにより吊り上げられたときの電動グラブ装置の重量を計測する重量計測部と、
前記重量計測部により計測された重量が前記所望量入力部により入力された値に対応する重量となるまで、前記バケットが一定の開閉範囲内で開閉を繰り返すように前記サーボモータを制御する開閉繰返し部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電動グラブ装置。
【請求項5】
前記ボールネジは、前記ガーダにより上下方向に沿って回転自在に支持され、
前記リンク部材は、該リンク部材の中央部に設けられて前記ボールネジと螺合するボールネジナットを介して上下方向に移動されるスライドバーにより構成され、
前記ボールネジの上端部は前記サーボモータの回転軸に連結され、
各バケットは、支点軸を介して前記ガーダにより回動自在に設けられるとともに、該支点軸よりも基端側において力点軸を介して前記スライドバーに回動自在に連結されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電動グラブ装置。
【請求項6】
前記リンク部材、前記ボールネジ、及び前記サーボモータは、前記バケット毎に設けられ、前記モータ制御部は、各サーボモータを個別に制御するものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電動グラブ装置。
【請求項7】
前記ボールネジは、ロッド部を進退駆動させるボールネジシリンダを構成し、
前記リンク部材は、前記ロッド部により構成され、
前記ボールネジシリンダ及び前記サーボモータは、各バケット毎に設けられ、
前記ボールネジシリンダの基端部は、対応する前記サーボモータとともに前記ガーダにより回動自在に支持され、
各バケットは、支点軸を介して前記ガーダにより回動自在に支持されるとともに、該支点軸よりも先端側において力点軸を介して前記ロッド部の先端部に回動自在に連結されることを特徴とする請求項6に記載の電動グラブ装置。
【請求項8】
前記モータ制御部は、前記対象物を掴まない空運転で前記閉駆動を行う場合の前記サーボモータの負荷を測定する負荷測定部を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の電動グラブ装置。
【請求項9】
前記モータ制御部は、前記サーボモータの負荷率を測定し、表示する負荷率表示部を備えることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の電動グラブ装置。
【請求項10】
前記バケットは、網目又は格子状の部分を有するものであり、前記モータ制御部は、前記バケットが前記クレーンにより吊り上げられたときに該バケットが振動するように前記サーボモータを制御するバケット振動部を備えることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の電動グラブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットをサーボモータにより開閉駆動する電動グラブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンにより吊持されたセンタフレームと、センタフレームに開閉自在に軸支された一対のバケットと、これを開閉駆動する液圧シリンダと、液圧発生機構及び発生液圧を液圧シリンダに供給して伸縮作動を制御する制御機構を有する液圧装置とを備える液圧グラブ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の液圧グラブ装置では、液圧シリンダのストロークを検出するセンサを液圧シリンダに設け、センサで検出した液圧シリンダのストローク情報からバケットの開閉度を演算する演算部と、演算部で演算されたバケットの開閉度を表示する表示部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の液圧グラブ装置のように液圧シリンダで開閉駆動するグラブ装置では、対象物を掴むとき、バケットが閉駆動されて圧力スイッチがオン状態となることによりバケットが閉じられたと判定される。
【0006】
この後、グラブ装置をクレーンで吊り下げるときに、対象物の落下を防止するために、さらにバケットを閉方向に駆動するように液圧シリンダに負荷を付与する追い掴み動作が行われる。この追い掴み動作は、対象物の落下の有無に関係なく行われるので、動力を無駄に使用している場合がある。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、不要な追い掴み動作を回避できるグラブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動グラブ装置は、クレーンに接続されるガーダと、前記ガーダに対して回動自在に設けられた複数のバケットと、各バケットに回動自在に連結されたリンク部材と、
【0009】
前記リンク部材を移動させて各バケットを回動させるボールネジと、前記ボールネジを駆動することにより、各バケットを開方向に駆動して開く開駆動及び該開駆動後に各バケットを閉方向に回動して対象物を掴む閉駆動を行うサーボモータと、前記サーボモータの駆動を制御するモータ制御部とを備え、前記モータ制御部は、前記閉駆動に際し、前記サーボモータをトルク制御で駆動するものであることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、モータ制御部が対象物を掴むためにバケットを閉駆動するとき、サーボモータがトルク制御で駆動されるので、サーボモータの発生トルクが、設定されたトルク範囲内で一定水準に保持される。
【0011】
この間に、バケットの間に対象物が挟まり、設定されたトルク範囲内ではバケットをそれ以上閉方向に駆動できなくなった場合には、サーボモータは、回転を停止するが、一定のトルクをバケットに対し閉方向に付与し続ける。この後、ガーダがクレーンにより上昇され、挟まっていた対象物が落下した場合には、サーボモータは設定トルク範囲内でバケットを閉方向に駆動できるようになるので、サーボモータは追加的にバケットを閉駆動する。すなわち、自動的に追い掴みが行われる。
【0012】
一方、閉駆動時に対象物がバケットの間に挟まることがなかった場合には、サーボモータは、そのまま、バケットを閉位置まで駆動し、閉方向の一定トルクを付与し続けたまま、クレーンにより上昇される。この場合、上記のような追い掴みは行われない。
【0013】
このようにして閉駆動が完了した後、クレーンは、ガーダをバケットが開くべき位置(対象物を放出する位置)まで搬送することができる。したがって、従来の油圧式グラブ装置の場合のように、対象物がバケットの間に挟まるか否かにかかわらず常に追い掴みを行うということはないので、不要な追い掴み動作を回避し、これに要する動力も節減することができる。
【0014】
また、本発明の電動グラブ装置では、油圧式グラブ装置の場合とは異なり、油圧ポンプによらずにサーボモータでグラブが駆動される。このため、油圧ポンプのエアの吸い込み防止のために傾くことがかなり制限される油圧式グラブ装置の場合よりも、傾くことが制限される度合いが少なくて済む。
【0015】
また、油圧式グラブ装置の場合には、油圧が高温になった場合には停止されるが、本発明の電動グラブ装置の場合には、このような停止原因は存在しない。また、油圧式グラブ装置の場合には、油が漏洩するおそれがあるが、本発明の電動グラブ装置の場合には、このような事態は生じない。
【0016】
本発明において、前記モータ制御部は、前記バケットによる所望の掴み量に対応する値が入力される所望量入力部と、前記所望量入力部に入力された値に基づいて前記開駆動による前記バケットの開き量を設定する開き量設定部とを備え、前記開駆動に際しては、前記開き量設定部により設定された前記開き量となるように前記サーボモータを駆動するものであってもよい。
【0017】
これによれば、所望量入力部に所望の掴み量に対応する値を入力することにより、これに対応する開き量となるようにバケットを開き、対象物を所望の掴み量で掴むことができる。例えば、大きめのバケットを採用し、掴み量が多い場合には、より少ない掴み量に対応する値を入力して所望の掴み量が得られるようにすることができる。
【0018】
この場合、前記モータ制御部は、前記バケットが対象物を掴んで前記ガーダが前記クレーンで吊り下げられたときの電動グラブ装置の重量を計測する重量計測部を備え、前記開き量設定部は、前記所望量入力部に入力された値に加え、前記重量計測部により計測された重量に基づいて該バケットの前記開駆動による開き量を設定するものであってもよい。
【0019】
これによれば、重量計測部により計測された重量はバケットによる対象物の実際の掴み量に対応しているので、この実際の掴み量を参照することにより、開き量設定部は、所望量入力部により入力された値に対して、より正確に対応するバケットの開き量を設定することができる。
【0020】
本発明において、前記モータ制御部は、前記バケットによる所望の掴み量に対応する値が入力される所望量入力部と、前記バケットが対象物を掴んで前記ガーダがクレーンにより吊り上げられたときの電動グラブ装置の重量を計測する重量計測部と、前記重量計測部により計測された重量が前記所望量入力部により入力された値に対応する重量となるまで、前記バケットが一定の開閉範囲内で開閉を繰り返すように前記サーボモータを制御する開閉繰返し部とを備えてもよい。
【0021】
これによれば、バケットによる所望の掴み量に対応する値を所望量入力部で入力することにより、開閉繰返し部が、この入力された値に対応する重量となるまで、バケットが一定の開閉範囲内で開閉を繰り返すようにサーボモータが制御されるので、所望の掴み量で対象物を速やかに掴むことができる。
【0022】
本発明において、前記ボールネジは、前記ガーダにより上下方向に沿って回転自在に支持され、前記リンク部材は、該リンク部材の中央部に設けられて前記ボールネジと螺合するボールネジナットを介して上下方向に移動されるスライドバーにより構成され、前記ボールネジの上端部は前記サーボモータの回転軸に連結され、各バケットは、支点軸を介して前記ガーダにより回動自在に設けられるとともに、該支点軸よりも基端側において力点軸を介して前記スライドバーに回動自在に連結されていてもよい。
【0023】
これによれば、サーボモータがボールネジを一方向又は他方向に回転させると、スライドバーが上方又は下方に移動し、力点軸を介して各バケットに対して支点軸の周りで閉方向又は開方向に回動する力を付与する。したがって、モータ制御部は、サーボモータを制御することにより、各バケットを閉駆動又は開駆動することができる。
【0024】
本発明において、前記リンク部材、前記ボールネジ、及び前記サーボモータは、前記バケット毎に設けられ、前記モータ制御部は、各サーボモータを個別に制御するものであってもよい。
【0025】
これによれば、バケット毎にリンク部材、ボールネジ、及びサーボモータが設けられるので、各バケットを異なるタイミングや、同期したタイミングで駆動することができる。このため、バケットの動作パターンを増大させ、オペレータによる電動グラブ装置の操作の自由度を向上させることができる。また、各バケットを同期させて駆動することにより、油圧式グラブ装置の場合のように、負荷の小さいバケットから順番に駆動するといった不都合を回避することができる。
【0026】
この場合、前記ボールネジは、ロッド部を進退駆動させるボールネジシリンダを構成し、前記リンク部材は、前記ロッド部により構成され、前記ボールネジシリンダ及び前記サーボモータは、各バケット毎に設けられ、前記ボールネジシリンダの基端部は、対応する前記サーボモータとともに前記ガーダにより回動自在に支持され、各バケットは、支点軸を介して前記ガーダにより回動自在に支持されるとともに、該支点軸よりも先端側において力点軸を介して前記ロッド部の先端部に回動自在に連結されてもよい。
【0027】
これによれば、各バケットに対応するサーボモータでボールネジシリンダを駆動することにより、各バケットを個別に又は同時に駆動することができる。したがって、角部に残っている対象物を、該角部に位置するバケットのみを駆動することにより、かき取ることができる。
【0028】
本発明において、前記モータ制御部は、前記対象物を掴まない空運転で前記閉駆動を行う場合の前記サーボモータの負荷を測定する負荷測定部を備えてもよい。これによれば、負荷測定部により測定される負荷(負荷トルク)に基づき、電動グラブ装置を構成する各部品の破損や交換時期を予測することができる。
【0029】
本発明において、前記モータ制御部は、前記サーボモータの負荷率を測定し、表示する負荷率表示部を備えてもよい。これによれば、負荷率表示部が表示するサーボモータの負荷率を参照することによって、電動グラブ装置の経年劣化の確認や、予知保全(劣化状態を把握又は予知して部品を交換・修理する保全方法)が可能になる。
【0030】
本発明において、前記バケットは、網目又は格子状の部分を有するものであり、前記モータ制御部は、前記バケットが前記クレーンにより吊り上げられたときに該バケットが振動するように前記サーボモータを制御するバケット振動部を備えてもよい。
【0031】
これによれば、バケット振動部でバケットを振動させることにより、バケット内に残った対象物中の灰をバケットの網目から振るい落としたり、バケット内の大・小粒子が混在した対象物から小粒子のみをバケットの網目から振るい落として粒子をサイズにより選別したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動グラブ装置の断面図である。
【
図2】
図1の電動グラブ装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の電動グラブ装置における固定モード処理による動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図1の電動グラブ装置における自動調整モードA処理による動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図1の電動グラブ装置における自動調整モードB処理による動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る電動グラブ装置の断面図である。
【
図7】電動グラブ装置が負荷測定部を備える場合の該負荷測定部による測定例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動グラブ装置を示す。
【0034】
図1に示すように、この電動グラブ装置1は、クレーン2に接続されるガーダ3と、ガーダ3に対して回動自在に設けられた複数のバケット4と、各バケット4に回動自在に連結されたリンク部材としてのスライドバー5と、スライドバー5を移動させるボールネジ6と、ボールネジ6を駆動することにより、対象物を掴む前にバケット4を開方向に駆動して開く開駆動及び該開駆動後にバケット4を閉じて対象物を掴む閉駆動を行うサーボモータ7と、装置各部の動作を制御する制御部8(
図2参照)とを備える。
【0035】
サーボモータ7は、電磁ブレーキ付きのものであり、ガーダ3に固定される。ボールネジ6は、ガーダ3により上下方向に沿って回転自在に支持される。すなわち、ボールネジ6の下端部及び上端部は、ガーダ3に固定されたベアリング9及びベアリング10により、それぞれラジアル方向に支持される。ボールネジ6の上端は、カップリング11により、サーボモータ7の回転軸に連結される。
【0036】
スライドバー5は、その中心部に、ボールネジ6と螺合するボールネジナット12が設けられ、ボールネジ6により昇降される。各バケット4は、ガーダ3により、支点軸13の周りで開位置と閉位置との間で回動し得るように支持される。
図1においては、閉位置に位置する各バケット4が実線で示されており、開位置に位置する各バケット4は2点鎖線で示されている。
【0037】
各バケット4の支点軸13よりも先端側と反対側の端部は、力点軸14を介して回動し得るようにスライドバー5に連結される。すなわち、バケット4は、ボールネジ6によるスライドバー5の昇降に応じて開閉駆動するように構成される。なお、バケット4は、
図1では2つが表示されているが、2つに限らず、3以上であってもよい。
【0038】
図2は、制御部8の構成を示す。制御部8は、マイクロコンピュータや、メモリ、プログラムなどによって構成される。
図2に示すように、制御部8は、クレーン2の駆動を制御するクレーン制御部15と、サーボモータ7の駆動を制御するモータ制御部16とを備える。
【0039】
モータ制御部16は、バケット4の閉駆動に際し、サーボモータ7をトルク制御で駆動する。すなわち、サーボモータ7は、その出力トルクを検出し、この検出値を、サーボモータ7を駆動するための電流指令にフィードバックすることによって、出力トルクが一定値に保持される。
【0040】
モータ制御部16は、バケット4による所望の掴み量に対応する値が入力される所望量入力部17と、所望量入力部17に入力された値に基づいてバケット4の開駆動による開き量を設定する開き量設定部18とを備える。所望量入力部17に入力される所望の掴み量に対応する値としては、例えば、バケット4の開駆動による開き量や、掴む対象物の重量、体積が該当する。
【0041】
モータ制御部16は、開駆動に際しては、開き量設定部18により設定された開き量となるようにサーボモータ7を駆動する。所望量入力部17への掴み量に対応する値の入力は、例えば、キーボードやタブレット等の入力装置19により行われる。
【0042】
また、モータ制御部16は、バケット4が対象物を掴んでガーダ3がクレーン2により吊り上げられたときの電動グラブ装置1の重量を計測する重量計測部20を備える。この場合、開き量設定部18は、所望量入力部17により入力された値に加え、重量計測部20により計測された重量に基づいてバケット4の開駆動による開き量を設定するものであってもよい。
【0043】
また、モータ制御部16は、重量計測部20により計測される重量が所望量入力部17により入力された値に対応する重量となるまで、バケット4が一定の開閉範囲内で開閉を繰り返すようにサーボモータ7を制御する開閉繰返し部21を備えてもよい。
【0044】
図3は、制御部8による制御処理の一例として、固定モード処理を示す。ただし、処理の開始前に、電動グラブ装置1は、クレーン2によって対象物の上方に位置付けられている。処理を開始すると、ステップS1において、制御部8は、所望量入力部17により、入力装置19からのバケット4による所望の掴み量に対応する値の入力を受け入れる。
【0045】
次に、ステップS2において、開き量設定部18により、所望量入力部17に入力された値に基づいて開駆動によるバケット4の開き量を設定する。
【0046】
次に、ステップS3において、開き量設定部18により設定された開き量となるように、バケット4をサーボモータ7で駆動する。
【0047】
次に、ステップS4において、クレーン制御部15により、クレーン2でガーダ3を下降させ、バケット4を対象物上に位置付ける。
【0048】
次に、ステップS5において、モータ制御部16により、サーボモータ7をトルク制御で駆動し、バケット4を閉方向に駆動させ、対象物を掴む。このとき、各バケット4の間に対象物が挟まり、設定されたトルク範囲内ではバケット4をそれ以上閉方向に駆動できなくなった場合には、サーボモータ7は、回転を停止するが、閉方向の一定のトルクをバケットに付与し続ける。
【0049】
次に、ステップS6において、クレーン制御部15により、クレーン2でガーダ3を上昇させ、対象物を掴んだバケット4を引き上げる。このとき、挟まっていた対象物が落下した場合には、サーボモータ7は設定トルク範囲内でバケット4を閉方向に駆動できるようになるので、サーボモータ7は追加的にバケット4を閉駆動する。すなわち、自動的に追い掴みが行われる。
【0050】
一方、ステップS5の閉駆動時に対象物がバケット4の間に挟まることがなかった場合には、サーボモータ7は、そのまま、バケット4を閉位置(
図1の実線で示されるバケット4の位置)まで駆動し、閉方向の一定トルクを付与し続けたまま、クレーン2により上昇される。この場合、上記のような追い掴みは行われない。
【0051】
次に、ステップS7において、クレーン制御部15により、クレーン2でガーダ3を、掴んだ対象物を排出する位置まで搬送する。
【0052】
次に、ステップS8において、モータ制御部16により、サーボモータ7でバケット4を開駆動及び閉駆動する。これにより、掴んだ対象物が排出される。
【0053】
これにより、制御部8の固定モードによる処理が完了する。なお、ステップS5で掴んだ対象物の量が多いと感じた場合には、次に
図3の固定モード処理を行う際に、ステップS1で入力する所望の掴み量に対応する値を少なく設定することにより、掴み量の最適化を図ることができる。
【0054】
例えば、通常の開き量による掴み量が10m3のバケット4を採用し、掴み量が多すぎれば、ステップS1で入力する値を、9m3や8m3の掴み量に対応する値とすることにより、掴み量を最適化することができる。
【0055】
図4は、制御部8による処理の別の例として、自動調整モードA処理を示す。ただし、処理の開始前に、電動グラブ装置1は、クレーン2によって対象物の上方に位置付けられている。処理を開始すると、ステップS11~S16までは、
図3の固定モード処理におけるステップS1~S6までと同様の処理が行われる。
【0056】
次に、ステップS17において、クレーン2により吊り下げているガーダ3以下の重量を重量計測部20により計測する。この計測は、クレーン2に設けられたロードメータを用いて行うことができる。
【0057】
次に、ステップS18において、ステップS17で計測した計測値が適切かどうかを判定する。この判定は、該計測値と、ステップS11で入力された所望の掴み量に対応する値に対応する重量とを比較し、該計測値が該重量の所定範囲内にあれば、適切と判定される。
【0058】
ステップS18において適切と判定された場合には、ステップS19において、クレーン制御部15により、クレーン2でガーダ3を、ステップS15で掴んだ対象物を排出する位置まで搬送する。
【0059】
次に、ステップS20において、モータ制御部16により、サーボモータ7でバケット4を開閉駆動する。これにより、ステップS15で掴んだ対象物が排出され、
図4の自動調整A処理が終了する。
【0060】
一方、ステップS18において適切ではないと判定された場合には、ステップS12に戻り、開き量設定部18により、所望量入力部17に入力された値に基づいて開駆動によるバケット4の開き量を設定する。ただし、この場合には、所望量入力部17により入力された値に加え、重量計測部20により計測された重量に基づいて、バケット4の開駆動による開き量が設定される。
【0061】
すなわち、所望量入力部17により入力された値に対応する対象物の重量と重量計測部20により計測された重量に対応する対象物の重量とを比較し、後者が前者に近づくように、開き量が再度設定される。
【0062】
次に、ステップS13~S18までの処理が行われ、ステップS18において適切と判定された場合には、上記と同様にステップS19、S20の処理が行われ、
図4の自動調整A処理が終了する。すなわち、ステップS12~S18の処理は、ステップS18において適切と判定されまで繰り返し行われる。
【0063】
なお、ステップS18の処理を、ステップS20の後に移動し、対象物の排出毎に、ステップS12におけるバケット4の開き量の設定をし直すようにしてもよい。
【0064】
図5は、制御部8による処理のさらに別の例として、自動調整モードB処理を示す。ただし、処理の開始前に、電動グラブ装置1は、クレーン2によって対象物の上方に位置付けられている。処理を開始すると、ステップS21~S27までは、
図4の自動調整モードB処理におけるステップS11~S17までと同様の処理が行われる。
【0065】
次に、ステップS28において、ステップS27で計測した計測値が適切かどうかを判定する。この判定では、該計測値と、ステップS21で入力された所望の掴み量に対応する値に対応する重量とを比較し、該計測値が該重量の所定範囲内にあれば、適切と判定される。
【0066】
ステップS28において適切と判定された場合には、ステップS30において、クレーン制御部15により、クレーン2でガーダ3を、ステップS25で掴んだ対象物を排出する位置まで搬送する。
【0067】
次に、ステップS31において、モータ制御部16により、サーボモータ7でバケット4を開閉駆動する。これにより、ステップS15で掴んだ対象物が排出され、
図5の自動調整処理が終了する。
【0068】
一方、ステップS28において適切ではないと判定された場合には、ステップS29においてバケット4を一定の開閉範囲内で開閉し、ステップS27に戻る。一定の開閉範囲は、バケット4が掴んでいる対象物の一部が落下してステップS27で計測される計測値が適切な量だけ減少するように設定される。
【0069】
ステップS27~S29の処理は、ステップS28においてステップS27で計測した計測値が適切であると判定されるまで繰り返される開閉繰返し部21を構成する。ステップS28において適切であると判定された場合には、上述のようにステップS30、S31の処理が行われ、
図5の自動調整B処理が終了する。
【0070】
以上のように、本実施形態によれば、閉駆動時にバケット4の間に対象物が挟まらなかった場合には、クレーン2で上昇されるときに追い掴みが行われないので、不要な追い掴み動作を回避し、これに要する動力を節減することができる。また、サーボモータ7でバケット4が駆動されるので、油圧式グラブ装置の場合に比べて、油圧ポンプのエアの吸い込み防止のために傾くことが制限される度合いが少なくて済む。
【0071】
また、本実施形態によれば、油圧式グラブ装置の場合のように、油圧が高温になって停止したり、油圧用の油が漏洩したりするおそれがないので、電動グラブ装置1の稼働を向上させることができる。
【0072】
また、
図3の固定モード処理によれば、所望量入力部17に所望の掴み量に対応する値を入力することにより、これに対応する開き量となるようにバケット4を開き、対象物を所望の掴み量で掴むことができる。
【0073】
また、
図4の自動調整モードA処理によれば、所望量入力部17に入力された値に加え、重量計測部20で計測された重量に基づいて、開き量設定部18により、バケット4の開駆動による開き量が設定されるので、対象物を自動的に所望の掴み量で掴むことができる。
【0074】
また、
図5の自動調整モードB処理によれば、重量計測部20により計測された重量が所望量入力部17により入力された値に対応する重量となるまで、開閉繰返し部21によりバケット4が一定の開閉範囲内で開閉を繰り返すので、対象物を所望の掴み量でより速やかに掴むことができる。
【0075】
図6は、別の実施形態に係る電動グラブ装置を示す。
図6に示すように、この電動グラブ装置1bは、クレーン2に接続されるガーダ3bと、ガーダ3bに対して回動自在に設けられた複数のバケット4bと、各バケット4bを個別に駆動するバケット4b毎のボールネジシリンダ22と、各ボールネジシリンダ22を個別に駆動するボールネジシリンダ22毎のサーボモータ7bと、装置各部の動作を制御する制御部とを備える。
【0076】
ボールネジシリンダ22の基端部は、対応するサーボモータ7bとともにガーダ3bにより回動自在に支持される。各バケット4bは、ガーダ3bにより、支点軸13bの周りで開位置と閉位置との間で回動し得るように支持される。
【0077】
各バケット4bの支点軸13bよりも先端側でかつ外側には、対応するボールネジシリンダ22の進退駆動されるロッド部23の先端部が力点軸14bを介して回動し得るように連結される。すなわち、ロッド部23は、本発明におけるリンク部材として機能する。
【0078】
したがって、各サーボモータ7bは、対応するボールネジシリンダ22により、対応するバケット4bを個別に開閉駆動することができる。なお、バケット4bは、
図6では2つが表示されているが、2つに限らず、3以上であってもよい。その場合、各バケット4b毎に、これを駆動するボールネジシリンダ22とサーボモータ7bが設けられる。
【0079】
電動グラブ装置1bの制御部は、モータ制御部が各サーボモータ7bを個別に駆動制御すること以外は、電動グラブ装置1の
図2の制御部8と同様のクレーン制御部及びモータ制御部を備え、上述
図3の固定モード処理、
図4の自動調整モードA処理、及び自動調整モードB処理を行う。
【0080】
本実施形態によれば、バケット4b毎にボールネジシリンダ22とサーボモータ7bが設けられ、バケット4b毎に個別に、又は全バケット4bを同期させて駆動することができるので、バケット4bの動作パターンを増大させ、オペレータによる電動グラブ装置1bの操作の自由度を向上させることができる。
【0081】
例えば、角部に残っている対象物を、該角部に位置するバケット4bのみを駆動することにより、かき取ることができる。また、各バケット4bを同期させて駆動することにより、油圧式のグラブ装置の場合のように、負荷の小さいバケット4bから順番に駆動するといった不都合を回避することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、バケット4が網目又は格子状の部分を有するものである場合、バケット4が対象物を掴んでガーダ3がクレーン2により吊り上げられたときにバケット4が振動するようにサーボモータ7を制御するバケット振動部を備えてもよい。
【0083】
これによれば、バケット振動部でバケットを振動させることにより、バケット内に残った対象物中の灰をバケットの網目から振るい落としたり、バケット内の大・小粒子が混在した対象物から小粒子のみをバケットの網目から振るい落として粒子をサイズにより選別したりすることができる。
【0084】
また、モータ制御部16は、対象物を掴まない空運転で閉駆動を行う場合のサーボモータ7の負荷を測定する負荷測定部を備えてもよい。これによれば、負荷測定部により測定される負荷(負荷トルク)に基づき、電動グラブ装置1を構成する各部品の破損や交換時期を予測することができる。
【0085】
例えば、
図7は、負荷測定部により測定されるサーボモータ7の負荷の測定例を示すグラフである。横軸は、バケット4の開位置から閉位置まで閉駆動を行うときの経過時間であり、縦軸は、サーボモータ7の負荷である。破線で示される範囲Tは、許容し得る負荷の範囲である。グラフ曲線Gは、時間経過に対する負荷の変動を示す。
【0086】
空運転で閉駆動を行ったとき、負荷測定部により負荷を測定した結果、グラフ曲線Gで示されるような負荷の変動が測定されたとすれば、グラフ曲線G中の1点鎖線で囲った部分がサーボモータ7の負荷の許容範囲Tを逸脱している。このことから、ボールネジ6などの破損が疑われ、ボールネジ6などの部品の交換時期であることがわかる。
【0087】
また、モータ制御部16は、サーボモータ7の負荷率を測定し、表示する負荷率表示部を備えてもよい。これによれば、負荷率表示部が表示するサーボモータの負荷率を参照することによって、電動グラブ装置の経年劣化の確認や、予知保全(劣化状態を把握又は予知して部品を交換・修理する保全方法)が可能になる。
【0088】
また、グラブは、バケットグラブに限らず、クシ歯グラブであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1、1b…電動グラブ装置、2…クレーン、3、3b…ガーダ、4、4b…バケット、5…スライドバー、6…ボールネジ、7…サーボモータ、8…制御部、9…ベアリング、10…ベアリング、11…カップリング、12…ボールネジナット、13…支点軸、14…力点軸、15…クレーン制御部、16…モータ制御部、17…所望量入力部、18…開き量設定部、19…入力装置、20…重量計測部、21…開閉繰返し部、22…ボールネジシリンダ、23…ロッド部、T…許容範囲、G…グラフ曲線。