(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139278
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】遠隔操作式排水栓装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/22 20060101AFI20220915BHJP
E03C 1/23 20060101ALI20220915BHJP
A47K 1/14 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
A47K1/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039578
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 温史
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DA02
2D061DA03
2D061DB03
(57)【要約】
【課題】
レリースワイヤを案内するためのガイド部材を採用した遠隔操作式排水栓装置において、操作部の配置や方向をどのように設定しても、ガイド部材が閉塞することが無く、レリースワイヤの挿通に支障が生じない遠隔操作式排水栓装置を提供する。
【解決手段】
遠隔操作式排水栓装置を、底面に排水口を備えた槽体と、排水口を開閉する蓋体と、槽体近傍に固定される、排水口の操作を行う操作部と、操作部に行われた操作を蓋体側に伝達するレリースワイヤと、操作部から排水口側の配管までレリースワイヤを案内するための筒状のガイド部材と、からなる構成し、更に、ガイド部材に、その形状を固定した固定部分を備え、固定部分に屈曲部分を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に排水口を備えた槽体と、
排水口を開閉する蓋体と、
槽体近傍に固定される、排水口の操作を行う操作部と、
操作部に行われた操作を蓋体側に伝達するレリースワイヤと、
操作部から排水口側の配管までレリースワイヤを案内するための筒状のガイド部材と、からなる遠隔操作式排水栓装置において、
ガイド部材に、
その形状を固定した固定部分を備え、固定部分に屈曲部分を設けたことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置。
【請求項2】
ガイド部材に、側面方向に対して可撓性を備えた可撓部分を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項3】
ガイド部材の可撓部分を、側面方向に可撓性を備えた管体であるホース管から構成すると共に、
ガイド部材の固定部分を、ホース管に接続した硬質素材の管体から構成したことを特徴とする、請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項4】
ガイド部材を、
側面方向に可撓性を備えた管体であるホース管と、
ホース管の一部の形状を固定する固定部材と、から構成し、
ホース管の、固定部材によって形状を固定された部分をガイド部材の固定部分とし、
ホース管の、固定部分以外の部分を可撓部分としたことを特徴とする、請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項5】
ガイド部材の固定部分の一端が操作部に連続して備えられたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項6】
レリースワイヤを筒状のアウターチューブと、アウターチューブ内を進退するインナーワイヤと、から構成し、
インナーワイヤの進退によって操作部側の操作を蓋体側に伝達すると共に、
操作部側のインナーワイヤ端部の進退の方向が、鉛直方向に対して角度を有して固定されることを特徴とする、請求項5に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項7】
固定部分の屈曲部分に、レリースワイヤを案内するための円弧形状を備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を、排水口から離間した位置に設けた操作部への操作により開閉する遠隔操作式の排水栓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽や洗面ボウルなどの槽体の内部に生じた排水を処理するため、槽体の底面等に排水口を設け、この排水口から配管部材を介し、下水側に排水を排出する方法が広く知られている。また、槽体内に水を溜める場合に、蓋体の昇降を利用して排水口を開閉する方法があるが、この蓋体による排水口の開閉を、蓋体や排水口から離間した位置、例えば槽体の縁部や槽体側面の上方に設けた操作部への操作によって行う遠隔操作式排水栓装置が知られている。
広く知られた遠隔操作式排水栓装置としては、特許文献1に記載のような、槽体の底面に設けられた排水口と、排水口を上下動することによって閉塞する蓋体と、槽体の近傍に備えられた、操作ボタンを有する操作部と、操作部に加えられた操作を排水口に備えられた蓋体に伝達するレリースワイヤと、から構成されるものがある。この特許文献1に記載された遠隔操作式排水栓装置では、蓋体の上昇状態を維持するため、レリースワイヤの操作部側端部にロック機構(スラストロック機構)が備えられてなり、他端は支持部材によって排水口から連続する流路内に配置され、蓋体の下方に固定配置される。
ロック機構は、円筒状のロック機構本体と、ロック機構本体内を進退するロック軸と、からなり、ロック軸の一端はレリースワイヤのインナーワイヤに、他端は操作ボタンに、それぞれ接続されてなる。
操作ボタンに押し込み操作を行う都度、ロック機構は、ロック軸及びロック軸に連結されたインナーワイヤを排水口側に前進させた状態で固定/固定を解除し、ロック軸及びインナーワイヤを操作ボタン側に後退、を交互に繰り返すように動作する。これにより、インナーワイヤが蓋体を押し上げ、蓋体が排水口から離間することで排水口を開口した状態を維持固定/固定を解除し蓋体を降下させることで蓋体が排水口を覆い排水口を閉口、を交互に繰り返すことができる。
このようにして、排水口から離間した位置にある操作部に操作を行うことで、遠隔操作により排水口を開閉することができる。
【0003】
また、上記特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置においては、上方から下方に操作ボタンを押すことで操作を行っているが、特許文献2に記載の発明のように、操作部を側面方向に向けて配置し、操作ボタンの進退を水平方向に対して行う構成も提案されている。浴槽などの槽体の開口の縁部に操作部を配置すると、使用者が誤って操作部に触れることで、使用者が不快感を感じたり、遠隔操作式排水栓装置を誤作動させてしまう場合があり、また、レイアウトの不自由性や意匠性の悪化などの問題もある。そこで、特許文献2のように、操作部を槽体の側面方向に設けることでこれらの問題を解消する方法が提案されている。
【0004】
上記遠隔操作式排水栓装置において、施工やメンテナンスを行う場合、操作部から排水口近傍の支持部材等、蓋体の近傍まで、操作部に加えられた操作を伝達するためのレリースワイヤを配置し、関連する部材に接続したり、逆に関連する部材から取り外した上で回収作業を行う必要が生じる場合がある。
ここで、洗面台の遠隔操作式排水栓装置のように、通常レリースワイヤの施工箇所が床面よりも上方であって、生活空間側からキャビネット内等槽体の外側(裏側)の空間に容易に接することができる構造の槽体であれば、施工やメンテナンスの際のレリースワイヤの接続、また取り外しは比較的簡単に行うことができる。
しかし、浴槽等、排水口が床面よりも低い位置であって、通常レリースワイヤの施工箇所が浴槽と浴槽パンの間の狭隘な場所に配置されており、更に生活空間側から槽体の外側(裏側)の空間に接するためには、浴槽側面のエプロンなど大型の部材を困難を伴って外す必要があったり、更には施工後には槽体の外側(裏側)の空間に接すること自体ができない構造の槽体に、遠隔操作式排水栓装置が採用される場合がある。
このような槽体に遠隔操作式排水栓装置を採用する場合に、ホース管等の管体のガイド部材を用い、槽体の外側から作業を行うことなくレリースワイヤを操作部から排水口近傍まで案内する方法が知られている。
特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置の場合、側面方向に可撓性を備えたホース管からなるガイド部材を、操作部から排水口の部材に接続される継手部材まで接続しておき、施工やメンテナンスの際には、操作部から継手部材まで、レリースワイヤをガイド部材の内部を通過させることで、槽体の外側から作業を行うことなく、レリースワイヤを操作部から排水口まで配置し、関連する部材に接続させたり、逆に関連する部材から着脱した上で操作部からレリースワイヤを取り出すことができる。
ガイド部材は、側面方向に可撓性を有することで、施工の際に容易に操作部から継手部材までガイド部材を屈曲させて配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013- 79490号
【特許文献2】特開2014-148831号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガイド部材の管体は、側面方向に可撓性を備えてなる。これは、前述のように、施工される槽体の形状や操作部と排水口、継手部材の配置位置に合わせてガイド部材を屈曲させる必要があるためで、このためガイド部材には通常は軟質素材である塩ビ等からなるホース管などが使用される場合が多い。
ここで、特許文献1のように、ガイド部材の操作部側の端部の軸方向が鉛直方向を向き、充分な大きさの円弧を生じながら排水口の部材に向かって屈曲して水平方向を向く場合は、ガイド部材の内部に形成されるレリースワイヤを案内する為の経路は閉塞されることは無い。
しかし、特許文献2に記載の遠隔操作式排水栓装置のように、槽体の側面に操作部が設けられ、水平方向に向かってガイド部材が接続されている場合、ガイド部材は自重によって、
図12のように急激に折れ曲がり、その内部のレリースワイヤを案内する為の経路が折れ曲がり部分で閉塞されてしまうことが有る。
図12では操作部に接続されたガイド部材は操作部から水平方向に延出されているが、操作部の配置箇所や意匠性などの理由から水平よりもより上方を向いて操作部から延出される場合もあり得る。また、平よりも緩やかな角度ではあるが、鉛直ではない場合でも、上記のような、折れ曲がりによるガイド部材の閉塞が生じる場合がある。
【0007】
また、上記折れ曲がりによる閉塞は、操作部の近傍においてガイド部材の自重によって起きるだけではなく、例えば
図13のように、槽体の側方の角部分に沿ってガイド部材を配置される場合にも生じる場合がある。
図13の従来例では、ガイド部材を点線で示した最短距離沿って配置することを前提としてホース管の長さを設定している。しかし、ホース管の自重によってホース管が実線で示したように垂れ下がることで、ホース管が最短距離よりも長い距離を通過するように配置されてしまう場合があり、結果ガイド部材が槽体の角に強く押しあてられることで押し潰されて、案内用の経路が閉塞される場合もある。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、レリースワイヤを案内するためのガイド部材を採用した遠隔操作式排水栓装置において、操作部の配置や方向をどのように設定しても、ガイド部材が閉塞することが無く、レリースワイヤの挿通に支障が生じない遠隔操作式排水栓装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、底面に排水口を備えた槽体と、排水口を開閉する蓋体と、槽体近傍に固定される、排水口の操作を行う操作部と、操作部に行われた操作を蓋体側に伝達するレリースワイヤと、操作部から排水口側の配管までレリースワイヤを案内するための筒状のガイド部材と、からなる遠隔操作式排水栓装置において、
ガイド部材に、その形状を固定した固定部分を備え、固定部分に屈曲部分を設けたことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、ガイド部材に、側面方向に対して可撓性を備えた可撓部分を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、ガイド部材の可撓部分を、側面方向に可撓性を備えた管体であるホース管から構成すると共に、ガイド部材の固定部分を、ホース管に接続した硬質素材の管体から構成したことを特徴とする、請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、ガイド部材を、側面方向に可撓性を備えた管体であるホース管と、ホース管の一部の形状を固定する固定部材と、から構成し、ホース管の、固定部材によって形状を固定された部分をガイド部材の固定部分とし、ホース管の、固定部分以外の部分を可撓部分としたことを特徴とする、請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、ガイド部材の固定部分の一端が操作部に連続して備えられたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0013】
請求項6に記載の本発明は、レリースワイヤを筒状のアウターチューブと、アウターチューブ内を進退するインナーワイヤと、から構成し、インナーワイヤの進退によって操作部側の操作を蓋体側に伝達すると共に、操作部側のインナーワイヤ端部の進退の方向が、鉛直方向に対して角度を有して固定されることを特徴とする、請求項5に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0014】
請求項7に記載の本発明は、固定部分の屈曲部分に、レリースワイヤを案内するための円弧形状を備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の本発明では、ガイド部材にその形状を固定した固定部分を設けたことで、固定部分ではガイド部材内の経路が閉塞することが無くなり、レリースワイヤの抜き差しの際に支障が生じることが無くなる。またガイド部材の閉塞はガイド部材を屈曲させる屈曲部分で生じやすいが、本発明では固定部分に屈曲部分を設けたことで、屈曲部分であっても閉塞が生じることは無い。
また、請求項2に記載の本発明では、ガイド部材に可撓部分を設けたことで、施工の際に可撓部分を屈曲させることでガイド部材の施工を容易に行うことができる。
また、請求項3、請求項4に記載の本発明では、ガイド部材の、可撓部分と固定部分の構成を明確にすることができる。
また、請求項5に記載したように、固定部分を操作部に連続させて備えることで、固定部分を容易に位置決めなどすることができる。
また、ガイド部材の屈曲部分の経路が閉塞しやすい構成としては、ガイド部材の自重によって、ガイド部材が鉛直以外の方向から下方に屈曲する部分が急角度で折れ曲がり、閉塞してしまう場合が挙げられる。ガイド部材が下方のある位置、即ち高い位置において、鉛直以外の方向から配置される場合として多いのは、操作部から連続してガイド部材が配置されるときに、操作部に配置されるレリースワイヤの方向、即ちインナーワイヤの進退の方向が、鉛直以外の方向を向いている場合である。
このため、請求項6に記載したように、インナーワイヤの進退の方向が、鉛直以外の方向を向いている場合おいては、操作部から連続する部分に固定部分を設けると好適である。
請求項7に記載の本発明では、屈曲部分を円弧形状としたことで、階度部材にレリースワイヤを挿通する際に、屈曲部分に突き当たってレリースワイヤの挿通が止められる、ということが無くなり、スムーズな挿通が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一実施例の遠隔操作式排水栓装置を示す参考図である。
【
図2】第一実施例の遠隔操作式排水栓装置の部材構成を示す参考図である。
【
図3】第一実施例の排水口の閉口状態を示す断面図である。
【
図4】第一実施例の排水口の開口状態を示す断面図である。
【
図5】ホース管に固定部材を取り付けることで固定部分とするガイド部材の実施例の断面図である。
【
図6】
図5のガイド部材の、部材構成を示す断面図である。
【
図7】操作部本体と固定部分を一体としたガイド部材を示す断面図である。
【
図8】
図7の実施例のガイド部材の、部材構成を示す断面図である。
【
図9】インナーワイヤの進退方向が水平面に対し45度となる実施例の操作部を示す断面図である。
【
図10】
図9の操作部の、部材構成を示す断面図である。
【
図11】槽体の側面に固定部材を配置した実施例を示す参考図である。
【
図12】従来のガイド部材の、経路が閉塞した状態を示す断面図である。
【
図13】従来の遠隔操作式排水栓装置の、ガイド部材を槽体の側面を経由して配置した事例を示す参考図である。
【実施例0017】
以下に、本発明の第一実施例について、図面を参照しつつ説明する。尚、以下の各実施例への説明においては、レリースワイヤ7の挿通の際の移動や、レリースワイヤ7のインナーワイヤ7bの移動について、排水口8a側に移動することを「前進」、操作部S側に移動することを「後退」として記載する。
図1乃至
図4に示した、本発明の第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、槽体の一種である浴槽Bの排水配管に採用される遠隔操作式排水栓装置であって、以下に記載する、排水口本体4、支持部材5、継手部材6、操作部S、蓋体3、レリースワイヤ7、支持部材5、ロック機構2、ガイド部材8、等の部材より構成される。
浴槽Bは上方が開口した箱体であって、その底面に排水口本体4を取り付けるための取付孔B1を備えてなる。
また、浴槽Bの側面には、浴槽Bの裏面(外側)に備えられた板状部分と、該板状部分に備えられた、操作部を取り付けるための操作部取付孔B2が、浴槽Bの側面方向を向いて設けられている。
また、浴槽Bには、エプロンEと呼ばれる、浴槽Bの側面を覆い隠す部材が備えられている。また、該エプロンEには操作部取付孔B2に取り付けられた操作部を露出させるように操作部露出口B3が備えられてなる。
排水口本体4は略円筒形状を成す部材であって、その上端部分外周側には、側面方向に突出するフランジ部4bを設けてなり、外側面には雄ネジを設けてなる。
支持部材5は、レリースワイヤ7端部を排水口4a内に配置固定する部材であって、その中央部分にアウターチューブ7a端部が接続される。
継手部材6は、有底略円筒形状を成す部材であって、上方の開口に排水口本体4の雄ネジと螺合する雌ネジを、側面に内部の排水を排出するための排出口6aと、レリースワイヤ7を挿通するための筒状の挿通部6bを、それぞれ備えてなる。
操作部Sは浴槽Bの上縁に取り付けられる部材であって、以下に記載する、操作部本体1、操作ボタン12、から構成される。
操作部本体1は、略円筒形状を成す部材であって、両端に開口を備えてなり、その一端は浴槽Bの操作部取付孔B2に取り付けられる。
また、その内部は、ロック機構2を弾性嵌合により着脱自在に固定できるように構成されてなる。
操作ボタン12は、遠隔操作式排水栓装置の使用者が、押し込み操作を行う略円盤状の部材であって、その裏側の中央はロック機構2のロック軸2b端部と弾性嵌合可能に構成されてなる。
蓋体3は、排水口4aの上端を閉口する略円盤状の部材であって、その下面中央部分に、軸部7c先端との嵌合部分を構成されてなる。
レリースワイヤ7は、側面方向に可撓性を、軸方向に剛性を有したアウターチューブ7aと、該アウターチューブ7a内に摺動自在に配置される、側面方向に可撓性を、軸方向に剛性を有したインナーワイヤ7bと、インナーワイヤ7bの一方の端部に備えられた棒状の硬質の部材である軸部7cと、レリースワイヤ7内に備えられ、インナーワイヤ7bをアウターチューブ7aに対して軸部7cとは反対側に付勢する戻りスプリング(図示せず)と、から構成されてなる。
ロック機構2は、内部に歯車等を収納した円筒形状のロック機構本体2aと、該ロック機構本体2a内を貫通するようにして進退自在に挿通配置されるロック軸2bとを備えてなり、ロック機構本体2aはレリースワイヤ7のアウターチューブ7a端部に固定されてなる。また、ロック軸2bは、同軸上に配置されるレリースワイヤ7のインナーワイヤ7bが、戻りスプリングの作用により常時後退方向、即ちロック軸2b側に付勢されているため、常時インナーワイヤ7b端部に当接され、後退方向に付勢された状態となる。
該ロック機構2は、その内部に、ロック機構本体2a内部またロック軸2bに備えられた歯車などの機構を備え、ノック式ボールペンなどの機構と同様の機能を有する。即ち、ロック機構2は、施工完了時、使用者の操作によって、ロック軸2b端部に押し込み操作を加えられる都度、ロック軸2bがロック機構本体2aに対して前進した状態で固定/固定を解除し、接続されているレリースワイヤ7の戻りスプリングの作用によりロック機構本体2aに対して後退、を繰り返すように構成されてなる。
ガイド部材8は、以下に記載する、固定部材10とホース管9とから構成される。
固定部材10は、硬質の樹脂から構成される成型品の部材、即ち硬質素材からなる部材であって、円筒形状の管体を側面視90度の角度まで円弧形状に屈曲させた形状を備えて構成されてなる。また、固定部材10の一端はバンド部材11によって操作部本体1の端部に、内部が連続するようにして着脱自在且つ回動自在に取り付けられる。
ホース管9は、軸方向に剛性を、側面方向に可撓性を備えた軟質塩ビなどの軟質樹脂からなる管体、即ち軟質素材からなる部材である。
固定部材10の端部を、ホース管9の端部に差し込むようにして接続することで、ガイド部材を構成する。この時、固定部材10によってその形状が固定されている部分がガイド部材8の固定部分8aであり、ホース管9によって側面方向に可撓性を備えた部分がガイド部材の可撓部分8bである。
ガイド部材の内部は、固定部材10からホース管9まで連続して構成されることで、その内部にレリースワイヤを挿通する経路を形成してなる。
バンド部材11は、略C字形状を備えた部材であって、操作部本体1とガイド部材8の固定部分8aの端部とを水密的且つ管体であるガイド部材8の中心軸を中心として回動自在に接続する。
【0018】
上記のように構成された遠隔操作式排水栓装置を用いた排水配管は、以下のようにして浴槽Bに施工される。尚、以下の各実施例の説明において、特に記載・図示などしない場合でも、施工の際には、必要に応じ、接着やパッキングなどを用いて、漏水等が無い様に接続を行う。
また、以下の説明において、ガイド部材8は、施工を行う前の時点、製品を組み立てた工場などで、固定部材10とホース管9を組み合わせた一組の部材として構成されて施工現場に搬入される。
まず、操作部本体1を浴槽Bの操作部取付口B2に取り付ける。
次に、ガイド部材8の可撓部分8b側の端部に継手部材6の挿通部6bを接続する。
次に、浴槽Bの取付孔B1に排水口本体4を挿通し、排水口本体4のフランジ部4b下面を、取付孔B1周縁の上面に当接させる。更に、継手部材6の排出口6aを、排水を下水側に排出するための床下配管に接続した上で、継手部材6の雌ネジを、排水口本体4の雄ネジに螺合させ、フランジ部4b下面と継手部材6上面とで取付孔B1周縁を挟持させて排水口本体4及び継手部材6を浴槽Bに固定させる。
次に、バンド部材11を用いて、操作部本体1とガイド部材8の固定部分8a側の端部を接続する。この時、ガイド部材8の固定部分8a側の端部を、管体の軸を中心として回転させ、固定部分8aの可撓部分8bとの接続箇所が、
図1のように、下方を向くように調整する。
このようにしてガイド部材8の一端は操作部本体1に、他端は継手部材6の挿通部6bに接続されて、操作部Sから排水口4a近傍までレリースワイヤ7を案内するように構成される。この時、固定部分8aはその形状が固定されていることで固定部分8a内に形成されているレリースワイヤ7を案内する経路が閉塞されることが無く、また可撓部分8bは側面方向に可撓性を備えてなるため、操作部Sから継手部材6までガイド部材8を配置するのにあたり、位置や方向を調整することが容易となる。
次に、レリースワイヤ7を、レリースワイヤ7の軸部7c側端部より、操作部本体1の端部に挿通し、順次押し込むようにして挿通する。
レリースワイヤ7の軸部7c側端部は、操作部本体1内を通過し、ガイド部材8の固定部分8a、及び可撓部分8bを通過して、継手部材6の挿通部6bから継手部分6内に到達する。
ガイド部材8内をレリースワイヤ7が通過する際に、ガイド部材8の固定部分8aは硬質樹脂から構成されているため、変形などにより内部経路を閉塞するということが無く、また円弧を形成していることから、レリースワイヤ7は容易にガイド部材8の固定部分8a内を通過することができる。
また、ガイド部材8の可撓部分8bは、
図1に示したように、上方の端部である硬質部分側の端部は鉛直方向を向き、途中で継手部材6の方向である水平方向に向きを変えるが、この場合には、可撓部分8bは上方から鉛直方向を向いて吊り下げられた状態から水平方向に向きを変えているため、屈曲部分には可撓部分8bなどの自重など重量が作用することが無く、可撓部分8bが自重によって急激に折れ曲がる部分が生じてレリースワイヤ7の通過する経路が閉塞される、ということが無い。
上記のように、ガイド部材8は固定部分8a、可撓部分8b共にその内部の経路が閉塞されることが無いため、支障なくレリースワイヤ7が通過することができる。
次に、レリースワイヤ7の軸部7c側端部が継手部材6内に達した状態で、ロック機構2をガイド部材8の固定部分8a内に弾性嵌合させて固定する。
次に、レリースワイヤ7の軸部7c側端部を排水口4aから引き上げた上で、支持部材5にレリースワイヤ7の軸部7c側端部を接続し、更に排水口4a内に支持部材5を配置固定する。
次に、排水口4a内に配置された軸部7cの先端に蓋体3を嵌合させて取り付ける。
更に浴槽B側面にエプロンEを、操作部Sの位置に操作部露出口B3が合致するように取り付けて、本発明の第一実施例の遠隔操作式排水栓装置の施工が完了する。
【0019】
上記実施例においては、継手部材6にガイド部材8が接続されると共に、レリースワイヤ7が挿通される挿通部6bが備えられてなり、この継手部材6の挿通部6bを介して排水口4a側の配管までレリースワイヤ7が案内されている。即ち、ガイド部材8は、操作部Sから排水口4a側の配管までレリースワイヤ7を案内するように構成されている。
【0020】
以下に、上記第一実施例の遠隔操作式排水栓装置の使用方法を説明する。
上記のように構成した遠隔操作式排水栓装置を使用する場合、まず蓋体3を降下して、排水口4aが
図3のように閉口した状態とする。
この状態から操作部Sの操作ボタン12に押し操作を加えると、操作ボタン12に接続されているロック軸2bが押し込まれ、ロック機構2が作用して、インナーワイヤ7bが排水口4a側に前進した状態にて維持固定される。この動作により、インナーワイヤ7b端部の軸部7c側の端部が突出して、
図4のように蓋体3を押し上げた状態で維持固定されるため、排水口4aから蓋体3が離間して排水口4aが開口する。槽体である浴槽B内に排水又は湯水が溜まっていた場合、又は流入している場合、排水口4aから排水口本体4、また継手部材6内を通過して、排出口6aから下水側に排出される。
この状態から操作ボタン12に再度押し操作を加えると、ロック軸2bに再度押し操作が行われてロック軸2bの固定状態が解除される。これによって、インナーワイヤ7bは、蓋体3の自重と、レリースワイヤ7の戻りスプリングの作用によって、ロック軸2bと共に操作部S側に後退し、
図3のように蓋体3が排水口4aを覆うことで排水口4aを閉口する。
以降、操作ボタン12に押し込み操作を繰り返すことで、排水口4aを排水口4aから離間した操作部Sへの操作によって開閉することができる。
【0021】
また、メンテナンス等の理由によって、レリースワイヤ7を遠隔操作式排水栓装置から取り外す場合は、まず排水口4aから支持部材5取り出し、レリースワイヤ7と支持部材5との接続を解除する。
更に、操作ボタン12を取り外した上で、ロック機構2を操作部本体1から引き出すことで、レリースワイヤ7は継手部材6、ガイド部材8を通過して、操作部本体1から取り出すことができる。
また、再度施工を行う場合は、上記段落0018に記載した手順にて再びレリースワイヤ7を遠隔操作式排水栓装置に組みこむことができる。
【0022】
上記のように構成することで、ガイド部材8を利用し、槽体である浴槽Bの外側(裏側)より作業者が作業を行いことなく、レリースワイヤ7を施工したり、またメンテナンスなどで交換することができる。
【0023】
本発明の第一実施例は以上のようであるが本発明は上記実施例に限定される物ではなく、発明の主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば、上記第一実施例は、浴槽Bに用いられる遠隔操作式排水栓装置であるが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、洗面台や流し台など、様々な排水機器に採用しても構わない。
【0024】
また、上記実施例では、ガイド部材8の固定部分8aを硬質の樹脂材によって、可撓部分8bを軟質の樹脂材によって、それぞれ構成しているが、他の方法によってもガイド部材8に硬質部分と軟質部分を構成することができる。
図5及び
図6には、上記第一実施例とは異なる構成のガイド部材8を図示してなる。他の部材の構成は第一実施例と同一であり、施工方法、使用方法は第一実施例と全く同一の為省略する。
図5及び
図6の実施例のガイド部材8は、以下に記載される固定部材10とホース管9とから構成される。
固定部材10は、硬質の樹脂から構成される成型品の部材であって、以下に記載される第一の固定部材10a、第二の固定部材10bから構成される。
第一の固定部材10aは、円筒形状にして直線状の管体であって、一端はバンド部材11によって操作部本体1の端部に、内部が連続するようにして着脱自在且つ回動自在に取り付けられる。
第二の固定部材10bは、硬質の樹脂から構成される成型品の部材であって、円筒形状の管体を側面視90度の角度まで円弧形状に屈曲させ、更に円弧部分については側面の一部を切欠きした形状を備えて構成されてなる。第二の固定部材10bの内径は後述するホース管9の外径より若干大径であり、その内部にホース管9を挿通可能に構成してなる。第二の固定部材10bの両端は切り欠かれることなく、円筒形状を備えており、一端は第一の固定部材10aに嵌合接続され、他端は施工完了時ホース管9の途中部分を外れることが無いように保持している。
ホース管9は、軸方向に剛性を、側面方向に可撓性を備えた軟質塩ビなどの軟質樹脂材からなる管体によって構成されてなる。
この
図5及び
図6のガイド部材8は、第一の固定部材10aの端部を、ホース管9の端部に差し込むようにして接続し、更にホース管9を第二の固定部材10bに挿通した上で、第一の固定部材10aと第二の固定部材10bを嵌合接続することで、ガイド部材8として構成される。
この時、第一の固定部材10aの部分と、ホース管9の内、第二の固定部材10bに覆われることで、その形状が固定されている部分がガイド部材8の固定部分8aであり、第二の固定部材10bによって覆われておらず、ホース管9の側面方向の可撓性を備えた部分がガイド部材の可撓部分8bである。
第一実施例の固定部材10をインジェクション成型で成型する場合、屈曲部分の内側の金型の取出しが極めて困難であり、金型には高度で複雑な機構が求められる。対して、この
図5及び
図6の実施例のガイド部材8では、屈曲部分は開放されているため、この部分の内側の金型の取出しは容易であり、他の部分は直線状であるため、やはり内側の金型の取出しは容易であり、第一実施例のガイド部材8の固定部材10と比較して、簡単な構造の金型とすることができる。
【0025】
また、上記実施例では、固定部材10と操作部Sを別途の部材として構成しているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、
図7及び
図8に示したように、操作部本体1と固定部分8aとを一体の部材として構成しても良い。
【0026】
また、上記実施例では、ガイド部材8を固定部分8aと可撓部分8bとから構成してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、ガイド部材8の全体を固定部分8aから構成しても良い。このようにしても、発明の目的であるガイド部材8のレリースワイヤを挿通する経路の閉塞を防止する、という目的を達成することができる。
【0027】
また、上記実施例では、操作部側のインナーワイヤ端部の進退の方向が水平方向、即ち鉛直方向に対して90度の角度を有するように構成されてなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、
図9及び
図10に示したように、鉛直方向に対して45度の角度など、様々な角度を有するように構成しても構わない。
【0028】
また、上記実施例では、固定部材10を操作部Sから連続して備えてなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、
図11に示したように、可撓部分8bの閉塞し易い箇所、例えば槽体の外側面の角に当たる部分等に固定部材10を配置して固定部分8aとし、ガイド部材8の閉塞を防止するように構成しても良い。