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特開2022-139284危険認知及び/又は危険予測の評価装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139284
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】危険認知及び/又は危険予測の評価装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/052 20060101AFI20220915BHJP
   G09B 9/05 20060101ALI20220915BHJP
   G09B 19/16 20060101ALI20220915BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G09B9/052
G09B9/05 E
G09B19/16
A61B5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039585
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】517350355
【氏名又は名称】株式会社スキノス
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 英哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 正義
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB17
4C117XE06
4C117XE16
4C117XE36
4C117XR12
4C117XR14
(57)【要約】
【課題】安定して高精度の計測を行うことができる評価システムの提供。
【解決手段】注意を要する要注意状況を含む映像を被験者に提示する映像提示装置1と、前記被験者の手掌部及び/又は足裏部に装着されてその発汗量を検出する発汗量センサ2と、前記被験者の脳血流を検出する脳血流センサ3と、前記発汗量の時間変化と前記脳血流の時間変化との相関関係に基づき、被験者の前記要注意状況に対する危険認知及び/又は危険予測の適正度を判定する相関評価器4を備える、危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注意を要する要注意状況を含む映像を被験者に提示する映像提示装置と、
前記被験者の手掌部及び/又は足裏部に装着されてその発汗量を検出する発汗量センサと、
前記被験者の脳血流を検出する脳血流センサと、
前記発汗量の時間変化と前記脳血流の時間変化との相関関係に基づき、前記要注意状況に対する危険認知及び/又は危険予測の適正度を判定する相関評価器を備える、危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【請求項2】
前記発汗量センサが、空気供給手段と、開口部が被験者の皮膚面に密着された状態で当該皮膚面から放散された発汗と前記空気供給手段から供給された空気とを内部空間で混合させる筐体カプセルと、前記筐体カプセルの内部空間で前記発汗と前記空気供給手段から供給された空気とが混合された混合気体を前記筐体カプセルの外に排気させる排気通路と、前記空気供給手段から前記筐体カプセルに供給される空気の湿度と前記排気通路から排気される混合気体の湿度の差に基づいて、前記皮膚面の発汗量を計測する計測手段を備える、請求項1に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【請求項3】
前記相関関係の標準パターンを記憶する記憶装置を有し、
前記判定を、前記標準パターンと対比して行う、請求項1又は2に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【請求項4】
前記手掌部及び/又は足裏部に装着されてその皮膚電位反射を検出する皮膚電位センサと、
前記被験者が操作する操作デバイスの操作量を検出する操作量センサと、
前記発汗量センサ、前記脳血流センサ、前記皮膚電位センサ及び前記操作量センサによって検出される各々の検出値を記録する記録部を備える、請求項1~3の何れかに記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【請求項5】
前記映像提示装置が該要注意状況の映像を表示させた時点から、前記皮膚電位センサによって検出される前記皮膚電位反射が最初に所定値を超えて変動する時を判別して、さらにその変動が開始し始める反応開始時点を特定し、この反応開始時点までの反応潜時を計測して、該反応潜時を前記記録部に記録する反応潜時計測部と、
前記発汗量が、該反応開始時点の後に最初に迎えるピーク値を特定し、このピーク値を反応量として該記録部に記録する反応量検知部を備える、請求項4に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【請求項6】
前記映像が、車両の運転に際して注意を要する要注意状況を含む走行路の映像である、請求項5に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【請求項7】
前記発汗量の時間変化と前記脳血流の時間変化との相関関係と、前記反応潜時及び/又は前記反応量に基づいて、前記被験者の運転特性を判定する判定部を備える、請求項6に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【請求項8】
前記被験者の視線を計測する視線検出手段を有し、
前記判定部は、前記発汗量の時間変化と前記脳血流の時間変化との相関関係と、前記反応潜時及び/又は前記反応量と、前記視線検出手段による視線計測データに基づいて前記被験者の運転特性を判定する、請求項7に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【請求項9】
前記操作デバイスが、ブレーキペダル、アクセルペダル、および/またはハンドルである、請求項6~8の何れかに記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の危険認知及び/又は危険予測が適正なものであるかを評価することができる、危険認知及び/又は危険予測の評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車教習所や運転免許センターなどで、運転シミュレータを用いた運転特性の評価が行われている。運転特性の評価には、運転能力の評価や運転傾向の評価が含まれる。
近年、高齢者による自動車事故の増加が社会問題となる中、高齢者の運転特性を、より正確に評価できる技術が求められている。
【0003】
特許文献1には、運転時の要注意状況(例えば、信号が青から黄色に変わった状況や、信号待ちの車両に近づいて停車する状況、子供が集団で歩いている状況など、数多くの安全運転のために注意を要すべき状況)の映像に対する被験者の手掌部の発汗量に基づき、被験者が危険性を認知及び/又は予測しているかを把握することができる自動車運転認知行動評価装置が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、被験者の危険認知及び/又は危険予測が、その要注意状況に対して適正なものであったかを客観的に評価することは難しいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5366248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被験者による危険認知及び/又は危険予測が、その要注意状況に対する危険認知及び/又は危険予測として適正なものであるか否かを客観的に評価できる危険認知及び/又は危険予測の評価装置の提供を目的とする。
本発明において、危険認知とは、「人の飛び出しに遭遇した状況」のように、その状況自体に危険性がある要注意状況に遭遇した被験者が、その危険性を認知することを意味する。本発明において、危険予測とは、「見通しの悪い交差点を目にした状況」のように、その状況に潜在的な危険性を有する要注意状況に遭遇した被験者が、遭遇する可能性のある危険(例えば、見通しの悪い交差点では、人の飛び出しなどの可能性がある等)を予測することを意味する。
本発明において、要注意状況とは、前記のような自動車の運転に関連した要注意状況に限定されず、高所作業に関連した要注意状況、災害に関連した要注意状況等も含むものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[9]の危険認知及び/又は危険予測の評価装置を提供する。
【0008】
[1] 注意を要する要注意状況を含む映像を被験者に提示する映像提示装置と、前記被験者の手掌部及び/又は足裏部に装着されてその発汗量を検出する発汗量センサと、前記被験者の脳血流を検出する脳血流センサと、前記発汗量の時間変化と前記脳血流の時間変化との相関関係に基づき、前記要注意状況に対する危険認知及び/又は危険予測の適正度を判定する相関評価器を備える、危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
[2] 前記発汗量センサが、空気供給手段と、開口部が被験者の皮膚面に密着された状態で当該皮膚面から放散された発汗と前記空気供給手段から供給された空気とを内部空間で混合させる筐体カプセルと、前記筐体カプセルの内部空間で前記発汗と前記空気供給手段から供給された空気とが混合された混合気体を前記筐体カプセルの外に排気させる排気通路と、前記空気供給手段から前記筐体カプセルに供給される空気の湿度と前記排気通路から排気される混合気体の湿度の差に基づいて、前記皮膚面の発汗量を計測する計測手段を備える、[1]に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
[3] 前記相関関係の標準パターンを記憶する記憶装置を有し、前記判定を、前記標準パターンと対比して行う、[1]又は[2]に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
[4] 前記手掌部及び/又は足裏部に装着されてその皮膚電位反射を検出する皮膚電位センサと、前記被験者が操作する操作デバイスの操作量を検出する操作量センサと、前記発汗量センサ、前記脳血流センサ、前記皮膚電位センサ及び前記操作量センサによって検出される各々の検出値を記録する記録部を備える、[1]~[3]の何れかに記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
[5] 前記映像提示装置が該要注意状況の映像を表示させた時点から、前記皮膚電位センサによって検出される前記皮膚電位反射が最初に所定値を超えて変動する時を判別して、さらにその変動が開始し始める反応開始時点を特定し、この反応開始時点までの反応潜時を計測して、該反応潜時を前記記録部に記録する反応潜時計測部と、前記発汗量が、該反応開始時点の後に最初に迎えるピーク値を特定し、このピーク値を反応量として該記録部に記録する反応量検知部を備える、[4]に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
[6] 前記映像が、車両の運転に際して注意を要する要注意状況を含む走行路の映像である、[5]に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
[7] 前記発汗量の時間変化と前記脳血流の時間変化との相関関係と、前記反応潜時及び/又は前記反応量に基づいて、前記被験者の運転特性を判定する判定部を備える、[6]に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
[8] 前記被験者の視線を計測する視線検出手段を有し、前記判定部は、前記発汗量の時間変化と前記脳血流の時間変化との相関関係と、前記反応潜時及び/又は前記反応量と、前記視線検出手段による視線計測データに基づいて前記被験者の運転特性を判定する、[7]に記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
[9] 前記操作デバイスが、ブレーキペダル、アクセルペダル、および/またはハンドルである、[6]~[8]の何れかに記載の危険認知及び/又は危険予測の評価装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被験者による危険認知及び/又は危険予測が、その要注意状況に対する危険認知及び/又は危険予測として適正なものであるか否かを客観的に評価できる危険認知及び/又は危険予測の評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る危険認知及び/又は危険予測の評価装置の構成を説明する図である。
図2】一実施形態に係る危険認知及び/又は危険予測の評価装置を構成する発汗量センサの構成を説明する図である。
図3】他の実施形態に係る危険認知及び/又は危険予測の評価装置の構成を説明する図である。
図4】判定結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を自動車の運転シミュレータに適用した実施形態で説明を行うが、本発明の「危険認知及び/又は危険予測の評価装置」は下記の実施形態に限定されるものではなく、新幹線、電車、飛行機など自動車以外の乗り物の操作シミュレータ、高所作業など危険作業の作業シミュレータ、地震など災害発生時の非難シミュレータ等への適用も考えられる。
【0012】
〔実施形態1〕
本実施形態は、自動車運転時の危険認知及び/又は危険予測の評価装置であって、図1に示すように、注意を要する要注意状況を含む映像を被験者に提示する映像提示装置1と、前記被験者の手掌部及び/又は足裏部に装着されてその発汗量を検出する発汗量センサ2と、前記被験者の脳血流を検出する脳血流センサ3と、前記発汗量の時間変化と前記脳血流の時間変化との相関関係に基づき、前記要注意状況に対する危険認知及び/又は危険予測の適正度を判定する相関評価器4を備える。
上記構成の他に、前記相関関係の標準パターンを記憶する記憶装置5を備え、前記判定を、前記標準パターンと対比して行うこともできる。
【0013】
(映像提示装置1)
本実施形態において、映像提示装置1は、ディスプレイに、自動車運転に際して注意を要する要注意状況を含む走行路の映像を表示させる。具体的には、映像は、自動車運転に際して相対的に注意を要しない映像(例えば、信号のない直線路を走行する映像)の途中に要注意状況を出現させる。この要注意状況には、前述したものの他にも、一時停止標識が現れる状況、駐車車両を追い越す状況、脇道から人や自転車等が飛び出しそうになる、または飛び出してしまった状況などの種々の状況がある。必要に応じて、スピーカーから運転中の周囲音を出力させることもできる。
【0014】
(発汗量センサ2)
発汗量センサ2は、被験者の手掌部及び/又は足裏部の発汗量を計測する機能を有するものであればよく、特に限定されない。
発汗量センサ2として、空気供給手段と、開口部が被験者の皮膚面に密着された状態で当該皮膚面から放散された発汗と前記空気供給手段から供給された空気とを内部空間で混合させる筐体カプセルと、前記筐体カプセルの内部空間で前記発汗と前記空気供給手段から供給された空気とが混合された混合気体を前記筐体カプセルの外に排気させる排気通路と、前記空気供給手段から前記筐体カプセルに供給される空気の湿度と前記排気通路から排気される混合気体の湿度の差に基づいて、前記皮膚面の発汗量を計測する計測手段を備える、カプセル型の発汗量センサを例示することができる。
前記カプセル型の発汗量センサ2は、図2に示すように、前記空気供給手段として送風部113を備える。また、皮膚面SKに着接される開口部102を有する筐体カプセル103であって、該筐体カプセル103の内部に自然空気を吸気するための吸気孔104と、前記開口部102に連通して前記皮膚面SKの汗を放散させると共に、放散した前記汗及び前記自然空気が混合して混合空気となる混合室105と、前記混合室105から前記混合空気を排気するための排気孔106を有する筐体カプセル103と、前記自然空気の湿度を計測するための第1の湿度センサ107と、前記混合空気の温湿度を計測するための第2の湿度センサ108を備える。また、空気供給手段として自然空気を排出する送風部113を、第1の湿度センサ107の上流に備え、排気通路(フレキシブルパイプ)117を第2の湿度センサ108の下流に備える。更に、計測手段として、演算装置19を利用する。
【0015】
<送風部113>
送風部113が筐体カプセル103の外部にある場合、例えば、コンプレッサを送風部113として使用することができる。コンプレッサは自然空気を吸入したうえ、自然空気を送出する。コンプレッサから送出された自然空気は、フレキシブルパイプ114を経由して、筐体カプセル103の混合室105に供給される。送風部113が筐体カプセル103の内部にある場合、送風部113は混合室105の上流に配置することが好ましい。混合室105の上流に配置された送風部113は、吸気孔104から自然空気を吸気して、混合室105に送風する。例えば、電動のエアーファン、エアーポンプ又はエアーブロワを送風部113として使用することができる。
【0016】
<筐体カプセル103>
筐体カプセル103の形態は特に限定されないが、例えば、上端が閉じられた略筒状(一例として略円筒状)に形成することができる。
筐体カプセル103の素材も特に限定されないが、例えば、合成樹脂によって形成することができる。
【0017】
筐体カプセルの内部に自然空気を吸気するための吸気孔104は、筒状の筐体カプセル103の内径よりも小径(小さいサイズ)である。
【0018】
筐体カプセル103は、下端(皮膚面SK側)に、皮膚面SKに着接(貼付)される開口部102を有する。
開口部102の開口面積は、限定されないが、例えば、1cmとすることができる。皮膚面SKの発汗量の単位をmg/cm・minで表す場合、開口部102の開口面積が1cmであれば、発汗量の計測値を面積で除算して換算することなくそのまま使用することができる。
筐体カプセル103の皮膚面SKへの貼付は、開口部102の周辺部に例えば両面テープ、接着剤又は粘着剤を付して行うことができる。
【0019】
筐体カプセル103は、内側に、前記開口部102に連通する混合室105を有する。
混合室105は、皮膚面SKに着接された状態で皮膚面SKの汗を放散させると共に、放散した汗と自然空気とを混合させる空間としての機能を有する。
【0020】
混合室105から前記混合空気を排気するための排気孔106は、筒状の筐体カプセル103の内径よりも小径(小さいサイズ)である。
【0021】
<第1の湿度センサ107>
第1の湿度センサ107は、送風部113の送風する自然空気の湿度を計測する機能を備える。
図2の実施形態では、筐体カプセル103の外部にあるボックス115の内部に、第1の湿度センサ107が配設されている。本実施形態において、第1の湿度センサ107は、送風部113であるコンプレッサから送出され、ボックス115の内部に供給された自然空気の絶対湿度を計測する。
絶対湿度を計測する第1の湿度センサ107の代わりに、ボックス115の内部に、相対湿度センサと温度センサを配設して、ボックス115の内部に流れてきた自然空気の絶対湿度を求めることもできる。温度センサと湿度センサとが一体的に形成されたものを用いてもよい。
【0022】
<第2の湿度センサ108>
第2の湿度センサ108は、前記混合空気の湿度を計測する機能を備える。
図2の実施形態では、筐体カプセル103の外部にあるボックス116の内部に、第2の湿度センサ108が配設されている。本実施形態において、第2の湿度センサ108は、筐体カプセル103から排気され、ボックス116の内部に供給された混合空気の絶対湿度を計測する。
絶対湿度を計測する第2の湿度センサ108の代わりに、ボックス116の内部に、相対湿度センサと温度センサを配設して、ボックス116の内部に流れてきた自然空気の絶対湿度を求めることもできる。温度センサと湿度センサとが一体的に形成されたものを用いてもよい。
【0023】
<回路構成>
図2に示す実施形態では、第1の湿度センサ107、第2の湿度センサ108が、それぞれフィルタ回路F1、F2と電気的に接続されている。フィルタ回路F1及びF2は、前記の各センサから出力された上記検知信号を入力すると、それぞれの検知信号に含まれる雑音成分を除去したあと、所定の増幅率で検知信号を増幅する。
フィルタ回路F1、F2の出力側に差動増幅器DA1が接続されている。
フィルタ回路F1の出力側は差動増幅器DA1の反転入力端子(-)に接続されている。
フィルタ回路F2の出力側は差動増幅器DA1の非反転入力端子(+)に接続されている。
この構成により、差動増幅器DA1は、第1の湿度センサ107により検知された自然空気の絶対湿度に対応した信号と、第2の湿度センサ108により検知された混合空気の絶対湿度に対応した信号との差の信号を出力する。差動増幅器DA1から出力される信号は、皮膚面SKから混合室105に放散された発汗量に対応している。
差動増幅器DA1から出力された信号が、演算装置19に入力されると、演算装置19は、それぞれの入力信号に基づいて皮膚面SKから混合室105に放散された実際の発汗量を計算する。前記計算により得られた発汗量は、前記出力装置20に表示することができる。
【0024】
(脳血流センサ3)
脳血流センサ3は、被験者の脳の血流の変化を検出する機能を有するものであればよく、特に限定されない。なお、脳血流センサは、頭部の表面に所定の光を照射する光源と、それを受光する受光センサを備えた非接触のセンサであってもよい。
【0025】
(相関評価器4)
本発明者らは、基準時から直近の約100秒間に発汗量の変化をプロットした発汗量データと、基準時から直近の約100秒間に脳血流の変化をプロットした脳血流データとの相関関係から、その間の、被験者の危険認知及び/又は危険予測の状態を評価できることを見いだした。具体的には、以下のように評価できることを見いだした。
前記の相関関係が「正の相関」であって、基準時から直近の約100秒間、発汗量と脳血流が共に減少した場合(以下、「タイプAの相関」ともいう)、その間、「被験者は、危険を予測し、緊張感が高まっていた」と評価することができる。
前記の相関関係が「負の相関」であって、基準時から直近の約100秒間、発汗量が減少し、脳血流が増加した場合(以下、「タイプBの相関」ともいう)、その間、「被験者は、十分に注意を払ったが、差し迫った危険は認識していない」と評価することができる。
前記の相関関係が「負の相関」であって、基準時から直近の約100秒間、発汗量が増加し、脳血流が減少した場合(以下、「タイプCの相関」ともいう)、その間、「被験者は、突発的な危険を認知した」と評価することができる。
本発明は当該知見に基づくものであり、相関評価器4は、前記発汗量センサ2で検出される発汗量の時間変化と、前記脳血流センサ3で検出される脳血流の時間変化との相関関係に基づき、被験者の前記要注意状況に対する危険認知及び/又は危険予測の適正度を判定する。
【0026】
(記憶装置5)
前記の判定は、記憶装置5に記憶した標準パターンと対比して行うこともできる。
例えば、特定の映像に対する標準パターンが「タイプAの相関」であり、今般の被験者のデータも「タイプAの相関」を示した場合、当該被験者の危険認知及び/又は危険予測は適正であった、と判定することができる。判定に時間の要素を加え、発汗量の変化のタイミングも考慮することで、より正確な判定を行うことができる。
また、複数の要注意状況に対し、標準パターンとの一致率を点数化して判定を行うこともできる。
【0027】
標準パターンは、過去の試験結果として蓄積された複数の被験者のデータ群から導出することができる。
標準パターンが「タイプAの相関」を示す映像場面は、危険を予測しつつ、持続的な注意を要する映像場面であり、例えば、自転車の追い越し映像場面や、見通しのよい直進の映像場面が例示できる。
標準パターンが「タイプBの相関」を示す映像場面は、危険を予測するが、差し迫った危険ではなく緊張感が軽減する映像場面であり、例えば、市街地直進場面や、対向車を待つ一時停止場面が例示できる。
標準パターンが「タイプCの相関」を示す映像場面は、予測が困難な場面であって、緊張や驚きを感じる映像場面であり、例えば、市街地を右折する場面や、住宅地で前方からランナーが接近する場面が例示できる。
標準パターンを、年代別や、熟練度別に用意しておき、被験者と同じ属性における標準パターンを用いることで、より正確な判定を行うことができる。
被験者自身の過去のデータから導出した標準パターンを用いて、例えば、脳卒中等のリハビリテーションにおいて、認知機能の改善を評価する用途に応用することもできる。
【0028】
〔実施形態2〕
図3に示すように、実施形態1の構成に加え、前記手掌部及び/又は足裏部に装着されてその皮膚電位反射を検出する皮膚電位センサ6と、前記被験者が操作する操作デバイスの操作量を検出する操作量センサ7と、前記発汗量センサ、前記脳血流センサ、前記皮膚電位センサ及び前記操作量センサによって検出される各々の検出値を記録する記録部8を備えることもできる。
上記構成の他、前記映像提示装置が該要注意状況の映像を表示させた時点から、前記皮膚電位センサによって検出される前記皮膚電位反射が最初に所定値を超えて変動する時を判別して、さらにその変動が開始し始める反応開始時点を特定し、この反応開始時点までの反応潜時を計測して、該反応潜時を前記記録部に記録する反応潜時計測部9と、前記発汗量が、該反応開始時点の後に最初に迎えるピーク値を特定し、このピーク値を反応量として該記録部に記録する反応量検知部10を備えることもできる。
上記構成の他、前記発汗量の時間変化と前記脳血流の時間変化との相関関係、前記反応潜時及び前記反応量の少なくとも何れかに基づいて、前記被験者の運転特性を判定する判定部11を備えることもできる。
上記構成の他、前記被験者の視線を計測する視線検出手段12を備えることもできる。
【0029】
(皮膚電位センサ6)
皮膚電位センサ6は、被験者の手掌部及び/又は足裏部の皮膚電位反射を検出する機能を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、皮膚電気活動を計測する機能を有する皮膚電気活動センサを例示することができる。
【0030】
(操作量センサ7)
操作量センサ7は、被験者が操作する操作デバイス71の操作量を検出する機能を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、ハンドルの軸部にハンドルの回転量を検出する操作量センサを例示することができる。
操作量センサ7が検出対象とする操作デバイス71は、前記ハンドルの他、ブレーキペダル、アクセルペダル等であってもよい。
【0031】
(記録部8)
前記発汗量センサ、前記脳血流センサ、前記皮膚電位センサ及び前記操作量センサによって検出される各々の検出値を記録する。
【0032】
(反応潜時計測部9)
反応潜時計測部9は、要注意状況開始時間が経過した時点から、皮膚電位センサ6によって検出される皮膚電位反射の絶対値が、例えば0.1mVなどの所定の電圧値を超えて変動するか否かを監視する。反応潜時計測部は、この所定の電圧値を超えたと判別したときに、すでに記録部8に記録されている皮膚電位反射値から、その変動が開始し始める、つまり皮膚電位反射値が0から僅かに(例えば0.02mV)増加し始める時の映像経過時間を特定して反応開始時点とする。反応潜時計測部9は、要注意状況が表示されてから反応開始時点までの時間間隔を、皮膚電位反射の反応潜時として、いずれの要注意状況の反応潜時か識別可能にして記録部8に記録する。
反応潜時が所定の最大許容時間を超えるとき、危険性の認知、予測に対する運転特性が低いと判定することができる。最大許容時間は、予め決定して、記録部に記録しておく。最大許容時間としては、多数の健常な運転者に模擬運転をさせ検出値を記録して、要注意状況に対するそれらの中の検出時間の最大値を用いてもよい。また、最大許容時間を、性別や年代別に対応させて変更して用いてもよい。
【0033】
(反応量検知部10)
反応量検知部10は、反応開始時点の後に記録された発汗量の検出値の中から、最初のピーク値を反応量として、いずれの要注意状況の反応量か識別可能にして記録部8に記録する。
反応量が所定の最小反応量よりも小さいときに、危険性の認知、予測に対する運転特性が低いと判定することができる。最小反応量は、予め決定して、記録部に記録しておく。最小反応量としては、多数の健常な運転者に模擬運転をさせ検出値を記録して、要注意状況に対するそれらの中の反応量の最小値を用いてもよい。また、最小反応量を、性別や年代別に対応させて変更して用いてもよい。
【0034】
(判定部11)
判定部11は、前記相関評価器4による判定結果と、前記反応潜時及び/又は前記反応量に基づいて、前記被験者の運転特性を総合的に判定する。前記相関評価器4による判定結果と、前記反応潜時及び/又は前記反応量の他に、操作量センサ7の検出値及び/又は視線検出手段12による視線計測データを組み合わせて、図4に示すように、危険予測、危険認知、回避行動の3つの観点から運転特性を判定してもよい。
判定部11は、映像中の特徴のある1つの要注意状況で判定を行ってもよいし、映像中の複数の要注意状況で判定してもよい。判定部11が、複数の要注意状況で判定する場合、運転特性が低いと判定される回数に応じて、さらに運転特性の良否を判定してもよい。
【0035】
反応潜時計測部、反応量検知部、および判定部は、模擬運転を行っている最中に作動させてもよく、模擬運転が終了してから作動させてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 映像提示装置
2 発汗量センサ
3 脳血流センサ
4 相関評価器
5 記憶装置
6 皮膚電位センサ
7 操作量センサ
8s 記録部
9 反応潜時計測部
10 反応量検知部
11 判定部
12 視線検出手段
19 演算装置
20 出力装置

102 開口部
103 筐体カプセル
104 吸気孔
105 混合室
106 排気孔
107 第1の湿度センサ
108 第2の湿度センサ
113 送風部
114 フレキシブルパイプ
115 ボックス
116 ボックス
117 フレキシブルパイプ
図1
図2
図3
図4