IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139286
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】金属用親水化剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/02 20060101AFI20220915BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20220915BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20220915BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20220915BHJP
   F28F 19/02 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08L33/02
C08K3/32
C09D133/14
C23C28/00 C
F28F19/02 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039587
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岡山 陽一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 登
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4J002BG011
4J002DH036
4J002FD206
4J002GH00
4J002GM00
4J002HA04
4J038CG031
4J038GA14
4J038NA06
4J038PB06
4J038PC02
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA21
4K044BB03
4K044BB04
4K044BC02
4K044BC04
4K044CA16
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】 熱交換器フィン等の金属表面を親水化することができ、且つ、親水化皮膜の変色を充分に抑制することができる金属用親水化処理組成物を提供する。
【解決手段】 ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む金属用親水化剤組成物であって、該ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、重合体が有する全カルボキシル基100モル%に対して10~90モル%のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和され、該金属用親水化剤組成物中のリン元素の含有量が、次亜リン酸ナトリウム換算で中和前のポリ(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対して1.0~15質量%であることを特徴とする金属用親水化剤組成物。
【選択図】なし



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む金属用親水化剤組成物であって、
該ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、重合体が有する全カルボキシル基100モル%に対して5~90モル%のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和され、
該金属用親水化剤組成物中のリン元素の含有量が、次亜リン酸ナトリウム換算で中和前のポリ(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対して0.1~15質量%であることを特徴とする金属用親水化剤組成物。
【請求項2】
前記金属用親水化剤組成物は、(メタ)アクリル酸系重合体に結合していないリン化合物を、次亜リン酸ナトリウム換算で、中和前のポリ(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対して0.1~15質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の金属用親水化剤組成物。
【請求項3】
ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む金属用親水化剤組成物であって、
該ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、重合体が有する全カルボキシル基100モル%に対して5~90モル%のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和され、
該金属用親水化剤組成物中のリン元素の含有量が、次亜リン酸ナトリウム換算で組成物中の固形分100質量%に対して0.1~15質量%であることを特徴とする金属用親水化剤組成物。
【請求項4】
前記金属用親水化剤組成物は、(メタ)アクリル酸系重合体に結合していないリン化合物を、次亜リン酸ナトリウム換算で、組成物中の固形分100質量%に対して0.1~15質量%含むことを特徴とする請求項3に記載の金属用親水化剤組成物。
【請求項5】
前記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、次亜リン酸及び/又はその塩に由来する基を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の金属用親水化剤組成物。
【請求項6】
前記第二級アミン及び/又は第三級アミンは、アルカノールアミンであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の金属用親水化剤組成物。
【請求項7】
前記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩に由来する構造単位を、全構造単位100モル%に対して80モル%以上有することを特徴とする請求項1~6に記載の金属用親水化剤組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属用親水化剤組成物に関する。より詳しくは、熱交換器等のフィン材等に有用な金属用親水化剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機等の熱交換器は、通常、熱交換を行うためのフィンが狭い間隔で保持されている。このような熱交換器では、冷房時に発生する凝縮水がフィン間に水のブリッジを形成するため、水飛びや、空気の通風路を狭めることによる送風抵抗の増大等の不具合が生じる。これに対して、従来、フィン材の表面を親水化処理して水滴や水滴によるブリッジの形成を抑制することが行われている。親水化処理方法の1つとして、親水性樹脂を用いる方法が開発され、例えば特許文献1には、熱交換器または熱交換器用部材をコーティングするための塗料組成物に用いられる水溶性樹脂であって、3-アリロキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(HAPS)またはその塩と、アクリル酸またはその塩との共重合体であり、当該共重合体における全単量体の構成単位100モル%に対するHAPSまたはその塩の構成単位の比率が23モル%以上、かつ当該共重合体の平均分子量が5万以上であり、前記比率と前記平均分子量との積が3,000,000以上5,000,000以下であることを特徴とする水溶性樹脂が開示されている。特許文献2には、(A)87%以上のケン化度を有するポリビニルアルコール及び(B)300mgKOH/g以上の樹脂酸価を有する高酸価アクリル樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部が、180℃未満の沸点を有さず且つ180℃未満で分解しない塩基性化合物と塩を形成してなる中和樹脂を含有することを特徴とする熱交換器フィン材用親水化処理組成物が開示されている。
【0003】
また、親水性樹脂に関して、特許文献3には、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液であって、該ポリ(メタ)アクリル酸系重合体のカルボキシル基の少なくとも一部は二級アミンおよび/または三級アミンで中和されており、該水溶液に含まれる、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造単位と二級アミン(塩)若しくは三級アミン(塩)に由来する構造単位とのモル比が100:10~100:120であり、該水溶液に含まれる、硫黄原子又はリン原子を含む無機の陰イオンの濃度が、該水溶液に対して1000~30000ppmであることを特徴とする水溶液が開示されている。特許文献4には、(a)少なくとも2個のカルボン酸基、酸無水物基、またはそれらの塩を含有する多酸;(b)少なくとも2個のヒドロキシル基を含有するポリオール;および(c)リン(III)含有促進剤;を含有しており、かつ前記カルボン酸基、酸無水物基、またはそれらの塩の当量数:前記ヒドロキシル基の当量類の比が、約1/0.01~約1/3であり、そしてカルボン酸基、酸無水物基、またはそれらの塩が、不揮発性塩基で約35%以下の範囲に中和されている、硬化性の水性組成物が開示されている。
特許文献5には、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体と、(メタ)アクリル酸(塩)への亜硫酸水素(塩)付加物とを含む重合体組成物であって、該ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、主鎖末端にスルホン酸(塩)基を有し、重量平均分子量が500~1000000であり、該(メタ)アクリル酸(塩)への亜硫酸水素(塩)付加物の含有量は、該重合体組成物に含まれるポリ(メタ)アクリル酸系重合体の総量100質量部に対し、0.5~15質量部であることを特徴とするポリ(メタ)アクリル酸系重合体組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-122052号公報
【特許文献2】特開2001-329377号公報
【特許文献3】特開2013-177534号公報
【特許文献4】特開平6-184285号公報
【特許文献5】国際公開第2013/031890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、熱交換器フィン等に対する種々の親水化処理組成物が開発されている。しかしながら、従来の親水化処理組成物は、熱交換器フィン等の金属表面に塗装及び加熱して塗膜(皮膜)を形成した際に塗膜が変色するという耐熱性や、親水化度、塗膜密着性の少なくともいずれかに問題があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、熱交換器フィン等の金属表面を親水化することができ、塗膜密着性に優れ、且つ、親水化皮膜の変色を充分に抑制することができる金属用親水化処理組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、熱交換器フィン等の親水化処理組成物について種々検討したところ、所定量のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和されたポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含み、リン元素の含有量が所定の範囲である組成物を用いることにより、金属表面を親水化することができ、塗膜密着性に優れ、且つ、親水化皮膜の変色を充分に抑制することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち第1の本発明は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む金属用親水化剤組成物であって、上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、重合体が有する全カルボキシル基100モル%に対して5~90モル%のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和され、上記金属用親水化剤組成物中のリン元素の含有量が、次亜リン酸ナトリウム換算で中和前のポリ(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対して0.1~15質量%である金属用親水化剤組成物である。
【0009】
上記金属用親水化剤組成物は、(メタ)アクリル酸系重合体に結合していないリン化合物を、次亜リン酸ナトリウム換算で、中和前のポリ(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対して0.1~15質量%含むことが好ましい。
【0010】
第2の本発明は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む金属用親水化剤組成物であって、上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、重合体が有する全カルボキシル基100モル%に対して5~90モル%のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和され、上記金属用親水化剤組成物中のリン元素の含有量が、次亜リン酸ナトリウム換算で組成物中の固形分100質量%に対して0.1~15質量%である金属用親水化剤組成物である。
【0011】
上記金属用親水化剤組成物は、(メタ)アクリル酸系重合体に結合していないリン化合物を、次亜リン酸ナトリウム換算で、組成物中の固形分100質量%に対して0.1~15質量%含むことが好ましい。
【0012】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、次亜リン酸及び/又はその塩に由来する基を有することが好ましい。
【0013】
上記第二級アミン及び/又は第三級アミンは、アルカノールアミンであることが好ましい。
【0014】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩に由来する構造単位を、全構造単位100モル%に対して80モル%以上有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金属用親水化剤組成物は、上述の構成よりなり、金属表面を親水化することができ、且つ、親水化皮膜の変色を充分に抑制することができるため、熱交換器等のフィン材等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に本発明を詳述する。本明細書中において単に「本発明」という場合には第1及び第2の本発明に共通する事項を意味するものとする。
以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0017】
≪金属用親水化剤組成物≫
第1の本発明の金属用親水化剤組成物は、全カルボキシル基100モル%に対して5~90モル%のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和されたポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含み、リン元素の含有量が、次亜リン酸ナトリウム換算で中和前のポリ(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対して0.1~15質量%である。
第2の本発明の金属用親水化剤組成物は、全カルボキシル基100モル%に対して5~90モル%のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和されたポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含み、リン元素の含有量が、次亜リン酸ナトリウム換算で組成物中の固形分100質量%に対して0.1~15質量%である。
このような構成であることにより、金属表面を塗膜密着性に優れた親水化膜にて親水化することができ、且つ、親水化皮膜の変色を充分に抑制することができる。
【0018】
第1の本発明において、上記リン元素の含有量の下限値として好ましくは0.2質量%であり、更に好ましくは0.3質量%であり、一層好ましくは1.5質量%であり、より一層好ましくは2.0質量%であり、特に好ましくは2.5質量%である。上限値としては好ましくは12質量%であり、更に好ましくは10質量%であり、特に好ましくは8質量%である。
上記金属用親水化剤組成物中のリン元素の含有量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
上記金属用親水化剤組成物中の中和前のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリアクリル酸を用いて検量線を作成し、RIの面積から算出することができる。
【0019】
第2の本発明において、上記金属用親水化剤組成物中のリン元素の含有量としては、次亜リン酸ナトリウム換算で組成物中の固形分100質量%に対して0.1~15質量%であることも好ましい。含有量の下限値としてより好ましくは0.2質量%であり、更に好ましくは0.3質量%であり、一層好ましくは1.5質量%であり、より一層好ましくは2.0質量%であり、特に好ましくは2.5質量%である。上限値としてより好ましくは12質量%であり、更に好ましくは10質量%であり、特に好ましくは8質量%である。上記第二級アミン及び第三級アミンの炭素数が2~10であって、上記リン元素の含有量が、組成物中の固形分100質量%に対して0.1~15質量%である形態は本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0020】
上記金属用親水化剤組成物に含まれるリン元素の形態は特に制限されず、リン原子がポリ(メタ)アクリル酸系重合体に結合していても、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体以外の成分としてリン原子含有化合物やリン原子を含むイオンが組成物に含まれていてもよい。
【0021】
第1の本発明において、上記金属用親水化剤組成物中の(メタ)アクリル酸系重合体に結合していない遊離のリン元素((メタ)アクリル酸系重合体に結合していないリン化合物)の含有量は、次亜リン酸ナトリウム換算で、中和前のポリ(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対して0.1~15質量%であることが好ましい。含有量の下限値としてより好ましくは0.2質量%であり、更に好ましくは0.3質量%であり、特に好ましくは0.5質量%である。上限値としてより好ましくは12質量%であり、更に好ましくは10質量%であり、特に好ましくは8質量%である。
【0022】
第2の本発明において、上記金属用親水化剤組成物中の(メタ)アクリル酸系重合体に結合していない遊離のリン元素((メタ)アクリル酸系重合体に結合していないリン化合物)の含有量は、次亜リン酸ナトリウム換算で、組成物中の固形分100質量%に対して0.1~15質量%であることが好ましい。含有量の下限値としてより好ましくは0.2質量%であり、更に好ましくは0.3質量%であり、特に好ましくは0.5質量%である。上限値としてより好ましくは12質量%であり、更に好ましくは10質量%であり、特に好ましくは8質量%である。
【0023】
本発明の金属用親水化剤組成物中の上記重合体に結合したリン原子含有基や、リン原子含有化合物、リン原子を含むイオンは、還元性を有するものであることが好ましい。これにより、組成物中の重合体やその他の成分を加熱した際の分解を充分に抑制することができ、組成物の耐変色性(耐熱黄変性)がより向上することとなる。
【0024】
上記還元性を有するリン原子含有基としては、例えば、次亜リン酸(塩)基、亜リン酸(塩)基等が挙げられる。より好ましくは次亜リン酸(塩)基である。なお、次亜リン酸(塩)基や亜リン酸(塩)基は、それぞれ次亜リン酸(塩)や亜リン酸(塩)から、少なくとも1つの活性水素が外れて得られる基を意味するものとする。
上記還元性を有するリン原子含有化合物としては、次亜リン酸(塩)、亜リン酸(塩)等が挙げられる。より好ましくは次亜リン酸(塩)である。
上記還元性を有するリン原子を含むイオンとしては次亜リン酸イオン、亜リン酸イオンが挙げられ、好ましくは次亜リン酸イオンである。
【0025】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体に次亜リン酸(塩)基が結合している場合、重合体分子内の次亜リン酸(塩)基は、例えば、後述する通り、連鎖移動剤として次亜リン酸(塩)を使用し、(メタ)アクリル酸(塩)を含む単量体成分を重合することにより、重合体の分子中に次亜リン酸(塩)基を導入することができる。
【0026】
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられ、より具体的には、金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属の塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属の塩;アルミニウム塩、鉄塩等の塩が挙げられる。有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;モルホリン塩等が挙げられる。これらの中でも、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0027】
上記金属用親水化剤組成物がポリ(メタ)アクリル酸系重合体に結合したもの以外にリン元素を含む場合、次亜リン酸及び/又はその塩(以下、次亜リン酸(塩)ともいう。)を含むことが好ましい。
第1の本発明において、次亜リン酸及び/又はその塩の合計の含有量としては、中和前のポリ(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対して0.1~15質量%であることが好ましい。含有量の下限値としてより好ましくは0.2質量%であり、更に好ましくは0.3質量%であり、特に好ましくは0.5質量%である。上限値としてより好ましくは12質量%であり、更に好ましくは10質量%であり、特に好ましくは8質量%である。
第2の本発明において、次亜リン酸及び/又はその塩の合計の含有量としては、組成物中の固形分100質量%に対して0.1~15質量%であることが好ましい。含有量の下限値としてより好ましくは0.2質量%であり、更に好ましくは0.3質量%であり、特に好ましくは0.5質量%である。上限値としてより好ましくは12質量%であり、更に好ましくは10質量%であり、特に好ましくは8質量%である。
上記金属用親水化剤組成物が次亜リン酸(塩)を含む場合、組成物中の次亜リン酸(塩)は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の製造において使用した連鎖移動剤が未反応のまま残存したものであっても、別途添加されたものであってもよい。
【0028】
上記金属用親水化剤組成物中のポリ(メタ)アクリル酸系重合体の含有割合は、特に制限されないが、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体由来の性能を十分に発揮するため、組成物中の固形分100質量%に対して85質量%以上であることが好ましい。下限値としてより好ましくは90質量%であり、更に好ましくは92質量%である。上限値としてはより好ましくは99.9質量%であり、さらに好ましくは99.5質量%である。
【0029】
<ポリ(メタ)アクリル酸系重合体>
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位を有するものである。これにより、金属用表面を充分に親水化することができる。
(メタ)アクリル酸(塩)とは、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩を意味する。塩としては、上述の金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
【0030】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造のみを有していてもよいが、(メタ)アクリル酸(塩)と共重合可能なその他の単量体由来の構造を有していてもよい。
その他の単量体として具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、2-メチレングルタル酸、及びこれらの塩等の(メタ)アクリル酸(塩)以外のカルボキシル基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α-ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1~18のアルキル基のエステルである、アルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート又はその4級化物等のアミノ基含有アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;
【0031】
酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体及びこれらの塩;ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸等のホスホン酸基を有する単量体;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルピロリドン等のその他官能基含有単量体類;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、モノアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドが1~300モル付加した構造を有する単量体等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体;等が挙げられる。これらのその他の単量体についても、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位の割合を、全構造単位((メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位及びその他の単量体由来の構造単位)100モル%に対して、80モル%以上有することが好ましい。より好ましくは90モル%以上であり、更に好ましくは95モル%以上である。
【0033】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、その他の単量体由来の構造単位の割合が、全構造単位100モル%に対して、20モル%以下であることが好ましい。より好ましくは10モル%以下であり、更に好ましくは5モル%以下である。
【0034】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、重合体が有する全カルボキシル基100モル%に対して5~90モル%のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和されたものである。これにより本発明の組成物を用いて形成した塗膜の可撓性(弾性)がより好適な範囲となる。下限値として好ましくは7モル%以上のカルボキシル基、より好ましくは10モル%以上のカルボキシル基、更に好ましくは15モル%以上のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和されたものである。上限値として好ましくは70モル%以下のカルボキシル基、より好ましくは60モル%以下のカルボキシル基、更に好ましくは50モル%以下のカルボキシル基が第二級アミン及び/又は第三級アミンにより中和されたものである。
【0035】
上記第二級アミン及び第三級アミンの炭素数としては、2~30が好ましい。より好ましくは2~15であり、更に好ましくは3~10である。
【0036】
上記第二級アミン及び第三級アミンとしては、下記式(1);
NR (1)
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基を表す。但し、Rのうち少なくとも2つは置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される化合物が好ましい。
上記炭化水素基の炭素数として好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、更に好ましくは2~4である。なお、上記炭化水素基が置換基を有する場合、上記炭素数には、置換基の炭素数も含まれるものとする。
【0037】
上記炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基(アミル基)、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、i-プロピル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、i-アミル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、t-アミル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-エチル-2-メチルプロピル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、t-オクチル基、分岐したノニル基、デシル基等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o-,m-若しくはp-トリル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、i-プロピル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基である。
【0038】
上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては特に制限されないが、例えば、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシル基、スルホン酸基、アミノ基、リン酸基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基等が挙げられる。好ましくは水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、リン酸基である。このような反応性の置換基は、重合体が有するカルボキシル基等の反応性官能基と架橋構造を形成することができるため、塗膜の強度がより向上することとなる。置換基としてより好ましくは水酸基である。
上記Rのうち少なくとも1つは、水酸基を有する炭化水素基であることが好ましい。より好ましくはRのうち2つ又は3つが水酸基を有する炭化水素基であり、更に好ましくはRのうち2つが水酸基を有する炭化水素基である形態である。
【0039】
上記第二級アミンとしては特に制限されないが、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N-メチルエチルアミン、N-メチルプロピルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、N-メチルブチルアミン、N-メチルイソブチルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルプロピルアミン、N-エチルイソプロピルアミン、N-エチルブチルアミン、N-エチルイソブチルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-メチルビニルアミン、N-メチルアリルアミン等の脂肪族モノアミン;メチルアニリン、エチルアニリン、N-メチルベンジルアミン、N-エチルベンジルアミン、N-メチルフェニチルアミン、N-エチルフェネチルアミン等の芳香族アミン;N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-イソブチルエタノールアミン、N-メチルプロパノールアミン、N-エチルプロパノールアミン、N-プロピルプロパノールアミン、N-イソプロピルプロパノールアミン、N-ブチルプロパノールアミン、N-イソブチルプロパノールアミン等のモノアルカノールアミン;ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、2-((ヒドロキシメチル)アミノ)エタノール、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジブタノールアミン等のジアルカノールアミン;ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、モルホリン、チオモルホリン等の環状アミン;等が挙げられる。
【0040】
上記第三級アミンとしては特に制限されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリペンチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジプロピルメチルアミン等の脂肪族モノアミン;ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、N,N-ジメチルフェニチルアミン、N,N-ジエチルフェネチルアミン、トリベンジルアミン等の芳香族アミン;N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジプロピルエタノールアミン、N,N-エチルメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、N,N-ジエチルプロパノールアミン、N,N-ジプロピルプロパノールアミン、N,N-エチルメチルプロパノールアミン等のモノアルカノールアミン;N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-イソプロピルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-イソブチルジエタノールアミン、N-メチルジプロパノールアミン、N-エチルジプロパノールアミン、N-プロピルジプロパノールアミン、N-イソプロピルジプロパノールアミン、N-ブチルジプロパノールアミン、N-イソブチルジプロパノールアミン等のジアルカノールアミン;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン等のトリアルカノールアミン等が挙げられる。
【0041】
上記第二級アミン及び/又は第三級アミンは、アルカノールアミンであることが好ましい。アルカノールアミンとしては、水酸基を少なくとも1つ有していればよいが、より好ましくはジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンであり、更に好ましくはジアルカノールアミンであり、特に好ましくはジエタノールアミンである。
【0042】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、重合体が有するカルボキシル基の一部が、第二級アミン及び/又は第三級アミンの他にその他の中和剤で中和されていてもよい。
その他の中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属塩、アンモニア、第二級アミン及び第三級アミン以外のその他の有機アミン等が挙げられる。
その他の有機アミンとしては、第一級アミンや上記第三級アミンの4級化物、ポリアミン等が挙げられる。第一級アミンとしては、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン等のアルカノールアミン;メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン等が挙げられる。ポリアミンとしては、例えば、ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミドポリアミン、ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド、ポリビニルアミンなどが挙げられる。好ましくは、ポリアルキレンイミンであり、より好ましくは、ポリエチレンイミンである。
【0043】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、分子内に上述の還元性のリン原子含有基を有するものであることが好ましい。これにより重合体を加熱した際の重合体の分解をより充分に抑制することができ、組成物の耐変色性がより向上することとなる。
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、次亜リン酸及び/又はその塩に由来する基を有することがより好ましい。
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体はさらに、主鎖末端(分子末端)に次亜リン酸(塩)基を有することが更に好ましい。重合体に含まれるリン原子含有基の分析は、例えば、31P-NMR測定等により可能である。
【0044】
第1の本発明において、上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体がリン原子含有基を有する場合、重合体中のリン原子含有量は、次亜リン酸ナトリウム換算で、中和前のポリ(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対し、0.1~15質量%であることが好ましい。下限値として、より好ましくは0.3質量%、より好ましくは0.5質量%である。上限値として、より好ましくは10質量%、更に好ましくは8質量%であり、特に好ましくは5質量%である。
第2の本発明において、上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体がリン原子含有基を有する場合、重合体中のリン原子含有量は、次亜リン酸ナトリウム換算で、組成物中の固形分100質量%に対し、0.1~15質量%であることが好ましい。下限値として、より好ましくは0.3質量%、より好ましくは0.5質量%である。上限値として、より好ましくは10質量%、更に好ましくは8質量%であり、特に好ましくは5質量%である。
なお、上記重合体中のリン原子含有基の含有量は、例えば、31PNMR分析により測定することができる。
【0045】
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体は、重量平均分子量が1,000~1,000,000であることが好ましい。下限値としてより好ましくは2,000以上であり、更に好ましくは3,000以上であり、特に好ましくは4,000以上である。上限値としてより好ましくは500,000以下であり、更に好ましくは100,000以下であり、一層好ましくは50,000以下であり、より一層好ましくは30,000以下であり、特に好ましくは20,000以下である。
上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
<ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法>
上記ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は特に制限されないが、(メタ)アクリル酸(塩)を含む単量体成分を重合することにより製造することができる。単量体成分の具体例及び好ましい例、並びに、各単量体の好ましい割合は、上述のとおりである。
【0047】
(重合工程)
上記重合工程における、単量体成分の重合を開始する方法としては、特に制限されないが、例えば、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光開始剤存在下に光を照射する方法等が挙げられる。
上記重合工程において、重合開始剤を用いることが好ましい。
【0048】
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アスコルビン酸と過酸化水素、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が好適である。これらの重合開始剤のうち、残存単量体が減少する傾向にあることから、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ系化合物が好ましく、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記重合開始剤の使用量としては、全単量体の使用量1モルに対して、好ましくは0.1g以上、15g以下であり、より好ましくは0.2g~12gである。
【0049】
上記重合工程においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤として、具体的には、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン等のハロゲン化物;イソプロピルアルコール、グリセリン等の、第2級アルコール;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む);亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩);亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸(塩);亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸(塩);亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸(塩);ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸(塩)、過酸化水素などが挙げられる。上記連鎖移動剤として好ましくは、次亜リン酸(塩)、亜リン酸(塩)、重亜硫酸(塩)、過酸化水素、メルカプトプロピオン酸であり、更に好ましくは、次亜リン酸(塩)、重亜硫酸(塩)、過酸化水素である。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。連鎖移動剤として次亜リン酸(塩)や亜リン酸(塩)を用いることにより、得られるポリ(メタ)アクリル酸系重合体は次亜リン酸(塩)基や亜リン酸(塩)基を有することとなる。また、連鎖移動剤としてのこれらの化合物が、未反応のまま本発明の金属用親水化剤組成物中に残存していてもよい。
連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0g以上、20g以下であることが好ましく、0g以上、15g以下であることがより好ましい。
【0050】
上記重合工程において、溶媒を使用する場合、溶媒としては水性溶媒が好ましい。水性溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、n-ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等、およびそれらの混合物が挙げられ、好ましくは水である。
単量体の溶媒への溶解性向上のため、必要に応じて、重合に悪影響を及ぼさない範囲で、任意の適切な有機溶媒を適宜加えてもよい。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
溶媒の使用量としては、単量体100質量%に対して40~400質量%が好ましい。
【0051】
上記重合工程において、重合温度は、特に限定されるものではないが、20℃~110℃であることが好ましく、より好ましくは40~105℃であり、更に好ましくは50~105℃である。
また、反応時間は、上記重合反応が完結するように、反応温度や、単量体成分、重合開始剤、及び、溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、使用量等に応じて、適宜設定すればよい。
【0052】
上記重合体の製造方法は、重合反応後に、熟成工程を含むことが好ましい。熟成工程とは、重合体原料の反応を促進し残存量を低減するため、反応器への原料の添加が終わった後、反応混合物を一定の温度範囲に保つ工程である。上記熟成工程における温度は特に制限されないが、50~105℃であることが好ましい。上記熟成工程における熟成時間は特に制限されないが、10分~5時間であることが好ましい。より好ましくは20分~3時間である。
【0053】
(中和工程)
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)は、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を、第二級アミン及び/又は第三級アミンで中和する工程(又は、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液に、第二級アミン及び/又は第三級アミンを添加する工程)を含むことにより製造することが好ましい。
【0054】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)が、上記第二級アミン及び/又は第三級アミンで中和する工程を含んで製造される場合、第二級アミン及び/又は第三級アミンの他にその他の中和剤を使用してもよい。これらの中和剤は、pHや反応速度の調整などの為に、重合工程の前、重合中、熟成工程、熟成工程後のいずれで添加してもよい。他方で中和反応時の着色を低減する為には、熟成工程後に添加することが好ましい。第二級アミン及び/又は第三級アミンの他にその他の中和剤を使用する場合、最初に酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を、その他の中和剤で中和する工程(以下、N1工程ともいう。)を行い、その後に、酸型及び/又は部分中和型のポリ(メタ)アクリル酸系重合体を含む水溶液を、第二級アミン及び/又は第三級アミンで中和する工程(以下、N2工程ともいう。)を行うことが、色調が良好になることから好ましいが、その逆の工程順序とすることも可能である。
【0055】
上記N1工程及びN2工程の温度は特に制限されないが、40~100℃で行われることが好ましく、45~95℃がより好ましく、50~90℃が特に好ましい。
上記N1工程及びN2工程に要する時間は、使用する中和剤の種類や使用量に応じて適宜選択すればよいが、通常、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、3時間以下が更に好ましい。
【0056】
<金属用親水化剤組成物中のその他の成分>
本発明の金属用親水化剤組成物は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体、リン原子含有化合物やリン原子を含むイオン以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、溶媒;ナトリウムイオン、アンモニウムイオンなどのカチオン成分;塩化物イオン、硫酸イオンなどのアニオン成分;未反応単量体;ヒドロキノン、メトキノンなどの重合禁止剤;少なくとも2個のヒドロキシ基を有する非アミン系ポリオール化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパンなどのポリオール、およびそれらのアルキレングリコール付加物;エリスリトール、ペンタエリスリトール、トレイトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、イジトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール、ボレミトール、ペルセイトール及びD-エリトロ-D-ガラクト-オクチトールなどの糖類、およびそれらのアルキレングリコール付加物;などが挙げられる。
【0057】
上記金属用親水化剤組成物中のその他の成分の含有割合は、特に制限されないが、組成物100質量%に対して10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下である。
【0058】
<塗料組成物>
上記金属用親水化剤組成物は、金属の塗料組成物として用いられることが好ましい。塗料組成物に含まれる上記金属用親水化剤組成物量は、親水性や塗装性等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは固形分濃度で0.1~50質量%である。
【0059】
上記塗料組成物は、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体、リン原子含有化合物やリン原子を含むイオン以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては特に制限されないが、例えば、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、ポリエチレングリコール等のポリ(メタ)アクリル酸系重合体以外の水溶性樹脂;メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ポリエポキシ化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、チタンキレートなどの金属キレート化合物な架橋剤;界面活性剤;コロイダルシリカ;防菌剤;着色顔料;防錆顔料;防錆剤;溶媒等が挙げられる。
【0060】
≪金属表面の親水化処理方法≫
本発明はまた、本発明の金属用親水化剤組成物を用いて熱交換器等のフィン材等の金属表面を親水化処理する方法でもある。
上記親水化処理方法は、本発明の金属用親水化剤組成物を、金属表面に塗装する工程と、加熱乾燥する工程とを含むことが好ましい。
上記塗装工程における金属用親水化剤組成物の塗布量(形成量)は特に制限されないが、10~20000mg/mが好ましい。
【0061】
上記加熱乾燥する工程における加熱温度は特に制限されないが、80~250℃が好ましい。
上記加熱時間は特に制限されないが、0.01~30分が好ましい。
上記親水化処理により形成された塗膜の膜厚としては特に制限されないが、0.02~10μmが好ましく、より好ましくは0.1~5μmである。
【0062】
上記親水化処理を行う金属としては特に制限されないが、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。アルミニウム合金としては、例えばJIS規格の合金番号で1100、1200、1050、3003、7072等のアルミニウム合金が挙げられる。
上記金属は、表面が化成処理されていることが親水化処理皮膜の付着性、耐食性等の観点から好ましい。上記化成処理としては、例えば、クロメート処理が挙げられ、具体的には、アルカリ塩-クロム酸塩法(B.V.法、M.B.V.法、E.W.法、アルロック法、ピルミン法)、クロム酸法、クロメート法、リン酸クロム酸法等の処理法、及び、クロム酸塩を主体とした組成物による無水洗塗布型処理法等が挙げられる。
【実施例0063】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0064】
<重量平均分子量の測定条件>
重合体の重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の条件で測定した。
装置:東ソ‐株式会社製HLC‐8320GPC
検出器:RI
カラム:東ソ‐株式会社製 TSKgel guardcolumn,G3000PWXL(2本)をサンプルの入り口からこの順に連結。
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
校正曲線作成用標準物質:American Polymer Standards社製のポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(ピークトップ分子量(Mp)=900~475,000の間で7種)
校正曲線:上記標準物質のMp値と溶出時間とを基礎にした3次式
溶離液:0.08Mリン酸緩衝液
【0065】
<pH測定>
共重合体組成物のpHは、以下の条件にて測定した。
装置:HORIBA製pH METER D-52
電極:ガラス電極
温度:25℃
【0066】
<重合体及び金属用親水化剤組成物中のリン原子含有基の含有量の測定>
重合体中のリン原子含有基の含有量は、仕込みのリン原子含有基量及び遊離しているリン原子含有基量から算出した。遊離しているリン原子含有基量は陰イオンクロマトグラフィーを用い、以下の条件で測定した。
装置:東ソーイオンクロマト装置IC-2010
検出器:RI
カラム:SHODEX IC SI-90G、SHODEX IC SI-90 4Eをサンプルの入り口からこの順に連結。
カラム温度:25℃
流速:1.2ml/min
検量線作成用標準物質:測定したいイオン種を含む試薬。例えば、次亜リン酸イオンの検量線は富士フィルム和光純薬社製の次亜リン酸ナトリウム一水和物、亜リン酸イオンの検量線に富士フィルム和光純薬社製の亜リン酸、リン酸イオンの検量線に富士フィルム和光純薬社製のリン酸を用いて作成することが可能である。
溶離液:0.1wt%炭酸水素ナトリウム水溶液
サンプル調整:溶離液にてサンプルを希釈して調整した。
【0067】
<固形分の測定>
サンプル約1.2gをアルミ皿に量り採り、水約1gで希釈して均一に広げた。これを130℃オーブン中で1時間乾燥させ、デシケーター中で放冷した後、乾燥後質量を量った。乾燥前後の質量差により固形分(不揮発分)濃度を計算した。金属用親水化剤組成物やポリ(メタ)アクリル酸系重合体の水溶液の濃度としては、特に断りがない限り、上記の手順で測定した固形分を用いた。
【0068】
<塗膜の作成>
以下の操作により、アルミ板上に親水性塗膜を作成した。
乾燥機:東上熱学製自動排出型乾燥機ATO101
焼成条件:220℃、10秒
20mLの蓋付ガラス容器に親水化剤組成物、イオン交換水、4%ポリビニルアルコール水溶液、5%ポリエチレングリコール水溶液を添加し、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールの固形分比率は20/40/40、3成分の合計固形分は5%となるように塗料組成物前駆体を調製した。調整した塗料組成物前駆体に対し、ブチルセロソルブを塗液前駆体の合計固形分に対して5%添加し、塗料組成物を調製した。
調製した塗料組成物を、クロメート処理を施したアルミ板の上にバーコーターを用いて塗工し、直ちに220℃の乾燥機に入れ10秒間乾燥した。その後、室温で空冷し、アルミ板上に作成された親水性塗膜を得た。
【0069】
<塗膜の親水性の評価>
塗膜の親水性の評価は以下の方法により水接触角を測定することにより実施した。
装置:共和界面科学製 接触角計 DM500
測定方法:θ/2法
前処理として、作製した塗膜を常温でイオン交換水に15分間浸漬し、自然乾燥させた。ディスペンサで1.0μLのイオン交換水液滴を作成し、親水化塗膜上に着滴させ、着滴後、30秒後の接触角を測定した。
【0070】
<耐熱性(耐着色性)評価>
塗膜の耐熱性は以下の方法により、加熱処理を行った後の塗膜の着色度合いによって評価を実施した。
乾燥機:ヤマト科学(株)製 送風定温恒温器 DNF400
色差計:日本電色工業(株)製 分光色差計 SE-6000
170℃に昇温した乾燥機に作成した塗膜を入れ、170℃で1時間保管した。乾燥機から取り出し、室温で空冷した。塗膜の色差を測定し、Hazen値が200を超えるものは耐熱性が悪いと判定した。
【0071】
<塗膜密着性評価>
塗膜密着性の評価は以下の方法により実施した。
前処理として、作製した塗膜を常温でイオン交換水に15分間浸漬し、自然乾燥させた。塗膜を動かないようにテープで固定し、表面に10μLのイオン交換水を滴下し、500gの重りを乗せた。なお重りの表面はキムワイプ(登録商標)(日本製紙クレシア株式会社製)を固定して覆い、塗膜と重りの間にキムワイプ(登録商標)(日本製紙クレシア株式会社製)が挟まれるように重りに固定した。30rpmの速さで重りを塗膜と水平方向に15回振動させ、目視から塗膜の剥がれ具合を評価した。塗膜が剥がれ落ち、アルミの光沢が見えているものは塗膜の密着性が悪いと判定した。
【0072】
<実施例1>
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、純水362.7gを予め仕込み、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、撹拌下、沸点還流状態の系中に、80%アクリル酸(以下AAと略す)水溶液900.0g、純水257.3g、45%次亜リン酸ナトリウム一水和物(以下SHPと略す)水溶液79.3g、15%過硫酸ナトリウム(以下NaPSと略す)水溶液50.1gをそれぞれ別々に滴下した。80%AA水溶液は全量を0‐180分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。純水は全量を92‐180分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。45%SHP水溶液は13.9gを0‐18分、残りの65.4gを18‐210分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。15%NaPS水溶液は全量を0‐195分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。全ての滴下終了後、さらに30分間にわたって沸点還流状態を維持して熟成を行い、重合を完結させ、ポリアクリル酸系重合体(1)を得た。70℃以下に冷却した後、80%ジエタノールアミン(以下DEAと略す)水溶液を433.7g、45%SHP水溶液76.2gを加え、金属用親水化剤組成物(1)を得た。
なお上記操作時間においては、昇温後の反応器に、アクリル酸などの単量体の添加を開始した時間を0分とした(以下の実施例、比較例においても同様)。
【0073】
<実施例2>
熟成後の45%SHP水溶液の添加をなくした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属用親水化剤組成物(2)を得た。
【0074】
<実施例3>
熟成後の80%DEA水溶液の添加量を262.9gとし、熟成後の45%SHP水溶液の添加をなくした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属用親水化剤組成物(3)を得た。
【0075】
<実施例4>
熟成後の80%DEA水溶液の添加量を131.4gとし、熟成後の45%SHP水溶液の添加をなくした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属用親水化剤組成物(4)を得た。
【0076】
<実施例5>
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、純水638.5gを予め仕込み、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、撹拌下、沸点還流状態の系中に、80%AA水溶液144.4g、純水158.9g、15%NaPS水溶液58.1gをそれぞれ別々に滴下した。80%AA水溶液は全量を0‐180分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。純水は全量を0-170分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。15%NaPS水溶液は全量を0-185分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。全ての滴下終了後、さらに60分間にわたって沸点還流状態を維持して重合を完結させた。その後、固形分が45%になるように減圧濃縮を行い、ポリアクリル酸系重合体(2)を得た。得られた重合体水溶液を70℃以下に冷却した後、80%DEA水溶液を69.6g、45%SHP水溶液26.5gを加え、金属用親水化剤組成物(5)を得た。
【0077】
<実施例6>
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、純水321.4gを予め仕込み、攪拌下、90℃まで昇温した。次いで、撹拌下、90℃の系中に、80%AA水溶液675.0g、48%水酸化ナトリウム水溶液31.3g、15%NaPS水溶液90.0g、35%亜硫酸水素ナトリウム82.4gをそれぞれ別々に滴下した。80%AA水溶液、48%水酸化ナトリウム水溶液は全量を0-180分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。15%NaPS水溶液は全量を0-185分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。35%亜硫酸水素ナトリウムは14.4gを0-18分、残りの68.0gを18-210分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。全ての滴下終了後、さらに30分間にわたって90℃を維持して重合を完結させ、ポリアクリル酸系重合体(3)を得た。得られた重合体水溶液を70℃以下に冷却した後、80%DEA水溶液を325.3g、45%SHP水溶液116.8gを加え、金属用親水化剤組成物(6)を得た。
【0078】
<実施例7>
熟成後の45%SHP水溶液の添加量を56.2gに変更した以外は実験例2と同様の操作を行い、金属用親水化剤組成物(7)を得た。
【0079】
<比較例1>
熟成後の80%DEA水溶液及び45%SHP水溶液の添加をなくした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属用親水化剤組成物(8)を得た。
【0080】
<比較例2>
減圧濃縮後の80%DEA水溶液及び45%SHP水溶液の添加をなくした以外は実施例5と同様の操作を行い、金属用親水化剤組成物(9)を得た。
【0081】
<比較例3>
減圧濃縮後の80%DEA水溶液の添加量を21.1gとし、45%SHP水溶液の添加をなくした以外は実施例5と同様の操作を行い、金属用親水化剤組成物(10)を得た。
【0082】
<比較例4>
減圧濃縮後の80%DEAの添加量を42.2gとし、45%SHPの添加をなくした以外は実施例5と同様の操作を行い、金属用親水化剤組成物(11)を得た。
【0083】
<比較例5>
減圧濃縮後の45%SHPの添加をなくした以外は実施例5と同様の操作を行い、金属用親水化剤組成物(12)を得た。
【0084】
実施例1~7及び比較例1~5で得られた金属用親水化剤組成物について、塗膜密着性、塗膜の親水性、耐熱性(耐変色性)の評価を行った。結果を表1に示した。
【0085】
【表1】