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特開2022-139299フェイスガード及びフェイスシールド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139299
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】フェイスガード及びフェイスシールド
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220915BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A41D13/11 H
A41D13/11 Z
A62B18/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039605
(22)【出願日】2021-03-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [公開の事実1] 刊行物:「飛沫感染防護マスクフェイスシールドの生産開始について」(PRESS RELEASE) 発行日:2020年4月28日 [公開の事実2] 会見場所:秋田県庁舎 2F 合同記者会見 会見日:2020年5月19日 [公開の事実3] 刊行物:「「ものづくり Team Akita」による医療物資の生産」 発行日:2020年6月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善悦
(72)【発明者】
【氏名】坂口 幸彦
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA20
(57)【要約】
【課題】上方からの飛沫を好適に防ぐことが可能なフェイスガード及びフェイスシールドを提供する。
【解決手段】フェイスガード1Xは、人の顔面50aの粘膜に飛沫が付着することを防止するものである。フェイスガード1Xは、人の頭部50に取り付けられるフレーム2と、フレーム2に取り付けられ、人の顔面50aの少なくとも一部を保護するフェイスシールド3と、を備える。フェイスシールド3は、人の顔面50aをその前方側でガードする前側ガード部10と、人の顔面50aをその上方側でガードする上側ガード部11と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の顔面の粘膜に飛沫が付着することを防止するフェイスガードであって、
前記人の頭部に取り付けられるフレームと、
該フレームに取り付けられ、前記人の前記顔面の少なくとも一部を保護するフェイスシールドと、を備え、
該フェイスシールドは、
前記人の前記顔面をその前方側でガードする前側ガード部と、
前記人の前記顔面をその上方側でガードする上側ガード部と、を備えることを特徴とするフェイスガード。
【請求項2】
前記上側ガード部は、上向き後方に傾斜して形成されている請求項1に記載のフェイスガード。
【請求項3】
前記フェイスシールドは、前記フレームに対して着脱可能に構成されており、
前記前側ガード部と前記上側ガード部とは一体的に形成されている請求項1又は2に記載のフェイスガード。
【請求項4】
前記前側ガード部と前記上側ガード部とは、両側方から形成された切込みによって区分けされている請求項3に記載のフェイスガード。
【請求項5】
前記フレームは、前記フェイスシールドに係止可能な係止突起を有し、
前記上側ガード部には、前記係止突起に係止される切欠き部が形成されている請求項4に記載のフェイスガード。
【請求項6】
前記前側ガード部と前記上側ガード部のそれぞれには、前記係止突起に係止される切欠き部が形成されており、
前記前側ガード部と前記上側ガード部のそれぞれの前記切欠き部は、前記切込みによって区分けされた部位である前記前側ガード部の一部と前記上側ガード部の一部とを重ねたときに、重複する位置にある請求項5に記載のフェイスガード。
【請求項7】
前記人に操作されることによって前記フレームを撓ませる操作部を備え、
該操作部は、前記フレームの面直方向に前記フレームを撓ませるものであり、
前記切欠き部は、前記フレームの延在方向に沿って長く形成された長孔部である請求項5又は6に記載のフェイスガード。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のフェイスガードに用いられるフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔面の粘膜に飛沫が付着することを防止するフェイスガード及びフェイスガードに用いられるフェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、新型コロナウィルスの世界的な蔓延により、ウイルスの感染防止の意識が高まり、唾液等の体液の飛沫が顔面の粘膜に付着することを防止することが可能な防護服、マスク及びフェイスガード等の使用のニーズが高まっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、空気流動装置と、ヘッドギア組立品と、フェイスシールドと、を備えるフェイスガード(同文献には、外科手術用防護組立品と記載。)が開示されている。ヘッドギア組立品は、ヘルメット形状の外シェルを備え、外シェルにフェイスシールドが取り付けられている。
【0004】
具体的には、同文献のフェイスガードは、フェイスシールドに形成された固定タブ及び固定スロットそれぞれが、外シェルに形成された固定スロット及び固定タブのそれぞれに係止することによって、フェイスシールドが外シェルに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010-500127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のフェイスガードは、ヘルメット形状の外シェルによって上方からの飛沫が人の顔面に触れることを防止している。
しかしながら、頭頂部の全体を覆う外シェルを用いず、上方からの飛沫を防いで、快適に装着可能なフェイスガードが求められており、改善の余地があった。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、上方からの飛沫を好適に防ぐことが可能なフェイスガード及びフェイスシールドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフェイスガードは、人の顔面の粘膜に飛沫が付着することを防止するフェイスガードであって、前記人の頭部に取り付けられるフレームと、該フレームに取り付けられ、前記人の前記顔面の少なくとも一部を保護するフェイスシールドと、を備え、該フェイスシールドは、前記人の前記顔面をその前方側でガードする前側ガード部と、前記人の前記顔面をその上方側でガードする上側ガード部と、を備えることを特徴とする。
本発明のフェイスシールドは、フェイスガードに用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフェイスガード及びフェイスシールドによれば、上方から飛沫が顔面の粘膜に付着することを好適に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るフェイスガードが頭部に装着された状態を示す斜視図である。
図2】フレームに取り付ける前のフェイスシールドを示す図である。
図3図1のII部を拡大して示す拡大斜視図であり、上側ガード部を省略して示す図である。
図4】自然状態のフェイスガードの一部を平面視した模式図であり、上側ガード部を省略して示す図である。
図5】摘みが操作されたときの弾性変形状態にあるフェイスガードの一部を平面視した模式図であり、上側ガード部を省略して示す図である。
図6】(a)は、長孔部に通された係止突起を示す模式図である。(b)は、丸孔部に通された係止突起を示す模式図である。
図7】バンドへのフレームの差し込み長さを調整可能な調整突起及び凸条を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
なお、説明の明確化のために、特に付言しない限り、本書における「前後方向」、「上下方向」及び「横方向(幅方向ともいう)」のそれぞれは、フェイスガードを装着した使用者の視点を基準とする方向をいうものとする。
【0012】
また、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。つまり、複数の構成要素が単一の構成要素として構成されていること、一つの構成要素が複数の構成要素に分割されて形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
<概要>
はじめに、本実施形態に係るフェイスガード1Xの概要を、図1を主に参照して説明する。図1は、本実施形態に係るフェイスガード1Xが頭部50に装着された状態を示す斜視図である。
【0014】
本実施形態に係るフェイスガード1Xは、主に医療用として用いられ、人の顔面50aの粘膜に飛沫が付着することを防止するものである。
フェイスガード1Xは、人の頭部50に取り付けられるフレーム2と、フレーム2に取り付けられ、人の顔面50aの少なくとも一部を保護する(顔面50aの少なくとも一部に飛沫が付着することを防止する)フェイスシールド3と、人に操作されることによってフレーム2を撓ませる操作部(摘み4)と、を備える。
フェイスシールド3は、人の顔面50aをその前方側でガードする前側ガード部10と、人の顔面50aをその上方側でガードする上側ガード部11と、を備える。
【0015】
「人の顔面50aの粘膜」は、目、鼻、口のいずれかの粘膜であってもよい。
また、例えば、フェイスガード1Xによって目だけを覆い、マスクで鼻及び口を覆うようにして、顔面50aの粘膜に飛沫が付着することを防ぐようにしてもよい。つまり、フェイスガード1Xのフェイスシールド3は、図1に示すものよりも上下方向に短く形成されているものであってもよい。
「飛沫」とは、厳密には、人の体液(唾液、血液等)を含む飛沫である。
【0016】
フェイスガード1Xにおいては、フェイスシールド3が上側ガード部11を備えることで、上方から飛沫が顔面50aの粘膜に付着することを好適に防ぐことができる。特に、フレーム2は、使用者の頭頂部を覆わずにバンド9と合わせて環状に形成されていることで、快適な装着感を使用者に付与することができる。
【0017】
また、上記フェイスガード1Xに用いられるフェイスシールド3は、上側ガード部11を備えることで、上方からの飛沫が顔面50aの粘膜に付着することを好適に防ぐことができる。
【0018】
<各部の構成>
次に、図1に加え、図2から図6を主に参照して、フェイスガード1Xの各部の構成について具体的に説明する。
図2は、フレーム2に取り付ける前のフェイスシールド3を示す図である。図3は、図1のII部を拡大して示す拡大斜視図であり、上側ガード部11を省略して示す図である。図4は、自然状態のフェイスガード1Xの一部を平面視した模式図であり、上側ガード部11を省略して示す図である。図5は、摘み4が操作されたときの弾性変形状態にあるフェイスガード1Xの一部を平面視した模式図であり、上側ガード部11を省略して示す図である。図6(a)は、長孔部7(、11b)に通された係止突起5を示す模式図、図6(b)は、丸孔部8に通された係止突起6を示す模式図である。
【0019】
本実施形態に係るフェイスガード1Xは、上記のように、フレーム2と、フレーム2の前側に取り付けられるフェイスシールド3と、フレーム2の後端部に接続され、頭部50にフレーム2を取り付けるためのバンド9と、から主に構成されている。
【0020】
[フェイスシールド]
フェイスシールド3は、飛沫の目、鼻、口等への侵入を物理的に遮断するためのものである。例えば、フェイスシールド3は、透明樹脂製(例えば、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート樹脂製)であり、透明である。
【0021】
本実施形態に係るフェイスシールド3は、自然状態においては平板状に湾曲せずに形成されており、フレーム2に取り付ける際に幅方向に湾曲した状態にされ、フレーム2に取り付けたときにその状態を維持されるものである。
このような構成によれば、自然状態において平板状であるため、交換用のフェイスシールド3を保管しやすく好適であるが、このような構成に限定されず、自然状態において湾曲した状態であってもよい。
【0022】
フェイスシールド3は、図1及び図2に示して上記したように、人の顔面50aをその前方側でガードする前側ガード部10と、人の顔面50aをその上方側でガードする上側ガード部11と、を備える。さらに、フェイスシールド3は、前側ガード部10と上側ガード部11とを連結する連結部3bを備える。
【0023】
上側ガード部11は、前側ガード部10の上端部から上向き後方に傾斜して形成されている。上側ガード部11が上向き後方に傾斜して形成されていることに関して、図1に示すように、フレーム2に取り付けられた状態において、丸みを帯びた上側の頭部に沿うように、少なくとも上側ガード部11の中央部が上向き後方に傾斜していればよい。そして、上側ガード部11の両側部は、上方のみに延在していてもよい。
【0024】
上記構成によれば、丸みを帯びた上側の頭部に沿うように上側ガード部11を配置することが可能となる。そして、このように形成された上側ガード部11により、上方から侵入しようとする唾等の飛沫が顔面50aに付着することを効果的に回避することができる。
【0025】
フェイスシールド3は、フレーム2に対して着脱可能に構成されている。前側ガード部10と上側ガード部11とは一体的に形成されている。
上記構成によれば、前側ガード部10と上側ガード部11が一体的に形成されていることで、これらによって構成されるフェイスシールド3のフレーム2に対する着脱が容易となり好適である。
【0026】
しかしながら、このような構成に限定されず、前側ガード部10と上側ガード部11とが別体に構成されて、これらの一部が嵌合して組み付けられるようにしてもよい。これについて、例えば、前側ガード部10と上側ガード部11の一方に形成された不図示のスリットにこれらの他方に形成された不図示の突起が入り込むようにして嵌合する構成であってもよい。
【0027】
前側ガード部10と上側ガード部11とは、両側方から形成された切込み3aによって区分けされている。
上記構成によれば、切込み3aが形成されていることにより、切込み3aに面する、上側ガード部11及び前側ガード部10のそれぞれを重ねるようにして、上側ガード部11を、頭部50を包みこむような形状にしやすくなる。
【0028】
具体的には、切込み3aにおける、下側の縁は、横方向に直線的に延在しており、上側の縁は、横方向中央側に向けて下側の縁との距離が近接するように形成され、下方に円弧状に張り出した形状となっている。また、フェイスシールド3には、両側方から形成された切込み3aの先に、前側ガード部10と上側ガード部11とを連結部3bが形成されている。
【0029】
このように切込み3aが形成されていることで、連結部3bの上端部と下端部とを折り曲げつつ、上側ガード部11をフレーム2に沿って湾曲させた状態で取り付けたときに、上側ガード部11の重なり部11aを前側ガード部10の上端部に沿わせるようにすることができる。
【0030】
前側ガード部10には、後述するフレーム2の一組の係止突起5に係止され、一組の係止突起5に対向する位置に設けられた一組の長孔部7と、後述する一組の係止突起6に係止され、長孔部7よりも幅方向中央側にある一組の丸孔部8と、が上端部近傍に形成されている。長孔部7は、フレーム2にフェイスシールド3が取り付けられた状態において、フレーム2の延在方向に沿って長く形成されている。
長孔部7により、後述する摘み4によりフレーム2を撓ませたときに、係止突起5が移動する領域を確保できることにより、フレーム2(前方部2d)に対する係止解除を行いやすくなる。
【0031】
上側ガード部11には、後述する係止突起5に係止される切欠き部(長孔部11b)が下端部の両側部に形成されている。
この長孔部11bは、フレーム2にフェイスシールド3が取り付けられた状態(つまり、上側ガード部11が湾曲した状態)において、フレーム2の延在方向に沿って長く形成されている。
上記構成によれば、係止突起5が長孔部11b(の縁面)に係止することによって、上側ガード部11の形状(具体的には、上向き後方に傾斜した形状)を保持することができる。特に、切欠き部が長孔部11bであることで、摘み4によりフレーム2を撓ませたときに、係止突起5が移動する領域を確保できることにより、係止解除を行いやすくなる。
【0032】
つまり、前側ガード部10と上側ガード部11のそれぞれには、係止突起5に係止される切欠き部(長孔部7、11b)が形成されている。
前側ガード部10と上側ガード部11のそれぞれの切欠き部(長孔部7、11b)は、切込み3aによって区分けされた部位である前側ガード部10の一部と上側ガード部11の一部とを重ねたときに、重複する位置にある。
後述するフレーム2に設けられた係止突起5は、上側ガード部11の長孔部11bを通り、前側ガード部10の長孔部7を通って外方に突出するように、フェイスシールド3がフレーム2に組み付けられる。
上記構成によれば、切欠き部(長孔部7、11b)が重複する位置にあることで、係止突起5にまとめて係止させることができ、これにより、前側ガード部10及び上側ガード部11それぞれの湾曲形状を維持することができる。
【0033】
[フレーム]
フレーム2は、頭部50の前側(顔面50a)にあてがわれるようにして、後述するフェイスシールド3を安定的に取り付けられるようにするものである。フレーム2は、例えばABS樹脂や、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂によって形成され、後述するバンド9よりも高い剛性を有して定形性を有するように形成されている。
【0034】
フレーム2は、図1に示すように、人の顔面50aに沿うように湾曲して幅方向(頭部50の幅方向)に延在し、操作部(摘み4)を基点として撓み可能に形成されている。フレーム2は、フェイスシールド3に係止可能な係止突起5、6を有する。係止突起5は、フレーム2において、摘み4よりも側方側に配置されている。
【0035】
「湾曲して幅方向に延在」とは、幅方向の一部において湾曲し、他の一部において直線的に延在しているものを含む。本実施形態に係るフレーム2は、平面視略三日月状に形成されている。
「操作部を基点として撓み可能」について、具体的には、フレーム2における操作部(摘み4)に接続されている側方側の部位が、摘み4から曲げ荷重が加わることによって、顔面50aに向かって撓むことが可能となるように形成されている。
【0036】
上記構成によれば、湾曲して形成されたフレーム2において、係止突起5が操作部(摘み4)よりも側方側に配置されていることで、係止突起5よりも前方側(幅方向中央側)に配置されているものと比較して、係止突起5の係止を解除させるようにフレーム2を撓ませやすくなる。
つまり、摘み4が操作されたときに、摘み4よりも前方側(幅方向中央側)に配置されたフレーム2の部位は、図4に示す位置から図5に示す位置へと顔面50a側に移動するため、曲げモーメントが生じにくい。一方で、このとき、フレーム2における摘み4よりも側方側(中央側に対する外側)の部位は、摘み4を起点とする曲げモーメントが生じることになる。
【0037】
このため、摘み4よりも側方側に係止突起5が配置されていることで、フレーム2における係止突起5が設けられた部位の撓み量は、前方側に設けられた部位の撓み量と比較して大きくなる。したがって、摘み4を操作したときに、係止突起5の位置及び角度を変えて長孔部7から係止突起5の係止を解除しやすくなる。
【0038】
図3に示すように、操作部(摘み4)は、フレーム2の面直方向にフレーム2(前方部2dの一部)を撓ませるものであり、フレーム2に設けられており、フレーム2の延在方向に対して、フレーム2の面直方向に蛇行するように形成されている。
本実施形態においてはフレーム2と摘み4とは連続して形成されているため、「フレーム2の面直方向」とは、厳密には「フレーム2における摘み4に隣接する部位の面直方向」である。そして、「面直方向にフレーム2を撓ませる」とは、面直方向成分を含む向きでフレーム2を撓ませるという意味であり、完全な直交方向のみに撓ませるという意味ではない。
【0039】
操作部としての本実施形態に係る摘み4は、フレーム2の他の部位から顔面50aに近接するように、平面視V字状に蛇行するように形成されている。しかしながら、摘み4は、使用者が摘み4を摘むことでフレーム2の周回方向(円弧方向)の長さを変更可能な構成であればよい。例えば、操作部は、半円弧状、W字状や、更に多く屈曲部を有して蛇行している構成であってもよい。
【0040】
また、「操作部」は、例えば、フレーム2の中央部と両側方部とが摺動可能に接続されており、摺動位置を変更した状態に維持することによってフレーム2の撓み状態を維持できる操作部であってもよい。
なお、本実施形態においては、摘み4を摘むことによって、狭まる周回方向の長さは、0.2mmから0.3mm程度である。
【0041】
また、摘み4は、顔面50a側とは逆側(前方側)に突出するように形成されていてもよい。この場合には、摘み4に位置的干渉を回避するため、摘み4の前方への突出を許容する不図示の挿通孔(又は溝)がフェイスシールド3に形成されていると好ましい。
そして、この前方側に突出する摘み4と不図示の挿通孔とを、フェイスシールド3の位置決め機能を有する係止突起6と丸孔部8との代わりに機能させるようにしてもよい。
上記構成によれば、蛇行する操作部(摘み4)を摘むようにして、フレーム2の一部の撓み量を調整することができる。
【0042】
摘み4には、図3及び図4に示すように、上下方向に延在する複数の細かな滑り止めの突起(突条4a)が形成されている。具体的には、本実施形態に係る突条4aは平面視三角形状に形成されており、摘み4の折り返し部分を挟んで4つずつ設けられている。
なお、滑り止めの突起としては、突条4aの他に、ローレット状の突起であってもよい。
【0043】
フレーム2は、図3に示すように、人の額に沿うように形成された額当て部2aと、額当て部2aに対して空間を開けて前方にあり、フェイスシールド3が取り付けられる前方部2dと、を備える。操作部(摘み4)は、前方部2dに設けられて、使用者によって操作されたときに前方部2dを撓ませる。
【0044】
具体的には、前方部2dは、装着者から見て額当て部2aよりも前方に配置されており、平面視においてフェイスガード1Xの中心から額当て部2aよりも外側に配置されている。
換言すると、額当て部2a及び前方部2dはともに全体として円弧状に形成されており、平面視において、フェイスガード1Xの中心からの前方部2dの前方への張り出し量が額当て部2aの前方への張り出し量よりも大きく形成されている。
【0045】
上記構成によれば、摘み4が額当て部2aよりも前方にある前方部2dに設けられていることで、額当て部2aを人の額に沿わせた状態で、使用者が摘み4を操作することによって、額当て部2aを変形させずに前方部2dを撓ませることができる。このため、人の額に触れる額当て部2aを変形させないことで人に不快感を生じさせずに、後述する係止突起5による係止を解除して、フェイスシールド3を着脱することができる。
【0046】
額当て部2aにおける側方の端部2bと前方部2dにおける側方の端部2eとが接続されており、額当て部2aと前方部2dとは一体的に形成されている。
上記構成によれば、額当て部2aと前方部2dが一体的に形成されていることで、これらを含むフェイスガード1Xの頭部50への取付けが容易となる。
【0047】
額当て部2aは、前方部2dよりも全体として変形しにくく形成されている。
本実施形態においては、前方部2dに、蛇行して形成された摘み4が設けられているのに対し、額当て部2aには、蛇行する部位が設けられていないことで、額当て部2aは前方部2dよりも全体として変形しにくく形成されている。
上記構成によれば、額当て部2aの額への当接状態を好適に維持したまま、フェイスシールド3の交換(着脱)を行うことができる。
例えば、前方部2dは額当て部2aとともに変形しにくく(剛性が高く)構成されていてもよい。このように構成されていても、フェイスシールド3を変形させるようにして前方部2d(フレーム2)に取り付けるようにしてもよい。
【0048】
図3に示すように、係止突起5、6は、操作部(摘み4)に対して側方側及び中央側のそれぞれに設けられている。
具体的には、係止突起5は摘み4に対して側方側に設けられており、係止突起6は摘み4に対して中央側に設けられている。
【0049】
上記構成によれば、係止突起5が摘み4に対して側方側及び中央側に設けられていることで、一方(係止突起5)の係止を解除したときでも他方(係止突起6)によるフェイスシールド3の位置規制を維持できる。このため、フェイスシールド3がフレーム2から急に外れることを防止できる。
【0050】
本実施形態においては、右利きの人、左利きの人の両者が使用しやすいように、摘み4は、前方部2dの中央部よりも両側方側に2個設けられている。そして、2個の係止突起5のそれぞれは、2個の摘み4のそれぞれよりも側方側に設けられ、2個の係止突起6のそれぞれは、2個の摘み4のそれぞれよりも中央側に設けられている。
【0051】
しかしながら、係止突起5の係止状態を人の操作により解除できればよく、本発明はこのような構成に限定されない。具体的には、摘み4よりも側方側にある係止突起5は、前方部2dの中央部に対して片側にのみ設けられ、摘み4よりも中央側のいずれかの位置に係止突起6が設けられていてもよい。
【0052】
図6(b)に示す中央側にある切欠き部(丸孔部8)における係止突起6に対する隙間8aは、図6(a)に示す側方側にある切欠き部(長孔部7(、11b))における係止突起5に対する隙間7aより狭い。
より具体的には、図6(b)に示す丸孔部8は、図6(a)に示す長孔部7(、11b)よりもフレーム2の延在方向(頭部50の幅方向)の隙間8aが狭く形成されている。
【0053】
上記構成によれば、丸孔部8における係止突起6に対する隙間8aが、長孔部7(、11b)における係止突起5に対する隙間7aより狭いことで、丸孔部8に対する係止突起6の係止状態を安定させ、フェイスシールド3のフレーム2への取付状態を安定させることができる。
特に、丸孔部8における係止突起6に対する隙間8aが狭いことで、係止突起6及び丸孔部8は、両側部にある係止突起5を長孔部7(、11b)に通すため(フレーム2にフェイスシールド3を取り付けるため)の位置決め(及び傾き決め)となるため好適である。
【0054】
そして、長孔部7(、11b)における隙間7aが隙間8aよりも広いことで、フェイスシールド3をフレーム2から外すときに、係止突起6を含む前方部2dを弾性変形させ、係止突起6の位置及び傾きを変更して長孔部7(、11b)との係合を容易に解除することができる。
しかしながら、このような構成に限定されず、前方部2dの中央側に一組設けられた丸孔部8を長孔状に形成してもよい。
【0055】
図6(a)に示すように、係止突起5は、フェイスシールド3に対する係止状態において、長孔部7(、11b)の一端7c側にある縁面7bに係止し、操作部(摘み4)は、人に操作される(摘まれる)ことにより、係止突起5を長孔部7(、11b)の他端7d側に変位させる。
具体的には、係止突起5の少なくとも一部は、フレーム2の前方部2dが自然状態にあるときに、フェイスシールド3に設けられた長孔部7(、11b)の延在方向外側(一端7c側)の縁面7bと同じ位置か、縁面7bよりも前方部2dの延在方向外側に配置されている。
そして、係止突起5は、摘み4が人に操作された(摘まれた)ときに、長孔部7(、11b)の一端7c側の縁面7bよりも延在方向内側(他端7d側)に配置可能に構成されている。
【0056】
使用者は、図5に示すように、操作部(摘み4)を操作することにより、係止突起5を、長孔部7(、11b)における一端7c側の縁面7bに係止する位置から他端7d側に変位させて、係止解除を行うことができる。
【0057】
図4及び図6(a)に示すように、係止突起5は、フェイスシールド3に対する係止状態において、フェイスシールド3よりも前方側で長孔部7(、11b)の一端7c側よりも先に突出して形成された返し5aを有する。
本実施形態に係る「返し5a」とは、長孔部7(、11b)の周囲の少なくとも一部に、より確実に係止するためものであり、係止突起5の突出方向(及び長孔部7(、11b)の穿孔方向)に交差する方向に突出する部位である。
【0058】
本実施形態に係る返し5aは、係止突起5の突出方向先端に向かうにつれて先細りとなる平面視三角形状に形成されており、上下方向に延在している。特に、返し5aにおけるフェイスシールド3に対向する面は、係止突起5に直交している。
上記構成によれば、係止突起5が返し5aを有することで、フェイスシールド3がフレーム2から抜け落ちることを防止することができる。特に、返し5aにおけるフェイスシールド3に対向する面が、係止突起5に直交していることにより、係止突起5を長孔部7(、11b)に通すことで、返し5aに長孔部7(、11b)の周囲の一部に係止させやすくなる。
【0059】
特に、返し5aは、係止突起5の突出方向先端に向かうにつれて先細りとなるように形成されていることで、フェイスシールド3をフレーム2に容易に取り付けることができる。
フェイスシールド3をフレーム2に取り付けるときは、自然状態において、長孔部7(、11b)よりも前方部2dの延在方向外側にある返し5aを含む係止突起5に、長孔部7(、11b)を通さなくてはならない。上記のように、返し5aが係止突起5の突出方向先端に向かうにつれて先細りとなっていることで、長孔部7(、11b)の縁部分を係止突起5の返し5aに押し付けるようにして、係止突起5に押圧して前方部2dを撓ませることができる。このようにすれば、係止突起5の位置及び傾きが変わり、長孔部7(、11b)に係止突起5を通すことができる。このため、摘み4を操作せずともフェイスシールド3をフレーム2に取り付けることが可能となる。
【0060】
[バンド]
次に、バンド9、及びバンド9とフレーム2との接続位置を調整する調整部(調整突起2f)について、図7を主に参照して説明する。図7は、バンド9へのフレーム2の差し込み長さを調整可能な調整突起2f及び凸条9aを示す断面図である。
バンド9は、頭部50に装着するための柔軟性(例えばゴム製)を有して中空に形成されている。
バンド9は、人の頭部50に取り付けられるように、フレーム2とともに周回状(環状)に形成されている。フレーム2は、バンド9との接続位置を調整可能な調整部(調整突起2f)を有する。
【0061】
本実施形態においては、フレーム2の両端部におけるバンド9に挿し込む部位であって、横方向(フレーム2の両端部の延在方向に直交する方向)の外側に、上下に延在する3つの調整突起2fが前後方向に距離を空けて横方向外側に突出して形成されている。
また、バンド9の両端部におけるフレーム2の両端部に挿し込まれる部位であって、バンド9の内壁面のうち調整突起2fに対向する面に、上下に延在する3つの凸条9aが前後方向に距離を空けて調整突起2f側に突出して形成されている。
【0062】
上記構成によれば、調整部(調整突起2f)により、フェイスガード1Xを取り付ける人の頭部の大きさに適した長さに、フレーム2とバンド9の接続位置を調整することができる。具体的には、フレーム2の両端部をバンド9の両端部に挿し込む際に、調整突起2fが凸条9aを乗り越える個数によって、挿し込み量を調整でき、調整突起2fと凸条9aが係合することで、その挿し込み位置を確定することができる。
【0063】
なお、本実施形態に係る調整部としては、3つの調整突起2fと3つの凸条9aの係合によるものとして説明したが、フレーム2の挿し込み位置を安定させることができれば、本発明はこのような構成に限定されない。
例えば、調整突起2fと凸条9aの個数は任意であり、同数でなくてもよい。さらには、調整突起2fと凸条9aの双方が形成されているものに限定されず、例えばいずれか一方のみが形成され、フレーム2又はバンド9との摩擦によって係合するものであってもよい。
【0064】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
人の顔面の粘膜に飛沫が付着することを防止するフェイスガードであって、
前記人の頭部に取り付けられるフレームと、
該フレームに取り付けられ、前記人の前記顔面の少なくとも一部を保護するフェイスシールドと、を備え、
該フェイスシールドは、
前記人の前記顔面をその前方側でガードする前側ガード部と、
前記人の前記顔面をその上方側でガードする上側ガード部と、を備えることを特徴とするフェイスガード。
(2)
前記上側ガード部は、上向き後方に傾斜して形成されている(1)に記載のフェイスガード。
(3)
前記フェイスシールドは、前記フレームに対して着脱可能に構成されており、
前記前側ガード部と前記上側ガード部とは一体的に形成されている(1)又は(2)に記載のフェイスガード。
(4)
前記前側ガード部と前記上側ガード部とは、両側方から形成された切込みによって区分けされている(3)に記載のフェイスガード。
(5)
前記フレームは、前記フェイスシールドに係止可能な係止突起を有し、
前記上側ガード部には、前記係止突起に係止される切欠き部が形成されている(4)に記載のフェイスガード。
(6)
前記前側ガード部と前記上側ガード部のそれぞれには、前記係止突起に係止される切欠き部が形成されており、
前記前側ガード部と前記上側ガード部のそれぞれの前記切欠き部は、前記切込みによって区分けされた部位である前記前側ガード部の一部と前記上側ガード部の一部とを重ねたときに、重複する位置にある(5)に記載のフェイスガード。
(7)
前記人に操作されることによって前記フレームを撓ませる操作部を備え、
該操作部は、前記フレームの面直方向に前記フレームを撓ませるものであり、
前記切欠き部は、前記フレームの延在方向に沿って長く形成された長孔部である(5)又は(6)に記載のフェイスガード。
(8)
(1)から(7)のいずれか一項に記載のフェイスガードに用いられるフェイスシールド。
【符号の説明】
【0065】
1X フェイスガード
2 フレーム
2a 額当て部
2b 端部
2d 前方部
2e 端部
2f 調整突起(調整部)
3 フェイスシールド
3a 切込み
3b 連結部
4 摘み(操作部)
4a 突条
5 係止突起
5a 返し
6 係止突起
7 長孔部(切欠き部)
7a 隙間
7b 縁面
7c 一端
7d 他端
8 丸孔部(切欠き部)
8a 隙間
9 バンド
9a 凸条
10 前側ガード部
11 上側ガード部
11a 重なり部
11b 長孔部(切欠き部)
50 頭部
50a 顔面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7