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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139301
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
E04H1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039607
(22)【出願日】2021-03-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 電気通信回線を通じての公開 令和2年9月8日、出願人ウェブサイト(フロントページは下記アドレス)にてサービスの提供を開始 https://www.sekisuihouse.co.jp/kodate/kokagelounge/
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮地 宏和
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕也
(72)【発明者】
【氏名】末澤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA22
(57)【要約】
【課題】上階から、吹抜けを介して下階にいる家族の気配や様子を感じることができて、家族との間に柔らかい繋がり感を生み出せるような特別な居場所を、吹抜け開放的な雰囲気を損なわずに合理的な構造に創出する。
【解決手段】下階のパブリックゾーンの上方に吹抜けが設けられ、上階にはプライベートゾーンが設けられて、階段3と上階との接続箇所からプライベートゾーンに行き来するための廊下231、232、233が吹抜けに面して吹抜けの周囲を回り込むように設けられ、廊下233の一部が吹抜けを囲む壁面51に沿うように拡幅されて、パブリックゾーンの上方に張り出す平面視三角形状の張出床4が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階と上階とが吹抜けを介して連通し、前記吹抜けに面して下階と上階とを往来するための階段が設置された住宅において、
下階にはリビングとダイニングとが連続するパブリックゾーンが設けられて、その上方に前記吹抜けが設けられ、
上階には寝室、子供室その他の個室を含むプライベートゾーンが設けられて、
前記階段と上階との接続箇所から前記プライベートゾーンに行き来するための廊下が、前記吹抜けに面して吹抜けの周囲を回り込むように設けられ、
前記廊下の一部が前記吹抜けを囲む少なくとも一つの壁面に沿うように拡幅されて、前記パブリックゾーンの上方に張り出す平面視三角形状の張出床が設けられている
ことを特徴とする住宅。
【請求項2】
請求項1に記載された住宅において、
前記張出床は、前記廊下と前記プライベートゾーンとを接続する動線の屈折箇所に設けられている
ことを特徴とする住宅。
【請求項3】
請求項1に記載された住宅において、
前記張出床は、前記廊下における前記プライベートゾーンとは反対側の終端部に設けられている
ことを特徴とする住宅。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載された住宅において、
前記階段の中間部に踊り場が設けられて、
前記張出床と前記踊り場とが前記吹抜けの平面視において相対する位置に配置されている
ことを特徴とする住宅。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載された住宅において、
前記吹抜けの上方の天井面全体が、棟直下から二方向に下降傾斜する勾配天井となされ、
少なくとも一方に下降傾斜する天井面が前記吹抜けを囲む一つの壁面に接続する
ことを特徴とする住宅。
【請求項6】
請求項5に記載された住宅において、
下降傾斜する天井面が接続する前記壁面の上階部分には屋外に面する窓開口が設けられ、
前記張出床は、少なくともその一辺縁を前記窓開口が設けられた壁面に沿わせて配置されている
ことを特徴とする住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は住宅に関し、より詳細には、2階層以上の床面を有して、その下階と上階とが吹抜けを介して連通する住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
2階層以上の床面を有する戸建て住宅等において、リビングルームとダイニングルームとを連続させた広めのパブリックゾーン(家族共用空間)を下階に設け、そのパブリックゾーンから上階に上がる階段を設けるとともに、パブリックゾーンの上方を吹抜けにした空間構成が公知である。このような空間構成を採用すると、パブリックゾーンで感じられる気積が大きくなって開放感や明るさが増すとともに、上階のプライベートゾーンにいる家族の気配を感じられる緩やかな繋がり感が生まれる。本出願人も、そのような空間を有する戸建て住宅の間取りを特許文献1~4等に開示している。
【0003】
また、特許文献5、6等には、そのような吹抜けに面して配置される階段の上り口や中間部分に広めの踊り場(スキップフロア)を設けて、その踊り場を寛ぎのためのスペースとしたり、子供の遊びや学習のためのスペースとしたりする構成も開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-311316号公報
【特許文献2】特開2001-336294号公報
【特許文献3】特開2002-147035号公報
【特許文献4】特開2002-194899号公報
【特許文献5】特開2009-046925号公報
【特許文献6】特開2020-117941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような吹抜けを有する住宅においては、上階の間取りが、吹抜けに面する廊下と、壁や建具で区切られた個室とで構成されることが一般的であるが、このような空間では、上階から下階にいる家族の気配を感じにくい面がある。そこで、本願が開示する発明は、特に上階からも、吹抜けを介して下階にいる家族の気配や様子を感じることができて、家族との間に柔らかい繋がり感を生み出せるような特別な居場所を、従来とは異なる視点から創出しようとしたものである。かかる特別な居場所を、吹抜け自体の開放的な雰囲気を損なわない必要最小限の面積と合理的な構造によって実現することが、この発明の解決課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するため、本願が開示する発明の住宅は、下階と上階とが吹抜けを介して連通し、前記吹抜けに面して下階と上階とを往来するための階段が設置された住宅において、下階にはリビングとダイニングとが連続するパブリックゾーンが設けられて、その上方に前記吹抜けが設けられ、上階には寝室、子供室その他の個室を含むプライベートゾーンが設けられて、前記階段と上階との接続箇所から前記プライベートゾーンに行き来するための廊下が、前記吹抜けに面して吹抜けの周囲を回り込むように設けられ、前記廊下の一部が前記吹抜けを囲む少なくとも一つの壁面に沿うように拡幅されて、前記パブリックゾーンの上方に張り出す平面視三角形状の張出床が設けられている、との構成を採用する。
【0007】
前述の構成において、前記張出床は、前記廊下と前記プライベートゾーンとを接続する動線の屈折箇所に設けられている、ものとすることができる。
【0008】
あるいは、前記張出床は、前記廊下における前記プライベートゾーンとは反対側の終端部に設けられている、ものとすることもできる。
【0009】
また、本願が開示する発明の住宅は、前記階段の中間部に踊り場が設けられて、前記張出床と前記踊り場とが前記吹抜けの平面視において相対する位置に配置されている、との構成を採用する。
【0010】
さらに、前記吹抜けの上方の天井面全体が、棟直下から二方向に下降傾斜する勾配天井となされ、少なくとも一方に下降傾斜する天井面が前記吹抜けを囲む一つの壁面に接続する、との構成を採用する。
【0011】
下降傾斜する天井面が接続する前記壁面の上階部分には屋外に面する窓開口が設けられ、前記張出床は、少なくともその一辺縁を前記窓開口が設けられた壁面に沿わせて配置されていると、より好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本願が開示する発明に係る住宅は、吹抜けに面してパブリックゾーンの上方に張り出す張出床を具備しているので、この張出床から下階を見下ろせば、上階から下階にいる家族の気配や様子を適度な距離感で感じることができる。この張出床は、家族との間に柔らかい繋がり感を生み出せるような特別な居場所になる。この張出床の平面形状を三角形にして、吹抜けを囲む壁面の入隅部に沿わせることで、吹抜け自体の開放的な雰囲気を損なうことなく、特別な居場所を創出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願が開示する発明の第1実施形態に係る住宅の、外構を含む1階平面図である。
図2】前記住宅の2階平面図である。
図3】前記住宅の吹抜け周りの空間形態を示す縦断面パース図である。
図4】前記住宅の吹抜け周りの空間イメージを示す内観パース図である。
図5】前記住宅の吹抜け周りの空間イメージを示す内観CGである。
図6】本願が開示する発明の第2実施形態に係る住宅の、外構を含む1階平面図である。
図7図6に示した住宅の2階平面図である。
図8図6図7に示した住宅の吹抜け周りの空間形態を示す縦断面パース図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、複数の実施形態について説明する際には、空間の性格や利用態様が共通する構成要素に同一の数字符号を付す。
【0015】
(第1実施形態)
図1図5は、本願が開示する発明の第1実施形態に係る2階建ての戸建て住宅を示す。この住宅1は、敷地の南側に庭11と車庫12を設けて、建物本体が敷地の北側寄りに配置されている。建物本体は棟を東西方向に向けた切妻型の勾配屋根を有し、南側の壁面13と北側の壁面14には大きい窓開口が設けられている。
【0016】
1階(図1)は、東側に玄関101と広めの玄関ホール102が設けられ、玄関ホール102の北側には、趣味を楽しんだり知人を招いて交流したりできるパーソナルサロン103が配置されている。玄関ホール102には西に延びる短い廊下131が接続されて、その廊下131は1階の中央部分に設けられた広いリビング111に繋がっている。
【0017】
リビング111は南側の壁面13に設けられた大きい窓開口に面しており、その窓開口の屋外側にはリビング111から出入り可能なテラス16が設けられている。リビング111は、その北側に配置されたダイニング112およびスキップ式の階段3と一体的に連続する空間になっており、この空間が1階のパブリックゾーンを形成している。ダイニング112は北側の壁面14に設けられた大きい窓開口に面しており、その窓開口の屋外側にはアウトドアダイニング17が設けられている。
【0018】
キッチン113はダイニング112と玄関ホール102との間に配置され、キッチン113の南側にはパントリー121が付設されている。玄関ホール102とリビング111とを繋ぐ廊下131の南側にはトイレ124と収納室125が配置されている。階段3の北側にはダイニング112から西に延びる廊下132が設けられて、洗濯室126、洗面脱衣室122および浴室123へと繋がり、最も西側にはゲストルーム104が設けられている。
【0019】
2階との往来に利用される階段3は、中間部分に広めの踊り場31(スキップフロア)を有して、その踊り場31よりも下側の階段3と上側の階段3とが昇降方向を直交させるように配置されている。踊り場31は、例えば家族2~3人が音楽演奏やダンス等を披露できるミニステージのような場所になっており、リビング111側には低めの手摺32が設けられている。そして、この踊り場31を含めた階段3と、リビング111の略半分のスペースの上方が吹抜けになっている。図1では、上方の吹抜けを一点鎖線による対角交差線で表している。
【0020】
2階(図2)には、吹抜けに面する廊下231、232、233が、吹抜けの三方を回り込むように設けられている。それらの廊下231、232、233からは、手摺越しに1階のリビング111、ダイニング112、踊り場31等を見下ろすことができる。なお、図2では、2階床面の吹抜け(床がない部分)を網点で表している。
【0021】
階段3に接続して吹抜けの北側に設けられる廊下231は、その北側に配置されたトイレ221、クローゼット222および仕事室215に繋がる動線になる。北側の廊下231から屈折して吹抜けの東側に沿う廊下232は、その東側に設けられたラウンジ216と一体化されている。このラウンジ216は、例えば音楽が流れる雰囲気の中で数名以上の家族やゲストがゆったりと団らんできるような大空間であり、上階に設けられる第二のパブリックゾーンとなる。ラウンジ216の南側の壁面53と北側の壁面54には大きい窓開口が設けられて、それぞれの窓開口の屋外側にはバルコニー56、57が設けられている。
【0022】
吹抜けの南側の廊下233は、南側の壁面53に沿って延び、子供室212、213に繋がっている。子供室212、213は、一つの空間の中央部に天井まで達しない衝立壁241で囲ったウォークインクローゼット214を設けて、2人分のスペースに分割されている。
【0023】
ラウンジ216の東側には、壁面52を介して主寝室211が設けられている。主寝室211への出入口は、ラウンジ216の東寄りに立設された、天井まで達しない高さの衝立壁242の背後に隠れている。主寝室211にはウォークインクローゼット217とインナーバルコニー218が付設されている。
【0024】
吹抜けと子供室212、213とを区画する壁面51、およびラウンジ216と主寝室211とを区画する壁面52は、ともに天井まで立ち上がっている。それら両壁面51、52に挟まれた大空間の上方の天井は、図3に示すように、東西方向に配された棟の直下から北側および南側に屋根なりで下降傾斜する船底形の勾配天井6になっている。なお、図2では、上方の勾配天井6を一点鎖線による対角交差線で表している。このように、下階から勾配天井6まで吹抜けになった大空間の下に様々な性格の居場所を設けることで、それぞれの場所にいる家族全体が、両勾配の大きな屋根によって包まれるような安心感が生まれる。
【0025】
本願が開示する発明の要部は、廊下の一部を拡幅して下階のパブリックゾーンの上方に張り出すように設けられた張出床にある。例示形態における張出床4は平面視直角二等辺三角形状をなしており、南側の廊下233が子供室212、213の出入口511に接続する動線の屈折箇所に、壁面51に沿うようにして設けられている。廊下233と一体化された張出床4の広さは2、3脚の椅子と小テーブルを置ける程度で、吹抜けに対して斜めに配置された辺縁部41には手摺が取り付けられている。この張出床4は、プライベートゾーンに繋がる動線の途中に設けられた「たまり場」のような居場所であるとともに、上階から吹抜けを介して下階の様子を見下ろすことができる「見晴らし場」でもある。日中であれば、南側の窓開口を背にして明るい吹抜け空間を見ることができるので、家族全体の気配を感じることで得られる安心感も一層、増幅される。
【0026】
さらに、吹抜けの平面視において階段3の踊り場31と張出床4とが相対する位置に配置されているため、図4および図5に示すように、張出床4からは、踊り場31の床面とリビング111、ダイニング112の床面との高低差が強調されて、パブリックゾーン全体が一層、立体的に見える。そして、踊り場31にいる家族とは、かなり近い距離感で様子を見たり会話したりすることができる。
【0027】
ただし、家族といえども互いに真正面から視線を向き合わせると、しっかりと見られている緊張感や気恥ずかしさが強まって、あまり寛げなくなることもある。その点、この張出床4は、手摺が取り付けられる辺縁部41が、吹抜けを囲む壁面51、53や、階段3、廊下231、232、233の移動方向に対して斜めになっているので、空間を共有していながらも互いの視線が真正面から向き合わず、適度にすれ違って、緊張感や気恥ずかしさが緩和される。このように、あえて正面性を外した位置関係を採用することで、家族が互いの気配は感じながらも、それに邪魔されずに、それぞれの世界に浸ることができやすくなる。
【0028】
(第2実施形態)
図6図7は、本願が開示する発明の第2実施形態に係る戸建て住宅を示す。この住宅1は、切妻型の勾配屋根を有する2階建ての主屋1Aが、その棟を東西方向に向けて敷地の北側寄りに配置され、主屋1Aの中間部分には南側に延び出す1階建ての下屋1Bが接続されて、下屋1Bの屋根が主屋1Aの屋根の延長面上に差し掛けられた形態をなしている。下屋1Bの東側はエントランスゾーン18となされ、下屋1Bの西側には一部が壁で囲われた屋根のない庭空間(ロジア)19が設けられている。
【0029】
建物本体の1階(図6)は、東側に玄関ホール102と土間ホール105が設けられ、土間ホール105の西側には和室106が配置されている。
【0030】
玄関ホール102の西側には2階との往来に利用されるスキップ式の階段3が設置され、階段3の南側から下屋1Bまでが、屋外への開放感にあふれるリビング111となっている。リビング111は南側の壁面13に設けられた大きい窓開口に面しており、その窓開口の屋外側には深い軒の出を有する半屋外のテラス16が設けられて、リビング111から出入りできるようになっている。
【0031】
階段3の西側には、ダイニングキッチン114と、趣味の創作等に利用可能な工房107が配置されており、ダイニングキッチン114にはパントリー121が付設されている。ダイニングキッチン114と玄関ホール102とは、階段3の北側に設けられた廊下133を介しても繋がっている。
【0032】
階段3は、中間部分に広めの踊り場31(スキップフロア)を有して、その踊り場31よりも下側の階段3と上側の階段3とが昇降方向を揃えて、踊り場31の東西両側に配置されている。踊り場31は、椅子1脚と小テーブルを置ける程度の広さで、リビング111側にいる家族の様子を見ながら寛げるような場所になっている。踊り場31の下側は収納室127で、北側の廊下133から出入りできる。
【0033】
この踊り場31を含めた階段3とリビング111とが一体的に連続して、1階のパブリックゾーンを形成しており、階段3とリビング111の一部(主屋1Aの部分)の上方が吹抜けになっている。また、リビング111の南側(下屋1Bの部分)の上方は、南側に下降傾斜する片流れの勾配天井61になっている。なお、図6では、上方の吹抜けを一点鎖線による対角交差線で表している。
【0034】
2階(図7)には、吹抜けに面する廊下234、235が、吹抜けの二方を回り込むように設けられている。それらの廊下からは、手摺越しに階段3の踊り場31や1階のリビング111を見下ろすことができる。なお、図7では、2階床面の吹抜け(床がない部分)を網点で表している。
【0035】
階段3との接続箇所から折り返して吹抜けの北側に沿う廊下234は、その北側および西側に配置された子供室212、213、トイレ221、洗面室223、浴室224、主寝室211、ウォークインクローゼット217等のプライベートゾーンに繋がっている。したがって、この廊下234は、家族全員が日常的に頻繁に行き来する動線となる。子供室212、213は、廊下234に面する一つの空間に、天井まで達しない衝立壁243を平面視略T字形に立設することで、開放感を有する2人分のスペースを間仕切っている。
【0036】
階段3との接続箇所から吹抜けの東側に沿う廊下235は、南側の壁面53まで延びている。南側の壁面53には大きい窓開口が設けられて、その屋外側にはバルコニー56が設けられている。
【0037】
吹抜け、廊下234、子供室213と、主寝室211や洗面室223とを区画する壁面51は天井まで立ち上がっている。この壁面51と、2階の東側外壁を構成する壁面52とによって挟まれた空間の上方の天井は、図8に示すように、東西方向に配された棟の直下から北側および南側に屋根なりで下降傾斜する船底形の勾配天井6になっている。なお、図7では、上方の勾配天井6を一点鎖線による対角交差線で表している。このように、下階から勾配天井6まで吹抜けになった大空間の下に様々な性格の居場所を設けることで、それぞれの場所にいる家族全体が、両勾配の大きな屋根によって包まれるような安心感が生まれる。
【0038】
この第2実施形態では、東側の廊下235の終端部(行き止まり部分)を、南側の壁面53に沿うように平面視直角二等辺三角形状に拡幅して、張出床4が設けられている。廊下235と一体化された張出床4の広さは1~2脚の椅子と小テーブルを置ける程度で、吹抜けに対して斜めに配置された辺縁部41には手摺が取り付けられている。この張出床4は、プライベートゾーンに繋がる日常的な動線の反対側に設けられた「離れ」のような特別感のある居場所であるとともに、上階から吹抜けを介して下階の様子を見下ろすことができる「見晴らし場」でもある。日中であれば、南側の窓開口を背にして明るい吹抜け空間を見ることができるので、家族全体の気配を感じることで得られる安心感も一層、増幅される。
【0039】
前述した第1実施形態の住宅1に設けられる張出床4と同様に、この張出床4も、吹抜けの平面視において階段3の踊り場31と相対する位置に配置されているため、張出床4からは、踊り場31の床面とリビング111やダイニングキッチン114の床面との高低差が強調されて、1階のパブリックゾーン全体が一層、立体的に見える。そして、踊り場31にいる家族とは、かなり近い距離感で様子を見たり会話したりすることができる。
【0040】
さらに、手摺が取り付けられる辺縁部41が、吹抜けを囲む壁面51、52、53や、階段3、廊下234、235の移動方向に対して斜めになっているので、空間を共有している家族同士の緊張感や気恥ずかしさが緩和されて、互いの気配は感じながらも、それぞれの世界に浸ることができやすくなることも、前述の実施形態と同様である。
【0041】
以上に述べた構成により、上階から下階にいる家族の気配や様子を感じることができて、家族との間に柔らかい繋がり感を生み出せるような特別感のある居場所を、吹抜け自体の開放的な雰囲気を損なわない必要最小限の面積と合理的な構造によって実現することができる。
【0042】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施の形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素(空間要素)の形状、構造、大きさ、用途、相対的な位置関係、方位方角等を、例示形態と実質的に同等程度またはそれ以上の作用効果が得られる範囲内で改変してもよい。例えば、下階と上階は1階と2階に限定されず、地階と1階、あるいは2階と3階であってもよい。パブリックゾーンには和室の広間、応接室等が含まれてもよいし、プライベートゾーンには書斎や仕事部屋、客間等が含まれてもよい。吹抜けに面して設けられる上階の廊下は、吹抜けの中を通り抜ける渡り廊下のような形態であってもよい。その他、住宅の規模や形態に応じて、発明の要旨を逸脱しない程度の改変は適宜、可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願が開示する発明は、2階層以上の床面を有する住宅の空間構成として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 住宅
1A 主屋
1B 下屋
11 庭
12 車庫
13 壁面
14 壁面
16 テラス
17 アウトドアダイニング
18 エントランスゾーン
19 庭空間(ロジア)
101 玄関
102 玄関ホール
103 パーソナルサロン
104 ゲストルーム
105 土間ホール
106 和室
107 工房
111 リビング
112 ダイニング
113 キッチン
114 ダイニングキッチン
121 パントリー
122 洗面脱衣室
123 浴室
124 トイレ
125 収納室
126 洗濯室
127 収納室
131 廊下
132 廊下
133 廊下
211 主寝室
212 子供室
213 子供室
214 ウォークインクローゼット
215 仕事室
216 ラウンジ
217 ウォークインクローゼット
218 インナーバルコニー
221 トイレ
222 クローゼット
223 洗面室
224 浴室
231 廊下
232 廊下
233 廊下
234 廊下
235 廊下
241 衝立壁
242 衝立壁
243 衝立壁
3 階段
31 踊り場
32 手摺
4 張出床
41 辺縁部
51 壁面
511 出入口
52 壁面
53 壁面
54 壁面
56 バルコニー
57 バルコニー
6 勾配天井
61 勾配天井
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8