(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139308
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】液検知センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20220915BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20220915BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220915BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G01N27/00 B
H01M12/06 Z
H01M12/06 G
H01M12/06 D
H01M10/48 P
A61M5/168 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039616
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 真弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌樹
【テーマコード(参考)】
2G060
4C066
5H030
5H032
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AC01
2G060AE12
2G060AE13
2G060AF13
2G060AG03
2G060AG11
2G060HD00
2G060JA06
2G060KA05
4C066AA09
4C066CC01
4C066QQ55
4C066QQ82
5H030FF41
5H032AA02
5H032AS01
5H032AS02
5H032AS03
5H032CC16
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、汎用性を有し、長期間設置しても電力源である金属空気電池の劣化を防止でき、また、電力源である金属空気電池が優れた発電性能を発揮できる液検知センサを提供することである。
【解決手段】正極と、負極と、前記正極に配置された電解液構成成分と、を有する金属空気電池を備え、前記電解液構成成分が、樹脂製袋体の内部に封入され、前記樹脂製袋体の樹脂が、検知対象の液体に対する溶解性または分散性を有する液検知センサ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極に配置された電解液構成成分と、を有する金属空気電池を備え、
前記電解液構成成分が、樹脂製袋体の内部に封入され、前記樹脂製袋体の樹脂が、検知対象の液体に対する溶解性または分散性を有する液検知センサ。
【請求項2】
前記樹脂製袋体の樹脂が、水溶性樹脂または油溶性樹脂である請求項1に記載の液検知センサ。
【請求項3】
前記電解液構成成分が封入されている前記樹脂製袋体が、1つまたは複数である請求項1または2に記載の液検知センサ。
【請求項4】
前記電解液構成成分が封入されている前記樹脂製袋体の少なくとも一部が、前記正極の内部に配置されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液検知センサ。
【請求項5】
前記電解液構成成分が封入されている前記樹脂製袋体が、前記正極に担持されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液検知センサ。
【請求項6】
前記正極に、前記電解液構成成分が封入されている前記樹脂製袋体が一体成形されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液検知センサ。
【請求項7】
前記正極の材料と前記電解液構成成分が封入されている前記樹脂製袋体との混合物の押し出し材を備えた請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液検知センサ。
【請求項8】
前記電解液構成成分が、水、アルカリ金属塩またはアルカリ金属塩の水溶液を含む請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液検知センサ。
【請求項9】
前記負極の活物質が、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択された少なくとも1種の金属を含む請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液検知センサ。
【請求項10】
前記金属空気電池の電力を受電して液検知を知らせる報知部を有する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液検知センサ。
【請求項11】
前記金属空気電池の検知信号を、受信部へ無線送信が可能な報知部を有する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液検知センサ。
【請求項12】
水検知センサである請求項1乃至11のいずれか1項に記載の液検知センサ。
【請求項13】
油検知センサである請求項1乃至11のいずれか1項に記載の液検知センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池を備えた液検知センサに関し、特に、優れた発電性能を備え、かつ、長期保管性に優れた液検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
建造物、地下施設、工場、医療現場等で、液漏れや冠水を検知する液検知センサが使用されることがある。液検知センサは、液漏れや冠水を防止するべき箇所に配置される。液検知センサは、液検知センサが備える電池に外部から液体が接触した際に生じる電気的変化を捉えて液漏れを検知する。
【0003】
液検知センサとしては、例えば、漏出した液体によって発電する水電池を備えた医療現場用の液検知センサがある(特許文献1)。特許文献1では、水電池が粘着性を有する固定テープによって吸収性部材上に固定されており、吸収性部材に吸収して拡散された血液、点滴液等の液体が水電池全体に供給されることで、水電池が発電し、液漏れを検知する。
【0004】
また、液検知センサとしては、例えば、マグネシウム電池からなる漏液センサ部を備えた医療現場用の液検知センサがある(特許文献2)。特許文献2では、マグネシウム電池は、正極シートと、触媒シートと、シート状セパレータと、負極シートとが順次積層されたものであり、漏液センサ部に電気的に接続され、かつマグネシウム電池の電力により検知信号を送信する発信部と、発信部から送信された検知信号を受信する受信部と、受信部からの検知信号に基づき漏液状態を警報する警報手段を有した受信端末と、を備えている。 漏液センサ部は、注射針から漏れた血液または注射液を電解液としてマグネシウム電池が発電した状態を漏液状態として検知するものである。
【0005】
液漏れは精度よく検知する必要があるが、検知対象である血液等が電解液として機能する特許文献1、2の液検知センサでは、液検知対象として医療現場における血液等の検知以外には、特に提案されておらず、汎用性に乏しい。
【0006】
一方で、液漏れや冠水を検知することは、医療現場だけではなく、建造物、地下施設、工場、治水等、広汎な分野で要求されており、液検知センサには、水の検知や油の検知等、汎用性が要求されることがある。しかしながら、上記の通り、特許文献1、2の液検知センサは、汎用性に問題があった。
【0007】
また、液検知センサに汎用性を付与するにあたり、建造物、地下施設、工場等の液漏れや冠水、河川の周囲の冠水を液検知センサにて監視する際に、監視員が液漏れや冠水の現場から離れた場所にて監視することもある。液検知センサが、液漏れや冠水の現場から離れた場所まで確実に警報を伝達するには、液検知センサに搭載する電池の発電性能を向上させる必要がある。
【0008】
液検知センサに搭載する電力源として金属空気電池が使用される場合、電解質として、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩を使用することで、金属空気電池の発電性能を向上させることができる。例えば、金属空気電池のセパレータにあらかじめアルカリ金属塩を含ませておき、アルカリ金属塩を含んだセパレータが検知対象の液体である水と接触した際に、アルカリ金属塩を含んだ水の作用にて正極と負極との間のイオン伝導度が向上することで、金属空気電池が優れた発電性能を発揮できる。
【0009】
しかし、セパレータにアルカリ金属塩を含ませた状態で液検知センサを長期間設置しておくと、セパレータ内のアルカリ金属塩が吸湿して液化することで、金属空気電池の負極を劣化させてしまうことがある。液検知センサを長期間設置している間に金属空気電池の負極が劣化してしまうと、液漏れや冠水を精度よく検知できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2012/020507号
【特許文献2】特開2017-148332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、汎用性を有し、長期間設置しても電力源である金属空気電池の劣化を防止でき、また、電力源である金属空気電池が優れた発電性能を発揮できる液検知センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]正極と、負極と、前記正極に配置された電解液構成成分と、を有する金属空気電池を備え、
前記電解液構成成分が、樹脂製袋体の内部に封入され、前記樹脂製袋体の樹脂が、検知対象の液体に対する溶解性または分散性を有する液検知センサ。
[2]前記樹脂製袋体の樹脂が、水溶性樹脂または油溶性樹脂である[1]に記載の液検知センサ。
[3]前記電解液構成成分が封入されている前記樹脂製袋体が、1つまたは複数である[1]または[2]に記載の液検知センサ。
[4]前記電解液構成成分が封入されている前記樹脂製袋体の少なくとも一部が、前記正極の内部に配置されている[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の液検知センサ。
[5]前記電解液構成成分が封入されている前記樹脂製袋体が、前記正極に担持されている[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の液検知センサ。
[6]前記正極に、前記電解液構成成分が封入されている前記樹脂製袋体が一体成形されている[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の液検知センサ。
[7]前記正極の材料と前記電解液構成成分が封入されている前記樹脂製袋体との混合物の押し出し材を備えた[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の液検知センサ。
[8]前記電解液構成成分が、水、アルカリ金属塩またはアルカリ金属塩の水溶液を含む[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の液検知センサ。
[9]前記負極の活物質が、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択された少なくとも1種の金属を含む[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の液検知センサ。
[10]前記金属空気電池の電力を受電して液検知を知らせる報知部を有する[1]乃至[9]のいずれか1つに記載の液検知センサ。
[11]前記金属空気電池の検知信号を、受信部へ無線送信が可能な報知部を有する[1]乃至[9]のいずれか1つに記載の液検知センサ。
[12]水検知センサである[1]乃至[11]のいずれか1つに記載の液検知センサ。
[13]油検知センサである[1]乃至[11]のいずれか1つに記載の液検知センサ。
【0013】
上記[1]の態様では、液検知センサの検知対象である液体が金属空気電池の樹脂製袋体と接触すると、樹脂製袋体の樹脂が検知対象である液体に溶解または分散することで、樹脂製袋体の内部に封入されている電解液構成成分が、金属空気電池の正極から正極と負極の間へ放出される。電解液構成成分が金属空気電池の正極と負極の間に放出されることで、金属空気電池が発電または発電性能が向上し、液検知センサは、金属空気電池が発電することで、検知対象である液体が検知されたことを外部へ知らせる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液検知センサの態様によれば、電力源である金属空気電池の電解液構成成分が検知対象の液体に対する溶解性または分散性を有する樹脂製袋体の内部に封入されていることにより、樹脂製袋体の樹脂種を適宜選択することで、水の検知や油の検知等、汎用性が向上する。また、本発明の液検知センサの態様によれば、金属空気電池の電解液構成成分が樹脂製袋体の内部に封入されていることにより、液検知センサが長期間設置されていても金属空気電池が電解液構成成分によって劣化することを防止できる。また、本発明の液検知センサの態様によれば、金属空気電池の電解液構成成分が樹脂製袋体の内部に封入されていることにより、金属空気電池の劣化を防止しつつ金属空気電池に優れた発電性能を付与する電解液構成成分を使用できるので、金属空気電池が優れた発電性能を発揮でき、液漏れや冠水の現場から離れた場所まで確実に警報を伝達することができる。従って、本発明の液検知センサは、液漏れや冠水の現場から離れた場所まで確実に警報を伝達することができることで、汎用性が向上する。
【0015】
本発明の液検知センサの態様によれば、樹脂製袋体の樹脂が水溶性樹脂であることにより、検知対象である水をより確実に検知できる水検知センサとして機能し、樹脂製袋体の樹脂が油溶性樹脂であることにより、検知対象である油をより確実に検知できる油検知センサとして機能する。
【0016】
本発明の液検知センサの態様によれば、電解液構成成分が封入されている樹脂製袋体が複数であることにより、電解液構成成分が正極全体に円滑に供給されるので、金属空気電池の発電効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液検知センサの概要を説明する側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る液検知センサの液体検知時の状態を説明する側面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る液検知センサの概要を説明する側面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る液検知センサの液体検知時の状態を説明する側面図である。
【
図5】本発明の液検知センサの使用方法例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態に係る液検知センサについて、詳細を説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る液検知センサについて説明する。なお、
図1は、本発明の第1実施形態に係る液検知センサの概要を説明する側面図であり、
図2は、本発明の第1実施形態に係る液検知センサの液体検知時の状態を説明する側面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る液検知センサ1は、金属空気電池10と、金属空気電池10と電線部101を介して接続された報知部100と、を備えている。報知部100は、金属空気電池10から発電された電力を、電線部101を介して受電すると、報知手段にて液検知を知らせる機能を有している。
【0020】
金属空気電池10は、正極11と、正極11に対向した負極12と、正極11と負極12との間に位置するセパレータ13と、を備えている。液検知センサ1の金属空気電池10では、正極11とセパレータ13と負極12は、いずれも、シート状であり、正極11とセパレータ13と負極12の順に積層されたラミネート構造となっている。また、セパレータ13の周縁部14は、正極11及び負極12よりも外方向へ延出しており、正極11及び負極12から露出している。セパレータ13は、正極11と負極12が接触することで短絡することを防止するために、正極11と負極12を所定間隔あけて支持する支持部材として機能する。
【0021】
金属空気電池10では、正極11に、電解液構成成分20が配置されている。すなわち、電解液構成成分20は、正極11に存在している。電解液構成成分20は、金属空気電池10の電解液を構成する成分または金属空気電池10の電解液である。金属空気電池10は、正極11と負極12が電解液と接触することで自己発電を開始する。
【0022】
図1に示すように、電解液構成成分20は、樹脂製袋体21の内部に封入されている。従って、電解液構成成分20は、正極11とセパレータ13と負極12のいずれにも接触していない態様となっている。樹脂製袋体21の態様は、例えば、薄膜の袋状部材、フィルム状の袋状部材、マイクロカプセル等のカプセル状部材などである。樹脂製袋体21は、電解液構成成分20を内包し、一定量の電解液構成成分20を密封包装している。従って、樹脂製袋体21は、シェルとして機能する。
【0023】
金属空気電池10では、電解液構成成分20が封入されている樹脂製袋体21は、複数であり、電解液構成成分20は、一定量ずつ、複数に分割されて、それぞれの樹脂製袋体21の内部に封入されている。また、電解液構成成分20が封入されている複数の樹脂製袋体21、21、21・・・の少なくとも一部は、正極11の内部に配置されている。電解液構成成分20が封入されている樹脂製袋体21が正極11の内部に配置されていることで、電解液構成成分20は、正極11に存在している。電解液構成成分20が封入されている樹脂製袋体21は、正極11の表面部と内部に、分散された状態で配置されている。
図1の液検知センサ1では、正極11の全体にわたって、電解液構成成分20が封入されている複数の樹脂製袋体21、21、21・・・が配置されている。
【0024】
樹脂製袋体21は、液検知センサ1の検知対象の液体に対して溶解性または分散性を有する樹脂で形成されている。液検知センサ1の検知対象である液体が水または水を含む液体の場合には、樹脂製袋体21は、例えば、水溶性樹脂で形成される。樹脂製袋体21が水溶性樹脂で形成されることで、液検知センサ1は、水検知センサとして機能する。
【0025】
水溶性樹脂としては、例えば、スルホン酸基またはカルボキシル基からなる共重合体単位を含有するポリビニルアルコール系樹脂(A)100質量部と、3~6価の多価アルコール1モルに対しアルキレンオキサイド1~4モルを付加反応して得られた付加反応物(B)3~100質量部と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0026】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)は、スルホン酸基またはカルボキシル基からなる共重合体単位を含有するポリビニルエステルのけん化物である。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
スルホン酸基を含有する単量体としては、ビニルエステルと共重合可能で、けん化後スルホン酸基またはその塩がポリビニルアルコール系樹脂中に存在するものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアルカリ金属塩、2-(メタ)アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸のアルカリ金属塩、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸などのオレフィンスルホン酸、前記オレフィンスルホン酸の金属塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/またはメタクリル」を意味する。
【0028】
カルボキシル基を含有する単量体としては、ビニルエステルと共重合可能で、けん化後カルボン酸またはその塩がポリビニルアルコール系樹脂中に存在するものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、無水マレイン酸、モノアルキルマレイン酸エステル、ジアルキルマレイン酸エステル、イタコン酸、イタコン酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、アリルカルボン酸、けん化後カルボン酸またはその塩に誘導される(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリビニルアルコール系樹脂中の上記共重合単位の含有量は、特に制限はないが、例えば、優れた水溶性と機械的強度のバランスから、0.1~20モル%が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂(A)のけん化度は、例えば、40モル%以上100モル%以下である。また、ポリビニルアルコール系樹脂(A)の粘度平均重合度は、例えば、200以上10000以下である。
【0030】
付加反応物(B)の原料である3~6価の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、キシロース、アラビノース、リブロース、ソルビトール等が挙げられる。付加反応物(B)の原料であるアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記樹脂組成物を製膜(フィルム化)する方法としては、例えば、上記樹脂組成物の水溶液を流延する方法が挙げられる。上記樹脂組成物の樹脂製袋体21は、水への溶解速度が速く、長期間に電解液構成成分20を封入した場合でも水溶性を保持し、機械的強度にも優れている。
【0032】
また、水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系重合体と多糖類及びアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種のポリマーとの樹脂複合体を挙げることができる。樹脂複合体を用いた樹脂製袋体21の態様としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体を含む第1層と、多糖類及びアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む第2層と、を有する樹脂積層体を挙げることができる。
【0033】
ポリビニルアルコール系重合体としては、ビニルエステル系モノマーを重合し、得られるポリビニルエステル系重合体をけん化することにより調製されるものが挙げられる。ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ポリビニルアルコール系重合体は、ビニルエステル系モノマーと、ビニルエステル系モノマーと重合可能な他のモノマーと、の共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等の炭素数2~30のオレフィン類;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物、マレイン酸;マレイン酸エステル;イタコン酸;イタコン酸エステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル;N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N -ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド等のビニルアミド類;N-ビニル-2-ピロリドン類;N-ビニル-2-カプロラクタム;2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
ポリビニルアルコール系重合体のけん化度は、例えば、75モル%以上99モル%以下である。また、ポリビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は、例えば、300以上2500以下である。第1層の調製方法としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体を溶剤に溶解したポリビニルアルコール系重合体溶液を使用する方法(例えば、流延製膜法、溶液コーティング法、湿式製膜法、ゲル製膜法等)が挙げられる。
【0036】
第2層は、多糖類及びアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む。第2層の多糖類としては、澱粉類、セルロース系樹脂が挙げられる。
【0037】
澱粉類としては、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の天然由来の澱粉;天然由来の澱粉を加熱糊化し乾燥した澱粉;アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、硝酸澱粉等の加工澱粉等が挙げられる。セルロース系樹脂としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリルアミドが挙げられる。
【0039】
第2層の調製方法としては、例えば、多糖類及びアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種のポリマーを溶剤に溶解したポリマー溶液を使用する方法(例えば、流延製膜法、溶液コーティング法、湿式製膜法)が挙げられる。
【0040】
第1層と第2層を有する樹脂積層体の調製方法としては、例えば、第1層及び第2層を予め準備しておき、第1層と第2層をラミネートする方法;予め準備しておいた第1層に対して、多糖類及びアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む第2層を形成するためのコーティング液をコートする方法;予め準備しておいた第2層に対して、ポリビニルアルコール系重合体を含む第1層を形成するためのコーティング液をコートする方法;第1層と第2層を共押し出しする方法;第1層を製造する際、第1層が完全に乾燥または冷却される前に第1層上に第2層を押し出しまたはコーティングして積層し、第1層と第2層とを同時に乾燥または冷却する方法等が挙げられる。
【0041】
また、上記以外の水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルメチレンエーテルなどの水溶性ビニル系樹脂;ポリエチレンオキシドなどのポリエーテル系樹脂;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;アルギン酸、プルラン、キサンタンなどの多糖類系高分子等が挙げられる。
【0042】
樹脂製袋体21に電解液構成成分20を封入する方法としては、特に限定されず、例えば、樹脂製袋体21の開口部から電解液構成成分20を樹脂製袋体21に入れた後に、樹脂製袋体21の開口部を接着、熱溶着して封入する方法、W/O分散やO/W分散を用いたマイクロカプセル製法などで封入する方法等が挙げられる。
【0043】
電解液構成成分20の封入された複数の樹脂製袋体21、21、21・・・が正極11に配置されている態様としては、例えば、電解液構成成分20の封入されている樹脂製袋体21が、正極11に担持されている態様が挙げられる。電解液構成成分20が封入されている樹脂製袋体21を正極11に担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、正極11の空隙部分に樹脂製袋体21を圧入する方法、樹脂製袋体21を溶媒等の分散媒に分散させた後に正極11に含浸させて分散媒を乾燥除去する方法、正極11を複数に分割し、その間に樹脂製袋体21を配置させた後に正極11を接着させる方法等が挙げられる。
【0044】
また、電解液構成成分20の封入された複数の樹脂製袋体21、21、21・・・が正極11に配置されている態様としては、例えば、正極11に複数の樹脂製袋体21、21、21・・・が一体成形されている構造が挙げられる。正極11に複数の樹脂製袋体21、21、21・・・が一体成形されている構造としては、例えば、正極11の材料と電解液構成成分20が封入されている樹脂製袋体21とを含む混合物の押し出し材を挙げることができる。より具体的には、正極11の材料と電解液構成成分20が封入されている樹脂製袋体21とを混練りして、正極11の材料と樹脂製袋体21とを含む混合物を得、得られた混合物を、押し出し機にてシート状等に押出成形した押し出し材を挙げることができる。また、必要に応じて、シート状等に押出成形した押し出し材を、さらに所定の厚みまで圧延してもよい。
【0045】
正極11に複数の樹脂製袋体21、21、21・・・が一体成形されている構造を得るにあたり、正極11の材料に、さらにバインダーと分散媒を添加してもよい。すなわち、バインダーと分散媒を含む正極11の材料に電解液構成成分20が封入されている樹脂製袋体21を混合してもよい。正極11の材料としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック等のカーボンを挙げることができる。バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)等を挙げることができる。また、分散媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジエチレングリコール、N-メチルピロリドン等の有機溶媒を挙げることができる。
【0046】
正極11の材料であるカーボンは、正極の導電性を向上させる部材である。また、正極11は、正極11の材料であるカーボンの他に、さらに、正極集電体と触媒層とを有していてもよい。正極集電体は、負極12から放出される電子を電線部へ伝える導電性と、酸素を透過させる通気性とを備えた部材である。正極集電体としては、例えば、金網、発泡金属、エキスパンドメタル、金属布、パンチングメタル、多孔質金属等を挙げることができる。触媒層は、正極11の反応部として機能する。正極11の材料と樹脂製袋体21との混合物の押し出し材を用いた正極11の製造方法としては、例えば、前記押し出し材と触媒層を正極集電体上に積層させて圧着させる方法が挙げられる。また、上記正極11の製造方法としては、正極11の材料と樹脂製袋体21と触媒との混合物をシート状等に押出成形した押し出し材を得、前記押し出し材を正極集電体上に積層させて圧着させる方法が挙げられる。
【0047】
樹脂種が水溶性樹脂である樹脂製袋体21に封入される電解液構成成分20としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属とハロゲンとの塩といったアルカリ金属塩、または前記アルカリ金属塩の水溶液が挙げられる。また、他の電解液構成成分20としては、水が挙げられる。なお、水溶性樹脂である樹脂製袋体21内部に、水、アルカリ金属塩、アルカリ金属塩の水溶液を収納しても、樹脂製袋体21内部で塩析を起こすことから、樹脂製袋体21は溶解せずに、シェルとして機能する。
【0048】
負極12の活物質としては、マグネシウム(Mg)、マグネシウム合金、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、リチウム(Li)、リチウム合金、カルシウム(Ca)、カルシウム合金、亜鉛(Zn)、亜鉛合金等が挙げられる。このうち、発電効率と入手容易性の点から、マグネシウム(Mg)、マグネシウム合金が好ましい。
【0049】
セパレータ13は、電気的絶縁性、イオン透過性、液浸透性を有する材質で形成される。セパレータ13を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、ポリアミド、アクリル樹脂等の樹脂、ガラス等を挙げることができる。また、セパレータ13は、空隙を有する部材であり、例えば、不織布、ガラス繊維、メッシュ構造を有する織布、独立孔や連結孔を有する膜部材が挙げられる。セパレータ13を構成する空隙を有する部材としては、例えば、多孔質構造を有する部材が挙げられる。
【0050】
次に、液検知センサ1の検知対象である水が金属空気電池10に接触した場合の金属空気電池10の発電システムについて説明する。ここでは、説明の便宜上、負極12としてマグネシウム(Mg)を使用した場合について説明する。水が、セパレータ13の周縁部14に接触して、セパレータ13全体に浸透していくと、負極12では、下記(1)で示す酸化反応が生じる。また、正極11では、下記(2)で示す還元反応が生じる。上記から、金属空気電池10全体としては、下記(3)で示す反応が生じ、金属空気電池10が放電、すなわち、自己発電する。
(1)2Mg→2Mg2++4e-
(2)O2+2H2O+4e-→4OH-
(3)2Mg+O2+2H2O→2Mg(OH)2
【0051】
次に、液検知センサ1が検知対象である水を検知した場合の液検知センサ1の検知動作の例について説明する。
図2に示すように、検知対象である水110が、液検知センサ1の金属空気電池10と接触すると、セパレータ13全体にわたって浸透し、その後、正極11全体にわたって浸透していく。検知対象である水110が正極11全体にわたって浸透していくにともなって、水110に対して溶解性または分散性を有する樹脂で形成されている樹脂製袋体21が、溶解または分散する。すなわち、樹脂製袋体21が、検知対象である水110によって破壊される。樹脂製袋体21が溶解または分散すると、樹脂製袋体21に封入されていた電解液構成成分20(例えば、塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを含む水)が水110へ放出される。また、上記の通り、検知対象である水110がセパレータ13を浸透していくと、水110が電解液として作用するので、金属空気電池10が放電する。金属空気電池10が放電する際には、電解液として作用する水110に樹脂製袋体21から放出された電解液構成成分20が含まれることとなるので、電解液構成成分20の作用で正極11と負極12との間のイオン伝導度が向上して、金属空気電池10の発電性能が向上する。
【0052】
金属空気電池10が発電すると、金属空気電池10からの電力が電線部101を通って報知部100へ供給される。報知部100は、金属空気電池10から発電された電力を受電すると、報知部100の備えた報知手段にて液検知を報知する。
【0053】
液検知センサ1では、電力源である金属空気電池10の電解液構成成分20が検知対象である水110に対する溶解性または分散性を有する樹脂製袋体21の内部に封入されていることにより、水の検知であればあらゆる分野で使用でき、汎用性が向上する。また、液検知センサ1では、金属空気電池10の電解液構成成分20が樹脂製袋体21の内部に封入されていることにより、液検知センサ1が長期間設置されていても金属空気電池10が電解液構成成分20によって劣化することを防止でき、検知精度が向上する。また、液検知センサ1では、金属空気電池10の電解液構成成分20が樹脂製袋体21の内部に封入されていることにより、金属空気電池10の劣化を防止しつつ金属空気電池10に優れた発電性能を付与する電解液構成成分20を使用できるので、金属空気電池10が優れた発電性能を発揮できる。さらに、液検知センサ1では、金属空気電池10が優れた発電性能を発揮するので、液漏れや冠水の現場から離れた場所まで確実に警報を伝達することができることでも、汎用性が向上する。また、液検知センサ1では、金属空気電池10が優れた発電性能を発揮するので、報知部100が受電する電力量が増大し、報知部100の報知性能が向上する。
【0054】
また、液検知センサ1では、樹脂製袋体21の樹脂が水溶性樹脂であることにより、検知対象である水をより確実に検知でき、電解液構成成分20が封入されている樹脂製袋体21が複数であることにより、電解液構成成分20が正極11全体に円滑に供給されるので、金属空気電池10の発電効率が向上する。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態に係る液検知センサについて説明する。なお、第2実施形態に係る液検知センサは、第1実施形態に係る液検知センサと主要な構成要素は共通しているので、第1実施形態に係る液検知センサと同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、
図3は、本発明の第2実施形態に係る液検知センサの概要を説明する側面図であり、
図4は、本発明の第2実施形態に係る液検知センサの液体検知時の状態を説明する側面図である。
【0056】
第1実施形態に係る液検知センサは、水検知センサであり、樹脂製袋体が水に対して溶解性または分散性を有する樹脂で形成されていた。これに代えて、第2実施形態に係る液検知センサ2では、油検知センサであり、樹脂製袋体31の内部には電解液構成成分30が封入されており、電解液構成成分30が封入されている樹脂製袋体31が油に対して溶解性または分散性を有する樹脂で形成されている。
【0057】
このように、本発明の液検知センサは、樹脂製袋体を形成する樹脂の溶解性または分散性の特性を適宜変更することで、検知対象の液体の種類を適宜変更することができる。すなわち、本発明の液検知センサは、容易に検知対象の液体の種類を変更することができる点でも、汎用性に優れている。
【0058】
図3に示すように、金属空気電池10では、正極11に、電解液構成成分30が配置されている。電解液構成成分30が封入されている樹脂製袋体31は、複数であり、電解液構成成分30は、一定量ずつ、複数に分割されて、それぞれの樹脂製袋体31の内部に封入されている。また、電解液構成成分30が封入されている樹脂製袋体31は、正極11の全体にわたって、正極11の表面部と内部に、分散して配置されている。
図3の液検知センサ2では、正極11の全体にわたって、電解液構成成分30が封入されている複数の樹脂製袋体31、31、31・・・が配置されている。
【0059】
樹脂製袋体31は、例えば、油に対して溶解性または分散性を有する樹脂として、油溶性樹脂で形成される。樹脂製袋体31が油溶性樹脂で形成されることで、液検知センサ2は、油検知センサとして機能する。
【0060】
油溶性樹脂としては、例えば、キャンデリラレジン、水添ロジン酸ペンタエリスリチル、水添アビエチン酸グリセリル等のテルペン系樹脂、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、アクリル-シリコーングラフト共重合体等のシリコーン系樹脂、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
樹脂製袋体31に電解液構成成分30を封入する方法としては、特に限定されず、例えば、第1実施形態に係る液検知センサと同様に、樹脂製袋体31の開口部から電解液構成成分30を樹脂製袋体31に入れた後に、樹脂製袋体31の開口部を接着、熱溶着して封入する方法、W/O分散やO/W分散を用いたマイクロカプセル製法などで封入する方法が挙げられる。
【0062】
電解液構成成分30の封入された複数の樹脂製袋体31、31、31・・・が正極11に配置されている態様としては、例えば、第1実施形態に係る液検知センサと同様に、電解液構成成分30の封入されている樹脂製袋体31が、正極11に担持されている態様が挙げられる。電解液構成成分30が封入されている樹脂製袋体31を正極11に担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、第1実施形態に係る液検知センサと同じく、正極11の空隙部分に樹脂製袋体31を圧入する方法、樹脂製袋体31を溶媒等の分散媒に分散させた後に正極11に含浸させて分散媒を乾燥除去する方法、正極11を複数に分割し、その間に樹脂製袋体31を配置させた後に正極11を接着させる方法等が挙げられる。
【0063】
また、電解液構成成分30の封入された複数の樹脂製袋体31、31、31・・・が正極11に配置されている態様としては、例えば、第1実施形態に係る液検知センサと同様に、正極11に複数の樹脂製袋体31、31、31・・・が一体成形されている構造が挙げられる。正極11に複数の樹脂製袋体31、31、31・・・が一体成形されている構造としては、例えば、第1実施形態に係る液検知センサと同じく、正極11の材料と電解液構成成分30が封入されている樹脂製袋体31との混合物の押し出し材を挙げることができる。より具体的には、正極11の材料と電解液構成成分30が封入されている樹脂製袋体31とを混練りして、正極11の材料と樹脂製袋体31との混合物を得、得られた混合物を、押し出し機にてシート状等に押出成形した押し出し材を挙げることができる。また、必要に応じて、シート状等に押出成形した押し出し材を、さらに所定の厚みまで圧延してもよい。
【0064】
液検知センサ2の検知対象である油は、金属空気電池10の電解液構成成分ではない。従って、樹脂種が油溶性樹脂である樹脂製袋体31には、電解液構成成分30として電解液が封入されている。電解液構成成分30としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩を含む水(アルカリ金属塩の水溶液)、または水が挙げられる。
【0065】
次に、液検知センサ2が検知対象である油を検知した場合の液検知センサ2の検知動作の例について説明する。
図4に示すように、検知対象である油120が、液検知センサ2の金属空気電池10と接触すると、セパレータ13全体にわたって浸透し、その後、正極11全体にわたって浸透していく。油120が正極11全体にわたって浸透していくにともなって、油120に対して溶解性または分散性を有する樹脂で形成されている樹脂製袋体31が、溶解または分散する。すなわち、樹脂製袋体31は、検知対象である油120によって破壊される。樹脂製袋体31が溶解または分散すると、樹脂製袋体31に封入されていた電解液構成成分30(例えば、アルカリ金属塩の水溶液)が油120中へ放出される。油120中へ放出された電解液構成成分30は電解液として作用するので、金属空気電池10が放電する。金属空気電池10が放電する際には、電解液として、例えばアルカリ金属塩の水溶液が樹脂製袋体31から放出されるので、電解液構成成分30の作用で正極11と負極12との間のイオン伝導度が向上して、金属空気電池10の発電性能が向上する。
【0066】
液検知センサ2では、電力源である金属空気電池10の電解液構成成分30が検知対象である油120に対する溶解性または分散性を有する樹脂製袋体31の内部に封入されていることにより、検知対象である油をより確実に検知できる。また、液検知センサ2では、金属空気電池10の電解液構成成分30が樹脂製袋体31の内部に封入されていることにより、液検知センサ2が長期間設置されていても金属空気電池10が電解液構成成分30によって劣化することを防止でき、検知精度が向上する。
【0067】
次に、本発明の液検知センサの使用方法例を説明する。ここでは、説明の便宜上、本発明の第1実施形態に係る液検知センサ1を用いて、液検知センサの使用方法例を説明する。なお、
図5は、本発明の液検知センサの使用方法例の説明図である。
【0068】
図5に示すように、金属空気電池10と電線部101を介して接続された報知部100として、例えば、金属空気電池10から発電された電力を受電すると、受信部200への送信機能が稼動する送信部が使用される。金属空気電池10が検知対象である液体(
図5では、水110)を検知して発電すると、報知部100は、金属空気電池10から受電することで送信機能が稼動し、受信部200へ検知信号を送信する。送信部としては、例えば、無線送信部、有線送信部が挙げられる。
図5では、報知部100として無線送信部が使用され、報知部100から受信部200へ、検知信号の無線送信が可能となっている。無線通信としては、例えば、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi等、既存の無線方式を使用することができる。
【0069】
受信部200は、液検知センサ1の報知部100から検知信号を受信すると、検知対象の液体の漏れ等(
図5では、水漏れや冠水)が発生したことを検知し、人に水漏れや冠水が発生したことを報知させ、また、必要に応じて自動的に装置等を停止させる。
【0070】
次に、本発明の他の実施形態に係る液検知センサについて説明する。上記した第1、第2実施形態に係る液検知センサでは、電解液構成成分が封入された複数の樹脂製袋体が、正極の全体にわたって、分散して、セパレータの表面部と内部に配置されていたが、これに代えて、樹脂製袋体が一つ設けられていてもよい。この場合、電解液構成成分は、一つにまとめられた状態で樹脂製袋体に封入されている。
【0071】
第1実施形態に係る液検知センサでは樹脂製袋体は水溶性樹脂で形成され、第2実施形態に係る液検知センサでは樹脂製袋体は油溶性樹脂で形成されていたが、これに代えて、1つの金属空気電池において、水溶性樹脂で形成された樹脂製袋体と油溶性樹脂で形成された樹脂製袋体とを併用してもよい。水溶性樹脂の樹脂製袋体と油溶性樹脂の樹脂製袋体を併用することで、1つの液検知センサで、水の検知と油の検知に対応することができる。また、第1、第2実施形態に係る液検知センサでは、正極と負極の間にセパレータが設けられていたが、正極と負極が接触することによって短絡を防止することができれば、セパレータを設けなくてもよく、また、正極と負極を所定間隔あけて支持する支持部材であれば、セパレータではなくてもよい。
【0072】
また、上記液検知センサの使用方法例では、報知部は、受信部への送信機能を有する送信部であったが、これに代えて、金属空気電池の電力を受電して液検知を人に知らせる液検知表示部でもよい。液検知表示部の表示手段としては、例えば、警告灯の点灯、警告音の発出等を挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の液検知センサは、汎用性を有し、長期間設置しても電力源である金属空気電池の劣化を防止でき、また、電力源である金属空気電池が優れた発電性能を発揮できるので、広汎な液検知の分野で利用可能であり、例えば、建造物の漏水や雨漏り検知、各種設備、工場等の漏水や油漏れ検知、道路や地下施設等の冠水検知、河川や湖沼等の水位レベルを検知することによる危険水位到達検知、医療現場における漏血や漏薬液検知、介護現場における排尿検知等の分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1、2 液検知センサ
10 金属空気電池
11 正極
12 負極
13 セパレータ
20、30 電解液構成成分
21、31 樹脂製袋体
100 報知部