(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139312
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】圧力検出器
(51)【国際特許分類】
G01L 7/16 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
G01L7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039624
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春原 郁生
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB16
2F055CC59
(57)【要約】
【課題】作用した圧力を容易かつ確実に検知可能な圧力検出器を提供する。
【解決手段】圧力検出器40は、シリンダ10に作用する圧力が導かれる開口部50Aが形成される筐体50と、開口部50A内に移動可能に設けられ、シリンダ10内の圧力を受ける第1部分54Aを有するピストン部54と、ピストン部54を付勢する付勢部58と、開口部50A内に移動可能に設けられる圧力検知部60と、圧力検知部60の位置を保持する保持部62と、を備え、ピストン部54は、第1部分54Aに所定圧力以上の圧力が作用した場合に、付勢部58を弾性変形させつつ、圧力検知部60を筐体50の外部に突出させ、保持部62は、第1部分54Aに作用する圧力が所定圧力以上の圧力から所定圧力未満の圧力となっても圧力検知部60を突出した位置で保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の圧力を検出する圧力検出器であって、
前記機器に作用する圧力が導かれ、貫通する開口部が形成される筐体と、
前記筐体の前記開口部内に移動可能に設けられ、前記機器の圧力を受ける受圧部を有するピストン部と、
前記ピストン部を前記受圧部側に付勢する付勢部と、
前記ピストン部の前記受圧部とは反対側に位置し、前記筐体の前記開口部内に移動可能に設けられる圧力検知部と、
前記圧力検知部の位置を保持する保持部と、
を備え、
前記ピストン部は、前記受圧部に所定圧力以上の圧力が作用した場合に、前記付勢部を弾性変形させつつ、前記圧力検知部を前記筐体の外部に突出させ、前記保持部は、前記受圧部に作用する圧力が前記所定圧力以上の圧力から前記所定圧力未満の圧力となっても前記圧力検知部を突出した位置で保持する、
圧力検出器。
【請求項2】
前記保持部は、前記筐体と前記圧力検知部との間に設けられ、前記圧力検知部の外周面には軸方向に沿って並ぶ複数の溝が形成され、前記保持部は、複数の前記溝のいずれかに係合することで前記圧力検知部の位置を保持する、請求項1に記載の圧力検出器。
【請求項3】
前記圧力検知部の外周面には、前記溝として、少なくとも、第1溝、前記第1溝よりも前記圧力検知部から前記受圧部への方向側に位置する第2溝、及び、前記第2溝よりも前記圧力検知部から前記受圧部への方向側に位置する第3溝が形成されており、
前記保持部は、前記受圧部に前記所定圧力としての第1所定圧力以上の圧力が作用したことが無い場合には、前記第1溝に係合し、
前記保持部は、前記受圧部に前記第1所定圧力以上、かつ前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力未満の圧力が作用した場合には、前記第2溝に係合し、
前記保持部は、前記受圧部に前記第2所定圧力以上の圧力が作用した場合には、前記第3溝に係合する、請求項2に記載の圧力検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、減衰力を発生可能なダンパにおいては、強い外力を受けて高減衰力を発生させた場合には、ダンパ内が高圧となるため、ダンパの継続使用が可能かを判断するために、分解調査が行われる場合がある。しかし、ダンパに作用した圧力は検知できないため、実際にはダンパの分解調査が必要なほどの高圧力が作用していなくても、高圧力が作用した可能性があると判断された際には、分解調査の対象となることもある。そのため、ダンパに作用した圧力を検知することが求められているが、圧力センサ等を設置する場合には、システムが複雑となるおそれがある。
【0003】
それに対し、例えば特許文献1には、ピンを定格柱で保持しておき、ダンパ内に高圧力が作用した場合に定格柱が座屈してピンが突出することで、高圧力が作用したかを検知する検出器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、定格柱を座屈させてピンを突出させる構造であるため、定格柱が狙い通りに座屈しない場合は、高圧力が作用したかを検知できないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作用した圧力を容易かつ確実に検知可能な圧力検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る圧力検出器は、機器の圧力を検出する圧力検出器であって、前記機器に作用する圧力が導かれ、貫通する開口部が形成される筐体と、前記筐体の前記開口部内に移動可能に設けられ、前記機器の圧力を受ける受圧部を有するピストン部と、前記ピストン部を前記受圧部側に付勢する付勢部と、前記ピストン部の前記受圧部とは反対側に位置し、前記筐体の前記開口部内に移動可能に設けられる圧力検知部と、前記圧力検知部の位置を保持する保持部と、を備え、前記ピストン部は、前記受圧部に所定圧力以上の圧力が作用した場合に、前記付勢部を弾性変形させつつ、前記圧力検知部を前記筐体の外部に突出させ、前記保持部は、前記受圧部に作用する圧力が前記所定圧力以上の圧力から前記所定圧力未満の圧力となっても前記圧力検知部を突出した位置で保持する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作用した圧力を容易かつ確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るダンパの模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、ピストン速度と減衰力との関係の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る圧力検出器の模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る圧力検出器の動作を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るダンパの他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
以下、ダンパを例に説明するが、本実施形態に係る圧力検出器はダンパ以外にも圧力を検知可能な機器に用いられてもよく、例えば、油圧ポンプや油圧コントロールバルブ等の油圧機器において、高圧が作用する箇所に用いられてもよい。また、油圧機器に限られず、水圧等の流体に用いられてもよい。
【0012】
(ダンパの全体構成)
図1は、本実施形態に係るダンパの模式的な断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るダンパD1は、シリンダ10と、ピストンロッド12と、ピストン14と、外筒16と、蓋18と、ロッドガイド20とを備える。ダンパD1は、減衰力を発生可能な機構であり、任意の用途に用いられてよい。
【0013】
シリンダ10は、筒状の部材であり、一方の端部が蓋18によって閉塞され、他方の端部には環状のロッドガイド20が取り付けられている。
【0014】
ピストンロッド12は、シリンダ10内に移動可能に挿入されている。ピストンロッド12は、一方の端部がシリンダ10内に挿入され、他方の端部がシリンダ10外に突出されており、シリンダ10に対して移動自在とされている。より詳しくは、ピストンロッド12は、ロッドガイド20の内周に摺動可能に挿入されつつ、シリンダ10内に移動可能に挿入されている。
【0015】
ピストン14は、シリンダ10内に移動可能に挿入されて、シリンダ10内の空間を、ロッド側室R1とピストン側室R2とに仕切る。すなわち、シリンダ10内の空間のうち、ピストン14よりもシリンダ10の他方の端部側(ピストンロッド12側)の空間が、ロッド側室R1であり、ピストン14よりもシリンダ10の一方の端部側の空間が、ピストン側室R2である。ピストン14は、ピストンロッド12の一方の端部に取り付けられており、ピストンロッド12と一体で移動することで、シリンダ10内を摺動する。
【0016】
外筒16は、シリンダ10の外周を囲う筒状の部材である。外筒16は、シリンダ10と共に、一方の端部が蓋18によって閉塞され、他方の端部にロッドガイド20が取り付けられている。本実施形態においては、シリンダ10の外周と外筒16の内周との間に形成される空間が、タンクTとなる。
【0017】
ダンパD1は、以上のような構成となっており、シリンダ10内には、すなわちロッド側室R1及びピストン側室R2には、液体としての作動油が充填される。また、ダンパD1は、タンクT内に、液体としての作動油と共に、気体が充填されている。なお、タンクT内は、圧縮された気体が充填されることによって加圧状態となっていてもよいし、加圧状態になっていなくてもよい。また、本実施形態では、液体は作動油であるが、作動油であることに限られず、水や水溶液であってもよい。
【0018】
(ダンパの詳細構成)
次に、ダンパD1の詳細構成、より詳しくはダンパD1内において液体としての作動油が流れる流路やバルブ類について、説明する。
【0019】
ダンパD1には、ロッド側室R1とピストン側室R2とを連通する第1調整通路30Aが形成されている。本実施形態では、第1調整通路30Aは、ピストン14に形成されている。第1調整通路30Aには、第1調整バルブ30AVが設けられている。第1調整バルブ30AVは、第1調整通路30A内でロッド側室R1からピストン側室R2へ向かう作動油の流れと、第1調整通路30A内でピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れとのうち、ロッド側室R1からピストン側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するバルブである。この第1調整バルブ30AVによって、第1調整通路30Aは、ロッド側室R1からピストン側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定される。また、第1調整バルブ30AVは、第1調整通路30A内でロッド側室R1からピストン側室R2へ向かう作動油の流れに抵抗を与える。本実施形態では、第1調整バルブ30AVは、上流側となるロッド側室R1の圧力が開弁圧に達すると開弁して第1調整通路30Aを開放し、ロッド側室R1をピストン側室R2に連通させる調圧バルブとされている。
【0020】
ダンパD1には、ロッド側室R1とピストン側室R2とを連通する第2調整通路30Bが形成されている。本実施形態では、第2調整通路30Bは、ピストン14に形成されている。第2調整通路30Bには、第2調整バルブ30BVが設けられている。第2調整バルブ30BVは、第2調整通路30B内でロッド側室R1からピストン側室R2へ向かう作動油の流れと、第2調整通路30B内でピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れとのうち、ピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容するバルブである。この第2調整バルブ30BVによって、第2調整通路30Bは、ピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定される。また、第2調整バルブ30BVは、第2調整通路30B内でピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れに抵抗を与える。本実施形態では、第2調整バルブ30BVは、上流側となるピストン側室R2の圧力が開弁圧に達すると開弁して第2調整通路30Bを開放し、ピストン側室R2をロッド側室R1に連通させる調圧バルブとされている。
【0021】
このように、本実施形態に係るダンパD1は、ピストン14に、第1調整通路30Aと第2調整通路30Bとが形成されて、第1調整バルブ30AVと第2調整バルブBVとが各々設けられる構成となっているが、それに限られない。例えば、第2調整バルブBVは、調圧バルブであることに限られず、チェックバルブとオリフィスとが直列に並んだ構成であってもよい。また、ピストン14には、第1調整通路30A及び第2調整通路30Bとは別に、ロッド側室R1とピストン側室R2とを連通してオリフィスが設けられる流路が形成されていてもよい。
【0022】
ダンパD1には、シリンダ10内とタンクTとを連通する減衰通路32が形成されている。本実施形態では、減衰通路32は、ピストン側室R2とタンクTとを連通する。減衰通路32は、蓋18に形成されている。減衰通路32には、減衰バルブ32Vが設けられている。減衰バルブ32Vは、減衰通路32内でピストン側室R2からタンクTへ向かう作動油の流れと、減衰通路32内でタンクTからピストン側室R2へ向かう作動油の流れとのうち、ピストン側室R2からタンクTへ向かう作動油の流れのみを許容するバルブである。この減衰バルブ32Vによって、減衰通路32は、ピストン側室R2(シリンダ10内)からタンクTへ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。また、減衰バルブ32Vは、上流側となるピストン側室R2の圧力が開弁圧に達すると開弁して減衰通路32を開放し、ピストン側室R2をタンクTに連通させる調圧バルブである。なお、開弁圧は、ダンパD1に付与させたい性能に応じて、任意に設定してよい。また、減衰バルブ32Vは、調圧バルブであることに限られず、例えば、チェックバルブとオリフィスとが直列に並んだ構成であってもよい。
【0023】
ダンパD1には、ピストン側室R2とタンクTとを連通する吸込通路34が形成されている。吸込通路34は、蓋18に形成されている。本実施形態では、吸込通路34は、減衰通路32から分岐して形成されている。すなわち、吸込通路34は、ピストン側室R2側の区間が、減衰通路32とは別の通路となり、そのピストン側室R2側の区間よりもタンクTの区間で、減衰通路32に合流している。ただし、吸込通路34と減衰通路32とは、ピストン側室R2との接続箇所からタンクTとの接続箇所までの全区間にわたって、別の通路として形成されてもよい。吸込通路34には、吸込バルブ34Vが設けられている。吸込バルブ34Vは、吸込通路34内でピストン側室R2からタンクTへ向かう作動油の流れと、減衰通路32内でタンクTからピストン側室R2へ向かう作動油の流れとのうち、タンクTからピストン側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するバルブである。この吸込バルブ34Vによって、吸込通路34は、タンクTからピストン側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。本実施形態では、吸込バルブ34Vは、タンクTからピストン側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックバルブである。
【0024】
ダンパD1には、シリンダ10内に連通する検出通路38Bが形成されている。本実施形態では、検出通路38Bは、ピストン側室R2に連通されている。検出通路38Bの、ピストン側室R2(シリンダ10内)側とは反対側の端部には、シリンダ10内の圧力を検知する圧力検出器40Bが設けられている。すなわち、圧力検出器40Bは、ピストン側室R2(シリンダ10内)に連通する位置に設けられる。圧力検出器40Bの構成については後述する。本実施形態では、検出通路38Bは、蓋18に形成されている。
【0025】
なお、以上説明した減衰通路32、減衰バルブ32V、吸込通路34、吸込バルブ34V、検出通路38B、圧力検出器40Bは、蓋18以外に設けられてもよいが、これらを蓋18に設ける方がダンパD1の外径を小さくできる利点がある。
【0026】
ダンパD1には、シリンダ10内に連通する検出通路38Aが形成されている。本実施形態では、検出通路38Aは、ロッド側室R1に連通されている。検出通路38Aの、ロッド側室R1(シリンダ10内)側とは反対側の端部には、シリンダ10内の圧力を検知する圧力検出器40Aが設けられている。すなわち、圧力検出器40Aは、ロッド側室R1(シリンダ10内)に連通する位置に設けられる。圧力検出器40Aの構成については後述する。本実施形態では、検出通路38Aは、ロッドガイド20に形成されている。
【0027】
なお、以上説明した検出通路38A、圧力検出器40Aは、ロッドガイド20以外に設けられてもよいが、これらをロッドガイド20に設ける方がダンパD1の外径を小さくできる利点がある。
【0028】
以上説明したように、ダンパD1には、ロッド側室R1に連通される検出通路38Aに設けられる圧力検出器40Aと、ピストン側室R2に連通される検出通路38Bに設けられる圧力検出器40Bとが備えられている。ただし、ダンパD1は、圧力検出器40Aと圧力検出器40Bとの両方を備えることに限られず、いずれか1つのみ備えていてもよい。すなわち、圧力検出器は、ロッド側室R1に連通する位置と、ピストン側室R2に連通する位置との、少なくとも一方に設けられていてよい。以下、圧力検出器40A、40Bを区別しない場合は、適宜、圧力検出器40と記載し、検出通路38A、38Bを区別しない場合は、適宜、検出通路38と記載する。
【0029】
ダンパD1は、以上説明した構成に限られない。例えば、ダンパD1は、上記で説明した流路及びバルブ以外に、ロッド側室R1とタンクTとを連通する流路と、その流路に設けられた電磁弁とが設けられていてもよい。この場合、電磁弁は、開弁している場合に、その流路内でロッド側室R1からタンクTへの作動油の流れを許容し、閉弁している場合に、その流路内でのロッド側室R1とタンクTとの連通を遮断する。同様に、ダンパD1は、ピストン側室R2とタンクTとを連通する別の流路と、その流路に設けられた電磁弁とが設けられていてもよい。この場合、電磁弁は、開弁している場合に、その流路内でピストン側室R2からタンクTへの作動油の流れを許容し、閉弁している場合に、その流路内でのピストン側室R2とタンクTとの連通を遮断する。
【0030】
(ダンパの動作)
次に、ダンパD1の動作について説明する。
図2は、ピストン速度と減衰力との関係の一例を示す図である。
図2に示すようにダンパD1は通常制御領域と、許容限界領域と、部品破損領域に分けられる。通常制御領域は調圧バルブ(第1調整バルブAV,第2調整バルブVB,減衰バルブ32V)の特性により制御される領域である。許容限界領域は調圧バルブがフルストロークすることにより、ピストン速度に依存する特性で制御される領域であり、通常制御領域よりも高い減衰力が発揮される領域である。部品破損領域は許容限界領域よりも高い減衰力が発揮される領域であり、ダンパD1の部品が破損する可能性が生じる領域である。また、許容限界領域は通常制御領域を超えてもすぐに部品破損領域にならないように設けられる領域であり、通常の制御では使用しない領域である。
【0031】
ダンパD1のピストンロッド12が
図1中右側に移動すると、つまり、ダンパD1が収縮作動すると、圧縮されるピストン側室R2内の圧力が上昇する。ピストン速度(ピストン14の移動速度)が通常制御領域内である場合、すなわちピストン側室R2の圧力が第2調整バルブVB(調圧バルブ)がフルストロークする圧力(許容限界領域に入る前の圧力)としての第1圧力未満となる場合、第2調整バルブ30BVの開度に応じたピストン側室R2内の作動油が、第2調整通路30Bを通ってロッド側室R1に移動する。第2調整バルブ30BVが開弁することで、ダンパD1のピストン側室R2内の作動油が第2調整通路30Bを通ってロッド側室R1に移動する際の抵抗により
図2の通常制御領域の減衰力を発揮する。また、ダンパD1が収縮作動する場合、減衰バルブ32Vも開弁して、ピストン側室R2内の作動油が、減衰通路32を通ってタンクTに移動する。ダンパD1は、ピストン側室R2内の作動油が第2調整通路30Bを通ってロッド側室R1に移動する際の抵抗と、ピストン側室R2内の作動油が減衰通路32を通ってタンクTに移動する際の抵抗とによって、
図2の通常制御領域の減衰力を発揮する。
【0032】
図2に示すように、ダンパD1は、外力によりピストン速度が高くなるほど、すなわちピストン側室R2の圧力が高くなるほど、減衰力が高くなる。また、ピストン側室R2の圧力が、第1圧力より大きくなると、第2調整バルブVB及び減衰バルブ32Vはフルストロークする。この状態では図示しないバルブ本体とピストン14に形成される図示しないシート部との隙間で形成される絞りを作動油が通過する。この隙間を流れる作動油は流量が一定であれば一定の減衰力を発揮するが、ピストン速度が高くなる場合は、ピストン速度に応じて減衰力が増加する。つまり、
図2の許容限界領域ではピストン速度に依存した減衰力を発揮する。許容限界領域では上述した通常制御領域よりも高い減衰力を発揮されることにより通常制御領域で作用する圧力よりも高い圧力がダンパD1に作用する。ピストン速度が許容限界領域を超えると、ダンパD1に高圧力が作用することにより、ダンパD1の部品が破損する可能性が生じる。ダンパD1内の圧力がダンパD1の部品が破損する可能性が生じる圧力である第2圧力に達すると部品破損領域となる。詳しくは後述するが、圧力検出器40Bは、ピストン側室R2に高圧力が作用したかを検出する。
【0033】
ピストンロッド12が
図1中左側に移動すると、つまり、ダンパD1が伸長作動すると、圧縮されるロッド側室R1内の圧力が上昇する。ピストン速度が通常制御領域内である場合、すなわちロッド側室R1の圧力が第1調整バルブVA(調圧バルブ)がフルストロークする圧力(許容限界領域に入る前の圧力)としての第1圧力未満となる場合、第1調整バルブ30AVの開度に応じたロッド側室R1内の作動油が、第1調整通路30Aを通ってピストン側室R2に移動する。また、拡大されるピストン側室R2の圧力がタンクTの圧力より低くなるため、吸込バルブ34Vが開弁して、タンクT内の作動油が、吸込通路34を通ってピストン側室R2に移動する。第1調整バルブ30AVが開弁することで、ダンパD1のロッド側室R1内の作動油が第1調整通路30Aを通ってピストン側室R2に移動する際の抵抗により
図2の通常制御領域の減衰力を発揮する。
【0034】
図2に示すように、ダンパD1は、外力によりピストン速度が高くなるほど、すなわちロッド側室R1の圧力が高くなるほど、減衰力が高くなる。また、ロッド側室R1の圧力が、第1圧力より大きくなると、第1調整バルブはフルストロークする。この状態では図示しないバルブ本体とピストン14に形成される図示しないシート部との隙間で形成される絞りを作動油が通過する。この隙間を流れる作動油は流量が一定であれば一定の減衰力を発揮するが、ピストン速度が高くなる場合は、ピストン速度に応じて減衰力が増加する。つまり、
図2の許容限界領域ではピストン速度に依存した減衰力を発揮する。許容限界領域では上述した通常制御領域よりも高い減衰力を発揮されることにより通常制御領域で作用する圧力よりも高い圧力がダンパD1に作用する。ピストン速度が許容限界領域を超えると、ダンパD1に高圧が作用することにより、ダンパD1の部品が破損する可能性が生じる。ダンパD1内の圧力がダンパD1の部品が破損する可能性が生じる圧力である第2圧力に達すると部品破損領域となる。詳しくは後述するが、圧力検出器40Aは、ロッド側室R1に高圧力が作用したかを検出する。なお、収縮作動時と伸長作動時とでは、ピストンロッド12の体積による作動油の流量の関係上、減衰力を発揮させる調圧バルブの数量が異なるが、伸長作動時も収縮作動時と同様に2つの調圧バルブで減衰力を発揮させる構造としてもよい。
【0035】
(圧力検出器)
ダンパのシリンダ内には、ピストンが移動して作動油が圧縮された場合に、作動油による圧力が作用する。ダンパは、シリンダ内に高圧力が作用した場合には、継続使用が可能かを判断するために、分解調査が行われる場合がある。しかし、従来においては、ダンパに作用した圧力を検知できない場合もあるため、実際にはダンパの分解調査が必要なほどの高圧力が作用していなくても、高圧力が作用した可能性があると判断された際には、分解調査の対象となることもある。そのため、ダンパのシリンダ内に作用した圧力を容易かつ確実に検知することが求められている。それに対し、本実施形態に係るダンパD1は、圧力検出器40が備えられていることで、シリンダ10内に作用した圧力を容易かつ確実に検知することを可能としている。以下、圧力検出器40について具体的に説明する。
【0036】
図3は、本実施形態に係る圧力検出器の模式的な断面図である。圧力検出器40は、上述のように、シリンダ10内に連通する位置に設けられる。
図3に示すように、圧力検出器40は、筐体50と、蓋部52と、ピストン部54と、シール部56と、付勢部58と、圧力検知部60と、保持部62とを備える。
【0037】
筐体50は、Z方向(
図3中の矢印方向)に延在する部材であり、シリンダ10内に連通する開口部50Aが形成される。開口部50Aは、筐体50のZ方向側の端面からZ方向と反対側(
図3中の矢印と反対方向)の端面までを貫通する。開口部50Aは、Z方向側から開口する第1開口部50A1と、第2開口部50A2と、第3開口部50A3とを含む。第1開口部50A1は、筐体50のZ方向側の端面から後述する第2開口部50A2まで貫通する部分である。第2開口部50A2は、第1開口部50A1に連通し、後述する第3開口部50A3まで貫通する部分である。第1開口部50A1は第2開口部50A2より径が小さくなっている。そのため、筐体50は、第1開口部50A1と第2開口部50A2との連通部分に、段差である座面50A2aが形成されている。第3開口部50A3は、第2開口部50A2に連通し、筐体50のZ方向と反対側の端部まで貫通する部分である。つまり、第3開口部50A3は、筐体50のZ方向と反対側の端面に開口する。第2開口部50A2は第3開口部50A3より径が小さくなっている。そのため、筐体50は、第2開口部50A2と第3開口部50A3との連通部分に、段差である座面50A3aが形成されている。
【0038】
本実施形態では、筐体50は、Z方向側の端部における外周面に、ねじ部が形成されており、蓋18及びロッドガイド20において検出通路38(
図1参照)が開口する部分(図示略)に螺合されることで、検出通路38に取り付けられて、固定される。これにより、筐体50の開口部50Aは、検出通路38に連通する。ただし、筐体50の検出通路38への取り付け方法は、これに限られず任意であってよい。
【0039】
蓋部52は、Z方向側の端面からZ方向と反対側の端面までを貫通する開口部52Aが形成される部材である。開口部52Aは、Z方向側から開口する第1開口部52A1と、第2開口部52A2とを含む。第1開口部52A1は、蓋部52のZ方向側の端面から後述する第2開口部52A2まで貫通する部分である。第2開口部52A2は、第1開口部52A1に連通し、蓋部52のZ方向と反対側の端面まで貫通する部分である。つまり、第2開口部52A2は、蓋部52のZ方向と反対側の端面に開口する。第1開口部52A1は第2開口部52A2より径が小さくなっている。そのため、蓋部52は、第1開口部52A1と第2開口部52A2との連通部分に、段差である座面52A2aが形成されている。
【0040】
蓋部52は、筐体50の開口部50A内に挿入される。より詳しくは、蓋部52は、第3開口部50A3に挿入され、端面52aが筐体50の座面50A3aに接触した状態で、筐体50に対して固定されて、第3開口部50A3を塞ぐ。ただし、蓋部52にも開口部52Aが形成されているため、筐体50の開口部50Aと蓋部52の開口部52Aとが、連通する。より詳しくは、Z方向から、筐体50の第1開口部50A1、筐体50の第2開口部50A2、蓋部52の第1開口部52A1、蓋部52の第2開口部52A2の順で、連通する。なお、本実施形態では、蓋部52の外周面と、筐体50の第3開口部50A3における内周面には、ねじ部が形成されており、蓋部52の外周面が筐体50の第3開口部50A3における内周面に螺合されることで、蓋部52が筐体50に対して取り付けられ、固定される。ただし、蓋部52の筐体50に対する取り付け方法は、これに限られず任意であってよい。
【0041】
ピストン部54は、Z方向に延在する部材であり、筐体50の開口部50A内をZ方向及びZ方向と反対側に沿って移動可能に挿入される。そのため、ピストン部54は、開口部50Aに連通するシリンダ10内の圧力を受ける。ピストン部54は、Z方向側から形成され、シリンダ10内の圧力を受ける受圧部としての第1部分54Aと、第2部分54Bと、第3部分54Cとを含む。第1部分54Aは、筐体50の第1開口部50A1内を移動可能なように、外径が、第1開口部50A1の径よりも小さく形成されている。第3部分54Cは、蓋部52の第1開口部52A1内を移動可能なように、外径が、第1開口部52A1の径よりも小さく形成されている。第2部分54Bは、第1部分54A及び第3部分54Cよりも外径が大きく形成されている。より詳しくは、第2部分54Bは、本体部54B1とフランジ部54B2とを含む。本体部54B1は、筐体50の第2開口部50A2内を移動可能なように、外径が、第2開口部50A2の径よりも小さく形成され、かつ、第1部分54A及び第3部分54Cよりも外径が大きく形成されている。フランジ部54B2は、本体部54B1のZ方向側に形成され、本体部54B1よりも外径が大きく形成されている。
【0042】
ピストン部54は、第1部分54Aが筐体50の第1開口部50A1内に位置し、第2部分54Bが筐体50の第2開口部50A2内に位置し、第3部分54Cが蓋部52の第1開口部52A1内に位置するように、筐体50の開口部50A内に配置される。そのため、ピストン部54が筐体50から脱落することを防止できる。また、ピストン部54は、後述の付勢部58によってフランジ部54B2がZ方向側に押されることで、フランジ部54B2が筐体50の座面50A2aに接触した状態で、保持されている。
【0043】
シール部56は、筐体50の第1開口部50A1内に設けられるオイルシールである。シール部56には、ピストン部54の第1部分54Aが挿入される。シール部56は、第1部分54Aの外周面とシール部56の内周面との間及び第1開口部50A1とシール部56の外周面との間からの作動油のリークを抑制しつつ、ピストン部54を移動可能に支持する。
【0044】
付勢部58は、ピストン部54をZ方向側であるピストン部54の第1部分54A側に付勢する(ピストン部54に対してZ方向側への荷重を付与する)弾性部材である。付勢部58は、筐体50の第2開口部50A2内に設けられる。より詳しくは、付勢部58は、Z方向側の端部がピストン部54のフランジ部54B2に接触し、Z方向と反対側の端部が蓋部52の端面52aに接触するように、第2開口部50A2内に設けられる。付勢部58は、上記のフランジ部54B2と端面52aに接触した状態において、Z方向における圧縮方向に弾性変形した状態に保たれている。そのため、付勢部58は、この状態において、ピストン部54のフランジ部54B2に、Z方向側への荷重を付与しており、ピストン部54をZ方向側に付勢する。ピストン部54は、付勢部58によってZ方向側に付勢されることで、フランジ部54B2の端面が筐体50の座面50A2aに接触した位置で、保持されている。なお、本実施形態においては、付勢部58は、バネであり、ピストン部54の本体部54B1の外周を囲うように設けられる。ただし、付勢部58は、バネであることに限られず、ピストン部54をZ方向側に付勢可能な任意の部材であってよく、ピストン部54をZ方向側に付勢可能な任意の位置に設けられてよい。
【0045】
付勢部58は、ピストン部54に、Z方向と反対側に閾値以上の荷重が作用した場合には、さらに弾性変形して、Z方向側の端部が、Z方向と反対側に移動する。ここでの閾値は、シリンダ10内の圧力が
図2の許容限界領域で任意の範囲に設定される圧力、つまり、第1圧力以上であり第2圧力未満で任意の範囲に設定される圧力(以下、「所定圧力」という)であり、ピストン部54の第1部分54Aに所定圧力が作用した場合の、ピストン部54に係る荷重を指す。
【0046】
圧力検知部60は、筐体50の開口部50A内に設けられる部材である。より詳しくは、本実施形態では、筐体50の第3開口部50A3内に設けられる。圧力検知部60は、ピストン部54よりもZ方向と反対側又はピストン部54の第1部分54Aとは反対側に位置しているといえ、ピストン部54は、圧力検知部60よりもZ方向側(シリンダ10内と連通する位置側)に設けられるといえる。
【0047】
本実施形態では、圧力検知部60は、蓋部52の第2開口部52A2内に挿入される。圧力検知部60は、Z方向側の端面60aが蓋部52の座面52A2aと接触するように、蓋部52の第2開口部52A2内に挿入されて、第2開口部52A2を塞ぐ。圧力検知部60は、Z方向と反対側の端面60bが、外部に露出しているが、筐体50や蓋部52のZ方向と反対側の端面よりも突出しないように、設けられている。すなわち、圧力検知部60の端面60bは、筐体50や蓋部52の端面に対して同じ位置、又は、筐体50や蓋部52の端面よりもZ方向側に位置するように、設けられている。また、圧力検知部60は、端面60aが、ピストン部54の第3部分54Cと接触している。ただしそれに限られず、圧力検知部60は、端面60aが、ピストン部54の第3部分54Cと接触していなくてもよい。
【0048】
また、圧力検知部60の外周面(側面)には、Z方向(軸方向)に沿って並ぶ複数の溝60Aが形成されている。溝60AはZ方向から形成される第3溝60A3、第2溝60A2、第1溝60A1を含む。ただし、溝60Aの数は任意に設定可能である。
【0049】
保持部62は、圧力検知部60の位置を保持する部材である。保持部62は、筐体50に対して位置が固定されつつ、圧力検知部60に形成される溝60Aに係合することで、圧力検知部60の位置を保持する。すなわち、保持部62は、摩擦力により、圧力検知部60の位置を保持している。本実施形態では、保持部62は、蓋部52の第2開口部52A2内に設けられる環状の部材である。保持部62は、蓋部52に固定して設けられることで、筐体50に対して位置が固定される。保持部62には、第2開口部52A2内において、圧力検知部60が挿入される。保持部62は、内周面が、圧力検知部60の溝60Aに係合することで、圧力検知部60を固定している。
【0050】
保持部62は、圧力検知部60に所定値以上の外力が作用していない場合には、圧力検知部60の位置を保持するが、圧力検知部60に所定値以上の外力が作用した場合に、圧力検知部60の位置の保持を解除する。ここでの所定値は、保持部62が圧力検知部60に作用させる静止摩擦力に相当する。ここでの所定値(静止摩擦力)は、任意の値であってよいが、例えば、ピストン部54に所定圧力以上の圧力が作用して、ピストン部54がZ方向と反対側に移動する場合の、ピストン部54が圧力検知部60を押す荷重値であってよい。なお、保持部62は、本実施形態では、O-リングであるが、O-リングであることに限られず、任意の部材であってよい。例えば、圧力検知部60に筐体50へ突出する方向の移動のみを許容するラチェット用の溝が形成され、蓋部52にラチェット用の溝に係合するラチェット用の爪が形成されてもよい。
【0051】
(圧力検出器の動作)
次に、圧力検出器40の動作について説明する。
図4は、本実施形態に係る圧力検出器の動作を説明する模式図である。なお、以降においては、シリンダ10内の圧力に応じた圧力検出器40の動作を説明している。
【0052】
圧力検出器40は、シリンダ10内に連通しているため、シリンダ10内の圧力が、圧力検出器40にも作用する。具体的には、シリンダ10内の圧力は、ピストン部54に作用して、ピストン部54には、Z方向と反対側に押される荷重が作用する。
図4のステップS1に示すように、シリンダ10内の圧力が所定圧力より小さい場合には、シリンダ10内の圧力によってピストン部54に作用する荷重は、付勢部58がピストン部54を付勢する荷重以下となる。そのため、ピストン部54は、移動せず、ピストン部54のフランジ部54B2が座面50A2aに接触した状態を保つ。この場合、圧力検知部60は、端面60bが筐体50や蓋部52のZ方向と反対側の端面から突出しない位置のままとなる。このように、シリンダ10内の圧力が所定圧力より小さい場合には、筐体50の外部に突出することなく、筐体50の内部に留まる。すなわち、シリンダ10内に所定圧力以上の圧力が一度も作用していない状態では、圧力検知部60は、筐体50の外部に突出することなく、筐体50の内部に留まる。
【0053】
図4のステップS2に示すように、シリンダ10内の圧力が所定圧力以上に達した場合には、シリンダ10内の圧力によってピストン部54に作用する荷重は、付勢部58がピストン部54を付勢する荷重よりも高くなる。これにより、ピストン部54は、付勢部58を弾性変形させて、圧力検知部60の端面60aをZ方向と反対側に押す。圧力検知部60は、ピストン部54に押されることで、ピストン部54と共に移動する。これにより、圧力検知部60は、端面60bが、筐体50や蓋部52のZ方向と反対側の端面から突出する。このように、圧力検知部60は、ピストン部54を介してシリンダ10内の圧力を受け、シリンダ10内の圧力が所定圧力に達した場合には、筐体50の外部に突出する。
【0054】
図4のステップS3に示すように、シリンダ10内の圧力が所定圧力以上に達した後に、シリンダ10内の圧力が所定圧力より低く戻った場合、つまり、ピストン部54の第1部分54Aに作用する圧力が所定圧力以上の圧力から所定圧力未満の圧力となった場合には、付勢部58がピストン部54を付勢する荷重が、シリンダ10内の圧力によってピストン部54に作用する荷重よりも、高くなる。そのため、ピストン部54は、付勢部58によってZ方向側に付勢されて移動し、フランジ部54B2が座面50A2aに接触した状態に戻る。一方、圧力検知部60は、ピストン部54から受ける荷重が、解除される。そのため、圧力検知部60は、筐体50の外部に突出した状態のまま、保持部62に位置が保持される。従って、圧力検知部60は、ピストン部54から離れて、筐体50の外部に突出した位置に留まる。なお、
図4の例では、ステップS2、S3においては、保持部62は、ステップS1で保持部62が位置していた圧力検知部60の第1溝60A1よりも、Z方向側の第2溝60A2内に、位置している。
【0055】
このように、圧力検知部60は、シリンダ10内に所定圧力以上の圧力が一度も作用していない状態では、筐体50の外部に突出しない。一方、圧力検知部60は、筐体50の内部に留まり、シリンダ10内に所定圧力以上の圧力が一度でも作用した場合には、筐体50の外部に突出し、所定圧力以上の圧力が解除されても、筐体50の外部に突出した位置のまま留まる。そのため、ダンパD1の検査者は、ダンパD1の外観を目視して、圧力検知部60が筐体50の外部に突出しているかを確認するだけで、シリンダ10内に、高圧力(ここでは所定圧力以上の圧力)が作用したかを容易かつ確実に確認することが可能となる。また、保持部62は筐体50の外部に突出した状態のままとなるため、圧力検知部60は、シリンダ10内に高圧力が作用したかの履歴を残すことができる。
【0056】
また、ピストン部54は、シリンダ10内の圧力が高くなるほど、圧力検知部60を強く押す。そのため、圧力検知部60は、シリンダ10内の圧力が高くなるほど、外部への突出長さが大きくなる。つまり、本実施形態の圧力検知部60には、Z方向に沿って並ぶ複数の溝60A(第1溝60A1、第2溝60A2、第3溝60A3)が形成されている。そのため、シリンダ10内の圧力に応じて保持部62が対向する溝60Aの位置が変わる。具体的には、ピストン部54に所定圧力未満の圧力が作用した場合、保持部62は上述したように第1溝60A1内に位置するが、所定圧力としての第1所定圧力以上であって、第1所定圧力より高い第2所定圧力未満の圧力が作用した場合、圧力検知部60はピストン部54によりZ方向と反対側に押され、保持部62は第2溝60A2内に位置する。さらに、第2所定圧力以上の第3所定圧力が作用した場合、圧力検知部60はピストン部54によりさらにZ方向と反対側に押され、保持部62は第3溝60A3内に位置する。このように、シリンダ10内の圧力が高くなるほど、保持部62はZ方向側の溝60A内に位置するため、圧力検知部60は段階的に外部への突出する。なお、第1所定圧力,第2所定圧力,第3所定圧力はいずれも許容限界領域内の圧力に設定されることが好ましいが、例えば、第3所定圧力を部品破損領域内の圧力で設定することも可能である。また、例えば、ピストン部54に第3所定圧力以上の圧力が作用し、保持部62が第3溝60A3内に位置している場合に、ピストン部54に第2所定圧力より高く第3所定圧力未満の圧力が作用してもピストン部54は付勢部58と圧力とのバランスにより圧力検知部60には接触しない。つまり、圧力検知部60はシリンダ10内に作用した最大圧力を検知できるようになっている。そのため、圧力検知部60の突出長さを確認することで、シリンダ10内に作用した最大圧力を容易に推定できる。また、例えば、圧力検知部60の外周面に、筐体50や蓋部52とは異なる色が付されていてもよい。このように色が付されることで、圧力検知部60が突出していることを、検査者に容易に視認させることが可能となる。
【0057】
なお、以上の説明では、圧力検知部60は、シリンダ10内に所定圧力以上の圧力が一度も作用していない状態では、圧力検知部60が筐体50の外部に突出することなく、筐体50の内部に留まっていたが、予め少しだけ筐体50の外部に突出させていてもよい。すなわち、圧力検知部60は、シリンダ10内に所定圧力以上の圧力が一度も作用していない状態においても、端面60bが筐体50の外部に突出していてもよい。このような場合でも、所定圧力以上の圧力が作用したら、圧力検知部60はさらに突出するので、検査者は高圧力が作用した履歴があることを認識できる。
【0058】
(ダンパの他の例)
図5は、本実施形態に係るダンパの他の例を示す模式図である。以上の説明では、ダンパD1は、いわゆるバイフロー型であったが、バイフロー型に限られない。例えば、ダンパD2は、
図5に示すように、いわゆるユニフロー型であってもよい。ユニフロー型のダンパD2について、以下に説明するが、上述の本実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0059】
図5に示すように、ユニフロー型のダンパD2には、ロッド側室R1とピストン側室R2とを連通する調整通路30が形成されている。本実施形態では、調整通路30は、ピストン14に形成されている。調整通路30には、調整バルブ30Vが設けられている。調整バルブ30Vは、調整通路30内でロッド側室R1からピストン側室R2へ向かう作動油の流れと、調整通路30内でピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れとのうち、ピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容するバルブである。この調整バルブ30Vによって、調整通路30は、ピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定される。本実施形態では、調整バルブ30Vは、ピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックバルブである。
【0060】
ダンパD2には、シリンダ10内とタンクTとを連通する減衰通路32が形成されている。ユニフロー型では、減衰通路32は、ロッド側室R1とタンクTとを連通する。減衰通路32は、ロッドガイド20に形成されているが、形成される位置はそれに限られない。減衰通路32には、減衰バルブ32Vが設けられている。減衰バルブ32Vは、減衰通路32内でロッド側室R1からタンクTへ向かう作動油の流れと、減衰通路32内でタンクTからロッド側室R1へ向かう作動油の流れとのうち、ロッド側室R1からタンクTへ向かう作動油の流れのみを許容するバルブである。この減衰バルブ32Vによって、減衰通路32は、ロッド側室R1(シリンダ10内)からタンクTへ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。また、減衰バルブ32Vは、ロッド側室R1(シリンダ10内)が開弁圧場合に、ロッド側室R1(シリンダ10内)からタンクTへの作動油の流れを許容しつつ、作動油の流れに抵抗を与える。より詳しくは、本実施形態に係る減衰バルブ32Vは、上流側となるロッド側室R1の圧力が開弁圧に達すると、開弁して減衰通路32を開放し、ロッド側室R1をタンクTに連通させる調圧バルブである。なお、減衰バルブ32Vは、調圧バルブであることに限られず、例えば、チェックバルブとオリフィスとが直列に並んだ構成であってもよい。
【0061】
ダンパD2には、ピストン側室R2とタンクTとを連通する吸込通路34が形成されている。吸込通路34には、吸込バルブ34Vが設けられている。吸込通路34と吸込バルブ34Vの構成は、バイフロー型と同様であるため説明を省略する。
【0062】
また、ダンパD2には、シリンダ10内に連通する検出通路38が形成されている。検出通路38には、圧力検出器40が設けられている。検出通路38と圧力検出器40の構成は、バイフロー型と同様であるため説明を省略する。
【0063】
次に、ユニフロー型のダンパD2の動作について説明する。ピストンロッド12が
図5中右側に移動すると、つまり、ダンパD2が収縮作動すると、圧縮されるピストン側室R2内の圧力が上昇する。ピストン速度(ピストン14の移動速度)が通常制御領域内である場合、すなわちピストン側室R2の圧力が第1圧力未満となる場合、調整バルブ30Vの開度に応じたピストン側室R2内の作動油が、調整通路30を通ってロッド側室R1に移動する。ピストン側室R2からロッド側室R1に移動した作動油は、ピストンロッド12の体積分が余剰となるため、ロッド側室R1から減衰通路32の、減衰バルブ32Vを開弁してタンクTに移動する。減衰バルブ32Vが開弁することで、ダンパD2のロッド側室R1内の作動油が減衰通路32を通ってタンクTに移動する際の抵抗により
図2の通常制御領域の減衰力を発揮する。
【0064】
一方、ピストン速度が通常制御領域を超えた許容限界領域となると、減衰バルブ32は、バイフロー型のダンパD1と同様にピストン速度に依存した減衰力を発揮する。ピストン速度が許容限界領域を超えて部品破損領域となると、ダンパD1に高圧力が作用することにより、ダンパD1の部品が破損する可能性が生じる。圧力検出器40Aは、ロッド側室R1に高圧力が作用したかを、検出する。
【0065】
ピストンロッド12が
図5中左側に移動すると、つまり、ダンパD2が伸長作動すると、圧縮されるロッド側室R1内の圧力が上昇する。ピストン速度が通常制御領域内である場合、すなわちロッド側室R1の圧力が第1圧力未満となる場合、減衰バルブ32Vの開度に応じたロッド側室R1内の作動油が、減衰通路32を通ってタンクTに移動する。また、拡大されるピストン側室R2の圧力がタンクTの圧力より低くなるため、吸込バルブ34Vが開弁して、タンクT内の作動油が、吸込通路34を通ってピストン側室R2に移動する。減衰バルブ32Vが開弁することで、ダンパD2のロッド側室R1内の作動油が減衰通路32を通ってタンクTに移動する際の抵抗により
図2の通常制御領域の減衰力を発揮する。
【0066】
一方、ピストン速度が通常制御領域を超えた許容限界領域となると、減衰バルブ32は、バイフロー型のダンパD1と同様にピストン速度に依存した減衰力を発揮する。ピストン速度が許容限界領域を超えて部品破損領域となると、ダンパD1に高圧力が作用することにより、ダンパD1の部品が破損する可能性が生じる。圧力検出器40Aは、ロッド側室R1に高圧力が作用したかを、検出する。
【0067】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る圧力検出器40は、例えば、ダンパD1、D2等の機器の圧力を検出するものであって、筐体50と、ピストン部54と、付勢部58と、圧力検知部60と、保持部62とを備える。筐体50は、機器(シリンダ10内)に作用する圧力が導かれ、貫通する開口部50Aが形成される。ピストン部54は、筐体50の開口部50A内に移動可能に設けられて、機器(シリンダ10内)の圧力を受ける受圧部(第1部分54A)を有する。付勢部58は、ピストン部54を受圧部(第1部分54A)側(Z方向側)に付勢する。圧力検知部60は、ピストン部54の受圧部(第1部分54A)とは反対側(Z方向と反対側)に位置し、筐体50の開口部50A内に移動可能に設けられる。保持部62は、圧力検知部60の位置を保持する。ピストン部54は、受圧部(第1部分54A)に所定圧力以上の圧力が作用した場合に、付勢部58を弾性変形させつつ、圧力検知部60を、筐体50の外部に突出させ、保持部62は、受圧部(第1部分54A)に作用する圧力が所定圧力以上の圧力から所定圧力未満の圧力となっても、圧力検知部60を突出した位置で保持する。
【0068】
本実施形態に係る圧力検出器40においては、機器に所定圧力以上の圧力が作用した場合に、ピストン部54が付勢部58を弾性変形させつつ圧力検知部60を筐体50の外部に押し出す。外部に押し出された圧力検知部60は、保持部62によって筐体50の外部に突出した位置のまま留まる。そのため、機器(ダンパ)の検査者は、機器(ダンパ)の外観を目視して、圧力検知部60が筐体50の外部に突出しているかを確認するだけで、機器(ダンパ)に作用した圧力を容易かつ確実に検知することが可能となる。さらに言えば、本実施形態の圧力検出器40は、ピストン部54の受圧面積と付勢部58の付勢力を調整することによって圧力検知部60の動きを調整することができ、機器(ダンパ)に作用した圧力を、容易かつ確実に検知することが可能となる。より詳しくは、本実施形態に係る圧力検出器40は、付勢部58の弾性変形を利用して圧力検知部60を突出させるため、例えば塑性変形を利用して突出させる構造よりも、狙った圧力で圧力検知部60を確実に突出させることが可能となり、好ましい。
【0069】
保持部62は、筐体50と圧力検知部60との間に設けられ、圧力検知部60の外周面には軸方向(Z方向)に沿って並ぶ複数の溝60Aが形成されており、保持部62は、複数の溝60Aのいずれかに係合する。本実施形態の圧力検出器40は、溝60Aに保持部62が保持されることで、圧力検知部60の位置を、保持部62によって適切に保持でき、作用した圧力履歴を、容易かつ確実に検知可能となる。
【0070】
圧力検知部60の外周面には、溝60Aとして、少なくとも、第1溝60A1、第2溝60A2、及び第3溝60A3が形成されている。第2溝60A2は、第1溝60A1よりも、圧力検知部60から受圧部(第1部分54A)への方向(Z方向)側に形成され、第3溝60A3は、第2溝60A2よりも、圧力検知部60から受圧部(第1部分54A)への方向(Z方向)側に形成される。保持部62は、受圧部(第1部分54A)に所定圧力としての第1所定圧力以上の圧力が作用したことが無い場合には、第1溝60A1に係合する。保持部62は、受圧部(第1部分54A)に第1所定圧力以上、かつ第1所定圧力よりも高い第2所定圧力未満の圧力が作用した場合には、第2溝60A2に係合する。保持部62は、受圧部(第1部分54A)に第2所定圧力以上の圧力が作用した場合には、第3溝60A3に係合する。本実施形態の圧力検出器40は、機器に作用した圧力に応じて、保持部62が係合する溝が、段階的に変わる。そのため、本実施形態の圧力検出器40によると、機器に作用した最大圧力のおおよその値を、検査者に容易かつ確実に検知させることが可能となる。
【0071】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
10 シリンダ
12 ピストンロッド
14 ピストン
30AV 第1調整バルブ
32 減衰通路
32V 減衰バルブ
38 検出通路
40 圧力検出器
50 筐体
50A 開口部 54 ピストン部
54A 第1部分(受圧部)
58 付勢部
60 圧力検知部
62 保持部
D1、D2 ダンパ
T タンク