(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139314
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B66C 13/16 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
B66C13/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039627
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 正裕
(72)【発明者】
【氏名】樫原 征男
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 翔一
(57)【要約】
【課題】シーブ内部の構成をシンプルにすることで、低コストで、かつ組立時間、および調整時間を少なくすることができる荷重検出装置を備えた作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両は、クレーン装置21と、吊り荷重を算出するための荷重検出装置19と、を備えている。クレーン装置21は、ブーム32と、このブーム32の先端に設けられているシーブ50と、ブーム32の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器17と、を含んで構成されている。そして荷重検出装置19は、シーブ50に設けられているひずみゲージ13と、ブーム起伏角度検出器17と、により吊り荷重を算出する。従来から備えられているブーム起伏角度検出器17を荷重検出に用いるので、シーブ50内の構成をシンプルにできる。これにより吊り荷重測定の精度を維持しながら、低コストでかつ組立時間および調整時間を少なくすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン装置と、該クレーン装置に吊られている物品の吊り荷重を算出するための荷重検出装置と、を備え、
前記クレーン装置は、
ブームと、該ブームの先端に設けられているシーブと、前記ブームの起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器と、
を含んで構成されており、
前記荷重検出装置は、前記シーブに設けられているひずみゲージと、前記ブーム起伏角度検出器と、により吊り荷重を算出する、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記シーブは、
ワイヤロープを受ける外側リングと、
該外側リングの内側に設けられている内側リングと、
前記外側リングと前記内側リングとの間に設けられている軸受と、を含んで構成されており、
前記ひずみゲージは、前記内側リングの側面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ひずみゲージは、
前記ブームが最も倒伏した状態で、前記シーブの外周において前記ワイヤロープを受けている部分から構成される扇形状部に設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。さらに詳しくは、クレーン装置によって吊られている荷重を検出するための荷重検出装置を備える作業車両に関する。なお本明細書においては、特記した場合を除き、前後左右の記載は、車体の運転室に作業車両の使用者が搭乗した状態での使用者を基準として前後左右とする。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吊り荷重を検出するクレーン用荷重検出装置が開示されている。このクレーン用荷重検出装置は、シーブ内に位置している検出要素のみで荷重を検出するように構成されている。このクレーン用荷重検出装置では、シーブと、シーブの支軸と、の間に、円環状の内フレームと、円環状の外フレームとが設けられており、内フレームと外フレームとは、複数のスポークにより所定の距離を保ちながら同軸に配置されている。そしてワイヤロープが巻き回される側に位置するスポークの左右側面に、2軸のひずみゲージが設けられている。これらのひずみゲージにより、垂直荷重とせん断荷重が測定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1の構成は、シーブ内側の構成が複雑であり、荷重検出装置部分のコストが上がるとともに組立に時間がかかるという問題がある。またひずみゲージを別々のスポークに設置しているため、調整に時間を要するという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、シーブ内部の構成をシンプルにすることで、低コストで、かつ組立時間および調整時間を少なくすることができる荷重検出装置を備えた作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の作業車両は、クレーン装置と、該クレーン装置に吊られている物品の吊り荷重を算出するための荷重検出装置と、を備え、前記クレーン装置は、ブームと、該ブームの先端に設けられているシーブと、前記ブームの起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器と、を含んで構成されており、前記荷重検出装置は、前記シーブに設けられているひずみゲージと、前記ブーム起伏角度検出器と、により吊り荷重を算出することを特徴とする。
第2発明の作業車両は、第1発明において、前記シーブは、ワイヤロープを受ける外側リングと、該外側リングの内側に設けられている内側リングと、前記外側リングと前記内側リングとの間に設けられている軸受と、を含んで構成されており、前記ひずみゲージは、前記内側リングの側面に設けられていることを特徴とする。
第3発明の作業車両は、第2発明において、前記ひずみゲージは、前記ブームが最も倒伏した状態で、前記シーブの外周において前記ワイヤロープを受けている部分から構成される扇形状部に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、荷重検出装置が、シーブに設けられているひずみゲージと、ブーム起伏角度検出器と、により吊り荷重を検出する構成であることにより、従来から備えられているブーム起伏角度検出器を荷重検出に用いるので、シーブ内の構成をシンプルにすることができる。これにより吊り荷重測定の精度を維持しながら、低コストでかつ組立時間および調整時間を少なくすることができる。
第2発明によれば、ひずみゲージが内側リングの両端面に設けられていることにより、ひずみゲージの測定精度を高精度に維持できる。
第3発明によれば、ひずみゲージが、ブーム倒伏状態で、シーブの円周においてワイヤロープを受けている部分から構成される扇形状部に設けられていることにより、ひずみゲージの測定精度をさらに高精度に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積載形トラッククレーンの制御回路図である。
【
図2】
図1の積載形トラッククレーンの側面図である。
【
図3】
図1の積載形トラッククレーンの油圧回路図である。
【
図4】(A)
図1の積載形トラッククレーンで用いられているシーブの側面図である。(B)そのシーブのシーブ半径方向からの断面図である。
【
図5】
図4のシーブにおける、起伏角度とワイヤロープの接触状態との関係の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための作業車両を例示するものであって、本発明は作業車両を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0010】
<第1実施形態>
(積載形トラッククレーン10)
本発明に係る作業車両の一つである積載形トラッククレーン10を用いて本発明を説明する。なお、本発明に係る作業車両には、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーンなどブームを有する作業車両が含まれる。
【0011】
図2には本発明の第1実施形態に係る作業車両の積載形トラッククレーン10の側面図を示す。
図2に示すように、積載形トラッククレーン10は、汎用トラック20の運転室27と荷台28との間の車両フレーム29にクレーン装置21が搭載されたものである。汎用トラック20には、左右対称に前輪22が設けられている。さらに汎用トラック20には、左右対称に後輪23が設けられている。
【0012】
図2に示すように、クレーン装置21は、車両フレーム29上に固定されたベース30と、ベース30に対して旋回可能に設けられたポスト31と、ポスト31の上端部に起伏可能に設けられたブーム32と、ベース30に設けられ、ベース30から左右外側へ張出すアウトリガ装置33と、を備えている。すなわちアウトリガ装置33は、側面方向から見て運転室27と荷台28との間に位置している。アウトリガ装置33の左右先端には、油圧の右側ジャッキ38aおよび左側ジャッキ38bがそれぞれ設けられている。
【0013】
ポスト31にはウインチが内蔵されている。このウインチからワイヤロープ37をブーム32の先端にあるシーブ50に導いて、ブーム32先端部のシーブ50を介してフック34に掛け回すことにより、フック34をブーム32の先端部から吊り下げている。
【0014】
クレーン装置21は油圧回路40により油圧駆動される。この油圧回路40を操作するためのレバー群35がベース30の左右両側に設けられている。また、油圧回路40を電気的に制御し、作業車両を制御する制御装置12がベース30に設けられている。
【0015】
(油圧回路40)
図3には、本実施形態に係る積載形トラッククレーン10の油圧回路図を示す。
図3に示すように、クレーン装置21の油圧回路40は、主に、油圧バルブユニット41と、油圧バルブユニット41にタンク42内の作動油を供給する油圧ポンプ43と、油圧ポンプ43と油圧バルブユニット41とを接続する主油路44と、油圧バルブユニット41とタンク42とを接続する戻油路45と、クレーン装置21を構成するブーム32の起伏動作またはブーム32の伸縮動作、ブーム32の旋回動作、ウインチの巻上げ巻下げなどを行うための、複数のクレーン装置用アクチュエータ46、および2つのジャッキ38を含んで構成されている。クレーン装置用アクチュエータ46およびジャッキ38は、油圧バルブユニット41に接続している。
【0016】
油圧ポンプ43はPTO(パワーテイクオフ)装置を介して汎用トラック20のエンジン36に接続されており、エンジン36により駆動される。
【0017】
油圧バルブユニット41には、ブーム伸縮用制御弁47a、ウインチ用制御弁47b、ブーム起伏用制御弁47c、ブーム旋回用制御弁47d、右側ジャッキ制御弁48a、左側ジャッキ制御弁48bが設けられている。ブーム伸縮用制御弁47aはブーム伸縮用アクチュエータ46aに、ウインチ用制御弁47bはウインチ用油圧モータ46bに、ブーム起伏用制御弁47cは、ブーム起伏用アクチュエータ46cに、ブーム旋回用制御弁47dは、ブーム旋回用アクチュエータ46dにそれぞれ接続されている。また、右側ジャッキ制御弁48aは右側に位置する右側ジャッキ38aに、左側ジャッキ制御弁48bは左側に位置する左側ジャッキ38bに、それぞれ接続されている。
【0018】
これらの切換制御弁には、それぞれレバーが取り付けられており、そのレバーを手動操作することにより、油圧ポンプ43から供給される作動油の方向および流量を切り換えることができるようになっている。制御弁に取り付けられたレバーは、レバー群35としてベース30の左右両側に設けられている(
図2参照)。
【0019】
また、制御装置12は、エンジン36のECU(エンジンコントロールユニット)にも接続されており、少なくともエンジン36の回転数を制御できるよう構成されている。制御装置12は、エンジン36の回転数を制御することで油圧ポンプ43の回転数を制御でき、油圧ポンプ43の吐出量を調整できる。
【0020】
(制御回路)
図1には、本実施形態に係る積載形トラッククレーン10の制御回路図を示す。制御装置12の入力側には、ひずみゲージ13と、ブーム長検出器15と、ブーム旋回角度検出器16と、ブーム起伏角度検出器17と、が電気的に接続されている。また、制御装置12の出力側には警報器14と、ブーム伸縮用制御弁47a、ウインチ用制御弁47b、ブーム起伏用制御弁47c、ブーム旋回用制御弁47d、右側ジャッキ制御弁48a、左側ジャッキ制御弁48bが電気的に接続されている。
【0021】
制御装置12には、クレーン装置21によって吊られている吊り荷重を、複数の検出器から算出するための荷重検出装置19が備えられている。本実施形態では、荷重検出装置19は、制御装置12内の一部を構成している。本実施形態では、荷重検出装置19は、ひずみゲージ13の検出値と、ブーム起伏角度検出器17の検出値と、を用いて、クレーン装置21に吊られている物品の吊り荷重を算出する。なお、
図1では、荷重検出装置19は、制御装置12内の一部を構成しているように記載されているが、この構成に限定されない。例えば、制御装置12とは別に荷重検出装置19を設けることも可能である。この場合、荷重検出装置19は、ブーム起伏角度検出器17の検出値を直接受信する。
【0022】
荷重検出装置19が、シーブ50に設けられているひずみゲージ13と、ブーム起伏角度検出器17と、により吊り荷重を検出する構成であることにより、従来から備えられているブーム起伏角度検出器17を荷重検出に用いるので、シーブ50には1組のひずみゲージ13を組み込むだけでよい。1組のひずみゲージ13で検出される圧縮力とブーム起伏角度検出器17の検出角度とを合わせて吊り荷重を算出でき、シーブ50内の構成をシンプルにすることができる。これにより吊り荷重測定の精度を維持しながら、低コストでかつ組立時間および調整時間を少なくすることができる。
【0023】
図4には、本実施形態に係る積載形トラッククレーン10で用いられているシーブ50を示す。
図4(A)はシーブ50を左右側面のいずれかの方向から見た正面図であり、
図4(B)は、シーブ半径方向から見た断面図である。ここでシーブ50の「側面」とは、シーブ50の軸心に実質的に垂直な面を意味する。
図4に示すように、シーブ50は、ワイヤロープ37を案内するための溝形状を外周に有する外側リング51と、この外側リング51の内側に設けられ、支持軸に固定される内側リング53と、外側リング51と内側リング53との間に設けられ、内側リング53に対して相対的に外側リング51を回転させるための軸受52と、を含んで構成されている。
【0024】
外側リング51は、リング形状であり、その外周にワイヤロープ37を案内するための溝形状を外周に有するとともに、内周側は軸受52の外周に嵌めあわされている。また内側リング53もリング形状であり、その外周は軸受52の内周に嵌めあわされており、その内周はシーブ50のための支持軸に嵌めあわされている。
図4(B)に示すように、内側リング53は、外周から内周にかけて一様な厚さではなく、肉厚が薄い薄肉厚部を有している。そしてひずみゲージ13は、シーブ50を構成する内側リング53の両側面であるこの薄肉厚部にそれぞれ設けられている。
【0025】
ひずみゲージ13は、
図4(B)の紙面において上下方向の圧縮を測定するように貼付されている。また、ひずみゲージ13が内側リング53の両側面に設けられているのは、この圧縮力の測定を精度良く行うためである。
【0026】
ひずみゲージ13が内側リング53の両側面に設けられていることにより、内側リング53の2つの側面で生じるアンバランスを解消できるので、ひずみゲージ13の測定精度を高精度に維持できる。
【0027】
なお本実施形態では、ひずみゲージ13は内側リング53の両側面に設けられているが、これに限定されない。例えば一方の側面に設けることも可能である。
【0028】
図5には、本実施形態のシーブ50における、起伏角度とワイヤロープ37の接触状態との関係の説明図を示す。
図5の上段では、ブーム32の起伏角度により、左から起伏角度1度、40度、78度の場合のブーム32の先端の姿勢を表しており、
図5の下段では、その起伏角度におけるシーブ50とワイヤロープ37の接触状態を表している。本実施形態では起伏角度とは、ブーム32の軸心と水平面とから構成される角度を言う。
図5の下段では、ワイヤロープ37がシーブ50と接触し始める部分と、シーブ50の回転中心を1点鎖線で結んでいる。
図5の下段は、起伏角度が1度から78度に大きくなるにしたがって、ワイヤロープ37とシーブ50との接触部分は長くなることを表している。
【0029】
本実施形態では、左側の起伏角度が1度のとき、ブーム32が最も倒伏している状態である。ひずみゲージ13は、この最も倒伏した状態で、シーブ50の外周において、ワイヤロープ37を受けている部分から構成される扇形状部に設けられている。すなわち、ひずみゲージ13は、1点鎖線2本とシーブ50とワイヤロープ37の接触部分とから構成される扇形状部であって、内側リング53の側面(
図5の下段の左側のハッチング部分)に設けられる。
【0030】
ひずみゲージ13が、ブーム32倒伏状態で、シーブ50の外周においてワイヤロープ37を受けている部分から構成される扇形状部に設けられていることにより、シーブ50に付加される圧縮力を常時検出することができるので、ひずみゲージ13の測定精度をさらに高精度に維持できる。
【0031】
警報器14は、例えば定格荷重を超えた吊り荷重となった場合など、あらかじめ定められた状態になった場合に、積載形トラッククレーン10の使用者にその状態を覚知させるためのものである。本実施形態では、警報器14は、クレーン装置21に設けられている。
【0032】
(荷重算出方法)
例えば、起伏角度を最も倒伏した状態である1度の状態において、実際にフック34に100kgから100kgずつ荷重を増やし、ひずみゲージ13にどのようなひずみが発生するかを実際に測定するとともに、有限要素解析等によりどの程度ひずみが発生しているかを算出する。この測定と解析を、起伏角度を10度ずつ増やし行う。そして測定結果と解析結果とを比較して、ブーム起伏角度検出器17で検出された起伏角度において、ひずみゲージ13の検出値に基づいて吊り荷重を算出する。このように、あらかじめ各起伏角度におけるひずみ量と吊り荷重との関係を把握しておくことで、実作業におけるあらゆる姿勢であっても吊り荷重を都度検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
10 積載形トラッククレーン(作業車両の一つ)
13 ひずみゲージ
17 ブーム起伏角度検出器
19 荷重検出装置
21 クレーン装置
32 ブーム
37 ワイヤロープ
50 シーブ
51 外側リング
52 軸受
53 内側リング