(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139373
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/127 20060101AFI20220915BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20220915BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20220915BHJP
A61K 8/14 20060101ALI20220915BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220915BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220915BHJP
【FI】
A61K9/127
A61K8/55
A61K8/63
A61K8/14
A61Q19/00
A61P17/00
A61K47/24
A61K47/38
A61K47/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039721
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】渡部 翔
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD22
4C076DD38
4C076DD46
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE09
4C076EE23
4C076FF36
4C083AB032
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC482
4C083AD092
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083CC02
4C083DD45
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、リポソームを安定に配合する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
下記(A)および(B)を含有する皮膚外用剤。
(A)リン脂質およびステロール類を含有するリポソーム
(B)ポリオキシエチレンフィトステリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種または2種以上
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)および(B)を含有する皮膚外用剤。
(A)リン脂質およびステロール類を含有するリポソーム
(B)ポリオキシエチレンフィトステリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種または2種以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームを安定に配合する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リポソームは脂質二重層からなる閉鎖小胞体であり、生体膜のモデル系や、種々の薬物のキャリアー等として利用されている。しかしながらリポソームは、光、熱、温度、浸透圧等の影響を受けやすく、化学的あるいは物理的変化を起こしやすい。溶液中でのリポソーム粒子同士の凝集や融合、さらには沈殿物の生成や不溶物の析出など、状態変化や機能低下が起こるといった問題があった。そのためリポソームの安定性については種々開発が行われており、特定の顔料混合物とリポソーム分散液を含有することによりリポソームの安定性と顔料の分散性が向上した化粧料(特許文献1)や、リポソームに内包させた水溶性の生理活性物質の漏れ出しを抑制することで化粧料に安定に配合できるリポソーム含有組成物(特許文献2)等が開発されている。しかしながら、リポソームの安定配合については課題が残っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-269720号公報
【特許文献2】特開2012-72065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、リポソームを安定に配合する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記(A)および(B)を含有する皮膚外用剤を提供する。
(A)リン脂質およびステロール類を含有するリポソーム
(B)ポリオキシエチレンフィトステリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種または2種以上
【発明の効果】
【0006】
本発明は、リポソームを安定に配合する皮膚外用剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、液中分散安定性評価装置タービスキャン、50℃で測定した透過光(T)強度の変化率を示した図である。
【0008】
【
図2】
図2は、液中分散安定性評価装置タービスキャン、55℃で測定した透過光(T)強度の変化率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0010】
リポソームは脂質二重層からなる閉鎖小胞体であり、通常リン脂質を主体とした脂質を十分量の水で水和することにより調製することができる。リポソームは一般的に脂質二重層の数に基づいて分類されており、多重層リポソームと一枚膜リポソームに分類される。これらのうちいずれでも使用することができるが、本発明においては多重層リポソームを用いることが好ましい。
【0011】
本発明の皮膚外用剤に配合するリポソームは、リン脂質およびステロール類を含有する。リン脂質およびステロール類がリポソームに含まれる形態は特に限定されない。例えば、リポソーム内部に構成される親水領域もしくは疎水領域に存在しても良く、リポソームの最外膜に付着して存在しても良いが、リポソームの膜構成成分であることが好ましい。
【0012】
[リン脂質]
本発明の皮膚外用剤に配合するリポソームに含有するリン脂質は、通常皮膚外用剤に用いられるものであればいずれのものも用いることができる。具体的には、ホスファチジルコリン(レシチンとも呼ばれる。)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸やこれらを水素添加したもの等が挙げられる。これらの中でも、水添レシチンを用いることが好ましい。
【0013】
本発明におけるリン脂質の配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.00005~1質量%が好ましく、さらに0.0005~1質量%が好ましい。
【0014】
[ステロール類]
本発明の皮膚外用剤に配合するリポソームに含有するステロール類は、構造中にステロール骨格を持つものであり、通常皮膚外用剤に用いられるものであればいずれのものも用いることができる。具体的には、コレステロール、フィトステロール、ラノステロール等が挙げられる。これらの中でも、フィトステロールを用いることが好ましい。
【0015】
本発明におけるステロール類の配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.00001~1質量%が好ましく、さらに0.0001~0.5質量%が好ましい。
【0016】
本発明の皮膚外用剤に配合するリポソームは、常法により得ることができる。例えば、リン脂質およびステロール類を少量のBGに溶解後、水溶液または緩衝液に分散して予備乳化を行った後、高圧で分散させて脂質二重層を形成させることでリポソーム分散液として得ることもできる。
【0017】
本発明の皮膚外用剤に配合するリポソームの大きさ(外径)は、10~1000nm、好ましくは30~600nm、さらに好ましくは50~400nmである。
【0018】
本発明の皮膚外用剤に配合するリポソームには、脂質膜中及び内水相中にそれぞれ親油性もしくは親水性の種々の成分を内包させることもできる。脂質膜中に内包させ得る親油性成分としては、アボカド油,アーモンド油,オリーブ油,ゴマ油,サザンカ油,サフラワー油,大豆油,ツバキ油,トウモロコシ油,ナタネ油,パーシック油,ヒマシ油,綿実油,落花生油,ホホバ油等の植物性油類又は植物性ロウ類、ミリスチン酸イソプロピル,パルミチン酸イソプロピル,ラウリン酸ヘキシル,ミリスチン酸オクチルドデシル,ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル,2-エチルヘキサン酸セチル,トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル,トリオクタン酸トリメチロールプロパン等のエステル油類、セラミド,スフィンゴ糖脂質,スフィンゴリン脂質等のスフィンゴ脂質、フェニルアラニン,トリプトファン,イソロイシン,ロイシン,プロリン,メチオニン,バリン,アラニン等の疎水性アミノ酸類及びこれらの親油性誘導体、レチノール,レチナール,レチノイン酸等のビタミンA類及びこれらの親油性誘導体、α-カロテン,β-カロテン,γ-カロテン等のプロビタミンA類、コレカルシフェロール,エルゴカルシフェロール等のビタミンD類及びこれらの親油性誘導体、7-デヒドロコレステロール,エルゴステロール等のプロビタミンD類及びこれらの親油性誘導体、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,δ-トコフェロール等のビタミンE類及びこれらの親油性誘導体、フィロキノン,メナキノン,メナジオン等のビタミンK類及びこれらの親油性誘導体等といった親油性ビタミン類、ユビキノン及びその親油性誘導体,リポ酸及びその親油性誘導体,リノール酸及びその親油性誘導体,リノレン酸及びその親油性誘導体,アラキドン酸及びその親油性誘導体等といった親油性ビタミン様作用因子類、リボフラビン酪酸エステル,ジカプリル酸ピリドキシン,ジパルミチン酸ピリドキシン,パルミチン酸アスコルビル,ジパルミチン酸アスコルビル等の水溶性ビタミン類の親油性誘導体、グアイアズレン,グアイアズレンスルホン酸エチル,グリチルレチン酸ステアリル等の親油性抗炎症剤等が挙げられ、これらより1種又は2種以上を選択して用いることができる。
【0019】
内水相に内包させる親水性成分としては、1,3-ブチレングリコール,プロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール類、グルコース,ガラクトース,フルクトース,サッカロース,マルトース等の単糖類及びオリゴ糖類、イノシトール,ソルビトール,マルチトール等の糖アルコール類、リシン,グルタミン,アスパラギン,グルタミン酸,アスパラギン酸,トレオニン,アルギニン,セリン,ピロリドンカルボン酸等の親水性アミノ酸類及びこれらの塩並びに親水性誘導体、チアミン等ビタミンB1類及びこれらの塩並びに親水性誘導体、リボフラビン等ビタミンB2類及びこれらの塩並びに親水性誘導体、ニコチン酸,ニコチン酸アミド等ナイアシン類及びこれらの塩並びに親水性誘導体、ピリドキシン,ピリドキサール,ピリドキサミン等ビタミンB6類及びこれらの塩並びに親水性誘導体、パントテン酸及びその塩並びに親水性誘導体、ビオチン及びその塩並びに親水性誘導体、葉酸及びその塩並びに親水性誘導体、コバラミン等ビタミンB12類及びこれらの塩並びに親水性誘導体、アスコルビン酸及びその塩並びに親水性誘導体といった親水性ビタミン類、オロト酸及びその塩並びに親水性誘導体、カルニチン及びその塩並びに親水性誘導体、ヘスペリジン,エリオジクチン,ルチン等のビタミンP類といった親水性ビタミン様作用因子、グリコール酸,乳酸,クエン酸等の2-ヒドロキシカルボン酸及びこれらの塩並びに親水性誘導体、ヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸,デルマタン硫酸,ヘパリン等ムコ多糖類及びこれらの塩並びに親水性誘導体、可溶性コラーゲン,コラーゲン加水分解物,エラスチン加水分解物,ケラチン加水分解物等のペプチド類及びこれらの塩並びに親水性修飾物、アラントイン及びその塩並びに親水性誘導体,グアイアズレンスルホン酸塩,グリチルリチン酸及びその塩並びに親水性誘導体といった親水性抗炎症剤、植物の極性溶媒による抽出物などが挙げられ、これらより1種又は2種以上を選択して用いることができる。
【0020】
[ポリオキシエチレンフィトステリルエーテル]
本発明の皮膚外用剤に配合するポリオキシエチレンフィトステリルエーテルは、通常皮膚外用剤に配合されるものを用いることができる。
【0021】
ポリオキシエチレンフィトステリルエーテルとしては例えば、PEG-5フィトステロール(HLB値:7)、PEG-10フィトステロール(HLB値:9)、PEG-20フィトステロール(HLB値:12)、PEG-25フィトステロール(HLB値:13)、PEG-30フィトステロール(HLB値:14)等が挙げられる。この中でも、PEG-30フィトステロールを用いることが好ましい。
【0022】
PEG-30フィトステロールの市販品としてはニッコール BPS-30(日光サーファクタント工業社製)等が挙げられる。
【0023】
[ポリグリセリン脂肪酸エステル]
本発明の皮膚外用剤に配合するポリグリセリン脂肪酸エステルは、通常皮膚外用剤に配合されるものを用いることができる。
【0024】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては例えば、イソステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:14)、イソステアリン酸ポリグリセリル-2(HLB値:5)、イソステアリン酸ポリグリセリル-4(HLB値:8)、イソステアリン酸ポリグリセリル-6(HLB値:11)、オレイン酸ポリグリセリル-10(HLB値:13)、オレイン酸ポリグリセリル-2(HLB値:6)、オレイン酸ポリグリセリル-4(HLB値:9)、オレイン酸ポリグリセリル-6(HLB値:12)、カプリル酸ポリグリセリル-2(HLB値:8)、カプリル酸ポリグリセリル-6(HLB値:10)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:11)、ジオレイン酸ポリグリセリル-10(HLB値:12)、ジカプリン酸ポリグリセリル-6(HLB値:10)、ジステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:12)ステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:14)、ステアリン酸ポリグリセリル-2(HLB値:5)、ステアリン酸ポリグリセリル-4(HLB値:6)、セスキカプリル酸ポリグリセリル-2(HLB値:8)、トリステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:8)、ミリスチン酸ポリグリセリル-10(HLB値:15)、ラウリン酸ポリグリセリル-4(HLB値:10)、ラウリン酸ポリグリセリル-6(HLB値:14)、ラウリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:14.8)等が挙げられる。 この中でも、ラウリン酸ポリグリセリル-10を用いることが好ましい。
【0025】
ラウリン酸ポリグリセリル-10の市販品としてはリョートーポリグリエステル L-7D(三菱化学社製)、デカグリン 1-L(日本サーファクタント工業社製)、Sフェイス L-1001、SYグリスター ML-750、Sフェイス 10G-L(いずれも阪本薬品工業社製)、サンソフトM-12J、サンソフトM-12JW、サンソフト Q-12S-C、サンソフト Q-12Y-C、サンソフトM-122Y(いずれも太陽化学社製)、ポリグリセリン脂肪酸エステル ML10(ダイセル社製)等が挙げられる。
【0026】
本発明においてポリオキシエチレンフィトステリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種または2種以上の配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.01~5質量%が好ましく、さらに0.01~3質量%がより好ましい。
【0027】
本発明の皮膚外用剤には、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、色素、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0028】
本発明の皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、水系、油系、乳化型等いずれの剤型でもよい。
【0029】
本発明の皮膚外用剤は定法により調製することができる。
【実施例0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り配合量は質量%で示す。
【0031】
[安定性評価]
実施例及び比較例にかかる皮膚外用剤を調製し、液中分散安定性評価装置タービスキャン(Turbiscan Tower:三洋貿易社製)を用いて測定を行い、経時でのリポソームの安定性評価を行った。
【0032】
[測定方法]
タービスキャンのガラス瓶に実施例及び比較例にかかる皮膚外用剤を室温にて1時間放置したものをスポイトで20ml採取した。その後、ガラス瓶中のサンプルに850-880nmの光を照射し、後方散乱光の強度を測定した。また、光を照射する範囲はガラス瓶の底からサンプル液のメニスカスがすべて含まれる高さまで、今回は40mmまで測定を行った。光の入射角度に対し、180度の位置にて透過光(T)強度を検出器を用いて測定した。1回目の測定はサンプル導入後遅滞なく行い、2回目の測定以降は2分間隔で4時間の測定を実施した。
装置内部は目的温度にあらかじめ温度調整されている必要があり、50℃、55℃で測定を行った。各温度の1回目の測定値と2回目以降の測定値を比較して透過光強度の変化率を算出し、下記の評価を行った。
【0033】
[評価基準]
50℃
絶対値が0.15%以下を安定:〇
絶対値が0.16%以上を不安定:×
55℃
絶対値が0.35%以下を安定:〇
絶対値が0.36%以上を不安定:×
【0034】
[凝集物の有無]
実施例及び比較例にかかる皮膚外用剤を調製し、40℃または50℃に1カ月静置後、室温で4カ月静置したものを、専門評価員3名がそれぞれ独立して目視にて凝集物の有無を確認し、合議により下記の評価を行った。
【0035】
[評価基準]
凝集物なし:〇
凝集物あり:×
【0036】
表1に示す処方の皮膚外用剤に関して、あらかじめ水添レシチン、フィトステロールズ、BG、グリセリン、及び精製水を混合し、常法を用いてリポソーム分散液(表1のIに示した部分)を調製した。別途、その他の成分を常法により均一混合した組成物に前記リポソーム分散液を添加し、均一とすることで皮膚外用剤を調製した。
【0037】
【0038】
表1に示した通り、本願発明の皮膚外用剤はタービスキャンによる測定の結果、経時でのリポソームの安定性が良好であり、目視による凝集物も認められなかった。したがって、本願発明の皮膚外用剤はリポソームを安定に配合することができる。