(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139374
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20220915BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20220915BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W40/02
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039726
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崚
(72)【発明者】
【氏名】木内 真也
(72)【発明者】
【氏名】尾脇 義明
(72)【発明者】
【氏名】築澤 宗太郎
(72)【発明者】
【氏名】角谷 和重
(72)【発明者】
【氏名】岩田 洋一
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC31Z
5H181AA01
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】単眼カメラを用いた人物検知に基づいて適切な車両制御を実現すること。
【解決手段】本開示に係る車両制御装置は、歩行者検知部と、距離推定部と、車両制御部とを備える。前記歩行者検知部は、車両に搭載された単眼カメラで得られた撮影画像に基づいて検知された歩行者を表す前記撮影画像の画像上の第1の領域と、前記第1の領域に前記歩行者が含まれることの確からしさを示す第1の信頼度と、前記第1の領域に前記歩行者の足元部分が含まれることの確からしさを示す第2の信頼度とを算出する。前記距離推定部は、前記撮影画像における前記第1の領域の下端位置に基づいて前記車両から前記歩行者までの推定距離を算出する。前記車両制御部は、前記第1の信頼度、前記第2の信頼度及び前記推定距離に基づいて前記車両の制御を開始する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された単眼カメラで得られた撮影画像に基づいて検知された歩行者を表す前記撮影画像の画像上の第1の領域と、前記第1の領域に前記歩行者が含まれることの確からしさを示す第1の信頼度と、前記第1の領域に前記歩行者の足元部分が含まれることの確からしさを示す第2の信頼度とを算出する歩行者検知部と、
前記撮影画像における前記第1の領域の下端位置に基づいて前記車両から前記歩行者までの推定距離を算出する距離推定部と、
前記第1の信頼度、前記第2の信頼度及び前記推定距離に基づいて前記車両の制御を開始する車両制御部と
を具備する車両制御装置。
【請求項2】
前記歩行者検知部は、前記撮影画像の入力に応じて前記第1の領域、前記第1の信頼度及び前記第2の信頼度を出力するようにパラメータが決定されたニューラルネットワークを用いて、前記第1の領域、前記第1の信頼度及び前記第2の信頼度を算出する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記歩行者検知部は、
前記撮影画像の入力に応じて前記第1の領域及び前記第1の信頼度を出力するようにパラメータが決定されたニューラルネットワークを用いて、前記第1の領域及び前記第1の信頼度を算出し、
前記ニューラルネットワークによる前記第1の信頼度の算出に寄与した前記撮影画像の画像上の第2の領域を特定し、前記第1の領域及び前記第2の領域の位置関係に基づいて前記第2の信頼度を算出する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記歩行者検知部は、前記第1の領域の下端位置より上側に前記第2の領域が特定されたとき、前記第2の信頼度を大きく算出する、請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記車両制御部は、前記第1の信頼度、前記第2の信頼度及び前記推定距離の重み付き加算値を算出し、前記重み付き加算値が予め定められた閾値より大きいとき、前記車両を停止させる制御を開始し、
前記第2の信頼度の重み係数は、他の重み係数より大きい、
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記車両制御部は、前記第2の信頼度が予め定められた閾値より小さいとき、前記推定距離より手前の位置を目標停止位置とする前記車両を停止させる制御を開始する、請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記車両制御部は、前記第1の信頼度が予め定められた閾値より大きく、かつ、前記第2の信頼度が予め定められた閾値より小さいとき、前記車両を減速させる制御を開始する、請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記車両制御部は、前記第2の信頼度が予め定められた閾値より小さいとき、かつ、前記第1の領域が歩道上であるとき、前記車両の走行位置を、走行中のレーン内の前記歩道とは反対側寄り又は前記歩道とは反対側の他のレーンに進路変更させる制御を開始する、請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項9】
車両に搭載された単眼カメラで得られた撮影画像に基づいて検知された歩行者を表す前記撮影画像の画像上の第1の領域と、前記第1の領域に前記歩行者が含まれることの確からしさを示す第1の信頼度と、前記第1の領域に前記歩行者の足元部分が含まれることの確からしさを示す第2の信頼度とを算出することと、
前記撮影画像における前記第1の領域の下端位置に基づいて前記車両から前記歩行者までの推定距離を算出することと、
前記第1の信頼度、前記第2の信頼度及び前記推定距離に基づいて前記車両の制御を開始することと
を含む車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラで得られた画像データに基づいて、画像内の歩行者を検知する技術が提案されている。例えば、DNN(Deep Neural Network)等のニューラルネットワークを用いた検知エンジンでの人物検知においては、画像内の検知された対象に関して、人物としての確からしさを示す信頼度を算出する技術がある。
【0003】
また、対象の信頼度と、自車両から対象までの距離に基づいて、ブレーキ等の車両制御を行う技術が提案されている。このような中、例えば金銭的なコストを低減する観点から、車載カメラとしての単眼カメラの利用には需要がある。例えば画像における検知枠の下端に対象の足元部分が含まれている場合、当該検知枠の下端が地面に接地していると仮定することにより、対象の人物と車両との間の距離を、車両に搭載された単眼カメラを用いて適切に推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、信頼度の大きさが同じであっても、検知枠の下端に対象の足元部分が含まれていない場合がある。この場合、距離推定に単眼カメラを用いると、検知枠の下端が地面に接地しているとの仮定に起因して、自車両から対象までの距離推定の精度が低下する場合があった。距離推定の精度が低下すると、ブレーキ等の車両制御の精度が低下する場合があった。
【0006】
本開示は、単眼カメラを用いた人物検知に基づいて適切な車両制御を実現することができる車両制御装置及び車両制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る車両制御装置は、歩行者検知部と、距離推定部と、車両制御部とを備える。前記歩行者検知部は、車両に搭載された単眼カメラで得られた撮影画像に基づいて検知された歩行者を表す前記撮影画像の画像上の第1の領域と、前記第1の領域に前記歩行者が含まれることの確からしさを示す第1の信頼度と、前記第1の領域に前記歩行者の足元部分が含まれることの確からしさを示す第2の信頼度とを算出する。前記距離推定部は、前記撮影画像における前記第1の領域の下端位置に基づいて前記車両から前記歩行者までの推定距離を算出する。前記車両制御部は、前記第1の信頼度、前記第2の信頼度及び前記推定距離に基づいて前記車両の制御を開始する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る車両制御装置及び車両制御方法によれば、単眼カメラを用いた人物検知に基づいて適切な車両制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両制御システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る歩行者検知のためのニューラルネットワークの構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る歩行者検知により算出される検知枠及び全体の信頼度について説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る歩行者検知により算出される検知枠及び全体の信頼度について説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る歩行者検知により算出される検知枠及び全体の信頼度について説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る歩行者検知により算出される足元の信頼度について説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る歩行者検知により算出される足元の信頼度について説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る車両制御としてのブレーキ判断について説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る車両制御としてのブレーキ判断について説明するための図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る車両制御装置において実行される、車両制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施形態に係る足元の信頼度の算出の別の一例について説明するための図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る足元の信頼度の算出の別の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る車両制御装置及び車両制御方法の各実施形態について説明する。
【0011】
従来、車載カメラで得られた画像データに基づいて、画像内の歩行者を検知する技術が提案されている。例えば、DNN(Deep Neural Network)等のニューラルネットワークを用いた検知エンジンでの人物検知においては、画像内の検知された対象に関して、人物としての確からしさを示す信頼度を算出する技術がある。
【0012】
また、対象の信頼度と、自車両から対象までの距離に基づいて、ブレーキ等の車両制御を行う技術が提案されている。例えば、自車両から対象までの距離を測定するステレオカメラやソナー等のセンサが搭載された車両がある。このような中、例えば金銭的なコストを低減する観点から、車載カメラとしての単眼カメラの利用には需要がある。例えば画像における検知枠の下端に対象の足元部分が含まれている場合、当該検知枠の下端が地面に接地していると仮定することにより、対象の人物と車両との間の距離を、車両に搭載された単眼カメラを用いて推定することができる。
【0013】
しかしながら、距離推定に単眼カメラを用いる場合、1枚の画像からでは完全な3次元情報を構成することができない。また、信頼度の大きさが同じであっても、検知枠の下端に対象の足元部分が含まれていない場合がある。したがって、距離推定に単眼カメラを用いると、検知枠の下端が地面に接地しているとの仮定に起因して、自車両から対象までの距離推定の精度が低下する場合があった。距離推定の精度が低下すると、ブレーキ等の車両制御の精度が低下する場合があった。例えば、推定距離を実際より大きく推定した場合では、ブレーキ判断が遅れるおそれがあった。推定距離を実際より小さく推定した場合では、ブレーキ判断の遅れは回避できる一方、誤ブレーキが発生して乗り心地が低下したり、後続車への影響が発生したりするおそれがあった。
【0014】
そこで、本開示の各実施形態は、単眼カメラを用いた人物検知に基づいて適切な車両制御を実現することができる車両制御装置及び車両制御方法を例示する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る車両制御システム1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0016】
車両制御システム1は、車両3及び車両制御装置5を有する。本実施形態では、
図1に示すように、車両3が車両制御装置5を搭載する場合を例示する。
【0017】
車両3は、モーターやエンジン等のアクチュエータと、アクチュエータにより駆動される駆動機構とを有する。車両3は、アクチュエータが発生する動力を受けて駆動機構が駆動されることにより自走可能に構成される。
【0018】
なお、車両3は、例えば自転車や自動二輪車、自動車、電車等の各種の車両であってもよい。また、車両3は、操作者の操作に従い走行する車両であってもよいし、自律的に走行する車両であっても構わない。なお、操作者の操作とは、車両の走行を操作者が自発的に制御するための操作に限らず、車両制御装置5による制御の可否を指示するための操作を含む。また、本実施形態に係る技術は、車両3に代えて、例えばロボットや船舶、航空機等の車両の他の移動体に適用されても構わない。
【0019】
車両制御装置5は、車両3の走行を制御する車両制御を実行する装置である。なお、車両制御とは、発進、停止、加速、制動、加減速度の変更、走行速度の変更、進行方向の変更、進路変更、右左折等の車両3の走行に係る各種の制御である。なお、発進の制御とは、車両3の発進を禁止することを含む。
【0020】
なお、本開示に係る車両制御とは、車両3のアクチュエータ等の制御により車両3の走行を直接的に制御することに限らず、車両3の走行を制御するための信号を車両側へ出力することを含む。ここで、車両3の走行を制御するための信号とは、車両3のアクチュエータ等の制御量を示す信号に限らず、走行の制御を車両3に指示するための信号や走行の制御の可否を操作者に問うための信号、走行の制御を操作者に促すための信号等であっても構わない。
【0021】
車両制御装置5は、
図1に示すように、プロセッサ11、メモリ13、通信インターフェース15、カメラ17、ディスプレイ191及びスピーカ193を有する。プロセッサ11、メモリ13、通信インターフェース15、カメラ17、ディスプレイ191及びスピーカ193は、通信可能に接続される。ここで、車両制御装置5が車両3に搭載される場合、プロセッサ11及びメモリ13は、例えばECU(Engine Control Unit)の一例である。
【0022】
プロセッサ11は、車両制御装置5の全体の動作を制御する。プロセッサ11としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の各種のプロセッサが適宜利用可能である。
【0023】
メモリ13は、車両制御装置5で使用される各種のデータやプログラムを記憶する。メモリ13としては、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、Flashメモリ等の各種の記憶媒体や記憶装置が適宜利用可能である。また、メモリ13には、一時的に作業中のデータを記憶するRAM(Random Access Memory)がさらに設けられる。なお、メモリ13としては、専用線やLAN(Local Area Network)、インターネット等の電気通信回線を介して車両制御装置5に接続された外部記憶装置が利用されても構わない。
【0024】
通信インターフェース15は、車両3との間で通信を行う通信回路である。通信インターフェース15は、車両制御に係る各種の信号を車両3に送信する。また、通信インターフェース15は、車両3の速度や加速度、舵角等、車両3に搭載された各種のセンサやエンコーダの出力等を受信する。また、実施形態に係る車両制御処理の一部又は全部が車両制御装置5の外部で実行される場合、通信インターフェース15は、車両制御処理で取り扱うパラメータやデータを送受信する。
【0025】
カメラ17は、単眼カメラである。カメラ17は、車両3の前方、後方、左方、右方、上方及び下方等の移動体の周囲を撮影可能に、車両3の複数の位置それぞれに配置される。なお、車両3に設けられるカメラ17の数は、1又は2以上の複数であってよい。本実施形態では、説明の簡単のために、車両3の前方に配置されたカメラ17を例示する。カメラ17は、逐次撮影し、時系列の撮影画像のデータを生成する。カメラ17は、生成された撮影画像のデータを例えばメモリ13に出力する。
【0026】
ディスプレイ191は、画像データに応じた画像を表示することにより、各種の情報を表示する。ディスプレイ191は、歩行者等の障害物の検知を報知するための画面や操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。ディスプレイ191としては、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、プロジェクタ等が適宜利用可能である。
【0027】
スピーカ193は、音声データに応じた音声を出力することにより、各種の情報を出力する。スピーカ193は、歩行者等の障害物の検知を報知するための音声や操作者からの各種操作を受け付けるための音声ガイド等を出力する。
【0028】
なお、車両制御装置5は、触れられた位置に応じた情報を出力するタッチパネルが表面に設けられた、操作者の入力を受け付けるタッチパネル等の入力装置を有していても構わない。また、車両制御装置5は、ユーザの音声入力を受け付ける入力装置としてのマイクロフォン等を有していても構わない。
【0029】
なお、車両制御装置5は、ソナーやレーダー、LiDAR等のアクティブセンサを有していても構わない。
【0030】
なお、車両制御装置5は、車両3の外部に設けられていてもよい。この場合、車両制御装置5は、通信インターフェース15により例えば専用線を介して車両3と通信可能に接続される。なお、車両3及び車両制御装置5の間は、インターネット等の電気通信回線を介して通信可能に接続されてもよい。
【0031】
図2は、実施形態に係る車両制御装置5の機能構成の一例を示すブロック図である。車両制御装置5は、例えばメモリ13にロードされた車両制御プログラムをプロセッサ11が実行することにより、歩行者検知部111、距離推定部113及び車両制御部115としての機能を実現する。
【0032】
歩行者検知部111は、カメラ17に映った歩行者を見つける検知エンジンとして機能する。具体的には、歩行者検知部111は、カメラ17で得られた撮影画像に含まれる歩行者の画像上の領域を示す検知枠を算出する。ここで、撮影画像に含まれる歩行者の画像上の領域は、第1の領域の一例である。歩行者検知部111は、検知枠の算出とともに、検知枠が人物を含むことの確からしさを示す全体の信頼度を算出する。全体の信頼度は、検知枠の全体に対して算出される信頼度である。ここで、全体の信頼度は、第1の信頼度の一例である。また、歩行者検知部111は、検知枠の算出とともに、検知枠が人物の足元部分を含むことの確からしさを示す足元の信頼度を算出する。ここで、足元の信頼度は、第2の信頼度の一例である。
【0033】
距離推定部113は、撮影画像における検知枠の下端位置に基づいて車両3から歩行者までの推定距離を算出する。距離推定部113は、例えば撮影画像における検知枠の下端が地面に接地していると仮定し、車両3から歩行者までの距離を推定する。なお、車両3から歩行者までの推定距離は、他の公知の方法により推定されてもよい。
【0034】
車両制御部115は、ブレーキやアクセル、ハンドル等の車両の動作を制御する。具体的には、車両制御部115は、全体の信頼度、足元の信頼度及び推定距離に基づいて車両3の制御を開始する。
【0035】
なお、車両制御部115は、ディスプレイ191において障害物の検知や車両制御の開始を報知するための画像データを出力してもよい。また、車両制御部115は、スピーカ193において障害物の検知や車両制御の開始を報知するための音声データを出力してもよい。
【0036】
ここで、実施形態に係る歩行者検知について、図面を参照しつつ、より詳細に説明する。
図3は、実施形態に係る歩行者検知のためのニューラルネットワーク201の構成の一例を示す図である。
図3は、実施形態に係る歩行者検知のためのニューラルネットワーク201として、DNN(Deep Neural Network)を例示するが、他のニューラルネットワークも適宜利用可能である。実施形態に係るニューラルネットワーク201は、複数の関数が合成された、パラメータ付きの合成関数であり、複数の調整可能な関数及びパラメータの組合せにより定義されるとする。実施形態に係るニューラルネットワークは、複数の調整可能な関数及びパラメータの組合せにより定義されるいかなるパラメータ付きの合成関数であってもよいが、少なくとも多層のネットワークモデルであるとする。
【0037】
実施形態に係るニューラルネットワーク201は、
図3に示すように、入力層L1、複数の中間層L2及び出力層L3を有する。入力層L1は、例えば撮影画像の複数の画素の画素値が入力される複数のノードを有する。複数の中間層L2は、入力層L1の後段に設けられる。複数の中間層L2の各々において、各ノードは、前の層の各ノードからの各入力値と、学習により定められたパラメータとに基づいた値を次の層の各ノードへ出力する。出力層L3は、複数の中間層L2の後段に設けられる。出力層L3は、複数の値を出力する複数のノードN1~N6を有する。
【0038】
図3の例では、出力層L3の複数のノードN1~N4は、カメラ17で得られた撮影画像に含まれる歩行者の画像上の領域を示す検知枠に関する値を出力する。ノードN1は、検知枠の中心x座標の値である。ノードN2は、検知枠の中心y座標の値である。ノードN3は、検知枠の幅の値である。ノードN4は、検知枠の高さの値である。
図3の例では、出力層L3のノードN5は、歩行者である確率、すなわち検知枠が人物を含むことの確からしさを示す全体の信頼度の値を出力する。
図3の例では、出力層L3のノードN6は、足元が映っている確率、すなわち検知枠が人物の足元部分を含むことの確からしさを示す足元の信頼度の値を出力する。
【0039】
なお、ニューラルネットワーク201の関数やパラメータは、例えば予め定められてメモリ13に記憶されているとするが、これに限らない。ニューラルネットワーク201の関数やパラメータは、車両制御装置5に接続された外部記憶装置に記憶されていても構わない。
【0040】
歩行者検知部111は、撮影画像の入力に応じて、検知枠、全体の信頼度及び足元の信頼度を出力するようにパラメータが決定されたニューラルネットワーク201を用いて、検知枠、全体の信頼度及び足元の信頼度を算出する。具体的には、歩行者検知部111は、カメラ17から撮影画像を取得する。歩行者検知部111は、取得された撮影画像を、メモリ13等に記憶されたニューラルネットワーク201に入力する。歩行者検知部111は、入力された撮影画像に応じたニューラルネットワーク201の出力を取得する。
【0041】
このように、検知枠ごとに足元部分の有無を判断するノードをニューラルネットワークモデル(歩行者検知器)の出力層に設けることにより、例えば「0」又は「1」の値でニューラルネットワークモデルに検知枠ごとに足元部分の有無を学習させる。これにより、足元部分の信頼度を算出することができる。また、足元部分の信頼度の算出において、検知枠の算出等に要した途中結果を再利用することができるため、歩行者検知に係る計算量を抑制することもできる。
【0042】
図4~
図8は、それぞれ歩行者検知により算出される検知枠及び全体の信頼度について説明するための図である。
図7及び
図8は、それぞれ歩行者検知により算出される足元の信頼度について説明するための図である。
図4~
図6は、それぞれカメラ17からの撮影画像301,303,305の画像上に検知枠401を実線の枠で示す。同様に、
図7及び
図8は、それぞれカメラ17からの撮影画像301,303の画像上に歩行者Oの足元部分に関する検知枠403を破線の枠で示す。また、撮影画像301,303,305は、それぞれ一対の区画線501により規定される走行レーン(車線)を走行する車両3に搭載されたカメラ17により得られた画像であるとする。なお、カメラ17が車両3の前方に設けられているとすれば、
図4及び
図7に例示するように、車両3は撮影画像301,303,305の下方の位置P1にあると考えることができる。また、撮影画像301,303,305には、それぞれ走行レーンの側方に位置する歩道上の歩行者Oが映っている。また、撮影画像301,303には、それぞれ、歩行者Oの手前側にある障害物503,505が映っている。
【0043】
図4~6に示すように、撮影画像301,303,305に対する歩行者検知により算出された検知枠401に関する全体の信頼度は、いずれも「0.6」である。一方で、例えば
図7に示すように、障害物503により足元部分が隠れている歩行者Oに関する足元の信頼度は、「0.1」である。また、例えば
図8に示すように、障害物505により足元部分が見えている歩行者Oに関する足元の信頼度は、「0.8」である。また、
図6に示すように、歩行者検知により歩行者Oの足元部分がそもそも検出されていない場合もある。
【0044】
このように、検知枠401の全体の信頼度が等しい又は同等の場合であっても、障害物503,505の有無や歩行者検知の精度により、足元部分に関する足元の信頼度が異なる場合もある。したがって、検知枠401の下端が歩行者Oの地面に接している部分であると仮定して車両3から歩行者Oまでの距離を推定する場合、例えば
図4~
図6に示すように、その足元部分の検知精度に応じて推定距離が正しく算出できない場合がある。
【0045】
一方で、本実施形態に係る車両制御装置5は、上述したように、歩行車検知において歩行者Oの足元部分に関する足元の信頼度を算出することができる。また、車両制御装置5は、以下に説明するように、足元の信頼度も考慮に入れた車両制御の判断を行う。
【0046】
図9は、実施形態に係る車両制御としてのブレーキ判断について説明するための図である。車両制御部115は、
図9に示すように、全体の信頼度、足元の信頼度及び推定距離に基づいて、危険度を算出する。一例として、車両制御部115は、以下の式で示すように、全体の信頼度、足元の信頼度及び推定距離の重み付き加算値を、危険度として算出する。車両制御部115は、重み付き加算値と、予め定められた閾値とを比較する。重み付き加算値が予め定められた閾値より大きいとき、車両制御部115は、ブレーキ判断をする。そして、車両制御部115は、ブレーキ判断に応じて車両3を停止させる制御を開始する。
(危険度)=c1×(全体の信頼度)+c2×(足元の信頼度)+c3×(推定距離)
【0047】
ここで、c1,c2,c3は、それぞれ、全体の信頼度、足元の信頼度及び推定距離の重み係数である。c1,c2,c3と、危険度の閾値とは、例えば予め定められてメモリ13等に記憶されているとする。なお、実施形態に係る車両制御においては、足元の信頼度に関する重み係数のc2は、他の重み係数のc1,c3より大きい値に設定され得る。これにより、危険度の算出に係る足元の信頼度の寄与を大きくすることができる。したがって、推定距離の算出精度に起因するブレーキ判断の精度を向上させることができる。
【0048】
図10は、実施形態に係る車両制御としてのブレーキ判断について説明するための図である。車両制御部115は、足元の信頼度と、予め定められた閾値とを比較する。足元の信頼度の閾値は、例えば予め定められてメモリ13等に記憶されているとする。足元の信頼度が予め定められた閾値より小さいとき、車両制御部115は、ブレーキ判断をするとともに、自車の位置P1から目標停止位置までの距離を推定距離より短く設定する。換言すれば、車両制御部115は、足元の信頼度が予め定められた閾値より小さいとき、ブレーキ判断に応じて推定距離より手前の位置を目標停止位置として車両3を停止させる制御を開始する。これにより、推定距離の算出精度に対応する足元の信頼度に基づいて、適切な目標停止位置を設定することができる。
【0049】
また、車両制御部115は、全体の信頼度と、予め定められた閾値とをさらに比較する。全体の信頼度の閾値は、例えば予め定められてメモリ13等に記憶されているとする。全体の信頼度が予め定められた閾値より大きく、かつ、足元の信頼度が予め定められた閾値より小さいとき、車両制御部115は、車両を減速させるアクセル制御を開始する。全体の信頼度が予め定められた閾値より大きく、かつ、足元の信頼度が予め定められた閾値より小さいときとは、例えば歩行者Oが検知された可能性が高いが、いずれの距離の位置に当該歩行者Oがいるか分からない場合である。これにより、不要なブレーキを抑制しつつ、歩行者Oの飛び出しなどに備えることができる。
【0050】
また、車両制御部115は、足元の信頼度が予め定められた閾値より小さいとき、かつ、検知枠401が歩道上であるとき、車両3を進路変更させるハンドル制御を開始する。ここで、車両3を進路変更させる制御とは、例えば車両3の走行位置を、走行中のレーン内の歩行者Oが検知された歩道とは反対側寄りに変更することを含む。また、車両3を進路変更させる制御とは、例えば車両3の走行位置を、当該歩道とは反対側の他のレーンに変更することを含む。これにより、不要なブレーキを抑制しつつ、歩行者Oの飛び出しなどに備えることができる。
【0051】
以下、図面を参照して、実施形態に係る車両制御装置5の動作について説明する。なお、以下に説明する処理の流れは一例であり、処理順序の変更や一部の処理の削除、他の処理の追加も可能である。
図11は、実施形態に係る車両制御装置5において実行される、車両制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0052】
歩行者検知部111は、カメラ17から撮影画像の画像データを取得する(S101)。そして、歩行者検知部111は、取得された画像データに基づいて、歩行者を検知する(S102)。具体的には、撮影画像の画像データをニューラルネットワーク201に入力し、撮影画像の入力に応じたニューラルネットワーク201の出力、すなわち検知枠、全体の信頼度及び足元の信頼度を取得する。
【0053】
距離推定部113は、検知結果に基づいて、車両3から歩行者Oまでの距離を推定する。(S103)。例えば、距離推定部113は、撮影画像のデータと、撮影画像上の検知枠の位置とに基づいて、例えば移動ステレオ方式(SFM)により推定距離を算出する。
【0054】
車両制御部115は、全体の信頼度、足元の信頼度及び推定距離に基づいて、上述したようにして、車両3の制御方法を決定する(S104)。また、車両制御部115は、決定された制御方法により車両3の走行を制御する(S105)。その後、
図11の流れは終了する。
【0055】
このように、実施形態の車両制御装置5において、歩行者検知部111は、カメラ17で得られた撮影画像に含まれる歩行者の画像上の領域を示す検知枠を算出するとともに、検知枠が人物を含むことの確からしさを示す全体の信頼度と、検知枠が人物の足元部分を含むことの確からしさを示す足元の信頼度とを算出する。車両制御部115は、全体の信頼度、足元の信頼度及び距離推定部113により算出された推定距離に基づいて、車両3の制御方法を決定する。また、車両制御部115は、決定された制御方法により車両3の走行の制御を開始する。
【0056】
この構成によれば、歩行者検知により検知された歩行者Oに関して、足元部分の信頼性に応じてブレーキ等の制御の仕方を変えることができる。したがって、本開示に係る技術によれば、単眼カメラを用いた人物検知に基づいて適切な車両制御を実現することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
以下、本開示の第2の実施形態について説明する。以下、主として第1の実施形態との相違点について説明し、重複する部分については説明を適宜省略する。
【0058】
本実施形態に係るニューラルネットワーク201の出力層L3には、足元が映っている確率、すなわち検知枠が人物の足元部分を含むことの確からしさを示す足元の信頼度の値を出力するノードN6は設けられていない。つまり、本実施形態に係る歩行者検知部111は、撮影画像の入力に応じて検知枠及び全体の信頼度を出力するようにパラメータが決定されたニューラルネットワーク201を用いて、検知枠及び全体の信頼度を算出する。
【0059】
一方で、本実施形態に係る歩行者検知部111は、全体の信頼度の算出に寄与した撮影画像の画像上の領域を特定する。ここで、全体の信頼度の算出に寄与した撮影画像の画像上の領域は、第2の領域の一例である。なお、全体の信頼度の算出に寄与した撮影画像の画像上の領域とは、例えばニューラルネットワーク201が歩行者であると判断する際に用いた領域であると表現することもできる。当該領域としては、例えば、人物の顔や手足などが有り得る。つまり、当該領域の存在は、ニューラルネットワーク201からの全体の信頼度の値を押し上げた要因であるとも表現できる。換言すれば、歩行者検知部111は、「歩行者である確率」の値を押し上げた画像中の領域を特定する。
【0060】
また、本実施形態に係る歩行者検知部111は、検知枠401と、特定された領域との位置関係に基づいて、足元の信頼度を算出する。
図12及び
図13は、それぞれ実施形態に係る足元の信頼度の算出の別の一例について説明するための図である。
図12及び
図13は、
図6と同様に、それぞれカメラ17からの撮影画像305の画像上に検知枠401を実線の枠で示し、全体の信頼度が「0.6」の場合を例示する。また、
図12及び
図13は、「歩行者である確率」の値を押し上げた要因として特定された画像中の領域407a,407bをハッチングで示す。
【0061】
一般に歩行者Oに関しては、足元部分は、手の部分や頭部の部分よりも下方に存在する。そこで、本実施形態に係る歩行者検知部111は、
図12に示すように、検知枠401の下端位置より上側に当該領域407a,407bが特定されたとき、歩行者検知部111は、足元の信頼度を大きく算出する。一方で、歩行者検知部111は、
図13に示すように、検知枠401の下端位置より下側に当該領域407a,407bが特定されたとき、歩行者検知部111は、足元の信頼度を小さく算出する。なお、歩行者検知部111は、当該領域407a,407bのうちの下方の領域407bが検知枠401の内側にあるか否かに基づいて足元の信頼度を算出してもよい。
【0062】
この構成であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0063】
本実施形態の車両制御装置5で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、CD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等が適宜利用可能である。また、可搬型の外部記憶装置としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、Flashメモリ等が適宜利用可能である。
【0064】
また、本実施形態の車両制御装置5で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態の車両制御装置5で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0065】
また、車両制御装置5で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 車両制御システム
11 プロセッサ
111 歩行者検知部
113 距離推定部
115 車両制御部
13 メモリ
15 通信インターフェース
17 カメラ
191 ディスプレイ
193 スピーカ
3 車両
5 車両制御装置