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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139381
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】CT装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20220915BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039738
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】長野 雅実
(72)【発明者】
【氏名】山本 輝夫
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001BA29
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA14
2G001JA08
2G001JA19
(57)【要約】
【課題】検査台を移動または回転させることなく被検査物の三次元データを取得し、この三次元データに基づいてソフトリミットを設定することの出来るCT装置を提供する。
【解決手段】被検査物Wが載置され、水平方向に移動及び回転可能に設けられる検査台1と、被検査物Wに放射線ビームを照射する放射線源2と、被検査物Wを挟んで放射線源2に対向して設けられ、被検査物Wの透視画像を出力する検出器3と、検査台1の上方に設けられ、検査台1を停止させた状態で被検査物Wの三次元情報を取得する三次元情報取得部4と、三次元情報に基づいて、放射線源2または検出器3に対して被検査物Wが近接可能な領域を設定するソフトリミット設定部94と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物が載置され、水平方向に移動及び回転可能に設けられる検査台と、
前記被検査物に放射線ビームを照射する放射線源と、
前記被検査物を挟んで前記放射線源に対向して設けられ、前記被検査物の透視画像を出力する検出器と、
前記検査台の上方に設けられ、前記検査台を停止させた状態で前記被検査物の三次元情報を取得する三次元情報取得部と、
前記三次元情報に基づいて、前記放射線源または前記検出器に対して前記被検査物が近接可能な領域を設定するソフトリミット設定部と、
を備えるCT装置。
【請求項2】
被検査物が載置され、水平方向に移動及び回転可能に設けられる検査台と、
前記被検査物に放射線ビームを照射する放射線源と、
前記被検査物を挟んで前記放射線源に対向して設けられ、前記被検査物の透視画像を出力する検出器と、
前記被検査物の一側面を映す鏡と、
前記被検査物を挟んで前記鏡に対向して設けられ、前記検査台を停止させた状態で前記被検査物の他側面及び前記鏡に映る前記被検査物の前記一側面の両方を撮像し、前記被検査物の三次元情報を取得する三次元情報取得部と、
前記三次元情報に基づいて、前記放射線源または前記検出器に対して前記被検査物が近接可能な領域を設定するソフトリミット設定部と、
を備えるCT装置。
【請求項3】
前記被検査物の三次元情報、前記領域及び所定のパラメータに基づいて、前記被検査物を撮像するのに適した撮像位置を算出する撮像位置算出部を更に備え、
前記検査台は、前記撮像位置に前記被検査物を移動させる、
請求項1または2に記載のCT装置。
【請求項4】
前記被検査物の三次元情報に基づいて、前記被検査物を直交2方向または3方向で表示する三次元情報表示部と、
前記三次元情報表示部に表示された前記被検査物に関心領域を指定するROI指定部と、
前記被検査物の三次元情報、前記関心領域及び所定のパラメータに基づいて、前記関心領域を撮像するのに適した撮像位置を算出する撮像位置算出部と、
を更に備え、
前記検査台は、前記撮像位置に前記関心領域を移動させる、
請求項1または2に記載のCT装置。
【請求項5】
前記透視画像を表示する透視画像表示部を更に備え、
前記透視画像表示部は、前記透視画像に前記領域を重畳させて表示する、
請求項1乃至4のいずれかに記載のCT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CT装置は、放射線として例えばX線ビームを照射する放射線源と、この放射線源に対向して設けられ、X線ビームを検出する検出器とを備える。放射線源と検出器との間には、被検査物が載置される検査台が設けられ、被検査物に対してX線ビームが照射される間にこの検査台が1回転することにより、全方位からの透視画像が得られる。この透視画像を再構成することにより、被検査物のCT画像(断面画像)が得られる。
【0003】
被検査物を撮像するにあたって、放射線源と検出器との間で被検査物を載置した検査台を水平方向に移動させることにより、被検査物の撮像位置を調整する。また、CT画像の取得にあたっては、検査台を回転させる。この際、検査台の移動または回転により、被検査物が放射線源や検出器に衝突するおそれがある。
【0004】
このような衝突を回避するために、ソフトリミットと呼ばれる近接可能領域を設定することが知られている。このようなソフトリミットの設定により、被検査物が放射線源や検出器に衝突することを事前に回避することが出来る。ソフトリミットは手動で設定することも出来るが、設定データを誤入力するおそれがあるので、例えば特許文献1または2のように、被検査物から取得した三次元データに基づいて自動で設定することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-078557号公報
【特許文献2】特開2009-294047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来技術においても、被検査物の三次元データを取得するために、被検査物を載置した状態で検査台を水平方向に移動または回転させる必要があった。このような検査台の移動または回転には時間がかかり、またこの際の検査台の移動により、ソフトリミットを設定する前に放射線源または検出器に被検査物を衝突させるおそれも無いとは言えなかった。なお、検査台を移動または回転させずにソフトリミットを設定する手法としては、検査台の上方に設けた光学カメラ画像から被検査物のデータを取得することも考えられるが、この場合には、被検査物の高さ情報を取得することが出来ないため、ソフトリミットを設定するための三次元データとしては不十分であった。
【0007】
本実施形態は、上記課題を解決すべく、検査台を移動または回転させることなく被検査物の三次元データを取得し、この三次元データに基づいてソフトリミットを設定することの出来るCT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のCT装置は、次のような構成を備える。
(1)被検査物が載置され、水平方向に移動及び回転可能に設けられる検査台。
(2)前記被検査物に放射線ビームを照射する放射線源。
(3)前記被検査物を挟んで前記放射線源に対向して設けられ、前記被検査物の透視画像を出力する検出器。
(4)前記検査台の上方に設けられ、前記検査台を停止させた状態で前記被検査物の三次元情報を取得する三次元情報取得部。
(5)前記三次元情報に基づいて、前記放射線源または前記検出器に対して前記被検査物が近接可能な領域を設定するソフトリミット設定部。
【0009】
また、実施形態のCT装置は、次のような構成を備える。
(1)被検査物が載置され、水平方向に移動及び回転可能に設けられる検査台。
(2)前記被検査物に放射線ビームを照射する放射線源。
(3)前記被検査物を挟んで前記放射線源に対向して設けられ、前記被検査物の透視画像を出力する検出器。
(4)前記被検査物の一側面を映す鏡。
(5)前記被検査物を挟んで前記鏡に対向して設けられ、前記検査台を停止させた状態で前記被検査物の他側面及び前記鏡に映る前記被検査物の前記一側面の両方を撮像し、前記被検査物の三次元情報を取得する三次元情報取得部。
(6)前記三次元情報に基づいて、前記放射線源または前記検出器に対して前記被検査物が近接可能な領域を設定するソフトリミット設定部。
【0010】
実施形態のCT装置は、更に次のような構成を備えてもよい。
(1)前記被検査物の三次元情報、前記領域及び所定のパラメータに基づいて、前記被検査物を撮像するのに適した撮像位置を算出する撮像位置算出部を更に備え、前記検査台は、前記撮像位置に前記被検査物を移動させる。
【0011】
(2)前記被検査物の三次元情報に基づいて、前記被検査物を直交2方向または3方向で表示する三次元情報表示部と、前記三次元情報表示部に表示された前記被検査物に関心領域を指定するROI指定部と、前記被検査物の三次元情報、前記関心領域及び所定のパラメータに基づいて、前記関心領域を撮像するのに適した撮像位置を算出する撮像位置算出部と、を更に備え、前記検査台は、前記撮像位置に前記関心領域を移動させる。
【0012】
(3)前記透視画像を表示する透視画像表示部を更に備え、前記透視画像表示部は、前記透視画像に前記領域を重畳させて表示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るCT装置を示す模式図である。
図2】第1の実施形態に係る制御部を示す機能ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係るソフトリミットを示す図である。
図4】第1の実施形態に係るXY機構による被検査物Wの移動について説明する図である。
図5】第1の実施形態に係る撮像位置の算出について説明する図である。
図6】第1の実施形態に係るROIの設定について説明する図である。
図7】第1の実施形態に係るROIを設定する場合のXY機構による被検査物Wの移動について説明する図である。
図8】第1の実施形態に係るROIを設定する場合の撮像位置の算出について説明する図である。
図9】第1の実施形態に係る透視画像にソフトリミット及びROIを重畳して表示した図である。
図10】第1の実施形態に係るCT装置の作用を示すフローチャートである。
図11】第2の実施形態に係るCT装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1.第1の実施形態]
[1-1.実施形態の構成]
以下、実施形態に係るCT装置の構成について、図1乃至図4を参照しつつ説明する。CT装置100は、被検査物Wに放射線を照射し、被検査物Wを透過した放射線を検出する。この検出結果に基づき、CT装置100は、被検査物WのCT画像を生成する。図1に示すように、CT装置100は、被検査物Wがその上面に載置される検査台1と、被検査物Wの透視画像を撮像する放射線源2及び検出器3と、被検査物Wの上方に設けられ、被検査物Wの三次元情報を取得する三次元情報取得部4と、を備える。さらに、CT装置100は、検査台1と、放射線源2と、検出器3と、三次元情報取得部4の動作を制御する制御部9と、透視画像及び後述のソフトリミットSを重畳して表示する透視画像表示部Mと、を備える。
【0015】
検査台1は、被検査物Wを載置する載置面を有する台である。検査台1は、載置面に平行な方向または垂直な方向に当該載置面を移動させる移動機構11と、この垂直な方向を軸に載置面を回転させる回転機構12と、載置面上で載置面に平行な方向に被検査物Wを移動させるXY機構13と、を備える。
【0016】
移動機構11は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。すなわち、移動機構11は、サーボモータの駆動により、検査台1の載置面に平行な方向または垂直な方向に当該載置面ごと被検査物Wを移動させる。
【0017】
回転機構12は、移動機構11の上に設けられ、例えば、モータ等の駆動源を含んでなるアクチュエータである。回転機構12は、検査台1の載置面に垂直な軸を中心に当該載置面を回転させる。この回転によって、被検査物Wを全方位から撮像して透視画像を取得し、これら透視画像からCT画像を再構成することが出来る。
【0018】
XY機構13は、回転機構12の上に設けられ、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。XY機構13は、検査台1の載置面上で被検査物Wを移動させる。換言すると、移動機構11のように検査台1の回転軸(載置面の回転軸)ごと被検査物Wを移動させるのではなく、この回転軸の位置を変えずに載置面上で被検査物Wを移動させる。これにより、検査台1の載置面の中心に被検査物Wを移動させることが出来る。このように、移動機構11とXY機構13は、それぞれ独立して、載置面に平行な方向に被検査物Wを移動させることが出来る。
【0019】
放射線源2は、被検査物Wに放射線ビームを照射する。放射線ビームは、焦点を頂点として角錐形状に拡大する放射線の束である。放射線源2は、例えばX線管であり、放射線は、例えばX線である。検出器3は、検査台1及び被検査物Wを挟んで放射線源2に対向して設けられ、放射線の透過経路に応じて減弱した放射線強度の二次元分布を検出し、後述の画像処理部93及び透視画像表示部Mに透視画像を出力する。検出器3は、例えばフラットパネルディテクタ(FPD)により構成される。
【0020】
三次元情報取得部4は、例えば三次元測定器または3Dカメラである。3Dカメラとしては、例えばToF方式、ステレオ方式、構造化照明方式のものを採用することが出来る。三次元情報取得部4は、撮像対象の外観情報に加え、撮像対象までの距離情報を取得することが出来る。三次元情報取得部4は、検査台1の上方に設けられ、検査台1を停止させた状態で検査台1に載置された被検査物Wを撮像し、当該被検査物Wの三次元情報を取得する。なお、厳密には、予め被検査物Wが載置されていない状態の検査台1を撮像しておき、これと検査台1に被検査物Wが載置された状態での撮像との差分として、被検査物Wの三次元情報を取得している。三次元情報取得部4は、取得した被検査物Wの三次元情報を後述のソフトリミット設定部94、撮像位置算出部95及びROI設定部96に出力する。
【0021】
制御部9は、図2に示すように、検査台1の移動機構11及び回転機構12を制御する機構制御部91と、放射線源2を制御する放射線源制御部92と、検出器3から取得した透視画像に対して補正及び再構成を行い、CT画像を生成する画像処理部93と、三次元情報取得部4から取得した被検査物Wの三次元情報に基づいてソフトリミットSを設定するソフトリミット設定部94と、被検査物Wを撮像するのに適切な撮像位置を算出する撮像位置算出部95と、三次元情報取得部4が取得した三次元情報に基づいて、被検査物Wを直交2方向または3方向で表示し、この表示画像において被検査物Wに関心領域(以下、ROIという。)を設定するROI設定部96と、を備える。
【0022】
制御部9は、コンピュータ及びドライバ回路により構成される。コンピュータは、HDDまたはSSDといったストレージ、RAM、CPUなどにより構成される。なお、制御部9には図示しない入力部が接続され、ユーザはこの入力部を介して制御部9にCT装置100の各構成を制御させる。
【0023】
機構制御部91は、検査台1の移動機構11、回転機構12及びXY機構13を制御することにより、検査台1に載置された被検査物Wを移動及び回転させることが出来る。特に、本実施形態の機構制御部91は、ソフトリミット設定部94が設定したソフトリミットSから被検査物Wが出ないように検査台1の移動及び回転を制御する。
【0024】
放射線源制御部92は、放射線源2を制御し、被検査物Wに放射線ビームを照射させる。これにより、被検査物Wを挟んで放射線源2に対向して設けられる検出器3から被検査物Wの透視画像を取得することが出来る。
【0025】
画像処理部93は、検出器3からオフセットデータやゲインデータなどの各種データを取得する取得部931と、この各種データに基づき透視画像を補正する補正部932と、補正した透視画像を再構成する再構成部933と、を備える。再構成には、例えばFeldKampのFBP法を用い、補正後透視画像ごとにフィルタリングとバックプロジェクション(逆投影)を行うことにより、CT画像を生成する。
【0026】
ソフトリミット設定部94は、三次元情報取得部4から取得した被検査物Wの三次元情報に基づいて、ソフトリミットSを設定する。ソフトリミットSは、被検査物Wが放射線源2または検出器3に近接可能な領域である。換言すれば、ソフトリミットSは、被検査物Wが放射線源2または検出器3に衝突するおそれのない領域である。本実施形態のソフトリミットSは、検査台1の回転軸を中心に設定される。以下、ソフトリミットSの設定について、図3を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
ソフトリミット設定部94は、三次元情報取得部4から取得した被検査物Wの三次元情報に基づいて、当該被検査物Wを包含する円筒領域を設定する。図3の上面視において、この円筒領域は、被検査物Wの外接円となる。この外接円の半径をr1、この外接円の中心から検査台1の載置面の回転軸までの距離をr2とすると、被検査物Wを回転させた場合の外周軌跡の半径はr1+r2となる。この半径r1+r2に余裕分の距離βを加えた距離が、ソフトリミットSの半径である。余裕分の距離βは、任意に設定することが出来る。なお、ソフトリミットSの高さ方向の設定としては、例えば、被検査物Wの三次元情報に基づいて得られる当該被検査物Wの高さに余裕分の距離βを加えたものを用いればよい。このようにして、ソフトリミット設定部94は、検査台1の回転軸を中心にソフトリミットSを設定する。さらに、ソフトリミット設定部94は、ソフトリミットSを撮像位置算出部95及び透視画像表示部Mに出力する。
【0028】
ソフトリミットSの設定により、放射線源2に対する検査台1の近接移動可能距離md1は、次の式により求められる。なお、式中のFCDは、放射線源2の焦点から検査台1の回転軸中心までの距離であり、αは、放射線源2の焦点から窓までの間の距離である。
md1=FCD-α-(ソフトリミットSの半径)
=FCD-α-(r1+r2)-β
【0029】
同様に、検出器3に対する検査台1の近接移動可能距離md2は、次の式により求められる。なお、式中のFDDは、放射線源2の焦点から検査台3までの距離である。
md2=(FDD-FCD)-(ソフトリミットSの半径)
=(FDD-FCD)-(r1+r2)-β
【0030】
撮像位置算出部95は、三次元情報取得部4から取得した被検査物Wの三次元情報、ソフトリミットS及び所定のパラメータに基づいて、被検査物Wを撮像するのに適した撮像位置を算出する。所定のパラメータとは、放射線源2に対する検査台1の載置面の高さ、検出器3の撮像範囲、透視画像の拡大倍率などの各種パラメータである。被検査物Wを撮像するのに適した撮像位置とは、例えば、ソフトリミットSにより規定される近接移動可能範囲において、検出器3が最大拡大倍率で被検査物Wの透視画像を取得できるような位置である。以下、撮像位置の算出について、図4及び図5を参照しつつ詳細に説明する。
【0031】
まず、撮像位置算出部95は、被検査物Wの三次元情報に基づいて、被検査物Wの外接円の中心位置と検査台1の回転軸中心位置を取得する。撮像位置算出部95は、この情報を機構制御部91に出力する。これにより、図4に示すように、機構制御部91は、被検査物Wの外接円の中心位置が検査台1の回転軸中心位置に合うように、XY機構13に被検査物Wを移動させる。
【0032】
次に、撮像位置算出部95は、被検査物Wの外接円中心位置が検査台1の回転軸と同心円となった状態で、被検査物Wまたは余裕分の距離βが放射線ビームに入る位置であって、被検査物Wの透視画像が最大拡大倍率となり、かつソフトリミットSに規定される近接移動可能範囲内であるような撮像位置を算出する。なお、上述の所定のパラメータに基づいて、最大拡大倍率の上限を規定しても良い。撮像位置算出部95は、この撮像位置を機構制御部91に出力する。これにより、図5に示すように、機構制御部91は、撮像位置算出部95が算出した撮像位置へと、移動機構11に被検査物Wの外接円中心位置を移動させる。なお、この時r2=0となっているので、図5に示される検査台1の回転軸を中心に設定されるソフトリミットSは、図4に比して小さくなっている。
【0033】
ROI設定部96は、三次元情報表示部961と、ROI指定部962と、を備える。三次元情報表示部961は、例えば液晶または有機ELなどを含んでなり、三次元情報取得部4から取得した被検査物Wの三次元情報に基づいて、被検査物Wを直交2方向または3方向で表示する。以下では、検査台1の載置面に平行な、互いに直交する2方向、及びこれら2方向に直交する1方向の3方向で被検査物Wを表示するものとして説明する。
【0034】
ここで、放射線源2と検出器3とが並ぶ方向をX方向、検査台1の載置面に平行であって、X方向に直交する方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とすると、被検査物Wは、図6に示すように、Z方向(XY平面)、X方向(YZ平面)、Y方向(XZ平面)の直交3方向で表示される。
【0035】
ROI指定部962は、三次元情報表示部961に表示されている被検査物Wに対してROIを指定する。具体的には、図6に示すように、XY平面、YZ平面、XZ平面のそれぞれにおいて、被検査物Wに対して円形または長方形のROIを指定する。これにより、ROIは、円筒領域として指定される。すなわち、ROIは、三次元的な領域として指定される。
【0036】
このように、ROI設定部96により被検査物WにROIを設定した場合においては、撮像位置算出部95は、ROIが設定された個所を撮像するのに適した撮像位置を算出する。以下、ROIを設定した場合の撮像位置の算出について、図7及び図8を参照しつつ詳細に説明する。
【0037】
まず、撮像位置算出部95は、被検査物Wの三次元情報及びROIに基づいて、被検査物Wに設定されたROIの中心位置と検査台1の回転軸中心位置を取得する。撮像位置算出部95は、この情報を機構制御部91に出力する。これにより、図7に示すように、機構制御部91は、被検査物Wに設定されたROIの中心位置が検査台1の回転軸中心位置に合うように、XY機構13に被検査物Wを移動させる。
【0038】
次に、撮像位置算出部95は、被検査物Wに設定されたROIの中心位置が検査台1の回転軸と(上面視において)同心円となった状態で、被検査物Wに設定されたROIが放射線ビームに入る位置であって、ROIの透視画像が最大拡大倍率となり、かつソフトリミットSに規定される近接移動可能範囲内であるような撮像位置を算出する。なお、上述の所定のパラメータに基づいて、最大拡大倍率の上限を規定しても良い。撮像位置算出部95は、この撮像位置を機構制御部91に出力する。これにより、図8に示すように、機構制御部91は、撮像位置算出部95が算出した撮像位置へと、移動機構11に被検査物Wに設定されたROIの中心位置を移動させる。
【0039】
透視画像表示部Mは、例えば液晶または有機ELなどを含んでなり、図9に示すように、検出器3が取得した被検査物Wの透視画像とソフトリミット設定部94が設定したソフトリミットSを重畳して表示する。さらに、透視画像表示部Mは、ROI設定部96がROIを設定した場合には、当該ROIを透視画像に重畳して表示することも出来る。なお、透視画像表示部Mにおいて、ROI設定部96が設定したROIは、透視画像上の対応する位置及び倍率で表示される。
【0040】
[1-2.実施形態の作用]
本実施形態のソフトリミットの設定、撮像位置の算出、CT画像の生成について、図10のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
(1)ソフトリミットの設定
三次元情報取得部4は、検査台1を停止させた状態で被検査物Wの三次元情報を取得し、ソフトリミット設定部94、撮像位置算出部95及びROI設定部96に出力する(ステップS01)。ソフトリミット設定部94は、三次元情報取得部4から取得した被検査物Wの三次元情報に基づいて、検査台1の回転軸を中心にソフトリミットSを設定する(ステップS02)。ソフトリミットSは、例えば、上面視における被検査物Wの外接円の中心位置、検査台1の回転軸中心位置、及び余裕分の距離から設定することが出来る。このソフトリミットSにより、被検査物Wの近接移動可能距離が規定される。
【0042】
(2)撮像位置の算出
撮像位置算出部95は、ソフトリミット設定部94から取得した被検査物Wの三次元情報及びソフトリミット設定部94から取得したソフトリミットSに基づいて、検出器3が被検査物Wを撮像するのに適した撮像位置を算出する。なお、ここではROIを設定しないものとする(ステップS03のNO)。
【0043】
まず、撮像位置算出部95は、被検査物Wの三次元情報に基づいて、被検査物Wの外接円の中心位置と検査台1の回転軸中心位置を取得する。撮像位置算出部95は、この情報を機構制御部91に出力し、機構制御部91は、被検査物Wの外接円の中心位置が検査台1の回転軸中心位置に合うように、XY機構13に被検査物Wを移動させる。次に、撮像位置算出部95は、被検査物Wの外接円中心位置が検査台1の回転軸と同心円となった状態で、被検査物Wまたは余裕分の距離βが放射線ビームに入る位置であって、被検査物Wの透視画像が最大拡大倍率となり、かつソフトリミットSに規定される近接移動可能範囲内であるような撮像位置を算出する(ステップS04-1)。
【0044】
さらに、撮像位置算出部95がこの撮像位置を機構制御部91に出力することにより、機構制御部91は、移動機構11を制御して、この撮像位置へと被検査物Wの外接円中心を移動させる(ステップS05)。この後、後述のステップS06に進む。
【0045】
次に、ROIを設定する場合について説明する(ステップS03のYES)。ROI指定部962により、三次元情報表示部961に表示される被検査物Wに対してROIを設定する場合は、このROIに応じて撮像位置算出部95が被検査物Wの撮像位置を算出する。
【0046】
まず、撮像位置算出部95は、被検査物Wの三次元情報及びROIに基づいて、被検査物Wに設定されたROIの中心位置と検査台1の回転軸中心位置を取得する。撮像位置算出部95は、この情報を機構制御部91に出力し、機構制御部91は、被検査物Wに設定されたROIの中心位置が検査台1の回転軸中心位置に合うように、XY機構13に被検査物Wを移動させる。次に、撮像位置算出部95は、被検査物Wに設定されたROIの中心位置が検査台1の回転軸と同心円となった状態で、被検査物Wに設定されたROIが放射線ビームに入る位置であって、ROIの透視画像が最大拡大倍率となり、かつソフトリミットSに規定される近接移動可能範囲内であるような撮像位置を算出する(ステップS04-2)。この後、上述のステップS05に進み、さらにステップS06に進む。
【0047】
(3)CT画像の生成
撮像位置に検査台1を移動させた後、機構制御部91の制御による検査台1の回転と放射線源制御部92の制御による放射線源2の放射線ビームの照射とを同時に行うことにより、検出器3は、全方位からの被検査物Wまたは当該被検査物Wに設定されたROIの透視画像を取得する(ステップS06)。この透視画像に対して、画像処理部93の補正部32が補正処理を行い、さらに再構成部933がこの補正後の透視画像を再構成することにより、CT画像を生成する(ステップS07)。
【0048】
[1-3.実施形態の効果]
(1)本実施形態では、三次元情報取得部4が取得した被検査物Wの三次元情報に基づいて、ソフトリミット設定部94がソフトリミットSを設定する。これにより、検査台1を移動または回転させる手間なく、ソフトリミットSを設定することが出来る。また、三次元情報に基づいてソフトリミットSを設定しているので、被検査物Wの高さ方向についても有効なソフトリミットSを設定することが出来る。
【0049】
(2)本実施形態では、撮像位置算出部95が、被検査物Wの三次元情報及びソフトリミットSに基づいて、被検査物Wの撮像に適した撮像位置を算出することが出来る。これにより、例えば、ソフトリミットSにより規定される近接移動可能範囲において、検出器3が最大拡大倍率で被検査物Wの透視画像を取得できるような撮像位置に被検査物Wを移動させることが出来る。
【0050】
(3)本実施形態では、ROI指定部962により、三次元情報表示部961に表示された被検査物Wに対してROIを指定することが出来る。三次元情報表示部961により、被検査物Wは直交3方向で表示されるので、ROIも被検査物W同様、三次元的な領域として指定することが出来る。撮像位置算出部95は、このような三次元的な領域としてのROIを考慮して撮像位置を算出することが出来るので、例えば、ソフトリミットSにより規定される近接移動可能範囲において、検出器3が最大拡大倍率で被検査物Wに設定されたROIの透視画像を取得できるような撮像位置に被検査物Wを移動させることが出来る。
【0051】
(4)本実施形態では、透視画像表示部Mに被検査物Wの透視画像とソフトリミットSとを重畳して表示させることが出来る。これにより、ユーザは被検査物Wに対するソフトリミットSの範囲を視覚的に認識することが出来る。
【0052】
[2.第2の実施形態]
[2-1.構成]
本実施形態のCT装置100の構成を、図11を参照して説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と基本構成が同じである。以下では、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施形態のCT装置100においては、図11に示すように、三次元情報取得部4が、検査台1の上方でなく、放射線源2の近傍、例えば直上に設けられる。本実施形態のCT装置100は、さらに、鏡5を備える。鏡5は、検出器3の上方に、三次元情報取得部4側から見て被検査物Wの裏面(検出器3に対向する側の面)を映すように設けられる。すなわち、三次元情報取得部4は、被検査物Wの表面(放射線源2に対向する側の面)に加え、鏡5を介して被検査物Wの裏面を撮像することが出来る。
【0054】
三次元情報取得部4による被検査物Wの裏面の撮像について、詳細に説明する。三次元情報取得部4は、鏡5に設けられた図示しない複数の目印の位置情報を取得することにより、鏡5の平面を示す方程式を求めることが出来る。この平面方程式と、鏡5に映った被検査物Wの裏面の位置情報とから、三次元情報取得部4から被検査物Wの裏面までの距離情報を算出することが出来る。すなわち、三次元情報取得部4は、鏡5を介して、被検査物Wの裏面の位置情報を算出することが出来る。これにより、三次元情報取得部4は、直接撮像した被検査物Wの表面と間接的に撮像した被検査物Wの裏面とから、被検査物Wの三次元情報を取得することが出来る。なお、この技術については、例えば『三次元計測器による鏡面を利用した形状測定』(岐阜県情報技術研究所研究報告(11)、30-34頁、2009年)等に詳しい。
【0055】
[2-2.作用]
本実施形態のソフトリミットSの設定、撮像位置の算出、CT画像の生成については、第1の実施形態と基本的に同じであるので、説明を省略する。
【0056】
[2-3.効果]
本実施形態では、三次元情報取得部4が放射線源2の直上に設けられている。第1の実施形態では、被検査物Wが傘のような構造であった場合に、傘の陰になった部分を撮像することが出来ない。このため、被検査物Wに対してROIを三次元的な領域として指定する場合にデータ欠損などの不具合が生じることがあり、例えば上面視における被検査物Wの外接円を底面とする円筒などでこの欠損部分を補う必要があった。しかしながら、本実施形態では放射線源2の直上に設けられた三次元情報取得部4及び鏡5により撮像を行うので、このような不具合が生じることが無い。
【0057】
[3.他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0058】
(1)上記実施形態の三次元情報表示部961は、直交3方向で被検査物Wを表示したが、直交2方向で表示しても良い。この場合であっても、ROIを2方向から指定できるので、ROIを三次元的な領域として指定することが出来る。また、予めROIの形状を円筒領域に設定しておくことも出来る。このようにすれば、例えばX方向(YZ平面)とY方向(XZ平面)の直交2方向から長方形でROIを指定したとしても、図6と同様に、円筒領域としてのROI指定を行うことが出来る。なお、3方向から指定するROIまたは予め設定するROIの形状は円筒領域に限られず、球形領域や直方体領域であっても良い。
【0059】
(2)第1の実施形態の三次元情報取得部4は、三次元測定器または3Dカメラとしたが、これに限らず、超音波やレーザー光を用いた装置とすることも出来る。
【0060】
(3)第2の実施形態において、三次元情報取得部4を放射線源2側に、鏡5を検出器3側に設けることとしたが、これに限られない。ソフトリミットSを設定するための被検査物Wの三次元情報を取得できるのであれば、三次元情報取得部4を検出器3側に、鏡5を放射線源2側に設けてもよいし、その他どこに設けても良い。
【符号の説明】
【0061】
100…CT装置
1…検査台
11…移動機構
12…回転機構
2…放射線源
3…検出器
4…三次元情報取得部
5…鏡
9…制御部
91…機構制御部
92…放射線源制御部
93…画像処理部
931…取得部
932…補正部
933…再構成部
94…ソフトリミット設定部
95…撮像位置算出部
96…ROI設定部
961…三次元情報表示部
962…ROI指定部
M…透視画像表示部
S…ソフトリミット
W…被検査物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図11