(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139402
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20220915BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220915BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20220915BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652H
H01L29/78 652B
H01L29/78 657C
H01L29/91 C
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 658G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039771
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】小島 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 将伸
(72)【発明者】
【氏名】畑 謙佑
(57)【要約】
【課題】裏面の酸化膜およびポリシリコンによるウェハ反りの影響等を緩和して、ESC吸着エラーや運送エラー等を抑制でき、半導体装置の電気特性不良や電極形成不良等を抑えることができる炭化珪素半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置の製造方法は、第1半導体層、第2半導体層、第3半導体層を形成する。次に、炭化珪素半導体基板のおもて面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する。次に、ゲート電極の表面に第1絶縁膜を形成する。次に、炭化珪素半導体基板の裏面に形成されたゲート絶縁膜、ゲート電極および第1絶縁膜を同時に除去する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の炭化珪素半導体基板のおもて面に、前記炭化珪素半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程と、
前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第2導電型の第2半導体層を形成する第2工程と、
前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第1導電型の第3半導体層を形成する第3工程と、
前記炭化珪素半導体基板のおもて面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第4工程と、
前記ゲート電極の表面に第1絶縁膜を形成する第5工程と、
前記炭化珪素半導体基板の裏面に形成された前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極および前記第1絶縁膜を同時に除去する第6工程と、
前記第1半導体領域の表面に第1電極を形成する第7工程と、
前記炭化珪素半導体基板の裏面に第2電極を形成する第8工程と、
を含むことを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第5工程の後であって、前記第6工程の前に、
前記ゲート電極上に層間絶縁膜を形成する第9工程と、
前記層間絶縁膜上に、ポリシリコンを形成する第10工程と、
前記ポリシリコンの表面に第2絶縁膜を形成する第11工程と、
をさらに有し、
前記第6工程では、前記炭化珪素半導体基板の裏面に形成された前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極、前記第1絶縁膜、前記層間絶縁膜、前記ポリシリコンおよび前記第2絶縁膜を同時に除去することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法
【請求項3】
前記第6工程の後であって、前記第7工程の前に、前記ポリシリコン表面にセンサ部を形成する第12工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第6工程ではドライエッチングを用いることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ドライエッチングは、同一チャンバー内で連続して実施することを特徴とする請求項4に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ドライエッチングのエッチング条件は、すべて同一の条件で実施することを特徴とする請求項4に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ドライエッチングはケミカルドライエッチングで行い、前記エッチング条件は、前記炭化珪素半導体基板と、前記炭化珪素半導体基板の裏面に形成されたゲート絶縁膜との選択比が100以上であることを特徴とする請求項6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程と前記第4工程との間に、前記第3半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に第1導電型の第1半導体領域を選択的に形成する第13工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第3工程と前記第4工程との間に、前記第2半導体層および前記第3半導体層を貫通し、前記第1半導体層に達するトレンチを形成する第14工程をさらに含み、
前記第6工程では、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極は前記トレンチの内部に形成することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第12工程では、前記ポリシリコンにイオン注入を行い、ダイオードを形成することを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に代わる次世代の半導体材料として期待されている。炭化珪素を半導体材料に用いた半導体素子(以下、炭化珪素半導体装置とする)は、シリコンを半導体材料に用いた従来の半導体素子と比較して、オン状態における素子の抵抗を数百分の1に低減可能であることや、より高温(200℃以上)の環境下で使用可能なこと等、様々な利点がある。これは、炭化珪素のバンドギャップがシリコンに対して3倍程度大きく、シリコンよりも絶縁破壊電界強度が1桁近く大きいという材料自体の特長による。
【0003】
炭化珪素半導体装置としては、現在までに、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)、プレーナゲート構造やトレンチゲート構造の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が製品化されている。
【0004】
従来、大電流が流せるようにチャネル密度を高くした構造として、トレンチゲート構造を有する炭化珪素半導体装置がある(例えば、特許文献1参照)。炭化珪素半導体装置の信頼性をさらに向上させるために、メイン半導体素子である縦型MOSFETと同一の半導体基板に、電流センス部、温度センス部および過電圧保護部等の高機能領域を配置している半導体装置が提案されている。高機能構造とする場合、高機能領域を安定して形成するために、活性領域に、メイン半導体素子の単位セルと離して、かつエッジ終端領域に隣接して、高機能領域のみを配置した領域が設けられる。活性領域は、メイン半導体素子のオン時に主電流が流れる領域である。エッジ終端領域は、半導体基板のおもて面側の電界を緩和して耐圧(耐電圧)を保持するための領域である。耐圧とは、素子が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。
【0005】
図13は、従来の炭化珪素半導体装置の製造方法のフローチャートである。
図13では、トレンチ形成以降の工程を記載している。まず、トレンチを形成し(ステップS301)、トレンチのダメージを除去するための等方性エッチングや犠牲酸化等を行った後、半導体層に注入したイオンを活性化させるため活性化処理を行う(ステップS302)。次に、トレンチ内にゲート絶縁膜を形成し(ステップS303)、ゲート絶縁膜と炭化珪素基板との間の界面準位を低減するためアニールを行う(ステップS304)。
【0006】
次に、ゲート絶縁膜内にゲート電極を形成し(ステップS305)、ゲート電極パターンを形成後(ステップS306)、ゲート電極表面に絶縁膜を形成する(ステップS307)。次に、絶縁膜上に、層間絶縁膜を形成する(ステップS308)。
【0007】
次に、温度センス部を形成するため、センサ用多結晶ポリシリコンを形成し(ステップS309)、センサ用多結晶ポリシリコンパターンを形成し(ステップS310)、センサ用多結晶ポリシリコン表面に絶縁膜を形成する(ステップS311)。次に、表面をレジストで保護した後(ステップS312)、センサ用多結晶ポリシリコン表面にセンサ部を形成する(ステップS313)。
【0008】
次に、層間絶縁膜をエッチングして、コンタクトホールおよびコンタクト部を形成し(ステップS314)、コンタクトホール内に電極を埋め、ソース電極パッドを形成する(ステップS315)。
【0009】
次に、半導体素子の電極周囲に保護膜として、ポリイミド膜を形成後、表面めっきを形成する(ステップS316)。次に、低抵抗化のため、裏面から研削する(ステップS317)。次に、裏面にドレイン電極を形成する(ステップS318)ことで、炭化珪素半導体装置が完成する。
【0010】
このような炭化珪素半導体装置の製造方法では、トレンチゲート内部にゲート絶縁膜やゲート電極を形成する際、熱酸化や炉型のCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相蒸着)装置でゲート絶縁膜やゲート電極を成膜するため、本来成膜したい面の裏面にも膜が成膜される。これらの積層膜は、ステップS317のウェハの薄化時にまとめて研削される。
【0011】
また、Si(シリコン)-IGBT(Insulated Gate Bipolar Transister:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の製造プロセスでも、CVDによる酸化膜やポリシリコン膜は、熱酸化する際に本来成膜したい面の裏面にも膜が成膜される。これらの積層膜もウェハの薄化時にまとめて研削される。
【0012】
また、CF4(四フッ化炭素)とO2(酸素)などをエッチャントとしたドライエッチングあるいは緩衝フッ酸溶液を用いたウェットエッチングとドライエッチングとを順に組み合わせたエッチングを用いて、裏面側に積層した一過性の多結晶シリコン酸化膜と一過性の多結晶シリコン膜を完全に除去する技術が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2019-46909号公報
【特許文献2】特開2003-243654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここで、SiC-MOSFET等のSiC基板を用いたデバイスにSiデバイスのプロセスをそのまま適用した場合、裏面に回り込んだ成膜層が残っていると、SiCウェハ反りの影響でESC(Electrostatic Chuck)吸着や運送等に支障をきたす。特に、温度センスや電流センスを搭載したデバイスの場合、酸化膜やポリシリコン層が複数層に重なるため、より支障が顕著になる。この場合、プロセスが正常に実施されず、半導体装置の電気特性不良が発生する。
【0015】
このため、上述の
図13のフローチャートに示すように、炭化珪素半導体装置の製造方法では、裏面を研削する際に、裏面に回り込んだ成膜層を除去している。しかしながら、裏面を研削する際、硬度の高いSiC基板と、硬度の低い酸化膜、ポリシリコンを同時に研削するため、削れムラ等が発生する。この場合、電極形成不良等が発生する。
【0016】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、裏面の酸化膜およびポリシリコンによるウェハ反りの影響等を緩和して、ESC吸着エラーや運送エラー等を抑制でき、半導体装置の電気特性不良や電極形成不良等を抑えることができる炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、第1導電型の炭化珪素半導体基板のおもて面に、前記炭化珪素半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程を行う。次に、前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第2導電型の第2半導体層を形成する第2工程を行う。次に、前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第1導電型の第3半導体層を形成する第3工程を行う。次に、前記炭化珪素半導体基板のおもて面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第4工程を行う。次に、前記ゲート電極の表面に第1絶縁膜を形成する第5工程を行う。次に、前記炭化珪素半導体基板の裏面に形成された前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極および前記第1絶縁膜を同時に除去する第6工程を行う。次に、前記第1半導体領域の表面に第1電極を形成する第7工程を行う。次に、前記炭化珪素半導体基板の裏面に第2電極を形成する第8工程を行う。
【0018】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第5工程の後であって、前記第6工程の前に、前記ゲート電極上に層間絶縁膜を形成する第9工程と、前記層間絶縁膜上に、ポリシリコンを形成する第10工程と、前記ポリシリコンの表面に第2絶縁膜を形成する第11工程と、をさらに有し、前記第6工程では、前記炭化珪素半導体基板の裏面に形成された前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極、前記第1絶縁膜、前記層間絶縁膜、前記ポリシリコンおよび前記第2絶縁膜を同時に除去することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第6工程の後であって、前記第7工程の前に、前記ポリシリコン表面にセンサ部を形成する第12工程をさらに含むことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第6工程ではドライエッチングを用いることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記ドライエッチングは、同一チャンバー内で連続して実施することを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記ドライエッチングのエッチング条件は、すべて同一の条件で実施することを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記ドライエッチングはケミカルドライエッチングで行い、前記エッチング条件は、前記炭化珪素半導体基板と、前記炭化珪素半導体基板の裏面に形成されたゲート絶縁膜との選択比が100以上であることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第3工程と前記第4工程との間に、前記第3半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に第1導電型の第1半導体領域を選択的に形成する第13工程をさらに含むことを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第3工程と前記第4工程との間に、前記第2半導体層および前記第3半導体層を貫通し、前記第1半導体層に達するトレンチを形成する第14工程をさらに含み、前記第6工程では、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極は前記トレンチの内部に形成することを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第12工程では、前記ポリシリコンにイオン注入を行い、ダイオードを形成することを特徴とする。
【0027】
上述した発明によれば、裏面積層膜(裏面のゲート絶縁膜、裏面のゲート電極、裏面の第1絶縁膜、裏面の層間絶縁膜、裏面のセンサ用多結晶ポリシリコンおよび裏面の第2絶縁膜)をドライエッチングにより一括除去している。これにより、裏面の酸化膜およびポリシリコンによるウェハ反りの影響等を緩和して、ESC吸着エラーや運送エラー等を抑制できる。また、裏面積層膜を除去するためのウェットエッチング工程を省略できる。これにより、硬度の高いSiC基板と、硬度の低い酸化膜、ポリシリコンを同時に研削することがないため、削れムラが発生せず、電極形成不良が発生することを抑制できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、裏面の酸化膜およびポリシリコンによるウェハ反りの影響等を緩和して、ESC吸着エラーや運送エラー等を抑制でき、半導体装置の電気特性不良や電極形成不良等を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の温度センス部の構造を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法のフローチャートである。
【
図4】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図5】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図6】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図7】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図8】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図9】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
【
図10】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法のフローチャートである。
【
図11】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図12】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図13】従来の炭化珪素半導体装置の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
【0031】
(実施の形態1)
本発明にかかる半導体装置は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成される。実施の形態1においては、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いて作製(製造)された炭化珪素半導体装置について、トレンチ型MOSFET70を例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
【0032】
図1に示すように、トレンチ型MOSFET70は、半導体基板のおもて面(後述するp型ベース層6側の面)側にトレンチゲート構造のMOSゲート構造を備えている。炭化珪素半導体基体は、炭化珪素からなるn
+型炭化珪素基板(第1導電型の炭化珪素半導体基板)1上に第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)2とp型ベース層(第2導電型の第2半導体層)6とを順にエピタキシャル成長させてなる。また、第2n
-型炭化珪素エピタキシャル層4を第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2上にエピタキシャル成長させてもよい。以下、n
+型炭化珪素基板1と、p型ベース層6と、第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2と、第2n
-型炭化珪素エピタキシャル層4とを併せて炭化珪素半導体基体(炭化珪素からなる半導体基板)とする。
【0033】
トレンチゲート構造のMOSゲート構造は、p型ベース層6、n型ソース領域(第1導電型の第3半導体層)7、n+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)8、p++型コンタクト領域9、トレンチ10、ゲート絶縁膜11およびゲート電極12で構成される。
【0034】
具体的には、トレンチ10は、炭化珪素半導体基体のおもて面から深さ方向yにp型ベース層6を貫通して、第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4(第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4が設けられていない場合は、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2、以下(2)と称する)に達する。深さ方向yとは、半導体基板のおもて面から裏面へ向かう方向である。トレンチ10は、例えば、ストライプ状に配置されている。
【0035】
トレンチ10の内部には、トレンチ10の内壁に沿ってゲート絶縁膜11が設けられ、ゲート絶縁膜11上にトレンチ10の内部に埋め込むようにゲート電極12が設けられている。1つのトレンチ10内のゲート電極12と、当該ゲート電極12を挟んで隣り合うメサ領域(隣り合うトレンチ10間の領域)と、でメイン半導体素子の1つの単位セルが構成される。
図1では、1つのトレンチMOS構造のみを図示しているが、さらに多くのトレンチ構造のMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)構造が並列に配置されていてもよい。
【0036】
第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2のソース側(後述するソース電極16側)の表面層に、p型ベース層6に接するようにn型領域(以下、第2n-型炭化珪素エピタキシャル層とする)4が設けられていてもよい。第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。この第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4は、例えば、トレンチ10の内壁を覆うように、基板おもて面(半導体基板のおもて面)に平行な方向に一様に設けられている。第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4は、p型ベース層6との界面から、トレンチ10の底面よりドレイン側(後述するドレイン電極15側)の位置まで設けられている。
【0037】
第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層には、第1p+型領域3が選択的に設けられていてもよい。第1p+型領域3は、隣り合うトレンチ10の間に配置されている。第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4の内部には、第2p+型領域5が選択的に設けられていてもよい。第2p+型領域5は、第1p+型領域3と深さ方向に対向する位置に、第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4を貫通し、底面が第1p+型領域3と接し、上面はp型ベース層6に接している。この第2p+型領域5を通じて、p型ベース層6と第1p+型領域3とが電気的に接続されている。
【0038】
第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4および第2p+型領域5の表面には、p型ベース層6が設けられている。p型ベース層6の表面には、n型ソース領域7が設けられている。n型ソース領域7の内部には、n+型ソース領域8およびp++型コンタクト領域9が選択的に設けられている。n+型ソース領域8は、n型ソース領域7のn+型炭化珪素基板1と反対側の表面層に設けられている。n型ソース領域7およびn+型ソース領域8は、トレンチ10の側壁のゲート絶縁膜11に接し、トレンチ10の側壁のゲート絶縁膜11を介してゲート電極10に対向する。n型ソース領域7の内部には、n型ソース領域7を貫通してp型ベース層6に達するp++型コンタクト領域9が設けられていてもよい。p++型コンタクト領域9は、n型ソース領域7およびn+型ソース領域8と接する。p++型コンタクト領域9の不純物濃度は、p型ベース層6の不純物濃度よりも高い。n型ソース領域7は、n+型ソース領域8よりドレイン側に設けられ、n型ソース領域7とn+型ソース領域8は互いに接する。n型ソース領域7とn+型ソース領域8の幅は、同程度になっている。なお、n+型ソース領域8は必須ではない。
【0039】
層間絶縁膜13は、ゲート電極12を覆うように、炭化珪素半導体基体のおもて面全面に設けられている。層間絶縁膜13には、層間絶縁膜13を深さ方向yに貫通して基板おもて面に達するコンタクトホールが開口されている。層間絶縁膜13のドレイン側には、ゲート絶縁膜11、ゲート電極表面の絶縁膜22が設けられている。
【0040】
ソース電極16は、層間絶縁膜13に開口されたコンタクトホール内において炭化珪素半導体基体(n+型ソース領域8)にオーミック接触し、かつ層間絶縁膜13によりゲート電極12と電気的に絶縁されている。p++型コンタクト領域9が設けられている場合、ソース電極16は、n+型ソース領域8およびp++型コンタクト領域9とオーミック接触する。また、ソース電極16と層間絶縁膜13との間に、例えばソース電極16からゲート電極12側への金属原子の拡散を防止するバリアメタル(不図示)が設けられていてもよい。ソース電極16上にソース電極パッド14が設けられている。n+型炭化珪素基板1の裏面に、裏面電極となるドレイン電極15が設けられている。ソース電極16および層間絶縁膜13とソース電極パッド14との間にもバリアメタル(不図示)が設けられてよい。
【0041】
(実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。
図3は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法のフローチャートである。
図3では、トレンチ形成以降の工程を記載している。
図4~
図9は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【0042】
まず、n型の炭化珪素でできたn+型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn+型炭化珪素基板1の第1主面(おもて面)上に、n型の不純物、例えば窒素(N)原子をドーピングしながら炭化珪素でできた第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2をエピタキシャル成長させる。
【0043】
次に、第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有する図示しないイオン注入用マスクを、例えば酸化膜で形成する。そして、この酸化膜をマスクとしてイオン注入法によって、p型の不純物、例えばアルミニウム(Al)原子を、イオン注入することで、第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層に深さ0.3μm以上1.0μm以下の第1p
+型領域3を例えば2.0×10
17/cm
3以上2.0×10
18/cm
3以下の不純物濃度で形成する。ここまでの状態が
図4に示されている。
【0044】
次に、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、窒素等のn型の不純物をドーピングした厚さ0.3μm以上1.0μm以下の第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4を、例えば1.0×1016/cm3以上5.0×1017/cm3以下の不純物濃度で形成する。
【0045】
次に、第2n
-型炭化珪素エピタキシャル層4の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有する図示しないイオン注入用マスクを、例えば酸化膜で形成する。そして、この酸化膜をマスクとしてイオン注入法によって、p型の不純物、例えばアルミニウム原子を、イオン注入することで、第2n
-型炭化珪素エピタキシャル層4の表面層に第2n
-型炭化珪素エピタキシャル層4を貫通する深さの第2p
+型領域5を、例えば2.0×10
17/cm
3以上2.0×10
18/cm
3以下の不純物濃度で形成する。ここまでの状態が
図5に示されている。
【0046】
次に、第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4の表面上に、p型ベース層6を、例えば5.0×1016/cm3以上2.0×1018/cm3以下の不純物濃度でエピタキシャル成長により形成する。p型ベース層6をエピタキシャル成長により形成した後、p型ベース層6にさらにアルミニウム等のp型の不純物を、p型ベース層6のチャネル領域にイオン注入を行ってもよい。また、p型ベース層6は、第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4をエピタキシャル成長させた後、アルミニウム等のp型の不純物をイオン注入することで形成してもよい。
【0047】
次に、p型ベース層6の表面上に、厚さ0.5μm程度のn型ソース領域7を、例えば1.0×1016/cm3以上1.0×1018/cm3以下の不純物濃度でエピタキシャル成長により形成する。n型ソース領域7をエピタキシャル成長により形成した後、さらにリン(P)または窒素等のn型の不純物をn型ソース領域7の表面にイオン注入することで、n型ソース領域7の表面層にn+型ソース領域8を例えば1.0×1018/cm3以上5.0×1019/cm3以下の不純物濃度で形成する。また、n+型ソース領域8は、n型ソース領域7上に所定の開口部を有するイオン注入用マスクを、例えば酸化膜で形成し、この酸化膜をマスクとしてイオン注入法によって、選択的に形成することもできる。
【0048】
次に、所定の開口部を有する図示しないイオン注入用マスクを、例えば酸化膜で形成する。そして、この酸化膜をマスクとしてイオン注入法によって、p型の不純物、例えばアルミニウム原子を、イオン注入することで、n型ソース領域7およびn
+型ソース領域8の一部にp
++型コンタクト領域9を例えば1.0×10
20/cm
3の不純物濃度となるように形成してもよい。p
++型コンタクト領域9の不純物濃度はp型ベース層6の不純物濃度よりも高く、1.0×10
19/cm
3以上5.0×10
20/cm
3以下となるように形成することが好ましい。p
++型コンタクト領域9は、底面がp型ベース層6に到達するように形成する。ここまでの状態が
図6に示されている。
【0049】
次に、n+型ソース領域8の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってn+型ソース領域8、n型ソース領域7およびp型ベース層6を貫通し、第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4に達するトレンチ10を形成する(ステップS101)。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。
【0050】
次に、等方性エッチングによりトレンチのダメージを除去した後、炭化珪素基板表面をカーボンで保護する。次に、1750℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行い、第1p
+型領域3、第2p
+型領域5、n
+型ソース領域8およびp
++型コンタクト領域9の活性化処理を行う(ステップS102)。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。ここまでの状態が
図7に示されている。
【0051】
次に、n+型ソース領域8およびp++型コンタクト領域9の表面と、トレンチ10の底面および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜11を形成する(ステップS103)。このゲート絶縁膜11は、酸素雰囲気中において1300℃程度の温度の熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜11は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0052】
次に、p型ベース層6や第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4などの炭化珪素基板とゲート絶縁膜11との間に存在する界面準位を低減するため、窒化酸素を含む雰囲気で熱処理(アニール)を行う(ステップS104)。
【0053】
次に、ゲート絶縁膜11上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を設ける。この多結晶シリコン層はトレンチ10内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ10内部に残すことによって、ゲート電極12を形成する(ステップS105)。ゲート電極12には、p型の多結晶シリコン膜を用いてもよい。次に、ゲート電極12を、半導体チップの表面に設けられるゲート電極パッド(不図示)と接続するためのゲート電極パターンを形成する(ステップS106)。
【0054】
次に、ゲート電極12の表面に絶縁膜22を形成する(ステップS107)。この絶縁膜22は、例えば、1000℃の酸素雰囲気でアニールして熱酸化膜で形成する。以上のゲート絶縁膜11、ゲート電極12および絶縁膜22の形成により、裏面側に、裏面のゲート絶縁膜23、裏面のゲート電極24および裏面の第1絶縁膜25が形成される。ここまでの状態が
図8に示されている。
【0055】
次に、表面を保護膜で保護する(ステップS108)。例えば、フォトリソグラフィ用のレジストで保護膜を形成する。次に、裏面積層膜をドライエッチングにより一括除去する(ステップS109)。ここで、裏面積層膜は、裏面のゲート絶縁膜23、裏面のゲート電極24および裏面の第1絶縁膜25である。このドライエッチングは、同一チャンバー内で連続して裏面積層膜を一括除去することが好ましい。また、ドライエッチングのエッチング条件は、裏面のゲート絶縁膜23、裏面のゲート電極24および裏面の第1絶縁膜25の除去をすべて同一の条件で実施することが好ましい。例えば、ケミカルドライエッチングで行い、エッチング条件は、n+型炭化珪素基板1と裏面のゲート絶縁膜23の選択比が100以上として、裏面のゲート絶縁膜23をエッチングで除去する際、n+型炭化珪素基板1がエッチングで除去されないようにすることが好ましい。具体的には、CF4とO2をエッチャントとしたケミカルドライエッチングで行うことが好ましい。
【0056】
次に、表面に形成した保護膜を除去する。例えば、酸素プラズマ中の灰化およびSPM(硫酸と過酸化水素水の混合溶液:Sulfuric acid-Hydrogen Peroxide Mixture)での剥離で保護膜を除去する。
【0057】
次に、ゲート絶縁膜11およびゲート電極12を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜13を形成する(ステップS110)。層間絶縁膜13およびゲート絶縁膜11をフォトリソグラフィによりパターニングしn
+型ソース領域8およびp
++型コンタクト領域9を露出させたコンタクトホールおよびコンタクト部を形成する(ステップS111)。ここまでの状態が
図9に示されている。
【0058】
次に、層間絶縁膜13に設けられたコンタクトホール内および層間絶縁膜13上にソース電極16となる導電性の膜を形成する。導電性の膜は、例えばニッケル(Ni)膜である。その後、例えば700℃程度の温度で熱処理を行って導電性の膜と炭化珪素を選択的に反応させた後、未反応部分の導電性の膜を選択的に除去してコンタクトホール内にのみソース電極16を残し、n+型ソース領域8およびp++型コンタクト領域9とソース電極16とを接触させる。
【0059】
次に、例えばスパッタ法によって、炭化珪素半導体基体のおもて面のソース電極16上および層間絶縁膜13上に、ソース電極パッド14となる金属層を成膜する。このとき、チタンまたは窒化チタンからなるバリアメタル(不図示)を先に形成してもよい。金属層の層間絶縁膜13上の厚さは、例えば、5.5μmであってもよい。金属層は、例えば、1%の割合でシリコンを含んだアルミニウム(Al-Si)で形成してもよい。次に、金属膜を選択的に除去して、ソース電極パッド14を形成する(ステップS112)。
【0060】
次に、ソース電極パッド14上に選択的にポリイミド膜(不図示)を形成し、ポリイミド膜をマスクとして用いて、ソース電極パッド14上の、ポリイミド膜が設けられていない部分に、NiP(ニッケルリン)無電解めっきで選択的に表面電極膜を形成する(ステップS113)。
【0061】
次に、n+型炭化珪素基板1のおもて面を保護膜(不図示)で覆って保護した後、低抵抗化のため、n+型炭化珪素基板1の第2主面(裏面)側からグラインダ等で機械的に研削して(ステップS114)、n+型炭化珪素基板1を薄化する。
【0062】
次に、n+型炭化珪素基板1の第2主面(裏面)上に、ドレイン電極15となる導電性の膜、例えばモリブデン膜とニッケル膜を、例えばスパッタ法により続けて成膜する。その後、レーザーアニールなどの熱処理を行って、n+型炭化珪素基板1と導電性の膜を反応させてオーミック接合することでドレイン電極を形成する(ステップS115)。
【0063】
次に、ドレイン電極15の表面に、ドレイン電極パッド(不図示)として、チタン、ニッケルおよび金をこの順で成膜する。このようにして、
図1に示すトレンチ型MOSFET70が完成する。
【0064】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、裏面積層膜(裏面のゲート絶縁膜、裏面のゲート電極および裏面の第1絶縁膜)をドライエッチングにより一括除去している。これにより、裏面の酸化膜およびポリシリコンによるウェハ反りの影響等を緩和して、ESC吸着エラーや運送エラー等を抑制できる。また、裏面積層膜を除去するためのウェットエッチング工程を省略できる。これにより、硬度の高いSiC基板と、硬度の低い酸化膜、ポリシリコンを同時に研削することがないため、削れムラが発生せず、電極形成不良が発生することを抑制できる。
【0065】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法により製造される炭化珪素半導体装置の構造は、温度センス部を有する点で実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置と異なる。なおトレンチ型MOSFET70の構造は実施の形態1と同じであるため、記載を省略する。
【0066】
図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の温度センス部の構造を示す断面図である。温度センス部は、ダイオードの温度特性を利用してメイン半導体素子の温度を検出する機能を有する。このため、温度センス部は、メイン半導体素子のオン時に主電流が流れる活性領域に設けられている。ここでは、センサ部の例として、温度センサ部を示すが、ポリシリコンから構成されるセンサ部であれば温度センサ部以外のセンサ部であってもよい。
【0067】
例えば、温度センス部には、後述するp型ポリシリコン層20とn型ポリシリコン層21とからなるダイオードが設けられている。このダイオードの順方向電圧Vfは、温度により変化して、温度が高いほど順方向電圧Vfは低くなる。このため、事前に温度と順方向電圧Vfとの関係を取得しておき、トレンチ型MOSFET70が動作中にダイオードの順方向電圧Vfを測定することにより、トレンチ型MOSFET70の温度を測定することができる。
【0068】
図2に示すように、温度センス部は、n
+型炭化珪素基板1の第1主面(おもて面)、例えば(0001)面(Si面)、に第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2が堆積され第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2の基体第1主面側にp型ベース層6が設けられている。p型ベース層6と第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2の間に、第2n
-型炭化珪素エピタキシャル層4が設けられていてもよい。また、第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2内に第1p
+型領域3が、第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層4内に第2p
+型領域5が設けられていてもよい。
【0069】
また、p型ベース層6上にはp++型コンタクト領域9が全面に設けられており、その上に層間絶縁膜13が設けられている。p型ポリシリコン層20およびn型ポリシリコン層21が、層間絶縁膜13上に設けられている。p型ポリシリコン層20とn型ポリシリコン層21は、pn接合で形成されたポリシリコンダイオードである。
【0070】
p型ポリシリコン層20上にアノード電極30が設けられ、アノード電極パッド(不図示)が、アノード電極30を介してp型ポリシリコン層20に電気的に接続されている。n型ポリシリコン層21上にカソード電極31が設けられ、カソード電極パッド(不図示)は、カソード電極31を介してn型ポリシリコン層21に電気的に接続されている。また、p型ポリシリコン層20とn型ポリシリコン層21を覆う絶縁膜29が設けられている。
【0071】
(実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。
図10は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法のフローチャートである。
図11および
図12は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。製造途中の状態を示す断面図において、実施の形態1と同じである図は、記載を省略している。
【0072】
まず、実施の形態1と同様に、n型の炭化珪素でできたn+型炭化珪素基板1を用意する工程から、n+型ソース領域8の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する工程を行う。このとき、温度センス部となる部分には、第1p+型領域3と第2p+型領域5とp++型コンタクト領域9とを形成しておく。
【0073】
次に、ドライエッチングによってn+型ソース領域8、n型ソース領域7およびp型ベース層6を貫通し、第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4に達するトレンチ10を形成する(ステップS201)。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。
【0074】
次に、トレンチのダメージを除去するための等方性エッチングを行った後、表面をカーボンで保護した状態で活性化処理を行う(ステップS202)。これにより、第1p
+型領域3、第2p
+型領域5、n
+型ソース領域8およびp
++型コンタクト領域9が活性化される。ここまでの状態が
図7に示されている。
【0075】
次に、n+型ソース領域8およびp++型コンタクト領域9の表面と、トレンチ10の底面および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜11を形成する(ステップS203)。このゲート絶縁膜11は、酸素雰囲気中において1300℃程度の温度の熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜11は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0076】
次に、窒化酸素を含む雰囲気で熱処理(アニール)を行い。p型ベース層6や第2n-型炭化珪素エピタキシャル層4などの炭化珪素基板とゲート絶縁膜11との間に存在する界面準位を低減する(ステップS204)。
【0077】
次に、ゲート絶縁膜11上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を設ける。この多結晶シリコン層はトレンチ10内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ10内部に残すことによって、ゲート電極12を形成する(ステップS205)。ゲート電極12には、p型の多結晶シリコン膜を用いてもよい。次に、ゲート電極12を、半導体チップの表面に設けられるゲート電極パッド(不図示)と接続するためのゲート電極パターンを形成する(ステップS206)。
【0078】
次に、ゲート電極12の表面に絶縁膜22を形成する(ステップS207)。この絶縁膜22は、例えば、1000℃の酸素雰囲気でアニールして熱酸化膜で形成する。以上のゲート絶縁膜11、ゲート電極12および絶縁膜22の形成により、裏面側に裏面のゲート絶縁膜23、裏面のゲート電極24および裏面の第1絶縁膜25が形成される。ここまでの状態が
図8に示されている。
【0079】
次に、ゲート絶縁膜11およびゲート電極12を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜13を形成する(ステップS208)。層間絶縁膜13の形成により、裏面側に、裏面の層間絶縁膜26が形成される。次に、層間絶縁膜13の表面にセンサ部を形成する。例えば、ドーピングされていない多結晶ポリシリコン32を層間絶縁膜13の表面に形成し(ステップS209)、この多結晶ポリシリコン32をフォトリソグラフィによりパターニングし、センサ用多結晶ポリシリコンパターンを形成する(ステップS210)。
【0080】
次に、センサ用の多結晶ポリシリコン表面に絶縁膜29を形成する(ステップS211)。この絶縁膜29は、例えば、1000℃の酸素雰囲気でアニールして熱酸化膜で形成する。以上のセンサ用多結晶ポリシリコン32の形成、センサ用多結晶ポリシリコンの絶縁膜29の形成により、裏面側に、裏面のセンサ用多結晶ポリシリコン27および裏面のセンサ用多結晶ポリシリコンの絶縁膜28(以下、第2絶縁膜と称する)が形成される。ここまでの状態が
図11および
図12に示されている。
【0081】
次に、表面を保護膜で保護する(ステップS212)。例えば、フォトリソグラフィ用のレジストで保護膜を形成する。次に、裏面積層膜をドライエッチングにより一括除去する(ステップS213)。ここで、裏面積層膜は、裏面のゲート絶縁膜23、裏面のゲート電極24、裏面の第1絶縁膜25、裏面の層間絶縁膜26、裏面のセンサ用多結晶ポリシリコン27および裏面の第2絶縁膜28である。
【0082】
このドライエッチングは、同一チャンバー内で連続して裏面積層膜を一括除去することが好ましい。例えば、チャンバーに半導体基板を入れ、裏面の第2絶縁膜28、裏面のセンサ用多結晶ポリシリコン27、裏面の層間絶縁膜26、裏面の第1絶縁膜25、裏面のゲート電極24、裏面のゲート絶縁膜23の順で連続して除去する。また、ドライエッチングのエッチング条件は、裏面のゲート絶縁膜23、裏面のゲート電極24、裏面の第1絶縁膜25、裏面のセンサ用多結晶ポリシリコン27および裏面の第2絶縁膜28の除去をすべて同一の条件で実施することが好ましい。例えば、ケミカルドライエッチングで行い、エッチング条件は、n+型炭化珪素基板1と裏面のゲート絶縁膜23との選択比が100以上であり、裏面のゲート絶縁膜23をエッチングで除去する際、n+型炭化珪素基板1がエッチングで除去されないようにする。具体的には、CF4とO2を混合したケミカルドライエッチングで行うことが好ましい。
【0083】
次に、表面に形成した保護膜を除去する。例えば、酸素プラズマ中の灰化およびSPMでの剥離で保護膜を除去する。次に、センサ用多結晶ポリシリコン表面にセンサ部を形成する(ステップS214)。例えば、センサ用多結晶ポリシリコン32の一部にアノード部分、カソード部分となるp型不純物、n型不純物をイオン注入することで、p型ポリシリコン層20およびn型ポリシリコン層21を形成する。
【0084】
次に、層間絶縁膜13およびゲート絶縁膜11をフォトリソグラフィによりパターニングしn
+型ソース領域8およびp
++型コンタクト領域9を露出させたコンタクトホールおよびコンタクト部を形成する(ステップS215)。ここまでの状態が
図9に示されている。
【0085】
次に、層間絶縁膜13に設けられたコンタクトホール内および層間絶縁膜13上にソース電極16となる導電性の膜を形成する。導電性の膜は、例えばニッケル(Ni)膜である。その後、例えば700℃程度の温度で熱処理を行って導電性の膜と炭化珪素を選択的に反応させた後、未反応部分の導電性の膜を選択的に除去してコンタクトホール内にのみソース電極16を残し、n+型ソース領域8およびp++型コンタクト領域9とソース電極16とを接触させる。
【0086】
次に、例えばスパッタ法によって、炭化珪素半導体基体のおもて面のソース電極16上および層間絶縁膜13上に、ソース電極パッド14となる金属層を成膜する。このとき、チタンまたは窒化チタンからなるバリアメタル(不図示)を先に形成してもよい。金属層の層間絶縁膜13上の厚さは、例えば、5.5μmであってもよい。金属層は、例えば、1%の割合でシリコンを含んだアルミニウム(Al-Si)で形成してもよい。次に、金属膜を選択的に除去して、ソース電極パッド14を形成する(ステップS216)。
【0087】
次に、ソース電極パッド14上に選択的にポリイミド膜(不図示)を形成し、ポリイミド膜をマスクとして用いて、ソース電極パッド14上の、ポリイミド膜が設けられていない部分に、NiP(ニッケルリン)無電解めっきで選択的に表面電極膜を形成する(ステップS217)。
【0088】
次に、n+型炭化珪素基板1のおもて面を保護膜(不図示)で覆って保護した後、低抵抗化のため、n+型炭化珪素基板1の第2主面(裏面)側からグラインダ等で機械的に研削して(ステップS218)、n+型炭化珪素基板1を薄化する。
【0089】
次に、n+型炭化珪素基板1の第2主面(裏面)上に、ドレイン電極15となる導電性の膜、例えばモリブデン膜とニッケル膜を、例えばスパッタ法により続けて成膜する。その後、レーザーアニールなどの熱処理を行って、n+型炭化珪素基板1と導電性の膜を反応させてオーミック接合することでドレイン電極を形成する(ステップS219)。
【0090】
次に、ドレイン電極15の表面に、ドレイン電極パッド(不図示)として、チタン、ニッケルおよび金をこの順で成膜する。このようにして、
図1に示すトレンチ型MOSFET70が完成する。
【0091】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、裏面積層膜(裏面のゲート絶縁膜、裏面のゲート電極、裏面の第1絶縁膜、裏面の層間絶縁膜、裏面のセンサ用多結晶ポリシリコンおよび裏面の第2絶縁膜)をドライエッチングにより一括除去している。これにより、裏面の酸化膜およびポリシリコンによるウェハ反りの影響等を緩和して、ESC吸着エラーや運送エラー等を抑制できる。また、裏面積層膜を除去するためのウェットエッチング工程を省略できる。これにより、硬度の高いSiC基板と、硬度の低い酸化膜、ポリシリコンを同時に研削することがないため、削れムラが発生せず、電極形成不良が発生することを抑制できる。
【0092】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。また、トレンチ型MOSFETで説明したが、プレーナ型MOSFETでも同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0094】
1 n+型炭化珪素基板
2 第1n-型炭化珪素エピタキシャル層
3 第1p+型領域
4 第2n-型炭化珪素エピタキシャル層
5 第2p+型領域
6 p型ベース層
7 n型ソース領域
8 n+型ソース領域
9 p++型コンタクト領域
10 トレンチ
11 ゲート絶縁膜
12 ゲート電極
13 層間絶縁膜
14 ソース電極パッド
15 ドレイン電極
16 ソース電極
20 p型ポリシリコン層
21 n型ポリシリコン層
22 ゲート電極表面の絶縁膜
23 裏面のゲート絶縁膜
24 裏面のゲート電極
25 裏面の第1絶縁膜
26 裏面の層間絶縁膜
27 裏面のセンサ用多結晶ポリシリコン
28 裏面の第2絶縁膜
29 絶縁膜
30 アノード電極
31 カソード電極
32 センサ用多結晶ポリシリコン
70 トレンチ型MOSFET