(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013942
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法、再生ポリエチレンテレフタレート、脱色溶媒およびビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの精製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/10 20060101AFI20220111BHJP
C07C 67/52 20060101ALI20220111BHJP
C07C 67/03 20060101ALI20220111BHJP
C07C 69/82 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C08J11/10 ZAB
C07C67/52
C07C67/03
C07C69/82 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165300
(22)【出願日】2021-10-07
(62)【分割の表示】P 2020564503の分割
【原出願日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2020111719
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516324353
【氏名又は名称】株式会社シンテック
(71)【出願人】
【識別番号】508194892
【氏名又は名称】日本環境設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】特許業務法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 正樹
(72)【発明者】
【氏名】堺 通
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博
(72)【発明者】
【氏名】稲田 修司
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AB07
4F401AC20
4F401BA06
4F401BB12
4F401CA25
4F401CA27
4F401CA29
4F401CA30
4F401CA48
4F401CA67
4F401CB01
4F401CB10
4F401EA07
4F401EA60
4F401EA77
4F401FA07Z
4H006AA02
4H006AC91
4H006AD15
4H006AD17
4H006KA03
(57)【要約】
【課題】着色されたポリエステル廃棄物から高純度のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を簡便に製造し得る高純度BHETの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の高純度BHETの製造方法は、着色されたポリエステル廃棄物を解重合して着色した粗製BHETを含む解重合物を得る解重合工程と、解重合物中に含まれる低沸点成分を除去してBHETを濃縮する濃縮工程と、粗製BHETからBHETを回収して中純度BHETを得る回収工程と、中純度BHETを脱色溶媒中で晶析するとともに、結晶と色素を含有する溶媒成分とを固液分離して精製BHETを得る晶析分離工程と、精製BHETの結晶中に残留する溶媒を除去して高純度BHETを得る脱溶媒工程とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素により着色されたポリエステル廃棄物と、モノエチレングリコールおよび解重合触媒とを混合し、前記ポリエステル廃棄物を解重合して、着色した粗製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含む解重合物を得る解重合工程と、
前記解重合物から、前記モノエチレングリコールを含有する低沸点成分を除去して、前記粗製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを濃縮する濃縮工程と、
濃縮された前記粗製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートから、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを回収して、前記粗製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートより純度の高い中純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る回収工程と、
前記中純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを脱色溶媒に溶解した溶解液を冷却することにより、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの結晶を析出させるとともに、前記結晶と前記色素を含有する溶媒成分とを固液分離して、前記中純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートより純度の高い精製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る晶析分離工程と、
前記結晶中に残留する前記溶媒成分を除去して、前記精製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートより純度の高い高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る脱溶媒工程と、を有することを特徴とする高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項2】
前記晶析分離工程で使用する前記脱色溶媒は、炭素原子数が4~12であるグリコールモノエーテルまたはグリコールジエーテル、および、炭素原子数が2~6であるグリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコール系化合物を含有する請求項1に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項3】
前記晶析分離工程で使用する前記脱色溶媒中の前記グリコール系化合物の含有量は、85質量%以上である請求項2に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項4】
前記色素は、窒素原子を含有する発色団を有し、
前記高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート中に残存する前記窒素原子の量は、20ppm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項5】
前記ポリエステル廃棄物は、65質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項6】
前記ポリエステル廃棄物は、ポリエステル衣料廃棄物である請求項1~5のいずれか1項に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項7】
前記解重合工程において、前記ポリエステル衣料廃棄物を衣料の形態のままで解重合する請求項6に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項8】
前記解重合工程後、さらに、前記解重合物から、前記ポリエステル衣料廃棄物に含まれ、ポリエステルに不溶な固形分を除去する固形物除去工程を有する請求項6または7に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項9】
前記解重合工程後、さらに、前記解重合物から、前記色素の一部を除去する色素プレ除去工程を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項10】
前記色素は、窒素原子を含有する発色団を有し、
前記色素プレ除去工程は、前記解重合物中に残存する前記窒素原子の量が900ppm以下になるまで行われる請求項9に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法により得られた高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの重縮合物であることを特徴とする再生ポリエチレンテレフタレート。
【請求項12】
前記再生ポリエチレンテレフタレートは、前記高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートに由来する構造を50質量%以上含有する請求項11に記載の再生ポリエチレンテレフタレート。
【請求項13】
色素により着色されたビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートから、前記色素を除去して脱色するのに用いられる脱色溶媒であって、
炭素原子数が4~12であるグリコールモノエーテルまたはグリコールジエーテル、および、炭素原子数が2~6であるグリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコール系化合物を含有することを特徴とする脱色溶媒。
【請求項14】
前記脱色溶媒中の前記グリコール系化合物の含有量は、85質量%以上である請求項13に記載の脱色溶媒。
【請求項15】
色素により着色されたビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを脱色溶媒に溶解した溶解液を冷却することにより、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの結晶を析出させるとともに、前記結晶と前記色素を含有する溶媒成分とを固液分離して、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを精製する方法であって、
前記脱色溶媒は、炭素原子数が4~12であるグリコールモノエーテルまたはグリコールジエーテル、および、炭素原子数が2~6であるグリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコール系化合物を含有することを特徴とするビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの精製方法。
【請求項16】
前記脱色溶媒中の前記グリコール系化合物の含有量は、85質量%以上である請求項15に記載のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色されたポリエステル廃棄物(特に、着色されたポリエステル衣料廃棄物)から、高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する方法、および、かかる高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを使用した再生ポリエチレンテレフタレートに関する。
また、本発明は、着色されたビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートから色素を簡便に除去して脱色するのに用いられる脱色溶媒、および、かかる脱色溶媒を用いたビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)は、その優れた特性により、衣料品、フィルム、樹脂成形品等として広く用いられている。ところが、これらの製品の製造工程で発生する糸繊維、フィルム片、樹脂片等のポリエステル屑(製造工程ロス)、および、使用済みペットボトルの如き使用済み成形品の廃棄物の有効利用は、コストの面からのみならず、環境問題も含め大きな課題となっている。これらの処理方法として、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクル等が検討および提案されている。
【0003】
このうち、マテリアルリサイクルでは、使用済みペットボトル等のポリエステル成形品の廃棄物に関しては、自治体を中心に回収され、積極的な再利用が実施されている。また、糸繊維屑に関しては、ポップコーンと称される大粒のペレット状物に加工した後、再溶融して糸繊維に再生する等の手法でマテリアルリサイクルがなされている。しかしながら、衣料品に関しては、マテリアルリサイクル方法を適用することが極めて困難であり、再利用の実例は皆無である。
【0004】
また、衣料品、糸繊維屑を含むポリエステル廃棄物を燃料に転化するサーマルリサイクルは、ポリエステル廃棄物の燃焼熱を再利用可能であるという利点を有する。しかしながら、ポリエステルの発熱量は、比較的低いので、燃焼熱を利用するためには、多量のポリエステル廃棄物を燃焼させざるを得ない。このため、ポリエステル原料の損失および二酸化炭素の発生という問題があり、省資源、環境保全の面から好ましくない。
【0005】
これに対して、ケミカルリサイクルでは、ポリエステル廃棄物を原料モノマーであるビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(以下、「BHET」とも記載する。)、または、ジメチルテレフタレート(以下、「DMT」とも記載する。)に再生し、この再生されたBHETまたはDMTを、再度、重縮合させて、新たなポリエステルを製造する(例えば、特許文献1~3参照)。このため、再生に伴うポリエステルの品質低下が少なく、クローズドループのリサイクルとして優れている。しかしながら、ケミカルリサイクルにおいても、リサイクル原料として、無着色であり不純物の少ない使用済みペットボトル、樹脂屑、フィルム屑を対象としたものが大部分である。
【0006】
着色されたポリエステル衣料廃棄物をリサイクル原料として、ポリエステル衣料廃棄物から原料モノマーを経て、再度、ポリエステルを再生するためには、染料、顔料等の着色用色素を除去することが必須条件である。再生された原料モノマーに着色用色素が多く混入すると、再生されたポリエステルが着色(特に、黄色化)することが知られている。
また、ポリエステル衣料廃棄物には、衣料用途に応じた要求特性を満足させる目的で使用されている安定剤、帯電防止剤、易染化剤、難燃化剤、吸湿剤、ガスバリア剤等の種々の化合物、衣料に部分的に使用されているナイロン、ウレタン、綿、オレフィン等の異種素材、艶消し剤として使用される酸化チタン等の添加剤、ジッパー、ボタン、金属、ガラス、砂等の不純物等が含まれている。そのため、ポリエステル衣料廃棄物の再生には、これらを効率良く除去することも重要である。
【0007】
着色された繊維状ポリエステルから、染料、顔料等の着色剤を除去した後、原料モノマーであるDMTを経て、再度、再生ポリエステルを得るケミカルリサイクル手法が提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
しかしながら、特許文献4、5に記載されている方法は、着色された繊維状ポリエステルからDMTを回収する方法であり、リサイクル工程が長く、多大なエネルギーを必要とするためコスト的に課題が多い。また、精製したリサイクルDMTが、現状、世界的に普及しているテレフタル酸を原料とする重合プロセス(テレフタル酸プロセス)に直接使用できないという大きなデメリットを抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3715812号
【特許文献2】特許5189266号
【特許文献3】特許4067306号
【特許文献4】特許4537288号
【特許文献5】特許5134563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、着色されたポリエステル廃棄物(特に、ポリエステル衣料廃棄物)から、染料、顔料等の色素を効率良く除去して、高純度のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを簡便に製造し得る高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法、および、かかる高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを原料として製造される再生ポリエチレンテレフタレートを提供することにある。
また、着色されたビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートから、色素を円滑に除去して脱色するのに用いられる脱色溶媒、および、かかる脱色溶媒を用いたビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)~(16)の本発明により達成される。
(1) 色素により着色されたポリエステル廃棄物と、モノエチレングリコールおよび解重合触媒とを混合し、前記ポリエステル廃棄物を解重合して、着色した粗製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含む解重合物を得る解重合工程と、
前記解重合物から、前記モノエチレングリコールを含有する低沸点成分を除去して、前記粗製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを濃縮する濃縮工程と、
濃縮された前記粗製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートから、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを回収して、前記粗製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートより純度の高い中純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る回収工程と、
前記中純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを脱色溶媒に溶解した溶解液を冷却することにより、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの結晶を析出させるとともに、前記結晶と前記色素を含有する溶媒成分とを固液分離して、前記中純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートより純度の高い精製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る晶析分離工程と、
前記結晶中に残留する前記溶媒成分を除去して、前記精製ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートより純度の高い高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る脱溶媒工程と、を有することを特徴とする高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【0011】
(2) 前記晶析分離工程で使用する前記脱色溶媒は、炭素原子数が4~12であるグリコールモノエーテルまたはグリコールジエーテル、および、炭素原子数が2~6であるグリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコール系化合物を含有する上記(1)に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
(3) 前記晶析分離工程で使用する前記脱色溶媒中の前記グリコール系化合物の含有量は、85質量%以上である上記(2)に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【0012】
(4) 前記色素は、窒素原子を含有する発色団を有し、
前記高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート中に残存する前記窒素原子の量は、20ppm以下である上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
(5) 前記ポリエステル廃棄物は、65質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
(6) 前記ポリエステル廃棄物は、ポリエステル衣料廃棄物である上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【0013】
(7) 前記解重合工程において、前記ポリエステル衣料廃棄物を衣料の形態のままで解重合する上記(6)に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
(8) 前記解重合工程後、さらに、前記解重合物から、前記ポリエステル衣料廃棄物に含まれ、ポリエステルに不溶な固形分を除去する固形物除去工程を有する上記(6)または(7)に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
(9) 前記解重合工程後、さらに、前記解重合物から、前記色素の一部を除去する色素プレ除去工程を有する上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【0014】
(10) 前記色素は、窒素原子を含有する発色団を有し、
前記色素プレ除去工程は、前記解重合物中に残存する前記窒素原子の量が900ppm以下になるまで行われる上記(9)に記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
(11) 上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法により得られた高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの重縮合物であることを特徴とする再生ポリエチレンテレフタレート。
(12) 前記再生ポリエチレンテレフタレートは、前記高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートに由来する構造を50質量%以上含有する上記(11)に記載の再生ポリエチレンテレフタレート。
【0015】
(13) 色素により着色されたビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートから、前記色素を除去して脱色するのに用いられる脱色溶媒であって、
炭素原子数が4~12であるグリコールモノエーテルまたはグリコールジエーテル、および、炭素原子数が2~6であるグリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコール系化合物を含有することを特徴とする脱色溶媒。
(14) 前記脱色溶媒中の前記グリコール系化合物の含有量は、85質量%以上である上記(13)に記載の脱色溶媒。
【0016】
(15) 色素により着色されたビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを脱色溶媒に溶解した溶解液を冷却することにより、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの結晶を析出させるとともに、前記結晶と前記色素を含有する溶媒成分とを固液分離して、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを精製する方法であって、
前記脱色溶媒は、炭素原子数が4~12であるグリコールモノエーテルまたはグリコールジエーテル、および、炭素原子数が2~6であるグリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコール系化合物を含有することを特徴とするビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの精製方法。
(16) 前記脱色溶媒中の前記グリコール系化合物の含有量は、85質量%以上である上記(15)に記載のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの精製方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、着色されたポリエステル廃棄物(特に、ポリエステル衣料廃棄物)から染料、顔料等の色素を効率良く除去して、高純度のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を簡便に製造することが可能となる。特に、着色されたポリエステル衣料廃棄物から高純度のBHETを簡便に製造することができるため、これまで殆どが焼却処理、埋立処理等されていたポリエステル衣料廃棄物から原料モノマーを経て、再度、ポリエステルを再生することが可能となる。その結果、ポリエステル衣料廃棄物を再生ポリエステルとするサステナブルクローズドループのリサイクルが可能となり、循環型社会の構築に大きく寄与することができる。
また、本発明により精製したリサイクルBHETは、現状、世界的に普及しているテレフタル酸を原料とする重合プロセス(テレフタル酸プロセス)に直接使用できるという大きなメリットを有している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法の好適な実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法、再生ポリエチレンテレフタレート、脱色溶媒およびビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの精製方法について、図示の好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の説明は、本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も、本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
例えば、本発明において「工程」は、他と区別して認識できる工程のみを意味するものではなく、他の操作と組み合わされたもの、実際上の複数の工程に分散されているもの、この「工程」中に他の工程要素が含まれているもの、および、1つの工程で複数の工程の操作を合わせて実施できるもの、が発明の趣旨に合致する限り、本発明の範疇に属し得る。
【0020】
図1は、本発明の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法の好適な実施形態を示すフローチャートである。
本発明の高純度ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)の製造方法は、衣料品、フィルム、樹脂成型品(例えば、ボトル)等の各種の着色されたポリエステル廃棄物(以下、「着色ポリエステル廃棄物」とも記載する。)に適用することができる。なお、以下の説明では、着色ポリエステル廃棄物として、着色されたポリエステル製の衣料廃棄物(着色ポリエステル衣料廃棄物)に適用する場合について説明する。
【0021】
本実施形態の高純度BHETの製造方法は、(1)解重合工程と、(2)固形物除去工程と、(3)色素プレ除去工程と、(4)濃縮工程と、(5)回収工程と、(6)晶析分離工程と、(7)脱溶媒工程とを有する。
以下、各工程について順に説明する。
【0022】
(1)解重合工程
まず、染料、顔料等の色素(着色用色素)で着色されたポリエステル衣料廃棄物と、モノエチレングリコール(以下、「MEG」とも記載する。)および解重合触媒とを反応槽に仕込んで混合し、着色ポリエステル衣料廃棄物を解重合して、着色した粗製BHETを含む解重合液(液状の解重合物)を得る。以下、着色した粗製BHETを含む解重合液を「着色解重合液」とも記載する。
ポリエステル衣料を構成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフテレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の他、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。
【0023】
本発明で対象とするポリエステル衣料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を主として構成された衣料が好適である。
かかるポリエステル衣料は、ナイロン、ウレタン、綿、オレフィン等の異種素材を含んでいてもよく、衣料用途に応じた要求特性を満足させる目的で使用される安定剤、帯電防止剤、易染化剤、難燃化剤、吸湿剤、ガスバリア剤等の種々の化合物、艶消し剤として使用される酸化チタン等の添加剤、ジッパー、ボタン、金属、ガラス、砂等の固形物を含んでいてもよい。
【0024】
ポリエステル衣料に含まれるPET(例えば、PET繊維)の量は、特に限定されないが、65質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。なお、その上限値は100質量%であり得る。
【0025】
ポリエステル衣料の着色(染色)に用いられる色素は、染料と顔料とに大別される。
染料としては、例えば、分散染料、ナフトール染料、媒染染料、建染染料等が挙げられるが、分散染料であることが好ましい。この分散染料は、ポリエステルと分子間力によって結合するため、ポリエステルの着色に最適である。また、本発明者の検討によれば、分散染料を除去するのに本発明を使用すると効果が高いことが判っている。
【0026】
かかる分散染料としては、例えば、C.I. Disperse Blackに分類される化合物、C.I. Disperse Blueに分類される化合物、C.I. Disperse Redに分類される化合物、C.I. Disperse Orangeに分類される化合物、C.I. Disperse Yellowに分類される化合物,C.I. Disperse Greenに分類される化合物、C.I. Disperse Violetに分類される化合物、C.I. Disperse Brownに分類される化合物等が挙げられる。
【0027】
一方、顔料としては、例えば、C.I. Pigment Blackに分類される化合物、C.I. Pigment Blueに分類される化合物、C.I. Pigment Redに分類される化合物、C.I. Pigment Orangeに分類される化合物,C.I. Pigment Yellowに分類される化合物、C.I. Pigment Greenに分類される化合物、C.I. Pigment Violetに分類される化合物、C.I. Pigment Brownに分類される化合物等が挙げられる。
【0028】
解重合に供されるポリエステル衣料廃棄物の形態は、裁断することなく衣料の形態であっても、裁断された薄片の形態であっても、何らかの方法で造粒処理された粒状の形態であってもよいが、嵩密度が大きい衣料の形態であることが好ましい。
裁断された薄片の形態では、ハンドリング処理が煩雑であると同時に、嵩密度が小さくなり、解重合において不利になる場合がある。
ハンドリングの容易さ、嵩密度の大きさでは、造粒処理された粒状の形態が有利であるが、ポリエステル衣料廃棄物を粒状の形態にするために、採用する方法によっては、コストが増大する場合がある。
【0029】
また、ポリエステル衣料廃棄物と所定量比のMEGとを反応槽に仕込み、ポリエステル衣料廃棄物を解重合する際には、ポリエステル衣料廃棄物がMEG中に完全に浸漬した状態で解重合反応を行うことが好ましい。
ポリエステル繊維の嵩密度は、衣料の形態で0.10~0.14g/cm3(圧縮なし)、薄片の形態で0.08~0.10g/cm3(圧縮なし)である。すなわち、ポリエステル繊維は、衣料の形態の方が嵩密度を大きく維持することができる。
このため、解重合反応を効率的に実施すべく、ポリエステル衣料廃棄物をMEG中に完全に浸漬する場合でも、MEGの使用量を低減することができる。衣料形態のポリエステル衣料廃棄物をMEG中に完全に浸漬して解重合反応を行う場合、MEGの使用量は、ポリエステル衣料廃棄物の質量に対して4.5~7.0倍程度であることが好ましく、5.0~6.5倍程度であることがより好ましい。
【0030】
MEGの使用量が少な過ぎると、ポリエステル衣料廃棄物の形状等によっては、ポリエステル衣料廃棄物をMEG中に十分に浸漬できず、解重合反応に要する時間が長くなったり、解重合反応によるポリエステル(例えば、PET)からBHETへの転換率が低くなったりする場合がある。この場合、解重合液中にポリエステルオリゴマーが多量に存在し易くなり、解重合液の粘度が上昇する傾向を示す。一方、MEGの使用量が多過ぎると、MEGの精製が経済的に不利になるとともに、反応条件等によっては、反応物中にジエチレングリコール(以下、「DEG」とも記載する。)、1,4-ジオキサン等の不純物が多量に副生する場合がある。かかるBHETを使用した場合、製造条件によっては、得られる再生PETの物理的性質(特に、軟化点)が著しく低下するおそれがある。
【0031】
解重合触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の脂肪酸塩、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の脂肪酸塩、アルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の酸化物、遷移金属の水酸化物、遷移金属の炭酸塩、遷移金属の脂肪酸塩、遷移金属のアルコキシド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの解重合触媒を用いることにより、BHETを効率よく生成させることができる。
アルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K等が、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg、Ca等が、遷移金属としては、例えば、Ti、Zn、Mn等が挙げられる。
【0032】
解重合の際の温度は、180~210℃程度であるのが好ましく、185~200℃程度であるのがより好ましい。
解重合の際の時間は、温度を上記範囲とする場合、1~10時間程度であるのが好ましく、1.5~7時間程度であるのがより好ましい。
解重合の際の雰囲気圧力は、60kPa~160kPa程度であるのが好ましい。
【0033】
(2)固形物除去工程
上述したように、ポリエステル衣料廃棄物は、ポリエステル繊維以外の異物(ポリエステルに不溶な固形分)を含んでいることが多いため、必要に応じて、これらの異物を解重合液から除去することが好ましい。
かかる異物としては、例えば、綿、オレフィン等の異種素材、ジッパー、ボタン、金属等の固形物、廃棄物収集時に混入するガラス、砂等の固形物のような粗大固形物が挙げられる。
これらの異物は、目開き20~40メッシュ程度の目の粗いフィルターで濾過することにより、解重合液から纏めて除去することができる。
【0034】
また、ポリエステル衣料には、艶消剤としてポリエステルに不溶な酸化チタンが0.3~0.5質量%程度で添加されている場合がある。さらに、衣料用途に応じた要求特性を満足させる目的で種々のポリエステルに不溶な添加剤も使用される場合も多い。
これらの微細固形物が再生PET中に混入することは当然好ましくなく、また、これらの微細固形物のサイズによっては、工程内の容器内部や配管内部へ沈降または堆積して液体の流れを遮断する可能性があり、工程通過性の面からも、これらの微細固形物を除去することが好ましい。
具体的には、これらの微細固形物は、数μm~数十μmサイズの長繊維フィルター等を用いて、濾過または熱時濾過することにより除去することができる。
【0035】
(3)色素プレ除去工程
さらに、着色ポリエステル衣料廃棄物は、染料、顔料等の色素によって着色されている。ポリエステル衣料廃棄物の着色の程度が大きい場合、最終的に得られるBHETの純度をより高めるべく、色素プレ除去工程を行うことが好ましい。
なお、以下では、色素として、ポリエステルの着色に最適な分散染料を代表して説明する。
【0036】
ポリエステル衣料廃棄物に含まれる分散染料が再生ポリエステル中に混入すると、再生ポリエステルが着色し、特に黄色度が増大することが知られている。そのため、ポリエステル衣料廃棄物から高純度BHETを製造するに際し、ポリエステル衣料廃棄物に含まれる分散染料が除去される程度(分散染料の残存量)を確認しつつ、分散染料(色素)の一部を除去する操作を行うことが好ましい。
ここで、分散染料(多くの色素)は、窒素原子を含有する発色団を有する化合物が圧倒的に多いので、分散染料が除去された程度を確認する方法の1つとして、解重合液(解重合物)やBHET中に残存する窒素原子の量(残存量)を測定する方法を使用することができる。
【0037】
本発明者らは、色素を効果的に除去する方法について鋭意検討を行った結果、着色ポリエステル衣料廃棄物に含まれる色素由来の窒素原子の量が900ppmを超える場合には、色素を予め除去(プレ除去)した後の粗製BHET中に残存する窒素原子の量を900ppm以下まで減少させ、後述する各工程の処理を行うことにより、より高純度のBHETを得ることができることを知見した。
【0038】
かかる色素プレ除去工程は、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、まず、上述した解重合工程および固形物除去工程を経た解重合液を20~25℃まで冷却して、BHETやポリエステルオリゴマーの微細結晶を固形分として析出させる。その後、遠心沈降式遠心分離機(分離板型、スクリューデカンタ型等)を用いて、遠心力を2,000G以上に設定して、解重合液を遠心分離する。これにより、析出した固形分と、解重合液中のMEGおよびMEGに溶解している色素とを固液分離することができる。以上の操作により、残存する窒素原子の量が900ppm以下であるBHETやポリエステルオリゴマーの固形分(固体状の解重合物)が得られる。
【0039】
なお、一度の遠心沈降分離操作で残存する窒素原子の量が900ppm以下にならない場合、得られた固形分に、さらにMEGを添加して、再度遠心沈降分離操作を行うことができる。
また、ポリエステル衣料廃棄物に含まれる色素に由来する窒素原子の量が900ppm以下であれば、本工程(色素プレ除去工程)を省略してもよい。
【0040】
解重合液を冷却して、BHETやポリエステルオリゴマーを固形分として析出させる操作は、晶析操作そのものであり、前述した特許文献1にも類似の方法が記載されている。しかしながら、本工程における解重合液中には晶析操作を阻害する多種多様の不純物が存在しており、かつ、MEG中での晶析となるために、晶析操作で得られる固形分の結晶形状が極端に悪く、結晶サイズが非常に小さな微細結晶となる。
そのため、一般的に公知の結晶濾過分離機や遠心濾過式結晶分離機では、結晶と液体成分との固液分離が困難であった。これに対して、遠心沈降式遠心分離機を使用すれば、小さな微細結晶と液体成分との固液分離も行い易くなる。
【0041】
なお、遠心沈降式遠心分離機で分離したMEGおよびMEGに溶解している色素等は、蒸発操作、蒸留操作等により精製(回収)して、再使用することが好ましい。
一方、染料成分(色素または発色団)は、蒸発残渣、蒸留缶残として濃縮され、産業廃棄物として処理することが好ましい。
【0042】
(4)濃縮工程
次に、上記固形物を加熱により溶融させ、溶融状態で液状の解重合物(解重合液)を得る。そして、この解重合液中からBHETより沸点の低い低沸点成分を除去して、BHETおよびポリエステルオリゴマーを主成分とする粗製BHETを得る。なお、得られる粗製BHETは、溶融状態で粘稠状の液体であるため、粗製BHET濃縮液とも記載する。ここで、低沸点成分としては、主にMEGやDEG等が挙げられる。また、この粗製BHET濃縮液中には着色用色素成分、ポリアミド成分、ポリウレタン成分、ポリエステル共重合成分、上記固形物除去工程(2)で除去できなかった5μm未満の超微細な酸化チタン等の不純物が残存している場合がある。
【0043】
本工程(4)で行う低沸点成分の除去(蒸発・留去)は、例えば、各種の蒸発機を用いて行うことができる。
特に、蒸発操作時のBHETおよびポリエステルオリゴマーの重合化を防止するために、減圧下に粗製BHET濃縮液の温度を130℃以下に設定して行うことが好ましい。
また、蒸発機内における粗製BHET濃縮液の滞留時間が10分以下となるような構造(型式)の蒸発機を選定することが好ましい。
具体的な蒸発機としては、例えば、流下膜式蒸発機、薄膜式蒸発機が挙げられる。
【0044】
(5)回収工程
次に、BHETおよびポリエステルオリゴマーを主成分とし、場合によって、残存着色用色素成分、残存ポリアミド成分、残存ポリウレタン成分、残存ポリエステル共重合成分、残存酸化チタン等の不純物を含有する粗製BHET濃縮液から、BHETを回収して、粗製BHET濃縮液よりBHET純度の高い中純度BHETを得る。
BHETの回収は、真空(減圧)下での蒸発(以下、「真空蒸発」とも記載する。)により好適に行うことができる。この場合、真空蒸発する成分としては、BHETが圧倒的に多いが、BHETとともに微量の着色用色素成分、ポリエステルオリゴマー成分、ポリアミド成分、ポリウレタン成分、ポリエステル共重合成分等の沸点を有する有機化合物(以下、「沸点を有する有機化合物」とも記載する。)も留出する場合がある。
【0045】
これらの沸点を有する有機化合物の留出量は、真空蒸発の操作における温度、圧力(真空度)および粗製BHET濃縮液中における沸点を有する有機化合物の残存モル濃度によって決定される。したがって、本工程(5)より前段の工程で可能な限り、沸点を有する有機化合物を除去しておくことが、より高純度のBHETを製造する観点から好ましい。
沸点を有する有機化合物の中でも、着色用色素成分(分散染料等)については、沸点よりも低い温度で昇華する特性を有するため、本工程(5)に供給される粗製BHET濃縮液中に残存する窒素原子の量が900ppm以下になるまで、色素が除去されていれば、本工程(5)で得られる中純度BHET中に多量の色素が混入するという問題を回避することができる。
【0046】
本工程(5)で行うBHETの真空蒸発は、特許文献1に記載されている薄膜蒸発機の温度、圧力、滞留時間等の条件に準じて行うことができる。ただし、着色用色素成分の昇華量を限りなく低くするためには、薄膜蒸発機の温度および圧力はより低くすることが好ましい。
本工程(5)で得られる中純度BHET中に残存する窒素原子の量は、300ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましい。
【0047】
粗製BHET(粗製BHET濃縮液)から、例えば、真空蒸発によりBHETを回収して、中純度BHETが得られる。蒸発しきれなかった沸点を有する有機化合物および沸点を有さない酸化チタン等の固形物は、蒸発機の残渣として系外に排出される。排出された残渣は、別途処理により有効活用することが好ましい。
すなわち、本工程(5)は、沸点を有さない固形物の最終分離工程としての役割も担っていると言うこともできる。
【0048】
(6)晶析分離工程
次に、中純度BHETから色素を除去して、中純度BHETよりBHET純度の高い精製BHETを得る。
ここで、最終的に得られる高純度BHETを原料とし、重縮合(溶融重縮合)して製造される再生ポリエチレンテレフタレートのカラーb値(黄色度)を8以下とすることが好ましい。そのためには、高純度BHET中に残存する窒素原子の量を20ppm以下とすることが好ましく、10ppm以下とすることがより好ましい。
本発明者らは、高純度BHET中に残存する窒素原子の量を上記範囲に調整するためには、本工程(6)で得られる精製BHET中に残存する窒素原子の量も、同等に20ppm以下にすることが有効であることを知見している。
【0049】
なお、再生ポリエチレンテレフタレートの着色の程度をより低くする観点からは、高純度BHET中に残存する窒素原子の量はできる限り少ない方が好ましい。ただし、若干量の窒素原子が再生ポリエチレンテレフタレートに残存することで、例えば、着色ポリエステル衣料廃棄物から再生されたポリエチレンテレフタレートであることを示すフットプリントマークとして利用する等のメリットは考えられる。
【0050】
本発明者らは、上記回収工程(5)で得られた中純度BHET中に残存する色素およびその他の微量の沸点を有する有機化合物等の不純物を効率的に除去する方法について鋭意検討を行った結果、以下の方法が好適であることを見い出した。
すなわち、色素、発色団、沸点を有する有機化合物等を溶解する能力(溶解度)が大きい溶媒(本発明の脱色溶媒)を用いて、中純度BHETを脱色溶媒に溶解した溶解液を冷却することにより、BHETの結晶を析出させるとともに、結晶と色素を含有する溶媒成分とを固液分離する操作(以下、「組合せ晶析操作」とも記載する。)を行うことが好ましい。
また、晶析に際し、脱色溶媒の種類に応じて、中純度BHETと脱色溶媒との混合比率を調整することによって、上記不純物をより効率よく除去することができる。
【0051】
本発明者らが実施した色素、発色団、沸点を有する有機化合物等に対する溶解度試験の結果からは、脱色溶媒としては、グリコール系化合物が好適であることが判明した。
グリコール系化合物としては、グリコールモノエーテル、グリコールジエーテル、グリコールが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
グリコールモノエーテルの具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0053】
グリコールジエーテルの具体例としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0054】
グリコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0055】
また、グリコールモノエーテルおよびグリコールジエーテルは、それぞれ、その炭素原子数が4~12であることが好ましく、4~10であることがより好ましく、4~8であることがさらに好ましい。一方、グリコールの炭素原子数は、2~6であることが好ましい。
すなわち、脱色溶媒(本発明の脱色溶媒)は、炭素原子数が4~12であるグリコールモノエーテルまたはグリコールジエーテル、および、炭素原子数が2~6であるグリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコール系化合物を含有することが好ましい。かかるグリコール系化合物を含有する脱色溶媒として使用することにより、中純度BHET中に残存する色素、発色団、沸点を有する有機化合物等の不純物の除去効果をより高めることができる。
これらの中でも、着色ポリエステル衣料廃棄物(中純度BHET)の着色の程度にかかわらず、優れた脱色効果を発現するという観点から、グリコールモノエーテルがより好ましい。
【0056】
なお、脱色溶媒には、グリコール系化合物に加えて、水やベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン等の有機溶剤を混合してもよい。
脱色溶媒中のグリコール系化合物の含有量は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。なお、含有量の上限値は、100質量%である。かかる量でグリコール系化合物を含有る脱色溶媒は、極めて良好な色素の除去能(脱色効果)を発揮する。
なお、溶解液の冷却温度については、脱色溶媒に溶解するBHETの量を減らし、BHETの収率を上げるという観点からは冷却温度が低い方が好ましい。ただし、冷却に要するエネルギー量、低温化に伴う脱色溶媒の粘度上昇による固液分離の操作性等を考慮すると、冷却温度を20~25℃程度とするのが好ましい。
また、溶解液は、急冷してもよいが、十分なサイズを有するBHETの結晶を得る観点からは、徐冷(自然放冷含む)が好ましい。
【0057】
組合せ晶析操作を行う回数については、特に限定されないが、1回目の操作で得られた精製BHET中に残存する窒素原子の量が20ppmを超える場合は、再度、組合せ晶析操作を行うことが好ましい。
本発明者らによれば、組合せ晶析操作を少なくとも3回行えば、着色の程度にかかわらず、精製BHET中に残存する窒素原子の量が20ppm以下になることを確認している。
【0058】
組合せ晶析操作で固液分離された色素、発色団、沸点を有する有機化合物等の不純物を含有する脱色溶媒は、蒸発操作、蒸留操作等により精製して、再使用することが好ましい。
一方、色素、発色団、沸点を有する有機化合物等の不純物は、蒸発残渣、蒸留缶残として回収され、産業廃棄物として処理することが好ましい。
以上のような本工程(6)において、本発明のBHETの精製方法が実施される。
【0059】
なお、本発明の脱色溶媒を用いて、着色ポリエステル衣料廃棄物を解重合する前に脱色する方法も考えられる。しかしながら、この場合、ポリエステル衣料(ポリエステル繊維)中に脱色溶媒が残存してしまう。具体的には、ポリエステル衣料中に、衣料の質量に対して3.5~4.0倍程度の脱色溶媒が残存する。この状態で、ポリエステル衣料を解重合すると、脱色溶媒の種類(例えば、エーテル系化合物)によっては、MEGの代わりに、ポリエステルのベンゼン環末端に反応してしまい、BHETの代わりに副反応物の生成量が増加してしまう。本発明者らは、反応が生じた場合、副反応物が10~12%程度生成し、BHETの収率が10~12%程度低下することを確認している。
【0060】
BHETの収率低下を避けるために、脱色後のポリエステル衣料を、ポリエステル衣料の質量の20~25倍程度の洗浄剤(例えば、MEG)で洗浄した後、解重合する方法も考えられる。しかしながら、この場合、多量の洗浄剤を使用することにより、高純度BHETの製造コストが高くなり過ぎてしまう。また、本発明者らは、洗浄に使用する洗浄剤の量や回数を削減すると、洗浄剤を使用しない場合と比較してBHETの収率が向上するが、得られたBHETから製造される再生ポリエチレンテレフタレートのカラーb値が13以上になり、黄色化の程度が大幅に悪化することも確認している。
【0061】
一方、本発明のように、着色ポリエステル衣料廃棄物をMEGで解重合してから、BHETを回収(分子蒸留)して中純度BHETを得(回収工程)、その後、中純度BHET中に残存する色素を脱色溶媒で抽出除去(晶析分離工程)する方法では、副生成物の生成が生じないか、高度に抑制されるため、BHETの収率を高くすることができる。
また、本発明によれば、BHETの晶析と、BHETと色素との分離とを1つの晶析分離工程(6)で行うので、BHETの結晶中に色素または発色団が混入し難く、より純度の高い結晶(BHET)を製造し易い。
【0062】
(7)脱溶媒工程
次に、晶析分離工程で得られたBHETの結晶中に残留する溶媒成分を除去して、精製BHETよりBHET純度の高い高純度BHETを得る。
本工程(7)で行う溶媒成分の除去(蒸発・留去)は、例えば、各種の蒸発機を用いて行うことができる。
特に、蒸発操作時の高純度BHETの重合化を防止するために、蒸発機の温度、圧力は低い方が好ましい。
【0063】
溶融状態で得られる高純度BHETを、そのまま重縮合(溶融重縮合)して再生ポリエチレンテレフタレートを製造してもよいし、溶融状態で得られる高純度BHETを一旦造粒した後に、重縮合(溶融重縮合)して再生ポリエチレンテレフタレートを製造してもよい。すなわち、本発明の再生ポリエチレンテレフタレートは、高純度BHETの重縮合物である。
重縮合により再生ポリエチレンテレフタレートを製造する際には、高純度BHETとテレフタル酸とを任意の割合で混合することで、再生ポリエチレンテレフタレートを容易に製造することができる。この場合、サステナブルクローズドループのリサイクル構築に寄与するためには、再生ポリエチレンテレフタレート中の高純度BHETに由来する構造を50質量%以上含有することが好ましく、65質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0064】
以上、本発明の高純度BHETの製造方法、再生PET、脱色溶媒およびBHETの精製方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明の高純度BHETの製造方法およびBHETの精製方法は、それぞれ、同様の効果が発揮される任意の工程と置換されてもよく、任意の目的の工程を追加するようにしてもよい。また、本発明の工程は、回分式(バッチ式)、連続式、またはこれらの組合せのいずれであってもよい。
また、本発明の再生PETおよび脱色溶媒は、それぞれ、同様の効果が発揮される任意の構成と置換されてもよく、任意の構成を追加するようにしてもよい。
【実施例0065】
以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
1.着色ポリエステル衣料廃棄物からの高純度BHETおよび再生PETの製造
(実施例1)
<(1)解重合工程>
まず、裁断されていない黒色分散染料、青色分散染料、赤色分散染料および黄色分散染料により着色されたPET衣料廃棄物(以下、「着色衣料廃棄物」とも記載する。)を4着で合計400g(嵩密度:0.12g/cm3、着色衣料廃棄物に含まれる窒素原子の総量:1,150ppm)を用意した。
次に、これらの衣料の形態のままの着色衣料廃棄物を5Lのフラスコに投入した後、予め195℃まで加熱しておいたMEG2,245gと、解重合触媒としての水酸化ナトリウム1gとをフラスコに追加投入して、撹拌することなく、195℃、常圧で5.0時間反応させた。これにより、着色した粗製BHETを主成分とする解重合液(着色解重合液)を得た。
【0067】
<(2)固形物除去工程>
次に、着色解重合液を、目開き30メッシュの金網ストレーナーにより粗大固形物を熱時濾過し、粗大固形物を除去した着色解重合液を得た。この段階では、主に、PET以外の異種素材(綿、オレフィン類)、ジッパー、ボタン、金属、ガラス、砂等の粗大固形物を除去した。
次に、着色解重合液の温度を95℃まで冷却し、10μmのステンレス製の長繊維フィルター(ナスロンフィルター)で熱時濾過し、10μm以上のポリエステルに不溶な酸化チタン等の微細固形物を除去した。
【0068】
<(3)色素プレ除去工程>
次に、95℃で長繊維フィルターを通過した着色解重合液を25℃まで冷却した。これにより、BHETやポリエステルオリゴマーの微細結晶を固形分として析出させ、分離板型(ディスク型)の遠心沈降式遠心分離機を使用して、析出した固形分と解重合液中のMEGおよびMEGに溶解している色素とを固液分離した。遠心分離機の条件は、遠心力を4,000Gとし、遠心分離の時間を30分間とした。
なお、遠心分離機で分離された色素を含有するMEGの比率は、着色解重合液全体に対して52質量%であり、固形分中に残存する窒素原子の量は465ppmであった。
【0069】
<(4)濃縮工程>
次に、上記固形分を125℃まで加熱することにより溶融させた後、薄膜蒸発機に送液した。薄膜蒸発機の条件は、ジャケット加熱熱媒温度を140℃とし、蒸発機内圧力を400Pa(3.0mmHg)とした。これにより、BHETより沸点の低い低沸点成分を蒸発・留去して、粗製BHET濃縮液を得た。得られた粗製BHET濃縮液は、着色した粘稠状の液体であった。
【0070】
<(5)回収工程>
次に、粗製BHET濃縮液を短行程薄膜蒸発機に送液した。薄膜蒸発機の条件は、ジャケット加熱熱媒温度を180℃とし、蒸発機内圧力を10Pa(0.08mmHg)とした。これにより、粗製BHET濃縮液からBHETを蒸発・留去させて、中純度BHETを回収した。なお、中純度BHET中に残存する窒素原子の量は、135ppmであった。
【0071】
<(6)晶析分離工程>
次に、1質量部の中純度BHETと、脱色溶媒として4質量部のジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(炭素原子数:10)とを5Lのフラスコに投入し、液内温が80℃になるまで加熱した。これにより、中純度BHETをジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに溶解させて、溶解液を得た。その後、この溶解液を自然放冷で液温を20℃まで降下させて、BHETの結晶を析出させた。
次に、ヌッチェ式固液分離機で析出したBHETの結晶とジエチレングリコールモノヘキシルエーテルとを固液分離して、残存脱色溶媒を含む精製BHET-1を得た。精製BHET-1中に残存する窒素原子の量は、52ppmであった。
【0072】
また、1質量部の残存脱色溶媒を含む精製BHET-1と、4質量部のジエチレングリコールモノヘキシルエーテルとを5Lのフラスコに投入し、上記と同様の操作を行って、精製BHET-2を得た。精製BHET-2中に残存する窒素原子の量は、22ppmであった。
さらに、上記と同様にして、再度、精製BHET-3を得た。精製BHET-3中に残存する窒素原子の量は、9.8ppmであった。
【0073】
<(7)脱溶媒工程>
次に、残存脱色溶媒を含む精製BHET-3を125℃まで加熱することにより溶融させた後、薄膜蒸発機に送液した。薄膜蒸発機の条件は、ジャケット加熱熱媒温度を135℃とし、蒸発機内圧力を350Pa(2.6mmHg)とした。これにより、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルを蒸発・留去して、高純度BHETを得た。得られた高純度BHETは、無色透明の粘稠状の液体であった。また、高純度BHET中に残存する窒素原子の量は、9.2ppmであった
【0074】
次に、得られた高純度BHETを、常法に従って溶融重縮合させて、PET(再生PET)を得た。
【0075】
(実施例2)
脱色溶媒として、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(炭素原子数:10)を使用した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0076】
(実施例3)
脱色溶媒として、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(炭素原子数:10)を使用した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0077】
(実施例4)
脱色溶媒として、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(炭素原子数:8)を使用した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0078】
(実施例5)
脱色溶媒として、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、エチレングリコールモノブチルエーテル(炭素原子数:6)を使用した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0079】
(実施例6)
脱色溶媒として、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル(炭素原子数:12)を使用した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0080】
(実施例7)
脱色溶媒として、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、85質量部のジエチレングリコールモノメチルエーテル(炭素原子数:5)と15質量部のMEG(炭素原子数:2)との混合液を使用した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0081】
(実施例8)
脱色溶媒として、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、70質量部のジエチレングリコールモノメチルエーテル(炭素原子数:5)と30質量部のMEGとの混合液を使用した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0082】
(実施例9)
窒素原子の総量が1,150ppmである着色衣料廃棄物に代えて、窒素原子の総量が850ppmである着色衣料廃棄物を原料として、4質量部のジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、6.5質量部のMEGを脱色溶媒として使用し、色素プレ除去工程(3)を省略した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0083】
(実施例10)
脱色溶媒として、MEGに代えて、ジエチレングリコール(炭素原子数:4)を使用した以外は実施例9と同様にして高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0084】
(実施例11)
脱色溶媒として、MEGに代えて、トリエチレングリコール(炭素原子数:6)を使用した以外は、実施例9と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0085】
(実施例12)
脱色溶媒として、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、エチレングリコールジメチルエーテル(炭素原子数:4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0086】
(実施例13)
脱色溶媒として、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、エチレングリコールモノメチルエーテル(炭素原子数:3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0087】
(比較例1)
まず、解重合前に、衣料の形態のままの着色衣料廃棄物を、脱色溶媒としてジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(炭素原子数:10)を用いて脱色した。その結果、脱色処理された衣料廃棄物の中に脱色溶媒が浸みこんだ状態で残存した、
次に、脱色溶媒が残存した状態の衣料廃棄物を、MEGを使用して解重合すると、MEGの代わりに、残存エーテルがベンゼン環と結合することにより、BHET以外の副反応物が生成した。
本発明者らの試験結果では、実施例の方法(解重合後の脱色)に比較して、BHETの収率が副生物の生成により10~12質量%程度悪化することが確認された。また、BHETの収率低下を回避するためには、着色衣料廃棄物の質量の20~25倍程度のMEGで洗浄する必要があり、コスト的に引き合わないことが判明した。
なお、BHETの収率(%)は、生成した粗製BHETの質量÷(着色衣料廃棄物の質量×(254/192))×100により計算した。
【0088】
(比較例2)
4質量部のジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、6.5質量部のMEGを脱色溶媒として使用し、回収工程(5)を省略した以外は、実施例1と同様にして、高純度BHETおよび再生PETを得た。
【0089】
2.測定
2-1.窒素原子の量の測定
着色衣料廃棄物、着色プレ除去後の固形物、中純度BHET、精製BHET-1~3、高純度BHET中に残存する窒素原子の量は、それぞれ微量全窒素分析装置(三菱ケミカルアナリテック社製、「TN-2100H」)で測定した。
2-2.カラーb値の測定
再生PETのカラーb値は、色差計(日本電色社製、「SE-7700」)で測定した。
【0090】
以上の結果を、表1にまとめて示す。
【0091】