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特開2022-139428螺子の緩み検知方法及び検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139428
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】螺子の緩み検知方法及び検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20220915BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20220915BHJP
   E01B 9/10 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G01L5/00 103Z
G06K7/10 244
E01B9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039809
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 康宏
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA02
2F051AA06
2F051AB01
(57)【要約】
【課題】簡易な作業で設置できる螺子の緩み検知方法を提供する。
【解決手段】構造物に螺子11を締結する際に、構造物と螺子11の座面との間に、RFタグ20につながった線状部材22を挟むとともに、螺子11が緩んだときにRFタグ20が移動するように応力を付与して初期状態とし、リーダー90でRFタグ20の移動の有無を検出する、螺子の緩み検知方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に螺子を締結する際に、前記構造物と前記螺子の座面との間に、RFタグ又は前記RFタグにつながった部材を挟むとともに、前記螺子が緩んだときに前記RFタグが移動するように応力を付与して初期状態とし、リーダーで前記RFタグの移動の有無を検出する、螺子の緩み検知方法。
【請求項2】
前記RFタグに、張力が小さくなると短くなる第1の応力付与部材を接続し、前記第1の応力付与部材に張力をかけた状態として前記応力を付与する、請求項1に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項3】
前記RFタグに、強磁性体を備え移動可能な第2の応力付与部材を接続し、前記第2の応力付与部材から離間した位置に磁石を固定して前記応力を付与する、請求項1に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項4】
前記RFタグに、形状記憶性を有するリング状線条体又は皿ばねを接続し、前記リング状線条体又は皿ばねを変形させた状態で前記構造物と前記螺子の座面との間に挟んで前記応力を付与する、請求項1に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項5】
前記初期状態において前記RFタグが前記リーダーの交信領域に存在し、前記螺子が緩むと前記RFタグが前記リーダーの交信領域から非交信領域へ移動する、請求項1~4のいずれか一項に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項6】
前記初期状態において前記RFタグが前記リーダーの非交信領域に存在し、前記螺子が緩むと前記RFタグが前記リーダーの交信領域へ移動する、請求項1~4のいずれか一項に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項7】
前記非交信領域が、電磁波遮蔽部材で覆われた領域である、請求項5又は6に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項8】
前記初期状態において、前記RFタグが前記螺子を特定する判別データを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項9】
前記リーダーが移動可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項10】
前記リーダーを前記構造物に固定する、請求項1~8のいずれか一項に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項11】
構造物に締結した螺子と、
前記構造物と前記螺子の座面との間に挟んだRFタグ、又は前記構造物と前記螺子の座面との間に挟んだ部材につながったRFタグと、
前記螺子が緩んだときに前記RFタグが移動するように応力を付与する応力付与部材と、
前記RFタグの移動の有無を検出するリーダーとを備える、螺子の緩み検知システム。
【請求項12】
前記応力付与部材が、張力が小さくなると短くなる第1の応力付与部材、強磁性体を備え移動可能な第2の応力付与部材と磁石の組み合わせ、形状記憶性を有するリング状線条体、又は皿ばねである、請求項11に記載の螺子の緩み検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に締結した螺子の緩みを検知する方法、及び検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物に締結したボルトや雄ネジ等の螺子が緩んでいないかどうかの確認は、目視や打音検査により行われることが一般的であった。
目視や打音検査による確認では作業者が螺子の近傍で作業する必要があるため、場所によって困難を伴う場合がある。
【0003】
特許文献1には、締結したボルトとナットの緩みを検知する方法として、ナットの側面に導通片を固着し、ナットが緩んで回転すると前記導通片と接触して導通する接点を、前記ナットの近傍に配置し、導通の発生を検出して緩みを検知する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-13919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は、ナットの締め込み位置の近傍に接点を設ける際にナット以外のものとは電気絶縁する必要があり、ナットと接点との距離も比較的近いため、接点を設置する作業が煩雑になりやすい。
本発明は、簡易な作業で設置できる螺子の緩み検知方法及び検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 構造物に螺子を締結する際に、前記構造物と前記螺子の座面との間に、RFタグ又は前記RFタグにつながった部材を挟むとともに、前記螺子が緩んだときに前記RFタグが移動するように応力を付与して初期状態とし、リーダーで前記RFタグの移動の有無を検出する、螺子の緩み検知方法。
[2] 前記RFタグに、張力が小さくなると短くなる第1の応力付与部材を接続し、前記第1の応力付与部材に張力をかけた状態として前記応力を付与する、[1]の螺子の緩み検知方法。
[3] 前記RFタグに、強磁性体を備え移動可能な第2の応力付与部材を接続し、前記第2の応力付与部材から離間した位置に磁石を固定して前記応力を付与する、[1]の螺子の緩み検知方法。
[4] 前記RFタグに、形状記憶性を有するリング状線条体又は皿ばねを接続し、前記リング状線条体又は皿ばねを変形させた状態で前記構造物と前記螺子の座面との間に挟んで前記応力を付与する、[1]の螺子の緩み検知方法。
[5] 前記初期状態において前記RFタグが前記リーダーの交信領域に存在し、前記螺子が緩むと前記RFタグが前記リーダーの交信領域から非交信領域へ移動する、[1]~[4]のいずれかの螺子の緩み検知方法。
[6] 前記初期状態において前記RFタグが前記リーダーの非交信領域に存在し、前記螺子が緩むと前記RFタグが前記リーダーの交信領域へ移動する、[1]~[4]のいずれかの螺子の緩み検知方法。
[7] 前記非交信領域が、電磁波遮蔽部材で覆われた領域である、請求項5又は6に記載の螺子の緩み検知方法。
[8] 前記初期状態において、前記RFタグが前記螺子を特定する判別データを有する、[1]~[7]のいずれかの螺子の緩み検知方法。
[9] 前記リーダーが移動可能である、[1]~[8]のいずれかの螺子の緩み検知方法。
[10] 前記リーダーを前記構造物に固定する、[1]~[8]のいずれかの螺子の緩み検知方法。
【0007】
[11] 構造物に締結した螺子と、前記構造物と前記螺子の座面との間に挟んだRFタグ、又は前記構造物と前記螺子の座面との間に挟んだ部材につながったRFタグと、前記螺子が緩んだときに前記RFタグが移動するように応力を付与する応力付与部材と、前記RFタグの移動の有無を検出するリーダーとを備える、螺子の緩み検知システム。
[12] 前記応力付与部材が、張力が小さくなると短くなる第1の応力付与部材、強磁性体を備え移動可能な第2の応力付与部材と磁石の組み合わせ、形状記憶性を有するリング状線条体、又は皿ばねである、[11]の螺子の緩み検知システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な作業で設置できる螺子の緩み検知方法、及び検知システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態を示す平面図である。
図2図1中のII-II線に沿う断面図である。
図3図1の要部拡大図である。
図4】第2の実施形態を示す平面図である。
図5】第3の実施形態を示す平面図である。
図6】第4の実施形態を示す斜視図である。
図7】第5の実施形態を示す斜視図である。
図8】変形例(1)の要部拡大図である。
図9】変形例(2)の要部拡大図である。
図10】変形例(3)の要部拡大図である。
図11】変形例(4)の要部拡大図である。
図12】変形例(5)の要部拡大図である。
図13】変形例(6)の要部拡大図である。
図14】変形例(7)の要部拡大図である。
図15】変形例(8)の要部拡大図である。
図16】変形例(9)の要部拡大図である。
図17】変形例(10)の要部拡大図である。
図18】変形例(11)の要部拡大図である。
図19】リング状線条体の他の例を示す斜視図である。
図20】リング状線条体の他の例を示す斜視図である。
図21】皿ばね例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「螺子」は、ねじ山をもった部品の総称であり、ボルト、ナット、ナットを組まないで用いる雄ねじ等が例示できる。
構造物としては、鉄道の軌道を構成する構造物、鉄道に付設された構造物、鉄橋を構成する構造物、鉄塔を構成する構造物、道路に付設された構造物などの土木構造物が例示できる。
土木構造物に用いられる螺子は、例えば、鉄道用途としては、タイプレート固定用ねじ釘、レール締結用ばねのねじ、分岐用レールの固定ボルト、継ぎ目板固定用ねじ、転轍機の固定用ねじ、保線用歩行板の固定用ねじ、鉄道架線用柱の固定用ねじ、鉄道の防音壁固定用ねじが挙げられる。
その他に、鉄橋固定用ボルト、鉄塔組み立て固定用ねじ、道路の防音壁固定用ねじ、電柱トランス架台固定用ボルト等が例示できる。
以下の実施形態では、鉄道用途の螺子を例に挙げて説明するが、これに限定されない。
【0011】
<第1の実施形態>
図1~3は、第1の実施形態の螺子の緩み検知方法(以下、単に「検知方法」ともいう。)に好適な螺子の緩み検知システム(以下、単に「検知システム」ともいう。)を示す概略図である。図1は上方から見た平面図、図2はII-II線に沿う断面図、図3は要部拡大図である。
なお、以下の図は、その構成をわかりやすく説明するための模式図であり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合もある。
【0012】
図中符号1は枕木である。枕木1の上面にタイプレート2が存在し、タイプレート2上にレール3が存在する。レール締結ばね4は、レール3の底部上面をタイプレート2に向かう方向に押圧してレール3を固定する。
本実施形態における検知対象の螺子11は、タイプレート2を枕木1の上面に固定するタイプレート固定用ねじ釘、及びレール締結ばね4をタイプレート2に固定するレール締結ばね固定用ねじである。
【0013】
枕木1の材質は、硬質発泡ウレタン樹脂をガラス長繊維で強化したガラス繊維補強ウレタン発泡体が好ましい。例えばエスロンネオランバーFFU(登録商標、積水化学工業株式会社製)からなる。本実施形態において、枕木1の各寸法は、厚さ150mm、幅230mm、長さ4000mmである。
【0014】
図中符号20はRFタグ、22はRFタグにつながった線状部材である。
本実施形態において、線状部材22の一方の端部をRFタグ20に接続する。螺子11を締結する際に、螺子11の座面と構造物(レール締結ばね4、タイプレート2)との間に、前記線状部材22の他方の端部を挟んで線状部材22を拘束する。
【0015】
RFタグ20の種類は特に限定されない。電源が必要なアクティブタイプでもよく、電源が、不要なパッシブタイプでもよく、両方の特長を合わせ持つセミアクティブタイプでもよい。使用周波数帯の区分は、LF帯(中波帯:135kHz以下)、HF帯(短波帯:13.56MHz)、UHF帯(極超短波:900MHz)、マイクロ波(2.45GHz)のいずれでもよい。電波の伝達方式は、電磁誘導方式でもよく、電波方式でもよい。
RFタグの形状は特に限定されない。コイン型、カード型、スティック型が例示できる。
特にパッシブタイプのRFタグ20は、リーダー90が照射する電磁波等により誘電し、データを発信することができるため、RFタグ20自体は電源が不要という点で好ましい。
本実施形態では、パッシブタイプ、使用周波数UHF帯のRFタグ20を用いる。
【0016】
線状部材22の材質は特に限定されない。金属、ゴム、プラスチック、ガラス、化学繊維等が例示できる。
線状部材22の形状は特に限定されない。断面が円形でもよく、断面が偏平な帯状でもよく、中空形状でもよい。
線状部材の大きさは、直径又は短軸径が10mm以下であることが好ましく、5mm以下がより好ましい。直径又は短軸径の下限は充分な強度が得られる範囲であればよい。本実施形態では、線状部材22として直径0.7mmのナイロン製糸を用いる。
例えば枕木に使用する螺子の場合で考えると、螺子11からRFタグ20までの距離は、例えば0~500mmが好ましく、0~200mmがより好ましい。上限値を超えるとリーダーでスキャンする範囲が広くなりすぎて、非交信領域との位置の境界が曖昧になるリスクが生じやすい。本実施形態では約80mmである。
【0017】
本実施形態において、張力が小さくなると短くなる第1の応力付与部材として、ゼンマイばね30を用いる。ゼンマイばね30は、渦巻き状に巻いた紐状又は帯状の弾性部材31を備える。
ゼンマイばね30から引き出した弾性部材31をRFタグ20に接続し、RFタグ20が螺子11から遠ざかる方向に張力をかけた状態で、ゼンマイばね30を枕木1の上面に固定する。
RFタグ20と弾性部材31とは、直接接続してもよく、接続手段(図示せず)を介して接続してもよい。接続手段として、例えば、前記線状部材22と同様のものを用いることができる。
螺子11を緩みがないように締結した初期状態において、RFタグ20からゼンマイばね30までの距離は、例えば200~800mmが好ましく、200~500mmがより好ましい。上記範囲の下限値未満であるとリーダーでスキャンする時に非交信領域にならない可能性があり、上限値を超えると枕木上に配置することが難しい場合がある。本実施形態では200~500mmである。
【0018】
図2に示すように、車両95の底部外面であって、一対の車輪96の外側及び内側の計4箇所に、RFタグ20の移動の有無を検出するリーダー90を取り付ける。リーダー90は下方に交信領域を有し、初期状態においてRFタグ20が存在する領域を上からスキャンする位置に存在する。リーダー90の仕様は、RFタグ20と交信可能であればよく、特に限定されない。
本実施形態では、リーダー90が垂直方向の下向きに電磁波を照射し、その電磁波によりRFタグ20が誘電してデータを発信し、リーダー90が受信する方法でスキャンする。
【0019】
初期状態では、リーダー90の交信領域にRFタグ20が存在する。車両95が通過する際にリーダー90が交信領域をスキャンし、RFタグ20から発信されるデータを読み込む。
一方、螺子11が緩むと、線状部材22の拘束が解け、弾性部材31が元の形状に戻る弾性力によってRFタグ20がゼンマイばね30の近傍に移動した状態(以下、「移動状態」ともいう。)となる。ゼンマイばね30の近傍がリーダー90の非交信領域であると、リーダー90がスキャンしたときにRFタグ20のデータを読み込むことができず、螺子11の緩みを検知できる。
【0020】
初期状態においてRFタグ20が存在する位置から、移動状態においてRFタグ20が存在する位置までの移動距離は、リーダー90の交信領域から非交信領域に移動できる距離であればよい。リーダー90の種類、設定等によって必要距離が変化し得る。例えば200mm以上が好ましい。上限は特に限定されないが、長すぎると線状部材が破損する確率が上昇したり、収縮する時に引っ掛かる可能性が上昇する、緩んだ線状部材は片方が拘束されずにふらふらする、という点からは500mm以下が好ましい。
本実施形態における前記移動距離は約400mmである。
【0021】
初期状態においてRFタグ20は、自身が接続する螺子11を特定する判別データを有することが好ましい。判別データとしては、螺子11の位置、種類、配置した時期等が例示できる。リーダー90がスキャンして読み込んだ判別データに基づいて、緩んでいる螺子11を特定できる。
例えば、初期状態においてRFタグ20に螺子11の位置情報を記録し、リーダー90でスキャンして読み込んだデータを後処理する方法で、どの位置の螺子11が緩んでいるかを検索できる。
スキャン対象のRFタグ20とリーダー90との距離は、交信できる距離であればよく、特に限定されない。
【0022】
本実施形態では、移動状態においてRFタグ20が存在する領域を、電磁波遮蔽部材80で覆って確実に非交信領域とする。
電磁波遮蔽部材80の材質としては、電磁波をシールドする布、フィルム、プラスチック、金属、コンクリート等が例示できる。
電磁波遮蔽部材80の形状は、RFタグ20がゼンマイばね30の近傍へ移動するのを妨げない形状が好ましい。本実施形態において、電磁波遮蔽部材80は、枕木1の上面と平行な矩形の天面81と、3つの側面82を有し、螺子11を臨む側方に開口部83を有する。
【0023】
本実施形態によれば、複数の螺子11のそれぞれに接続したRFタグ20をリーダー90で一括的にスキャンする方法で、簡易に、効率良く螺子11の緩みを点検できる。リーダー90を車両95に搭載することにより、より簡易に点検を行うことができる。
【0024】
なお本実施形態では、螺子11の座面と構造物(タイプレート2、レール締結ばね4)との間に、RFタグ20につながった線状部材22を挟んだが、RFタグ20が薄肉であれば、RFタグ20を直接挟んでもよい。螺子11の座面は、例えば螺子頭部の座面でもよく、座金の座面でもよい。
【0025】
本実施形態においては、張力が小さくなると短くなる第1の応力付与部材として、ゼンマイばね30を用いたが、これに限らない。例えば、ゼンマイばね、コイルばね等の構造的に弾性挙動を示す部材、及びゴム等の素材が弾性挙動を示す部材が挙げられる。
【0026】
本実施形態ではリーダー90を構造物に固定せず、車両95に取り付けて移動可能とした。移動可能なリーダー90はこれに限らない。例えば、持ち運び可能なリーダーを軌道保線作業者が携帯し、巡回しながら点検してもよい。リーダーをドローンに取り付けてもよい。
【0027】
本実施形態では、リーダー90が垂直方向の下向きに電磁波を照射してスキャンしたが、電磁波を照射する方向(スキャン方向)はこれに限らない。移動状態におけるRFタグ20の位置がリーダー90の非交信領域となるように、リーダー90のスキャン方向を調整してもよい。
【0028】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態の検知システムを示す概略構成図であり、上方から見た平面図である。前出の図と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する(以下、同様。)。
第1の実施形態ではゼンマイばね30を枕木1の上面に固定したが、枕木1の側面に固定する。車両の進行方向に垂直な、枕木1の側面のうち、進行方向において前方の面1aに固定する。
本実施形態では、前記前方の面1aが非交信領域となるように、リーダー90のスキャン方向を進行方向の前方斜め下向きに調整する。
【0029】
<第3の実施形態>
図5は、第3の実施形態の検知システムを示す概略構成図であり、上方から見た平面図である。
第1の実施形態では、車両95の底部外面にリーダー90を取り付けたが、本実施形態では枕木1の側面にリーダー91を取り付ける。リーダー91は、レール3の長さ方向に沿う水平方向に電磁波を照射してスキャンする。垂直方向におけるリーダー91の位置、及びレール3からリーダー91までの距離は、初期状態におけるRFタグ20の位置がリーダー91の交信領域内となるように調整する。
【0030】
<第4の実施形態>
図6は、第4の実施形態の検知システムを示す概略構成図であり、レール3の側方から見た図である。
本実施形態において検知対象の螺子11は、レール継ぎ目板5をレール3に固定する、レール継ぎ目板固定ボルトである。レール継ぎ目板5は鉄製である。
螺子11を締結する際に、螺子11の座面と構造物(レール継ぎ目板5)との間に線状部材22を挟んで、線状部材22を拘束する。ゼンマイばね30は、第1の実施形態と同様に、枕木1の上面に固定する。
例えば、初期状態における、螺子11からRFタグ20までの距離は約80mm、レール3からゼンマイばね30までの距離は約400mmである。
第1の実施形態と同様に、リーダー90が垂直方向の下向きに電磁波を照射してスキャンする。
【0031】
<第5の実施形態>
図7は、第5の実施形態の検知システムを示す概略構成図であり、レール3の側方から見た図である。
第4の実施形態では、車両95の底部外面にリーダー90を取り付けたが、本実施形態では枕木1の側面にリーダー91を取り付ける。リーダー91は、レール3の長さ方向に沿う水平方向に電磁波を照射してスキャンする。垂直方向におけるリーダー91の位置、及びレール3からリーダー91までの距離は、初期状態におけるRFタグ20の位置がリーダー91の交信領域内となるように調整する。
【0032】
<変形例(1)~(3)>
第1~5の実施形態では、ゼンマイばね30を用いて、螺子11が緩んだときにRFタグ20が螺子11から遠ざかる方向へ移動するように応力を付与したが、ゼンマイばね30以外の応力付与部材を用いてもよい。
図8~10は変形例(1)~(3)を示す要部拡大図である。
【0033】
(1)図8は、第1の応力付与部材として、ゼンマイばね30に代えてゴム紐32を用いた例である。
ゴム紐32の一端をRFタグ20に接続し、RFタグ20が螺子11から遠ざかる方向に張力をかけた状態で、ゴム紐32の他端を固定する。
RFタグ20とゴム紐32とは直接接続してもよく、前記接続手段(図示せず)を介して接続してもよい。
【0034】
(2)図9は、第1の応力付与部材として、ゼンマイばね30に代えてコイルばね34を用いた例である。
コイルばね34の一端をRFタグ20に接続し、RFタグ20が螺子11から遠ざかる方向に張力をかけた状態で、コイルばね34の他端を枕木1に固定する。
RFタグ20とコイルばね34とは直接接続してもよく、前記接続手段(図示せず)を介して接続してもよい。
【0035】
(3)図10は、第1の応力付与部材に代えて、強磁性体(図示略)を備え移動可能な第2の応力付与部材36と磁石38を用いた例である。強磁性体の材質は特に限定されない。鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属が例示できる。
第2の応力付与部材36をRFタグ20に接続し、第2の応力付与部材36から離間した位置において磁石38を枕木1に固定する。初期状態において、第2の応力付与部材36の強磁性体と磁石38とが引き合って、RFタグ20は螺子11から遠ざかる方向に引っ張られている。螺子11が緩んで線状部材22の拘束が解けると、磁力によって第2の応力付与部材36及びRFタグ20が、磁石38の近傍に移動し、移動状態となる)。
RFタグ20と第2の応力付与部材36とは直接接続してもよく、前記接続手段(図示せず)を介して接続してもよい。RFタグ20上に強磁性体を貼り付けてもよい。
第2の応力付与部材36の強磁性体と磁石38との距離は、磁力によって移動できる距離であればよい。例えば200mm以下が好ましい。
【0036】
<変形例(4)~(7)>
第1~5の実施形態及び変形例(1)~(3)は、螺子11が緩んだときに、RFタグ20が螺子11から遠ざかる方向へ移動するように応力を付与したが、RFタグ20が螺子11へ近づく方向へ移動するように応力を付与してもよい。
図11~14は変形例(4)~(7)を示す要部拡大図である。
【0037】
(4)図11は、第1の応力付与部材としてゼンマイばね30を用いた例である。
線状部材22の一方の端部をRFタグ20に接続し、他方の端部をゼンマイばね30から引き出した弾性部材31に接続する。螺子11を締結する際に、螺子11の座面と構造物との間に、前記線状部材22の中間部分を挟んで線状部材22を拘束する。
RFタグ20が螺子11に近づく方向に張力をかけた状態で、ゼンマイばね30を固定する。
また、螺子11とRFタグ20との間の線状部材22に緩みがない状態でRFタグ20を仮止めする。RFタグ20の仮止めとは、初期状態においてRFタグ20が自由に動かないように、かつ螺子11が緩んだときは螺子11に近づく方向に移動できるように、RFタグ20を拘束することを意味する。図中符号24はRFタグ20を仮止めする拘束部材を示す。拘束部材24としては粘着テープ、面ファスナー、ねじの頭やワッシャなどで緩く留める等が例示できる。
【0038】
初期状態において、仮止めしたRFタグ20を電磁波遮蔽部材80で覆う。すなわち初期状態のRFタグ20は、リーダー90の非交信領域に存在する。螺子11が緩むと、線状部材22の拘束が解け、弾性部材31の弾性力によって、RFタグ20が螺子11に近づく方向に移動する。RFタグ20が、電磁波遮蔽部材80で覆われた領域外の交信領域に移動すると、リーダー90がスキャンしたときにRFタグ20のデータを読み込むことができ、螺子11の緩みを検知できる。
【0039】
(5)図12は、図11におけるゼンマイばね30に代えてゴム紐32を用いた例である。
線状部材22の一方の端部をRFタグ20に接続し、他方の端部をゴム紐32に接続する。螺子11を締結する際に、螺子11の座面と構造物との間に、前記線状部材22の中間部分を挟んで線状部材22を拘束する。RFタグ20が螺子11に近づく方向に張力をかけた状態で、ゴム紐32を固定する。また、螺子11とRFタグ20との間の線状部材22に緩みがない状態でRFタグ20を仮止めする。
【0040】
(6)図13は、図11におけるゼンマイばね30に代えてコイルばね34を用いた例である。
線状部材22の一方の端部をRFタグ20に接続し、他方の端部をコイルばね34に接続する。螺子11を締結する際に、螺子11の座面と構造物との間に、前記線状部材22の中間部分を挟んで線状部材22を拘束する。RFタグ20が螺子11に近づく方向に張力をかけた状態で、コイルばね34を固定する。また、螺子11とRFタグ20との間の線状部材22に緩みがない状態でRFタグ20を仮止めする。
【0041】
(7)図14は、図11におけるゼンマイばね30に代えて、強磁性体(図示略)を備え移動可能な第2の応力付与部材36と磁石38を用いた例である。
線状部材22の一方の端部をRFタグ20に接続し、他方の端部を第2の応力付与部材36に接続する。螺子11を締結する際に、螺子11の座面と構造物との間に、前記線状部材22の中間部分を挟んで線状部材22を拘束する。第2の応力付与部材36から離間した位置において磁石38を固定する。また、螺子11とRFタグ20との間の線状部材22に緩みがない状態でRFタグ20を仮止めする。
初期状態において、第2の応力付与部材36の強磁性体と磁石38とが引き合って、RFタグ20は螺子11に近づく方向に引っ張られている。螺子11が緩んで線状部材22の拘束が解けると、磁力によって第2の応力付与部材36が磁石38の近傍に移動する。RFタグ20が、電磁波遮蔽部材80で覆われた領域外の交信領域に移動すると、リーダー90がスキャンしたときにRFタグ20のデータを読み込むことができ、螺子11の緩みを検知できる。
【0042】
<変形例(8)、(9)>
変形例(4)~(7)は、螺子11の1個に対して、RFタグ20を1個、及び応力を付与する部材1個を用いたが、複数個の螺子11に対して、RFタグ20を複数個用いてもよく、応力を付与する部材を複数個用いてもよく、これらを組み合わせてもよい。
複数個の螺子11に対してRFタグ20を1個用いる場合、前記複数個の螺子11の中から、緩みが生じた螺子11を特定しなくても、緩み生じた螺子11の有無を判定することで速やかな対処につなげることができる。
図15、16は変形例(8)、(9)を示す要部拡大図である。
【0043】
(8)図15の例では、第1の線状部材22aの一方の端部を第1のRFタグ20aに接続し、他方の端部をコイルばね34に接続する。第2の線状部材22bの一方の端部を第2のRFタグ20bに接続し、他方の端部を同じコイルばね34に接続する。第1の螺子11aを締結する際に、第1の螺子11aの座面と構造物との間に、第1の線状部材22aの中間部分を挟んで第1の線状部材22aを拘束する。第2の螺子11bを締結する際に、第2の螺子11bの座面と構造物との間に、第2の線状部材22bの中間部分を挟んで第2の線状部材22bを拘束する。
2つのRFタグ20a、20bがいずれも螺子11に近づく方向に張力をかけた状態で、コイルばね34を固定する。また、拘束部材24で第1のRFタグ20a及び第2のRFタグ20bをそれぞれ仮止めする。
【0044】
(9)図16の例では、第1の線状部材22aの一方の端部をRFタグ20に接続し、他方の端部を第1のコイルばね34aに接続する。第2の線状部材22bの一方の端部を同じRFタグ20に接続し、他方の端部を第2のコイルばね34bに接続する。第1の螺子11aを締結する際に、第1の螺子11aの座面と構造物との間に、第1の線状部材22の中間部分を挟んで第1の線状部材22aを拘束する。第2の螺子11bを締結する際に、第2の螺子11bの座面と構造物との間に、第2の線状部材22bの中間部分を挟んで第2の線状部材22bを拘束する。
RFタグ20が螺子11に近づく方向に張力をかけた状態で、第1のコイルばね34a及び第2のコイルばね34bをそれぞれ固定する。また、拘束部材24でRFタグ20を仮止めする。
【0045】
<変形例(10)、(11)>
第1~5の実施形態及び変形例(1)~(9)は、螺子11が緩んだときにRFタグ20を引っ張る応力付与部材を用いたが、これに限定されない。
図17、18は変形例(10)、(11)を示す要部拡大図である。
【0046】
図17、18は、応力付与部材として、形状記憶性を有するリング状線条体40、42を用いた例である。
リング状線条体40、42は、線状体をリング状に成形したもので形状記憶性を有する。
本明細書において、形状記憶性を有するとは、力を加えて拡径又は縮径する方向に変形させた後、力をはなすと元の形状に戻る性質を意味する。いわゆる形状記憶合金や形状記憶樹脂のように弾性領域外でも元の形状に戻る性質でもよく、ばねのように弾性領域内で元の形状に戻る性質でもよい。
線条体の材質は特に限定されない。例えば、金属、プラスチックが挙げられる。
【0047】
(10)図17の例では、リング状線条体40の一方の端部にRFタグ20を接続し、他方の端部に電磁波遮蔽部材80を接続する。図17(A)に示すように、電磁波遮蔽部材80がRFタグ20を覆うように、リング状線条体40を縮径する方向に変形させる。
螺子11を締結する際に、螺子11の座面と構造物との間に、変形させたリング状線条体40を挟んで拘束する。リング状線条体40の一部を挟んでもよく、全部を挟んでもよい。螺子11の軸がリング部を貫通していることが好ましい。すなわち、リング状線条体40のリング部内径が、螺子11の軸(ねじ部)の外径より大きく、座面の外径より小さいことが好ましい。
【0048】
初期状態では、リング状線条体40が変形し、電磁波遮蔽部材80がRFタグ20を覆っている。螺子11が緩んでリング状線条体40の拘束が解けると、図17(B)に示すように、リング状線条体40が元の形状に戻り、RFタグ20が電磁波遮蔽部材80で覆われていない状態となる。その結果、RFタグ20が、リーダー90の非交信領域から交信領域に移動し、螺子11の緩みを検知できる。
RFタグ20が電磁波遮蔽部材80で覆われていない状態において、RFタグ20と電磁波遮蔽部材80との距離は、リーダー90がRFタグ20のデータを読み込むことができる距離であればよい。例えば、螺子11の軸を中心として、RFタグ20の位置と電磁波遮蔽部材80の位置とがなす中心角が30°以上180°以下であることが好ましい。
【0049】
(11)図18の例では、リング状線条体42の一方の端部にRFタグ20を接続し、他方の端部に電磁波遮蔽部材80を接続する。図18(A)に示すように、電磁波遮蔽部材80とRFタグ20が離間して存在するように、リング状線条体40を拡径する方向に変形させる。
螺子11を締結する際に、螺子11の座面と構造物との間に、変形させたリング状線条体40を挟んで拘束する。リング状線条体40の一部を挟んでもよく、全部を挟んでもよい。螺子11の軸がリング部を貫通していることが好ましい。
【0050】
初期状態では、リング状線条体40が変形し、RFタグ20が電磁波遮蔽部材80で覆われていない。螺子11が緩んでリング状線条体40の拘束が解けると、図18(B)に示すように、リング状線条体40が元の形状に戻り、電磁波遮蔽部材80がRFタグ20を覆う状態となる。その結果、RFタグ20が、リーダー90の非交信領域から交信領域に移動し、螺子11の緩みを検知できる。
【0051】
なお、リング状線条体40、42の形状は特に限定されない。例えば図19、20に示すような多重リング44、46を用いてもよい。
またリング状線条体42に代えて、図20に示すような、厚さ方向に傾斜がついている材料に切り込みをいれた皿ばね48を用いてもよい。螺子11を締結する際に、螺子11の座面と構造物との間に皿ばね48を挟んで螺子11を締結すると、皿ばね48は拡径する方向に変形し、螺子11が緩むと縮径して元の形状に戻る。
【0052】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 枕木
2 タイプレート
3 レール
4 レール締結ばね
5 継ぎ目板
11 螺子
11a 第1の螺子
11b 第2の螺子
20 RFタグ
20a 第1のRFタグ
20b 第2のRFタグ
22 線状部材
22a 第1の線状部材
22b 第2の線状部材
24 拘束部材
30 ゼンマイばね(第1の応力付与部材)
31 弾性部材
32 ゴム紐(第1の応力付与部材)
34 コイルばね(第1の応力付与部材)
34a 第1のコイルばね
34b 第2のコイルばね
36 第2の応力付与部材
38 磁石
40、42 リング状線条体
44、46 多重リング
48 皿ばね
80 電磁波遮蔽部材
81 天面
82 側面
83 開口部
90、91 リーダー
95 車両
96 車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21