(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139433
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】扉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 17/00 20060101AFI20220915BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
E05F17/00 A
E06B3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039817
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】東 陽太
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014FB02
2E014FB05
2E014FC01
(57)【要約】
【課題】引戸を連動して開閉する際に異音を発生させず、かつ、確実に引戸を連動させることができる扉装置を提供する。
【解決手段】前後方向に並設された2枚の引戸1a、1bを連動して移動させる扉装置10であって、2枚のうちの一方の引戸1aの上側に連動ユニット30が取り付けられ、連動ユニット30には、他方の引戸1b側で前後方向と直交する平面に沿って回動する回動プレート34と、回動プレート34を回動方向に付勢するトーションばね33aと、回動プレート34に取り付けられ、回動プレート34に対して前後方向と直交する平面に沿って回転するベルト38とが設けられ、ベルト38の下側が、他方の引戸1bの上面Uと当接しながら回転し、ベルト38の上側が、建屋側に取り付けられた上ガイドレールGと当接しながら回転し、ベルト38の摩擦力によって2枚の引戸1a、1bを連動させた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に並設された2枚の引戸を連動して移動させる扉装置であって、
2枚のうちの一方の前記引戸の上側に連動ユニットが取り付けられ、
前記連動ユニットには、他方の前記引戸側で前後方向と直交する平面に沿って回動する回動プレートと、前記回動プレートを回動方向に付勢する第1ばねと、前記回動プレートに取り付けられ、前記回動プレートに対して前後方向と直交する平面に沿って回転する回転部材とが設けられ、
前記回転部材の下側が、他方の前記引戸の上面と当接しながら回転し、前記回転部材の上側が、建屋側に取り付けられた上ガイドレールと当接しながら回転し、前記回転部材の摩擦力によって2枚の前記引戸を連動させることを特徴とする扉装置。
【請求項2】
前記連動ユニットを上側に付勢する第2ばねが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の扉装置。
【請求項3】
前記回転部材と他方の前記引戸の上面とが当接しない位置まで他方の前記引戸を移動させることで、2枚の前記引戸の連動を解除可能に構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の扉装置。
【請求項4】
前記連動ユニットには、前記回動プレートと前後方向において反対側に位置し、前後方向と直交する平面に沿って回動するガイドプレートと、前記ガイドプレートを回動方向に付勢する第3ばねと、前記ガイドプレートに取り付けられ、前記上ガイドレールと当接しながら転動するローラーとが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の扉装置。
【請求項5】
2枚の前記引戸のそれぞれの上部には、前記上ガイドレールによって前記引戸の上側の位置が規制されるガイド具が取り付けられ、一方の前記引戸に取り付けられた前記ガイド具には、前記連動ユニットが取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の引戸を連動して移動させることができる扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、並設された3枚の引戸を連動して移動させる開閉体連動装置の技術が開示されている。この装置は、3枚の引戸のうちの中間に位置する引戸の上部に一対のプーリーが設けられ、このプーリーに巻き掛けられて回転するベルトと隣り合う2枚の引戸とを連結することにより、3枚の引戸が連動して移動するようにしたものである。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、並設された2枚の引戸を連動して移動させる連動装置の技術もある。この装置は、引戸の木口面に取り付けられ、隣り合う引戸(或いは袖壁)の側面部に接触するローラーを備えており、このローラーと側面部との摩擦によって隣り合う引戸を連動して移動させるものである(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-336888号公報
【特許文献2】特開2014-043714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、ベルトと隣り合う2枚の引戸との連結は、ガイドピンを取付穴に上下方向に挿入することで行われる。そのため、緩急をつけて引戸を開閉するときに、ガイドピンと取付穴の隙間で接触音(異音)が発生することがある。
【0006】
一方、特許文献2の技術では、ローラーの摩擦によって連動させているので、上述した接触音の発生は抑えられるが、引戸の前後方向のガタ等によって引戸の側面部とローラーとの接触が悪くなることがあり、引戸が連動しなくなる(或いは連動がずれる)という問題がある。
【0007】
また、連動装置が引戸の木口に固定されているために、引戸を開いた際に連動装置のローラーや金具が見えてしまう。そのため、意匠性が悪い。
【0008】
さらに、連動装置が引戸の木口に固定されているために、隣り合う引戸が完全に重なり合うまで開くことができない。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、引戸を連動して開閉する際に異音を発生させず、かつ、確実に引戸を連動させることができる扉装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述課題を解決するため、本発明は、前後方向に並設された2枚の引戸を連動して移動させる扉装置であって、2枚のうちの一方の前記引戸の上側に連動ユニットが取り付けられ、前記連動ユニットには、他方の前記引戸側で前後方向と直交する平面に沿って回動する回動プレートと、前記回動プレートを回動方向に付勢する第1ばねと、前記回動プレートに取り付けられ、前記回動プレートに対して前後方向と直交する平面に沿って回転する回転部材とが設けられ、前記回転部材の下側が、他方の前記引戸の上面と当接しながら回転し、前記回転部材の上側が、建屋側に取り付けられた上ガイドレールと当接しながら回転し、前記回転部材の摩擦力によって2枚の前記引戸を連動させることを特徴とする。
【0011】
また、前記連動ユニットを上側に付勢する第2ばねが設けられている。
【0012】
さらに、前記回転部材と他方の前記引戸の上面とが当接しない位置まで他方の前記引戸を移動させることで、2枚の前記引戸の連動を解除可能に構成した。
【0013】
また、前記連動ユニットには、前記回動プレートと前後方向において反対側に位置し、前後方向と直交する平面に沿って回動するガイドプレートと、前記ガイドプレートを回動方向に付勢する第3ばねと、前記ガイドプレートに取り付けられ、前記上ガイドレールと当接しながら転動するローラーとが設けられていてもよい。
【0014】
さらにまた、2枚の前記引戸のそれぞれの上部には、前記上ガイドレールによって前記引戸の上側の位置が規制されるガイド具が取り付けられ、一方の前記引戸に取り付けられた前記ガイド具には、前記連動ユニットが取り付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る扉装置では、2枚のうちの一方の前記引戸の上側に連動ユニットが取り付けられ、前記連動ユニットには、他方の前記引戸側で前後方向と直交する平面に沿って回動する回動プレートと、前記回動プレートを回動方向に付勢する第1ばねと、前記回動プレートに取り付けられ、前記回動プレートに対して前後方向と直交する平面に沿って回転する回転部材とが設けられ、前記回転部材の下側が、他方の前記引戸の上面と当接しながら回転し、前記回転部材の上側が、建屋側に取り付けられた上ガイドレールと当接しながら回転し、前記回転部材の摩擦力によって2枚の前記引戸を連動させているので、第1ばねの付勢力で回動プレートが回動して、回転部材の上側と下側のそれぞれが確実に当接するようになり、2枚の引戸をより確実に連動させることができる。また、回転部材は、従来技術2のように前後方向ではなく、引戸のがたつきの少ない上下方向で挟むようにして当接させているので、2枚の引戸をより確実に連動させることができる。
【0016】
また、回転部材の摩擦力によって連動させているので、従来技術1のように引戸の開閉時に連結部での動作音(接触音)がなく、異音を発生させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る扉装置を斜め上側から見た斜視概要図である。
【
図2】
図1を木口側から見た図であって、引戸を上ガイドレールに装着した状態を示す概要図である。
【
図3】
図1のガイド具を単体で斜め上側から見た斜視図である。
【
図5】
図1の連動ユニットを単体で斜め上側から見た斜視図である。
【
図7】
図3のガイド具に
図5の連動ユニットを組み付ける状態を示す斜視分解図である。
【
図8】引戸の開閉状態を上面視で示す図であって、(A)は引戸を開いている状態、(B)は完全に開いた状態、(C)は中央引戸を独立して移動させた状態、(D)は前側および中央の引戸を閉側に寄せた状態を示す概要図である。
【
図9】扉装置の連動を説明するための図であって、前側引戸を手前側から見た正面図である。
【
図10】扉装置の連動が解除された状態を示す正面図である。
【
図11】連動を復帰させる途中の状態を示す正面図である。
【
図12】連動を復帰させた状態を示す正面図である。
【
図13】本実施形態の変形例であって、
図1の扉装置の連動ユニットを勝手違いに組み付けた状態を示す斜視概要図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る扉装置について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る扉装置を斜め上側から見た斜視概要図である。また、
図2は、
図1を木口側から見た図であって、引戸を上ガイドレールに装着した状態を示す概要図である。
【0019】
なお、以下の説明で使用する「左側(閉側)」「右側(開側)」「前側(手前側)」「奥側」「上側」「下側」「前後」の方向は、利用者が引戸を手前側から見た方向をいうものであり、
図1で示す方向をいうものとする。
【0020】
扉装置10は、
図1および
図2に示すように、3枚の引戸(前側引戸1a、中央引戸1b、奥側引戸1c)を備えている。なお、奥側引戸1cは、開閉方向へ移動可能な構造ではあるが、本実施例では移動させないものとして説明する。すなわち、奥側引戸1cは、建屋側に形成された袖壁であってもよい。一方、前側引戸1aおよび中央引戸1bは、利用者が前側引戸1aを開閉する操作に伴って、左右方向(開閉方向)に2枚が連動して一緒に移動する。
【0021】
この扉装置10は、この3枚の引戸1a、1b、1cの自重を下ガイドレール(図示せず)でそれぞれ受ける構造である。また、引戸1a、1b、1cは、下ガイドレールによって前後方向の位置が規制され、開閉方向に自由に移動可能にガイドされている。
【0022】
一方、引戸1a、1b、1cの上側は、
図2に示すように、ガイドシャフト23(詳細は後述する)が上ガイドレールGにそれぞれ組み付けられることによって、同様に前後方向の位置が規制されつつ、開閉方向に自由に移動可能にガイドされる。
【0023】
上ガイドレールGは、建屋の開口の上縁部に取り付けられ、開閉方向に亘って連続して設けられている。この上ガイドレールGには、
図2に示すように、引戸1a、1b、1cのそれぞれのガイドシャフト23が組み付けられる3つの案内溝6が形成されている。この案内溝6は、引戸1a、1b、1cの間隔に合わせて前後方向に間隔を空けて配置されており、開閉方向に連続してそれぞれ延在している。
【0024】
また、上ガイドレールGには、
図2に示すように、隣り合う案内溝6の間に、開閉方向に連続する略水平な第1転動面7、および第2転動面8がそれぞれ形成されている。また、上ガイドレールGの前後方向の両端部には、上下方向に延びる目隠し部9、9が形成されている。この目隠し部9、9は、上述したガイドシャフト23を包み込むようになるため、引戸1a、1b、1cの外側からガイドシャフト23が目立たないようになる。
【0025】
さらに、この上ガイドレールGの断面形状は、前後方向において対称に形成されており、前後を逆にして取り付けたとしても使用できるようになっている。
【0026】
図3は、
図1のガイド具20を単体で斜め上側から見た斜視図であり、
図4は、
図3の分解斜視図である。また、
図5は、
図1の連動ユニットを単体で斜め上側から見た斜視図であり、
図6は、
図5の分解斜視図である。さらに、
図7は、
図3のガイド具に
図5の連動ユニットを組み付ける状態を示す斜視分解図である。
【0027】
ガイド具20は、3枚の引戸1a、1b、1cのそれぞれに共通して取り付けられるものである。このガイド具20は、
図3および
図4に示すように、ケース21と、ガイドシャフト23とを備えている。
【0028】
ケース21は、略矩形状に形成されており、その上部にガイドシャフト取付穴21a、および連動ユニット取付穴21bが設けられている。また、ケース21の下側には、左側の側面から右方向に貫通するガイド具固定穴21cが形成されている。さらに、ケース21には、連動ユニット取付穴21bを挟んで前後方向に貫通する2つのガイド穴21d、21dが、左右方向に間隔を空けて形成されている。
【0029】
ガイドシャフト23は、
図4に示すように、その下側にシャフト用コイルばね22が設けられ、ガイドシャフト取付穴21aに下方向へ差し込むようにして取り付けられる。また、ガイドシャフト23の上部には、ガイドシャフト23に対して回動するガイドリング24とガイドローラー25が取り付けられる。
【0030】
ガイドシャフト23は、シャフト用コイルばね22によって常に上側に付勢されており、この付勢された状態で、ガイドローラー25が上ガイドレールGの案内溝6(
図2参照)に下側から組み付けられる。引戸1a、1b、1cが開閉方向に移動するときには、ガイドローラー25は、案内溝6に対して回転しながら案内溝6に沿って移動する。これにより、引戸1a、1b、1cの上部は、前後方向の位置が規制されつつ、開閉方向にスムーズに移動することができる。
【0031】
ガイド具20は、
図1および
図2に示すように、引戸1a、1b、1cの木口T側の上角部に形成された切欠き2にそれぞれ組み付けられ、ガイド具取付ねじ26を木口T側からガイド具固定穴21cに挿通させることで固定される。この切欠き2は、木口T側から見て、引戸1a、1b、1cの前側および奥側に板厚を残すようにしてそれぞれ形成されている。これにより、利用者が引戸1a、1b、1cを前側および奥側から見たときに、ガイド具20が直接に視認できないようになる。
【0032】
また、切欠き2は、ガイド具20を切欠き2内に組み付けた状態で、引戸1a、1b、1cの上面Uおよび木口T面と、ガイド具20の各面とが面一になるように形成されている。
【0033】
一方、
図1および
図2に示すように、中央引戸1bに取り付けられるガイド具20には、連動ユニット30が取り付けられている。この連動ユニット30は、
図7に示すように、ケース21の連動ユニット取付穴21bに連動ユニット用コイルばね39を介して上側から挿入する態様で組み付けられる。この連動ユニット30をガイド具20に組み付けた後に、中央引戸1bに固定される。
【0034】
連動ユニット30は、
図5および
図6に示すように、連動ユニット取付穴21b内に挿入されるスライド部31と、このスライド部31の上側に位置し、前後方向に延びるブロック32と、ブロック32の前側に設けられた回動プレート34と、ブロック32の奥側に設けられたガイドプレート41とを備えている。
【0035】
スライド部31は、連動ユニット取付穴21bの形状に合わせて上下方向にスライド可能に形成されており、上下方向に延びる2つのガイド長穴31a、31aが、前後方向に貫通する態様で形成されている。このガイド長穴31a、31aの左右方向の間隔は、ケース21のガイド穴21d、21d(
図3および
図4参照)の間隔と一致しており、
図7に示すように、2本のガイドピン51、51が、ガイド穴21dおよびガイド長穴31aに挿通される。このガイドピン51、51は、スライド部31の上下方向の移動の許容範囲を規制している。
【0036】
ブロック32は、スライド部31の上部に取り付けられており、
図6に示すように、前後方向と直交する平面で切断したときの断面は、中空円筒形状の上側半分を残したような半円筒形状になっている。このブロック32の前側および奥側には、中空円筒の内側にトーションばね33a、33bが組み付けられている。
【0037】
回動プレート34は、長手方向を有する楕円板34bと、この楕円板34bの中央から奥側に向けて突出するばね受け34aと、楕円板34bの長手方向のそれぞれの端部から前側に向けて突出する2つの回転軸34c、34cとを備えている。また、楕円板34bの中央には、前後方向に貫通する回動プレート取付穴34dが形成されている。
【0038】
ばね受け34aは、ブロック32と同様に、半円筒形状に形成されており、ばね受け34aの外周面がブロック32の内周面と接するように組み付けられる。回動プレート34は、この外周面と内周面とが互いに摺動しながら回動する。また、トーションばね33aは、その一端がブロック32に支持され、他端がばね受け34aによって支持されている。これにより、トーションばね33aは、ブロック32に対して回動プレート34を、前側から見て時計回りに付勢している。
【0039】
2つの回転軸34cは、回動プレート取付穴34dからの距離が等しくなるように形成されている。この回転軸34cには、
図6に示すように、上ローラー35aおよび下ローラー35bがそれぞれ回転自在に取り付けられる。これらのローラー35a、35bは、外周面の中央に溝があるプーリーであり、この2つのローラー35a、35bにベルト38が巻き掛けられる。ベルト38は、2つのローラー35a、35bを両端に略楕円状の軌道を描きながら回転する。これらのローラー35a、35bは、ローラー取付ねじ36、36によって回転軸34cに取り付けられている。
【0040】
回動プレート取付穴34dには、前側から回動プレート取付ねじ37が挿入される。回動プレート取付ねじ37は、回動プレート取付穴34d、トーションばね33aの中央を通ってブロック32に取り付けられる。
【0041】
このように構成された回動プレート34は、ブロック32に対して、前後方向と直交する平面に沿って回動可能になる。また、2つのローラー35a、35b、およびベルト38は、回動プレート34に対して、前後方向と直交する平面に沿って自由に回転できるようになる。
【0042】
回動プレート34に組み付けられた上下ローラー35a、35bおよびベルト38の前後方向の位置は、
図2に示すように、上ガイドレールGの第1転動面7と前側引戸1aの上面Uとに上下方向に挟まれる位置に配置される。これにより、ベルト38は、トーションばね33aの付勢力によって、その上側が上ガイドレールGの第1転動面7と接触し、下側が前側引戸1aの上面Uと接触するようになる。
【0043】
一方、回動プレート34の前後方向における反対側(奥側)には、
図6に示すように、ガイドプレート41が設けられている。このガイドプレート41は、長手方向を有する板状に形成されており、長手方向の一端側には、前側に向けて突出するばね受け41a、およびガイドプレート取付穴41bが形成されている、また、他端側には、奥側に向けて突出する回転軸41c、およびローラー取付穴41dが形成されている。
【0044】
ばね受け41aは、回動プレート34のばね受け34aと同様に、半円筒形状に形成されており、ばね受け41aの外周面がブロック32の内周面と接するように組み付けられる。ガイドプレート41は、この外周面と内周面とが互いに摺動しながら回動する。また、トーションばね33bは、その一端がブロック32に支持され、他端がばね受け41aによって支持されている。これにより、トーションばね33bは、ブロック32に対してガイドプレート41を、前側から見て反時計回りに付勢している。
【0045】
ガイドプレート取付穴41bには、奥側からガイドプレート取付ねじ42が挿入される。ガイドプレート取付ねじ42は、ガイドプレート取付穴41b、トーションばね33bの中央を通ってブロック32に取り付けられる。
【0046】
回転軸41cには、
図6に示すように、第2転動面用ローラー43が回転自在に取り付けられる。この第2転動面用ローラー43は、ローラー取付ねじ44によって回転軸41cに取り付けられている。
【0047】
ガイドプレート41に組み付けられた第2転動面用ローラー43の前後方向の位置は、
図2に示すように、上ガイドレールGの第2転動面8がある位置になる。これにより、第2転動面用ローラー43は、トーションばね33bの付勢力によって第2転動面8と常に接触するようになり、第2転動面用ローラー43は第2転動面8に沿って開閉方向へ自由に回転移動する。
【0048】
また、ガイドプレート41は、連動ユニット30のスライド部31が上下方向N(
図10~
図12参照)に移動するときに、トーションばね33bの付勢力によってこの上下方向Nへの動きを吸収して、第2転動面用ローラー43が第2転動面8に常に当接している状態を保つようにしている。
【0049】
このようにガイドプレート41を構成することで、中央引戸1bに対して奥側に位置する第2転動面用ローラー43は、前側に位置する回動プレート34側で生じる上下方向の力によって連動ユニット30に偏荷重が作用しないように、バランスをとる機能を果たしている。
【0050】
次に、本実施の形態に係る扉装置10の動作・作用について説明する。
図8は、3つの引戸1a、1b、1cの開閉状態を上面視で示す図であって、(A)は3つの引戸1a、1b、1cを開いている状態、(B)は完全に開いた状態、(C)は中央引戸1bを独立して移動させた状態、(D)は前側引戸1aおよび中央引戸1bを閉側に寄せた状態を示す概要図である。
【0051】
扉装置10は、戸閉側壁部5aと戸開側壁部5bとの間の開口部を、3枚の引戸1a、1b、1cで開閉するものである。なお、奥側引戸1cは、上述した通り開側で固定であり移動しない。すなわち、奥側引戸1cは、戸開側壁部5bと一体の袖壁であってもよい。
【0052】
扉装置10は、
図8(A)および
図8(B)に示すように、利用者が前側引戸1aを開くことで、中央引戸1bが前側引戸1aと連動して移動して(
図8(A)の状態)、完全に開いた状態(
図8(B)の状態)にすることができる。また、その逆に、利用者が前側引戸1aを閉じることで、中央引戸1bと前側引戸1aが連動して、完全に閉じた状態にすることができる。
【0053】
また、扉装置10は、
図8(C)および
図8(D)に示すように、前側引戸1aと中央引戸1bとの連動を簡単な操作で解除し、それぞれを独立して動かすことができる。これにより、
図8(C)に示すように、前側引戸1aを閉側に残したまま中央引戸1bのみを開いたり、
図8(D)に示すように、前側引戸1aと中央引戸1bを閉側に重ねて配置することもできる。このような引戸の配置は、配置を変えることで、エアコンの風を最適な空間Sから取り込みたい場合や、空気の循環をしながら夕方の直射日光を遮りたい場合など、利用者からのニーズは多い。
【0054】
図9は、扉装置10の連動を説明するための図であって、引戸1aを手前側から見た正面図である。なお、説明を容易にするために、前側引戸1aを実線で、中央引戸1bを2点鎖線で表示する。
【0055】
2つの引戸1a、1bが連動している状態では、連動ユニット30の上ローラー35aは、回転中心(回動プレート取付穴34dの位置)に対して左上側に位置し、下ローラー35bは、回転中心に対して右下側に位置する。これらの位置は、トーションばね33aによって時計回りに付勢されることで定められる。これにより、巻き掛けられたベルト38は、左上側のB1点で第1転動面7と接触し、右下側のB2点で、前側引戸1aの上面Uと接触する。
【0056】
また、回転中心である回動プレート取付穴34dの上下方向の位置は、連動ユニット30が連動ユニット用コイルばね39によって上側に付勢されているので、第1転動面7と上面Uまでの長さ(A+A=2A)に対してその中間に位置するようになる。また、回動プレート取付穴34dの左右方向の位置も、2つのローラー35a、35b間の長さに対して、その中間に位置するようになる。
【0057】
この状態で、前側引戸1aを左側(閉側F1)に移動させると、下ローラー35b(ベルト38)は、上面Uとベルト38との摩擦力(転がり抵抗力)によって、
図9の紙面の時計回りに回転する。また、上ローラー35a(ベルト38)は、第1転動面7とベルト38の摩擦力(転がり抵抗力)によって、連動ユニット30を閉側F1へ押し出すように作用する。これにより、連動ユニット30が組み付けられた中央引戸1bは、前側引戸1aと一緒に閉側F1へと移動する。なお、前側引戸1aを右側(開側)に移動させる場合には、それぞれの部材が上述した動作と逆に動作することで、中央引戸1bが開側へと移動する。
【0058】
中央引戸1bが連動して移動する距離L2は、動滑車の移動距離の原理に従い、前側引戸1aの移動距離L1の1/2(L2=L1×1/2)になる。これにより、
図8(A)および
図8(B)に示すように、前側引戸1aを完全に閉じた状態から完全に開いた状態まで移動させると、前側引戸1aは引戸2枚分の距離を移動し、それと連動する中央引戸1bは、引戸1枚分の距離を移動する。
【0059】
このように動作することで、扉装置10は、
図8(B)に示すように、3枚の引戸1a、1b、1cが、前側から見て完全に重なり合う状態まで連動させた状態で開ききることができる。また、前側引戸1aの移動中、または開ききった状態では、連動ユニット30などの部材が利用者から視認されることがなく、外観上は一般的な扉装置と全く同じであるため、扉装置10全体の意匠性を損なうことがない。
【0060】
次に、前側引戸1aと中央引戸1bの連動解除および連動復帰の動作・作用について説明する。
図10は、扉装置10の連動が解除された状態を示す正面図である。また、
図11は、
図10の状態から連動を復帰させる途中の状態を示す正面図、
図12は、連動を復帰させた状態を示す正面図である。
【0061】
引戸1a、1bの連動を解除するには、
図9の連動している状態から、中央引戸1bを手で押さえて移動しないようにして、前側引戸1aを閉側へと移動させることで行われる。前側引戸1aはベルト38と上面Uとの摩擦力以上の力で閉側へ移動させることで、容易に連動を解除することができる。
【0062】
連動が解除された状態では、
図10に示すように、前側引戸1aの上面Uが存在しなくなるので、トーションばね33aの付勢力によって回動プレート34(
図5および
図6参照)が
図10の紙面時計回りに回動する。これにより、上ローラー35aが第1転動面7と接触しながら回動プレート取付穴34dに対して右上側の位置まで移動するとともに、下ローラー35bが中央引戸1bの上面Uよりも下側であって、回動プレート取付穴34dに対して左下側の位置まで移動する。なお、回動プレ-ト34が回動するとき、連動ユニット30は、スライド部31が連動ユニット用コイルばね39の付勢力によって上下方向Nに追従して移動する。
【0063】
図10の状態から引戸1a、1bが連動している状態に戻すには、
図11に示すように、前側引戸1aを開側F2に向けて移動させることで行われる。移動する前側引戸1aは、開側の木口面が下ローラー35bと当接し、回動プレート34は、トーションばね33aの付勢力に抗して紙面反時計回りに押し込まれる態様で回動する。
【0064】
図11の状態からさらに前側引戸1aを移動させると、
図12に示すように、下ローラー35bはさらに反時計回りに回動して、中央引戸1bの上面Uの上に乗り上げる。これにより、
図9のように連動している状態に復帰する。そして、2つの引戸1a、1bを全開の位置(
図8(B)参照)までそれぞれ移動させることで、2つの引戸1a、1bの位相を合わせて開閉することができる(
図8(A)および
図8(B)参照)。
【0065】
本発明の実施の形態に係る扉装置によれば、中央引戸1bの上側に連動ユニット30が取り付けられ、連動ユニット30には、前側引戸1a側で前後方向と直交する平面に沿って回動する回動プレート34と、回動プレート34を回動方向に付勢するトーションばね33aと、回動プレート34に取り付けられ、回動プレート34に対して前後方向と直交する平面に沿って回転するベルト38とが設けられ、ベルト38の下側(B2点)が、前側引戸1aの上面Uと当接しながら回転し、ベルト38の上側(B1点)が、建屋側に取り付けられた上ガイドレールGと当接しながら回転し、ベルト38の摩擦力によって2枚の引戸1a、1bを連動させているので、トーションばね33aの付勢力で回動プレート34が回動して、ベルト38の上側と下側のそれぞれが確実に当接するようになり、2枚の引戸1a、1bをより確実に連動させることができる。また、ベルト38は、従来技術2のように前後方向ではなく、引戸1a、1bのがたつきの少ない上下方向で挟むようにして当接させているので、2枚の引戸1a、1bをより確実に連動させることができる。
【0066】
また、摩擦で連動させる構造であるため、従来技術1のように、2枚の引戸1a、1bの開閉方向における位置(位相)を合わせて連結する必要がなく、開閉方向の任意の位置で2枚の引戸1a、1bを建屋側に取り付けて、その後の引戸1a、1bの開閉操作で位相を合わせることができる。そのため、現地での扉装置10の取り付け作業を軽減することができる。
【0067】
さらに、ベルト38の摩擦力によって連動させているので、従来技術1のように引戸1a、1bの開閉時における連結部での動作音(接触音)がなく、扉装置10として異音を発生させることがない。
【0068】
また、連動ユニット30を上側に付勢する連動ユニット用コイルばね39が設けられているので、回動プレート34が回動して、その回動中心(回動プレート取付穴34dの位置)が上下に移動したとしても、連動ユニット用コイルばね39がその動きを吸収することができる。
【0069】
また、前側引戸1aの製造誤差、或いは前側引戸1aの建屋側への組み立て誤差によって、前側引戸1aの上面Uが上下方向にずれてしまったとしても、トーションばね33aおよび連動ユニット用コイルばね39の付勢力によって、その回動中心が、第1転動面7と前側引戸1aの上面Uとの上下方向の中央位置になるように自動調整される。そのため、扉装置10の建屋側への組み立て作業および調整作業を簡単に行うことができる。
【0070】
さらに、ベルト38と前側引戸1aの上面Uとが当接しない位置まで前側引戸1aを移動させることで、2枚の引戸1a、1bの連動を解除可能に構成しているので、利用者は簡単な操作で連動を解除することができる。また、その逆の操作によって、簡単に連動を復帰させることができる。
【0071】
また、連動ユニット30には、回動プレート34と前後方向において反対側に位置し、前後方向と直交する平面に沿って回動するガイドプレート41と、ガイドプレート41を回動方向に付勢するトーションばね33bと、ガイドプレート41に取り付けられ、上ガイドレールGと当接しながら転動する第2転動面用ローラー43とが設けられているので、回動プレート34側で偏荷重が生じたとしても、その反力を第2転動面用ローラー43で受けることができる。そのため、2枚の引戸1a、1bを連動して移動させている状態で、中央引戸1bに上下方向或いは前後方向に偏荷重が作用せず、連動時のがたつきを発生させない。
【0072】
さらにまた、2枚の引戸1a、1bのそれぞれの上部には、上ガイドレールGによって引戸1a、1bの上側の位置が規制されるガイド具20が取り付けられ、中央引戸1bに取り付けられたガイド具20には、連動ユニット30が予め取り付けられているので、中央引戸1bには、ガイド具20を取り付ける作業のみで、連動ユニット30を一緒に取り付けることができる。そのため、ガイド具20および連動ユニット30をそれぞれ別々に中央引戸1bに取り付ける場合と比較して、現場での組み立て作業、調整作業を大幅に軽減することができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態に係る扉装置について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0074】
例えば、本実施の形態では、前側引戸1aと中央引戸1bとを連動させているが、
図13に示すように、奥側引戸1cと中央引戸1bとを連動させることもできる。この場合、前側引戸1aは移動しない、或いは袖壁として使用することになる。
【0075】
図13に示す扉装置100は、
図1に示す扉装置10で使用している部材と全く同じものが使用されており、中央引戸1bに取り付けられるガイド具20の左右方向の向きが逆にして取り付けられている。これにより、ガイド具20に組み付けられた連動ユニット30の向きが前後方向で逆になり、連動ユニット30のベルト38が奥側引戸1cの上面Uと当接する。これにより、本実施形態と同様の作用・効果によって、奥側引戸1cと中央引戸1bが連動することになる。
【0076】
また、本実施形態では、前後方向のバランスをとるために、連動ユニット30にガイドプレート41および第2転動面用ローラー43を設けているが、連動ユニット30に偏荷重が作用しないようであれば、これらを設けずに構成することもできる。
【0077】
さらに、本実施形態では、回動プレート34に対してベルト38が回転するように構成したが、他の構造であっても構わない。例えば、回動プレート34の中央部に1つの平歯車を設け、この平歯車と上下で噛み合って互いに連動する回転部材(ローラー)を2つの回転軸34cにそれぞれ回転可能に設けるような構造であってもよい。この2つのローラーは、上側のローラーが上ガイドレールGの第1転動面7と当接し、下側のローラーが前側引戸1aの上部と当接し、摩擦力によって2枚の引戸1a、1bを連動させる。
【0078】
また、本実施の形態では、上ローラー35aと下ローラー35bにベルト38を巻き掛けて、このベルト38が第1転動面7および前側引戸1aの上面Uと当接するようにしているが、ベルト38の代わりに上ローラー35aと下ローラー35b(回転部材)が当接するようにしてもよい。この場合、ベルト38は、上ローラー35aと下ローラー35bを同期して回転させる機能のみを有することになる。この2つのローラー35a、35bは、上側のローラーが上ガイドレールGの第1転動面7と当接し、下側のローラーが前側引戸1aの上部と当接し、摩擦力によって2枚の引戸1a、1bを連動させる。
【符号の説明】
【0079】
1a 前側引戸
1b 中央引戸
1c 奥側引戸(袖壁)
2 切欠き
5a 戸閉側壁部
5b 戸開側壁部
6 案内溝
7 第1転動面
8 第2転動面
9 目隠し部
10、100 扉装置
20 ガイド具
21 ケース
21a ガイドシャフト取付穴
21b 連動ユニット取付穴
21c ガイド具固定穴
21d ガイド穴
22 シャフト用コイルばね
23 ガイドシャフト
24 ガイドリング
25 ガイドローラー
26 ガイド具取付ねじ
30 連動ユニット
31 スライド部
31a ガイド長穴
32 ブロック
33a トーションばね(第1ばね)
33b トーションばね(第3ばね)
34 回動プレート
34a ばね受け
34b 楕円板
34c 回転軸
34d 回動プレート取付穴
35a 上ローラー(回転部材)
35b 下ローラー(回転部材)
36 ローラー取付ねじ
37 回動プレート取付ねじ
38 ベルト(回転部材)
39 連動ユニット用コイルばね(第2ばね)
41 ガイドプレート
41a ばね受け
41b ガイドプレート取付穴
41c 回転軸
41d ローラー取付穴
42 取付ねじ
43 第2転動面用ローラー(ローラー)
44 ローラー取付ねじ
51 ガイドピン
A 調整寸法
B1 上ローラーの接触点
B2 下ローラーの接触点
L1、L2 移動距離
F1、F2 移動方向
G 上ガイドレール
S 空間
T 木口
U 上面