(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139452
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】車両の開閉体構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20220915BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B60J5/10 H
B60J5/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039848
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】迎 真輔
(72)【発明者】
【氏名】上原 直哉
(72)【発明者】
【氏名】高倉 英輔
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加を招くこと無く、インナパネルおよびラッチリンフォースの耐久性の向上を図る。
【解決手段】インナパネル20に接合されインナパネル20の取り付け部21を補強するラッチリンフォース44に、アウタパネル22に接合されるリンフォース上接合片部54を設けた。車両10の縁石乗り上げ時に生じるラッチ機構28を介してインナパネル20およびラッチリンフォース44を変形させる方向に入力する荷重がラッチリンフォース44を介してインナパネル20に伝達されることに加えて、リンフォース上接合片部54からアウタパネル22にも伝達される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナパネルとアウタパネルとが接合されて構成され、車両後部の後部開口部を開閉する跳ね上げ式の開閉体と、
前記インナパネルの取り付け部に設けられ、車両本体に設けられたストライカに係合されるラッチ機構と、
前記インナパネルに接合され前記取り付け部を補強するラッチリンフォースと、
を備える車両の開閉体構造であって、
前記ラッチリンフォースに、前記アウタパネルに接合される接合片部が設けられている、
ことを特徴とする車両の開閉体構造。
【請求項2】
前記ラッチリンフォースは、前記取り付け部の周囲で車両前後方向に延在し、
前記接合片部は、前記ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分から上方に延在した上接合片部として設けられ、その先部が前記アウタパネルに接合されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両の開閉体構造。
【請求項3】
前記ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分から上方に延在する前記上接合片部の延在方向は、車両の縁石乗り上げ時に前記ラッチリンフォースに作用する荷重の方向とほぼ同じ方向である、
ことを特徴とする請求項2記載の車両の開閉体構造。
【請求項4】
前記上接合片部は、前記ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分の車幅方向の中央に設けられ、
前記ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分の車幅方向の両側の箇所に前記インナパネルに接合される下接合片部が設けられている、
ことを特徴とする請求項2または3記載の車両の開閉体構造。
【請求項5】
前記上接合片部の車幅方向の幅と、前記下接合片部の車幅方向の幅とはほぼ等しい、
ことを特徴とする請求項4記載の車両の開閉体構造。
【請求項6】
前記上接合片部とその車幅方向両側に位置する前記下接合片部との境目に、それぞれ車両前後方向に延在し車両後方に開放された溝部が形成されている、
ことを特徴とする請求項4または5記載の車両の開閉体構造。
【請求項7】
前記上接合片部とその車幅方向両側に位置する前記下接合片部との境目に、前記上接合片部の基端から前記下接合片部の先端にわたって車両後方に開放状の切り欠き部が形成されている、
ことを特徴とする請求項4または5記載の車両の開閉体構造。
【請求項8】
前記接合片部が接合される前記アウタパネルの外面は、ライセンスプレートまたはガーニッシュにより覆われる、
ことを特徴とする請求項1から7の何れか1項記載の車両の開閉体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の開閉体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内の後部に荷室が設けられ、荷室に対して荷物の出し入れを行なうための開口部が車両後部に設けられ、開口部を開閉する跳ね上げ式のテールゲートが設けられた車両が提供されている。
テールゲートは、インナパネルとアウタパネルとが接合されて構成されており、インナパネルには、開口部に設けられたストライカに係合されるラッチ機構が設けられると共に、ラッチ機構が取り付けられるインナパネルの箇所を補強するラッチリンフォースが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両のモデルチェンジに伴ってテールゲートの仕様が変更されることで、テールゲートの重量が従来に比較して増加した場合、車両の縁石乗り上げ時にテールゲートに生じる慣性力が大きくなることからラッチ機構を介してインナパネルおよびラッチリンフォースに入力する荷重が増加する。
したがって、従来のラッチリンフォースを用いていたのでは、インナパネルおよびラッチリンフォースの強度、剛性が不足することとなり、縁石乗り上げ時におけるインナパネルおよびラッチリンフォースの変形を抑制しそれらの耐久性を確保する上で不利がある。
そこで、ラッチ機構が取り付けられたインナパネルの箇所の近傍にラッチリンフォースとは別の補強部材を設け、縁石乗り上げ時の荷重入力に対するインナパネルおよびラッチリンフォースの変形を抑制することが考えられるが、その場合は、部品点数の増加を招く不利がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたもので、本発明の目的は、部品点数の増加を招くこと無く、インナパネルおよびラッチリンフォースの耐久性の向上を図る上で有利な車両の開閉体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、インナパネルとアウタパネルとが接合されて構成され、車両後部の後部開口部を開閉する跳ね上げ式の開閉体と、前記インナパネルの取り付け部に設けられ、車両本体に設けられたストライカに係合されるラッチ機構と、前記インナパネルに接合され前記取り付け部を補強するラッチリンフォースと、を備える車両の開閉体構造であって、前記ラッチリンフォースに、前記アウタパネルに接合される接合片部が設けられていることを特徴とする。
本発明の一実施の形態は、前記ラッチリンフォースは、前記取り付け部の周囲で車両前後方向に延在し、前記接合片部は、前記ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分から上方に延在した上接合片部として設けられ、その先部が前記アウタパネルに接合されていることを特徴とする。
本発明の一実施の形態は、前記ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分から上方に延在する前記上接合片部の延在方向は、車両の縁石乗り上げ時に前記ラッチリンフォースに作用する荷重の方向とほぼ同じ方向であることを特徴とする。
本発明の一実施の形態は、前記上接合片部は、前記ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分の車幅方向の中央に設けられ、前記ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分の車幅方向の両側の箇所に前記インナパネルに接合される下接合片部が設けられていることを特徴とする。
本発明の一実施の形態は、前記上接合片部の車幅方向の幅と、前記下接合片部の車幅方向の幅とはほぼ等しいことを特徴とする。
本発明の一実施の形態は、前記上接合片部とその車幅方向両側に位置する前記下接合片部との境目に、それぞれ車両前後方向に延在し車両後方に開放された溝部が形成されていることを特徴とする。
本発明の一実施の形態は、前記上接合片部とその車幅方向両側に位置する前記下接合片部との境目に、前記上接合片部の基端から前記下接合片部の先端にわたって車両後方に開放状の切り欠き部が形成されていることを特徴とする。
本発明の一実施の形態は、前記接合片部が接合される前記アウタパネルの外面は、ライセンスプレートまたはガーニッシュにより覆われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、ラッチリンフォースに、アウタパネルに接合される接合片部を設けた。
したがって、車両の縁石乗り上げ時に生じるラッチ機構を介してインナパネルおよびラッチリンフォースを変形させる方向に入力する荷重がラッチリンフォースを介してインナパネルに伝達されることに加えて、接合片部からアウタパネルにも伝達される。
そのため、荷重がラッチリンフォースを介してインナパネルとアウタパネルとの双方に分散されるので、仕様変更によりテールゲートの重量が増加し、インナパネルおよびラッチリンフォースを変形させる方向に入力する荷重が増加した場合であっても、部品点数および重量の増加を招くことなく、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネルおよびラッチリンフォースの耐久性の向上を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、ラッチリンフォースは、取り付け部の周囲で車両前後方向に延在し、上接合片部は、ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分から上方に延在して設けられ、その先部がアウタパネルに接合されている。
したがって、車両の縁石乗り上げ時にラッチリンフォースに作用する荷重をラッチリンフォースから上接合片部を介して確実にアウタパネルに伝達できるため、荷重をインナパネルとアウタパネルとの双方に確実に分散でき、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネルおよびラッチリンフォースの耐久性の向上を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分から上方に延在する上接合片部の延在方向は、車両の縁石乗り上げ時にラッチリンフォースに作用する荷重の方向とほぼ同じ方向である。
したがって、車両の縁石乗り上げ時にラッチリンフォースに作用する荷重を、接合片部の延在方向と直交する平面で切断した断面形状を大きくすることなく、ラッチリンフォースから上接合片部を介して確実にアウタパネルに伝達する上でより有利となり、荷重をインナパネルとアウタパネルとの双方に確実に分散でき、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネルおよびラッチリンフォースの耐久性の向上を図る上でより一層有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、上接合片部は、ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分の車幅方向の中央に設けられ、ラッチリンフォースの車両後方に位置する部分の車幅方向の両側の箇所にインナパネルに接合される下接合片部が設けられている。
したがって、車両の縁石乗り上げ時にラッチリンフォースに作用する荷重を、車幅方向両側の下接合片部と、車幅方向中央の上接合片部を介してインナパネルとアウタパネルとの双方に確実に安定した状態で分散でき、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネルおよびラッチリンフォースの耐久性の向上を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、上接合片部の車幅方向の幅は、下接合片部の車幅方向の幅とほぼ同等の寸法で形成されているので、車両の縁石乗り上げ時にラッチリンフォースに作用する荷重を、インナパネルとアウタパネルとの双方に確実に安定した状態で分散でき、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネルおよびラッチリンフォースの耐久性の向上を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、上接合片部とその車幅方向両側に位置する下接合片部との境目に、それぞれ車両前後方向に延在し車両後方に開放された溝部を形成したので、車両の縁石乗り上げ時にラッチリンフォースに荷重が作用した際、上接合片部とその車幅方向両側に位置する下接合片部との境目に集中しがちな応力を溝部により緩和でき、ラッチリンフォースの耐久性を確保する上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、上接合片部とその車幅方向両側に位置する下接合片部との境目に、上接合片部の基端から下接合片部の先端にわたって車両後方に開放状の切り欠き部を形成したので、車両の縁石乗り上げ時にラッチリンフォースに荷重が作用した際、上接合片部とその車幅方向両側に位置する下接合片部との境目に集中しがちな応力を切り欠き部により緩和でき、ラッチリンフォースの耐久性を確保する上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、上接合片部が接合されるアウタパネルの外面は、ライセンスプレートまたはガーニッシュにより覆われるため、上接合片部が接合されるアウタパネル箇所に形成される接合部分が隠蔽されるので、開閉体の外観性が損なわれることがなく、車両の見栄えの向上を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両の開閉体構造が適用された車両を車両後方から見た斜視図である。
【
図3】テールゲートにより後部開口部が閉塞された状態で、ラッチ機構が取り付けられたインナパネル、インナパネルに接合されたラッチリンフォースを車両後方から見た斜視図である。
【
図4】
図3からラッチ機構を省略した斜視図である。
【
図5】ラッチリンフォースの接合片部がアウタパネルに接合された状態を車両前方から見た斜視図である。
【
図7】第2の実施の形態を示すラッチリンフォースの要部を拡大した斜視図である。
【
図8】第3の実施の形態を示すラッチリンフォースの要部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の図面において、符号UPは車両上方を示し、符号FRは車両前方を示し、符号HLは車幅方向を示す。
図1に示すように、車両10の車室内の後部に荷室12が設けられ、荷室12に対して荷物の出し入れを行なうための後部開口部14が車両10の後部の車体パネル18に設けられている。後部の車体パネル18は車両本体の一部を構成している。
後部開口部14は、後部開口部14の上縁部にヒンジ(不図示)を介して揺動可能に支持された跳ね上げ式のテールゲート(開閉体)16によって開閉される。
図2に示すように、テールゲート16は、後部開口部14を閉塞した状態で荷室12側に位置するインナパネル20と、インナパネル20の外側に対向して配置されたアウタパネル22と、テールゲート16の上半部に設けられたリアウインドウガラス24とを備えている。
テールゲート16は、リアウインドウガラス24の周囲に中空状に設けられ、アウタパネル22の外縁全周はヘミング加工によりインナパネル20の外縁全周に折り返されて連結されている。
【0009】
図6に示すように、車両10の後部の車体パネル18に設けられた後部開口部14の下縁は、上方に突出する車体パネル18の車体側下縁部18Aで形成されている。
車体側下縁部18Aは、荷室12の不図示のフロアパネルから上方に起立された前面部1802と、前面部1802の上端から車両後方に延在する上面部1804と、上面部1804の車両後端から車両後方に至るにつれて下方に変位する傾斜面部1806とを含んで構成されている。
上面部1804には、ストライカ26が設けられ、傾斜面部1806には、後部開口部14の全周に延在するウェザーストリップ30の部分が装着されている。言い換えると、ストライカ26は車体本体に設けられている。
【0010】
図3、
図6に示すように、テールゲート16により後部開口部14を閉塞した状態で車体側下縁部18Aに近接するインナパネル20の箇所は、インナパネル本体部32と、インナパネルベース面部34と、シール面部36とを含んで構成されている。
【0011】
図6に示すように、テールゲート16により後部開口部14を閉塞した状態で、インナパネル本体部32は前面部1802の上方箇所に位置しており、インナパネル本体部32は、上下方向に延在してアウタパネル22に対向している。
インナパネルベース面部34は、インナパネル本体部32の下端から車両後方に屈曲し、車体パネル18の上面部1804に対向して車両前後方向に延在すると共に車幅方向に延在している。
シール面部36は、インナパネルベース面部34の車両後端から車両後方に斜めに延在し、シール面部36の下端は、アウタパネル22の縁部22Aがヘミング加工により折り返されて接合され連結されている。
テールゲート16で後部開口部14を閉塞した状態で、ウェザーストリップ30がシール面部36に弾接することにより荷室12内への雨水の侵入を阻止している。
【0012】
図3、
図6に示すように、テールゲート16で後部開口部14を閉塞した状態で、ストライカ26に対向するインナパネルベース面部34の箇所に、本実施の形態では、インナパネルベース面部34の車幅方向の中央部に、その中央部の周辺の箇所に比べて下方に位置して車幅方向に延在するインナパネルベース下面部38が形成されている。
インナパネルベース下面部38の車幅方向の両端は、インナパネルベース下面部38から起立するベース側面部40によりインナパネルベース面部34に接続され、インナパネルベース下面部38の車両前端は、インナパネルベース下面部38から起立するベース前側面部42によりインナパネル本体部32に接続され、インナパネルベース下面部38の車両後端はシール面部36に接続されている。
インナパネル側貫通孔H1はラッチ機構28のラッチ28Aを挿通させるものであり、インナパネル側貫通孔H1は、車両前後方向において、インナパネルベース下面部38からインナパネル本体部32にわたって設けられ、車幅方向において、インナパネルベース下面部38の車幅方向内側に設けられている。
【0013】
図3に示すように、ラッチリンフォース44は、ラッチ機構28が取り付けられるインナパネル20の取り付け部21に設けられ、インナパネル20の取り付け部21とその周辺の箇所を補強しており、取り付け部21は、後述するようにインナパネル側貫通孔H1の車幅方向両側のインナパネルベース下面部38の箇所である。
ラッチリンフォース44により補強される箇所は、インナパネル側貫通孔H1の周辺のインナパネル本体部32の箇所と、インナパネルベース下面部38の全域箇所と、インナパネルベース下面部38の周辺のインナパネルベース面部34の箇所と、シール面部36の車幅方向の中央の箇所である。
図3、
図4、
図6に示すように、ラッチリンフォース44は、取り付け部21の周囲で車両前後方向に延在し、リンフォース本体板部46と、リンフォースベース面部48と、リンフォースベース下面部50と、リンフォース下接合片部52と、リンフォース上接合片部(接合片部)54とを備えている。
リンフォース本体板部46は、ラッチリンフォース44の車両前端で上下方向に延在しつつ車幅方向に延在し、インナパネル本体部32に接合されている。
リンフォースベース面部48は、リンフォース本体板部46の車幅両端からそれぞれ車両後方に延在し、インナパネルベース面部34に接合されている。
リンフォースベース下面部50は、リンフォースベース面部48の車幅方向の中央でリンフォースベース面部48よりも下方の箇所から車両後方に延在し、インナパネルベース下面部38に接合されている。
なお、
図4において、記号*はスポット溶接により接合された箇所を示している。
【0014】
図6に示すように、リンフォースベース下面部50には、インナパネル側貫通孔H1の内側に位置するリンフォース側貫通孔H2が形成されている。
このリンフォース側貫通孔H2は、インナパネル側貫通孔H1と同様に、ラッチ機構28のラッチ28Aを挿通させるものである。
図4に示すように、リンフォースベース下面部50の車幅方向の両端は、リンフォースベース下面部50から起立するリンフォースベース側面部56によりリンフォースベース面部48に接続されている。
リンフォースベース下面部50の車両前端には、上方に起立するリンフォースベース前側面部58が設けられ、このリンフォース前側面部58はリンフォース本体板部46に接続されている。
図4に示すように、リンフォース下接合片部52は、リンフォースベース下面部50の車両後端の車幅方向の両側部およびリンフォースベース面部48の車両後端からそれぞれ車両後方で斜め下方に突設され、言い換えると、ラッチリンフォース44の車両後方に位置する部分の車幅方向の両側の箇所にそれぞれ下方に折り曲げられて形成され、シール面部36に接合されている。
図4、
図5に示すように、リンフォース上接合片部54は、リンフォースベース下面部50の車両後端の車幅方向の中央から車両後方で斜め上方に突設され、言い換えると、ラッチリンフォース44の車両後方に位置する部分の車幅方向の中央から上方に起立して設けられ、
図6に示すように、その先部5402がアウタパネル22に接合されている。
図4に示すように、リンフォース上接合片部54の車幅方向の幅W1は、リンフォース下接合片部52の車幅方向の幅W2とほぼ同等の寸法で形成されている。
また、
図6に示すように、リンフォース上接合片部54の先部5402が接合されるアウタパネル22の外面2202の箇所には、ライセンスプレート60Aで覆われ、あるいは、ガーニッシュ60Bで覆われている。
【0015】
図6に示すように、ラッチ機構28は、ストライカ26に係脱可能なラッチ28Aと、ラッチ28Aをストライカ26に係脱させる駆動機構28Bと、取り付け板28Cとを備え、ラッチ28Aがストライカ26に係合することでテールゲート16の閉塞状態がロックされる。
ラッチ機構28は、下方からインナパネル側貫通孔H1とリンフォース側貫通孔H2に挿入されてラッチリンフォース44のリンフォースベース下面部50の上方に配置され、取り付け板28Cがインナパネル側貫通孔H1の車幅方向両側のインナパネル20のインナパネルベース下面部38に重ね合わされ、取り付け板28Cが、インナパネル側貫通孔H1の車幅方向両側のインナパネルベース下面部38とリンフォース側貫通孔H2の車幅方向両側のリンフォースベース下面部50とに不図示のボルトナットで共締めされることで取り付けられている。
したがって、ラッチ機構28が取り付けられるインナパネル20の取り付け部21は、インナパネル側貫通孔H1の車幅方向両側のインナパネルベース下面部38の箇所である。
【0016】
次に作用効果について説明する。
車両10のモデルチェンジに伴うテールゲート16の仕様変更などにより、テールゲート16の重量が増加すると、車両10の縁石乗り上げ時に生じる慣性力が大きくなり、ラッチ機構28を介してインナパネル20およびラッチリンフォース44に加わるテールゲート16を開放させる方向の荷重、すなわち、インナパネル20およびラッチリンフォース44を変形させる方向に入力する荷重も増加する。縁石乗り上げ時に入力する荷重は、テールゲート16の開閉時にインナパネル20およびラッチリンフォース44に入力する荷重に比較して極めて大きい。
【0017】
本実施の形態では、インナパネル20に接合されインナパネル20の取り付け部21を補強するラッチリンフォース44に、アウタパネル22に接合されるリンフォース上接合片部54を設けた。
したがって、車両10の縁石乗り上げ時に生じるラッチ機構28を介してインナパネル20およびラッチリンフォース44を変形させる方向に入力する荷重がラッチリンフォース44を介してインナパネル20に伝達されることに加えて、リンフォース上接合片部54からアウタパネル22にも伝達される。
そのため、荷重がラッチリンフォース44を介してインナパネル20とアウタパネル22との双方に分散されるので、テールゲート16の重量が増加し、インナパネル20およびラッチリンフォース44を変形させる方向に入力する荷重が増加した場合であっても、部品点数および重量の増加を招くことなく、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネル20およびラッチリンフォース44の耐久性の向上を図る上で有利となる。
【0018】
また、本実施の形態では、ラッチリンフォース44は、取り付け部21の周囲で車両前後方向に延在し、リンフォース上接合片部54は、ラッチリンフォース44の車両後方に位置する部分から上方に延在して設けられ、その先部5402がアウタパネル22に接合されている。
したがって、車両10の縁石乗り上げ時にラッチリンフォース44に作用する荷重をラッチリンフォース44からリンフォース上接合片部54を介して確実にアウタパネル22に伝達できるため、荷重をインナパネル20とアウタパネル22との双方に確実に分散でき、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネル20およびラッチリンフォース44の耐久性の向上を図る上で有利となる。
【0019】
また、本実施の形態では、ラッチリンフォース44の車両後方に位置する部分から上方に延在するリンフォース上接合片部54の延在方向は、車両10の縁石乗り上げ時にラッチリンフォース44に作用する荷重の方向とほぼ同じ方向である。
したがって、車両10の縁石乗り上げ時にラッチリンフォース44に作用する荷重を、リンフォース上接合片部54の延在方向と直交する平面で切断した断面形状を大きくすることなく、ラッチリンフォース44からリンフォース上接合片部54を介して確実にアウタパネル22に伝達する上でより有利となり、荷重をインナパネル20とアウタパネル22との双方に確実に分散でき、ラッチリンフォース44の軽量化を図りつつ、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネル20およびラッチリンフォース44の耐久性の向上を図る上でより一層有利となる。
【0020】
また、本実施の形態では、リンフォース上接合片部54は、ラッチリンフォース44の車両後方に位置する部分の車幅方向の中央に設けられ、ラッチリンフォース44の車両後方に位置する部分の車幅方向の両側の箇所にそれぞれ下方に折り曲げられインナパネル20に接合されるリンフォース下接合片部52が設けられている。
したがって、車両10の縁石乗り上げ時にラッチリンフォース44に作用する荷重を、車幅方向両側のリンフォース下接合片部52と、車幅方向中央のリンフォース上接合片部54を介してインナパネル20とアウタパネル22との双方に確実に安定した状態で分散でき、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネル20およびラッチリンフォース44の耐久性の向上を図る上で有利となる。
【0021】
また、本実施の形態では、リンフォース上接合片部54の車幅方向の幅W1は、リンフォース下接合片部52の車幅方向の幅W2とほぼ同等の寸法で形成されているので、車両10の縁石乗り上げ時にラッチリンフォース44に作用する荷重を、インナパネル20とアウタパネル22との双方に確実に安定した状態で分散でき、縁石乗り上げ時における荷重入力に対するインナパネル20およびラッチリンフォース44の耐久性の向上を図る上で有利となる。
【0022】
また、本実施の形態では、リンフォース上接合片部54が接合されるアウタパネル22の外面2202は、ライセンスプレート60Aまたはガーニッシュ60Bにより覆われるため、リンフォース上接合片部54が接合されるアウタパネル22箇所に形成される接合部分が隠蔽され、テールゲート16の外観性が損なわれることがなく、車両10の見栄えの向上を図る上で有利となる。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に
図7を参照して第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の変形例であり、リンフォース上接合片部54とその車幅方向両側に位置するリンフォース下接合片部52との境目となるリンフォースベース下面部50の箇所にそれぞれ車両前後方向に延在し車両後方に開放された溝部62が形成されている。
言い換えると、リンフォース上接合片部54の基部の両側に位置するリンフォースベース下面部50の箇所にそれぞれ車両前後方向に延在し車両後方に開放された溝部62が形成されている。
このような溝部62を形成すると、車両10の縁石乗り上げ時にラッチリンフォース44に荷重が作用した際、リンフォース上接合片部54とその車幅方向両側に位置するリンフォース下接合片部52との境目に、集中しがちな応力を溝部62により緩和でき、ラッチリンフォース44の耐久性を確保する上で有利となる。
【0024】
(第3の実施の形態)
次に
図8を参照して第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、第1の実施の形態の変形例であり、リンフォース上接合片部54とその車幅方向両側に位置するリンフォース下接合片部52との境目に、リンフォース上接合片部54の基端からリンフォース下接合片部52の先端にわたって車両後方に開放状の切り欠き部64が設けられている。
この切り欠き部64は、車幅方向外側に凸状で円弧状の縁6402で形成されている。
このような切り欠き部64を形成すると、車両10の縁石乗り上げ時にラッチリンフォース44に荷重が作用した際、リンフォース上接合片部54とその車幅方向両側に位置するリンフォース下接合片部52との境目に集中しがちな応力を切り欠き部64により緩和でき、ラッチリンフォース44の耐久性を確保する上で有利となる。
【0025】
なお、実施の形態では、ラッチリンフォース44とインナパネル20およびアウタパネル22との接合がスポット溶接でなされた場合について説明したが、それらの接合をボルトナット締結で行なうなど任意であり、従来公知のさまざまな接合方法が使用可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 車両
12 荷室
14 後部開口部
16 テールゲート
18 車体パネル
18A 車体側下縁部
1802 前面部
1804 上面部
1806 傾斜面部
20 インナパネル
21 取り付け部
22 アウタパネル
2202 外面
22A 縁部
24 リアウインドウガラス
26 ストライカ
28 ラッチ機構
30 ウェザーストリップ
32 インナパネル本体部
34 インナパネルベース面部
36 シール面部
38 インナパネルベース下面部
40 ベース側面部
42 ベース前側面部
44 ラッチリンフォース
46 リンフォース本体板部
48 リンフォースベース面部
50 リンフォースベース下面部
52 リンフォース下接合片部
54 リンフォース上接合片部(接合片部)
5402 先部
56 リンフォースベース側面部
58 リンフォースベース前側面部
60A ライセンスプレート
60B ガーニッシュ
62 溝部
64 切り欠き部
6402 縁
H1 インナパネル側貫通孔
H2 リンフォース側貫通孔