(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139462
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】バッテリ管理装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20220915BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20220915BHJP
G01R 31/388 20190101ALI20220915BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20220915BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220915BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20220915BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20220915BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220915BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220915BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220915BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220915BHJP
【FI】
B60L3/00 S
G01R31/3828
G01R31/388
G01R31/396
B60L50/60
B60L58/13
B60L58/18
H02J7/00 P
H02J7/00 X
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M4/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039867
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】小和田 稔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 傑
(72)【発明者】
【氏名】溝呂木 伸
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
5H050
5H125
【Fターム(参考)】
2G216AA03
2G216AB01
2G216BA02
2G216BA03
2G216BA14
2G216CA07
5G503AA05
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB02
5G503DA04
5G503DA08
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS08
5H030BB10
5H030BB21
5H030FF42
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB01
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC05
5H125BC08
5H125BC12
5H125BC28
5H125EE27
5H125EE30
5H125EE48
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】回生電力を効率よく回収しつつバッテリのSOC補正を行うことが可能な電気自動車のバッテリ管理装置を提供する。
【解決手段】バッテリ管理装置100は、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2BのSOCを推定するSOC推定部11と、推定されたSOCの誤差補正の要否を判定する補正要否判定部13と、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bを充電する充電制御部14とを備える。充電制御部14は、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの一方についてSOCの誤差補正が必要と判定された場合、誤差補正が必要と判定されたバッテリを満充電状態となるように充電し、誤差補正が必要と判定されていないバッテリの充電を行わない。SOC推定部11は、充電制御部14によって満充電状態まで充電されたバッテリのSOCの推定値を補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機と、第1のバッテリ及び第2のバッテリと、モータとを備える電気自動車の前記第1のバッテリ及び前記第2のバッテリを管理するバッテリ管理装置であって、
前記第1のバッテリ及び前記第2のバッテリのそれぞれの使用状況に基づいて、前記第1のバッテリ及び第2のバッテリのそれぞれのSOCを推定するSOC推定部と、
前記SOC推定部で推定される前記第1のバッテリのSOC及び前記第2のバッテリのSOCのそれぞれについてSOCの誤差補正の要否を判定する補正要否判定部と、
前記発電機から出力された電力によって前記第1のバッテリ及び前記第2のバッテリを充電する充電制御部と、
を備え、
前記充電制御部は、前記補正要否判定部によって前記第1のバッテリ及び前記第2のバッテリの一方についてSOCの誤差補正が必要と判定された場合、前記第1のバッテリ及び前記第2のバッテリのうち、誤差補正が必要と判定されたバッテリを予め定められた満充電状態となるように充電し、誤差補正が必要と判定されていないバッテリの充電を行わず、
前記SOC推定部は、前記充電制御部によって前記満充電状態まで充電された前記バッテリのSOCの推定値を補正する、バッテリ管理装置。
【請求項2】
走行終了指示を受け付ける終了受付部を更に備え、
前記充電制御部は、前記終了受付部によって前記走行終了指示が受け付けられ且つ前記補正要否判定部によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合に、充電を行う、請求項1に記載のバッテリ管理装置。
【請求項3】
前記充電制御部は、前記電気自動車の走行状態が軽負荷走行状態であり且つ前記補正要否判定部によって前記第1のバッテリ及び前記第2のバッテリの一方についてSOCの誤差補正が必要と判定された場合、前記第1のバッテリ及び前記第2のバッテリのうち、誤差補正が必要と判定されたバッテリを充電し、誤差補正が必要と判定されていないバッテリの充電を行わない、請求項2に記載のバッテリ管理装置。
【請求項4】
前記第1のバッテリ及び前記第2のバッテリは、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリである、請求項1~3のいずれか一項に記載のバッテリ管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のバッテリの管理を行うバッテリ管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機と、バッテリと、モータとを備える電気自動車がある。このバッテリのSOC(State Of Charge)を推定する方法として、例えば、電流積算法がある。しかしながら、電流積算法では、充放電時の電流の計測誤差により、SOCの推定値に対して誤差が蓄積する。そのため、例えば、特許文献1には、満充電状態となるまでバッテリを充電し、SOCの推定値を補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電源系統が2つ設けられた電気自動車がある。つまり、この電気自動車には、それぞれの電源系統毎にバッテリが設けられている。このような電気自動車において、SOCの推定値の誤差を補正するため、全てのバッテリを満充電状態となるまで充電することが考えられる。しかしながら、この状態で電気自動車が走行を開始した場合、全てのバッテリが満充電状態であるために回生電力をバッテリに充電することができず、電費が悪化する。
【0005】
そこで、本発明は、回生電力を効率よく回収しつつバッテリのSOC補正を行うことが可能な電気自動車のバッテリ管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発電機と、第1のバッテリ及び第2のバッテリと、モータとを備える電気自動車の第1のバッテリ及び第2のバッテリを管理するバッテリ管理装置であって、第1のバッテリ及び第2のバッテリのそれぞれの使用状況に基づいて、第1のバッテリ及び第2のバッテリのそれぞれのSOCを推定するSOC推定部と、SOC推定部で推定される第1のバッテリのSOC及び第2のバッテリのSOCのそれぞれについてSOCの誤差補正の要否を判定する補正要否判定部と、発電機から出力された電力によって第1のバッテリ及び第2のバッテリを充電する充電制御部と、を備え、充電制御部は、補正要否判定部によって第1のバッテリ及び第2のバッテリの一方についてSOCの誤差補正が必要と判定された場合、第1のバッテリ及び第2のバッテリのうち、誤差補正が必要と判定されたバッテリを予め定められた満充電状態となるように充電し、誤差補正が必要と判定されていないバッテリの充電を行わず、SOC推定部は、充電制御部によって満充電状態まで充電されたバッテリのSOCの推定値を補正する。
【0007】
このバッテリ管理装置では、第1のバッテリ及び第2のバッテリのうち、SOCの誤差補正が必要と判定されたバッテリのみが満充電状態となるまで充電されてSOCの推定値の補正が行われる。そして、第1のバッテリ及び第2のバッテリのうち、SOCの誤差補正が必要と判定されなかったバッテリについては、充電が行われない。従って、この状態で電気自動車が走行を開始し、回生電力が生成された場合、SOCの推定値を補正するための充電が行われなかったバッテリによって回生電力を回収できる。このように、バッテリ管理装置は、回生電力を効率よく回収しつつバッテリのSOC補正を行うことができる。
【0008】
バッテリ管理装置は、走行終了指示を受け付ける終了受付部を更に備え、充電制御部は、終了受付部によって走行終了指示が受け付けられ且つ補正要否判定部によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合に、充電を行ってもよい。この場合、バッテリ管理装置は、電気自動車の走行が終了して停車した状態で、SOCの誤差補正が必要なバッテリの充電及びSOCの推定値の補正を行うことができる。
【0009】
バッテリ管理装置において、充電制御部は、電気自動車の走行状態が軽負荷走行状態であり且つ補正要否判定部によって第1のバッテリ及び第2のバッテリの一方についてSOCの誤差補正が必要と判定された場合、第1のバッテリ及び第2のバッテリのうち、誤差補正が必要と判定されたバッテリを充電し、誤差補正が必要と判定されていないバッテリの充電を行わない。この場合、バッテリ管理装置は、電気自動車の走行中に、SOCの誤差補正が必要なバッテリを予め充電することができる。これにより、バッテリ管理装置は、電気自動車が停車した状態で誤差補正が必要なバッテリを満充電状態となるまで充電する際の充電時間を短縮できる。
【0010】
バッテリ管理装置において、第1のバッテリ及び第2のバッテリは、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリであってもよい。一般に、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリは、SOCが0%近傍及び100%近傍以外の部分では、SOCと電圧値との相関が取りにくい。このような場合であってもバッテリ管理装置は、SOCの誤差補正が必要と判定されたバッテリを満充電状態となるように充電することで、電圧値に基づいて満充電状態までバッテリを精度よく充電できる。これにより、バッテリ管理装置は、SOCの推定値をより精度よく補正できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回生電力を効率よく回収しつつバッテリのSOC補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るバッテリ管理装置が搭載された燃料電池自動車を示す概略図である。
【
図2】
図2は、バッテリ管理装置の詳細を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、バッテリのSOCの補正処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1に示されるように、バッテリ管理装置100は、燃料電池自動車(電気自動車)Vに搭載されている。燃料電池自動車Vは、第1の電源系統A及び第2の電源系統Bの2つの電源系統を有している。バッテリ管理装置100は、第1の電源系統A及び第2の電源系統Bにそれぞれ設けられたバッテリのSOCを管理する。
【0015】
より詳細には、第1の電源系統Aは、第1の燃料電池(発電機)1A、第1のバッテリ2A、第1のモータ(モータ)3A、第1のブレーキレジスタ4A、及び第1の補機5Aを備えている。第1の燃料電池1Aは、発電を行うFCスタック(Fuel Cell Stack)を備えている。第1の燃料電池1Aで発電された電力は、第1のバッテリ2Aを充電するための電力、及び第1のモータ3Aを作動させるための電力として利用される。
【0016】
第1のバッテリ2Aは、第1の燃料電池1Aで発電された電力を蓄える。また、第1のバッテリ2Aは、燃料電池自動車Vに搭載された回生ブレーキ等で生成された回生電力を蓄えることもできる。第1のバッテリ2Aは、本実施形態においては、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリである。
【0017】
ここで、一般に、バッテリにおいては、SOCとバッテリの電圧値(OCV(Open Circuit Voltage)状態での電圧値)とに相関がある。しかしながら、本実施形態において第1のバッテリ2Aとして用いられるリン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリでは、SOCが0%近傍及び100%近傍以外の部分において、SOCと電圧値との相関が取りにくい。つまり、SOCが0%近傍又は100%近傍の場合、電圧値に基づいてSOCを精度よく推定できる。
【0018】
第1のモータ3Aは、第1の燃料電池1A及び第1のバッテリ2Aの少なくともいずれかの出力電力によって作動する。第1のモータ3Aは、燃料電池自動車Vに備えられた車輪6Aを駆動することによって、燃料電池自動車Vを走行させる。
【0019】
第1のブレーキレジスタ4Aは、電力を熱に変換して消費する抵抗器である。例えば、燃料電池自動車Vが大型の車両である場合、車重が大きいために大きな制動力が必要となる。このため、回生ブレーキで生成される電力量も大きくなり、第1のバッテリ2Aだけでは生成された電力を吸収できないことがある。第1のブレーキレジスタ4Aは、例えば、このような第1のバッテリ2Aだけでは吸収できない電力を消費するために設けられている。
【0020】
第1の補機5Aは、燃料電池自動車Vに搭載されたエアコン、ヒータ、高電圧電源から低電圧の電源に降圧するコンバータ等、電力によって作動する各種の機器である。第1の補機5Aは、第1の燃料電池1A及び第1のバッテリ2Aの少なくともいずれかの出力電力によって作動する。
【0021】
第2の電源系統Bは、第2の燃料電池(発電機)1B、第2のバッテリ2B、第2のモータ(モータ)3B、第2のブレーキレジスタ4B、及び第2の補機5Bを備えている。第2の燃料電池1B、第2のバッテリ2B、第2のモータ3B、第2のブレーキレジスタ4B、及び第2の補機5Bは、第1の電源系統Aに設けられた第1の燃料電池1A、第1のバッテリ2A、第1のモータ3A、第1のブレーキレジスタ4A、及び第1の補機5Aと同様の構成であり、詳細な説明を省略する。
【0022】
なお、第2のモータ3Bは、燃料電池自動車Vに備えられた車輪6Bを駆動することによって燃料電池自動車Vを走行させる。第2のモータ3Bによって駆動される車輪6Bは、第1のモータ3Aによって駆動される車輪6Aと異なっている。例えば、燃料電池自動車Vが大型車両である場合等、後輪に2列の駆動軸を有する場合、車輪6Aは前側の後輪であり、車輪6Bは後ろ側の後輪であってもよい。
【0023】
バッテリ管理装置100は、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの管理を行う。本実施形態においてバッテリ管理装置100は、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2BのそれぞれのSOCを管理することができる。バッテリ管理装置100によって管理される第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2BのSOCは、例えば第1のモータ3A及び第2のモータ3Bの制御等、燃料電池自動車Vにおける種々の制御に利用される。
【0024】
図2に示されるように、バッテリ管理装置100は、ECU(Electronic Control Unit)10を備えている。ECU10は、CPU、ROM、RAM等を有する電子制御ユニットである。ECU10は、例えば、ROMに記録されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU10は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
【0025】
ECU10は、機能的には、SOC推定部11、終了受付部12、補正要否判定部13、及び充電制御部14を備えている。
【0026】
SOC推定部11は、第1のバッテリ2Aの使用状況に基づいて、第1のバッテリ2AのSOCを推定する。同様に、SOC推定部11は、第2のバッテリ2Bの使用状況に基づいて、第2のバッテリ2BのSOCを推定する。上述したように第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bは、SOCが100%近傍又は0%近傍でないと、電圧値とSOCとの相関に基づいて、電圧値からSOCを求めることが困難である。このため、本実施形態においてSOC推定部11は、例えば、電流積算法を用い、充電時及び放電時の電流値を積算した値に基づいて第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2BのSOCをそれぞれ推定する。
【0027】
ここで、SOC推定部11が電流積算法によってSOCを推定する場合、電流値の計測誤差等によって、推定されたSOCと実際のバッテリのSOCとに誤差が生じる。このため、SOC推定部11は、所定のタイミングで、推定したSOCを補正する。SOC推定部11が行うSOCの推定値の補正について、詳しくは後述する。
【0028】
また、第1の電源系統A及び第2の電源系統Bでは、第1のモータ3A及び第2のモータ3Bの駆動出力、第1のブレーキレジスタ4A及び第2のブレーキレジスタ4Bによって消費される回生電力量、並びに、第1の補機5A及び第2の補機5Bによって消費される電力量が互いに異なる。このため、第1のバッテリ2Aと第2のバッテリ2Bとで充放電電力量が互いに異なり、SOC及びSOCの誤差も互いに異なる。
【0029】
終了受付部12は、走行終了指示を受け付ける。この走行終了指示とは、燃料電池自動車Vの走行を終了する場合に、燃料電池自動車Vの乗員が入力する指示である。走行終了指示は、例えば、乗員によって、イグニッションスイッチがオフに操作されたことであってもよい。これに限定されず、走行終了指示は、イグニッションスイッチ以外のスイッチ等の操作に基づいて入力される指示であってもよい。走行終了指示が入力された場合、燃料電池自動車Vは走行終了状態となる。
【0030】
補正要否判定部13は、SOC推定部11で推定される第1のバッテリ2AのSOC及び第2のバッテリ2BのSOCのそれぞれについて、SOCの誤差補正の要否を判定する。例えば、補正要否判定部13は、SOCの誤差が所定値以上であると推定される場合に、SOCの誤差補正が必要と判定する。補正要否判定部13は、周知の種々の方法によってSOCの誤差補正の要否を判定することができる。一例として、補正要否判定部13は、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bに設けられた電流センサの値に基づいて、SOCの誤差補正の要否を判してもよい。また、補正要否判定部13は、SOC推定部11が電流積算法によってSOCを推定する場合、電流値の積算値が所定値以上となった場合に、SOCの誤差補正が必要と判定してもよい。ここで、上述したように、第1のバッテリ2Aと第2のバッテリ2Bとで充放電電力量が互いに異なり、SOC及びSOCの誤差も互いに異なる。このため、第1のバッテリ2A(第1の電源系統A)と第2のバッテリ2B(第2の電源系統B)とでは、SOCの補正が必要と判定されるタイミングも互いに異なる。
【0031】
なお、補正要否判定部13は、SOC推定部11が電流積算法によってSOCを推定する場合、電流値の積算時間が所定時間以上となった場合に、SOCの誤差補正が必要と判定してもよい。また、補正要否判定部13は、燃料電池自動車Vの運行時間が所定時間以上となった場合に、SOCの誤差補正が必要と判定してもよい。
【0032】
充電制御部14は、第1の燃料電池1Aから出力された電力によって第1のバッテリ2Aを充電する制御を行う。同様に、充電制御部14は、第2の燃料電池1Bから出力された電力によって第2のバッテリ2Bを充電する制御を行う。なお、燃料電池自動車Vの通常運転時において、充電制御部14は、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bを満充電状態となるまで充電させない。つまり、充電制御部14は、回生電力を回収するための空き容量が残るように、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2BのSOCを制御する。
【0033】
また、充電制御部14は、終了受付部12によって走行終了指示が受け付けられ且つ補正要否判定部13によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合に、第1のバッテリ2A又は第2のバッテリ2Bの充電を行う。つまり、充電制御部14は、燃料電池自動車Vの走行が終了して燃料電池自動車Vが停車した状態で、SOCの誤差を補正するための充電を行う。
【0034】
SOCの誤差を補正するために行う充電について、より詳細に説明する。補正要否判定部13によって、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの一方について、SOCの誤差補正が必要と判定されたとする。この場合、充電制御部14は、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bのうち、誤差補正が必要と判定されたバッテリを予め定められた満充電状態となるように充電し、誤差補正が必要と判定されていないバッテリの充電を行わない。例えば、第1のバッテリ2AについてSOCの誤差補正が必要と判定された場合、充電制御部14は、第1の燃料電池1Aの出力電力によって第1のバッテリ2Aを満充電状態となるまで充電する。充電制御部14は、SOCの誤差補正が必要と判定されていない第2のバッテリ2Bについては、充電を行わない。
【0035】
なお、充電制御部14は、充電を行っているバッテリの電圧値に基づいて、予め定められた満充電状態まで充電されたか否かを判定してもよい。また、予め定められた満充電状態とは、SOCが100%近傍の予め定められたSOCまでバッテリが充電された状態である。つまり、満充電状態とは、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bがリン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリである場合、SOCと電圧値との相関が取り易い状態である。
【0036】
また、充電制御部14によって充電が行われた場合、SOC推定部11は、充電制御部14によって満充電状態まで充電されたバッテリのSOCの推定値を補正する。つまり、SOC推定部11は、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bのうち、SOCの補正が必要と判定され且つ満充電状態まで充電されたバッテリのSOCの推定値を補正する。SOCの推定値を補正することとして、例えば、SOC推定部11は、SOCの推定値を、満充電状態に対応するSOCの値にする。あるいは、例えば、SOC推定部11は、満充電状態まで充電されたバッテリの電圧値に基づいてSOCを算出し、算出したSOCによってSOCの推定値を補正してもよい。
【0037】
つまり、SOC推定部11は、乗員によって走行終了指示が入力され且つ誤差補正が必要と判定されたバッテリの充電が行われた場合、当該バッテリのSOCの推定値を補正する。その後、燃料電池自動車Vが再始動された場合、SOC推定部11は、補正されたSOCを基準として、バッテリの使用状況に基づいてSOCを推定する。
【0038】
なお、補正要否判定部13が、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの両方についてSOCの誤差補正が必要と判定することがある。この場合、充電制御部14は、充電(誤差補正)を行う対象として第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの誤差補正量の大きい方を優先して選択し、選択したバッテリを充電する。そして、SOC推定部11は、充電制御部14によって充電されたバッテリについて、SOCの推定値を補正してもよい。
【0039】
次に、バッテリ管理装置100で行われる第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2BのSOCの推定値の補正処理の流れについて説明する。
図3は、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2BのSOCの推定値の補正処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示されるフローチャートは、燃料電池自動車Vの走行が開始されると共に開始される。
図3に示されるように、終了受付部12は、乗員によって入力される走行終了指示を受け付けたか否かを判定する(S101)。走行終了指示が受け付けられていない場合(S101:NO)、終了受付部12は、走行終了指示が受け付けられるまでS101の判定処理を繰り返す。
【0040】
終了受付部12によって走行終了指示が受け付けられた場合(S101:YES)、補正要否判定部13は、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの一方について、SOCの誤差補正が必要であるか否かを判定する(S102)。第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの両方について誤差補正が不要と判定された場合(S102:NO)、バッテリ管理装置100は、SOCの推定値の補正を行わずに処理を終了する。その後、燃料電池自動車Vは、システムをシャットダウンし、次の走行の指示があるまで待機する。
【0041】
一方、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの一方についてSOCの誤差補正が必要であると判定された場合(S102:YES)、充電制御部14は、誤差補正が必要と判定されたバッテリの充電を行う(S103)。そして、充電制御部14は、充電を行っているバッテリが満充電状態となるまで充電されたか否かを判定する(S104)。満充電状態となるまで充電されていない場合(S104:NO)、充電制御部14は、満充電状態となるまでS103及びS104の処理を繰り返す。
【0042】
満充電状態となるまで充電された場合(S104:YES)、SOC推定部11は、充電制御部14で充電されたバッテリのSOCの推定値を補正する(S105)。そして、バッテリ管理装置100は、今回のSOCの推定値の補正処理を終了する。その後、燃料電池自動車Vは、システムをシャットダウンし、次の走行の指示があるまで待機する。
【0043】
以上のように、バッテリ管理装置100では、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bのうち、SOCの誤差補正が必要と判定されたバッテリのみが満充電状態となるまで充電されてSOCの推定値の補正が行われる。そして、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bのうち、SOCの誤差補正が必要と判定されなかったバッテリについては、充電が行われない。つまり、SOCの推定値を補正するための充電が行われなかったバッテリは、満充電状態となっておらず、充電容量に空きがある。従って、この状態で燃料電池自動車Vが次の走行を開始し、回生電力が生成された場合、SOCの推定値を補正するための充電が行われなかったバッテリによって回生電力を回収できる。このように、バッテリ管理装置100は、回生電力を効率よく回収しつつ誤差補正なバッテリのSOC補正を行うことができる。
【0044】
また、燃料電池自動車Vが停車した状態で、SOCの誤差補正を行うために第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの一方にのみ充電処理が行われる。これにより、バッテリ管理装置100では、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの両方に対して充電処理を行う場合に比べて放熱の負荷を小さくすることができ、燃料電池による発電の際に発生する熱を冷却するためのユニットを作動させずに済むために冷却ファン等の作動音を低減させることができる。
【0045】
バッテリ管理装置100は、走行終了指示が受け付けられた場合に、誤差補正が必要と判定されたバッテリのSOCの推定値を補正する。これにより、バッテリ管理装置100は、燃料電池自動車Vの走行が終了して停車した状態で、SOCの誤差補正が必要なバッテリの充電及びSOCの推定値の補正を行うことができる。
【0046】
第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bは、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリである。一般に、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリは、SOCが0%近傍及び100%近傍以外の部分では、SOCと電圧値との相関が取りにくい。このような場合であってもバッテリ管理装置100は、SOCの誤差補正が必要と判定されたバッテリを満充電状態となるように充電することで、電圧値に基づいて満充電状態となるまで精度よく充電できる。これにより、バッテリ管理装置100は、SOCの推定値をより精度よく補正できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、充電制御部14は、補正要否判定部13によってSOCの誤差補正が必要と判定されたバッテリがある場合、燃料電池自動車Vが停車する前(走行中)に充電を行ってもよい。具体的には、まず、充電制御部14は、燃料電池自動車Vの走行状態が軽負荷走行状態であるか否かを判定する。
【0048】
この軽負荷走行状態とは、燃料電池の出力電力の余剰分をバッテリに供給することが可能な燃料電池自動車Vの走行状態である。つまり、軽負荷走行状態とは、次の式を満たす状態である。
燃料電池発電能力>(走行に必要なエネルギ+補機消費エネルギ)
また、軽負荷走行状態は、電源系統ごとに判定される。つまり、第1の電源系統Aのみが軽負荷走行状態である場合と、第2の電源系統Bのみが軽負荷走行状態である場合と、第1の電源系統A及び第2の電源系統Bの両方が軽負荷走行状態である場合とがある。第1の電源系統Aが軽負荷走行状態である場合、第1の燃料電池1Aの出力電力によって第1のバッテリ2Aを充電することができる。第2の電源系統Bが軽負荷走行状態である場合、第2の燃料電池1Bの出力電力によって第2のバッテリ2Bを充電することができる。
【0049】
例えば、燃料電池自動車Vの積載量が少なく、軽負荷走行が継続する状態の場合に、軽負荷走行状態となる。充電制御部14は、周知の種々の方法に基づいて、燃料電池自動車Vの走行状態が軽負荷走行状態であるか否かを判定することができる。例えば、充電制御部14は、第1の燃料電池1A及び第2の燃料電池1Bの発電状態、並びに、第1の補機5A及び第2の補機5Bの作動状態等に基づいて、軽負荷走行状態であるか否かを判定してもよい。
【0050】
つぎに、充電制御部14は、燃料電池自動車Vの走行状態が軽負荷走行状態であり且つ補正要否判定部13によって第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの一方についてSOCの誤差補正が必要と判定された場合、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bのうち、誤差補正が必要と判定されたバッテリを充電する。具体的には、充電制御部14は、誤差補正が必要と判定されたバッテリを備える電源系統が軽負荷走行状態である場合、当該バッテリを充電する。また、充電制御部14は、誤差補正が必要と判定されていないバッテリの充電を行わない。ここでは、充電制御部14は、例えば、回生電力の回収に影響が生じない範囲で、満充電状態に近い状態までSOCの誤差補正が必要なバッテリを充電する。これにより、バッテリ管理装置100は、走行終了指示が受け付けられ、燃料電池自動車Vが停車した状態で誤差補正が必要なバッテリを満充電状態となるまで充電する際の充電時間を短縮でき、燃料電池による発電の際に発生する熱を冷却するためのユニットを作動させずに済むために冷却ファン等の作動音を低減させることができる。
【0051】
第1のバッテリ2Aを充電するための発電機として第1の燃料電池1Aを用いたが、燃料電池以外の発電機(例えば、発電用エンジン等)を用いて充電を行ってもよい。第2のバッテリ2Bについても同様に、第2の燃料電池1B以外の発電機を用いて充電を行ってもよい。また、燃料電池自動車Vには2つの燃料電池(第1の燃料電池1A及び第2の燃料電池1B)が設けられていたが、燃料電池が一つのみ設けられている構成であってもよい。この場合、一つの燃料電池によって、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bの充電、並びに、第1のモータ3A及び第2のモータ3Bへの電力供給を行ってもよい。燃料電池自動車Vに2つのモータ(第1のモータ3A及び第2のモータ3B)が設けられていたが、モータの数は2つに限定されず、例えば、1つ又は3以上であってもよい。
【0052】
燃料電池自動車Vは、第1の電源系統A及び第2の電源系統Bの2つの電源系統を備えていたが、電源系統の数は3以上であってもよい。この場合、バッテリ管理装置100は、SOCの誤差補正を行うためにバッテリの充電を行う際に、複数のバッテリのうち少なくとも一つのバッテリについては充電を行わない。これにより、バッテリ管理装置100は、SOCの誤差補正を行った場合であっても、燃料電池自動車Vが次の走行を開始したときに、充電を行わなかったバッテリによって回生電力を回収することができる。
【0053】
第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bは、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリに限定されない。第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bは、リン酸鉄リチウム以外の材料を用いたリチウムイオンバッテリであってもよく、リチウムイオンバッテリ以外のバッテリであってもよい。
【0054】
また、第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bは、それぞれ複数のバッテリによって構成されていてもよい。すなわち、第1の電源系統Aには、複数のバッテリが設けられていてもよい。同様に、第2の電源系統Bには、複数のバッテリが設けられていてもよい。また、一つの電源系統内に複数のバッテリが設けられていている場合、バッテリ管理装置100は、上述した第1のバッテリ2A及び第2のバッテリ2Bに対してSOCの誤差補正を行ったことと同様に、これらのバッテリのSOCの誤差補正を行ってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1A…第1の燃料電池(発電機)、1B…第2の燃料電池(発電機)、2A…第1のバッテリ、2B…第2のバッテリ、3A…第1のモータ(モータ)、3B…第2のモータ(モータ)、11…SOC推定部、12…終了受付部、13…補正要否判定部、14…充電制御部、100…バッテリ管理装置、V…燃料電池自動車(電気自動車)。