(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139464
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】バッテリ管理装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20220915BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20220915BHJP
G01R 31/388 20190101ALI20220915BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20220915BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220915BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20220915BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20220915BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20220915BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20220915BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220915BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220915BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220915BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220915BHJP
【FI】
B60L3/00 S
G01R31/3828
G01R31/388
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L50/75
B60L53/14
B60L58/12
B60L58/40
H02J7/00 P
H02J7/00 X
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M4/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039869
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】小和田 稔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 傑
(72)【発明者】
【氏名】溝呂木 伸
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
5H050
5H125
【Fターム(参考)】
2G216AA03
2G216AB01
2G216BA02
2G216BA03
2G216BA14
2G216CA07
5G503AA05
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA08
5G503DA04
5G503DA08
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA09
5H030AS08
5H030BB10
5H030BB21
5H030FF42
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB01
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125AC24
5H125BA00
5H125BC05
5H125BC08
5H125BC12
5H125BC24
5H125BC25
5H125BD02
5H125EE27
5H125EE33
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】バッテリを低SOCとすることによってバッテリのSOC補正を行う。
【解決手段】バッテリ管理装置100は、燃料電池自動車Vのバッテリ2を管理する。バッテリ管理装置100は、バッテリ2のSOCを推定するSOC推定部11と、推定されるSOCの誤差補正の要否を判定する補正要否判定部13と、バッテリ2の放電を制御する放電制御部14とを備える。放電制御部14は、SOCの誤差補正が必要と判定された場合、ブレーキレジスタ4等にバッテリ2の電力を供給することによって、バッテリ2を低SOCとなるように放電する。SOC推定部11は、低SOCまで放電されたバッテリ2のSOCの推定値を補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機と、バッテリと、前記発電機及び前記バッテリの少なくともいずれかの出力電力によって作動するモータとを備える電気自動車の前記バッテリを管理するバッテリ管理装置であって、
前記バッテリの使用状況に基づいて前記バッテリのSOCを推定するSOC推定部と、
前記SOC推定部で推定される前記バッテリのSOCの誤差補正の要否を判定する補正要否判定部と、
前記バッテリの放電を制御する放電制御部と、
を備え、
前記放電制御部は、前記補正要否判定部によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合、前記バッテリの電力を吸収可能な電力吸収部に前記バッテリの電力を供給することによって、前記バッテリを予め定められた低SOCとなるように放電し、
前記SOC推定部は、前記放電制御部によって前記低SOCまで放電された前記バッテリのSOCの推定値を補正する、バッテリ管理装置。
【請求項2】
走行終了指示を受け付ける終了受付部を更に備え、
前記放電制御部は、前記終了受付部によって前記走行終了指示が受け付けられ且つ前記補正要否判定部によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合、前記バッテリを前記低SOCとなるように放電する、請求項1に記載のバッテリ管理装置。
【請求項3】
前記発電機の発電量を制御する発電制御部を更に備え、
前記発電制御部は、前記補正要否判定部によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合、前記電気自動車を保管する車両保管所に到着したときに前記バッテリの残電力量が予め定められた低残電力量まで消費された状態となるように、前記発電機の発電量を制御する、請求項2に記載のバッテリ管理装置。
【請求項4】
前記発電機から出力された電力によって前記バッテリを充電する充電制御部を更に備え、
前記充電制御部は、前記バッテリのSOCの推定値の補正を行うために前記低SOCまで放電された前記バッテリを予め定められた基準SOCとなるように充電する、請求項1~3のいずれか一項に記載のバッテリ管理装置。
【請求項5】
前記電力吸収部は、前記電気自動車に搭載された車両電気機器及び車外に設置された蓄電装置の少なくともいずれかである、請求項1~4のいずれか一項に記載のバッテリ管理装置。
【請求項6】
前記バッテリは、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリである、請求項1~5のいずれか一項に記載のバッテリ管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のバッテリの管理を行うバッテリ管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機と、バッテリと、モータとを備える電気自動車がある。このバッテリのSOC(State Of Charge)を推定する方法として、例えば、電流積算法がある。しかしながら、電流積算法では、充放電時の電流の計測誤差により、SOCの推定値に対して誤差が蓄積する。そのため、例えば、特許文献1には、バッテリのSOCと電圧値との相関が取り易い状態となるようにバッテリのSOCを制御し、SOCの推定値を補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電気自動車のバッテリとして、SOCが0%近傍の低SOCである場合に、バッテリのSOCと電圧値との相関が取り易いバッテリが用いられることがある。この場合、バッテリのSOCの推定値を補正するためには、バッテリのSOCを低SOCにする必要があり、これを実現するための手段が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、バッテリを低SOCとすることによってバッテリのSOC補正を行うことが可能な電気自動車のバッテリ管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発電機と、バッテリと、発電機及びバッテリの少なくともいずれかの出力電力によって作動するモータとを備える電気自動車のバッテリを管理するバッテリ管理装置であって、バッテリの使用状況に基づいてバッテリのSOCを推定するSOC推定部と、SOC推定部で推定されるバッテリのSOCの誤差補正の要否を判定する補正要否判定部と、バッテリの放電を制御する放電制御部と、を備え、放電制御部は、補正要否判定部によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合、バッテリの電力を吸収可能な電力吸収部にバッテリの電力を供給することによって、バッテリを予め定められた低SOCとなるように放電し、SOC推定部は、放電制御部によって低SOCまで放電されたバッテリのSOCの推定値を補正する。
【0007】
このバッテリ管理装置は、SOCの誤差補正が必要と判定された場合、電力吸収部に電力を供給することによってバッテリの電力を減少させ、バッテリの状態を低SOCとすることができる。そして、バッテリ管理装置は、低SOCまで放電されたバッテリのSOCの推定値を補正することができる。このように、バッテリ管理装置は、バッテリを低SOCとすることによってバッテリのSOC補正を行うことができる。
【0008】
バッテリ管理装置は、走行終了指示を受け付ける終了受付部を更に備え、放電制御部は、終了受付部によって走行終了指示が受け付けられ且つ補正要否判定部によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合、バッテリを低SOCとなるように放電してもよい。この場合、バッテリ管理装置は、電気自動車の走行が終了して停車した状態で、SOCの誤差補正が必要なバッテリの放電及びSOCの推定値の補正を行うことができる。
【0009】
バッテリ管理装置は、発電機の発電量を制御する発電制御部を更に備え、発電制御部は、補正要否判定部によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合、電気自動車を保管する車両保管所に到着したときにバッテリの残電力量が予め定められた低残電力量まで消費された状態となるように、発電機の発電量を制御してもよい。この場合、バッテリ管理装置は、車両保管所に到着する前に事前にバッテリの残電力量を少なくしておくことができる。これにより、バッテリ管理装置は、車両保管所においてSOCの誤差補正を行う際に、低SOCまでバッテリを放電するときの放電電力量を抑制することができる。
【0010】
バッテリ管理装置は、発電機から出力された電力によってバッテリを充電する充電制御部を更に備え、充電制御部は、バッテリのSOCの推定値の補正を行うために低SOCまで放電されたバッテリを予め定められた基準SOCとなるように充電してもよい。この場合、バッテリ管理装置は、SOCの誤差補正を行った後においても、誤差補正を行ったバッテリの出力電力によって当該バッテリが設けられたシステムの起動等を行うことができる。
【0011】
バッテリ管理装置において、電力吸収部は、電気自動車に搭載された車両電気機器及び車外に設置された蓄電装置の少なくともいずれかであってもよい。この場合、バッテリ管理装置は、車両電気機器及び蓄電装置の少なくともいずれかを用いて、バッテリの電力を積極的に放電することができる。
【0012】
バッテリ管理装置において、バッテリは、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリであってもよい。一般に、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリは、SOCが0%近傍及び100%近傍以外の部分では、SOCと電圧値との相関が取りにくい。このような場合であってもバッテリ管理装置は、SOCの誤差補正が必要と判定されたバッテリを低SOCとなるように放電することで、電圧値に基づいて低SOCまでバッテリを精度よく放電できる。これにより、バッテリ管理装置は、SOCの推定値をより精度よく補正できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バッテリを低SOCとすることによってバッテリのSOC補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係るバッテリ管理装置が搭載された燃料電池自動車を示す概略図である。
【
図2】
図2は、バッテリ管理装置の詳細を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、バッテリのSOCの補正処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、変形例に係るバッテリ管理装置が搭載された燃料電池自動車を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示されるように、バッテリ管理装置100は、燃料電池自動車(電気自動車)Vに搭載されている。バッテリ管理装置100は、燃料電池自動車Vに搭載されたバッテリ2のSOCを管理する。
【0017】
より詳細には、燃料電池自動車Vは、燃料電池(発電機)1、バッテリ2、モータ3、ブレーキレジスタ(電力吸収部、車両電気機器)4、及び補機(電力吸収部、車両電気機器)5を備えている。燃料電池1は、発電を行うFCスタック(Fuel Cell Stack)を備えている。燃料電池1で発電された電力は、バッテリ2を充電するための電力、モータ3及び補機5を作動させるための電力として利用される。
【0018】
バッテリ2は、燃料電池1で発電された電力を蓄える。また、バッテリ2は、燃料電池自動車Vに搭載された回生ブレーキ等で生成された回生電力を蓄えることもできる。バッテリ2は、本実施形態においては、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリである。
【0019】
ここで、一般に、バッテリにおいては、SOCとバッテリの電圧値(OCV(Open Circuit Voltage)状態での電圧値)とに相関がある。しかしながら、本実施形態においてバッテリ2として用いられるリン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリでは、SOCが0%近傍及び100%近傍以外の部分において、SOCと電圧値との相関が取りにくい。つまり、SOCが0%近傍又は100%近傍の場合、電圧値に基づいてSOCを精度よく推定できる。
【0020】
モータ3は、燃料電池1及びバッテリ2の少なくともいずれかの出力電力によって作動する。モータ3は、燃料電池自動車Vに備えられた車輪6を駆動することによって、燃料電池自動車Vを走行させる。
【0021】
ブレーキレジスタ4は、電力を熱に変換して消費する抵抗器である。例えば、燃料電池自動車Vが大型の車両である場合、車重が大きいために大きな制動力が必要となる。このため、回生ブレーキで生成される電力量も大きくなり、バッテリ2だけでは生成された電力を吸収できないことがある。ブレーキレジスタ4は、例えば、このようなバッテリ2だけでは吸収できない電力を消費するために設けられている。
【0022】
補機5は、燃料電池自動車Vに搭載されたエアコン、ヒータ、高電圧電源から低電圧の電源に降圧するコンバータ等、電力によって作動する各種の機器である。補機5は、燃料電池1及びバッテリ2の少なくともいずれかの出力電力によって作動する。
【0023】
バッテリ管理装置100は、バッテリ2の管理を行う。本実施形態においてバッテリ管理装置100は、バッテリ2のSOCを管理することができる。バッテリ管理装置100によって管理されるバッテリ2のSOCは、例えばモータ3の制御等、燃料電池自動車Vにおける種々の制御に利用される。
【0024】
図2に示されるように、バッテリ管理装置100は、ECU(Electronic Control Unit)10を備えている。ECU10は、CPU、ROM、RAM等を有する電子制御ユニットである。ECU10は、例えば、ROMに記録されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU10は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
【0025】
ECU10は、機能的には、SOC推定部11、終了受付部12、補正要否判定部13、放電制御部14、発電制御部15、及び充電制御部16を備えている。
【0026】
SOC推定部11は、バッテリ2の使用状況に基づいて、バッテリ2のSOCを推定する。上述したようにバッテリ2は、SOCが100%近傍又は0%近傍でないと、電圧値とSOCとの相関に基づいて、電圧値からSOCを求めることが困難である。このため、本実施形態においてSOC推定部11は、例えば、電流積算法を用い、充電時及び放電時の電流値を積算した値に基づいてバッテリ2のSOCを推定する。
【0027】
ここで、SOC推定部11が電流積算法によってSOCを推定する場合、電流値の計測誤差等によって、推定されたSOCと実際のバッテリ2のSOCとに誤差が生じる。このため、SOC推定部11は、所定のタイミングで、推定したSOCを補正する。SOC推定部11が行うSOCの推定値の補正について、詳しくは後述する。
【0028】
終了受付部12は、走行終了指示を受け付ける。この走行終了指示とは、燃料電池自動車Vの走行を終了する場合に、燃料電池自動車Vの乗員が入力する指示である。走行終了指示は、例えば、乗員によって、イグニッションスイッチがオフに操作されたことであってもよい。これに限定されず、走行終了指示は、イグニッションスイッチ以外のスイッチ等の操作に基づいて入力される指示であってもよい。走行終了指示が入力された場合、燃料電池自動車Vは走行終了状態となる。
【0029】
補正要否判定部13は、SOC推定部11で推定されるバッテリ2のSOCについて、SOCの誤差補正の要否を判定する。例えば、補正要否判定部13は、SOCの誤差が所定値以上であると推定される場合に、SOCの誤差補正が必要と判定する。補正要否判定部13は、周知の種々の方法によってSOCの誤差補正の要否を判定することができる。一例として、補正要否判定部13は、バッテリ2に設けられた電流センサの値に基づいて、SOCの誤差補正の要否を判してもよい。また、補正要否判定部13は、SOC推定部11が電流積算法によってSOCを推定する場合、電流値の積算値が所定値以上となった場合に、SOCの誤差補正が必要と判定してもよい。
【0030】
なお、補正要否判定部13は、SOC推定部11が電流積算法によってSOCを推定する場合、電流値の積算時間が所定時間以上となった場合に、SOCの誤差補正が必要と判定してもよい。また、補正要否判定部13は、燃料電池自動車Vの運行時間が所定時間以上となった場合に、SOCの誤差補正が必要と判定してもよい。
【0031】
放電制御部14は、バッテリ2の放電を制御する。例えば、放電制御部14は、バッテリ2の放電を行う場合、バッテリ2の電力をブレーキレジスタ4及び補機5の少なくともいずれかによって消費させる。つまり、ブレーキレジスタ4及び補機5は、バッテリ2の電力を吸収可能な電力吸収部として機能する。特に、放電制御部14は、ブレーキレジスタ4及び補機5を活用することにより、バッテリ2を短時間で放電できると共に正確に放電電流を制御することができる。
【0032】
なお、放電制御部14は、終了受付部12によって走行終了指示が受け付けられ且つ補正要否判定部13によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合に、バッテリ2の放電を行う。つまり、放電制御部14は、燃料電池自動車Vの走行が終了して燃料電池自動車Vが停車した状態で、SOCの誤差を補正するための放電を行う。
【0033】
SOCの誤差を補正するために行う放電について、より詳細に説明する。放電制御部14は、ブレーキレジスタ4及び補機5の少なくともいずれかにバッテリ2の電力を供給することによって、バッテリ2を予め定められた低SOCとなるように放電する。
【0034】
なお、放電制御部14は、放電を行っているバッテリ2の電圧値に基づいて、予め定められた低SOCまで放電されたか否かを判定してもよい。また、予め定められた低SOCとは、SOCが0%近傍の予め定められたSOCとなった状態である。つまり、低SOCとは、バッテリ2がリン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリである場合、SOCと電圧値との相関が取り易い状態である。
【0035】
また、放電制御部14によって放電が行われた場合、SOC推定部11は、放電制御部14によって低SOCまで放電されたバッテリ2のSOCの推定値を補正する。SOCの推定値を補正することとして、例えば、SOC推定部11は、SOCの推定値を、低SOCに対応するSOCの値にする。あるいは、例えば、SOC推定部11は、低SOCまで放電されたバッテリ2の電圧値に基づいてSOCを算出し、算出したSOCによってSOCの推定値を補正してもよい。
【0036】
発電制御部15は、燃料電池1の発電量を制御する。ここでは、発電制御部15は、SOCの補正のためにバッテリ2を低SOCとする際に、予めバッテリ2の残電力量が少なくなるように、燃料電池1の発電量を制御する。なお、バッテリ2の残電力量は、モータ3及び補機5によって電力が使用されることによって減少する。発電制御部15は、燃料電池1の出力電力によってバッテリ2が充電されない(充電量が抑制される)ように燃料電池1の発電量を制御することによって、バッテリ2の残電力量を減少させる。
【0037】
具体的には、発電制御部15は、補正要否判定部13によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合、燃料電池自動車Vを保管する車両保管所に到着したときに予め定められた低残電力量までバッテリ2の残電力量が消費された状態となるように、燃料電池1の発電量を制御する。車両保管所とは、燃料電池自動車Vを保管可能な場所である。車両保管所は、例えば、燃料電池自動車Vが荷物等の輸送に用いられる場合、燃料電池自動車Vが集まる基地局であってもよい。車両保管所とは、燃料電池自動車Vの目的地ともいえる。
【0038】
また、予め定められた低残電力量とは、バッテリ2の残電力量が少ない状態である。低残電力量は、バッテリ2が低SOCのときの残電力量よりも、予め定められた電力量多い残電力量である。バッテリ2の残電力量が低残電力量である場合、バッテリ2は、SOCを補正する際に短時間で低SOCまで放電することができる。
【0039】
なお、発電制御部15は、例えば、ロケータを使用することによって、燃料電池自動車Vが車両保管所に向うことを認識することができる。ロケータを用いる方法以外にも、発電制御部15は、周知の種々の方法によって燃料電池自動車Vが車両保管所に向うことを認識することができる。
【0040】
また、発電制御部15は、燃料電池1の発電量の制御することとして、例えば、まず、車両保管所に到着するまでに必要な電力量を算出する。つぎに、発電制御部15は、算出した電力量とバッテリ2の残電力量とに基づいて、バッテリ2の残電力量が低残電力量まで消費された状態となるように、燃料電池1の発電量を制御することができる。例えば、発電制御部15は、例えばロケータ(もしくはナビゲーションシステム)を用いて得られる車両保管所までの走行距離等、種々の情報に基づいて、車両保管所に到着するまでに必要な電力量を算出することができる。
【0041】
充電制御部16は、燃料電池1から出力された電力によってバッテリ2を充電する。ここでは、充電制御部16は、バッテリ2のSOCの推定値の補正を行うために低SOCまで放電されたバッテリ2を予め定められた基準SOCとなるように充電する。
【0042】
ここで、予め定められた基準SOCとは、低SOCよりも所定電力量以上、バッテリ2が充電された状態である。例えば、基準SOCとは、バッテリ2の電力を用いた燃料電池自動車Vのシステムの起動(走行終了状態の燃料電池自動車Vを、走行可能状態とするときの起動)が可能なSOCとすることができる。
【0043】
次に、バッテリ管理装置100で行われるバッテリ2のSOCの推定値の補正処理の流れについて説明する。
図3は、バッテリ2のSOCの推定値の補正処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示されるフローチャートは、燃料電池自動車Vの走行が開始されると共に開始される。
図3に示されるように、終了受付部12は、乗員によって入力される走行終了指示を受け付けたか否かを判定する(S101)。走行終了指示が受け付けられていない場合(S101:NO)、終了受付部12は、走行終了指示が受け付けられるまでS101の判定処理を繰り返す。
【0044】
終了受付部12によって走行終了指示が受け付けられた場合(S101:YES)、補正要否判定部13は、バッテリ2のSOCの誤差補正が必要であるか否かを判定する(S102)。SOCの誤差補正が不要と判定された場合(S102:NO)、バッテリ管理装置100は、SOCの推定値の補正を行わずに処理を終了する。その後、燃料電池自動車Vは、システムをシャットダウンし、次の走行の指示があるまで待機する。
【0045】
一方、SOCの誤差補正が必要であると判定された場合(S102:YES)、放電制御部14は、バッテリ2の放電を行う(S103)。そして、放電制御部14は、バッテリ2が低SOCとなるまで放電されたか否かを判定する(S104)。低SOCとなるまで放電されていない場合(S104:NO)、放電制御部14は、低SOCとなるまでS103及びS104の処理を繰り返す。
【0046】
低SOCとなるまで放電された場合(S104:YES)、SOC推定部11は、低SOCとなるまで放電されたバッテリ2のSOCの推定値を補正する(S105)。SOCの推定値の補正後、充電制御部16は、低SOCまで放電されたバッテリ2を充電する(S106)。そして、充電制御部16は、充電を行っているバッテリ2が基準SOCとなるまで充電されたか否かを判定する(S107)。基準SOCとなるまで充電されていない場合(S107:NO)、充電制御部16は、基準SOCとなるまでS106及びS107の処理を繰り返す。
【0047】
バッテリ2が基準SOCまで充電された場合(S107:YES)、バッテリ管理装置100は、今回のSOCの推定値の補正処理を終了する。その後、燃料電池自動車Vは、システムをシャットダウンし、次の走行の指示があるまで待機する。
【0048】
なお、SOCの誤差補正が必要と判定された状態で、燃料電池自動車Vが車両保管所に戻る場合がある。この場合、発電制御部15は、
図3には表されていないが、車両保管所に到着したときにバッテリ2の残容量が低残電力量まで消費された状態となるように、燃料電池1の発電量を制御する。これにより、バッテリ管理装置100は、車両保管所において走行終了指示を受け付けた場合に、SOCの推定値の誤差を補正する。つまり、バッテリ管理装置100は、車両保管所においてバッテリ2の放電を行う前に、バッテリ2の残充電量を少ない状態にする。
【0049】
以上のように、バッテリ管理装置100は、バッテリ2のSOCの誤差補正が必要と判定された場合、ブレーキレジスタ4等に電力を供給することによってバッテリ2の電力を減少させ、バッテリ2の状態を低SOCとすることができる。そして、バッテリ管理装置100は、低SOCまで放電されたバッテリ2のSOCの推定値を補正することができる。このように、バッテリ管理装置100は、バッテリ2を低SOCとすることによってバッテリ2のSOC補正を行うことができる。
【0050】
バッテリ管理装置100は、終了受付部12によって走行終了指示が受け付けられ且つ補正要否判定部13によってSOCの誤差補正が必要と判定された場合、バッテリ2を低SOCとなるように放電する。この場合、バッテリ管理装置100は、燃料電池自動車Vの走行が終了して停車した状態で、SOCの誤差補正が必要なバッテリ2の放電及びSOCの推定値の補正を行うことができる。
【0051】
例えば、燃料電池自動車Vが車両保管所に戻る場合がある。この場合、バッテリ管理装置100は、SOCの誤差補正が必要と判定された場合、車両保管所に到着したときにバッテリ2の残電力量が低残電力量まで消費された状態となるように、燃料電池1の発電量を制御する。これにより、バッテリ管理装置100は、車両保管所に到着する前に事前にバッテリ2の残電力量を少なくしておくことができる。従って、バッテリ管理装置100は、車両保管所においてSOCの誤差補正を行う際に、低SOCまでバッテリ2を放電するときの放電電力量を抑制することができる。そして、バッテリ管理装置100は、放電電力量を抑制できることによって放熱負荷を少なくすることができ、燃料電池1による発電の際に発生する熱を冷却するためのユニットを作動させずに済むために冷却ファン等の作動音を低減させることができる。
【0052】
バッテリ管理装置100は、SOCの推定値の補正を行うために低SOCまで放電したバッテリ2を、基準SOCとなるように充電する。この場合、バッテリ管理装置100は、SOCの誤差補正を行った後においても、誤差補正を行ったバッテリ2の出力電力によって当該バッテリ2が設けられたシステムの起動等を行うことができる。
【0053】
バッテリ管理装置100は、燃料電池自動車Vに搭載されたブレーキレジスタ4及び補機5の少なくともいずれかに電力を供給することによって、バッテリ2の放電を行う。この場合、バッテリ管理装置100は、ブレーキレジスタ4等を用いてバッテリ2の電力を積極的に放電することができる。
【0054】
バッテリ2は、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリである。一般に、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリは、SOCが0%近傍及び100%近傍以外の部分では、SOCと電圧値との相関が取りにくい。このような場合であってもバッテリ管理装置100は、SOCの誤差補正が必要と判定されたバッテリ2を低SOCとなるように放電することで、電圧値に基づいて低SOCとなるまで精度よく放電できる。これにより、バッテリ管理装置100は、SOCの推定値をより精度よく補正できる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、バッテリ管理装置100は、ブレーキレジスタ4及び補機5を用いてバッテリ2を放電させることに限定されない。例えば、
図4に示されるように、車外に設置された蓄電装置(電力吸収部)7に電力を供給することによって、バッテリ2を放電させてもよい。この場合、バッテリ管理装置100は、放電を行う際に燃料電池自動車Vの乗員等に通知し、車外の蓄電装置7の電力供給ケーブルを燃料電池自動車Vに接続するように指示をする。電力供給ケーブルが接続された後、バッテリ管理装置100は、蓄電装置7に電力を供給することによってバッテリ2を放電させてもよい。この場合、バッテリ管理装置100は、バッテリ2を低SOCとなるように放電する際の電力を蓄電装置7に蓄えさせることができる。これによりバッテリ管理装置100は、バッテリ2の電力を有効に活用できる。なお、バッテリ管理装置100は、蓄電装置7に電気を供給することに加え、ブレーキレジスタ4及び補機5で電力を消費させることによって、バッテリ2を放電させてもよい。
【0056】
また、バッテリ2を充電するための発電機として燃料電池1を用いたが、燃料電池以外の発電機(例えば、発電用エンジン等)を用いて充電を行ってもよい。
【0057】
バッテリ2は、リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオンバッテリに限定されない。バッテリ2は、リン酸鉄リチウム以外の材料を用いたリチウムイオンバッテリであってもよく、リチウムイオンバッテリ以外のバッテリであってもよい。
【0058】
また、バッテリ管理装置100は、SOCの誤差補正を行うためにバッテリ2を低SOC状態とする際に、当該バッテリ2の電力のみで燃料電池自動車Vを走行させるとよい。この場合、バッテリ2のSOCを低SOCまで素早く放電させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…燃料電池(発電機)、2…バッテリ、3…モータ、4…ブレーキレジスタ(電力吸収部、車両電気機器)、5…補機(電力吸収部、車両電気機器)、7…蓄電装置(電力吸収部)、11…SOC推定部、12…終了受付部、13…補正要否判定部、14…放電制御部、15…発電制御部、16…充電制御部、100…バッテリ管理装置、V…燃料電池自動車(電気自動車)。