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特開2022-139492半導体装置の製造方法及び製造治具セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139492
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び製造治具セット
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20220915BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/12 Z
H01L21/60 321V
H01L21/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039909
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】特許業務法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 恭平
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047BA05
5F047BA06
5F047BA19
5F047BB05
5F047BB11
5F047CA02
5F047FA14
(57)【要約】
【課題】はんだ片の飛散を防止し、配線部材等の電気的、かつ、機械的な接合が確実に行い、信頼性を向上させることができる。
【解決手段】位置合わせ治具3の開口部3aに、おもて面をおもて側に向かせて半導体チップ25を配置して半導体チップ25の位置合わせを行う。次いで、位置合わせ治具3に配置された半導体チップ25の主電極に接合部材27を介してリードフレーム26を搭載する。次いで、保護治具4の保護部4bを、保護面を主電極に向けておもて面に配置し、梁部4aが支持部3eに支持されるように保護治具4を架設する。このため、保護治具4の保護部4bにより、接合部材27の片の保護領域、特に制御電極への飛散が抑制される。さらに、保護治具4は、半導体チップ25の反りに追随して、持ち上げられつつ、接合部材27の片の制御電極252への飛散を抑制することができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
おもて面に被接合領域を含む第1部品と、前記被接合領域に接合される第2部品と、前記第1部品の平面視の形状に対応して開口され、開口縁部に支持部が形成された開口部を含む位置合わせ治具と、保護面を備える保護部と前記保護部に形成された梁部とを含む保護治具と、を用意する用意工程と、
前記位置合わせ治具の前記開口部に、前記おもて面を表出させて前記第1部品を配置して前記第1部品の位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記位置合わせ治具に配置された前記第1部品の前記被接合領域に接合部材を介して第2部品を搭載する搭載工程と、
前記搭載工程の前後のいずれかに、前記保護治具の前記保護部を、前記保護面を前記被接合領域に向けて前記おもて面に配置し、前記梁部が前記支持部に支持されるように前記保護治具を架設する架設工程と、
前記接合部材を加熱する加熱工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1部品は、前記おもて面において前記被接合領域を除いた保護領域をさらに含み、
前記架設工程では、前記保護治具の前記保護部は前記保護領域の前記被接合領域から所定距離、離間した間に配置される、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記梁部は、架設された前記保護治具の前記保護部の端部に対して垂直に延伸して形成されている、
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記支持部は、架設された前記保護治具の前記梁部の裏面を鉛直上方に支持する、
請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記支持部は、平面視で前記位置合わせ治具の前記開口部の内壁面から前記開口部に対して垂直に突出しており、
前記架設工程にて、前記保護治具の前記梁部の裏面が前記支持部のおもて面に配置される、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記支持部は、前記位置合わせ治具のおもて面の前記開口部側に凹状の凹部に形成されており、
前記架設工程にて、前記保護治具の前記梁部が前記支持部の前記凹部に嵌合し、前記梁部は前記支持部に沿って上下に滑りながら移動可能に配置される、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記支持部が、平面視で前記位置合わせ治具の前記開口部の内壁面から前記開口部に向かって垂直に直方体状に突出して、
前記保護治具が備える前記梁部の先端部に平面視で凹状の窪みが形成されて、
前記架設工程にて、前記保護治具の前記梁部の前記窪みが前記支持部に嵌合し、前記梁部は前記支持部に沿って上下に滑りながら移動可能に配置される、
請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記支持部の前記凹部内に、前記支持部が形成された前記開口縁部の辺に平行な軸部が形成され、
前記保護治具の前記梁部の前記支持部に嵌合される領域の裏面に前記開口縁部の辺に平行な軸受部が形成されて、
前記架設工程にて、前記保護治具の前記梁部の軸受部に前記支持部の軸部が嵌合して、前記保護治具が前記軸受部を軸に回動可能に前記梁部が前記支持部に配置される、
請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記保護治具は、前記保護部及び前記梁部がそれぞれ平板状であって、前記梁部は前記保護部の端部から前記保護部に対して垂直に形成されている、
請求項1乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記保護部は、前記位置合わせ治具に前記第1部品が配置された際の、平面視で、前記位置合わせ治具の前記開口部の内壁面と前記第2部品との間の隙間を埋設するブロック状を成している、
請求項1乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記保護部は、前記開口部の前記開口縁部の辺に対応して複数に分割され、前記隙間に配置される複数の保護部材を含み、
前記梁部が、前記複数の保護部材のおもて面と同一平面を成してそれぞれ形成され、前記複数の保護部材から外側に突出し、
前記支持部が、前記隙間に配置された前記複数の保護部材に形成された複数の前記梁部に対応して前記開口縁部に形成されている、
請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記位置合わせ治具の前記開口部に配置された前記第1部品は前記開口部により、前記第1部品に対して前記第2部品が積層する積層方向に対して水平方向の移動が拘束されている、
請求項1乃至11のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1部品は半導体チップであって、
前記第2部品は配線部材である、
請求項1乃至12のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記被接合領域は前記半導体チップの主電極である、
請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1部品は回路パターンであり、
前記第2部品は半導体チップである、
請求項1乃至12のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1部品は放熱板であり、
前記第2部品は絶縁回路基板である、
請求項1乃至12のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
おもて面に被接合領域を含む部品の平面視の形状に対応して開口され、開口縁部に支持部が形成された開口部を含む位置合わせ治具と、
保護面を備える保護部と前記保護部に形成された梁部とを含み、前記保護部が、前記保護面を前記被接合領域に向けて前記部品の前記おもて面に配置され、前記梁部が前記支持部に支持されるように架設される保護治具と、
を有する半導体装置の製造治具セット。
【請求項18】
前記支持部に支持される前記保護治具の前記梁部は、前記支持部に対して上方に移動可能に前記支持部に支持されている、
請求項17に記載の半導体装置の製造治具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び製造治具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、パワーデバイスを含み、電力変換装置として利用されている。パワーデバイスは、半導体チップを含む。半導体チップは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。このような半導体装置は、少なくとも、半導体チップと当該半導体チップが配置されるセラミックス回路基板を有する半導体モジュールとセラミックス回路基板が配置される放熱器(放熱板や冷却ユニット等)とを含んでいる場合がある。
【0003】
このような半導体装置を製造するにあたり、セラミックス回路基板に対して半導体チップを接合し、半導体チップが接合されたセラミックス回路基板を放熱器に接合する際には位置合わせするための治具が用いられる(例えば、特許文献1,2)。
【0004】
半導体装置では、所定の領域にはんだ材料が配置されたセラミックス回路基板に位置合わせ治具を用いて、はんだ材料の上に半導体チップが配置される。そして、加熱してはんだ材料を溶融してセラミックス回路基板に半導体チップが接合される。その後、放熱器に対しても、同様にして、半導体チップが接合されたセラミックス回路基板がはんだにより接合される。また、半導体チップ上にリードフレーム等の配線部材をはんだにより接合される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-36653号公報
【特許文献2】特開2013-65662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体装置の上記のはんだ付け工程では、はんだ材料がフラックスを含んでいるクリームはんだの場合には、加熱されてはんだが溶融する際に、フラックスが発泡してしまうことがある。フラックスの発泡に伴って溶融したはんだからはんだ片が飛散してしまう。また、フラックスを含まない板はんだを用いた場合にもボイドが生じて、はんだ片並びにはんだ微粒子が飛散してしまう。また、ナノ銀粒子焼結体等の微小金属粒子接合材を用いる場合にも、ボイドが生じてナノ金属粒子の塊が飛散してしまう。これらの接合部材片並びに粒子(はんだ片等)がセラミックス回路基板の回路パターン、半導体チップの表面、特に電極等(保護領域)に飛散してしまうと、その後、ボンディングワイヤ等の配線部材を回路パターン、半導体チップの電極に適切に接合することができなくなってしまう。また、短絡等も生じやすく、電気的絶縁性能が低下し、半導体装置としての信頼性も低下してしまう。そして、飛散したはんだ片を除去しようとすると、その分の煩雑な工程が増加してしまう。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、はんだ片の飛散を防止し、配線部材等の電気的、かつ、機械的な接合を確実に行い、信頼性を向上させる半導体装置の製造方法及び製造治具セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、おもて面に被接合領域を含む第1部品と、前記被接合領域に接合される第2部品と、前記第1部品の平面視の形状に対応して開口され、開口縁部に支持部が形成された開口部を含む位置合わせ治具と、保護面を備える保護部と前記保護部に形成された梁部とを含む保護治具と、を用意する用意工程と、前記位置合わせ治具の前記開口部に、前記おもて面を表出させて前記第1部品を配置して前記第1部品の位置合わせを行う位置合わせ工程と、前記位置合わせ治具に配置された前記第1部品の前記被接合領域に接合部材を介して第2部品を搭載する搭載工程と、前記搭載工程の前後のいずれかに、前記保護治具の前記保護部を、前記保護面を前記被接合領域に向けて前記おもて面に配置し、前記梁部が前記支持部に支持されるように前記保護治具を架設する架設工程と、前記接合部材を加熱する加熱工程と、を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明の一観点によれば、上記の半導体装置の製造方法で用いられる製造治具セットを提供する。
【発明の効果】
【0010】
上記の半導体装置の製造方法及び製造治具セットは、はんだ片の飛散を防止し、配線部材の電気的、かつ、機械的な接合が確実に行うことができ、信頼性の低下が防止された半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】半導体装置の側面図である。
図2】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図3】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法で用いられる組み立て体の側面図である。
図4】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる接合工程を示すフローチャートである。
図5】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる位置合わせ工程を示す図である。
図6】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる搭載工程を示す図(その1)である。
図7】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる搭載工程を示す図(その2)である。
図8】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる加熱工程を示す図である。
図9】第1の実施の形態の変形例1の半導体装置の製造方法で用いられる保護治具を示す図である。
図10】第1の実施の形態の変形例2の半導体装置の製造方法で用いられる保護治具を示す図である。
図11】第1の実施の形態の変形例3の半導体装置の製造方法で用いられる保護治具を示す図である。
図12】第1の実施の形態の変形例4の半導体装置の製造方法で用いられる保護治具を示す図である。
図13】第2の実施の形態の半導体装置の側面図である。
図14】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる接合工程を示すフローチャートである。
図15】第2の実施の形態の変形例の半導体装置の側面図である。
図16】第3の実施の形態の半導体装置の平面図である。
図17】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる搭載工程を示す平面図(その1)である。
図18】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる搭載工程を示す断面図(その1)である。
図19】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる搭載工程を示す平面図(その2)である。
図20】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる搭載工程を示す断面図(その2)である。
図21】第3の実施の形態の変形例の半導体装置の製造方法で用いられる保護治具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本実施の形態において、おもて面(上方)とは、図1の半導体装置20が上側を向いた面(方向)を表す。図1は、半導体装置20の側面を表す。例えば、図4図6は、治具の取り付け過程をおもて面から示している。裏面(下方)とは、図1の半導体装置20において、下側を向いた面(方向)を表す。例えば、半導体装置20のセラミックス回路基板21が配置される面が裏面(下方)である。図1以外でもおもて面(上方)及び裏面(下方)は同様の方向性を意味する。また、以下の説明において「主成分」とは、80vol%以上含む場合を表す。
【0013】
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態で説明する第1接合工程(図2のステップS11)及び第2の実施の形態で説明する第2接合工程(図2のステップS12)を通じて製造される半導体装置について図1を用いて説明する。図1は、半導体装置の側面図である。半導体装置20は、少なくとも、セラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26と放熱板28とを含んでいる。なお、半導体装置20は、半導体チップ、セラミックス回路基板等の間で適宜電気的に配線されて、ケースに収納されてもよく、または、封止部材により封止されてもよい。ここでは、半導体装置20の最小構成について表示している。
【0014】
セラミックス回路基板21は、絶縁板22と絶縁板22のおもて面に設けられた回路パターン23と絶縁板22の裏面に設けられた金属板24とを含んでいる。絶縁板22及び金属板24は、角部が面取りされていてもよい。回路パターン23及び金属板24の外形は、平面視で、絶縁板22の外形より小さく、絶縁板22の内側に形成されている。なお、回路パターン23の個数、配置位置並びに形状は一例であって、この場合に限らずに、適宜設計により個数、配置位置並びに形状を選択することができる。絶縁板22は、絶縁性を備え、熱抵抗が低く、熱伝導性に優れた材質により構成されている。このような絶縁板22は、セラミックスにより構成されることが好ましい。セラミックスは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素等である。このような絶縁板22の厚さは、0.20mm以上、2.50mm以下である。
【0015】
回路パターン23は、導電性に優れた材質により構成されている。このような材質として、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金等により構成されている。回路パターン23の厚さは、好ましくは、0.10mm以上、2.00mm以下であり、より好ましくは、0.20mm以上、1.00mm以下である。回路パターン23に対して、耐食性に優れた材質によりめっき処理を行うことも可能である。このような材質は、例えば、ニッケル、または、ニッケルを含む合金等である。また、回路パターン23は絶縁板22の中央部に形成されており、平面視で、回路パターン23の縁部と絶縁板22の縁部との間に隙間が設けられる。
【0016】
金属板24は、熱伝導性に優れた金属により構成されている。このような材質として、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金等により構成されている。金属板24の厚さは、好ましくは、0.10mm以上、2.00mm以下であり、より好ましくは、0.20mm以上、1.00mm以下である。また、耐食性を向上させるために、例えば、ニッケル等の材料をめっき処理等により金属板24の表面に形成してもよい。
【0017】
半導体チップ25は、シリコン、炭化シリコンまたは窒化ガリウム等の半導体材料から構成されるパワーデバイスである。半導体チップ25は、スイッチング素子あるいはダイオード素子である。スイッチング素子は、パワーMOSFET、IGBT等である。このような半導体チップ25は、例えば、裏面に主電極としてドレイン電極(正極電極、IGBTではコレクタ電極)を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び主電極(被接合領域)としてソース電極(負極電極、IGBTではエミッタ電極)をそれぞれ備えている。また、ダイオード素子は、SBD(Schottky Barrier Diode)、PiN(P-intrinsic-N)ダイオードのFWD(Free Wheeling Diode)である。このような半導体チップ25は、裏面に主電極としてカソード電極を、おもて面に主電極としてアノード電極をそれぞれ備えている。半導体チップ25の厚さは、80μm以上、500μm以下であって、例えば、200μmである。なお、第1の実施の形態において、セラミックス回路基板21上の半導体チップ25はスイッチング素子の一例である。半導体チップ25はおもて面に主電極251及び制御電極252が設けられている(図6を参照)。主電極251の領域(第1領域)は、半導体チップ25のおもて面の略中央部に設けられている。制御電極252の領域(第2領域)は、半導体チップ25のおもて面の主電極251から外縁部側に離間して設けられている。また、所望の設計に応じて、スイッチング素子及びダイオード素子の半導体チップ25をそれぞれ用いてもよい。
【0018】
または、半導体チップ25は、RC(Reverse Conducting)-IGBTである。RC-IGBTは、スイッチング素子であるIGBT及びダイオード素子であるFWDが1チップ内に構成されたものである。このような半導体チップ25は、例えば、裏面に主電極としてコレクタ電極(正極電極)及びアノード電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極、主電極としてエミッタ電極(負極電極)及びカソード電極をそれぞれ備えている。
【0019】
また、半導体チップ25は、その裏面側が所定の回路パターン23上に接合部材27により接合されている。接合部材27は、例えば、はんだ材料である。はんだ材料は、所定の合金を主成分とする鉛フリーはんだにより構成される。当該はんだ材料は、例えば、Sn-Bi(錫-ビスマス)系、Sn-Ag-Cu(錫-銀-銅)系、Sn-Sb(錫-アンチモン)系、Sn-Sb-Ag(錫-アンチモン-銀)系、Sn-Cu(錫-銅)系、Sn-Sb-Ag-Cu(錫-アンチモン-銀-銅)系、Sn-Cu-Ni(錫-銅-ニッケル)系、Sn-Ag(錫-銀)系を用いることができる。このようなはんだ材料に対して、さらに添加元素を含んでもよい。添加元素は、例えば、ニッケル、ゲルマニウム、リンである。しかし、はんだ材料が、Sn-Sb系、Sn-Cu系、Sn-Ag系である場合、または、これらのはんだ材料に銀、銅、ニッケルの少なくとも1元素を含む場合は、液相線温度(融点)が210℃以上で飛散しやすい。このようなはんだ材料を用いる場合には、後述する製造治具セット9が特に有効となる。また、半導体チップ25と回路パターン23とを接合するに当たり、板状のはんだ材料(板はんだ)、ペースト状のクリームはんだを用いてもよい。板はんだは、上述の合金からなる。クリームはんだは、上述の合金または合金粉末に還元剤を有するフラックスを含有する。また、接合部材27として、ナノ銀粒子の焼結体などの微小金属粒子を含む接合材(微小金属粒子焼結体)を用いてもよい。微小金属粒子焼結体には、ナノ粒子焼結体とマイクロ粒子焼結体があり、ナノ粒子焼結体は、平均粒子径が約1nm以上、200nm以下の金属粒子群が焼結され、粒子間が結合して連なった状態にある多孔質金属体をいう。また、マイクロ粒子焼結体は、平均粒子径が約1nm以上、10μm以下の金属粒子群が焼結され、粒子間が結合して連なった状態にある多孔質金属体をいう。また、ナノ粒子とマイクロ粒子が混合された混合粒子焼結体等がある。なお、焼結前の接合材(微小金属焼結体接合材)は、金属粒子表面を有機物で覆って凝集を防止し、溶媒中への分散性を向上させペースト化した接合材や、金属粒子として、酸化銀と還元作用を有する還元溶剤をペースト状にした接合材などがある。
【0020】
また、はんだ材料の厚さ(加熱接合前)は0.05mm以上、0.30mm以下とすることができる。特に、0.10mm以上、0.20mm以下が好ましい。この範囲であれば、接合強度を満足し、飛散も多くなく、熱抵抗も抑えられる。
【0021】
リードフレーム26は、例えば、半導体チップ25(特におもて面の電極)と回路パターン23並びに外部端子等とを電気的に接続する配線部材である。リードフレーム26は、導電性に優れた材質により構成されている。このような材質として、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金等により構成されている。リードフレーム26の厚さは、好ましくは、0.20mm以上、4.00mm以下であり、より好ましくは、0.50mm以上、1.50mm以下である。また、耐食性を向上させるために、例えば、ニッケル等の材料をめっき処理等によりリードフレーム26の表面に形成してもよい。なお、第1の実施の形態のリードフレーム26の形状は一例である。リードフレーム26の具体例は、第3の実施の形態で説明する。また、リードフレーム26もまた、その裏面側が所定の半導体チップ25上に接合部材27により接合されている。
【0022】
放熱板28は、セラミックス回路基板21と接合部材27等で接合され、半導体チップ25で発生した熱を冷却ユニット等に排出する機能を有する。放熱板28は、平板状であり平面視で長方形状を成している。また、放熱板28は、おもて面から上方、側面から側方、裏面から下方へ張り出す凸部や凹部を有してもよい。また、放熱板28は、熱伝導性に優れた金属により構成されている。このような材質として、例えば、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの1種を含む合金である。このような合金の例として、アルミニウム-炭化珪素またはマグネシウム-炭化珪素等の金属複合材でもよい。放熱板28の表面に、耐食性を向上させるために、例えば、ニッケル等の材料をめっき処理等により形成してもよい。なお、半導体装置20の放熱板28の裏面に冷却ユニットを設けてもよい。冷却ユニットは、例えば、水冷ジャケットである。冷却ユニットは、水冷ジャケットに限らず、1以上のフィンを備えるヒートシンクでもよい。ヒートシンクは、例えば、熱伝導性に優れた金属により構成される。金属は、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの1種を含む合金等である。なお、放熱板28自体が冷却ユニットであってもよい。その場合、流入口及び流出口等の凸部が下方及び側方に設けられていてもよい。
【0023】
なお、半導体チップ25にリードフレーム26を接合部材27で接合する場合、被接合部品を第1部品、接合部品を第2部品とすると、半導体チップ25が第1部品であって、リードフレーム26は第2部品に対応する。半導体チップ25のおもて面は被接合領域及び保護領域を含む。被接合領域は半導体チップ25(第1部品)のおもて面の主電極251にリードフレーム26(第2部品)が接合される領域である。保護領域は、半導体チップ25のおもて面から被接合領域を除いた領域にそれぞれ対応する。特に、第1部品が半導体チップである場合には、保護領域は、半導体チップ25(第1部品)のおもて面の被接合領域の周りの領域としてもよい。すなわち、保護領域は、被接合領域から所定距離以上離れた外縁部である。所定距離は、例えば、0.30mm以上、0.50mm以下である。当該外縁部には、制御電極252が含まれる。
【0024】
また、同様に、回路パターン23に半導体チップ25を接合部材27で接合する場合、回路パターン23が第1部品であって、半導体チップ25が第2部品に対応する。回路パターン23のおもて面は被接合領域及び保護領域を含む。被接合領域は、回路パターン23のおもて面の半導体チップ25の配置領域に、保護領域は、回路パターン23のおもて面から当該配置領域を除いた領域にそれぞれ対応する。
【0025】
また、同様に、放熱板28にセラミックス回路基板21を接合部材27で接合する場合、放熱板28が第1部品であって、セラミックス回路基板21が第2部品に対応する。放熱板28のおもて面は被接合領域及び保護領域を含む。被接合領域は、放熱板28のおもて面のセラミックス回路基板21の配置領域に、保護領域は、放熱板28のおもて面の当該配置領域を除いた領域にそれぞれ対応する。
【0026】
次に、このような半導体装置20の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。まず、半導体装置20に必要となる部品を用意する用意工程を行う(図2のステップS10)。必要となる部品の一例として、半導体チップ25、セラミックス回路基板21、ケース、封止部材、リードフレーム26、放熱板28等を用意する。
【0027】
次いで、用意されたセラミックス回路基板21に半導体チップ25を接合させ、さらに、半導体チップ25にリードフレーム26を接合させる第1接合工程を行う(図2のステップS11)。第1の実施の形態では、この第1接合工程の詳細について後述する。
【0028】
次いで、このように接合したセラミックス回路基板21と放熱板とを接合する第2接合工程を行う(図2のステップS12)。なお、この第2接合工程については、第2の実施の形態で説明する。
【0029】
次いで、このように接合されたセラミックス回路基板21等をケースに収納し、接合する収納工程を行う(図2のステップS13)。次いで、ケースに収納されたセラミックス回路基板21等に対してボンディングワイヤにより電気的に接続して配線する配線工程を行う(図2のステップS14)。なお、配線工程を先に行った後に、収納工程を行ってもよい。最後に、ケースに収納されたセラミックス回路基板21等を封止部材で封止する封止工程を行う(図2のステップS15)。以上により、図1に示される半導体装置20をさらにケースに収納して完成する。
【0030】
次に、図2のフローチャートのステップS11の第1接合工程について説明する。第1の実施の形態で説明する第1接合工程では、セラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とを接合部材27によりそれぞれ接合する。まず、第1接合工程でセラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とを接合する際に用いる製造治具セット9について、図3を用いて説明する。図3は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法で用いられる組み立て体の側面図である。なお、図3では、製造治具セット9が取り付けられたセラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とを含めて組み立て体1としている。
【0031】
組み立て体1に含まれる製造治具セット9は、位置合わせ治具2,3と保護治具4とウェイト5とを含む。なお、製造治具セット9は、これらの治具以外の治具を含んでもよい。製造治具セット9の位置合わせ治具2,3及び保護治具4は、それぞれ、耐熱性に優れ、線膨張係数が小さい材質で構成されている。このような材質は、例えば、カーボン、複合セラミックス材料が用いられる。ウェイト5は、例えば、ステンレス鋼が用いられる。
【0032】
位置合わせ治具2は、セラミックス回路基板21を所定の位置に配置するための治具である。位置合わせ治具2は、底部2cと枠部2bとを含んでいる。そして、底部2cは、平板状を成しており、平面視で、セラミックス回路基板21の面積よりも広く構成されて、セラミックス回路基板21が配置される。枠部2bは、底部2cのおもて面に一体的に形成されている。枠部2bは、平面視でセラミックス回路基板21の形状(矩形状)に対応した凹状に形成された位置合わせ領域2aを取り囲む。位置合わせ領域2aの高さは、セラミックス回路基板21の高さと略等しいことが好ましい。つまり、位置合わせ治具2の枠部2bの上面とセラミックス回路基板21の上面(回路パターン23の上面)とは同一平面を成している。これは、枠部2b及びセラミックス回路基板21上に位置合わせ治具3が配置されるためである。
【0033】
位置合わせ治具3は、平板状を成しており、おもて面に平面視で半導体チップ25の形状に対応して開口された開口部3aを取り囲む枠部3bを備えている。また、位置合わせ治具3は、枠部3bのおもて面の開口部3a側に開口部3aに沿って環状に形成された凹部3cと枠部3bの裏面側に環状に形成された凸部3dとを備えてもよい。凹部3cは、後述する位置合わせ治具3上に搭載されるウェイト5の配置位置の位置決めとして利用される。この際の凸部3dの高さは、セラミックス回路基板21の回路パターン23の高さに対応していることが好ましい。また、凸部3dの幅(図3のX方向)は、セラミックス回路基板21の平面視で回路パターン23の外縁部と絶縁板22の外縁部との隙間(長さ)に対応することが好ましい。この凸部3dを上述の高さ、幅にすることによって、位置合わせ治具3は位置合わせ治具2及びセラミックス回路基板21のおもて面の所定の位置に容易に配置できる。さらに、位置合わせ治具3は、開口部3aの内壁面に形成された支持部3eを備える。支持部3eは、図6に示されるように、平面視で矩形状を成し、位置合わせ治具3の開口部3aの内壁面から開口部3aに対して垂直に突出して、半導体チップ25の制御電極252に対向している。なお、後述するように、支持部3eのおもて面には、保護治具4の梁部4aが配置される。
【0034】
半導体チップ25(第1部品)に、接合部材27を介してリードフレーム26(第2部品)を接合する際に用いられる保護治具4について説明する。保護治具4は、保護面4cを備える保護部4bと保護部4bに形成された梁部4aとを含んで、支持部3eと半導体チップ25のおもて面に架設されている。梁部4aと保護部4bとはそれぞれ平板状を成して、図3に示されるように、側面視でL字状を成して一体的に接続されている。つまり、梁部4aは保護部4bの端部から、保護部4bに対して垂直に形成されて側面視でL字状を成している。梁部4aと保護部4bとが接続された角部は、図3のような直角である場合に限らず、丸みを成していてもよい。このような梁部4aは、支持部3eに支持される。また、保護部4bは、保護面4c(図3及び図7等を参照)がリードフレーム26側(被接合領域側)を向いて半導体チップ25(第1部品)のおもて面に配置されている。なお、保護面4cは必ずしも平面状とは限らない。後述するように、保護面4cは、接合部材片(はんだ片)の飛散を防止できればよく、曲面であってもよい。保護治具4の幅(図3及び図7のY方向)は、位置合わせ治具3の支持部3eの幅に対応している。
【0035】
保護治具4の保護面4cが、飛散した接合部材片(はんだ片)を防御し、半導体チップ25のおもて面(保護領域)にはんだ片が付着しないようにすることが重要である。半導体チップ25における保護領域は、おもて面の主電極241を除いた制御電極252を含むおもて面の領域である。このため、保護治具4の保護部4bは、保護領域に配置される。より具体的には、保護治具4の保護部4bの先端は、保護領域の縁部に接するように配置されることが好ましい。また、保護治具4の保護部4bは、保護領域において主電極252から半導体チップ25の外縁に向かう方向に所定距離、離間した間に配置されてもよい。所定距離とは、主電極252から半導体チップ25の外縁に向かう方向であって、制御電極252の手前までである。このような所定距離は、半導体チップ25のサイズによるものの、例えば、0.20mm以上、0.50mm以下の範囲である。また、保護部4bは、制御電極252に限らず、保護領域の外縁部(制御電極252を含む)の手前までに配置してもよい。
【0036】
なお、回路パターン23における保護領域は、半導体チップ25の配置領域を除いたおもて面の領域である。放熱板28における保護領域は、セラミックス回路基板21の配置領域を除いたおもて面の領域である。回路パターン23及び放熱板28に対して、保護治具4の保護部4bは、保護領域において配置領域の近傍に配置されることが好ましい。
【0037】
また、保護治具4を位置合わせ治具3及び半導体チップ25に架設した状態において、少なくとも保護部4bが、後述するように、上方に移動でき、また、上方から再度下方に移動できる構造を有することが好ましい。
【0038】
具体的には、保護治具4の梁部4aの裏面が支持部3eに鉛直上方(+Z方向)に支持され、保護部4bが半導体チップ25のおもて面の保護領域に配置される。梁部4aの裏面が支持部3eにより支持されているだけであるため、保護治具4自体が位置合わせ治具3に対して鉛直上方(開口部3eの開口方向)に沿って上下に移動できる(図8を参照)。
【0039】
または、梁部4aの位置合わせ治具3側の端部が位置合わせ治具3の支持部3eに保持され、当該端部を軸として梁部4a及び保護部4bが反時計回り方向に回転する。その結果、保護部4bは上下方向に可動することができる(図12を参照)。
【0040】
また、保護面4cは、飛散したはんだ片等が付着して、付着状態が維持されるように、粗面化してもよい。保護面4cに対して、例えば、ブラスト処理やエッチング処理等を行い、中心線表面粗さ(Ra)を0.1μmから1μm程度に粗面化してもよい。
【0041】
ウェイト5は、平板状を成しており、おもて面に平面視でリードフレーム26の形状に対応して開口された開口部5aが形成されて、開口部5aを取り囲む枠部5bを備えている。また、ウェイト5は、位置合わせ治具3に搭載された際に、保護治具4が覆われる程度に開口部5aが形成されていることが好ましい。なお、ウェイト5は、開口部5aを必ずしも必要としない。すなわち、ウェイト5は、位置合わせ治具3の開口部3aを塞ぐように構成されてもよい。また、ウェイト5は、枠部5bの裏面に凸部5dが形成されていてもよい。凸部5dは、枠部5bに開口部5aの縁部に沿って形成されている。また、凸部5dは、ウェイト5を位置合わせ治具3に配置した際に、位置合わせ治具3の凹部3cに嵌るように形成されている。
【0042】
次に、図2のフローチャートのステップS11(第1接合工程)の詳細について、図3と併せて、図4図8を用いて説明する。図4は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる接合工程を示すフローチャートである。図5は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる位置合わせ工程を示す図である。図6及び図7は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる搭載工程を示す図である。図8は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる加熱工程を示す図である。なお、図5は、ステップS11aに、図6は、ステップS11bに、図7は、ステップS11c,S11dに対応し、平面視で示している。図8は、ステップS11fに対応し、側面視でそれぞれ示している。
【0043】
特に、半導体チップ25とリードフレーム26を接合する際のはんだ片(接合部材片)の飛散を防止することについて説明する。第1接合工程では、セラミックス回路基板21上に、半導体チップ25を接合部材27を介して配置し、さらに、半導体チップ25上にリードフレーム26を接合部材27を介して配置する。その後、加熱処理をして一度にセラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とを接合する。
【0044】
しかし、セラミックス回路基板21と半導体チップ25とを接合し、その後、半導体チップ25とリードフレーム26とを接合する等、別々に接合してもよい。その際にも、接合部材27が飛散しないように保護治具4を用いる。例えば、セラミックス回路基板21上に、半導体チップ25を、接合部材27を介して接合する場合は、後述する図15に示すように、保護治具4を支持部8e1に設置して接合部材27の飛散を抑制することができる。なお、リードフレーム26を用いない場合も同様である。それでは、以下、具体的に説明する。なお、以下では、接合部材27としてはんだ材料である場合を例に挙げて説明する。
【0045】
まず、図5に示されるように、位置合わせ治具2の位置合わせ領域2aにセラミックス回路基板21を配置して位置合わせする位置合わせ工程を行う(図4のステップS11a)。これにより、セラミックス回路基板21のX方向及びY方向(水平方向)への位置ずれが抑制される。このため、後の搭載工程における各部品を適切な位置に搭載することができる。
【0046】
次いで、位置合わせ治具2に対して位置合わせ治具3を搭載し、位置合わせ治具3の開口部3aに基づいて、セラミックス回路基板21のおもて面に接合部材27を介して半導体チップ25をそのおもて面(主電極251及び制御電極252)を表出して、搭載する第1搭載工程を行う(図4のステップS11b)。なお、この場合、セラミックス回路基板21は第1部品に相当し、半導体チップ25は第2部品に相当する。
【0047】
第1搭載工程では、位置合わせ治具3の枠部3bの裏面に形成されている凸部3dを、セラミックス回路基板21の回路パターン23の外縁部と位置合わせ治具2の枠部2bの位置合わせ領域2aの開口縁部との隙間に嵌合させる。これにより、セラミックス回路基板21は、位置合わせ治具2に対して確実に固定される。このようにして搭載された位置合わせ治具3の開口部3aは、セラミックス回路基板21のおもて面の半導体チップ25の配置領域に対応する。このような開口部3aにより、図6(並びに図3)に示されるように、セラミックス回路基板21の回路パターン23上に、接合部材27を介して半導体チップ25を搭載する。この位置合わせ治具3の開口部3aのため、半導体チップ25は、セラミックス回路基板21に半導体チップ25が積層する積層方向(+Z方向)に対して、水平方向(X方向及びY方向)の移動(ずれ)が拘束される。開口部3aは図3及び図8に示すように、半導体チップ25より広く開口されている。この際、開口部3aの端部と半導体チップ25の端部のクリアランスは、0.30mm以上、1.00mm以下が好ましい。また、回路パターン23の上面に対向する、位置合わせ治具3の裏面は回路パターン23を覆うように配置される。位置合わせ治具3が、回路パターン23の保護領域を覆うことにより、回路パターン23と半導体チップ25とを接合する接合部材27の飛散を抑制することができる。また、この際、位置合わせ治具3の支持部3eは、平面視で、半導体チップ25の制御電極252に対向配置されていてもよい。特に制御電極252にはんだ片が付着するのを防止するために、制御電極252近傍に位置合わせ治具3の支持部3eを配置し、保護治具4を搭載することが好ましい。
【0048】
次いで、半導体チップ25(第1部品)の主電極251に接合部材27を介してリードフレーム26(第2部品)を搭載する第2搭載工程を行う(図4のステップS11c)。第2搭載工程でも、開口部3aにより、図7(並びに図3)に示されるように、半導体チップ25の主電極251上に、接合部材27を介してリードフレーム26を搭載する。
【0049】
次いで、保護治具4を位置合わせ治具3及び半導体チップ25に対して架設する架設工程を行う(図4のステップS11d)。架設工程では、図7(並びに図3)に示されるように、保護治具4の保護部4bの保護面4cが半導体チップ25の主電極251を向いて、主電極251と制御電極252との間に搭載される。さらに、保護治具4の梁部4aが支持部3eに支持させる。具体的には、梁部4aの裏面は支持部3eのおもて面に配置される。このようにして、保護治具4を支持部3eと半導体チップ25のおもて面との間に架設する。すなわち、側面視でL字状を成す保護治具4は、梁部4aが支持部3eに立てかけられて、保護部4bが半導体チップ25上の保護領域に配置される。これにより、半導体チップ25の保護領域に含まれる制御電極252は、保護治具4により覆われる。なお、保護治具4は、制御電極252に限らず、半導体チップ25のおもて面の制御電極252を含む外縁部を覆うことが好ましい。
【0050】
なお、第2搭載工程と架設工程とは実施工程の順序を入れ替えてもよい。すなわち、第1搭載工程の後に、架設工程を行い、そして、第2搭載工程を行ってもよい。
【0051】
次いで、位置合わせ治具3に対して、ウェイト5を搭載する第3搭載工程を行う(図4のステップS11e)。この際、ウェイト5の裏面の凸部5dを位置合わせ治具3の凹部3cに嵌合させる。これにより、図3に示した組み立て体1が構成される。また、この際、保護治具4は、ウェイト5の裏面に覆われている。
【0052】
次いで、加熱工程を行う(図4のステップS11f)。図3に示した組み立て体1を加熱して、接合部材27を溶融する。この際の接合温度としては、加熱ピーク温度をはんだ材料の液相線温度(融点)より20℃以上、50℃以下程度高い温度である。接合温度の一例としては、例えば、250℃以上、350℃以下程度である。また、この際の加熱処理時間として、0.5分間以上、30分間以下程度、好ましくは、1分間以上、5分間以下程度を保持する。
【0053】
接合雰囲気は、窒素雰囲気、あるいは、水素やギ酸等の活性雰囲気にて接合する。特に板はんだを用いる場合は、還元作用を有する水素、ギ酸等のガスを使用することが好ましい。これらの還元作用を有する活性ガス雰囲気で接合する場合には、そのガスが酸化物を効果的に還元する温度、例えば、250℃以上、280℃以下とすることが好ましい。実際の接合では、数℃以上の温度分布を持ち、接合するために、ある一定以上の温度と時間を確保することで、安定な接合品質が得られる。その後、所定の降温速度で冷却することにより、溶融したはんだを固化させ、はんだ接合層を形成する。この熱処理の昇温速度は1℃/秒程度であり、降温速度は5℃/秒以上である。好ましくは、8℃/秒以上、15℃/秒以下である。従来の接合方法では、はんだ接合層を形成するための熱処理の降温速度は1℃/秒であった。この場合、めっき層中の微細結晶が粗大化しやすくなる。また、上記の降温速度範囲にすることにより、所定の構成を有するはんだ接合層とすることが容易となる。
【0054】
この際、例えば、接合部材27がクリームはんだの場合は、半導体チップ25とリードフレーム26との間の接合部材27に含まれていたフラックスが発泡すると、接合部材27の片が飛散してしまう(例えば、図3に示す破線の矢印)。なお、接合部材27が板はんだや微小金属粒子焼結材の場合でも溶融時にボイドが生じ、接合部材27の片が飛散してしまう。しかしながら、保護治具4の保護部4bにより、接合部材27の片の、半導体チップ25のおもて面の外縁部、特に、制御電極252への飛散が抑制される。
【0055】
また、半導体チップ25とリードフレーム26とは線膨張係数が異なる。このため、加熱により、線膨張係数の差に応じて、半導体チップ25に反りが生じる場合がある。保護治具4は、支持部3eと半導体チップ25のおもて面との間に単に架設されているに過ぎない。したがって、保護治具4は、図8に示されるように、半導体チップ25の反りに追随する。すなわち、保護治具4の梁部4aは支持部3eに対してZ方向に持ち上げられ開口部5aの内壁面を滑りながら移動(摺動)する。これに伴って、保護部4bもZ方向に移動するため、接合部材27の片の制御電極252への飛散を抑制することができる。
【0056】
この後、組み立て体1から製造治具セット9を取り外して、セラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とが接合される。これらは、特に、接合部材27の制御電極252への飛散が抑制されて、制御電極252に対して配線部材を電気的、かつ、機械的に確実に接続することができる。以上の第1接合工程により、セラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とを接合することができる。
【0057】
したがって、上記半導体装置20の製造方法の第1接合工程において、おもて面に主電極251を含む半導体チップ25と、主電極251に接合されるリードフレーム26と、半導体チップ25の平面視の形状に対応して開口され、開口縁部に支持部3eが形成された開口部3aを含む位置合わせ治具3と、保護面4cを備える保護部4bと保護部4bに形成された梁部4aとを含む保護治具4と、を用意する。
【0058】
次いで、位置合わせ治具3の開口部3aに、おもて面をおもて側に向かせて半導体チップ25を配置して半導体チップ25の位置合わせを行う。次いで、位置合わせ治具3に配置された半導体チップ25の主電極251に接合部材27を介してリードフレーム26を搭載する。次いで、保護治具4の保護部4bを、保護面4cが主電極251側を向くように、おもて面に配置し、梁部4aが支持部3eに支持されるように保護治具4を架設する。
【0059】
このため、保護治具4の保護部4bにより、接合部材27の片の保護領域、特に制御電極252への飛散が抑制される。さらに、保護治具4は、半導体チップ25の反りに追随して、持ち上げられつつ、接合部材27の片の制御電極252への飛散を抑制することができる。
【0060】
次に、このような製造治具セット9に含まれる位置合わせ治具3及び保護治具4の変形例について説明する。なお、位置合わせ治具3及び保護治具4はこれらの例に限定されるものではなく、位置合わせ治具3に架設された保護治具4が上下方向に可動できる構造であればよい。
【0061】
[変形例1]
位置合わせ治具3及び保護治具4の変形例1について図9を用いて説明する。図9は、第1の実施の形態の変形例1の半導体装置の製造方法で用いられる保護治具を示す図である。なお、図9は、位置合わせ治具3に対して架設された保護治具4を含む周囲を拡大して示している。図9(A)は、平面図、図9(B)は、図9(A)の一点鎖線Y-Yにおける断面図をそれぞれ表している。
【0062】
変形例1では、位置合わせ治具3における支持部3eが、枠部3bのおもて面の開口部3a側に凹状に形成されている。すなわち、支持部3eは、枠部3bの開口部3a側のおもて面から-Z方向、及び、枠部3bのおもて面側の内壁面から-X方向に窪んでいる。このような支持部3eのY方向の幅は、保護治具4の幅に略等しい。また、支持部3eの-X方向の長さは、保護治具4の梁部4aが安定して支持される程度である。
【0063】
位置合わせ治具3並びに半導体チップ25に対して保護治具4を架設する際には、図9に示されるように、保護治具4の梁部4aを凹状の支持部3eに嵌合する。すなわち、後述するように、梁部4aは支持部3eに沿って上下(±Z方向)に滑りながら移動(摺動)可能に配置される。また、保護部4bの保護面4cが半導体チップ25の主電極251(リードフレーム26の接合部)を向いて、保護領域、具体的には、保護部4bを主電極251と制御電極252または外縁部との間に搭載する。このようにして、保護治具4を支持部3eと半導体チップ25のおもて面との間に架設する。
【0064】
この状態において加熱すると、図8で示したように、半導体チップ25に反りが生じる。保護治具4は半導体チップ25の反りに追随してZ方向に移動する。変形例1の場合には、凹状の支持部3eの幅方向の両側面がガイドとなり、保護治具4の梁部4aが支持部3eの当該両側面に沿ってZ方向に滑りながら確実に安定して移動(摺動)することができる。梁部4aの移動に伴って、保護部4bも確実に安定してZ方向に沿って上下に移動可能となる。このため、半導体チップ25の反り方にばらつきがあり、または、外部から衝撃があっても、保護治具4が支持部3eから逸脱することがなく、確実に、接合部材27の飛散を抑制することができる。なお、梁部4aと凹状の支持部3eの両側面は接するので、梁部4aを含めた保護治具4が滑らかに上下できるように、梁部4a及び支持部3eの表面の少なくともいずれかに摩擦抵抗を低減する処理を施すことが好ましい。具体的には、梁部4aと支持部3eの表面を、自己潤滑性を有するカーボンまたはNiP(ニッケル-リンめっき)等で覆ってもよい。
【0065】
[変形例2]
位置合わせ治具3及び保護治具4の変形例1のバリエーションである変形例2について図10を用いて説明する。図10は、第1の実施の形態の変形例2の半導体装置の製造方法で用いられる保護治具を示す図である。なお、図10は、位置合わせ治具3に対して架設された保護治具4を含む周囲を拡大して平面的に示している。なお、図10の一点鎖線Y-Yにおける断面図は、図9(B)を参照することができる。
【0066】
変形例2では、変形例1と同様に、位置合わせ治具3における支持部3eは、枠部3bの開口部3a側に凹状に形成されている。すなわち、支持部3eは、枠部3bの開口部3a側のおもて面から-Z方向、及び、枠部3bのおもて面側の内壁面から-X方向に窪んでいる。変形例2の場合は、支持部3eは、枠部3bのおもて面側の内壁面から-X方向の窪みの奥側が曲面を成すように形成されている。これに伴い、保護治具4の梁部4aの先端部もまた曲面に合致するような形状を成している。
【0067】
このような位置合わせ治具3並びに半導体チップ25に対して保護治具4を搭載する際には、図10に示されるように、保護治具4の梁部4aを支持部3eに嵌合し、梁部4aの先端部が支持部3eの(-X方向の)奥側に合致する。さらに、保護部4bの保護面4cが半導体チップ25の主電極251を向いて、主電極251と制御電極252との間に搭載する。このようにして、保護治具4を支持部3eと半導体チップ25のおもて面との間に架設する。
【0068】
このような保護治具4でも、変形例1と同様に、凹状の支持部3eの幅方向の両側面がガイドとなり、保護治具4の梁部4aが支持部3eの当該両側面に沿って滑りながらZ方向に確実に安定して移動(摺動)することができる。梁部4aの移動に伴って、保護部4bも確実に安定してZ方向に沿って上下に移動可能となる。このため、半導体チップ25の反り方にばらつきがあり、または、外部から衝撃があっても、保護治具4が支持部3eから逸脱することがなく、確実に、接合部材27の飛散を抑制することができる。また、変形例2では、支持部3eの奥側並びに保護治具4の梁部4aの先端部が曲面を成しているために、梁部4aが支持部3eに嵌合しやすい。このため、保護治具4を位置合わせ治具3に対して容易に取り付けることができる。なお、梁部4aと支持部3eの表面とは、変形例1と同様の摩擦低減処理を施してもよい。
【0069】
[変形例3]
位置合わせ治具3及び保護治具4の変形例3について図11を用いて説明する。図11は、第1の実施の形態の変形例3の半導体装置の製造方法で用いられる保護治具を示す図である。なお、図11は、位置合わせ治具3に対して架設された保護治具4を含む周囲を拡大して示している。図11(A)は、平面図、図11(B)は、図11(A)における一点鎖線Y-Yにおける断面図をそれぞれ表している。
【0070】
変形例3では、位置合わせ治具3における支持部3eは、枠部3bの開口部3aの内壁面からX方向に垂直に(開口部3aに向かって)突出している。さらに、支持部3eは、枠部3bの内壁面に枠部3bのおもて面から-Z方向に延伸している。すなわち、支持部3eは、枠部3bの内壁面からX方向に垂直に(開口部3aに向かって)直方体状に突出している。また、変形例3でもまた、図3に示した保護治具4が用いられる。但し、変形例3では、直方体状に突出された支持部3eに対応して、保護治具4の平板状の梁部4aの先端部に平面視で凹状の窪みが形成されている。この際の梁部4aの窪みは、支持部3eに嵌合することができる大きさである。したがって、図11(A)の平面視において支持部3eのY方向の幅と、梁部4aの窪みの幅とは略等しい。また、平面視において支持部3eのX方向の厚さ(奥行の長さ)は、梁部4aの深さと略等しく、または、当該深さより長くてもよい。また、支持部3eの-Z方向の長さは、後述するように、保護治具4を位置合わせ治具3並びに半導体チップ25に対して架設した際に、梁部3eの裏面よりも下位にあればよい。
【0071】
このような位置合わせ治具3並びに半導体チップ25に対して保護治具4を架設する際には、図11に示されるように、保護治具4の梁部4aの窪みを支持部3eに嵌合し、梁部4aを支持部3eに立てかける。すなわち、梁部4aは、支持部3eに沿って上下(±Z方向)に滑りながら移動(摺動)可能に配置される。保護部4bの保護面4cを半導体チップ25の主電極251に向けて、保護部4bを主電極251と制御電極252との間に搭載する。このようにして、保護治具4を支持部3eと半導体チップ25のおもて面との間に架設する。なお、梁部4aと支持部3eの表面は、変形例1と同様の摩擦低減処理を施してもよい。
【0072】
この状態において加熱すると、保護治具4は半導体チップ25の反りに追随してZ方向に移動する。変形例3の場合には、直方体状に突出した支持部3eがガイドとなり、当該支持部3eに先端部の窪みが嵌合した保護治具4の梁部4aが支持部3eに沿って滑りながらZ方向に確実に安定して移動(摺動)することができる。梁部4aの移動に伴って、保護部4bも確実に安定してZ方向に沿って上下に移動可能となる。このため、半導体チップ25の反り方にばらつきがあり、または、外部から衝撃があっても、保護治具4が支持部3eから逸脱することがなく、確実に、接合部材27の飛散を抑制することができる。
【0073】
なお、変形例3では、位置合わせ治具3の支持部3e及び保護治具4の梁部4aは平面視で矩形状を成している場合を示している。この場合に限らず、変形例2のように曲面状、凹凸状等の形状でもよい。
【0074】
[変形例4]
位置合わせ治具3及び保護治具4の変形例4について図12を用いて説明する。図12は、第1の実施の形態の変形例4の半導体装置の製造方法で用いられる保護治具を示す図である。なお、図12は、位置合わせ治具3に対して架設された保護治具4を含む周囲を拡大して示している。図12(A)は、平面図、図12(B)は、図12(A)における一点鎖線Y-Yにおける断面図をそれぞれ表している。また、図12(A)では、保護治具4の図示を省略している。
【0075】
変形例4では、位置合わせ治具3における支持部3eは、凹部3e1と軸部3e2とを備えている。凹部3e1は、変形例1(図9を参照)の支持部3eと同様に、枠部3bのおもて面の開口部3a側に凹状に形成されている。すなわち、支持部3eは、枠部3bの開口部3a側のおもて面から-Z方向、及び、枠部3bのおもて面側の内壁面から-X方向に窪んでいる。また、軸部3e2は、当該凹部3e1の底部の開口部3a側に一体的であって、幅方向(Y方向)に形成されている。すなわち、軸部3e2は、開口縁部の辺に平行な凸部状に形成されている。なお、開口縁部の辺とは、半導体チップ25の制御電極252が配置されている外縁に対向する開口部3aの縁部である。または、軸部3e2は、鞍状であり、おもて側が半円筒状を成していてもよい。
【0076】
他方、保護治具4の梁部4aの先端部の裏面には、梁部4aの幅方向(Y方向)に沿って軸受部4a5が形成されている。すなわち、軸受部4a5は、開口縁部の辺に平行な凹状に形成されている。当該軸受部4a5は、支持部3eの軸部3e2を反転させたような形状を成している。
【0077】
このような位置合わせ治具3並びに半導体チップ25に対して保護治具4を架設する際には、図12に示されるように、保護治具4の梁部4aの軸受部4a5を支持部3eの軸部3e2に配置し、保護部4bの保護面4cが半導体チップ25の主電極251を向いて、主電極251と制御電極252との間に搭載する。すなわち、梁部4aは、支持部3eに設けられた軸部3e2を支点にして滑りながら回転(摺動)可能に配置される。このようにして、保護治具4を支持部3eと半導体チップ25のおもて面との間に架設する。なお、梁部4aと支持部3eの表面は、変形例1と同様の摩擦低減処理を施してもよい。
【0078】
この状態において加熱すると、図12で示したように、半導体チップ25に反りが生じる場合がある。保護治具4は半導体チップ25の反りに追随して軸受部4a5を支点として、図12(B)のX軸からZ軸への方向に回転する。変形例4の場合には、保護治具4の梁部4aの軸受部4a5が支持部3eの軸部3e2を滑りながら回転して、軸受部4a5を軸として反時計回りに回転する。梁部4aの回転に伴って、保護部4bも確実に安定してZ方向に沿って上下に移動可能となる。このため、半導体チップ25の反り方にばらつきがあり、または、外部から衝撃があっても、保護治具4が支持部3eから逸脱することがなく、確実に、接合部材27の飛散を抑制することができる。なお、保護部4bは支持部3eの軸部3e2を支点にして回転する場合(図12(B))においても、保護部4bの先端は上下方向に移動するので、保護治具4は上下方向に移動可能と解することができる。
【0079】
なお、支持部3eの軸部3e2は、必ずしも、凹部3e1の底面に形成されている必要はない。軸部3e2は、凹部3e1の底部に対して隙間を空けた状態で形成されていてもよい。また、支持部3eの軸部3e2と、梁部4aの軸受部4a5との形状の凹凸が逆であってもよい。つまり、軸部3e2が支持部3eの底部に凹状に形成され、軸受部4a5が梁部4aの裏面に凹状の軸部3eに嵌るような凸状に形成されてもよい。保護治具4が軸部3e2、軸受部4a5を軸にして回転することができればよい。
【0080】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、図2に示した、半導体装置20の製造方法のフローチャートのステップS12の第2接合工程について説明する。第2接合工程では、図2のステップS11で接合部材27により接合された半導体チップ25とリードフレーム26とが順に積層されたセラミックス回路基板21の裏面に放熱板28を接合部材27により接合する。そこで、半導体チップ25とリードフレーム26とが順に積層されたセラミックス回路基板21の裏面に放熱板28を接合する際に用いる製造治具セット及び第2接合工程の詳細について、図13及び図14を用いて説明する。図13は、第2の実施の形態の半導体装置の側面図である。図14は、第2の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる接合工程を示すフローチャートである。なお、図13は、セラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とにさらに放熱板28を備えて製造治具セット9が取り付けられた組み立て体1aの側面図を示している。
【0081】
第2の実施の形態は、特に、半導体チップ25、リードフレーム26が接合されたセラミックス回路基板21と放熱板28とを接合部材27で加熱接合する際に、既に接合された半導体チップ25及びリードフレーム26、セラミックス回路基板21及び半導体チップ25のそれぞれの間の接合部材27が再溶融して、接合部材27(はんだ片等)が飛散することを抑制することについて説明する。
【0082】
図13に示す組み立て体1aは、放熱板28とセラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とが収められた製造治具セット9を含んでいる。すなわち、第1の実施の形態で接合したセラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とに対して、第2の実施の形態では、さらに放熱板28を接合する。
【0083】
製造治具セット9は、位置合わせ治具3,7,12と保護治具4とベース治具6とを含む。なお、製造治具セット9は、ウェイト5を省略しているが、ウェイト5を含めてもよい。製造治具セット9は、第1の実施の形態で説明したように、それぞれ、耐熱性に優れ、線膨張係数が小さい材質で構成されている。このような材質は、例えば、カーボン、複合セラミックス材料が用いられる。
【0084】
ベース治具6は、平板状を成しており、おもて面に平面視で放熱板28が配置される。位置合わせ治具7は、平板状を成しており、開口部が形成されて、開口部を取り囲む枠部7bを備えている。また、位置合わせ治具7は、枠部7bの内壁面に開口部に沿って形成された、開口部側に突出する凸部7dを備えている。枠部7bの凸部7dまでの高さは放熱板28の厚さに対応している。したがって、ベース治具6上の放熱板28上に位置合わせ治具7が配置されて、放熱板28の外縁部が凸部7d及び枠部7bによりベース治具6に対して規制される。なお、放熱板28が冷却器である場合は、放熱板28の裏面に図13中下に凸部となる流入出及び流出口等を設けてもよい。
【0085】
位置合わせ治具12は、平板状を成しており、開口部12aが形成されて、開口部12aを取り囲む枠部12bを備えている。このような位置合わせ治具12は、放熱板28のおもて面であって、位置合わせ治具7の開口部に、凸部7dに接して配置される。この際、位置合わせ治具12の開口部12aは、放熱板28のセラミックス回路基板21の配置位置に対応する。そして、位置合わせ治具12の開口部12aにより、放熱板28のおもて面に接合部材27を介してセラミックス回路基板21が配置される。このような位置合わせ治具12の厚さは、セラミックス回路基板21の厚さと略等しい。位置合わせ治具3並びに保護治具4は、第1の実施の形態と同様である。
【0086】
このような組み立て体1aによる図2のフローチャートのステップS12の第2接合工程は以下のように行われる。まず、ベース治具6に対して放熱板28を位置合わせする位置合わせ工程を行う(図14のステップS12a)。ここでは、ベース治具6の所定の領域に放熱板28を搭載する。さらに、位置合わせ治具7をベース治具6及び放熱板28上に配置することで、放熱板28が位置合わせ治具7の凸部7dにより、ベース治具6に拘束される。放熱板28のX方向及びY方向(水平方向)への位置ずれが抑制される。このため、後の搭載工程における各部品を適切な位置に搭載することができる。さらに、位置合わせ治具7の開口部に位置合わせ治具12を搭載する。
【0087】
次いで、位置合わせ治具12の開口部12aに基づいて、放熱板28に、リードフレーム26及び半導体チップ25が順に接合されたセラミックス回路基板21を、接合部材27を介して搭載する第1搭載工程を行う(図14のステップS12b)。
【0088】
次いで、セラミックス回路基板21及び位置合わせ治具12に位置合わせ治具3を搭載して、保護治具4を位置合わせ治具3及び半導体チップ25に対して架設する架設工程を行う(図14のステップS12c)。架設工程では、位置合わせ治具3の枠部3bの裏面に形成されている凸部3dを、セラミックス回路基板21の回路パターン23の外縁部と位置合わせ治具12の枠部12bの位置合わせ領域2aの開口縁部との隙間に嵌合させる。これにより、セラミックス回路基板21は、位置合わせ治具12に対して確実に固定される。そして、第1の実施の形態と同様に、保護治具4の保護部4bの保護面4cが半導体チップ25の主電極251を向いて、主電極251と制御電極252との間に搭載される。さらに、保護治具4の梁部4aを支持部3eに支持させる。このようにして、保護治具4を支持部3eと半導体チップ25のおもて面との間に架設する。すなわち、側面視でL字状を成す保護治具4は、梁部4aが支持部3eに立てかけられて、保護部4bが半導体チップ25上に配置される。これにより、半導体チップ25の制御電極252は、保護治具4により覆われる。
【0089】
次いで、位置合わせ治具3に対して、ウェイト5を搭載する第2搭載工程を行う(図14のステップS12d)。次いで、加熱工程を行う(図14のステップS12e)。図13に示した組み立て体1aを加熱すると、放熱板28とセラミックス回路基板21との間の接合部材27が溶融する。これと共に、半導体チップ25とリードフレーム26との間の接合部材27が再溶融することがある。接合部材27が再溶融すると、第1の実施の形態の場合と同様に、接合部材27の片が飛散してしまうおそれがある。しかしながら、この場合も、保護治具4によりその飛散が抑制される。以上の第2接合工程により、半導体チップ25及びリードフレーム26が順に積層されたセラミックス回路基板21と放熱板28とを接合することができる。
【0090】
このようにして半導体装置20が構成され、また、セラミックス回路基板21が放熱板28に接合される。このようにして製造された組み立て体1aから製造治具セット9を取り外して、半導体装置20が得られる。このような半導体装置20には、接合部材27の制御電極252への飛散が抑制されて、制御電極252に対して配線部材を電気的、かつ、機械的に確実に接続することができる。
【0091】
次に、このような放熱板28にセラミックス回路基板21を接合させる際に用いられる製造治具セット9の変形例について説明する。
【0092】
[変形例]
製造治具セット9の変形例について図15を用いて説明する。図15は、第2の実施の形態の変形例の半導体装置の側面図である。なお、図15では、製造治具セット9に半導体装置20が含まれる組み立て体1bの端部側を拡大して表している。
【0093】
変形例の組み立て体1bは以下のような場合である。まず、半導体チップ25とリードフレーム26とを接合する接合部材27の飛散防止のための保護治具4(第1保護治具)を有する。セラミックス回路基板21と半導体チップ25とを接合する接合部材27の飛散防止のための保護治具(第2保護治具)を有する。さらに、セラミックス回路基板21と放熱板28とを接合する接合部材27の飛散防止のための保護治具4(第3保護治具)を有する。
【0094】
図15に示される組み立て体1bは、放熱板28とセラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とが収められた製造治具セット9とを含んでいる。製造治具セット9は、位置合わせ治具17,8と3つの保護治具4とベース治具6とを含む。なお、製造治具セット9は、ウェイト5を省略しているが、ウェイト5を含めてもよく、位置合わせ治具8に搭載される。製造治具セット9は、第1の実施の形態で説明したように、それぞれ、耐熱性に優れ、線膨張係数が小さい材質で構成されている。このような材質は、例えば、カーボン、複合セラミックス材料が用いられる。
【0095】
位置合わせ治具17は、平板状を成しており、開口部17aが形成されて、開口部を取り囲む枠部17bを備えている。また、位置合わせ治具17は、枠部17bの裏面側に形成された凸部17dを備えていてもよい。そして、位置合わせ治具17の枠部17bの内壁面には開口部17aに突出して形成された支持部17eを備えている。支持部17eは、保護治具4が配置されるように、図3で示した支持部4aと同様の形状を成して構成されている。このような位置合わせ治具17のおもて面は、放熱板28上のセラミックス回路基板21上の半導体チップ25のおもて面よりも上位に位置する。このような位置合わせ治具17をベース治具6及び放熱板28上に配置して、枠部17bの凸部17dで放熱板28を規制する。
【0096】
次いで、保護治具4(第3保護治具)を、位置合わせ治具17及び放熱板28に対して架設する。すなわち、これまで説明したように、保護治具4の保護部4bを、保護部4bの保護面4cがセラミックス回路基板21を向いて搭載する。この際、保護部4bはセラミックス回路基板21に近い方に搭載される。さらに、保護治具4の梁部4aが支持部17eに支持される。このようにして、保護治具4を支持部17eと放熱板28のおもて面との間に架設する。
【0097】
位置合わせ治具8は、平板状であって、開口部8aが形成されて、開口部8aを取り囲む枠部8bを備える。位置合わせ治具8は、枠部8bの裏面に形成された、開口部8aを取り囲み、下方に突出する凸部8dを備えている。また、凸部8dの開口部8aに面する内壁面に開口部8a側に突出する支持部8e1が形成されている。支持部8e1は、保護治具4が配置されるように、図3で示した支持部4aと同様の形状を成して構成されている。但し、支持部8e1は、支持部8e1の先端部が半導体チップ25に近接するように半導体チップ25に向かって延伸している。さらに、枠部8bの開口部8aに面する内壁面に開口部8a側に突出する支持部8e2が形成されている。支持部8e1,8e2は、保護治具4が配置されるように、図3で示した支持部4aと同様の形状を成して構成されている。但し、支持部8e1は、支持部8e1の先端部が半導体チップ25に近接するように半導体チップ25に向かって延伸している。
【0098】
このような位置合わせ治具8を位置合わせ治具17及びセラミックス回路基板21に搭載する。すなわち、位置合わせ治具8の枠部8bの裏面が位置合わせ治具17のおもて面に配置され、凸部8dがセラミックス回路基板21の回路パターン23の外縁部と絶縁板22の外縁部との間に配置される。次いで、保護治具4(第2保護治具)を、位置合わせ治具8及びセラミックス回路基板21に対して搭載する。すなわち、保護治具4の保護部4bを、保護部4bの保護面4cが半導体チップ25を向いて、保護治具4を搭載する。保護治具4の梁部4aを支持部8e1に支持させる。この際、支持部8e1を長くして、支持部8e1に梁部4aを支持させた保護治具4の保護部4bを半導体チップ25に近接させることができる。このようにして、保護治具4を支持部8e1とセラミックス回路基板21のおもて面との間に架設する。また、第1の実施の形態と同様に、保護治具4(第1保護治具)を、位置合わせ治具8の支持部8e2及び半導体チップ25に対しても架設する。
【0099】
そして、加熱すると、セラミックス回路基板21と放熱板28との間の接合部材27が溶融する。これと共に、半導体チップ25及びリードフレーム26の間、半導体チップ25及びセラミックス回路基板21の間のそれぞれの接合部材27が再溶融により接合部材27の片が飛散しても、保護治具4によりその飛散が抑制される。
【0100】
なお、変形例の製造治具セット9は、放熱板28とセラミックス回路基板21と半導体チップ25とリードフレーム26とを接合部材27により一度に接合する場合にも用いることができる。また、この場合に限らず、各部品を接合部材27によりそれぞれ別々に接合してもよい。
【0101】
セラミックス回路基板21と放熱板28とを接合部材27を介して接合する場合、位置合わせ治具17の支持部17eに保護治具4(第3保護治具)を架設し、加熱処理して接合させることができる。
【0102】
また、放熱板28を接合されたセラミックス回路基板21に接合部材27を介して半導体チップ25を接合する場合は、図15に示すような少なくとも支持部8e1を有する位置合わせ治具8を配置する。そして、支持部8e1に保護治具4(第2保護治具)を架設して加熱接合することができる。
【0103】
また、半導体チップ25にリードフレーム26を接合部材27を介して接合する場合は、支持部8e2を有する位置合わせ治具8に保護治具4(第1保護治具)を架設して加熱接合することができる。
【0104】
以上により、セラミックス回路基板21が放熱板28に接合される。このようにして製造された組み立て体1bから製造治具セット9を取り外すと、半導体装置20が得られる。このような半導体装置20には、接合部材27の制御電極252への飛散が抑制されて、制御電極252に対して配線部材を電気的、かつ、機械的に確実に接続することができる。
【0105】
なお、第2の実施の形態における支持部3e,8e1,8e2,17e並びに保護治具4として、第1の実施の形態で説明した変形例1~4を適用することができる。また、第1の実施の形態の位置合わせ治具3に対する支持部3e及び保護治具4は、セラミックス回路基板21及び半導体チップ25の間の接合部材27に対しても、第2の実施の形態と同様に、設けてもよい。
【0106】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態では、第1,第2の実施の形態とは異なる保護治具の場合を例に挙げて説明する。まず、第3の実施の形態で用いられるセラミックス回路基板21の一例について図16を用いて説明する。図16は、第3の実施の形態の半導体装置の平面図である。このセラミックス回路基板21は、第1,第2の実施の形態と同様の構成を成している。但し、第3の実施の形態のセラミックス回路基板21は、図16に示されるように、絶縁板22のおもて面に回路パターン23a,23b,23cが形成されている。
【0107】
回路パターン23aは、絶縁板22のX方向の端部に沿って形成されて、絶縁板22の-Y方向の端部で、平面視でU字状に曲がって絶縁板22のおもて面に+Y方向であって中心を延伸している。また、回路パターン23aには、半導体チップ25aがY方向に並んで設けられている。
【0108】
回路パターン23bは、絶縁板22のおもて面に、平面視でU字状の回路パターン23aの間をY方向に延伸して形成されている。回路パターン23cは、絶縁板22の-X方向の端部に沿ってY方向に延伸して形成されている。また、回路パターン23cには、半導体チップ25bがY方向に並んで設けられている。なお、半導体チップ25a,25bは、半導体チップ25と同様である。
【0109】
また、セラミックス回路基板21及び半導体チップ25a,25bの主電極はそれぞれリードフレーム26a,26bにより電気的に接続されている。リードフレーム26aは、半導体チップ25aの主電極と回路パターン23bとを電気的、かつ、機械的に接続する。リードフレーム26bは、半導体チップ25bの主電極と回路パターン23aとを電気的、かつ、機械的に接続する。
【0110】
次に、このようなセラミックス回路基板21が含まれる半導体装置20の製造方法について第3の実施の形態の製造方法に基づいて図17図20を用いて説明する。図17及び図19は、第3の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる搭載工程を示す平面図である。図18及び図20は、第3の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる搭載工程を示す断面図である。なお、図17及び図18は、第1の実施の形態の図4のステップS11b(図6)に対応する工程である。また、図19及び図20は、第1の実施の形態の図3のステップS11d(図7)に対応する工程である。また、図18及び図20は、図17及び図19の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。なお、これは、半導体チップ25とリードフレーム26とを接合する際、接合部材27の飛散を防止するための第1保護治具を用いた例である。
【0111】
第1の実施の形態のフローチャートと同様にステップS11a~S11cが行われる。第3の実施の形態では、位置合わせ治具3が位置合わせ治具2に搭載される(図18を参照)。位置合わせ治具3は、平板状を成し、平面視で半導体チップ25a,25b及びリードフレーム26a,26bに対応する箇所に開口部3aがそれぞれ形成されている。位置合わせ治具3が位置合わせ治具2に搭載されると、図17に示されるように、開口部3aから半導体チップ25a,25b及びリードフレーム26a,26bが表出している。さらに、位置合わせ治具3は開口部3aに支持部3eが形成されている。支持部3eは、開口部3aの半導体チップ25a,25bの辺に対応する辺の一部に形成されている。このような支持部3eは、図17及び図18に示したように、枠部3bの開口部3a側のおもて面から-Z方向、及び、枠部3bのおもて面側の内壁面から-X方向に窪んでいる。なお、第3の実施の形態では、支持部3eは、開口部3aの角部に形成されている。
【0112】
次いで、保護治具4を位置合わせ治具3及び半導体チップ25に対して架設する架設工程を行う(図3のステップS11d)。この際、用いられる保護治具4は、図19及び図20に示されるように、保護部4bを含む。保護部4bは、位置合わせ治具3にリードフレーム26a,26bが配置された際の、平面視で、位置合わせ治具3の開口部3aの内壁面とリードフレーム28が配置される領域との間の隙間を埋設するブロック状を成している。なお、ブロック状の保護部4bは、平面視で、U字状またはL字状を成している。すなわち、保護部4bは、リードフレーム26a,26bと開口部3aの内壁面との隙間を内壁面ごとに埋設する直方体がL字状またはU字状に接続されたものである。また、保護治具4は、保護部4bに形成されている梁部4aをさらに有する。梁部4aは、保護部4bのおもて面と同一平面を成していてもよく、保護部4bから外側に突出している。梁部4aは、保護部4bがリードフレーム26a,26bと開口部3aの内壁面との隙間に配置された際に、支持部3aに対応する保護部4bの箇所に形成されている。したがって、架設工程では、保護治具4の保護部4bがリードフレーム26a,26bと開口部3aの内壁面との間に嵌るように半導体チップ25a,25b上に搭載される。また、この際、梁部4aが支持部3eに支持される。
【0113】
また、保護治具4の保護部4bは、半導体チップ25a,25bに対するリードフレーム26a,26bの接合箇所に応じて設けられる。例えば、図19の左上の開口部3aに対して、保護部4bはリードフレーム26bの周囲の半導体チップ25bの直交する2辺に対応して配置されている。また、図19の左下の開口部3aに対して、保護部4bはリードフレーム26bの周囲の半導体チップ25bの3辺に対応して配置されている。
【0114】
次いで、ウェイト5を搭載し(図3のステップS11e)、加熱工程を行う(図3のステップS11f)。この際、保護治具4の保護部4bにより半導体チップ25とリードフレーム26との間の接合部材27の片の制御電極252への飛散が抑制される。
【0115】
さらに、半導体チップ25に反りが生じても、保護治具4は、支持部3eと半導体チップ25のおもて面との間に単に架設されているに過ぎない。保護部4bはリードフレーム26a,26bと開口部3aの内壁面との間を上下(±Z方向)に滑りながら移動(摺動)可能に配置されている。したがって、保護治具4は、半導体チップ25の反りに追随して、Z方向に持ち上げられつつ、接合部材27の片の制御電極252への飛散を抑制することができる。
次に、このような製造治具セット9に含まれる保護治具4の変形例について説明する。
【0116】
[変形例]
保護治具4の変形例について図21を用いて説明する。図21は、第3の実施の形態の変形例の半導体装置の製造方法で用いられる保護治具を示す図である。なお、図21は、図19に対応している。すなわち、保護治具4の保護部4bは、リードフレーム26a,26bと開口部3aのそれぞれの内壁面との隙間に対応して複数に分割されている。例えば、図21の左下の開口部3aに対して、保護部4bはリードフレーム26bと開口部3aの内壁面の3辺の隙間に対してブロック状の保護部材4b1,4b2,4b3に分割されてそれぞれ配置されている。すなわち、保護部4bは、開口部3aの開口縁部の各辺に対応して分割されて、リードフレーム26bと開口部3aの内壁面の各隙間に配置される。
【0117】
また、保護部4bの保護部材4b1,4b2,4b3には、保護部材4b1,4b2,4b3のおもて面と同一平面を成して、保護部材4b1,4b2,4b3から外側に突出する梁部4a1,4a2,4a3がそれぞれ形成されている。さらに、位置合わせ治具3の開口部3aの開口縁部には、保護部材4b1,4b2,4b3がリードフレーム26a,26bと開口部3aの内壁面との隙間にそれぞれ配置された際に、梁部4a1,4a2,4a3に対応する支持部がそれぞれ形成されている。保護部材4b1,4b2,4b3はリードフレーム26a,26bと開口部3aの内壁面との間を上下(±Z方向)に滑りながら移動(摺動)可能に配置されている。また、図21の左上は、保護部4bがリードフレーム26bと開口部3aの内壁面の2辺の隙間に対して分割されてそれぞれ配置されている場合である。
【0118】
この場合も、保護治具4の保護部4bにより半導体チップ25とリードフレーム26との間の接合部材27の片の制御電極252への飛散が抑制される。また、半導体チップ25に反りが生じても、保護治具4は、支持部3eと半導体チップ25のおもて面との間に単に架設されているに過ぎない。特に、当該変形例では、保護部4bが分割されているために、半導体チップ25a,25bの反りに対して追随しやすく、また、図19の場合に比べると、持ち上げられやすい。したがって、保護治具4は、半導体チップ25の反りに追随して、Z方向に持ち上げられつつ(上下方向に移動可能)、接合部材27の片や粒子の制御電極252への飛散を抑制することができる。なお、制御電極252に留まらず、半導体チップ25のおもて面への飛散を防止することができる。
【符号の説明】
【0119】
1,1a,1b 組み立て体
2,3,7,8,12,17 位置合わせ治具
2a 位置合わせ領域
2b,3b,5b,7b,8b,12b,17b 枠部
2c 底部
3a,5a,8a,12a,17a 開口部
3c,3e1 凹部
3d,5d,7d,8d,17d 凸部
3e,8e1,8e2,17e 支持部
3e2 軸部
4 保護治具
4a,4a1,4a2,4a3 梁部
4a5 軸受部
4b 保護部
4b1,4b2,4b3 保護部材
4c 保護面
5 ウェイト
6 ベース治具
9 製造治具セット
20 半導体装置
21 セラミックス回路基板
22 絶縁板
23,23a,23b,23c 回路パターン
24 金属板
25,25a,25b 半導体チップ
26,26a,26b リードフレーム
27 接合部材
28 放熱板
251 主電極
252 制御電極
図1
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図17
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図19
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図21