IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

特開2022-139512植物体におけるグルタチオン産生促進方法、植物体の成長を促進する方法及び植物体用グルタチオン産生促進剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139512
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】植物体におけるグルタチオン産生促進方法、植物体の成長を促進する方法及び植物体用グルタチオン産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/06 20060101AFI20220915BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20220915BHJP
   A01N 57/20 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A01G7/06 A
A01P21/00
A01N57/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039934
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 豊嗣
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 雄希
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】酒井 悠
(72)【発明者】
【氏名】河合 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】田邉 昌子
【テーマコード(参考)】
2B022
4H011
【Fターム(参考)】
2B022EA01
2B022EA10
2B022EB06
4H011AB03
4H011BB17
4H011DA13
4H011DD03
4H011DE15
(57)【要約】
【課題】植物体内におけるグルタチオンの産生を促進する新規な方法、及び新規なグルタチオン産生促進剤を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物等からなる群より選択される少なくとも1種を植物体に投与する工程を有する、植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法。
【化1】
(式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、又は1価の炭化水素基を示し、前記炭化水素基は、ハロゲン原子等に置換されていてもよく、XCは、-COOH、又は-COO-を示し、XNは、-NH2、又は-NH3 +を示し、nは0~10の整数を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を植物体に投与する工程を有する、
前記植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法。
【化1】
(式(1)中、
1、及びR2は、各々独立に、水素原子、又は1価の炭化水素基を示し、前記炭化水素基は、ハロゲン原子、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-CN、-NO2、-NHCOR3、-OR3、-SR3、-OCOR3、-SO23、及び-SO2NR3 2からなる群より選択される少なくとも1種の基に置換されていてもよく、R3は、各々独立に、水素原子、又は1価の脂肪族炭化水素基を示し、
Cは、-COOH、又は-COO-を示し、
Nは、-NH2、又は-NH3 +を示し、
nは0~10の整数を示す。)
【請求項2】
前記投与が、前記化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む液体を前記植物体の少なくとも一部に対して散布することにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記投与が、前記化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む液体に前記植物体の少なくとも一部を浸漬することにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を植物体に適用することにより、前記植物体の成長を促進する方法。
【請求項5】
前記成長が、開花、又は発芽である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記成長が、茎、根、又は果実の、増加及び/又は肥大化である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
下記式(1)で表される化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、
植物体用のグルタチオン産生促進剤。
【化2】
(式(1)中、
1、及びR2は、各々独立に、水素原子、又は1価の炭化水素基を示し、前記炭化水素基は、ハロゲン原子、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-CN、-NO2、-NHCOR3、-OR3、-SR3、-OCOR3、-SO23、及び-SO2NR3 2からなる群より選択される少なくとも1種の基に置換されていてもよく、R3は、各々独立に、水素原子、又は1価の脂肪族炭化水素基を示し、
Cは、-COOH、又は-COO-を示し、
Nは、-NH2、又は-NH3 +を示し、
nは0~10の整数を示す。)
【請求項8】
前記植物体の成長を促進するための、請求項7記載のグルタチオン産生促進剤。
【請求項9】
前記成長が、開花、又は発芽である、請求項8記載のグルタチオン産生促進剤。
【請求項10】
前記成長が、茎、根、又は果実の、増加又は肥大化である、請求項8記載のグルタチオン産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体におけるグルタチオン産生促進方法、植物体の成長を促進する方法及び植物体用グルタチオン産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、及びグリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドであり、動植物及び微生物等のような多くの生体内に存在する化合物である。特に植物体において、グルタチオンは様々な機能を有することが知られており、例えば、植物体の成長の促進等に寄与することが報告されている。
【0003】
特許文献1には、グルタチオンからなる植物生長調整補助剤が、植物体の一部を細胞分裂して誘導した組織塊であるカルスを効率よく短期間に再分化させ、カルスの発根を促進することが開示されている。特許文献2には、グルタチオンを含む組成物が、栽培植物の種子の数・花の数を著しく増加させることが開示されている。特許文献3には、塊茎又は塊根を形成する植物の着蕾期にグルタチオンを投与すると、該植物の生長が顕著に促進されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4329410号公報
【特許文献2】特許第5452022号公報
【特許文献3】特開2018-115116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、植物体中のグルタチオンの濃度及び/又は含有量を上昇させることは、植物体の成長の促進等の観点から好ましい。したがって、植物体中のグルタチオンの濃度及び/又は含有量を上昇させる方法を提供することが望まれている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、グルタチオンは水溶液中では不安定であるため、特許文献1~3に記載されているような、植物体にグルタチオンを外部から直接投与する方法は望ましくない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、植物体内におけるグルタチオンの産生を促進する新規な方法、及び新規なグルタチオン産生促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討した。その結果、特定の化合物、及びその塩が、植物体内におけるグルタチオンの産生を促進することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記式(1)で表される化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を植物体に投与する工程を有する、
前記植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法。
【化1】
(式(1)中、
1、及びR2は、各々独立に、水素原子、又は1価の炭化水素基を示し、前記炭化水素基は、ハロゲン原子、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-CN、-NO2、-NHCOR3、-OR3、-SR3、-OCOR3、-SO23、及び-SO2NR3 2からなる群より選択される少なくとも1種の基に置換されていてもよく、R3は、各々独立に、水素原子、又は1価の脂肪族炭化水素基を示し、
Cは、-COOH、又は-COO-を示し、
Nは、-NH2、又は-NH3 +を示し、
nは0~10の整数を示す。)
[2]
前記投与が、前記化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む液体を前記植物体の少なくとも一部に対して散布することにより行われる、[1]記載の方法。
[3]
前記投与が、前記化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む液体に前記植物体の少なくとも一部を浸漬することにより行われる、[1]記載の方法。
[4]
[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法を植物体に適用することにより、前記植物体の成長を促進する方法。
[5]
前記成長が、開花、又は発芽である、[4]記載の方法。
[6]
前記成長が、茎、根、又は果実の、増加及び/又は肥大化である、[4]記載の方法。
[7]
下記式(1)で表される化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、
植物体用のグルタチオン産生促進剤。
【化2】
(式(1)中、
1、及びR2は、各々独立に、水素原子、又は1価の炭化水素基を示し、前記炭化水素基は、ハロゲン原子、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-CN、-NO2、-NHCOR3、-OR3、-SR3、-OCOR3、-SO23、及び-SO2NR3 2からなる群より選択される少なくとも1種の基に置換されていてもよく、R3は、各々独立に、水素原子、又は1価の脂肪族炭化水素基を示し、
Cは、-COOH、又は-COO-を示し、
Nは、-NH2、又は-NH3 +を示し、
nは0~10の整数を示す。)
[8]
前記植物体の成長を促進するための、[7]記載のグルタチオン産生促進剤。
[9]
前記成長が、開花、又は発芽である、[8]記載のグルタチオン産生促進剤。
[10]
前記成長が、茎、根、又は果実の、増加又は肥大化である、[8]記載のグルタチオン産生促進剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、植物体内におけるグルタチオンの産生を促進する新規な方法、及び新規なグルタチオン産生促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
[グルタチオン産生促進方法]
本実施形態の植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法は、下記式(1)で表される化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を植物体に投与する工程を有する。
【0013】
【化3】
ここで、式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、又は1価の炭化水素基を示し、かかる炭化水素基は、ハロゲン原子、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-CN、-NO2、-NHCOR3、-OR3、-SR3、-OCOR3、-SO23、及び-SO2NR3 2からなる群より選択される少なくとも1種の基に置換されていてもよく、R3は、各々独立に、水素原子、又は1価の脂肪族炭化水素基を示し、XCは、-COOH、又は-COO-を示し、XNは、-NH2、又は-NH3 +を示し、nは0~10の整数を示す。
【0014】
本発明者らは、上記式(1)で表される化合物、及びその塩(以下、これらを総称して、「本化合物等」という。)からなる群より選択される少なくとも1種を植物体に投与すると、その植物体内において、グルタチオンの産生が促進され、その結果、当該植物体中におけるグルタチオンの含有量/濃度が増加することを見出した。本化合物等を投与した際に植物体内におけるグルタチオンの産生が促進される要因は明らかにされていないが、本化合物等を植物体に投与すると、本化合物等は、植物体においてグルタチオン分解酵素の阻害剤として働き、瞬間的なグルタチオン濃度の上昇及びかかる上昇に起因するグルタチオン産生のフィードバック抑制を誘導することで、植物体の細胞を活性化する結果、グルタチオンの産生を促進すると本発明者らは考えている。ただし、その要因はこれに限られない。
【0015】
本明細書中、「植物体におけるグルタチオンの産生を促進する」とは、通常ではグルタチオンが検出されない植物体に検出可能な程度の濃度又は含有量のグルタチオンを産生させること、植物体におけるグルタチオンの濃度又は含有量を上昇させること、並びに、本実施形態の方法を適用しない場合と比較して植物体におけるグルタチオンの濃度又は含有量が特定の値に到達するまでの時間を短縮することの全てを包含する。
【0016】
(化合物)
上記式(1)中、R1、及びR2は、各々独立に、水素原子、又は1価の炭化水素基を示し、かかる炭化水素基は、ハロゲン原子、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-CN、-NO2、-NHCOR3、-OR3、-SR3、-OCOR3、-SO23、及び-SO2NR3 2からなる群より選択される少なくとも1種の基に置換されていてもよく、R3は、各々独立に、水素原子、又は1価の脂肪族炭化水素基を示し、XCは、-COOH、又は-COO-を示し、XNは、-NH2、又は-NH3 +を示す。
【0017】
Cは、-COOH、及び-COO-から、XNは、-NH2、及び-NH3 +から各々独立に選択される。XC、及びXNの好ましい組み合わせは、XCが-COOHであり、XNが-NH2である場合、及びXCが-COO-であり、XNが-NH3 +である場合である。XC、及びXNの好ましい態様は、本化合物等の存在する環境により異なり、特に環境のpHに依存する。
【0018】
1、及びR2における1価の炭化水素基には、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、及び1価の芳香族炭化水素基、並びに、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基のうち少なくとも2種の基が単結合を介して結合した1価の基が含まれる。
【0019】
1、及びR2における1価の脂肪族炭化水素基の炭素数としては、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上3以下が更に好ましい。1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、及びドデシル基のようなアルキル基;ビニル基、アリル基、及び1-ブテニル基のようなアルケニル基;並びに、エチニル基、及びプロピニル基のようなアルキニル基が挙げられる。
【0020】
1、及びR2における1価の脂環式炭化水素基の炭素数としては、3以上15以下が好ましく、4以上10以下がより好ましく、5以上8以下が更に好ましい。1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基のようなシクロアルキル基;シクロペンテニル基、及びシクロへキセニル基のようなシクロアルケニル基;並びに、パーヒドロナフタレン-1-イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル基、及びテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン-3-イル基のような橋かけ環式炭化水素基が挙げられる。
【0021】
1、及びR2における1価の芳香族炭化水素基の炭素数としては、6以上14以下が好ましく、6以上10以下がより好ましい。1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、及びナフチル基が挙げられる。
【0022】
1、及びR2における脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基のうち少なくとも2種の基が単結合を介して結合した1価の基としては、上記の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基において、水素原子が上記の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基の少なくとも1種に置換された基が挙げられる。すなわち、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した1価の基としては、水素原子が上記の1価の脂環式炭化水素基に置換された上記の1価の脂肪族炭化水素基、及び水素原子が上記の1価の脂肪族炭化水素基に置換された上記の1価の脂環式炭化水素基が挙げられる。水素原子が上記の1価の脂環式炭化水素基に置換された上記の1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、及び2-シクロヘキシルエチル基のようなシクロアルキル置換アルキル基が挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、水素原子が上記の1価の芳香族炭化水素基に置換された上記の1価の脂肪族炭化水素基であるアラルキル基、及び水素原子が上記の1価の脂肪族炭化水素基に置換された上記の1価の芳香族炭化水素基である脂肪族炭化水素置換アリール基が挙げられる。
【0023】
1、及びR2における1価の炭化水素基としては、1価の脂肪族炭化水素基、及び1価の芳香族炭化水素基が好ましく、水素原子が1価の脂肪族炭化水素基に置換された1価の芳香族炭化水素基、及び水素原子が1価の脂肪族炭化水素基に置換された1価の脂環式炭化水素基も好ましい。その中でも、R1、及びR2における1価の炭化水素基としては、1価の脂肪族炭化水素基、及びアルキル置換アリール基(芳香族環の水素原子の1つ以上をアルキル基に置換したものから水素原子を1つ取り除いた1価の基)がより好ましい。
【0024】
3における1価の脂肪族炭化水素基の炭素数としては、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上3以下が更に好ましい。R3における1価の脂肪族炭化水素基の例示は、R1、及びR2における1価の脂肪族炭化水素基として例示したものと同じである。
【0025】
3における1価の脂肪族炭化水素基は、無置換であることが好ましいが、置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ヒドロキシ基、置換オキシ基(例えば、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数7~16のアラルキルオキシ基、及び炭素数1~4のアシルオキシ基等)、カルボキシ基、置換オキシカルボニル基(例えば、炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、炭素数6~10のアリールオキシカルボニル基、及び炭素数7~16のアラルキルオキシカルボニル基等)、置換又は無置換のカルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル等の炭素数1~4のアルキル置換カルバモイル、及びフェニルカルバモイル基等の炭素数6~10のアリール置換カルバモイル基)、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(例えば、無置換のアミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、及びジエチルアミノ基等の炭素数1~4のモノ又はジアルキルアミノ基;1-ピロリジニル、ピペリジノ、及びモルホリノ基等の5~8員の環状アミノ基;アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、及びベンゾイルアミノ基等の炭素数1~10のアシルアミノ基;ベンゼンスルホニルアミノ、及びp-トルエンスルホニルアミノ基等のスルホニルアミノ基)、スルホ基、及び1価の複素環式基等が挙げられる。また、上記のヒドロキシ基やカルボキシ基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。
【0026】
3における1価の脂肪族炭化水素基の置換基としての複素環式基に含まれる複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、環を構成する原子に炭素原子と少なくとも1種のヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子)を有する3~10員環、及びこれらの縮合環を挙げることができる。上記複素環は、好ましくは4~6員環である。複素環としては、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環等の3員環;オキセタン環等の4員環;フラン環、テトラヒドロフラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、及びγ-ブチロラクトン環等の5員環;4-オキソ-4H-ピラン環、テトラヒドロピラン環、及びモルホリン環等の6員環;ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、4-オキソ-4H-クロメン環、クロマン環、及びイソクロマン環等の縮合環;並びに、3-オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン-2-オン環、及び3-オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン-2-オン環等の橋かけ環)、ヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環(例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、及びチアジアゾール環等の5員環;4-オキソ-4H-チオピラン環等の6員環;並びに、ベンゾチオフェン環等の縮合環等)、並びに、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、及びトリアゾール環等の5員環;イソシアヌル環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、及びピペラジン環等の6員環;並びに、インドール環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、及びプリン環等の縮合環等)が挙げられる。なお、1価の複素環式基とは、上記の複素環から1個の水素原子を除いた基を意味する。
【0027】
1、及びR2における1価の炭化水素基が、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-NHCOR3、-OR3、-SR3、-OCOR3、-SO23、及び-SO2NR3 2からなる群より選択される少なくとも1種の基に置換されている場合、R3が当該1価の炭化水素基と互いに結合することにより、環を形成していてもよい。
【0028】
1、及びR2における1価の炭化水素基が置換基により置換されている場合、置換基としては、ハロゲン原子、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-NHCOR3、-OR3、及び-OCOR3が好ましく、-COOR3、-CONR3 2、及び-OR3がより好ましく、-COOR3が更に好ましく、-COOHが特に好ましい。
【0029】
1、及びR2は、各々独立に、水素原子、及び上述した1価の炭化水素基から選択される。R1、及びR2の組み合わせは特に限定されないが、-OR1、及び-OR2の組み合わせとしては、下記の(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)又は(vi)の組み合わせが好ましい。特に、上記式(1)中、後述するnが0以上2以下の場合は、下記の(i)、(ii)、(iii)、(iv)又は(v)の組み合わせが好ましく、下記の(iii)又は(v)の組み合わせがより好ましい。nが3以上の場合は、下記の(vi)の組み合わせが好ましい。
【0030】
(i)-OR4で表される基(R4は置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環式基を示す。)と下記式(i-1)で表される基との組み合わせ
【化4】
ここで、式(i-1)中、R5、R6、及びR7は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、-COOR8、-CONR8 2、-COR8、-OCOR8、-CF3、-CN、-SR8、-SOR8、-SO28、-SO2NR8 2、及び-NO2からなる群より選択される基を示す。R8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、及びアルケニル基からなる群より選択される基を示す。R5、R6、及びR7から選択される2つの基は互いに結合して、環を形成していてもよい。
【0031】
4、R5、R6、及びR7における1価の芳香族炭化水素基、1価の複素環式基、及び1価の脂肪族炭化水素基の例示は、R1、R2、又はR3において1価の芳香族炭化水素基、1価の複素環式基、及び1価の脂肪族炭化水素基として例示したものと同じである。また、R4、R5、R6、及びR7における1価の芳香族炭化水素基、1価の複素環式基、及び1価の脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基の例示は、R3において脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として例示したものと同じである。R8におけるアルキル基、及びアルケニル基の例示は、R1、及びR2においてアルキル基、及びアルケニル基として例示したものと同じである。
【0032】
(ii)下記式(ii-1)で表される基と下記式(ii-2)で表される基との組み合わせ
【化5】
ここで、式(ii-1)中、R9は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、R10は水素原子又は下記式(ii-1-1)で表される基である。
【化6】
ここで、式(ii-1-1)中、R11は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、n1は0以上4以下の整数であり、n2は0又は1であり、n3は0以上4以下の整数である。n1、n2及びn3から選択される2以上は、同一であっても異なっていてもよい。X1はアミド結合又はアルケニレン基を示し、X2は-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-CN、-NO2、-NHCOR3、-OR3、-SR3、-OCOR3、-SO23、及び-SO2NR3 2からなる群より選択される基を示す。ただし、R3は上記と同義である。
【化7】
ここで、式(ii-2)中、Z1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ハロゲン原子、-COOR8、-CONR8 2、-COR8、-OCOR8、-CF3、-CN、-SR8、-SOR8、-SO28、-SO2NR8 2、及び-NO2からなる群より選択される基を示す。ただし、R8は上記と同義である。Z2は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-CN、-NO2、-NHCOR3、-OR3、-SR3、-OCOR3、-SO23、及び-SO2NR3 2からなる群より選択される基を示す。ただし、R3は上記と同義である。Z1とZ2は互いに結合して、環を形成していてもよい。
【0033】
9におけるアルキル基、及びアリール基の例示は、R1、及びR2においてアルキル基、及びアリール基として例示したものと同じであり、Z1、及びZ2におけるアルキル基、及びアルケニル基の例示は、R1、及びR2においてアルキル基、及びアルケニル基として例示したものと同じである。R9、及びZ2が有していてもよい置換基の例示は、R3において脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として例示したものと同じである。
【0034】
1におけるアルケニレン基としては、R1、及びR2においてアルケニル基として例示したものから、更に水素原子を1つ取り除いた2価の基が挙げられる。Z1におけるアルコキシ基、及びアルケニルオキシ基としては、R1、及びR2においてアルキル基、及びアルケニル基として例示したものに由来するアルコキシ基、及びアルケニルオキシ基が挙げられる。例えば、メチル基に由来するアルコキシ基とは、メトキシ基を意味し、ビニル基に由来するアルケニルオキシ基とは、ビニルオキシ基を意味する(以下同様。)。
【0035】
(iii)置換基を有していてもよいアルコキシ基と下記式(iii-1)、(iii-2)、(iii-3)及び(iii-4)(以下、「式(iii-1)~(iii-4)」と表記する。)で表される基から選択される基との組み合わせ(中でも、置換基を有していてもよいアルコキシ基と下記式(iii-1)で表される基との組み合わせが好ましい。)
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
ここで、式(iii-1)~(iii-4)中、Z1、及びZ2は上記と同義である。Z1とZ2は互いに結合して、環を形成していてもよい。式(iii-3)及び(iii-4)中、R12は水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。
【0036】
置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、R1、及びR2においてアルキル基、及びアルケニル基として例示したものに由来するアルコキシ基、及びアルケニルオキシ基が挙げられる。また、かかるアルコキシ基が有していてもよい置換基の例示は、R3において脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として例示したものと同じである。置換基を有していてもよいアルコキシ基は、好ましくは置換基を有していないものであり、アルコキシ基が置換されていない場合、好ましい炭素数は1~3である。すなわち、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、及びプロピルオキシ基が好ましい。
【0037】
式(iii-1)~(iii-4)中、Z1は水素原子、-COOR8、-CONR8 2-SO28、又は-SO2NR8 2であることが好ましく、水素原子、又は-COOR8であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。式(iii-1)~(iii-4)中、Z2は置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、置換基を有する炭素数1~5のアルキル基であることがより好ましい。この場合の置換基としては、ハロゲン原子、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-NHCOR3、-OR3、及び-OCOR3が好ましく、-COOR3、-CONR3 2、及び-OR3がより好ましく、-COOR3が更に好ましく、-COOHが特に好ましい。中でも、式(iii-1)~(iii-4)中、Z2は1つ又は2つの-COOHに置換されたメチル基、エチル基、又はプロピル基であると好ましい。
【0038】
(iv)-OR1と-OR2が、同一又は異なって、下記式(iv-1)で表される基である組み合わせ
【化12】
ここで、式(iv-1)中、Z1、及びZ2は上記と同義である。Z1とZ2は互いに結合して、環を形成していてもよい。
【0039】
(v)-OR1及び-OR2がいずれもヒドロキシ基である組み合わせ
【0040】
(vi)ヒドロキシ基と置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素オキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)との組み合わせ
【0041】
(vi)の組み合わせにおける脂肪族炭化水素オキシ基を構成する脂肪族炭化水素基の例示は、R1、及びR2において脂肪族炭化水素基として例示したものと同じである。
【0042】
1、及びR2のより好ましい態様の一例としては、R1、及びR2が、各々独立に、水素原子、炭素数が1以上3以下の無置換のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、及びカルボキシメチル基置換フェニル基である場合が挙げられる。R1、及びR2の更に好ましい例としては、各々独立に、水素原子、炭素数が1以上3以下の無置換のアルキル基、及びカルボキシメチル基置換フェニル基が挙げられる。上記のトリル基としては、o-トリル基、m-トリル基、及びp-トリル基のいずれも好ましいが、m-トリル基が一層好ましい。上記のカルボキシメチル基置換フェニル基としては、2-カルボキシメチルフェニル基、3-カルボキシメチルフェニル基、及び4-カルボキシメチルフェニル基のいずれも好ましいが、3-カルボキシメチルフェニル基が一層好ましい。
【0043】
1とR2との組み合わせは、水素原子と水素原子との組み合わせであってもよく、水素原子と炭素数が1以上3以下の無置換のアルキル基との組み合わせであってもよく、炭素数が1以上3以下の無置換のアルキル基と炭素数が1以上3以下の無置換のアルキル基との組み合わせであってもよく、水素原子とカルボキシメチル基置換フェニル基との組み合わせであってもよく、炭素数が1以上3以下の無置換のアルキル基とカルボキシメチル基置換フェニル基との組み合わせであってもよく、カルボキシメチル基置換フェニル基とカルボキシメチル基置換フェニル基との組み合わせであってもよい。
【0044】
上記式(1)中、nは0以上10以下の整数を示す。nは、好ましくは1以上9以下であり、より好ましくは2以上8以下であり、更に好ましくは2以上6以下であり、更により好ましくは2以上4以下であり、特に好ましくは2である。
【0045】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、下記の式(2)、(3)、(4)、(5)、又は(6)で表される化合物(光学異性体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。また、下記式(2)、(3)、(4)、(5)、又は(6)で表される化合物は、いずれも、そのアミノ基及び/又はカルボキシ基がプロトン化されている態様であってもよく、脱プロトン化されている態様であってもよい。
【0046】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0047】
上記式(1)で表される化合物は塩を形成していてもよい。上記式(1)で表される化合物の塩としては、例えば、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、及びバリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニアとの塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、キノリン、ピペリジン、イミダゾール、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、1-エフェナミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、及びN-メチル-D-グルカミン等の含窒素有機塩基との塩;リジン、アルギニン、及びオルニチン等の塩基性アミノ酸との塩;遷移金属塩;塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及びホウ酸等の無機酸との塩;並びに、シュウ酸、酢酸、及びp-トルエンスルホン酸等の有機酸との塩等が挙げられる。
【0048】
上記式(1)で表される化合物は、従来公知の種々の方法により製造することができる。具体的な製造方法は、国際公開第2007/066705号、及び特開2017-100993号公報を参照することができる。
【0049】
式(1)で表される化合物の塩は、上記方法で得られた式(1)で表される化合物に、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び水酸化バリウム等の塩基性化合物;アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、キノリン、ピペリジン、イミダゾール、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、1-エフェナミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、及びN-メチル-D-グルカミン等の含窒素有機塩基;リジン、アルギニン、及びオルニチン等の塩基性アミノ酸;塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及びホウ酸等の無機酸;並びに、シュウ酸、酢酸、及びp-トルエンスルホン酸等の有機酸等を反応させることにより製造することができる。
【0050】
(植物体の種類)
本実施形態の植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法を適用する植物は、特に限定されず、種々の単子葉植物、双子葉植物、及び樹木等の植物全般に適用することができる。単子葉植物としては、例えば、ウキクサ属植物(ウキクサ)及びアオウキクサ属植物(アオウキクサ、ヒンジモ)等が含まれるうきくさ科植物;カトレア属植物、シンビジウム属植物、デンドロビューム属植物、ファレノプシス属植物、バンダ属植物、パフィオペディラム属植物、及びオンシジウム属植物等が含まれるらん科植物;がま科植物;みくり科植物;ひるむしろ科植物;いばらも科植物;ほろむいそう科植物;おもだか科植物;とちかがみ科植物;ほんごうそう科植物;いね科植物;かやつりぐさ科植物;やし科植物;さといも科植物;ほしぐさ科植物;つゆくさ科植物;みずあおい科植物;いぐさ科植物;びゃくぶ科植物;ゆり科植物;ひがんばな科植物;やまのいも科植物;あやめ科植物;ばしょう科植物;しょうが科植物;かんな科植物;並びに、ひなのしゃくじょう科植物等が挙げられる。
【0051】
また、双子葉植物としては、例えばアサガオ属植物(アサガオ)、ヒルガオ属植物(ヒルガオ、コヒルガオ、ハマヒルガオ)、サツマイモ属植物(グンバイヒルガオ、サツマイモ)、及びネナシカズラ属植物(ネナシカズラ、マメダオシ)が含まれるひるがお科植物;ナデシコ属植物(カーネーション等)、ハコベ属植物、タカネツメクサ属植物、ミミナグサ属植物、ツメクサ属植物、ノミノツヅリ属植物、オオヤマフスマ属植物、ワチガイソウ属植物、ハマハコベ属植物、オオツメクサ属植物、シオツメクサ属植物、マンテマ属植物、センノウ属植物、フシグロ属植物、及びナンバンハコベ属植物が含まれるなでしこ科植物;もくまもう科植物;どくだみ科植物;こしょう科植物;せんりょう科植物;やなぎ科植物;やまもも科植物;くるみ科植物;かばのき科植物;ぶな科植物;にれ科植物;くわ科植物;いらくさ科植物;かわごけそう科植物;やまもがし科植物;ぼろぼろのき科植物;びゃくだん科植物;やどりぎ科植物;うまのすずくさ科植物;やっこそう科植物;つちとりもち科植物;たで科植物;あかざ科植物;ひゆ科植物;おしろいばな科植物;やまとぐさ科植物;やまごぼう科植物;つるな科植物;すべりひゆ科植物;もくれん科植物;やまぐるま科植物;かつら科植物;すいれん科植物;まつも科植物;きんぽうげ科植物;あけび科植物;めぎ科植物;つづらふじ科植物;ろうばい科植物;くすのき科植物;けし科植物;ふうちょうそう科植物;アブラナ科植物;もうせんごけ科植物;うつぼかずら科植物;べんけいそう科植物;ゆきのした科植物;とべら科植物;まんさく科植物;すずかけのき科植物;ばら科植物;まめ科植物;かたばみ科植物;ふうろそう科植物;あま科植物;はまびし科植物;みかん科植物;にがき科植物;せんだん科植物;ひめはぎ科植物;とうだいぐさ科植物;あわごけ科植物;つげ科植物;がんこうらん科植物;どくうつぎ科植物;うるし科植物;もちのき科植物;にしきぎ科植物;みつばうつぎ科植物;くろたきかずら科植物;かえで科植物;とちのき科植物;むくろじ科植物;あわぶき科植物;つりふねそう科植物;くろうめもどき科植物;ぶどう科植物;ほるとのき科植物;しなのき科植物;あおい科植物;あおぎり科植物;さるなし科植物;つばき科植物;おとぎりそう科植物;みぞはこべ科植物;ぎょりゅう科植物;すみれ科植物;いいぎり科植物;きぶし科植物;とけいそう科植物;しゅうかいどう科植物;さぼてん科植物;じんちょうげ科植物;ぐみ科植物;みそはぎ科植物;ざくろ科植物;ひるぎ科植物;うりのき科植物;のぼたん科植物;ひし科植物;あかばな科植物;ありのとうぐさ科植物;すぎなも科植物;うこぎ科植物;せり科植物;みずき科植物;いわうめ科植物;りょうぶ科植物;いちやくそう科植物;つつじ科植物;やぶこうじ科植物;さくらそう科植物;いそまつ科植物;かきのき科植物;はいのき科植物;えごのき科植物;もくせい科植物;ふじうつぎ科植物;りんどう科植物;きょうちくとう科植物;ががいも科植物;はなしのぶ科植物;むらさき科植物;くまつづら科植物;しそ科植物;なす科植物;ごまのはぐさ科植物;のうぜんかずら科植物;ごま科植物;はまうつぼ科植物;いわたばこ科植物;たぬきも科植物;きつねのまご科植物;はまじんちょう科植物;はえどくそう科植物;おおばこ科植物;あかね科植物;すいかずら科植物;れんぷくそう科植物;おみなえし科植物;まつむしそう科植物;うり科植物;ききょう科植物;並びに、きく科植物等が挙げられる。
【0052】
後述するように、本実施形態の植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法を適用した場合に、植物体の成長の促進等の効果が顕著にみられる観点から、本実施形態の方法を適用する植物としては、いね科植物、りんどう科植物、塊茎又は塊根を形成する植物、及びアブラナ科植物が好ましい。また、本実施形態の方法を適用する植物としては、さといも科植物、きく科植物、及びばら科植物も好ましい。
【0053】
いね科植物、及びりんどう科植物としては、例えばそれぞれ、イネ、及びトルコギキョウが挙げられる。きく科植物としては、例えば、ダリア、キク、ガーベラ、及びヒマワリ等が挙げられる。ばら科植物としては、例えば、バラ、ダイコンソウ、キイチゴ、チョウノスケソウ、及びスモモ属に属する植物等が挙げられる。
【0054】
塊茎を形成する植物としては、例えば塊茎を形成するナス科ナス属に属する植物、及びさといも科サトイモ属に属する植物が挙げられ、ジャガイモ又はサトイモであることが好ましい。塊根を形成する植物としては、例えばサツマイモが挙げられる。
【0055】
これらの植物の中でも、本実施形態の方法を適用する植物としては、ばら科、きく科、及び、塊茎又は塊根を形成する植物がより好ましく、ばら科、きく科、及びさといも科の植物が更に好ましい。
【0056】
なお、本実施形態の方法を適用する植物としては、野生型の植物に限定されず、変異体や形質転換体であってもよい。
【0057】
(植物体の状態)
本実施形態の方法を適用する際の植物体の状態としては、特に限定されず、通常の生育状態であってもよいし、植物体の一部が切断された状態であってもよい。
【0058】
「通常の生育状態」とは、本実施形態の方法の対象とする植物の本来有すべき構成要素の全てが備えられている状態を意味し、例えば、植物体の特定の構成要素(器官)が人為的に取り除かれていない状態を意味する。「通常の生育状態」の例としては、植物体の根及び/又は茎の一部又は全部が地中に植えられている状態(土耕栽培)、並びに植物体の根及び/又は茎の一部又は全部が水中に浸漬された状態で保持されている状態(水耕栽培)等が挙げられる。
【0059】
「植物体の一部が切断された状態」である植物体としては、植物体の一部分が切断されて取り除かれた場合において、取り除かれた部分と、かかる部分が取り除かれた後に残る部分の双方を包含する。植物体の一部が切断された状態である植物体の例としては、植物体の茎、根、花、枝、葉、果実、稲穂、及びむかご等であって、植物体から切り離された状態にあるもの、並びに、茎、根、花、枝、葉、果実、稲穂、及びむかご等が取り除かれた植物体が挙げられる。より具体的には、植物体の一部が切断された状態である植物体としては、葉、切り花、塊茎、塊根、及び果実が挙げられる。
【0060】
一般的に、植物体においてその一部が切断されると、その切断面は、経時的に修復すると考えられ、切断直後においては、その切断面に、植物体の内部組織が露出しているが、一定期間経過後には、その切断面は修復され、内部組織が露出していない状態となる。本明細書において、「植物体の一部が切断された状態」には、その切断面において、内部組織が露出している状態と、内部組織が露出していない状態の双方を包含するものとする。
【0061】
本実施形態の方法を適用する際の植物体の状態としては、少なくとも葉を有すると好ましい。そのような態様によれば、後述するように、本化合物等を含む液体を葉面に散布することにより本化合物等を投与することができる。また、植物体は切り花であってもよく、切り花以外の植物体であってもよい。
【0062】
なお、本実施形態の方法において、切り花を対象とする場合、投与する化合物としては、上記式(2)で表される化合物、その双性イオンである上記式(3)で表される化合物、並びにこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。切り花にそれらの化合物又は塩を投与すると、本実施形態の奏する効果が一層顕著になる傾向にある。
【0063】
(化合物の投与)
本実施形態の植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法は、上記式(1)で表される化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を植物体に投与する工程を有する。本化合物等の投与方法は、特に限定されないが、例えば、本化合物等を含む液体を植物体の少なくとも一部に対して散布する方法、並びに、本化合物等を含む液体に植物体の少なくとも一部を浸漬する方法等が挙げられる。植物体が地中に植えられている場合、本化合物等を地面に散布することにより本化合物等を投与してもよい。
【0064】
本化合物等を含む液体を植物体の少なくとも一部に対して散布する方法において、液体を散布する植物体の部分は特に限定されないが、例えば、葉、根、茎、及び果実等が挙げられる。このなかでも液体が散布される部分は、葉(葉面)であると好ましい。そのような態様によれば、散布が容易であり、かつ、有効かつ確実に本実施形態の方法の効果を奏することができる。散布方法としては、特に限定されず、例えば、ジョウロ等を用いた散布、及び霧吹き等を用いた噴霧(スプレー散布)が挙げられる。
【0065】
本化合物等を含む液体に植物体の少なくとも一部を浸漬する方法において、液体に浸漬する植物体の部分は特に限定されないが、例えば、葉、根、茎及び果実等が挙げられる。
【0066】
植物体の一部が切断されている場合、本化合物等を投与する部分は、切断面であってもよいし、切断面でなくてもよい。すなわち、本実施形態の方法は、切断等により内部組織が露出した植物体の断面に直接本化合物等を投与する場合だけでなく、内部組織が露出していない植物体の外表面に本化合物等を投与することでもグルタチオンの産生を促進することができる。したがって、例えば、切り花に本実施形態の方法を適用する場合、本化合物等を含む液体に満たされた花瓶等に切り花を浸漬することで本化合物等を投与してもよいし、本化合物等を含む液体を切り花の葉、花、及び/又は茎に散布又は塗布することで本化合物等を投与してもよい。中でも、本化合物等を含む液体を切り花の葉、花、及び/又は茎に散布又は塗布する方法は、化合物等を含む液体に満たされた花瓶等に切り花を浸漬する方法に比べて、本化合物等の投与量を調整することが容易であり、グルタチオンの産生を効率的に促進することができるため、好ましい。
【0067】
本化合物等の投与の回数、各投与間の間隔、及び投与する期間は、特に限定されない。投与の回数は、1回であってもよく、5回以下であってもよく、10回以下であってもよく、50回以下であってもよい。各投与間の間隔は、1時間以下の間隔であってもよく、1日以下の間隔であってもよく、3日以下の間隔であってもよく、1週間以下の間隔であってもよい。投与する期間は、1日以下であってもよく、3日以下であってもよく、1週間以下であってもよく、1か月以下であってもよく、1年以下であってもよいし、あるいは、1日以上であってもよく、3日以上であってもよく、1週間以上であってもよく、1か月以上であってもよく、1年以上であってもよい。なお、本化合物等を含む液体に植物体を浸漬する場合や本化合物等を含む溶液を植物体に連続的に噴霧する場合においては、その投与の回数は1回とする。
【0068】
本実施形態の方法において、植物体内におけるグルタチオン濃度を高く保持し続ける観点から、例えば、6時間以上7日以下の間隔で本化合物等を繰り返し投与し続けてもよい。投与間隔は、12時間以上5日以下であってもよく、18時間以上72時間以下であってもよい。
【0069】
本化合物等の投与が本化合物等を含む液体を用いて行われる場合、当該液体は、本化合物等を任意の溶媒に溶解させることにより得ることができる。当該溶媒としては、植物体が接触及び/又は吸収することが許容可能な溶媒であれば特に限定されないが、好ましくは水である。
【0070】
液体中の上記式(1)で表される化合物、及びその塩の含有量の合計は特に限定されないが、液体全体に対して、質量比で、好ましくは10ppm以上10.0%以下であり、より好ましくは50ppm以上5.0%以下であり、更に好ましくは100ppm以上1.0%以下である。
【0071】
本化合物等を含む液体は、本化合物等、及び溶媒以外に、植物体が接触及び/又は吸収することが許容可能なその他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、公知の肥料、鮮度保持剤、及びpH調整剤(特に、水酸化ナトリウム等の塩基性のものが挙げられる。)等が挙げられる。
【0072】
本実施形態の植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法によれば、植物体内におけるグルタチオンの産生を促進することができる。ここで、特許文献1~3を参照して上述したとおり、グルタチオンは、植物体の成長の促進等に寄与するものである。したがって、本実施形態は、植物体の成長を促進する方法をも提供する。
【0073】
[植物体の成長を促進する方法]
本実施形態の植物体の成長を促進する方法は、本実施形態の植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法を植物体に適用することにより行われる。すなわち、本実施形態の植物体の成長を促進する方法は、上記式(1)で表される化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を植物体に投与する工程を有する。
【0074】
本明細書中、「植物体の成長を促進する」とは、植物体の通常の成長プロセスで生じる植物体の形態変化に要する時間を短縮すること、並びに、植物体の少なくとも一部を肥大化、及び/又は増加させることの双方を包含する。
【0075】
「植物体の通常の成長プロセスで生じる植物体の形態変化」とは、例えば、開花及び発芽である。したがって、本実施形態の方法によれば、植物体の開花を促進すること、種子の発芽を促進すること、並びに、枝及び茎等の植物体の一部から新芽が萌芽することを促進することの1つ以上を提供することができる。
【0076】
「植物体の少なくとも一部を肥大化、及び/又は増加させること」とは、例えば、植物体の少なくとも一部を肥大化させること;植物体の器官の少なくとも1種の数を増加させること;本実施形態の方法を適用しない場合と比較して、植物体の少なくとも一部が特定の大きさに到達するまでの時間を短縮すること;並びに、本実施形態の方法を適用しない植物体と比較して、植物体の器官の少なくとも1種の数が特定の数に到達するまでの時間を短縮することの全てを意味する。
【0077】
肥大化、及び/又は増加する植物体の部分としては、植物体の一部分である限り特に限定されず、例えば、茎、根、花、枝、葉、果実、稲穂、及びむかご等が挙げられる。
【0078】
植物体の成長を促進する具体例としては、育成中の植物体が成長し成体程度の大きさとなるまでの時間を短縮すること、植物体の発根及び/又は開花及び/又は発芽を促進すること、植物体の塊茎及び/又は塊根を増加及び/又は肥大化すること、並びに、切り花の開花を促進すること等が挙げられる。
【0079】
[植物体用グルタチオン産生促進剤]
本実施形態の植物体用のグルタチオン産生促進剤は、下記式(1)で表される化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【0080】
【化18】
ここで、式(1)中、R1、及びR2は、各々独立に、水素原子、又は1価の炭化水素基を示し、かかる炭化水素基は、ハロゲン原子、-COOR3、-CONR3 2、-COR3、-CN、-NO2、-NHCOR3、-OR3、-SR3、-OCOR3、-SO23、及び-SO2NR3 2からなる群より選択される少なくとも1種の基に置換されていてもよく、R3は、各々独立に、水素原子、又は1価の脂肪族炭化水素基を示し、XCは、-COOH、又は-COO-を示し、XNは、-NH2、又は-NH3 +を示し、nは0~10の整数を示す。
【0081】
式(1)中における、R1、及びR2の1価の炭化水素基、R3、XC、並びにXNの定義、例示、組み合わせ、及び好ましい態様は上述したものと同様である。また、式(1)で表される化合物の塩の例示についても、上述したものと同様である。
【0082】
本実施形態のグルタチオン産生促進剤の対象となる植物、及び植物体の状態は、本実施形態の植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法を適用する植物、及び植物体の状態として記載したものと同様である。
【0083】
本実施形態のグルタチオン産生促進剤の投与態様についても、本実施形態の植物体におけるグルタチオンの産生を促進する方法において記載したものと同様である。
【0084】
本実施形態のグルタチオン産生促進剤は、上記式(1)で表される化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種のみからなるものであってもよく、上記式(1)で表される化合物、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種以外の成分を含んでいてもよい。
【0085】
グルタチオン産生促進剤が含み得る成分としては、植物体が接触及び/又は吸収することが許容可能な成分であれば特に限定されず、溶媒、公知の肥料、鮮度保持剤、及びpH調整剤(特に、水酸化ナトリウム等の塩基性のものが挙げられる。)等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されず、例えば、水等が挙げられる。
【0086】
グルタチオン産生促進剤における、上記式(1)で表される化合物、及びその塩の含有量の合計は、特に限定されないが、グルタチオン産生促進剤全体に対して、質量比で、好ましくは、10ppm以上10.0%以下であり、より好ましくは50ppm以上5.0%以下であり、更に好ましくは100ppm以上1.0%以下である。
【0087】
本実施形態のグルタチオン産生促進剤によれば、植物体内におけるグルタチオンの産生を促進することができる。ここで、特許文献1~3を参照して上述したとおり、グルタチオンは、植物体の成長の促進等に寄与するものである。したがって、本実施形態のグルタチオン産生促進剤によれば、植物体の成長を促進させることができる。植物体の成長の詳細は、植物体の成長を促進する方法において記載したものと同様である。
【実施例0088】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0089】
[グルタチオンの産生促進効果の評価]
(化合物)
式(1)で表される化合物として、下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」という。)、及び下記式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」という。)を準備した。
【化19】
【化20】
【0090】
(試験1)
ダリア(品種:黒蝶)の切り花をサンプルとして、以下のような方法で、化合物(2)及び化合物(4)のグルタチオン産生促進効果を評価した。
【0091】
サンプルの葉面に純水、化合物(4)の0.05質量%溶液、又は化合物(2)の0.05質量%溶液を50回スプレー散布した。24時間室温で静置した後、サンプルの葉を1g採取した。得られた葉を乳鉢に入れ、液体窒素、及び50mgの5-スルホサリチル酸二水和物(SSA)を加えて、乳棒で葉をすり潰した。液体窒素が全て蒸発したことを確認した後、9mLの純水を加えて希釈液を得た。その希釈液を4000rpmで10分遠心分離した。遠心分離後の希釈液の上清を回収した後、フィルターによりろ過した。グルタチオン測定キット(DOJINDO社製、G257 GSSG/GSH Quantification Kit)を用い、ろ液を96wellプレートに加え、プレートリーダー(コロナ電気株式会社製、SH8000Lab)で405nmの吸光度を測定することによりグルタチオンジスルフィドの濃度を測定した。グルタチオンジスルフィドは、グルタチオンの二量体であるため、グルタチオンジスルフィドの濃度からグルタチオンの濃度を算出した。
【0092】
なお、純水、化合物(4)の溶液、又は化合物(2)の溶液を散布する前に採取した葉1gを参照試料として、純水、化合物(4)の溶液、又は化合物(2)の溶液を散布して24時間静置したときのグルタチオンの濃度変化を計算することにより、化合物(2)及び化合物(4)のグルタチオン産生促進効果を評価した。結果を表1に示す。なお、表1において、例えば、化合物(4)の溶液を散布して24時間静置した後のサンプルの葉中のグルタチオン濃度は、化合物(4)の溶液を散布する前に採取した葉中のグルタチオン濃度に比べて、2.01倍(201%)になったことを意味する(以下、表2及び3においても同様。)。
【0093】
【表1】
【0094】
(試験2)
サンプルとして、さといもの葉(さといもから葉を切断して切り離したもの)を用いて、純水、化合物(4)の0.05質量%溶液、又は化合物(2)の0.05質量%溶液の散布後、48時間室温で静置したこと以外は、上記試験1と同様にして、化合物(2)及び化合物(4)のグルタチオン産生促進効果を評価した。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
(試験3)
サンプルとして、バラの切り花を用いたこと以外は、上記試験1と同様にして、化合物(4)のグルタチオン産生促進効果を評価した。なお、化合物(2)については試験を行わなかった。結果を表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
表1~3から、式(1)で表される化合物を植物体に投与すると、植物体におけるグルタチオンの産生が促進されることがわかった。
【0099】
[植物体の成長促進効果の評価]
(試験4)
バラの切り花をサンプルとして、以下のような方法で、化合物(4)による成長促進効果を評価した。なお、下記の鮮度保持剤としては、OATアグリオ株式会社製の製品名「美咲」を用いた。
【0100】
サンプルを、鮮度保持剤のみを含む水溶液、鮮度保持剤及び50ppm(質量比)の化合物(4)を含む水溶液、又は、鮮度保持剤及び250ppm(質量比)の化合物(4)を含む水溶液に浸漬して、室温にて静置した。サンプルの本数は、各溶液について5本とした。各サンプルを、浸漬から18日経過時、22日経過時、及び29日経過時において観察し、浸漬前と比べて新芽が萌芽しているか否かを調べた。なお、サンプルを浸漬させている水溶液は経時的に蒸発及び蒸散等により減少するため、適宜サンプルを浸漬させている水溶液と同様の水溶液を追加した。
【0101】
表4に、18日経過時、22日経過時、及び29日経過時において浸漬前と比べて新芽が確認されたサンプルの本数を示す。
【0102】
【表4】
【0103】
表4から、式(1)で表される化合物を植物体に投与すると、植物体の成長が促進されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の方法は、植物体内におけるグルタチオンの産生を促進することができる。その結果、この方法は、植物体の成長の促進等に関与することができるため、例えば、農業、商業等の分野で産業上の利用可能性を有する。