(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139523
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】シートベルトのロック解除を規制するバックルカバー
(51)【国際特許分類】
A44B 11/25 20060101AFI20220915BHJP
B60R 22/26 20060101ALI20220915BHJP
B60R 22/48 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A44B11/25
B60R22/26
B60R22/48 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039947
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】521045601
【氏名又は名称】ケアパートナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100210398
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昌司
【テーマコード(参考)】
3B090
3D018
【Fターム(参考)】
3B090BC25
3B090BC26
3D018BA12
3D018CB06
(57)【要約】
【課題】高い汎用性を有する、シートベルトのロック解除を規制するバックルカバーを提供する。
【解決手段】本体係合部(12)と前記本体係合部の基部の少なくとも一部を覆う保持部(14)とを有する係止部材(10)と、前記係止部材(10)が挿入係合されるとともに、係合を解除する解除ボタン(24)を有するバックル(20)と、を有するシートベルト装置(1)の前記バックル(20)に取り付けられる、バックルカバー(100)であって、前記係止部材(10)の少なくとも前記本体係合部(12)が挿通される第1開口部(110)と、前記解除ボタン(24)へのアクセスを許容する第2開口部(120)と、を有し、前記第1開口部(110)の幅寸法(d2)は、前記保持部(14)の厚さ寸法(t1)よりも大きい、バックルカバー、が提供される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体係合部(12)と前記本体係合部の基部の少なくとも一部を覆う保持部(14)とを有する係止部材(10)と、前記係止部材(10)が挿入係合されるとともに、係合を解除する解除ボタン(24)を有するバックル(20)と、を有するシートベルト装置(1)の前記バックル(20)に取り付けられる、バックルカバー(100)であって、
前記係止部材(10)の少なくとも前記本体係合部(12)が挿通される第1開口部(110)と、
前記解除ボタン(24)へのアクセスを許容する第2開口部(120)と、
を有し、
前記第1開口部(110)の幅寸法(d2)は、前記保持部(14)の厚さ寸法(t1)よりも大きい、
バックルカバー。
【請求項2】
本体係合部(12)と前記本体係合部の基部の少なくとも一部を覆う保持部(14)とを有する係止部材(10)と、前記係止部材(10)が挿入係合されるとともに、係合を解除する解除ボタン(24)を有するバックル(20)と、を有するシートベルト装置(1)の前記バックル(20)に取り付けられる、バックルカバー(100)であって、
前記係止部材(10)の少なくとも前記本体係合部(12)が挿通される第1開口部(110)と、
前記解除ボタン(24)へのアクセスを許容する第2開口部(120)と、
を有し、
前記第1開口部(110)の幅寸法(d2)は、前記本体係合部(12)の厚さ寸法(t2)の4倍よりも大きい、
バックルカバー。
【請求項3】
本体係合部(12)と前記本体係合部の基部の少なくとも一部を覆う保持部(14)とを有する係止部材(10)と、前記係止部材(10)が挿入係合されるとともに、係合を解除する解除ボタン(24)を有するバックル(20)と、を有するシートベルト装置(1)の前記バックル(20)に取り付けられる、バックルカバー(100)であって、
前記係止部材(10)の少なくとも前記本体係合部(12)が挿通される第1開口部(110)と、
前記解除ボタン(24)へのアクセスを許容する第2開口部(120)と、
を有し、
前記第1開口部(110)は、0.5cm以上の深さ寸法(d1)と、0.7cm以上の幅寸法(d2)とを有する、
バックルカバー。
【請求項4】
請求項3に記載のバックルカバー(100)であって、
前記第1開口部(110)は、0.9cm以上の幅寸法(d2)を有する、
バックルカバー。
【請求項5】
請求項4に記載のバックルカバー(100)であって、
前記第1開口部(110)は、1.3cm以上の深さ寸法(d1)と、1.1cm以上の幅寸法(d2)とを有する、
バックルカバー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のバックルカバー(100)であって、
前記バックルカバー(100)の外周は、上板部(100A)と、側板部(100B)と、を備えており、
前記上板部(100A)の下面には、前記バックル(20)の前記バックルカバー(100)の内部空間への進入を規制する規制部(130A、130B、130C、130C2、130D)が設けられており、
前記第2開口部(120)は、前記規制部(130A、130B、130C、130C2、130D)により規定される、所定の深さ寸法(d3)を有する、
バックルカバー。
【請求項7】
請求項6に記載のバックルカバー(100)であって、
前記第2開口部(120)の前記深さ寸法(d3)は、前記第1開口部(110)の深さ寸法(d1)の少なくとも1/2である、
バックルカバー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のバックルカバー(100)であって、
全体が樹脂により一体成型されている、
バックルカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトのロック解除を規制するバックルカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用自動車において着座者の身体を座席に拘束するためのシートベルトに関し、シートベルトのバックルの解除ボタンが子供のいたずら又は認知症の方や知的障がい者によって不慮に押圧されて、シートベルトによる拘束が誤って解除されることを防止する機構が知られている。例えば、特許文献1は、シートベルトの座先側ベルトのバックルを覆うバックルカバーを設け、シートベルトの上側ベルトのタングプレートの挿通及びロックを許容するが、着座者の指によるバックルの解除ボタンの操作を阻止することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シートベルトのバックル及びタングプレートには、統一した規格が存在しておらず、車種に応じて様々な形状、大きさのものが用いられている。バックルカバー形状及び大きさによっては、バックルカバーを取り付けたバックルにタングプレートを差し込んでシートベルトシステムをロックする際に、バックルカバーがタングプレートの進入を阻んでロックが阻止されることがありうる。一方、高齢者や知的障がい者に対する介護の分野では、個々の事業者が複数の車種の自動車を利用して要介護者等の送迎をしている。そのため、広い範囲の車種の異なる規格のシートベルトに対して統一的に適用可能な、高い汎用性を有するバックルカバーが求められている。
【0005】
本発明の目的は、様々な規格のバックルとタングプレートとの組に対して統一的に適用できるように汎用性が向上された、シートベルトの着脱を規制するバックルカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、本体係合部(12)と前記本体係合部の基部の少なくとも一部を覆う保持部(14)とを有する係止部材(10)と、前記係止部材(10)が挿入係合されるとともに、係合を解除する解除ボタン(24)を有するバックル(20)と、を有するシートベルト装置(1)の前記バックル(20)に取り付けられる、バックルカバー(100)であって、前記係止部材(10)の少なくとも前記本体係合部(12)が挿通される第1開口部(110)と、前記解除ボタン(24)へのアクセスを許容する第2開口部(120)と、を有し、前記第1開口部(110)の幅寸法(d2)は、前記保持部(14)の厚さ寸法(t1)よりも大きい、バックルカバーである。
【0007】
上記第1の態様では、バックルに取り付けられるバックルカバーに形成されて係止部材が挿通される第1開口部が、係止部材の本体係合部の基部の少なくとも一部を覆うように構成された保持部の厚さ寸法よりも大きい、幅寸法を有している。よって第1の態様によれば、係止部材の本体係合部をバックルに差し込む際に係止部材の保持部を第1開口部内に受容することができ、バックルカバーが係止部材の本体係合部をバックルに差し込む際の阻害要因となることを抑制できる。
【0008】
本発明の第2の態様は、本体係合部(12)と前記本体係合部の基部の少なくとも一部を覆う保持部(14)とを有する係止部材(10)と、前記係止部材(10)が挿入係合されるとともに、係合を解除する解除ボタン(24)を有するバックル(20)と、を有するシートベルト装置(1)の前記バックル(20)に取り付けられる、バックルカバー(100)であって、前記係止部材(10)の少なくとも前記本体係合部(12)が挿通される第1開口部(110)と、前記解除ボタン(24)へのアクセスを許容する第2開口部(120)と、を有し、前記第1開口部(110)の幅寸法(d2)は、前記本体係合部(12)の厚さ寸法(t2)の4倍よりも大きい、バックルカバーである。
【0009】
上記第2の態様では、バックルに取り付けられるバックルカバーに形成されて係止部材が挿通される第1開口部が、係止部材の本体係合部の厚さ寸法の4倍よりも大きい、幅寸法を有している。よって第2の態様によれば、第1開口部が係止部材の保持部を受容するために十分な幅寸法を有しており、バックルカバーが係止部材の本体係合部をバックルに差し込む際の阻害要因となることを抑制できる。
【0010】
本発明の第3の態様は、本体係合部(12)と前記本体係合部の基部の少なくとも一部を覆う保持部(14)とを有する係止部材(10)と、前記係止部材(10)が挿入係合されるとともに、係合を解除する解除ボタン(24)を有するバックル(20)と、を有するシートベルト装置(1)の前記バックル(20)に取り付けられる、バックルカバー(100)であって、前記係止部材(10)の少なくとも前記本体係合部(12)が挿通される第1開口部(110)と、前記解除ボタン(24)へのアクセスを許容する第2開口部(120)と、を有し、前記第1開口部(110)は、0.5cm以上の深さ寸法(d1)と、0.7cm以上の幅寸法(d2)とを有する、バックルカバーである。
【0011】
上記第3の態様では、バックルに取り付けられるバックルカバーに形成されて係止部材が挿通される第1開口部が、0.5cm以上の深さ寸法と、0.7cm以上の幅寸法とを有している。よって第3の態様によれば、第1開口部が係止部材の保持部を受容するために十分な幅寸法と深さ寸法とを有しており、バックルカバーが係止部材の本体係合部をバックルに差し込む際の阻害要因となることを抑制できる。
【0012】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様において、前記第1開口部(110)は、0.9cm以上の幅寸法(d2)を有する、バックルカバーである。
【0013】
上記第4の態様では、前記第1開口部は、0.9cm以上の幅寸法を有している。よって第5の態様によれば、第1開口部が係止部材の保持部を確実に受容できる。
【0014】
本発明の第5の態様は、上記第4の態様において、前記第1開口部(110)は、1.3cm以上の深さ寸法(d1)と、1.1cm以上の幅寸法(d2)とを有する、バックルカバーである。
【0015】
上記第5の態様では、前記第1開口は、1.3cm以上の深さ寸法と、1.1cm以上の幅寸法とを有している。よって第5の態様によれば、第1開口部が係止部材の保持部をさらに確実に受容できる。
【0016】
本発明の第6の態様は、上記第1~第5の態様において、前記バックルカバー(100)の外周は、上板部(100A)と、側板部(100B)と、を備えており、前記上板部(100A)の下面には、前記バックル(20)の前記バックルカバー(100)の内部空間への進入を規制する規制部(130A、130B、130C、130C2、130D)が設けられており、前記第2開口部(120)は、前記規制部(130A、130B、130C、130C2、130D)により規定される、所定の深さ寸法(d3)を有する、バックルカバーである。
【0017】
上記第6の態様では、バックルカバーの外周の上板部の下面にバックルのバックルカバーの内部空間への進入を規制する規制部が設けられ、そのために係合を解除するバックルの解除ボタンへのアクセスを許容する第2開口部が、所定の深さ寸法を有している。よって第6の態様によれば、第2開口部が所定の深さ寸法を有することにより、着座者の指が解除ボタンへ到達することを抑制し、不適切なロック解除を防止することができる。
【0018】
本発明の第7の態様は、上記第6の態様において、前記第2開口部(120)の前記深さ寸法(d3)は、前記第1開口部(110)の深さ寸法(d1)の少なくとも1/2である、バックルカバーである。
【0019】
上記第7の態様では、第2開口部は、前記第1開口部の深さ寸法の少なくとも1/2の大きさの深さ寸法を備えている。よって第7の態様によれば、第2開口部が十分な深さ寸法を有することにより、着座者の指がバックルカバーを介してバックルの解除ボタンに到達することを確実に阻止し、不適切なロック解除を防止することができる。
【0020】
本発明の第8の態様は、上記第1~第7の態様において、全体が樹脂により一体成型されている、バックルカバーである。
【0021】
上記第8の態様では、シートベルトのロック解除を規制するバックルカバーが、樹脂の一体成型により構成されている。例えば、3Dプリンタを用いて樹脂の一体成型を行うことができる。よって第8の態様によれば、簡素な構成によりバックルカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るバックルカバーを適用する前提としてのシートベルトシステムの全体斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るバックルカバーを適用したシートベルトシステムの要部を示す斜視図である。
【
図3】シートベルトシステムにおいて、バックルカバーを装着したバックルにタングプレートが挿入された状態の要部を示す、分解斜視図である。
【
図6】バックルカバーの上板部の上面を示す、平面図である。
【
図8】バックルカバーの内部空間を示す、斜視図である
【
図9】バックルカバーの内部空間を示す、平面図である。
【
図10】第2開口の深さ寸法を示す、
図4の矢視10-10で切断した断面図である。
【
図11】バックルにバックルカバーが取り付けられた状態を示す、
図10に対応する断面図である。
【
図13】解除キーによるロック解除を示す、シートベルトシステムの要部の斜視図である。
【
図14】本発明の実施形態の第1の変形例に係る、
図10に対応する断面図である。
【
図15】本発明の実施形態の第2の変形例に係る、
図10に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0024】
図1は、本発明のバックルカバーを適用する前提としてのシートベルトシステム1の全体斜視図である。
図1に示されるように、シートベルトシステム1は、座席6に着座した着座者2を拘束することができるように構成されている。シートベルトシステム1は、、上側ベルト30Aに取り付けられたタングプレート10と、座席6側のベルト30Bに取り付けられたバックル20と、を含んでいる。座席6に着座した着座者2の身体の周りにベルト30を巻き付けて、タングプレート10の先端をバックル20の所定箇所に差し込むことで、シートベルトシステムをロック(以下、第1ロックと呼ぶ)し、着座者2を拘束することができる。タングプレート10は、本発明の係止部材の一例である。
【0025】
図2は、本実施形態に係るバックルカバー100を適用したシートベルトシステム1の要部を示す分解斜視図である。
図2に示されるように、タングプレート10は、本体係合部12と、保持部14とを備えている。本体係合部12は略T字形状に構成されており、本体係合部12の基部を覆うように保持部14が一体的に設けられている。保持部14は、ユーザの便のために設けられており、タングプレート10を操作するユーザは保持部14を保持することができる。一例として、本体係合部12は金属製又は硬質樹脂製であり、保持部14は樹脂製である。また、バックル20は、挿入孔22と、解除ボタン24と、を備えている。バックル20の挿入孔22へタングプレート10の本体係合部12の先端を挿入係合させることにより、シートベルトシステム1が第1ロックされる。シートベルトシステム1の第1ロックは、バックル20の解除ボタン24をユーザの指その他により押圧することにより、解除することができる。
【0026】
また
図2は、本発明のバックルカバー100を示している。バックルカバー100は、底部が解放された略直方体箱形状であり、バックル20を覆うように取り付けることができるように構成されている。バックルカバー100がバックル20に取り付けられた状態で、タングプレート10の本体係合部12の先端をバックルカバー100を挿通してバックル20の挿入孔22に挿入係合させることで、シートベルトシステム1は、第1ロックとは異なるロック(以下、第2ロックと呼ぶ)がされる。第2ロックされたシートベルトシステム1においては、バックル20がバックルカバー100により覆われているため、バックル20の解除ボタン24が露出しておらず、バックルカバー100により着座者2の指その他が解除ボタン24に接触することが阻止される。
【0027】
座席6に着座した着座者2が自らの意志でシートベルトシステム1による拘束を自由に解除できることは好ましくなく、ロックの解除を制限することが好ましい、という状況が考えられる。この場合、シートベルトシステム1を第2ロックすることにより、着座者2の指が解除ボタン24を押圧してロックを解除することが防止できる。
【0028】
次に、
図4~
図6、
図8および
図9を参照して、バックルカバー100の構造の詳細を説明する。
図4は、バックルカバー100の斜視図である。
図5は、バックルカバー100の側面図である。
図6は、バックルカバー100の上板部の上面を示す、平面図である。
図8は、バックルカバー100の内部空間を示す、斜視図である、
図9は、バックルカバー100の内部空間を示す、平面図である。
【0029】
図4に示すように、バックルカバー100は、上板部100Aと、4つの側板部100Bとを備えた、下方が解放された略直方体箱形状として構成されている。バックルカバー100の上板部100Aには、第1開口部110と、第2開口部120が設けられている。第1開口部110及び第2開口部120は、各々がバックルカバー100の内部空間に所定の深さ寸法を有している。
【0030】
図4以降の図面において、説明の便宜のためにX-Y-Z直交座標系を付することがある。この座標系において、Z軸は上方を向いており、X-Y平面はバックルカバー100を水平方向に切断するように配置されている。バックルカバー100の略直方体箱形状について、X軸方向はバックルカバー100の短手方向であり、Y軸方向はバックルカバー100の長手方向であり、Z軸方向はバックルカバー100の高さ方向である。
【0031】
以下では、一例として、バックルカバー100の略直方体箱形状について、短手方向が4.1cm、長手方向が5.6cm、高さが3cmであるものとして説明する。ただし、これらの数値は例示に過ぎず、本発明のバックルカバーを限定するものではない。
【0032】
一例として、バックルカバー100を樹脂により一体成型することができる。樹脂による一体成型を用いることにより、簡素な構成でバックルカバー100を製造できる。
【0033】
図5は、バックルカバー100の側板部100Bのうち、短手方向の面を示している。
図5に示されるように、第1開口部110は、バックルカバー100の上板部100Aの上面から下方に向かって所定の深さ寸法d1を有している。一例として、第1開口部110の深さ寸法d1は、0.5cm以上であるが、特に1.0cm以上であってもよく、さらには1.3cm以上であってもよい。
【0034】
図6は、バックルカバー100の上板部100AをZ軸正方向側(つまり、上方)
から見た平面を示している。
図6に示されるように、第1開口部110は、X軸(つまり、バックルカバー100の短手方向)に沿って所定の幅寸法d2を有している。特に、第1開口部110の幅寸法d2は、タングプレート10の保持部14の厚さ寸法(t1;
図7A及び
図7B参照)よりも大きい。
【0035】
ここで、
図7A及び
図7Bを参照して、保持部14の厚さ寸法について説明する。
図7Aは、タングプレート10の側面図の一例である。
図7Bは、タングプレート10の側面図の他の例である。
【0036】
上述したように、タングプレート10は、略T字形状に構成された本体係合部12と、本体係合部12の基部を覆う保持部14とを備えている(
図2を参照)。
図7Aに示したように、タングプレート10を側方から見ると、保持部14の厚さ寸法t1と、本体係合部12の厚さ寸法t2とを規定することができる。ここで、
図7Bに示したように、タングプレート10において、保持部14の先端部が、本体係合部12に近づくにつれてテーパー部14aにより薄型に形成されていることがある。保持部14の厚さ寸法t1とは、この薄型部分を考慮せず、保持部14のうちユーザの保持の便に実質的に寄与する部分の厚さ寸法を意味する。
【0037】
またバックルカバー100の第1開口部110の幅寸法d2は、タングプレート10の本体係合部12の厚さ寸法t2の4倍よりも大きく構成することができる。特に、幅寸法d2は、厚さ寸法t2の5倍以上であってもよく、さらには厚さ寸法t2の5.5倍以上であってもよい。一例として、第1開口部110の幅寸法d2は、0.7cm以上であるが、特に0.9cm以上であってもよく、さらには1.1cm以上であってもよい。
【0038】
図8は、バックルカバー100をZ軸負方向側(つまり、下方)から見た斜視図であり、バックルカバー100の内部空間を示している。
図8に示されるように、バックルカバー100の内部空間において、バックルカバー100の上板部100Aの下面から、第1凸部130A、第2凸部130B、第3凸部130CがZ軸負方向側(つまり、下方)に向かって延出している。一例として、第1凸部130A、第2凸部130B、第3凸部130Cは、上板部100Aの上面を基準としてZ軸負方向の略同一の位置まで延出している。第1凸部130A及び第2凸部130Bは、Y軸方向に平行に延在する直線状突条部として構成されており、第1開口部110の上部を規定している。また、第3凸部130Cは、長手方向中心近傍が外側に婉曲した略長方形輪郭形状として構成され、第2開口部120を規定している。第1凸部130A、第2凸部130B、第3凸部130Cは、本発明の規制部の一例である。
【0039】
図9は、バックルカバー100をZ軸負方向側(つまり、下方)から見た平面を示している。なお、
図9に示したように、第3凸部130Cの長手方向中心近傍には、外側に湾曲した2つの湾曲部130C1が設けられている。2つの湾曲部130C1により、第2開口部120の中心近傍には、後述するように鉛筆等の柱形状を受容し得る円形領域120Aが形成されている。第2ロックの解除に際して、後述する解除キー200に代えて、これらの柱形状の物体を用いることができる。
【0040】
ここで、
図10及び
図11を参照して、バックルカバー100の第2開口部120の深さ寸法d3について説明する。
図10は、第2開口部120の深さ寸法d3を示す、
図4の矢視9-9で切断した断面図である。
図11は、バックル20にバックルカバー100が取り付けられた状態を示す、
図10に対応する断面図である。
【0041】
図10に示したように、バックルカバー100の内部空間において、バックルカバー100の上板部100Aの下面から、第1凸部130A、第2凸部130B、第3凸部130CがZ軸負方向側に向かって延出している。上述したように、第1凸部130Aと第2凸部130Bとによって第1開口部110の上部が規定され、第3凸部130Cによって第2開口部120が規定される。
図10に示すように、バックルカバー100の上板部100Aの上面と、第3凸部130Cの下方側先端との距離が、第2開口部120の深さ寸法d3を規定する。
【0042】
第2開口部120の深さ寸法d3は、第1開口部110の深さ寸法d1の1/2以上である(すなわち、d3≧1/2×d1)。一例として、第2開口部120の深さ寸法d3は、0.25cm以上であり、特に0.5cm以上であってもよく、さらには0.8cm以上であってもよい。
【0043】
図11に示すように、バックル20にバックルカバー100が取り付けられた場合、バックルカバー100の内部空間において、バックル20の進入は、第1凸部130A、第2凸部130B、第3凸部130Cによって制限される。すなわち、バックル20の先端は、第1凸部130A、第2凸部130B、第3凸部130Cの下端部と当接し、それ以上にバックルカバー100の上板部100Aに接近することはできない。
【0044】
次に、
図12を参照して解除キー200の構成を説明する。
図12は、解除キー200を示す斜視図である。解除キー200は、シートベルトシステム1のバックルカバー100による第2ロックを解除するために用いられる。
【0045】
図12に示されるように、解除キー200は、先端係合部210と、開口220と、を有している。先端係合部210は、バックルカバー100の第2開口部120に挿入されて、バックル20の解除ボタン24を押圧することにより、バックルカバー100によるシートベルトシステム1の第2ロックを解除できるように構成されている。具体的には、先端係合部210の長さd4は、第2開口部120の深さ寸法d3よりも大きい(すなわち、d4>d3)。また開口部220は、ユーザが指を挿入して、解除キー200を保持し易いように構成されており、解除キー200の必須の構成要素ではない。
【0046】
[バックルカバーの操作]
以下、本実施形態に係るバックルカバー100の操作について説明する。
図13は、解除キー200による第2ロックの解除を示す、シートベルトシステム1の要部の斜視図である。
【0047】
シートベルトシステムにおいてバックル20にバックルカバー100を取り付けた場合において、タングプレート10の保持部40がバックルカバー100の第1開口部110と干渉することにより、タングプレート10の本体係合部12の先端を第1開口部110を介してバックルの挿入孔22へ挿入係合させることが阻止されると、シートベルトシステムにおいて第2ロックを実行することはできない。ここで、本実施形態に係るバックルカバー100の第1開口部110は、十分な大きさの深さ寸法d1と、タングプレート10の保持部14の厚さ寸法t1に対して十分な大きさの幅寸法d2とを備えていることにより、タングプレート10の保持部14を受容することができる。その結果として、バックルカバー100がバックル20に取り付けられた状態において、タングプレート10の本体係合部12の先端をバックルカバー100を挿通して、バックル20の挿入孔22に挿入係合させ、第2ロックを実行することが可能となる。
【0048】
一方、本実施形態に係るシートベルトシステム1が第2ロックされている状態において、バックルカバー100の上板部100Aの上面とバックル20の解除ボタン24との間が十分な寸法(すなわち、少なくともd3)だけ離間されており、着座者2の指その他がそれらより狭い幅寸法の第2開口部120を介してバックル20の解除ボタン24を押圧して第2ロックを解除することを阻止することができる。すなわち、上述した、座席6に着座した着座者2が自らの意志でシートベルトシステム1による拘束を解除することを制限すべき場合において、十分な深さ寸法d3を備えた第2開口部120により、着座者2の指がバックル20の解除ボタン24へ到達することが妨げられる。
【0049】
図13を参照して、シートベルトシステム1のバックルカバー100による第2ロックの解除について説明する。
図13に示すように、第2ロックの解除を希望するユーザは、解除キー200の先端係合部210をバックルカバー100の第2開口部120に挿入し、第2開口部120の深さ寸法d3を越える距離を進入するように押し込んで、バックル20の解除ボタン24を押圧することにより、シートベルトシステム1の第2ロックを解除することができる。なお、説明の便宜のため、
図13では本体係合部12がバックル20の挿入孔22に差し込まれたタングプレート10の図示を省略している。
【0050】
第2ロックの解除に当たり、解除キー200以外の用具を用いることができる。例えば、解除キー200の先端係合部210の長さd4以上の長さを備える、ボールペンや鉛筆等の柱形状の用具を用いることができる。この場合、上述したように、第2開口部120の中心近傍には、湾曲部130C1により円形領域120Aが形成されているので、これらの筒型形状の用具を円形領域120Aに差し込み挿通させて解除ボタン24を押圧することができる。第2ロックを解除するためには、第2開口部120に挿入することができ、第2開口部120の深さ寸法d3以上の距離を進入してバックル20の解除ボタン24を押圧することができる用具であればよい。この意味で、解除キー200はシートベルトシステム1の必須の構成要素ではなく、解除キー200を紛失したとき等に柱形状の用具を使用できて便利である。
【0051】
[変形例]
以下、
図14及び
図15を参照して、上述の実施形態の変形例を説明する。併せて、本発明の第2開口部の「深さ寸法」について「狭義の深さ寸法」との相違を説明する。
図14は、本発明の実施形態の第1の変形例に係り、
図10と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
上述の実施形態では、第1凸部130A、第2凸部130B、第3凸部130Cは、バックルカバー100の上板部100Aを基準としてZ軸負方向(つまり、下方)の略同一の位置まで延出しているものとして説明した。しかしながら、バックルカバー100の内部空間に突出する凸部の構成は、これに限られるものではない。
【0053】
一例として、
図14に示すように、複数の凸部が、下方の異なる位置へ延出していてもよい。この場合、上板部100Aから最も離間した位置まで延出している凸部が、第2開口部120の深さ寸法d3を規定する。
図14に示される第1の変形例では、
図10と比較して、第3凸部130C2が
図10の第3凸部130Cより短い凸部に変更されており、第2開口部120は第3凸部によって規定されるので、第2開口部120の狭義の深さ寸法d3Aは
図10のd3に比べて短くなる(つまり、d3A<d3)。しかしながら、バックルカバー100の内部空間へのバックル20の進入は、狭義の深さ寸法d3Aに対応する第3凸部130C2でなく、深さ寸法d3に対応する第1凸部130A及び第2凸部130Bによって規制される。
図14において、本発明に係る第2開口部の深さ寸法は、狭義の深さ寸法d3Aではなく深さ寸法d3である。本発明に係る第3凸部130C2は、本発明の規制部の一例である。
【0054】
また、バックルカバー100の内部空間に突出する凸部は、直線状突条部形状に限られるものではない。
図15は、本発明のバックルカバーの実施形態の第2の変形例に係り、
図10と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。一例として、
図15に示すように、上板部100Aから下方の所定の位置までの空間を埋め尽くす層として構成された凸部130Dであってもよい。すなわち、
図7に示されたバックルカバー100の内部空間において、第1開口部110を除いて、上板部100Aの上面から所定の位置まで所定の高さ(深さ)を備えていてもよい。この場合も、バックルカバー100の上板部100Aの上面と、バックルカバー100の内部空間に凸部による制限内で進入するバックル20の解除ボタン24とを基準として、第2開口部120の深さ寸法d3が規定される。凸部130Dは、本発明の規制部の一例である。
【0055】
以上に本発明の実施形態及びその変形例を説明したが、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。特に、各数値限定を、互いに矛盾しない限りにおいて適宜組み合わせることが可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。
【符号の説明】
【0056】
1…シートベルトシステム
2…着座者
6…座席
10…タングプレート
12…本体係合部
14…保持部
14a…テーパー部14a
20…バックル
22…挿入孔
24…解除ボタン
30…ベルト
100…バックルカバー
100A…上板部
100B…側板部
110…第1開口部
120…第2開口部
120A…円形領域
130A…第1凸部
130B…第2凸部
130C…第3凸部
130C1…湾曲部
130C2…第1変形例に係る第3凸部
130D…凸部
200…解除キー
210…先端係合部
220…開口部
d1…第1開口部の幅寸法
d2…第1開口部の深さ寸法
d3…第2開口部の深さ寸法
d3A…第2開口部の狭義の深さ寸法
d4…解除キーの先端係合部の長さ
t1…保持部の厚さ寸法
t2…本体係合部の厚さ寸法