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特開2022-139528セメント組成物、モルタル及び硬化体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139528
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】セメント組成物、モルタル及び硬化体
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20220915BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20220915BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20220915BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20220915BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20220915BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/08 Z
C04B22/14 B
C04B22/10
C04B22/06 Z
C04B24/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039955
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】高木 聡史
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB06
4G112MB24
4G112PB03
4G112PB05
4G112PB08
4G112PB11
4G112PB17
(57)【要約】
【課題】低温環境下における若材齢時の強度向上と適度な可使時間を有するセメント組成物を提供する。
【解決手段】セメントと、急硬材と、石膏と、炭酸リチウムと、アモルファス酸化チタンとを含有するセメント組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、急硬材と、石膏と、炭酸リチウムと、アモルファス酸化チタンとを含有するセメント組成物。
【請求項2】
前記アモルファス酸化チタンの平均一次粒子径は、0.5μm以上5.0μm以下である、請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
前記アモルファス酸化チタンの密度は、2.0g/cm以上3.5g/cm以下である、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
前記アモルファス酸化チタンのブレーン比表面積値は、5,000cm/g以上15,000cm/g以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項5】
前記アモルファス酸化チタンの含有量は、前記セメント100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項6】
前記炭酸リチウムの含有量は、前記セメント100質量部に対して、1.0質量部以上10質量部以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項7】
凝結遅延剤を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のセメント組成物と、細骨材とを含有するモルタル。
【請求項9】
請求項8に記載のモルタルを用いてなる硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、土木分野及び建築分野において使用されるセメント組成物、モルタル及び硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
土木分野及び建築分野では、合理化施工の要求が高まっており、使用する材料として、早期に供用を可能とする材料が求められている。その一例として、超速硬性材料が挙げられる。
【0003】
例えば、超速硬性材料として、超速硬性で優れた流動性をもつセメント系材料等が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、最近では、さらなる合理化施工の要求や、新たなニーズへの対応から、超速硬性材料の要求性能が益々高まってきている。具体的には、低温環境下では、凝結性能が低下するため、若材齢時での要求強度を満たすことが困難となる場合があることから、低温環境下であっても若材齢時での要求強度を満たすセメント系材料が求められている。また、セメント系材料は、取扱を容易とするために作業時間を確保しつつ、過剰な作業時間とならないように適度な可使時間であることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03-12350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低温環境下における若材齢時の強度向上と適度な可使時間を有するセメント組成物、モルタル及び硬化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明者らは、上記課題を解決すべく、種々の努力を重ねた結果、特定の酸化チタンを含有させることで低温環境下における若材齢時の強度向上と適度な可使時間を有することを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]セメントと、急硬材と、石膏と、炭酸リチウムと、アモルファス酸化チタンとを含有するセメント組成物。
[2]前記アモルファス酸化チタンの平均一次粒子径は、0.5μm以上5.0μm以下である、[1]に記載のセメント組成物。
[3]前記アモルファス酸化チタンの密度は、2.0g/cm以上3.5g/cm以下である、[1]又は[2]に記載のセメント組成物。
[4]前記アモルファス酸化チタンのブレーン比表面積値は、5,000cm/g以上15,000cm/g以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のセメント組成物。
[5]前記アモルファス酸化チタンの含有量は、前記セメント100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のセメント組成物。
[6]前記炭酸リチウムの含有量は、前記セメント100質量部に対して、1.0質量部以上10質量部以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のセメント組成物。
[7]凝結遅延剤を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載のセメント組成物。
[8][1]~[7]のいずれかに記載のセメント組成物と、細骨材とを含有するモルタル。
[9][8]に記載のモルタルを用いてなる硬化体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低温環境下における若材齢時の強度向上と適度な可使時間を有するセメント組成物、モルタル及び硬化体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。
【0009】
[セメント組成物]
本発明のセメント組成物は、セメントと、急硬材と、石膏と、炭酸リチウムと、アモルファス酸化チタンとを含有するものである。
【0010】
(セメント)
本発明で使用するセメントは、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、低熱および中庸熱等の各種セメント、これらのセメントに、高炉スラグやフライアッシュやシリカフュームなどを混合した各種混合セメント、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)、市販されている微粒子セメントなどが挙げられ、各種セメントや各種混合セメントを微粉末化して使用することも可能である。また、通常セメントに使用されている成分量を増減して調整されたものも使用可能である。
本発明では、高い流動性、中性化抵抗性や鉄筋との付着強度、防錆の観点から、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントを選定することが好ましい。
【0011】
本発明で使用するセメントは、製造コストや強度発現性の観点から、セメントのブレーン比表面積値は、2,500cm/g以上7,000cm/g以下であることが好ましく、2,750cm/g以上6,000cm/g以下であることがより好ましく、3,000cm/g以上4,500cm/g以下であることがさらに好ましい。
ブレーン比表面積値は、JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に準拠して求められる。
【0012】
(急硬材)
本発明のセメント組成物は、短期で強度増進を図る目的として、急硬材を含有する。急硬材は、カルシウムアルミネート系化合物を含むことが好ましい。本発明のセメント組成物に含有する急硬材におけるカルシウムアルミネート系化合物の占める混合割合は、20%以上70%以下であることが好ましく、30%以上60%以下であることがより好ましく、35%以上55%以下であることがさらに好ましい。
ここで、カルシウムアルミネート系化合物とは、CaOとAlを主体とする化合物を総称するものであり、特に限定されるものではない。本発明では、CaO/Alモル比が0.75~1.5のカルシウムアルミネートを用いる。CaO/Alモル比が0.75以上であることで、充分な強度発現性が得られる。また、CaO/Alモル比が1.5以下であることで、充分な流動性や可使時間を得ることができる。カルシウムアルミネート系化合物の具体例としては、CaO・Al、12CaO・7Al、11CaO・7Al・CaF、3CaO・Al、3CaO・3Al・CaSO、更に、CaOとAlを主体とする非晶質物質(例えば、CaO-Al-SiO系化合物)等が挙げられる。
なお、一般の工業原料にはSiO、MgO、Fe、TiO、KO、NaO等の不純物が含まれているが、これらの不純物は、カルシウムアルミネート系化合物の非晶質化を助長する面もあり、これらの総量が20%以下の範囲で存在しても差し支えない。
【0013】
急硬材のブレーン比表面積値は、4,000cm/g以上9,000cm/g以下であることが好ましく、4,500cm/g以上8,500cm/g以下であることがより好ましく、5,000cm/g以上8,000cm/g以下であることがさらに好ましい。急硬材のブレーン比表面積値が上記範囲内であることで、十分な急硬性が得られやすくなり、低温での強度発現性も得られやすくなる。
急硬材のブレーン比表面積値は、上記のセメントのブレーン比表面積値と同様の方法にて求められる。
【0014】
急硬材の含有量は、セメント100質量部に対して、40質量部以上90質量部以下であることが好ましく、45質量部以上85質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上80質量部以下であることがさらに好ましい。急硬材の含有量が上記範囲内であることで、良好な初期強度発現性が得られやすくなり、長期強度の低下も起こりにくくなる。
【0015】
(石膏)
本発明のセメント組成物は、可使時間を長く設計しやすくする目的、及び、操作性を向上させる目的として石膏を含む。
本発明で使用する石膏は、特に限定されるものではなく、例えば、無水石膏、半水石膏及び二水石膏を挙げることができる。強度発現性の面では無水石膏が好ましい。無水石膏としてより具体的には、弗酸副生無水石膏や天然無水石膏を挙げることができる。また、石膏は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
石膏のブレーン比表面積値は、3,000cm/g以上であることが好ましく、3,500cm/g以上であることがより好ましく、4,000cm/g以上であることがさらに好ましい。石膏のブレーン比表面積値が上記下限値以上であることで、初期強度発現性を良好に得ることができる。また、石膏のブレーン比表面積値は、30,000cm/g以下であることが好ましく、25,500cm/g以下であることがより好ましく、20,000cm/g以下であることがさらに好ましい。石膏のブレーン比表面積値が上記上限値以下であることで、可使時間を良好に得ることができる。
【0017】
石膏の含有量は、セメント100質量部に対して、30質量部以上70質量部以下であることが好ましく、35質量部以上65質量部以下であることがより好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがさらに好ましい。石膏の含有量が上記範囲内であることで、初期強度発現性を良好にし、かつ、可使時間を良好にすることができる。
【0018】
(炭酸リチウム)
本発明のセメント組成物は、本組成物の硬化を促進し、短時間での強度発現性を実現する目的として、炭酸リチウムを含有する。炭酸リチウムは、急硬材におけるカルシウムアルミネート系化合物の硬化を促進し、初期強度発現性を良好にする。炭酸リチウム以外のリチウム塩もカルシウムアルミネートの硬化を促進することは知られているが、炭酸リチウム以外のリチウム塩を使用すると、まず、流動化することができず、また、可使時間も確保できない。
【0019】
炭酸リチウムの含有量は、セメント100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上7.5質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以上5.0質量部以下であることがさらに好ましい。炭酸リチウムの含有量が上記範囲内であることで、初期強度発現性を良好にし、かつ、可使時間を良好にすることができる。
【0020】
(アモルファス酸化チタン)
本発明で使用するアモルファス酸化チタンは、規則的な原子配列を持たない不定形構造の非晶質である。本発明で使用する非晶質であるアモルファス酸化チタンとは、結晶性を有していない酸化チタンをいい、結晶性に関してはある程度の幅がある。すなわち、アモルファス酸化チタンの結晶性の幅としては、光学的に結晶構造は確認されないが、X線回折により全く結晶性のピークが確認されない完全な非晶質状態の酸化チタンからブロードな結晶性のピークが確認される酸化チタンまで存在する。
本発明で使用するアモルファス酸化チタンは、低温時及び若材齢時での水和反応を促進し、低温環境下における若材齢時の強度を向上させることができる。また、本発明で使用するアモルファス酸化チタンは、低温環境下だけでなく、常温環境下においても若材齢時の強度を向上させることができる。本明細書において、低温環境とは、コンクリート組成物を打設に用いる環境が5℃以下であることをいう。
本発明で使用するアモルファス酸化チタンは、例えば、塩素法及び硫酸法により得ることができる。塩素法は、原料のルチル鉱石をコークス、塩素と反応させ、一度ガス状の四塩化チタンにし、ガス状の四塩化チタンを冷却して液状にした後、高温で酸素と反応させ、塩素ガスを分離することでアモルファス酸化チタンが得られる。また、硫酸法は、原料のイルメナイト鉱石を濃硫酸に溶解させ、不純物である鉄分を硫酸鉄として分離し、一度オキシ硫酸チタンにし、これを加水分解しオキシ水酸化チタンにし沈殿させ、この沈殿物を洗浄及び乾燥し、焼成することでアモルファス酸化チタンが得られる。
【0021】
アモルファス酸化チタンの平均一次粒子径は、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましく、0.7μm以上4.0μm以下であることがより好ましく、0.9μm以上3.0μm以下であることがさらに好ましい。アモルファス酸化チタンの平均一次粒子径が上記範囲内であることで、若材齢時での水和反応を促進し、かつ、セメント組成物の適正な流動性を得ることができる。
なお、アモルファス酸化チタンの平均一次粒子径は、レーザー式粒度分布測定器により、粒度分布における累積体積が50%となる粒子径(中位径)として求めることができる。
【0022】
アモルファス酸化チタンの密度は、2.0g/cm以上3.5g/cm以下であることが好ましく、2.2g/cm以上3.3g/cm以下であることがより好ましく、2.4g/cm以上3.1g/cm以下であることがさらに好ましい。アモルファス酸化チタンの密度が上記範囲内であることで、若材齢時での水和反応を促進し、かつ、セメント組成物の適正な流動性を得ることができる。
なお、アモルファス酸化チタンの密度は、ガス置換法により求めることができ、具体的には、サンプルの入った試料室を加圧し、バルブを開けて膨張室へガスを拡散させ、その際生じる圧力変化からサンプルの体積を算出し、サンプル重量をサンプル体積で除することで密度を算出することができる。
【0023】
アモルファス酸化チタンのブレーン比表面積値は、5,000cm/g以上15,000cm/g以下であることが好ましく、5,500cm/g以上12,500cm/g以下であることがより好ましく、6,000cm/g以上10,000cm/g以下であることがさらに好ましい。アモルファス酸化チタンのブレーン比表面積値が上記範囲内であることで、若材齢時での水和反応を促進することができる。
アモルファス酸化チタンのブレーン比表面積値は、上記のセメントのブレーン比表面積値と同様の方法にて求められる。
【0024】
アモルファス酸化チタンの含有量は、セメント100質量部に対して、0.3質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.4質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。アモルファス酸化チタンの含有量が上記範囲内であることで、若材齢時での水和反応を促進することができる。
【0025】
(凝結遅延剤)
本発明のセメント組成物は、セメント組成物スラリーの可使時間を調整することを目的として、凝結遅延剤を含有することが好ましい。
凝結遅延剤としては、無機凝結遅延剤や有機系凝結遅延剤等が挙げられる。
無機凝結遅延剤としては、例えば、リン酸塩、ケイフッ化物、水酸化銅、ホウ酸又はその塩、酸化亜鉛、塩化亜鉛、炭酸化亜鉛等が挙げられる。
有機系凝結遅延剤としては、例えば、オキシカルボン酸類(無水クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコヘプトン酸、オキシマロン酸、乳酸等)又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、砂糖に代表される糖類等が挙げられる。
凝結遅延剤は、これらの一種又は二種以上を使用することができる。更に、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、ケイ酸塩等といった無機凝結遅延剤と、上記オキシカルボン酸類又はその塩とを、組み合わせた混合物も使用できる。これらの中では、オキシカルボン酸類又はその塩単独か、無機凝結遅延剤とオキシカルボン酸類又はその塩との混合物が好ましい。
【0026】
凝結遅延剤の含有量は、セメント100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上7.5質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以上5.0質量部以下であることがさらに好ましい。凝結遅延剤の含有量が上記範囲内であることで、必要な可使時間に調整することが容易になり、かつ、硬化時間が長くなりすぎず、硬化不良を起こしにくい。
【0027】
本発明のセメント組成物は、性能に悪影響を与えない範囲で、膨張材、ガス発泡物質、減水剤、AE剤、防錆剤、撥水剤、抗菌剤、着色剤、防凍剤、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、及びパルプスラッジ焼却灰等の混和材料、消泡剤、増粘剤、収縮低減剤、スチールファイバー、ビニロンファイバー、炭素繊維、及びワラストナイト繊維等の繊維物質、ポリマー、ベントナイト、セピオライトなどの粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を含有してもよい。
【0028】
本発明のセメント組成物において、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
混合装置としては、既存のいかなる装置、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
【0029】
[モルタル]
本発明のモルタルは、既述の本発明のセメント組成物と細骨材とを含有するものである。
【0030】
(細骨材)
本発明で使用する細骨材の化学成分は、CaOの割合が85質量%以上、SiOの割合が0.2質量%以上15質量%以下であることが好ましい。細骨材の化学成分として、CaOの割合及びSiOの割合が上記範囲内であることで、高い流動性、中性化抵抗性や鉄筋との付着強度、防錆に優れる超速硬グラウト材料が得られる。
CaOの割合は、87質量%以上であることが好ましく、89質量%以上であることがより好ましく、91質量%以上であることがさらに好ましい。CaOの割合の上限は、特に限定されないが、99質量%以下であることが好ましく、98.5質量%以下であることがより好ましい。
SiOの割合は、0.25質量%以上13質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上11質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
細骨材の化学成分を上記範囲内及び後述範囲内にするために、珪砂、方解石、変成岩であるスカポライト、火成岩である石英、カリ長石等を混合させて調製する。化学成分は、本発明の範囲に入るよう、蛍光X線回折で確認しながら、各岩を混合し調整する。なお、本発明で使用する細骨材の化学成分は、酸化物換算で計算したものである。
【0031】
本発明で使用する細骨材は、化学成分として、KO、SO3、Fe、Alを含有することが好ましい。細骨材がKO、SO3、Fe、Alを含有することで、高い流動性、中性化抵抗性や鉄筋との付着強度、防錆に寄与することができる。
Oの割合は、40ppm以上3,000ppm以下であることが好ましく、50ppm以上2,500ppm以下であることがより好ましく、60ppm以上2,250ppm以下であることがさらに好ましく、70ppm以上2,000ppm以下であることがよりさらに好ましい。
SOの割合は、40ppm以上3,000ppm以下であることが好ましく、50ppm以上2,500ppm以下であることがより好ましく、60ppm以上2,250ppm以下であることがさらに好ましく、70ppm以上2,000ppm以下であることがよりさらに好ましい。
Feの割合は、0.1以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.13以上2.5質量%以下であることがより好ましく、0.15以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
Alの割合は、0.1以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.13以上2.5質量%以下であることがより好ましく、0.15以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明で使用する細骨材は、JIS A1121「ロサンゼルス試験機による粗骨材のすりへり試験」による粗粒率の低下が70%以上100%以下であることが好ましく、75%以上99%以下であることがより好ましく、80%以上98%以下であることがさらに好ましく、85%以上97%以下であることがよりさらに好ましい。細骨材の粗粒率の低下が上記下限値以上であることで、鉄筋との付着力を向上させることができる。また、細骨材の粗粒率の低下が上記上限値以下であることで、中性化抵抗性を向上させることができ、中性化による鉄筋の発錆の低減に寄与する。なお、本明細書において「細骨材の粗粒率」とは、ふるい分けを行った結果より求まる値であって、細骨材の大きさの概略値を示す指数をいう。また、本明細書において「細骨材の粗粒率の低下」とは、ロサンゼルス試験機による粗骨材のすりへり試験の試験前の粗粒率と試験後の粗粒率を対比し、試験後の粗粒率の低下した割合をいう。
細骨材の粗粒率の低下を上記範囲内にするために、珪砂、方解石、変成岩であるスカポライト、火成岩である石英、カリ長石等を混合させて調製する。細骨材の粗粒率の低下は、本発明の範囲に入るよう、ロサンゼルス試験機による粗骨材のすりへり試験の試験で確認しながら、各岩を混合し調整する。
細骨材の粗粒率の低下が上記範囲内であれば、細骨材の産地や原産は特に限定されるものではない。
【0033】
細骨材の含有割合は、セメント100質量部に対して、40質量部以上300質量部以下であることが好ましく、75質量部以上250質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上200質量部以下であることがさらに好ましい。細骨材の含有割合が上記下限値以上であることで、発熱量を低減することができ、収縮を抑制し、ひび割れを抑制することができる。また、細骨材の含有割合が上記上限値以下であることで、高い流動性、中性化抵抗性や鉄筋との付着強度、防錆に優れるモルタルを得ることができる。
【0034】
本発明のモルタルは、セメント組成物と細骨材と水とを混錬してなる。本発明の練り混ぜ水量は、使用する目的・用途や各材料の含有割合によって変化するため特に限定されるものではないが、セメント組成物100質量部に対して、10質量部以上70質量部以下であることが好ましく、14質量部以上65質量部以下であることがより好ましく、16質量部以上60質量部以下であることがさらに好ましい。練り混ぜ水量が上記下限値以上であることで、流動性の低下を抑制し、発熱量が極めて大きくなることを抑制することができる。また、練り混ぜ水量が上記上限値以下であることで、強度発現性を確保することができる。
【0035】
本発明において、セメント組成物と細骨材と水との練り混ぜ方法は特に限定されるものではないが、回転数が900rpm以上のハンドミキサ、通常の高速グラウトミキサ、又は二軸型の強制ミキサを使用することが好ましい。
【0036】
ハンドミキサや高速グラウトミキサでの練り混ぜは、例えば、ペール缶等の容器やミキサにあらかじめ所定の水を入れ、その後ミキサを回転させながらセメント組成物及び細骨材を投入し、3分以上練り混ぜることが好ましい。又、強制ミキサでの練り混ぜは、例えば、あらかじめセメント組成物及び細骨材をミキサに投入し、ミキサを回転させながら所定の水を投入し、少なくとも4分以上練り混ぜることが好ましい。練り混ぜ時間が所定時間未満では、練り不足のため適切なモルタルの流動性が得られない場合がある。
練り混ぜられたモルタルは、通常、手動式注入ガン、ダイヤフラム式手押しポンプ、あるいは、スクイズ式等のモルタルポンプにより施工箇所まで圧送し、充填施工されることで、本発明のモルタルを用いてなる硬化体となる。
【実施例0037】
以下、実施例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
以下、各実施例にて本発明を具体的に説明する。
【0039】
<使用材料>
・セメント:普通ポルトランドセメント、ブレーン値3,300cm/g、市販品
・急硬材:非晶質、主成分12CaO・7Alのカルシウムアルミネート、ブレーン値6,000cm/g
・石膏:無水石膏、ブレーン値5,000cm/g
・炭酸リチウム:市販品
・酸化チタン(A):アモルファス、平均一次粒子径1.65μm、密度2.90g/cm、ブレーン値7,800cm/g、市販品
・酸化チタン(B):結晶、アナターゼ型、平均一次粒子径2.69μm、密度3.92g/cm、ブレーン値5,800cm/g、キシダ化学社製、試薬
・酸化チタン(C):結晶、アナターゼ型、平均一次粒子径4.62μm、密度3.90g/cm、ブレーン値11,000cm/g、和光純薬社製、試薬
・酸化チタン(D):結晶、ルチル型、平均一次粒子径1.21μm、密度4.13g/cm、ブレーン値8,000cm/g、和光純薬社製、試薬
・凝結遅延剤:無水クエン酸、市販品
【0040】
<試験方法>
・ゲル化時間:セメント組成物のゲル化を温度により測定した。カップに各実施例及び比較例で調整したセメント組成物を採取し、練り上がり温度から2℃上昇した時点をゲル化時間(可使時間)とした。
・圧縮強度:JIS R 5201に準拠した。供試体サイズは、φ40mm×160mmとし、材齢1時間及び3時間のものに対して評価した。
【0041】
[実施例1]
セメント100質量部に対して、表1に示す酸化チタンからなるセメント組成物を調整した。この際、練り水はセメント組成物100質量部に対して、35質量部を使用した。試験は、環境温度5℃、20℃において、ゲル化時間、圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2~11、比較例1~5]
配合を表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてセメント組成物を調整した。各種評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から、セメント組成物は、アモルファス酸化チタンを含有することで、常温環境下だけでなく、低温環境下においても若材齢時の強度が良好であり、適度な可使時間を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のコンクリート組成物を使用することにより、低温環境下における若材齢時の強度が良好であり、適度な可使時間を有することから、低温環境下での打設が好適にできる。