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特開2022-139531光送信機および可変光フィルタの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139531
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】光送信機および可変光フィルタの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/40 20130101AFI20220915BHJP
   H04B 10/079 20130101ALI20220915BHJP
【FI】
H04B10/40
H04B10/079 190
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039962
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】富岡 威泰
(72)【発明者】
【氏名】安田 秀一
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AA51
5K102AD01
5K102AH02
5K102KA31
5K102LA04
5K102LA52
5K102LA54
5K102MA01
5K102MB10
5K102MC01
5K102MC11
5K102MD02
5K102MD03
5K102MH02
5K102MH13
5K102MH22
5K102PB01
5K102PB13
5K102PC12
5K102PC16
5K102PH01
5K102PH13
5K102PH31
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】可変光フィルタを備える光送信機から出力される光信号の特性を改善する。
【解決手段】光送信機1は、光変調器13、可変光フィルタ16、受光器PD1、PD2、幅算出部28a、温度センサ17、調整部28b及び補正部28cを備える。可変光フィルタ16は、光変調器13の出力側に設けられ、制御電圧に対応する周波数の光を透過する。受光器PD1、PD2のモニタ値を基に、可変光フィルタ16で発生する光損失を検出する。幅算出部28aは、検出される光損失が所定の閾値より小さくなる制御電圧の範囲の幅を算出する。温度センサ17は、可変光フィルタ16の近傍の温度を検知する。調整部28bは、温度センサ17により検知される温度に基き制御電圧を調整する。補正部28cは、光損失が閾値以上になったときに、ゼロより大きく且つ幅算出部28aが算出する幅の2分の1以下の範囲内で所定量だけ制御電圧をシフトさせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調器と、
前記光変調器の出力側に設けられ、制御電圧に対応する周波数の光を透過する可変光フィルタと、
前記可変光フィルタにおいて発生する光損失を検出する検出部と、
前記検出部により検出される光損失が所定の閾値より小さくなる、前記制御電圧の範囲の幅を算出する幅算出部と、
前記可変光フィルタの近傍の温度を検知する温度センサと、
前記温度センサにより検知される温度に基づいて前記制御電圧を調整する調整部と、
前記光損失が前記閾値以上になったときに、前記制御電圧を、ゼロより大きく且つ前記幅の2分の1以下の範囲内で決められる所定量だけシフトさせる補正部と、
を備える光送信機。
【請求項2】
前記補正部は、前記制御電圧を前記幅の2分の1だけシフトさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の光送信機。
【請求項3】
前記補正部は、前記可変光フィルタの近傍の温度が上昇しているか下降しているかに対応する方向に、前記制御電圧を前記所定量だけシフトさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の光送信機。
【請求項4】
前記調整部が前記制御電圧を調整したことに起因して前記光損失が前記閾値以上になったときには、前記補正部は、前記調整部が前記制御電圧をシフトさせた方向と逆方向に前記制御電圧を前記所定量だけシフトさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の光送信機。
【請求項5】
前記検出部は、前記可変光フィルタの入力光の強度を検知する第1の受光器および前記可変光フィルタの出力光の強度を検知する第2の受光器を備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の光送信機。
【請求項6】
制御電圧に対応する周波数の光を透過する可変光フィルタを制御する制御方法であって、
前記可変光フィルタにおいて発生する光損失を検出し、
前記光損失が所定の閾値より小さくなる制御電圧の範囲の幅を算出し、
前記光損失が前記閾値以上になったときに、前記制御電圧を、ゼロより大きく且つ前記幅の2分の1以下の範囲内で決められる所定量だけシフトさせる
ことを特徴とする可変光フィルタの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信機および光送信機に実装される可変光フィルタを制御する方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
高出力かつ高い光信号対雑音比を実現する光送信機は、たとえば、レーザ光源、光変調器、光増幅器、および可変光フィルタを備える。この場合、光変調器は、レーザ光源の出力光をデータ信号で変調して光信号を生成する。光増幅器は、光変調器により生成される光信号を増幅する。可変光フィルタは、光増幅器の出力側に設けられ、指定された周波数の光を透過させるように制御される。
【0003】
可変光フィルタの透過周波数は、例えば、ディザ信号を利用するフィードバック系で制御される。この場合、可変光フィルタの透過周波数を制御する制御電圧にディザ信号が重畳される。ディザ信号は、データレートと比較して十分に周波数の低い低周波信号により実現される。ここで、制御電圧にディザ信号が重畳されると、可変光フィルタの出力光がディザ信号の周波数成分を含むことになる。したがって、可変光フィルタの出力光に含まれるディザ信号の周波数成分をモニタすることで、可変光フィルタの状態を制御できる。一例としては、可変光フィルタの出力光に含まれるディザ信号の周波数成分を最小化することで、可変光フィルタの透過周波数が目標値に近づく。
【0004】
なお、波長可変フィルタの透過スペクトルの中心波長を受信光の波長にトラッキングする方法が提案されている(例えば、特許文献1)。また、ディザ信号を用いて波長可変光バンドパスフィルタを制御する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。さらに、光チューナブルフィルタの入力側および出力側に設けられる光パワー検出器を用いてその光チューナブルフィルタの中心波長を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-102555号公報
【特許文献2】特開2017-147622号公報
【特許文献3】米国特許公開2010/0142956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の光送信機の出力を安定させるためには、常時、ディザ信号を利用するフィードバック制御を行うことが好ましい。ところが、可変光フィルタに印加する制御電圧にディザ信号が重畳されると、光送信機の出力が変動し、伝送特性が劣化してしまう。例えば、出力光信号の光スペクトラムの変動(または、チルト)が発生し、伝送特性が悪くなる。なお、近年では、送信データの大容量化に伴い、ボーレートが高くなり、また、シンボル毎に送信されるビット数も多くなっている。このため、ディザ信号に起因する出力の変動を抑制することは、さらに重要になってきている。
【0007】
本発明の1つの側面に係わる目的は、可変光フィルタを備える光送信機から出力される光信号の特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様に係わる光送信機は、光変調器と、前記光変調器の出力側に設けられ、制御電圧に対応する周波数の光を透過する可変光フィルタと、前記可変光フィルタにおいて発生する光損失を検出する検出部と、前記検出部により検出される光損失が所定の閾値より小さくなる、前記制御電圧の範囲の幅を算出する幅算出部と、前記可変光フィルタの近傍の温度を検知する温度センサと、前記温度センサにより検知される温度に基づいて前記制御電圧を調整する調整部と、前記光損失が前記閾値以上になったときに、前記制御電圧を、ゼロより大きく且つ前記幅の2分の1以下の範囲内で決められる所定量だけシフトさせる補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上述の態様によれば、可変光フィルタを備える光送信機から出力される光信号の特性が改善する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係わる光送信機の一例を示す図である。
図2】可変光フィルタの特性の一例を示す図である。
図3】可変光フィルタを制御するための制御情報の一例を示す図である。
図4】許容電圧幅を算出する方法の一例を示す図である。
図5】温度に基づく制御電圧のフィードフォワード制御の一例を示す図である。
図6】フィードフォワード制御における誤差の蓄積により光損失が増加するケースの一例を示す図である。
図7図6に示すケースにおいて発生する制御電圧の誤差を訂正する方法の一例を示す図である。
図8】フィードフォワード制御における誤差の蓄積により光損失が増加するケースの他の例を示す図である。
図9図8に示すケースにおいて発生する制御電圧の誤差を訂正する方法の他の例を示す図である。
図10】事前準備の一例を示すフローチャート(その1)である。
図11】事前準備の一例を示すフローチャート(その2)である。
図12】可変光フィルタの制御電圧を決定するフィードフォワード制御の一例を示すフローチャート(その1)である。
図13】可変光フィルタの制御電圧を決定するフィードフォワード制御の一例を示すフローチャート(その2)である。
図14】フィードフォワードで制御電圧を調整する構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係わる光送信機の一例を示す。本発明の実施形態に係わる光送信機1は、例えば、光トランシーバ内に実装される。この場合、光トランシーバは、光伝送装置の中に実装される。
【0012】
光送信機1は、ドライバ11、レーザ光源(TLA:Tunable Laser Assembly)12、光変調器13、光増幅器(EDF:Erbium-Doped Fiber)14、励起光源(Pump)15、可変光フィルタ(TOF:Tunable Optical Filter)16、受光器PD1、受光器PD2、温度センサ17、およびプロセッサ20を備える。なお、光送信機1は、図1に示していない他の素子または回路を備えてもよい。
【0013】
ドライバ11は、指定される変調方式に従って送信データから駆動信号を生成する。レーザ光源12は、プロセッサ20により指定された周波数の連続光を生成する。光変調器13は、レーザ光源12により生成される連続光を駆動信号で駆動することにより光信号を生成する。光増幅器14は、光変調器13から出力される光信号を増幅する。励起光源15は、光増幅器14に励起光を供給する。
【0014】
可変光フィルタ16は、プロセッサ20により指定された周波数の光を透過させる。受光器PD1は、光増幅器14の出力光を電気信号に変換する。即ち、受光器PD1は、可変光フィルタ16の入力光を電気信号に変換する。受光器PD2は、可変光フィルタ16の出力光を電気信号に変換する。なお、受光器PD1および受光器PD2は、それぞれ、例えば、フォトダイオードにより実現される。温度センサ17は、可変光フィルタ16の近傍の温度を検知する。
【0015】
プロセッサ20は、制御プログラムを実行することにより、光送信機1の動作を制御する。この実施例では、プロセッサ20は、制御プログラムを実行することにより、ドライバ制御部21、TLA制御部22、ABC制御部23、入力モニタ24、Pump制御部25、出力モニタ26、温度モニタ27、TOF制御部28の機能を提供する。なお、制御プログラムは、プロセッサ20の内部に保存されてもよいし、プロセッサ20の外部に保存されてもよい。また、プロセッサ20は、メモリ29を備える。メモリ29は、プロセッサ20に内蔵されていてもよいし、プロセッサ20に接続されていてもよい。
【0016】
ドライバ制御部21は、ドライバ11を制御する。例えば、ドライバ11は、ドライバ制御部21から与えられる指示に基づいて駆動信号の波形を調整する。TLA制御部22は、レーザ光源12を制御する。例えば、レーザ光源12は、TLA制御部22により指定される周波数の連続光を生成する。ABC制御部23は、光変調器13のバイアスを制御する。
【0017】
入力モニタ24は、受光器PD1の出力信号を利用して光増幅器14の出力光の強度をモニタする。すなわち、入力モニタ24は、可変光フィルタ16の入力光の強度をモニタできる。Pump制御部25は、励起光源15から出力される励起光の強度を調整することで光増幅器14の出力光の強度を制御する。一例としては、Pump制御部25は、光増幅器14の出力光の強度が一定のレベルに保持されるように励起光源15を制御する。このとき、Pump制御部25は、入力モニタ24によるモニタ結果を参照してもよい。
【0018】
出力モニタ26は、受光器PD2の出力信号を利用して可変光フィルタ16の出力光の強度をモニタする。温度モニタ27は、温度センサ17の出力信号を利用して可変光フィルタ16の近傍の温度をモニタする。
【0019】
TOF制御部28は、可変光フィルタ16の透過周波数を制御する。このとき、TOF制御部28は、入力モニタ24、出力モニタ26、温度モニタ27のモニタ結果に基づいて可変光フィルタ16の透過周波数を制御する。例えば、TOF制御部28は、温度モニタ27のモニタ結果を参照することにより、可変光フィルタ16の近傍の温度に基づいて可変光フィルタ16の透過周波数を制御できる。また、TOF制御部28は、入力モニタ24および出力モニタ26のモニタ結果を参照することにより、可変光フィルタ16において発生する光損失に基づいて可変光フィルタ16の透過周波数を制御できる。
【0020】
なお、受光器PD1、入力モニタ24、受光器PD2、出力モニタ26は、可変光フィルタ16において発生する光損失を検出する検出部の一例である。また、光増幅器14の出力光の強度が一定のレベルに保持されるケースでは、光損失を検出する検出部は、受光器PD2および出力モニタ26を用いて実現され得る。
【0021】
TOF制御部28は、幅算出部28a、調整部28b、および補正部28cを備える。調整部28bは、上述したように、可変光フィルタ16の近傍の温度に基づいて可変光フィルタ16の透過周波数を調整する。幅算出部28aおよび補正部28cについては後で説明する。
【0022】
TOF制御部28は、可変光フィルタ16の透過周波数を制御するための制御電圧を算出する。なお、TOF制御部28と可変光フィルタ16との間には、不図示のデジタル/アナログ変換器および電圧生成回路が設けられる。この場合、TOF制御部28は、算出した制御電圧を表すデジタル信号を出力する。デジタル/アナログ変換器は、このデジタル信号をアナログ信号に変換する。電圧生成回路は、アナログ信号が表す制御電圧を生成する。そして、この制御電圧が可変光フィルタ16に印加される。ここで、可変光フィルタ16の透過周波数は、印加される制御電圧に応じて変化するものとする。したがって、TOF制御部28は、制御電圧を調整することで可変光フィルタ16の透過周波数を制御できる。
【0023】
図2は、可変光フィルタ16の特性の一例を示す。可変光フィルタ16は、図2(a)に示すように、透過帯の中心周波数が光信号のスペクトラムの中心周波数と一致するように制御される。ここで、可変光フィルタ16の透過帯の中心周波数は、制御電圧に応じて変化する。よって、TOF制御部28は、透過帯の中心周波数が光信号のスペクトラムの中心周波数と一致するように制御電圧を調整する。
【0024】
図2(b)は、制御電圧と可変光フィルタ16の出力光の強度との関係を示す。なお、可変光フィルタ16の入力光の周波数および強度は、一定であるものとする。また、可変光フィルタ16の出力光の強度は、図1に示す受光器PD2により検出される。
【0025】
制御電圧が目標電圧に調整されているときは、可変光フィルタ16における光損失は最小である。即ち、可変光フィルタ16の出力光の強度は最大である。また、制御電圧が目標電圧からシフトすると、可変光フィルタ16における光損失は増加する。図2(b)に示す例では、制御電圧が目標電圧からΔVだけシフトすると、可変光フィルタ16における光損失はΔLだけ増加する。したがって、制御電圧が目標電圧からシフトすると、可変光フィルタ16の出力光の強度は低下する。
【0026】
図3は、可変光フィルタ16を制御するための制御情報の一例を示す。図3(a)は、制御電圧/周波数変換テーブルの一例を示す。制御電圧/周波数変換テーブルには、制御電圧と可変光フィルタ16の透過帯の中心周波数との関係を表す情報が格納されている。したがって、可変光フィルタ16の透過帯の中心周波数が指定されると、TOF制御部28は、制御電圧/周波数変換テーブルを参照することにより、可変光フィルタ16に印加すべき制御電圧を決定できる。例えば、光送信機1が、中心周波数が193.20THzの光信号を送信するときは、可変光フィルタ16の透過帯の中心周波数を193.20THzに設定することが要求される。この場合、制御電圧/周波数変換テーブルを参照することにより、制御電圧=10.45Vが得られる。
【0027】
図3(b)は、温度変化/補正値変換テーブルの一例を示す。温度変化/補正値変換テーブルには、可変光フィルタ16の近傍の温度と制御電圧の補正値との関係を表す情報が格納されている。なお、可変光フィルタ16の透過特性は、温度に依存する。この場合、初期設定において可変光フィルタ16における光損失を最小化しても、その後に可変光フィルタ16の近傍の温度が変化すると、可変光フィルタ16における光損失が大きくなることがある。よって、光送信機1は、温度変化に起因する可変光フィルタ16の透過特性の劣化を補償する機能を備える。なお、図3(b)に示す「温度変化」は、初期設定においては、基準温度(例えば、25℃)からの差分を表す。また、後述する調整シーケンスが定期的に実行されるときは、「温度変化」は、前回の調整シーケンスが実行されたときの温度からの変化を表してもよい。
【0028】
TOF制御部28は、温度センサ17を利用して可変光フィルタ16の近傍の温度をモニタする。そして、この温度が変化したときは、TOF制御部28は、温度変化/補正値変換テーブルを参照することにより、対応する補正値を取得する。例えば、可変光フィルタ16の近傍の温度が2度上昇したときは、TOF制御部28は、温度変化/補正値変換テーブルを参照することにより、補正値=-0.16Vを得る。この場合、TOF制御部28は、制御電圧を0.16Vだけ低下させる。この結果、温度変化に起因する可変光フィルタ16の透過特性の劣化が補償され、光損失が小さい状態が保持される。
【0029】
なお、制御電圧/周波数変換テーブルおよび温度変化/補正値変換テーブルに格納する情報は、例えば、可変光フィルタ16のベンダにより提供される。或いは、測定により制御電圧/周波数変換テーブルおよび温度変化/補正値変換テーブルに格納する情報を取得してもよい。
【0030】
次に、光送信機1において可変光フィルタ16を制御する手順について説明する。尚、図3(a)に示す制御電圧/周波数変換テーブルおよび図3(b)に示す温度変化/補正値変換テーブルは、プロセッサ20がアクセス可能なメモリ(例えば、メモリ29)に保存されているものとする。
【0031】
<事前準備>
TOF制御部28は、可変光フィルタ16の制御を開始する前に、許容電圧幅を算出する。ここで、許容電圧幅の算出においては、許容損失を表す閾値が使用される。
【0032】
図4は、許容電圧幅を算出する方法の一例を示す。なお、この実施例では、光増幅器14の出力光の強度が一定のレベルに保持されているものとする。すなわち、可変光フィルタ16の入力光の強度は一定である。よって、受光器PD1および入力モニタ24により検知される入力強度は一定である。なお、以下の記載では、可変光フィルタ16の入力光の強度を「PD1」と呼ぶことがある。また、可変光フィルタ16の出力光の強度を「PD2」と呼ぶことがある。
【0033】
TOF制御部28は、目的周波数に対応する制御電圧を特定する。目的周波数は、例えば、レーザ光源12から出力される連続光の周波数に相当する。そして、TOF制御部28は、可変光フィルタ16の近傍の温度に基づいて制御電圧を補正する。なお、以下の記載では、温度センサ17により検知される可変光フィルタ16の近傍の温度を「モニタ温度」と呼ぶことがある。
【0034】
一例として、目的周波数が193.25THzであり、モニタ温度が27.5℃であるものとする。この場合、まず、図3(a)に示す制御電圧/周波数変換テーブルを参照することにより、制御電圧として「10.65V」が得られる。また、モニタ温度は、基準温度(ここでは、25℃)よりも2.5度高い。よって、温度変化/補正値変換テーブルを参照することにより、下式の通り補正値が算出される。
補正値=(-0.16)+{(-0.24)-(-0.16)}×0.5=-0.20
【0035】
そして、この補正値を制御電圧/周波数変換テーブルから得られた制御電圧に加算することにより、可変光フィルタ16に印加すべき制御電圧VCが得られる。すなわち、制御電圧VCとして「10.45V」が得られる。
【0036】
TOF制御部28は、上述のようにして算出した制御電圧VCを可変光フィルタ16に印加する。なお、制御電圧VCが印加されると、図4に示すように、可変光フィルタ16の光損失がほぼ最小になる。
【0037】
続いて、TOF制御部28の幅算出部28aは、可変光フィルタ16の光損失をモニタしながら制御電圧をスイープする。例えば、幅算出部28aは、制御電圧を0.1Vずつシフトさせながら、それぞれに制御電圧に対して光損失を算出する。ここで、可変光フィルタ16の光損失は、可変光フィルタ16の入力光の強度PD1および可変光フィルタ16の出力光の強度PD2を用いて下式により算出される。
光損失=10×log10(PD1/PD2)
【0038】
そして、幅算出部28aは、可変光フィルタ16の光損失が閾値THと一致する制御電圧を検出する。具体的には、幅算出部28aは、制御電圧をVCから低下させてゆき、可変光フィルタ16の光損失が閾値THと一致するときの制御電圧(最小制御電圧VL)を検出する。また、幅算出部28aは、制御電圧をVCから増加させてゆき、可変光フィルタ16の光損失が閾値THと一致するときの制御電圧(最大制御電圧VH)を検出する。そして、最小制御電圧VLと最大制御電圧VHとの差分を計算することにより許容電圧幅Wが得られる。なお、算出された許容電圧幅Wは、メモリ29に保存される。
【0039】
閾値THは、光送信機1において許容される可変光フィルタ16の光損失の最大値(すなわち、許容損失)を表す。よって、許容電圧幅Wは、可変光フィルタ16の光損失が許容損失より小さくなる制御電圧の変動範囲を表す。
【0040】
<フィードフォワード制御>
図5は、温度に基づく制御電圧のフィードフォワード制御の一例を示す。この例では、可変光フィルタ16の入力光の強度(即ち、PD1)は、一定であるものとする。また、TOF制御部28の調整部28bは、定期的に、制御電圧を調整する調整シーケンスを実行するものとする。さらに、前回の調整シーケンスが実行されたときのモニタ温度がT1であったものとする。そして、前回の調整シーケンスにおいて、調整部28bは、制御電圧をV1に調整している。この結果、可変光フィルタ16の出力光の強度はP1である。また、可変光フィルタ16の光損失はL1である。
【0041】
この後、可変光フィルタ16の近傍の温度が低下し、次の調整シーケンスの実行時のモニタ温度がT2であるものとする。ここで、可変光フィルタの透過特性は、温度に依存して変化する。このため、仮に、制御電圧がV1のまま保持されると、可変光フィルタ16の出力光の強度はP1からP2に低下し、可変光フィルタ16の光損失はL1からL2に増加する。そこで、調整部28bは、温度変化に起因する光損失の増加を補償するように制御電圧を調整する。具体的には、下式に基づいて新たな制御電圧が算出される。
新制御電圧=旧制御電圧+補正値
補正値=(現在のモニタ温度-前回のモニタ温度)×単位温度当たりの補正値の変化量
【0042】
図3(b)に示す実施例では、単位温度当たりの補正値の変化量は0.08Vである。よって、例えば、前回の調整シーケンスの実行時のモニタ温度が26℃であり、現在のモニタ温度が24.5℃であるケースでは、「1.5度」に「0.08V/度」を乗算することで、補正値=+0.12Vが得られる。この場合、新たな制御電圧V2は、旧制御電圧V1に「+0.12」を加算することで得られる。
【0043】
このように、調整部28bは、制御電圧をV1からV2に更新する。そして、更新された制御電圧が可変光フィルタ16に印加される。よって、可変光フィルタ16の出力光の強度はP2からP3になり、可変光フィルタ16における光損失はL2からL3に減少する。なお、調整部28bは、上述の調整シーケンスを定期的に実行する。したがって、小さい光損失が維持される。
【0044】
<誤差訂正>
上述のように、調整部28bは、温度に基づくフィードフォワード制御を定期的に実行して制御電圧を調整する。ただし、このフィードフォワード制御では、図3(b)に示す温度変化/補正値変換テーブルを使用する近似演算が行われる。このため、各調整シーケンスにおいて誤差が発生し得る。
【0045】
図6は、フィードフォワード制御における誤差の蓄積により光損失が増加するケースの一例を示す。この例では、各調整シーケンスの実行時の温度がT1、T2、・・・、Tnと変化するものとする。例えば、光送信機1の初期設定時にモニタ温度がT1であるものとする。また、受光器PD2の出力光の強度で表される可変光フィルタ16の透過特性はPD2(T1)である。そして、可変光フィルタ16の光損失特性は、L(T1)で表される。この場合、制御電圧V1が印加されると、可変光フィルタ16における光損失はL1である。
【0046】
次の調整シーケンスの実行時の温度はT2である。この場合、可変光フィルタ16の透過特性はPD2(T1)からPD2(T2)に変化し、可変光フィルタ16の光損失特性はL(T1)からL(T2)に変化する。このとき、可変光フィルタ16の光損失を最小化するためには、制御電圧はVxに調整されるべきである。すなわち、モニタ温度がT1からT2に変化したときの補正値は、Vx-V1であることが好ましい。ところが、フィードフォワード制御においては、誤差が発生することがある。この実施例では、モニタ温度および温度変化/補正値変換テーブルに基づいて算出される補正値が、理想的な補正値より大きくなっている。この結果、新たな制御電圧の算出結果はV2である。
【0047】
この後、調整部28bは、上述の調整シーケンスを定期的に実行する。このとき、各調整シーケンスにおいて、同様の誤差が発生するものとする。すなわち、各調整シーケンスにおいて、算出される補正値が理想的な補正値より大きいものとする。この場合、誤差が蓄積し、やがて、制御電圧の調整後における可変光フィルタ16の光損失が許容損失(即ち、閾値TH)より大きくなってしまう。
【0048】
図6に示す実施例では、n回目の調整シーケンスの実行時にモニタ温度がTnである。このとき、透過特性はPD2(Tn)であり、光損失特性はL(Tn)である。そして、調整シーケンスを実行することにより制御電圧がVnに調整されると、可変光フィルタ16の光損失Lnが閾値THより大きくなってしまう。なお、Vyは、モニタ温度がTnであるときの理想的な制御電圧を表している。
【0049】
このように、各調整シーケンスにおける制御電圧の補正値が誤差を含むケースでは、その誤差が蓄積することにより、可変光フィルタ16の光損失が閾値THより大きくことがある。よって、光送信機1は、この問題を解決または緩和する機能を備える。
【0050】
図7は、図6に示すケースにおいて発生する制御電圧の誤差を訂正する方法の一例を示す。この例では、前回の調整シーケンスにおいて制御電圧がVmに調整されている。そして、今回の調整シーケンスにおいて制御電圧がVnに調整される。このとき、可変光フィルタ16における光損失はLmからLnに変化する。すなわち、制御電圧を調整することで可変光フィルタ16の光損失が閾値THを越えている。この場合、TOF制御部28の補正部28cは、図4を参照して説明した許容電圧幅Wに基づいて制御電圧を補正する。なお、許容電圧幅Wは、予め幅算出部28aにより算出されてメモリ29に保存されている。
【0051】
図7に示す実施例において、モニタ温度がTnであるときに制御電圧をVyに設定すると、可変光フィルタ16の光損失が最小になるものとする。すなわち、Vyは、モニタ温度がTnであるときの目標制御電圧である。また、制御電圧をVzに設定すると、可変光フィルタ16の光損失が閾値THまで増加するものとする。
【0052】
制御電圧を調整することで可変光フィルタ16の光損失が閾値THを越えたときは、補正部28cは、許容電圧幅Wの2分の1だけ制御電圧をシフトさせる。ここで、各調整シーケンスにおいて発生する誤差は小さく、その誤差が累積することで可変光フィルタ16の光損失が閾値THを越えるものとする。この場合、調整シーケンスを実行することで光損失が閾値THを越えたときの制御電圧Vnと、可変光フィルタ16の光損失が閾値THと一致する制御電圧(図7では、Vz)との差分は小さいと考えられる。他方、可変光フィルタ16の光損失が閾値THと一致する制御電圧(図7では、Vz)と、可変光フィルタ16の光損失が最小になる目標制御電圧(図7では、Yy)との差分は、ほぼ許容電圧幅Wの2分の1である。したがって、調整シーケンスによって光損失が閾値THを越えたときに許容電圧幅Wの2分の1だけ制御電圧をシフトさせると、補正後の制御電圧は、光損失が閾値THより小さくなる制御電圧範囲のほぼ中心に設定される。すなわち、補正後の制御電圧は、目標制御電圧Vyに近くなる。この結果、可変光フィルタ16の光損失が小さくなる。
【0053】
なお、制御電圧をシフトさせた後の制御電圧が図7に示す範囲W内に入っていれば、制御電圧をシフトさせない場合と比較して、光損失が小さくなる。よって、制御電圧をシフトさせる量は、許容電圧幅Wの2分の1に限定されるものではなく、ゼロより大きく且つ許容電圧幅Wの2分の1以下の範囲内で決められる所定量であればよい。ただし、この実施例では、補正部28cによる制御電圧のシフト量を許容電圧幅Wの2分の1として例示することとする。
【0054】
図7に示す例では、調整シーケンスにおいて制御電圧がVnに設定されたときに、光損失が閾値THを越えている。そうすると、補正部28cは、制御電圧VnをW/2だけシフトさせる。この結果、制御電圧はVeに補正される。このとき、下記(1)式に従って補正後の制御電圧Veが得られる。
Ve=Vn+{W/2×FFP×(-1)} ・・・・・(1)
【0055】
FFPは、調整シーケンスにおけるフィードフォワード制御の極性を表す。すなわち、FFPは、フィードフォワード制御で制御電圧を増加させたか減少させたかを表す。具体的には、フィードフォワード制御で制御電圧を増加させたときには、FFPは「+1」であり、フィードフォワード制御で制御電圧を減少させたときには、FFPは「-1」である。図7に示す例では、調整部28bが制御電圧をVmからVnに増加させているので、「FFP=+1」が得られる。また、調整シーケンスで制御電圧を調整することに起因して光損失が閾値THを超えた場合、光損失を閾値THより小さくするためには、調整シーケンスでの制御電圧の変化の方向と逆方向に制御電圧をシフトさせる必要がある。したがって、上記(1)式においてFFPに「-1」が乗算される。
【0056】
この結果、目標制御電圧Vyに近い制御電圧Veが得られる。したがって、可変光フィルタ16の光損失(図7では、Le)はほぼ最小化される。この後、調整部28bにより通常の調整シーケンスが繰り返される。
【0057】
図8は、フィードフォワード制御における誤差の蓄積により光損失が増加するケースの他の例を示す。図6に示すケースと同様に、このケースでも、各調整シーケンスの実行時の温度がT1、T2、・・・、Tnと変化する。ただし、図8に示すケースでは、各調整シーケンスによる制御電圧のシフト幅が不十分である。
【0058】
例えば、モニタ温度がT1からT2に変化し、可変光フィルタ16における光損失特性がL(T1)からL(T2)に変化した場合、光損失を最小化するためには、制御電圧はVxに調整されるべきである。すなわち、補正値は、Vx-V1であることが好ましい。ところが、この実施例では、調整部28bにより算出された補正値が、理想的な補正値より小さい。この結果、新たな制御電圧の算出結果はV2である。
【0059】
この後、調整部28bは、上述の調整シーケンスを定期的に実行する。このとき、各調整シーケンスにおいて同様の誤差が発生する。そうすると、誤差が蓄積により、可変光フィルタ16の光損失が許容損失(即ち、閾値TH)より大きくなってしまう。
【0060】
図8に示す実施例では、n回目の調整シーケンスの開始時において、制御電圧は、前回の調整シーケンスによりVmに設定されている。他方、モニタ温度が変化してTnとなったため、透過特性はPD2(Tn)であり、光損失特性はL(Tn)である。この場合、制御電圧Vmに対応する光損失Lmが閾値THより大きくなってしまう。なお、Vyは、モニタ温度がTnであるときの理想的な制御電圧を表している。
【0061】
図9は、図8に示すケースにおいて発生する制御電圧の誤差を訂正する方法の他の例を示す。この例では、前回の調整シーケンスにおいて制御電圧がVmに調整されている。そして、今回の調整シーケンスの開示時に、可変光フィルタ16における光損失が測定される。このとき、光損失Lmが閾値THを越えている。この場合、補正部28cは、制御電圧をW/2だけシフトさせる。
【0062】
ただし、図8図9に示すケースでは、今回の調整シーケンスを実行する前に既に光損失が閾値THを越えている。よって、この場合、補正部28cは、下記(2)式に従って制御電圧Veを得る。
Vc=Vn+{W/2×FFP} ・・・・・(2)
【0063】
なお、このケースでは、調整シーケンスによる制御電圧の調整が行われる前に光損失が閾値THを超えているので、FFPは、モニタ温度の変化に基づいて判定される。たとえば、図3(b)に示す温度変化/補正値変換テーブルによれば、現在のモニタ温度が前回の調整シーケンスの実行時のモニタ温度より高ければ、補正値は負の値である。よって、現在のモニタ温度が前回の調整シーケンスの実行時のモニタ温度より高いときは、FFPは「-1」である。一方、現在のモニタ温度が前回の調整シーケンスの実行時のモニタ温度より低いときは、FFPは「+1」である。
【0064】
この結果、目標制御電圧Vyに近い制御電圧Veが得られる。したがって、可変光フィルタ16の光損失はほぼ最小化される。この後、調整部28bにより通常の調整シーケンスが繰り返される。
【0065】
なお、調整シーケンスを実行する周期が長くないときは、図7に示すVzとVnとの差分、及び、図9に示すVzとVmとの差分は十分に小さくなる。そうすると、光損失が閾値THを超えたときに制御電圧をW/2だけシフトさせれば、補正後の制御電圧は、光損失が閾値THより小さくなる制御電圧範囲のほぼ中心に設定される。すなわち、補正後の制御電圧は、目標制御電圧Vyに近くなる。この結果、可変光フィルタ16の光損失がほぼ最小化される。
【0066】
また、上述の実施例では、光損失が閾値THを超えたときに補正部28cが制御電圧をW/2だけシフトさせるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、光損失が閾値THを超えたときの制御電圧と、光損失を最小化する制御電圧との差分は、W/2より少しだけ大きくなることがある。図7に示すケースでは、光損失が閾値THを超えたときの制御電圧Vnと、光損失を最小化する制御電圧Vyとの差分は、W/2より大きい。また、図9に示すケースでは、光損失が閾値THを超えたときの制御電圧Vmと、光損失を最小化する制御電圧Vyとの差分は、W/2より大きい。したがって、光損失が閾値THを超えたときに、補正部28cは、制御電圧をW/2より少しだけ大きくシフトさせてもよい。さらに、光損失が閾値THを超えたときに、制御電圧をW/2より少しだけ小さくシフトさせても、光損失を十分に小さくできる。すなわち、光損失が閾値THを超えたときに制御電圧を約W/2だけシフトさせれば、光損失の抑制において十分な効果が得られる。
【0067】
閾値THは、予め決定される。ここで、閾値THを小さくすると光損失は小さくなる。ただし、制御電圧の補正が頻繁に行われるので、出力光の強度が振動することになる。すなわち、出力光がディザ成分を含むことになる。一方、閾値THを大きくすると、ディザ信号は抑制されるが、可変光フィルタ16の光損失が大きくなりやすい。したがって、閾値THは、これらの要因を考慮して適切に決定することが好ましい。
【0068】
図10図11は、事前準備の一例を示すフローチャートである。事前準備では、図4に示す許容電圧幅Wが決定される。なお、閾値THは予め設定されているものとする。
【0069】
S1において、TOF制御部28は、図3(a)に示す制御電圧/周波数変換テーブルを参照し、目的周波数に対応する制御電圧を決定する。目的周波数は、光送信機1が送信する光信号のキャリア周波数であり、予め指定される。
【0070】
S2において、TOF制御部28は、モニタ温度を取得する。モニタ温度は、可変光フィルタ16の近傍の温度を表す。また、モニタ温度は、温度センサ17により検知され、温度モニタ27によりモニタされる。
【0071】
S3において、TOF制御部28は、モニタ温度に基づいて補正値を算出する。モニタ温度と補正値との対応関係は、予め作成されて図3(b)に示す温度変化/補正値変換テーブルに保存されている。なお、初期設定時には、モニタ温度と基準温度(たとえば、25℃)との差分に基づいて温度変化/補正値変換テーブルを検索してもよい。
【0072】
S4において、TOF制御部28は、可変光フィルタ16に設定する制御電圧の初期値を算出する。制御電圧の初期値は、S1で決定した制御電圧にS3で算出した補正値を加算することで得られる。そして、S5において、TOF制御部28は、この制御電圧を可変光フィルタ16に設定する。この後、S6~S9およびS11~S14において、幅算出部28aが許容電圧幅Wを算出する。
【0073】
S6~S7において、幅算出部28aは、制御電圧を-0.1Vずつシフトさせながら可変光フィルタ16の光損失と閾値THとを比較する。光損失は、受光器PD1の出力信号および受光器PD2の出力信号から算出される。光増幅器14の出力光の強度が一定であるときは、受光器PD2の出力信号から光損失を算出してもよい。そして、光損失が閾値TH以上になると、幅算出部28aの処理はS8に進む。
【0074】
S8において、幅算出部28aは、光損失が閾値TH以上になったときの制御電圧を最小制御電圧として保存する。この後、S9において、幅算出部28aは、制御電圧をS4で算出した値に戻す。
【0075】
S11~S12において、幅算出部28aは、制御電圧を+0.1Vずつシフトさせながら可変光フィルタ16の光損失と閾値THとを比較する。そして、光損失が閾値TH以上になると、幅算出部28aの処理はS13に進む。S13において、幅算出部28aは、光損失が閾値TH以上になったときの制御電圧を最大制御電圧として保存する。
【0076】
S14において、幅算出部28aは、許容電圧幅Wを算出する。許容電圧幅Wは、S8で取得した最小制御電圧とS13で取得した最大制御電圧との差分を表す。そして、許容電圧幅Wを表す情報がメモリ29に保存される。この後、S15において、幅算出部28aは、制御電圧をS4で算出した値に戻す。
【0077】
図12図13は、可変光フィルタ16の制御電圧を決定するフィードフォワード制御の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、図10図11に示すフローチャートの後に実行される。すなわち、許容電圧幅Wは、既に決められている。また、このフローチャートの処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0078】
S21において、調整部28bは、モニタ温度を取得する。なお、前回の調整シーケンスにおいて取得したモニタ温度は、例えば、図1に示すメモリ29に保存されているものとする。
【0079】
S22において、調整部28bは、可変光フィルタ16において発生する光損失と閾値THとを比較する。そして、光損失が閾値TH以上であれば、TOF制御部28の処理はS23に進む。
【0080】
S23において、補正部28cは、上述した(2)式に従って制御電圧を補正する。このとき、補正部28cは、モニタ温度の変化に対応する方向に制御電圧をW/2だけシフトさせる。続いて、TOF制御部28は、S24において、S23で算出した制御電圧を可変光フィルタ16に設定する。この後、TOF制御部28の処理はS44に進む。
【0081】
S31において、調整部28bは、S21で取得したモニタ温度と前回の調整シーケンスにおいて取得したモニタ温度とを比較する。そして、モニタ温度が変化しているときには、TOF制御部28の処理はS32に進む。一方、モニタ温度が実質的に変化していないときは、TOF制御部28の処理はS41に進む。なお、「モニタ温度が実質的に変化していない」は、モニタ温度の変化が十分に小さいケースを含むものとする。
【0082】
S32において、調整部28bは、温度変化/補正値変換テーブルを参照し、モニタ温度の変化に対応する補正値を算出する。S33において、調整部28bは、可変光フィルタ16に設定する制御電圧を算出する。この制御電圧は、現在の制御電圧にS32で算出した補正値を加算することで得られる。そして、S34において、調整部28bは、この制御電圧を可変光フィルタ16に設定する。また、S35において、調整部28bは、S21で取得したモニタ温度をメモリ29に保存する。
【0083】
S41において、調整部28aは、可変光フィルタ16において発生する光損失と閾値THとを比較する。そして、光損失が閾値TH以上であれば、TOF制御部28の処理はS42に進む。
【0084】
S42において、補正部28cは、上述した(1)式に従って制御電圧を補正する。このとき、補正部28cは、S32~S34での制御電圧の変化の方向と逆方向に制御電圧をW/2だけシフトさせる。具体的には、S32~S34において制御電圧が増加したときは、補正部28cは、制御電圧をW/2だけ小さくする。また、S32~S34において制御電圧が減少したときは、補正部28cは、制御電圧をW/2だけ大きくする。続いて、TOF制御部28は、S43において、S42で算出した制御電圧を可変光フィルタ16に設定する。この後、TOF制御部28の処理はS44に進む。
【0085】
なお、モニタ温度が実質的に変化していないとき(S31:Yes)も、TOF制御部28の処理はS41に進む。ただし、S31が実行されるときは、その前に、光損失が閾値THより小さいと判定されている(S22:Yes)。すなわち、S31が実行された後にS41が実行される場合、S41の判定は「Yes」になるはずである。よって、モニタ温度が実質的に変化していないときは、S41~S43を実行しなくてもよい。
【0086】
S44は、所定の周期で調整シーケンスを繰り返し実行するために設けられている。すなわち、所定の周期に対応するカウントが終了すると、TOF制御部28の処理はS21に戻る。
【0087】
図14は、フィードフォワードで制御電圧を調整する構成の一例を示す。この例では、TOF制御部31は、可変光フィルタ16を制御する制御電圧を生成する。ディザ信号生成部32は、ディザ信号を生成する。ディザ信号は、低周波信号であり、制御電圧に重畳される。よって、可変光フィルタ16の出力光は、ディザ信号の周波数成分を含む。ディザ信号検出部33は、可変光フィルタ16の出力光からディザ信号の周波数成分を検出する。そして、TOF制御部31は、検出されるディザ信号の周波数成分が小さくなるように制御電圧を調整する。このフィードバック系により、可変光フィルタ16の光損失が最小化される。
【0088】
このように、フィードバック制御においては、光送信機の出力光がディザ信号を含む。このため、光信号の品質が劣化する。これに対して、本発明の実施形態では、ディザ信号を使用することなくフィードフォワードで可変光フィルタが制御される。よって、光送信機から送信される光信号の品質が改善する。また、本発明の実施形態では、可変光フィルタの光損失が閾値を超えると、制御電圧が強制的に補正される。したがって、フィードフォワードに起因する誤差が累積する場合であっても、光損失は抑制される。
【符号の説明】
【0089】
1 光送信機
13 光変調器
14 光増幅器
16 可変光フィルタ(TOF)
17 温度センサ
20 プロセッサ
24 入力モニタ
26 出力モニタ
27 温度モニタ
28 TOF制御部
28a 幅算出部
28b 調整部
28c 補正部
29 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14