(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139533
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/60 20200101AFI20220915BHJP
H04N 13/302 20180101ALI20220915BHJP
G09F 13/18 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G02B30/60
H04N13/302
G09F13/18 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039964
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 知子
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦
(72)【発明者】
【氏名】浜田 勝平
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕紹
【テーマコード(参考)】
2H199
5C061
5C096
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BB07
2H199BB18
2H199BB20
2H199BB29
5C061AA06
5C061AB14
5C061AB17
5C096AA11
5C096BA04
5C096CA06
5C096CC06
5C096CD02
5C096CD23
5C096CD33
5C096CE03
5C096CE07
5C096FA01
5C096FA12
5C096FA17
5C096FA18
(57)【要約】
【課題】空中表示の適切化を図ることのできる空中表示装置を提供すること。
【解決手段】実施形態の空中表示装置は、再帰反射シートと、透明表示装置と、ハーフミラーとを備える。前記透明表示装置は、前記再帰反射シートの再帰反射面側に配置される。前記ハーフミラーは、前記透明表示装置の光出射面側に配置される。前記透明表示装置は、空中表示する図形に対応する発光部を有した導光板を備え、前記発光部は、断面形状がV形状、多角形、または、トップフラット円弧形状の凹型の光学素子から構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射シートと、
前記再帰反射シートの再帰反射面側に配置された透明表示装置と、
前記透明表示装置の光出射面側に配置されたハーフミラーと、
を備え、
前記透明表示装置は、空中表示する図形に対応する発光部を有した導光板を備え、前記発光部は、断面形状がV形状、多角形状、または、トップフラット円弧形状の凹型の光学素子から構成される、
空中表示装置。
【請求項2】
発光部を有する面状発光体と、
前記面状発光体の出射面側に配置され、前記発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する再帰反射シートと、
前記再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーと、
を備え、
前記発光部は、断面形状がV形状、多角形状、または、トップフラット円弧形状の凹型の光学素子から構成される、
空中表示装置。
【請求項3】
再帰反射シートと、
前記再帰反射シートの再帰反射面側に配置された透明表示装置と、
前記透明表示装置の光出射面側に配置されたハーフミラーと、
を備え、
前記透明表示装置は、空中表示する図形に対応する発光部を有した導光板と、該導光板の入光側面に対向する線状光源とを備え、
前記発光部は、前記線状光源の延在方向にウエーブして連続的に延在して設けられ、または、前記線状光源の延在方向に断続的に設けられる光学素子から構成される、
空中表示装置。
【請求項4】
発光部を有する導光板と、
前記導光板の出射面側に配置され、前記発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する再帰反射シートと、
前記再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーと、
前記導光板の入光側面に対向する線状光源と、
を備え、
前記発光部は、前記線状光源の延在方向にウエーブして連続的に延在して設けられ、または、前記線状光源の延在方向に断続的に設けられる光学素子から構成される、
空中表示装置。
【請求項5】
前記線状光源の延在方向に断続的に設けられる光学素子は、断面形状がV形状、多角形状、または、トップフラット円弧形状の凹型の光学素子が、出射面側から見て略ラグビーボール形状または矩形状に寸断されている、
請求項3または4に記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハーフミラーと再帰反射シートとを45°の角度で配置させてなる空中表示デバイスが開示されている(例えば、特許文献1~5等を参照)。また、互いに平行に配置された、透明な光源と、再帰反射シートと、ハーフミラーとを備える空中表示装置が開示されている(例えば、特許文献6等を参照)。また、互いに平行に配置されたハーフミラーと再帰反射シートとの間に斜めに光を出射する、発光面を傾斜させた光源を配置させてなる空中表示デバイスが開示されている(例えば、特許文献7等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-129378号公報
【特許文献2】特開平4-339488号公報
【特許文献3】特表平7-501161号公報
【特許文献4】特表2001-511915号公報
【特許文献5】特表2002-517779号公報
【特許文献6】国際公開第2017/099116号
【特許文献7】特開2019-200313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、空中表示の配光や輝度分布について特に考慮されておらず、空中表示の適切化が十分でなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、空中表示の適切化を図ることのできる空中表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空中表示装置は、再帰反射シートと、透明表示装置と、ハーフミラーとを備える。前記透明表示装置は、前記再帰反射シートの再帰反射面側に配置される。前記ハーフミラーは、前記透明表示装置の光出射面側に配置される。前記透明表示装置は、空中表示する図形に対応する発光部を有した導光板を備え、前記発光部は、断面形状がV形状、多角形、または、トップフラット円弧形状の凹型の光学素子から構成される。
【0007】
本発明の一態様に係る空中表示装置は、空中表示の適切化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態にかかる空中表示装置の例を示す表示面側から見た図である。
【
図3】
図3は、空中表示装置が用いられた操作パネルの表示および操作の例を示す図である。
【
図4】
図4は、トイレ個室内における操作パネルの配置例を示す図である。
【
図5】
図5は、空中表示装置に要求される配光の例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5の拡大領域における導光板の光学素子の形状の例を示す図(1)である。
【
図7】
図7は、
図5の拡大領域における導光板の光学素子の形状の例を示す図(2)である。
【
図8】
図8は、
図5の拡大領域における導光板の光学素子の形状の例を示す図(3)である。
【
図9】
図9は、光学素子の一例として断面形状がV形状の凹型の光学素子(
図6)を規定する値を示す図である。
【
図10】
図10は、
図9における角度Aを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
【
図11】
図11は、光学素子の一例として断面形状が多角形状の凹型の光学素子(
図7)を規定する値を示す図(1)である。
【
図12】
図12は、
図11における角度Aを固定し、角度Bを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
【
図13】
図13は、
図11における角度Bを固定し、角度Aを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
【
図14】
図14は、光学素子の一例として断面形状が多角形状の凹型の光学素子(
図7)を規定する値を示す図(2)である。
【
図15】
図15は、
図14における幅Dを固定し、割合Cを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
【
図16】
図16は、
図14における割合Cを固定し、幅Dを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
【
図17】
図17は、光学素子の一例として断面形状がトップフラット円弧形状の凹型の光学素子(
図8)を規定する値を示す図である。
【
図18】
図18は、
図17における接触角Aを固定し、接触角Bを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
【
図19】
図19は、
図17における接触角Bを固定し、接触角Aを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
【
図20】
図20は、リニア光学素子による発光部の例を示す図である。
【
図21】
図21は、ウエーブ状の光学素子による発光部の例を示す図である。
【
図22】
図22は、リニア光学素子によって発生する暗いエリアの説明図である。
【
図23】
図23は、断続状の光学素子による発光部の例を示す図(1)である。
【
図24】
図24は、断続状の光学素子による発光部の例を示す図(2)である。
【
図25】
図25は、他の実施形態にかかる空中表示装置の例を示す表示面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る空中表示装置について図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0010】
図1は、一実施形態にかかる空中表示装置1の例を示す表示面側から見た図である。
図2は、
図1におけるX-X断面図である。なお、
図1および
図2における空中表示装置1は、個室トイレ内の壁面等に設置される操作パネルに採用されることが想定されており、表示面が水平方向を向いている。
【0011】
図1および
図2において、空中表示装置1は、略矩形状の開口2aが形成されたフレーム2内に、透明表示装置を構成する線状光源3と導光板4とが配置されている。線状光源3は、導光板4の入光側面4aの長手方向に沿って線状に発光する光源である。導光板4は、ポリカーボネートやアクリル等の透明材料により形成され、入光側面4aから入射された光を終端側まで導き、裏面(非表示面)側に設けられた、光学素子により形成される発光部4bにより光を反射して、表示面側のアイポイントEPが存在しない方向(
図2における左下側)に光を出射する。アイポイントEPは、ユーザが目視することが想定される位置である。
【0012】
また、フレーム2の非表示面側には、開口2aを覆うように、反射面を導光板4側に向けて再帰反射シート5が配置されている。再帰反射シート5は、透明の微小なガラスビーズ球などが表面に隙間なく配置され、入射された光を同じ経路で出射(入射角と出射角が同じ)する性質を有したシートである。再帰反射シート5としては、ガラスビーズ球の他に、コーナーキューブと呼ばれる、光を反射する性質を持った3枚の平面の板が互いに直角に組み合わされた、立方体の頂点の内面を利用したものも使用することができる。この場合、コストは若干高くなるが、光利用効率が高く、空中表示(空中像)のボケが少なくなるという利点がある。
【0013】
また、フレーム2の表示面側には、開口2aを覆うようにハーフミラー6が配置され、ハーフミラー6にはトップカバー7が外側に重ねられている。なお、ハーフミラー6の外側(視認側)にハードコート処理を施すことにより、トップカバー7を省略することもできるが、ハーフミラー6はフィルム状であるため、支持用の透明樹脂板が必要となる。なお、ハードコート処理は、傷防止や汚れ防止、抗菌などを目的として施されるものであり、トップカバー7が外側に配置される場合でも、トップカバー7にハードコート処理を施すのが好ましい。ハーフミラー6は、入射された光の半分程度を反射し、残りの半分程度を透過させる性質を有した光学素子である。トップカバー7は、透明材料により形成され、ハーフミラー6を保護するためのものである。なお、トップカバー7の透過度を下げることにより、外部から空中表示装置1の内部が見えづらくなり、空中表示だけを見やすくすることができる。
【0014】
図2において、透明表示装置を構成する導光板4の発光部4bから経路L1で出た光は、半分程度がハーフミラー6で反射され、経路L2により導光板4を通過して再帰反射シート5に当たる。再帰反射シート5に当たった光は、入射角と同じ出射角で経路L3によりハーフミラー6に戻り、半分程度が透過する。発光部4bのある点から出た光は、経路L1の角度が変わっても幾何学的な関係から空中表示装置1外の同じ位置を通過するため、ハーフミラー6およびトップカバー7の外側に空中像による空中表示Iが行われ、ユーザのアイポイントEPから視認することができる。
【0015】
図3は、空中表示装置1が用いられた操作パネル100の表示および操作の例を示す図である。
図3において、トイレ個室内の壁面等に設置された操作パネル100から、各種のスイッチのボタンに相当する空中表示Iが行われる。ユーザが指Fでいずれかの空中表示Iに触れることで、操作パネル100に設けられた図示しないIR(赤外線)センサ等により指Fの空中表示Iへの接触(物理的な接触ではなく、空中表示Iが行われている位置への指Fの侵入)が検出され、対応する機能のオン・オフ等が制御される。ユーザの指Fは空中表示Iに触れるだけで、実在のボタン等に触れるわけではないので、衛生面において望ましいものとすることができる。
【0016】
図4は、トイレ個室内における操作パネル100の配置例を示す図である。
図4においては、便座Tに腰かけた利用者Mが容易に手の届く壁W上の位置に操作パネル100が設けられている。操作パネル100の床面からの高さは例えば1m、水平位置は利用者Mの膝の位置と同等である。
図5は、空中表示装置1に要求される配光の例を示す図であり、上述の操作パネル100の配置に対し、日本人の平均座高を考慮すると、空中表示Iの垂直方向の視野範囲は、例えば10deg~35degとなる。空中表示Iの水平方向の視野範囲は、例えば±40degとなる。
【0017】
図6は、
図5の拡大領域Rにおける導光板4の光学素子4cの形状の例を示す図である。
図7は、
図5の拡大領域Rにおける導光板4の光学素子4cの他の形状の例を示す図である。
図8は、
図5の拡大領域Rにおける導光板4の光学素子4cの他の形状の例を示す図である。各形状については、以下に詳述する。なお、
図6~
図8において、光学素子4cの配置されるピッチは、いずれも例えば0.1mmとされている。なお、ピッチの値はこの値に限られない。
【0018】
図9は、光学素子4cの一例として断面形状がV形状の凹型の光学素子(
図6)を規定する値を示す図である。
図9において、光学素子4cは、幅Dと、頂角と、光立ち上げ側の底角(角度A)とにより規定される。ここでは、幅Dを0.1mmとし、頂角を60degとし、角度Aを変数とする。
【0019】
図10は、
図9における角度Aを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。ここでの垂直方向とは、導光板4の出射面に垂直な方向であり、垂直方向からの傾斜は、正方向が上方向への傾斜、負方向が下方向への傾斜である。
図10において、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに最も近いのは角度A=32degの場合である。従って、幅D=0.1mm、頂角=60deg、角度A=32degが、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに対応した値となる。なお、水平方向の視野範囲±40degは、線状光源3による水平方向への配光により実現される。使用される環境に応じて配光が適切に設定されることで、無駄な方向への光出射がなくなり、光効率を高め、輝度を向上させることができる。
【0020】
図11は、光学素子4cの一例として断面形状が多角形状の凹型の光学素子(
図7)を規定する値を示す図である。
図11において、光学素子4cは、幅Dと、上側の底角(角度A)と、上側の頂角(角度B)と、上側および中間の傾斜面の上下方向の長さに対する上側の傾斜面の上下方向の長さの割合とにより規定される。ここでは、幅Dを0.06mmとし、上側および中間の傾斜面の上下方向の長さの割合に対する上側の傾斜面の上下方向の長さの割合を0.5とし、角度A、Bを変数とする。
【0021】
図12は、
図11における角度Aを固定し、角度Bを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
図12では、角度Aは40degとしている。
図13は、
図11における角度Bを固定し、角度Aを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
図13では、角度Bは35degとしている。
【0022】
図12において、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに最も近いのは、角度B=35degの場合である。また、
図13において、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに最も近いのは、角度A=40degの場合である。従って、幅D=0.06mm、上側および中間の傾斜面の上下方向の長さに対する上側の傾斜面の上下方向の長さの割合=0.5、角度A=40deg、角度B=35degが、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに対応した値となる。使用される環境に応じて配光が適切に設定されることで、無駄な方向への光出射がなくなり、光効率を高め、輝度を向上させることができる。
【0023】
図14は、光学素子4cの一例として断面形状が多角形状の凹型の光学素子(
図7)を規定する他の値を示す図である。
図14において、光学素子4cは
図11と同様の寸法・角度等によって規定されるが、ここでは、上側の底角(角度A)が40degとされ、上側の頂角(角度B)が35degとされ、下側の底角が88degとされ、幅Dと、上側および中間の傾斜面の上下方向の長さの割合に対する上側の傾斜面の上下方向の長さの割合(C)とを変数としている。
【0024】
図15は、
図14における幅Dを固定し、割合Cを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
図15では、幅Dは0.06mmとしている。
図16は、
図14における割合Cを固定し、幅Dを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
図16では、割合Cを0.15としている。
【0025】
図15において、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに最も近いのは、割合C=0.15の場合である。
図16において、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに最も近いのは、幅D=0.06mmの場合である。従って、幅D=0.06mm、上側の底角(角度A)=40deg、上側の頂角(角度B)=35deg、下側の底角=88deg、割合C=0.15が、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに対応した値となる。使用される環境に応じて配光が適切に設定されることで、無駄な方向への光出射がなくなり、光効率を高め、輝度を向上させることができる。
【0026】
図17は、光学素子4cの一例として断面形状がトップフラット円弧形状の凹型の光学素子(
図8)を規定する値を示す図である。トップフラット円弧形状とは、先端部が平坦になった円弧形状である。
図17において、光学素子4cは、円弧の表面側の接触角Aと、円弧の先端部(平坦部)側の接触角Bとから規定される。
【0027】
図18は、
図17における接触角Aを固定し、接触角Bを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
図18では、接触角Aを50degとしている。
図19は、
図17における接触角Bを固定し、接触角Aを変化させた場合における垂直方向から傾斜した方向に対する光度の例を示す図である。
図19では、接触角Bを20degとしている。
【0028】
図18において、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに最も近いのは、接触角B=20degの場合である。
図19において、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに最も近いのは、接触角A=50degの場合である。従って、接触角A=50deg、接触角B=20degが、
図5で示された垂直方向の視野範囲10deg~35degに対応した値となる。使用される環境に応じて配光が適切に設定されることで、無駄な方向への光出射がなくなり、光効率を高め、輝度を向上させることができる。
【0029】
図20は、リニア光学素子による発光部4bの例を示す図であり、左側は表示面側から見た図、右側は左側の図におけるX-X断面図である。なお、
図20においては、
図6等で示されたV形状の凹型の光学素子4cが例として示されているが、
図7の多角形状や
図8のトップフラット円弧形状の光学素子としてもよい。
図20において、発光部4bを構成する光学素子4cの溝は、図の横方向(X軸方向)に直線状に連続的に延在している。横方向(X軸方向)は、線状光源3の延在方向である。
【0030】
図21は、ウエーブ状の光学素子による発光部4bの例を示す図であり、左側は表示面側から見た図、右側は左側の図におけるX-X断面図である。なお、
図21においては、
図6等で示されたV形状の凹型の光学素子4cが例として示されているが、
図7の多角形状や
図8のトップフラット円弧形状の光学素子としてもよい。
図21において、発光部4bを構成する光学素子4cの溝は、ウエーブしながら図の横方向(X軸方向)に連続的に延在している。ウエーブの振幅は例えば5μmであり、周期は例えば1mmであり、ウエーブの形状は正弦波形状である。光学素子4cの溝は、ウエーブしながら図の縦方向(Z軸方向)に連続的に延在するようにしてもよい。ウエーブ状の光学素子によれば、リニア光学素子の場合に生ずる、暗いエリアの発生を低減させることができる。
【0031】
図22は、リニア光学素子によって発生する暗いエリアの説明図であり、左側は表示面側から見た図、右側は左側の図におけるX軸方向の断面方向から見た図である。
図22においては、例えば、
図3における一番左の四角い空中表示Iに対応する光学素子4cの部分を切り出して示している。
【0032】
図22において、図示しない上方の線状光源3から到来し、利用者Mに向かう光のうち、発光部4bの左端の光学素子4cに当たった光L11は、反射されて光L12となり、その大部分が導光板4から光L13として出射する。また、残った一部が光L21として内部に向かって反射し、それが下の光学素子4cに当たって反射して光L22となり、光L23として出射する。そのため、光L23より下の利用者M側のエリアはその上および左のエリアに比べて暗くなり、表示品質が低下してしまう。これに対し、
図21のようなウエーブ状の光学素子によれば、光の反射方向が多方向となるため、暗くなるエリアの発生を低減させることができ、表示品質を向上させることができる。
【0033】
図23は、断続状の光学素子による発光部4bの例を示す図であり、左側は表示面側から見た図、右側は左側の図におけるX-X断面図である。
図23において、発光部4bを構成する光学素子4cの溝は、図の横方向(X軸方向)に断続的に延在している。なお、
図23においては、
図6等で示されたV形状の凹型の光学素子4cが略ラグビーボール形状に寸断された例が示されているが、
図7の多角形状や
図8のトップフラット円弧形状の光学素子が略ラグビーボール形状に寸断されたものとしてもよい。
【0034】
また、
図24は、断続状の光学素子による発光部4bの他の例を示す図であり、左側は表示面側から見た図、右側は左側の図におけるX-X断面図である。この例では、
図23のラグビーボール形状に代えて、矩形状となっている。この場合も、
図6等で示されたV形状の凹型の光学素子4cだけでなく、
図7の多角形状や
図8のトップフラット円弧形状の光学素子としてもよい。
【0035】
図23や
図24の断続状の光学素子では、光学素子の溝がない部分を上方の線状光源3から光が通って下方まで到達しやすくなり、途中にある光学素子による出射によって通過する光が減衰するのが制限され、暗くなるエリアの発生を大幅に低減させることができる。なお、
図21のウエーブ状の光学素子と
図23または
図24の断続状の光学素子は同時に適用してもよい。
【0036】
図25は、他の実施形態にかかる空中表示装置1の例を示す表示面側から見た図である。
図26は、
図25におけるX-X断面図である。この実施形態では、空中表示のパターン境界が不明瞭である、多重像が見えてしまう、といった空中表示の質を低下させることを防止している。なお、発光部が見えてしまうという点は、
図6~
図19に示された導光板4の発光部4bによる配光制御により解決される。また、
図20~
図24で説明された改良についても、同様に適用することができる。
【0037】
図25および
図26において、空中表示装置1は、略矩形状の開口2aが形成されたフレーム2内に、面状発光体を構成する線状光源3と導光板4とが配置されている。線状光源3は、導光板4の入光側面4aの長手方向(X軸方向)に沿って線状に発光する光源である。導光板4は、ポリカーボネートやアクリル等の透明材料により形成され、入光側面4aから入射された光を終端側まで導き、裏面(非表示面)側に設けられた、光学素子により形成される発光部4bにより光を反射する。
【0038】
なお、前述したのと同様に、発光部4bの光学素子の調整により、表示面側のアイポイントEPが存在しない方向(
図26における左下側)に光を出射し、アイポイントEPが存在する所定方向に出射する光を抑制するようにしている。アイポイントEPは、ユーザが目視することが想定される位置である。
【0039】
また、導光板4の発光部4bは、後述する再帰反射シート5における、空中表示する図形を表すのに用いられる可能性のある複数の貫通孔5aの位置を余裕をもってカバー(貫通孔5aの周囲の所定範囲もカバー)する略矩形状の領域(表示面側から見た形状)を発光するか、または、再帰反射シート5の1または複数の貫通孔5aに対応する位置を余裕をもってカバー(貫通孔5aの周囲の所定範囲もカバー)する領域を発光するものとする。前者の場合、導光板4の発光部4bの端部は、再帰反射シート5のいちばん外側の貫通孔5aに正対する位置から導光方向(Y軸方向)に長く設定される。この長く設定された端部は、再帰反射シート5の貫通孔5aから光軸を逆方向に伸ばして導光板4の裏側付近に到達する位置よりも、配光や部材の位置精度等を考慮してより外側の位置である。横方向(X軸方向)について、導光板4の発光部4bは、導光板4のほぼ全幅に延びるものとなる。後者の場合、導光板4の発光部4bは、再帰反射シート5の各貫通孔5aについて、導光方向(Y軸方向)と横方向(X軸方向)とについて長く設定される。前者の場合、空中表示する図形を変更する場合、再帰反射シート5の貫通孔5aを変更すればよいため、対応が容易になる。また、後者の場合、導光板4から出る光を表示に必要なものに絞ることができるため、光効率を高めることができる。
【0040】
また、フレーム2の非表示面側には、開口2aを覆うように、反射シート8が配置されており、導光板4から背面側へ漏れる光を導光板4に戻すことで、光効率を高め、輝度を高めている。なお、フレーム2の非表示面側に開口2aはなくてもよく(底板で塞がれていてもよい)、導光板4の非表示面側に反射シート8が設けられていればよい。
【0041】
また、導光板4の出射面側には、発光部4bに対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔5aを有する再帰反射シート5が、反射面を出射面側(導光板4とは反対側)に向けて配置されている。再帰反射シート5は、透明の微小なガラスビーズ球などが表面に隙間なく配置され、入射された光を同じ経路で出射(入射角と出射角が同じ)する性質を有したシートである。再帰反射シート5としては、ガラスビーズ球の他に、コーナーキューブと呼ばれる、光を反射する性質を持った3枚の面が互いに直角に組み合わされた、立方体の頂点の内面を利用したものも使用することができる。この場合、コストは若干高くなるが、光利用効率が高く、空中表示(空中像)のボケが少なくなるという利点がある。
【0042】
また、フレーム2の表示面側には、開口2aを覆うようにハーフミラー6が配置され、ハーフミラー6にはトップカバー7が外側に重ねられている。なお、ハーフミラー6の外側(視認側)にハードコート処理を施すことにより、トップカバー7を省略することもできるが、ハーフミラー6はフィルム状であるため、支持用の透明樹脂板が必要となる。なお、トップカバー7が外側に配置される場合でも、トップカバー7にハードコート処理を施すのが好ましい。ハーフミラー6は、入射された光の半分程度を反射し、残りの半分程度を透過させる性質を有した光学素子である。トップカバー7は、透明材料により形成され、ハーフミラー6を保護するためのものである。なお、トップカバー7の透過度を下げることにより、外部から空中表示装置1の内部が見えづらくなり、空中表示だけを見やすくすることができる。また、再帰反射シート5とハーフミラー6とは、互いに少し傾けて配置されるものであってもよい。
【0043】
図26において、面状発光体を構成する導光板4の発光部4bから出た光は再帰反射シート5の貫通孔5aを通って経路L1で出る。この光は、半分程度がハーフミラー6で反射され、経路L2により再帰反射シート5に当たる。再帰反射シート5に当たった光は、入射角と同じ出射角で経路L3によりハーフミラー6に戻り、半分程度が透過する。発光部4bのある点から出た光は、経路L1の角度が変わっても幾何学的な関係から空中表示装置1外の同じ位置を通過するため、ハーフミラー6およびトップカバー7の外側に空中像による空中表示Iが行われ、ユーザのアイポイントEPから視認することができ、ユーザに指Fにより触れる動作を行わせることができる。
【0044】
前述した「空中表示のパターン境界が不明瞭である」の原因の一つは、導光板4の発光部4bを構成する光学素子4cの加工方法に起因する。すなわち、光学素子4cは導光板4から切削工具であるバイトにより削られて形成されるか、バイトにより光学素子4cに対応する突条が形成された金型により導光板4が形成される過程で光学素子4cが形成される。そのため、光学素子4cの端部では幅が細く深さが浅くなり、出射面側に対して反射する光量が低下し、空中表示のパターン境界が不明瞭となってしまう。この点、
図25および
図26の実施形態において、空中表示のパターン境界を定めるのは再帰反射シート5の貫通孔5aであり、導光板4の発光部4bを構成する光学素子4cの端部が空中表示のパターン境界に影響を与えることがなくなるため、空中表示のパターン境界を明瞭にすることができる。
【0045】
また、上記の「空中表示のパターン境界が不明瞭である」の他の原因として、
図1および
図2の実施形態では、再帰反射シート5とハーフミラー6とが導光板4を挟んで設けられるため、光の経路が長く、通過する界面が多いことが挙げられる。すなわち、
図2において、発光部4bから出た光は、経路L1→経路L2→経路L3と進み、導光板4の表面(表示面側の面)、ハーフミラー6の裏面、導光板4の表面および裏面、再帰反射シート5の表面(反射面)、導光板4の裏面および表面、ハーフミラー6の裏面および表面、トップカバー7の裏面および表面を経る。光の経路が長いことで光の拡散が生じやすくなり、界面が多いことで光の拡散および減衰が生じやすくなり、空中表示のパターン境界が不明瞭となる。この点、
図25および
図26の実施形態において、発光部4bから出た光は、経路L1→経路L2→経路L3と進み、導光板4の表面、ハーフミラー6の裏面、再帰反射シート5の表面(反射面)、ハーフミラー6の裏面および表面、トップカバー7の裏面および表面を経ることになり、光の経路が短くなり、通過する界面が少なくなる。その結果、空中表示のパターン境界を明瞭にすることができる。
【0046】
また、上記の「多重像が見えてしまう」の原因は、
図1および
図2の実施形態において、主に経路L2、L3で導光板4を通過する際の界面が見えてしまうことによる。この点、
図25および
図26の実施形態においては、経路L1で再帰反射シート5の貫通孔5aを出た光は、導光板4の界面を通過することがないため、多重像が見えてしまうことはなくなる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0048】
以上のように、実施形態に係る空中表示装置は、再帰反射シートと、再帰反射シートの再帰反射面側に配置された透明表示装置と、透明表示装置の光出射面側に配置されたハーフミラーとを備え、透明表示装置は、空中表示する図形に対応する発光部を有した導光板を備え、発光部は、断面形状がV形状、多角形状、または、トップフラット円弧形状の凹型の光学素子から構成される。これにより、各形状の寸法等の調整によって所望の配光への調整が容易であり、光効率を高めて輝度を向上させ、空中表示の適切化を図ることができる。
【0049】
また、発光部を有する面状発光体と、面状発光体の出射面側に配置され、発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する再帰反射シートと、再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーとを備え、発光部は、断面形状がV形状、多角形状、または、トップフラット円弧形状の凹型の光学素子から構成される。これにより、各形状の寸法等の調整によって所望の配光への調整が容易であり、光効率を高めて輝度を向上させ、空中表示の適切化を図ることができる。また、空中表示のパターン境界が不明瞭である、多重像が見えてしまう、といったことを防止し、空中表示の質を向上させることができる。
【0050】
また、再帰反射シートと、再帰反射シートの再帰反射面側に配置された透明表示装置と、透明表示装置の光出射面側に配置されたハーフミラーとを備え、透明表示装置は、空中表示する図形に対応する発光部を有した導光板と、導光板の入光側面に対向する線状光源とを備え、発光部は、線状光源の延在方向にウエーブして連続的に延在して設けられ、または、線状光源の延在方向に断続的に設けられる光学素子から構成される。これにより、リニア光学素子によって生じる暗いエリアの発生を低減することができ、表示品質を向上させ、空中表示の適切化を図ることができる。
【0051】
また、発光部を有する導光板と、導光板の出射面側に配置され、発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する再帰反射シートと、再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーと、導光板の入光側面に対向する線状光源とを備え、発光部は、線状光源の延在方向にウエーブして連続的に延在して設けられ、または、線状光源の延在方向に断続的に設けられる光学素子から構成される。これにより、リニア光学素子によって生じる暗いエリアの発生を低減することができ、表示品質を向上させ、空中表示の適切化を図ることができる。また、空中表示のパターン境界が不明瞭である、多重像が見えてしまう、といったことを防止し、空中表示の質を向上させることができる。
【0052】
また、線状光源の延在方向に断続的に設けられる光学素子は、断面形状がV形状、多角形状、または、トップフラット円弧形状の凹型の光学素子が、出射面側から見て略ラグビーボール形状または矩形状に寸断されている。これにより、暗いエリアの発生をいっそう低減することができ、表示品質をいっそう向上させることができる。
【0053】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 空中表示装置,2 フレーム,3 線状光源,4 導光板,4b、4b1、4b2 発光部,4c 光学素子,5 再帰反射シート,5a 貫通孔,6 ハーフミラー,7 トップカバー,8 反射シート,EP アイポイント,I 空中表示,100 操作パネル,F 指