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特開2022-139540防振ゴム組成物、加硫成形体、及び防振ゴム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139540
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】防振ゴム組成物、加硫成形体、及び防振ゴム
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20220915BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20220915BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220915BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220915BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20220915BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K5/20
C08K3/04
C09K3/00 P
F16F1/36 C
F16F15/08 D
F16F15/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039974
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】石黒 博行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 靖
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和貴
(72)【発明者】
【氏名】川邊 啓介
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
4J002
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AD05
3J048BA19
3J048EA15
3J059AB20
3J059BA42
3J059BC06
3J059DA04
3J059EA06
3J059GA02
4J002AC111
4J002DA038
4J002EP016
4J002EP017
4J002FD018
4J002FD176
4J002FD177
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】特定の硬さを有し、かつ、機械特性、防振特性及び摩擦係数のバランスに優れた防振ゴムを得ることができる防振ゴム組成物、該防振ゴム組成物を加硫した加硫成形体、及び防振ゴムを提供する。
【解決手段】キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部、ステアリン酸アマイド0.5~2質量部、及びエルカ酸アマイド4~5質量部を含有する防振ゴム組成物であって、該防振ゴム組成物は、平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックをさらに含み、該防振ゴム組成物を加硫した成形体のタイプAデュロメータ硬さが50~70である、防振ゴム組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部、
ステアリン酸アマイド0.5~2質量部、及び
エルカ酸アマイド4~5質量部
を含有する防振ゴム組成物であって、
該防振ゴム組成物は、平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックをさらに含み、
該防振ゴム組成物を加硫した成形体のタイプAデュロメータ硬さが50~70である、
防振ゴム組成物。
【請求項2】
前記キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部に対し、前記平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックを20~120質量部含有する、請求項1に記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
前記平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックは、平均一次粒子径が60~80nmの第1のカーボンブラック及び/又は平均一次粒子径が80nm超、470nm以下の第2のカーボンブラックを含む、請求項1又は2に記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
前記キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部に対し、
前記第1のカーボンブラックを20~64質量部、及び/又は
前記第2のカーボンブラックを50~120質量部
を含む、請求項3に記載の防振ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の防振ゴム組成物を加硫した加硫成形体。
【請求項6】
請求項5に記載の加硫成形体を用いた、防振ゴム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレンゴムを含む防振ゴム組成物に関する。特には、クロロプレンゴム、ステアリン酸アマイド、及びエルカ酸アマイドを特定量含む、防振ゴム組成物、該防振ゴム組成物を加硫した加硫成形体、及び防振ゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴムは機械特性、耐候性、難燃性などの物性バランスに優れており、加工しやすいことから各種自動車用部品、ベルト、ホース、防振ゴムなどの工業用ゴム部品の原材料として広く使用されている。例えば、特許文献1には、防振ゴムの防振性能を向上させるため、ゴム成分と特定範囲の比表面積を有する微粒子亜鉛華とからなる防振ゴム組成物と防振ゴムが開示されている。また、特許文献2には、防振ゴム特性や機械特性を損なわず、耐熱性をさらに向上させるため、特定の比表面積及び粒子径を有する活性亜鉛華、並びに特定の粒子径及びDBP吸油量を有するカーボンブラックを有するクロロプレンゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-193621号公報
【特許文献2】特開2014-227532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、防振ゴムは、その用途や適用箇所によって、金属に対してある程度の滑り性を有すること、すなわち、摩擦係数が低いことが求められる場合がある。しかしながら、従来の技術では、特定の硬さを有し、かつ、機械特性、防振特性及び摩擦係数のバランスに優れた防振ゴムを得ることができなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来の防振ゴム組成物では困難であった、特定の硬さを有し、かつ、機械特性、防振特性及び摩擦係数のバランスに優れた防振ゴムを得ることができる防振ゴム組成物、該防振ゴム組成物を加硫した加硫成形体、及び防振ゴムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部、ステアリン酸アマイド0.5~2質量部、及びエルカ酸アマイド4~5質量部を含有する防振ゴム組成物であって、該防振ゴム組成物は、平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックをさらに含み、該防振ゴム組成物を加硫した成形体のタイプAデュロメータ硬さが50~70である、防振ゴム組成物が提供される。
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、キサントゲン変性クロロプレンゴムと、ステアリン酸アマイドと、エルカ酸アマイドとを特定の配合比率で組み合わせ、これに平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックをさらに含有させ、該防振ゴム組成物を加硫した成形体の硬さを特定の数値範囲に調整することによって、特定の硬さを有し、かつ、機械特性、防振特性及び摩擦係数のバランスに優れた防振ゴムを得ることができる防振ゴム組成物となることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部に対し、前記平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックを20~120質量部含有する。
好ましくは、前記平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックは、平均一次粒子径が60~80nmの第1のカーボンブラック及び/又は平均一次粒子径が80nm超、470nm以下の第2のカーボンブラックを含む。
好ましくは、前記キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部に対し、前記第1のカーボンブラックを20~64質量部、及び/又は前記第2のカーボンブラックを50~120質量部を含む。
【0009】
本発明の別の観点によれば、前記防振ゴム組成物を加硫した加硫成形体が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、前記加硫成形体を用いた、防振ゴムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る防振ゴム組成物によれば、特定の硬さを有し、かつ、機械特性、防振特性及び摩擦係数のバランスに優れた防振ゴムを得ることができる。さらに、得られた防振ゴムは、その特性を活かし、防振特性等が必要とされる様々な部材として、特には、優れた機械特性、防振特性及び金属に対する滑り性が求められる、自動車部材用防振ゴムとして用いることができる。具体的には、ブッシュ用部材、一例としては、コンプライアンスブッシュ、スタビライザーブッシュ用の部材として利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.防振ゴム組成物
本発明に係る防振ゴム組成物は、キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部、ステアリン酸アマイド0.5~2質量部、及びエルカ酸アマイド4~5質量部を含有する。
また、本発明に係る防振ゴム組成物は、平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックをさらに含み、該防振ゴム組成物を加硫した成形体のタイプAデュロメータ硬さが50~70である。以下、各成分及び特性について、詳細に説明する。
【0013】
1-1.キサントゲン変性クロロプレンゴム
本発明に係るクロロプレンゴムは、クロロプレンの単独重合体または、クロロプレンと、クロロプレンと共重合可能な他の単量体との共重合体である。クロロプレンと共重合可能な単量体としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、例えば、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン、並びにアクリル酸、メタクリル酸及びこれらのエステル類などを挙げることができる。
【0014】
クロロプレンゴムとして、クロロプレンと共重合可能な他の単量体とクロロプレンとの共重合体を用いる場合は、クロロプレン100質量部に対して、他の単量体の共重合量を好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下とすることが好ましい。他の単量体の共重合量をこの範囲に調整することで、クロロプレンゴムの特性を損なわずに、これら単量体を共重合させたことによる効果を発現することができる。
【0015】
クロロプレンゴムは、用いる分子量調節剤によって、メルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ、硫黄変性タイプに分類される。本発明に係る防振ゴム組成物は、キサントゲン変性クロロプレンゴムを含む。キサントゲン変性クロロプレンゴムは、製造時に、アルキルキサントゲン化合物を分子量調節剤として使用することによって得ることができる。
本発明によれば、キサントゲン変性クロロプレンを用いることによって、硬さ、機械特性、防振特性及び摩擦係数のバランスに優れた防振ゴムを得ることができる防振ゴム組成物となる。
【0016】
1-2.ステアリン酸アマイド、及びエルカ酸アマイド
本発明に係る防振ゴム組成物は、キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部に対して、ステアリン酸アマイド0.5~2質量部、及びエルカ酸アマイド4~5質量部を含有する。ステアリン酸アマイドの配合量は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0質量部とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、エルカ酸アマイドの配合量は、例えば、4.0、4.2、4.4、4.5、4.6、4.8、5.0質量部とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明によれば、キサントゲン変性クロロプレンゴムと、ステアリン酸アマイドと、エルカ酸アマイドとを特定の配合比で配合し、さらに、カーボンを含有させ、その加硫成形体の硬さを調整することによって、機械特性、防振特性及び摩擦係数のバランスに優れた防振ゴムを得ることができる防振ゴム組成物となる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、ステアリン酸アマイド及びエルカ酸アマイド以外の脂肪酸アマイドを含むこともできる。本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、ステアリン酸アマイド及びエルカ酸アマイド以外の脂肪酸アマイドを含む場合、キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部に対して、ステアリン酸アマイド及びエルカ酸アマイド以外の脂肪酸アマイドの含有量が、10質量部未満であることが好ましく、5質量部未満であることがより好ましい。
【0018】
1-3.カーボンブラック
本発明に係る防振ゴム組成物は、平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックを含む。すなわち、本発明に係る防振ゴム組成物は、原料に、平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックを含むことが好ましい。また、本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、該防振ゴム組成物に含まれるカーボンの平均一次粒子径が、60~470nmであることが好ましい。ここで、カーボンブラックの平均一次粒子径は、JIS Z8901に基づき、電子顕微鏡を用いて観察することによって求めることができる。
【0019】
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、1種又は複数種のカーボンブラックを含むことができる。
本発明に係る平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックは、平均一次粒子径が60~80nmの第1のカーボンブラック及び/又は平均一次粒子径が80nm超、470nm以下の第2のカーボンブラックを含むことが好ましい。
本発明の一実施形態に係る平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックは、平均一次粒子径が60~80nmの第1のカーボンブラックを含むことができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、原料に、平均一次粒子径が60~80nmの第1のカーボンブラックを含むことができる。平均一次粒子径が60~80nmの第1のカーボンブラックを含むことによって、機械強度をより向上させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックは、平均一次粒子径が80nm超、470nm以下の第2のカーボンブラックを含むことができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、原料に、平均一次粒子径が80nm超、470nm以下の第2のカーボンブラックを含むことができる。
また、本発明の一実施形態に係る平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックは、平均一次粒子径が60~80nmの第1のカーボンブラック及び平均一次粒子径が80nm超、470nm以下の第2のカーボンブラックを含むことができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、原料に、平均一次粒子径が60~80nmの第1のカーボンブラック及び平均一次粒子径が80nm超、470nm以下の第2のカーボンブラックを含むことができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部に対し、平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックを20~120質量部含有することが好ましく、50~100質量部含有することがより好ましい。平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックは、例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120質量部とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、キサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部に対し、第1のカーボンブラックを20~64質量部、及び/又は前記第2のカーボンブラックを50~120質量部を含むことが好ましい。第1のカーボンブラックは、例えば、20、30、40、50、60、64質量部とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。第2のカーボンブラックは、例えば、50、60、70、80、90、100、110、120とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、第1のカーボンブラック及び第2のカーボンブラックを含む場合、第1のカーボンブラックと第2のカーボンブラックの配合比率が、質量比で10~50:90~50であることが好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラック以外の充填材・補強材を用いることもできる。本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、該防振ゴム組成物に含まれる充填材・補強材の合計を100質量部としたとき、平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラックを、60質量部以上含むことが好ましく、80質量部以上含むことがより好ましい。本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、平均一次粒子径が60~470nmのカーボンブラック以外の充填材・補強材を含まないものとすることもできる。
【0022】
防振ゴム組成物に含まれるカーボンブラックの平均一次粒子径及び量を調整することによって、防振ゴム組成物を加硫した加硫成形体の特性、特には硬さ等の機械特性を調整することができる。従って、カーボンブラックの平均一次粒子径及び配合量は、要求される防振ゴムの硬さや他の特性に応じて、調整することが好ましい。また、カーボンブラックの平均一次粒子径及び配合量を上記範囲内に調整することによって、より機械特性、防振特性及び摩擦係数のバランスに優れた防振ゴムを得ることができる防振ゴム組成物となる。
【0023】
1-4.加硫剤
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、さらに、加硫剤を含むことができる。加硫剤の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、クロロプレンゴムに用いることが可能である通常の加硫剤を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。加硫剤しては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛、四酸化三鉛、三酸化鉄、二酸化チタン、酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。加硫剤の配合量も、特に限定されない。本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、クロロプレンゴム100質量部に対して加硫剤の配合量が3~15質量部であることが好ましい。この範囲で添加を行えば、加工安全性が確保され、良好な加硫物を得ることができる。
【0024】
1-5.加硫促進剤
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、前記加硫剤に加硫促進剤を併用することで、さらに効果的に加硫を行うことができる。本発明に係る防振ゴム組成物に配合することができる加硫促進剤の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、クロロプレンゴムの加硫に一般に用いられる加硫促進剤を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。加硫促進剤としては、チオウレア系、グアニジン系、チウラム系、チアゾール系の加硫促進剤を添加することができ、特にチオウレア系、チウラム系が好ましい。チオウレア系の加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、トリエチルチオウレア、N,N'-ジフェニルチオウレア、などが挙げられ、特にトリメチルチオウレア、エチレンチオウレアが好ましい。また、3-メチルチアゾリジンチオン-2、チアジアゾールとフェニレンジマレイミドとの混合物、ジメチルアンモニウムハイドロジェンイソフタレートあるいは1,2-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体などの加硫促進剤も使用することができる。本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、クロロプレンゴム100質量部に対して、加硫促進剤の添加量が0.5~5質量部であることが好ましい。
【0025】
1-6.老化防止剤
一次老化防止剤は、主に、得られる加硫成形体や防振ゴムが加熱されたときのデュロメータ硬さ、破断時伸び等の低下を抑え、耐熱性を向上させるために配合するものであり、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、アクリレート系老化防止剤、カルバミン酸金属塩及びワックスがある。これらの一次老化防止剤は、一種類もしくは併用して使用することができる。これら化合物の中でも、アミン系老化防止剤の4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンやオクチル化ジフェニルアミン、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンは、耐熱性の改善効果が大きいため好ましい。
【0026】
一次老化防止剤の配合量は、防振ゴム組成物に含まれるクロロプレンゴム100質量部に対し、0.1~10質量部、好ましくは、1~5質量部である。一次老化防止剤の配合量をこの範囲に設定することにより、得られる加硫成形体や防振ゴムのデュロメータ硬さ、破断時伸び等の低下が抑えられ、耐熱性を向上させることができる。
【0027】
二次老化防止剤は、主に得られる加硫成形体や防振ゴムが加熱されたときのデュロメータ硬さ、破断時伸び、圧縮永久歪みの低下を抑え、耐熱性を向上させるために配合するものであり、リン系老化防止剤、イオウ系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤を挙げることができる。これらの二次老化防止剤は、一種類もしくは併用して使用することができる。これらの化合物の中でも、リン系老化防止剤のトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、イオウ系老化防止剤のチオジオプロピオン酸ジラリウル、ジミスチル-3,3'-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、イミダゾール系老化防止剤の2-メルカプトベンゾイミダゾール、1-ベンジル-2-エチルイミダゾールは、耐熱性改善効果が大きいため好ましい。
【0028】
二次老化防止剤の配合量は、防振ゴム組成物中のキサントゲン変性クロロプレンゴム100質量部に対し、0.1~10質量部、好ましくは、0.5~5質量部である。二次老化防止剤の配合量をこの範囲にすることにより、得られる加硫成形体や防振ゴムのデュロメータ硬さ、破断時伸び、圧縮永久歪みの低下が抑えられ、耐熱性を向上させることができる。
【0029】
1-7.可塑剤
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、可塑剤を含むことができる。可塑剤としては、クロロプレンゴムと相溶性のある可塑剤であれば特に制限はないが、例えば、菜種油などの植物油、フタレート系可塑剤、DUP(フタル酸ジウンデシル)、DOS(セバシン酸ジオクチル)、DOA(アジピン酸ジオクチル)、エステル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、チオエーテル系可塑剤、アロマ系オイル、ナフテン系オイルなどがあり、防振ゴム組成物に要求される特性に合わせて一種類もしくは複数を併用して使用することができる。可塑剤の配合量は、クロロプレンゴム100質量部に対して、5~50質量部が好ましい。
【0030】
1-8.加工助剤
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、加工助剤を含むことができる。加工助剤は、主に、防振ゴム組成物がロールや成形金型、押出機のスクリューなどから剥離しやすくなるようにするなど、加工特性を向上させるために添加する。加工助剤としては、ステアリン酸などの脂肪酸あるいはポリエチレンなどのパラフィン系加工助剤などが挙げられ、クロロプレンゴム100質量部に対して0.1~5質量部添加することが好ましい。
【0031】
1-9.防振ゴム組成物の製造方法
本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物は、キサントゲン変性クロロプレンゴム、ステアリン酸アマイド、エルカ酸アマイド、カーボンブラック、及び必要とされるその他の成分を
加硫温度以下の温度で混練することで得られる。原料成分を混練する装置としては、従来公知のミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、オープンロールなどの混練装置を挙げることができる。
【0032】
1-10.防振ゴム組成物の特性
本発明に係る防振ゴム組成物は、該防振ゴム組成物を加硫した成形体のタイプAデュロメータ硬さが50~70であり、52~69であることが好ましい。タイプAデュロメータ硬さは、例えば、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、65、66、67、68、69、70あり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、タイプAデュロメータ硬さは、JIS K6253-3に基づき、加硫成形体シートを3枚重ねた状態にして23℃で測定することができる。防振ゴム組成物を加硫した成形体のタイプAデュロメータ硬さは、防振ゴム組成物に含まれる成分の種類及び量、例えば、防振ゴム組成物に含まれるカーボンブラックの平均一次粒子径及びその配合量を調整することによって、制御することができる。
【0033】
本発明に係る防振ゴム組成物は、該防振ゴム組成物を加硫した成形体の引張り強さが14MPa以上であることが好ましく、14.5MPa以上であることがより好ましい。上限は例えば、18MPa以下とできる。また、本発明に係る防振ゴム組成物は、該防振ゴム組成物を加硫した成形体の破断時伸びが、370%以上であることが好ましく、380%以上であることがより好ましい。なお、防振ゴム組成物を加硫した成形体の引張り強さ及び破断時伸びは、JIS K6251に基づき測定することができる。防振ゴム組成物を加硫した成形体の引張り強さ及び破断時伸びは、防振ゴム組成物に含まれる成分の種類及び量を調整することによって、制御することができる。
【0034】
本発明に係る防振ゴム組成物は、該防振ゴム組成物を加硫した成形体の動倍率(Kd/Ks)が、2.40以下であることが好ましく、2.35以下であることがより好ましい。下限は、例えば、1.80以上とできる。なお、同倍率は、JIS K6386に示される一般的な試験条件に基づき、円柱状試験片を用いて23℃の条件で動的ばね定数(Kd)及び静的ばね定数(Ks)を測定することによって、求めることができる。防振ゴム組成物を加硫した成形体の動倍率(Kd/Ks)は、防振ゴム組成物に含まれる成分の種類及び量を調整することによって、制御することができる。
【0035】
本発明に係る防振ゴム組成物は、該防振ゴム組成物を加硫した成形体の1Hz、0℃における摩擦係数が1.1以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。下限は例えば、0.3以上とできる。また、本発明に係る防振ゴム組成物は、該防振ゴム組成物を加硫した成形体の1Hz、70℃における摩擦係数が0.9未満であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。下限は例えば、0.4以上とできる。なお、摩擦係数は、例えば、厚み2mmの成形体であるゴムシートを用い、摩擦摩耗試験機により求めることができ、具体的な試験方法は実施例に記載のとおりである。防振ゴム組成物を加硫した成形体の摩擦係数は、防振ゴム組成物に含まれる成分の種類及び量を調整することによって、制御することができる。
【0036】
上記の防振ゴム組成物を加硫した成形体の特性は、本発明の一実施形態に係る防振ゴム組成物を、160℃×20分で加硫して得た加硫成形体を用いて評価することができる。
【0037】
2.加硫成形体
本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、上記の防振ゴム組成物を加硫した加硫成形体である。上記の防振ゴム組成物は、所望する各種の形状に成形した後に加硫するか、または予め防振ゴム組成物を加硫ゴムにしておき、その後各種の形状に成形してもよい。防振ゴム組成物や加硫ゴムを成形する方法は、従来のプレス成形、押出成形、カレンダー成形などの方法がある。これらは、通常のゴム工業で用いられている方法を採用すればよい。
【0038】
防振ゴム組成物の加硫は特にその方法を選ばないが、一般的なスチーム加硫やUHF加硫により加硫ゴム化することができる。スチーム加硫は、未加硫の防振ゴム組成物に、熱媒体としてのスチームガスによって圧力と温度を与えて加硫させる手段であり、UHF加硫は、防振ゴム組成物にマイクロ波を照射して加硫させる手段である。また、プレス加硫や射出成形の際に成形金型の内部に防振ゴム組成物を保持したまま金型温度を加硫温度まで上昇させて加硫させてもよい。加硫温度は防振ゴム組成物の配合や加硫剤の種類によって適宜設定でき、通常は140~220℃が好ましく、150~180℃の範囲がより好ましい。加硫時間は、例えば、10~30分とできる。
【0039】
3.防振ゴム
本発明の一実施形態に係る防振ゴムは、上記の加硫成形を用いるものである。
本発明の一実施形態に係る防振ゴムは、硬さ及び機械特性、防振特性、滑り性(摩擦係数)といった特性のバランスに優れるため、様々な用途に用いることができる。本発明の一実施形態に係る防振ゴムの用途は特に限定されず、その特性を生かせる用途を自由に選択して用いることができる。本発明の一実施形態に係る防振ゴムは、防振が必要とされる様々な部材として、特には、自動車部材用防振ゴムとして、用いることができる。具体例を挙げれば、ブッシュ用部材、特には、コンプライアンスブッシュ、スタビライザーブッシュ用の部材として好適に利用することができる。
【実施例0040】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0041】
<実施例1~8、比較例1~15>
原料を表1、2に示す配合にて混合し、8インチの2本オープンロールを使用してさらに混練を行い、厚さ2.3mmのゴム組成物のシートを作製した。実施例1~8および比較例1~15のゴム組成物を製造した。得られたシートを、160℃×20分、圧力0.8MPaの条件でプレス加硫して厚さ2.0mmの加硫成形体を作製した。
【0042】
なお、ゴム組成物の原料の詳細は下記のとおりである。
キサントゲン変性クロロプレンゴム:デンカ社製、DCR-66(登録商標)
メルカプタン変性クロロプレンゴム:デンカ社製、DCR-36(登録商標)
カーボンブラックA:一次粒子径62nm:東海カーボン社製、シーストSVH(登録商標)シーストSシーストSシーストS東海カーボン株式会社製東海カーボン株式会社製
カーボンブラックB:一次粒子径450nm:Cancarb社製、Thermax N-990(登録商標)
カーボンブラックC:一次粒子径26nm:旭カーボン社製、旭#70
カーボンブラックD:一次粒子径45nm:旭カーボン社製、旭#60U
また、その他原料はそれぞれ市販品を用いた。
【0043】
なお、カーボンブラックの一次粒子径は、JIS Z8901に準拠して電子顕微鏡を用いて、顕微鏡写真上で200個の粒子の円相当径を測定して、その算術平均値を平均一次粒子径とした。
【0044】
<評価方法>
得られた加硫成形体について物性評価を行った。評価方法は以下に示すとおりである。
【0045】
(1)引張り強さ・破断時伸び
JIS K6251に基づき測定した。試験片は加硫成形体シートからダンベル状3号形試験片を切り出し、全自動ゴム引張り試験機(AGS H、島津製作所社製)を用いて、23℃で引張り速度を500mm/分の条件で測定した。
【0046】
(2)タイプAデュロメータ硬さ
JIS K6253-3に基づき、加硫成形体シートを3枚重ねた状態にして23℃で測定した。硬度計は(アスカーゴム硬度計A型、高分子計器社製)を使用した。
【0047】
(3)防振特性(動倍率)
JIS K6386に示される一般的な試験条件に基づき、円柱状試験片を用いて23℃の条件で動的ばね定数(Kd)及び静的ばね定数(Ks)を測定し、動倍率(Kd/Ks)を算出した。測定装置は動特性試験機(KCH701-20、鷺宮製作所社製)を使用した。
【0048】
(4)摩擦係数
摩擦係数測定は、ブルカー社製のUMT試験機を使用して行った。摩擦係数を測定するゴム材料は、厚み2mmのゴムシートで、先端R6の摩擦子をゴムシートに20Nの荷重で押し付けながら、ゴムシートを±25mmで摩擦子に対して直角方向に加振し、所定の周波数、温度での摩擦係数を測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】