(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139541
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】メタン発酵装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20220915BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B09B3/00 C
C02F11/04 A ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039976
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】521106131
【氏名又は名称】中村 公規
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中村 公規
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004BA03
4D004CA18
4D004CB04
4D004CB34
4D059AA03
4D059AA07
4D059BA15
4D059BA56
4D059BK12
4D059CA07
4D059CC01
4D059EA08
4D059EA20
4D059EB06
(57)【要約】
【課題】バイオガスを燃焼させて得た温水を利用可能なメタン発酵装置を提供する。
【解決手段】廃棄物を処理して得られたスラリー95に含まれる有機物を発酵させてバイオガスを生成するメタン発酵槽11と、メタン発酵槽11を加温することにより、有機物の発酵を促進する加温装置13と、を有するメタン発酵装置10において、メタン発酵槽11から取り出されたバイオガスを燃焼させることにより、水を温めて温水を生成する給湯器20と、給湯器20によって生成された温水で対象部を温める床暖房装置41と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を処理して得られたスラリーに含まれる有機物を発酵させてバイオガスを生成する処理槽と、
前記処理槽を加温することにより、前記有機物の発酵を促進する加温装置と、
を有するメタン発酵装置において、
前記処理槽から取り出された前記バイオガスを燃焼させることにより、水を温めて温水を生成する給湯器と、
前記給湯器によって生成された温水で対象部を温める床暖房装置と、
を有する、メタン発酵装置。
【請求項2】
請求項1記載のメタン発酵装置において、
前記床暖房装置は、作物を栽培する温室ハウスの地面に埋められており、
前記対象部は、前記温室ハウスの地面である、メタン発酵装置。
【請求項3】
請求項1記載のメタン発酵装置において、
前記加温装置は、前記床暖房装置を兼ねており、
前記対象部は、前記処理槽を含む、メタン発酵装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のメタン発酵装置において、
前記床暖房装置の設定温度を検出する検出部と、
前記床暖房装置の前記設定温度に基づいて前記給湯器の温水の目標温度を設定する第1温度設定部と、
前記目標温度に基づいて前記処理槽から取り出される前記バイオガスの目標流量を設定する目標流量設定部と、
前記バイオガスの目標流量に基づいて、前記加温装置が前記処理槽を加温する目標温度を設定する第2温度設定部と、
を有する、メタン発酵装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載のメタン発酵装置において、
前記加温装置は、電力が供給されて前記処理槽を加温する構成を有し、
前記処理槽から取り出された前記バイオガスを燃焼させて回転力を発生するガスエンジンと、
前記ガスエンジンの前記回転力を電力に変換する発電機と、
前記加温装置に供給する電力を含む必要電力量を設定する必要電力量設定部と、
前記必要電力量に基づいて、前記発電機の目標発電量を設定する目標電力量設定部と、
前記発電機の前記目標発電量に基づいて、前記ガスエンジンに対する前記バイオガスの目標供給量を設定する目標供給量設定部と、
が更に設けられている、メタン発酵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃棄物を処理して得られたスラリーに含まれる有機物を発酵させてバイオガスを生成する、メタン発酵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を処理して得られたスラリーに含まれる有機物を発酵させてバイオガスを生成する、メタン発酵装置の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されているメタン発酵装置は、生ごみ廃棄物(廃棄物)を温水または蒸気で加温しながら粉砕して所定温度の加温生ごみスラリーとする生ごみスラリー化装置と、加温生ごみスラリーを所定時間滞留させて無機固形物を沈降分離する分離槽と、無機固形物分離後の加温生ごみスラリーを投入してメタン発酵処理するバイオリアクタと、メタンガスを利用して電力と高温水とを発生するエネルギー回収装置と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、特許文献1に記載されているメタン発酵装置では、温水の具体的な利用に関して考慮されておらず改善の余地がある、という課題を認識した。
【0005】
本開示の目的は、バイオガスを燃焼させて得た温水を利用可能なメタン発酵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態のメタン発酵装置は、廃棄物を処理して得られたスラリーに含まれる有機物を発酵させてバイオガスを生成する処理槽と、前記処理槽を加温することにより、前記有機物の発酵を促進する加温装置と、を有するメタン発酵装置において、前記処理槽から取り出された前記バイオガスを燃焼させることにより、水を温めて温水を生成する給湯器と、前記給湯器によって生成された温水で対象部を温める床暖房装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態のメタン発酵装置によれば、バイオガスを燃焼させて得た温水を床暖房装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】メタン発酵装置の制御系統を示すブロック図である。
【
図3】メタン発酵装置で行われる制御例を示すフローチャートである。
【
図4】メタン発酵装置で行われる他の制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、メタン発酵装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、メタン発酵装置10の概要を示す模式図、
図2は、メタン発酵装置10の制御系統を示すブロック図である。メタン発酵装置10は、メタン発酵槽11、ガスバッグ12、加温装置13、循環用ポンプ14、除湿器15、脱硫器16、流量計17、ブロワ18、圧力計19、給湯器20、消化液取り出し経路21、利用施設22、廃棄物供給設備23A,23B、制御回路24を有する。
【0010】
メタン発酵槽11へ廃棄物を送る前処理工程がある。廃棄物は、食品廃棄物(食品残渣等)、生ごみ、家畜排せつ物、下水汚泥等を含む。前処理工程では、粉砕機25によって破砕された廃棄物に水を加えることにより、メタン発酵に適したスラリーを生成する。スラリーは、水等の液体中に固体粒子が懸濁している流動体の状態である。一例として、1日に約20kgの食品残渣と、1日に約20kgの水との混濁液によってスラリーを得ることができる。
【0011】
メタン発酵槽11は、嫌気性発酵、つまり、メタン発酵を行うバイオリアクタである。メタン発酵槽11の材質は、鋼板、コンクリート、合成樹脂等を用いることが可能である。メタン発酵槽11の内部に担体が充填されている。担体、つまり、固定床は、微生物、つまり、メタン菌が定着されている。
【0012】
加温装置13は、メタン発酵槽11の外部、具体的には下方に設けられている。加温装置13は、メタン発酵槽11内のスラリー50を加温するためのものである。加温装置13は、温水ヒータ、シーズヒータ、セラミックヒータ、カーボンヒータ、ハロゲンヒータ、オイルヒータ、パネルヒータ等のうちの何れでもよい。温水ヒータは、メタン発酵槽11の下方空間へ熱伝導性の配管を設け、配管内へ温水を供給してメタン発酵槽11を加温するものである。加温装置13が温水ヒータである場合、加温装置13は、温水を配管へ輸送する電動ポンプ13Aを有する。電動ポンプ13Aは、電力が供給されて駆動する。また、加温装置13がシーズヒータ、セラミックヒータ、カーボンヒータ、ハロゲンヒータ、オイルヒータ、パネルヒータ等のうちの何れかである場合、何れも電力が供給されてメタン発酵槽11を加温する構成である。
【0013】
加温装置13によって、メタン発酵槽11内のスラリー50を加温することにより、50℃乃至55℃の範囲内で高温発酵させること、または、37℃前後で中温発酵させることが可能である。すると、メタン発酵槽11の内部では、スラリー50に含まれる有機物が効率よく分解処理され、メタン発酵槽11の内部でバイオガスが発生する。バイオガスは、主にメタン(約60%)、二酸化炭素(約40%)、酸素、水素、硫化水素、窒素、アンモニア等を含む。
【0014】
循環用ポンプ14は、メタン発酵槽11に接続された循環経路26に設けられている。循環経路26は、メタン発酵槽11の内部の下部と、メタン発酵槽11の内部の上部とを接続する配管である。循環用ポンプ14は、メタン発酵槽11の内部のスラリー50を撹拌するためのものである。循環用ポンプ14は吸入口27、吐出口28及び排出口29を有し、循環用ポンプ14は、電動モータ30によって駆動される。
【0015】
循環用ポンプ14が駆動されると、循環用ポンプ14は、メタン発酵槽11の内部で下部からスラリー50を吸入口27から吸入するとともに、吸入したスラリー50を吐出口28から吐出してメタン発酵槽11の内部の上部に送る。さらに、排出口29を開閉するバルブ31が設けられている。バルブ31は、作業者による手動操作されるもの、または、電気的な自動制御により作動するソレノイドバルブの何れでもよい。
【0016】
また、循環経路26において、メタン発酵槽11の内部と循環用ポンプ14の吸入口27との間に、バルブ32が設けられている。バルブ32は、循環経路26を開閉する機構である。バルブ32は、作業者による手動操作されるもの、または、電気的な自動制御により作動するソレノイドバルブの何れでもよい。
【0017】
ガスバッグ12は、メタン発酵槽11の上方を覆うように設けられている。ガスバッグ12は、メタン発酵槽11の内部において発生したバイオガスを収容するためのものである。ガスバッグ12のガス排出口33には、ガス取り出し経路34が接続されている。ガス取り出し経路34における、除湿器15とガス排出口33との間にバルブ35が設けられている。バルブ35は、作業者による手動操作で作動するもの、または、電気的な自動制御により作動するソレノイドバルブの何れでもよい。
【0018】
除湿器15は、バイオガス中に含まれる水分を除去する装置である。除湿器15は、バイオガスの温度を低下させて、水分を結露させて除去する手段、バイオガスを乾燥剤に通過させて水分を除去する手段、バイオガスを膜分離装置に通過させて水分を除去する手段の何れでもよい。
【0019】
脱硫器16は、ガス取り出し経路34において除湿器15の下流に設けられている。ここで、「下流」とは、バイオガスの流れ方向における下流を意味する。脱硫器16は、バイオガスに脱硫処理を施すことにより、バイオガス中に含まれる硫化水素を除去する装置である。脱硫器16は、硫化水素濃度を一例として10ppm以下に脱硫する。脱硫器16は、例えば、生物脱硫方式、乾式脱硫方式、膜分離方式の何れかにより硫化水素を除去する装置である。生物脱硫方式は、乳牛ふん尿に由来する硫化硫黄菌の活性により、硫化水素を除去する。乾式脱硫方式は、硫化水素を酸化鉄、活性炭などの触媒に吸着させて硫化水素を除去する。膜分離方式は、硫化水素を吸着膜に吸着させて硫化水素を除去する。
【0020】
流量計17は、ガス取り出し経路34において脱硫器16の下流に設けられている。流量計17は、単位時間当たりにおけるバイオガスの流量を検出するものである。流量計17は、超音波式流量計、電磁式流量計、カルマン渦式流量計、羽根車式流量計、差圧式流量計等のうちの何れでもよい。流量計17は、検出したバイオガス流量に応じた信号を出力する機能を備えていてもよい。
【0021】
ブロワ18は、ガス取り出し経路34において流量計17の下流に設けられている。ブロワ18は、ガスバッグ12のガス排出口33から排出されるバイオガスを、下流、つまり、給湯器20へ輸送する圧縮機である。ブロワ18は、電動モータ36によって駆動される。ブロワ18は、ターボ圧縮機、容積圧縮機の何れでもよい。
【0022】
圧力計19は、ガス取り出し経路34においてブロワ18の下流に設けられている。圧力計19は、バイオガスの圧力を測定するものである。圧力計19は、ダイヤフラム形、ベローズ形、ブルドン管形、圧電素子形等のうちの何れでもよい。圧力計19は、検出したバイオガス圧力に応じた信号を出力する機能を備えていてもよい。
【0023】
給湯器20は、ガス取り出し経路34におけるバイオガスの流れ方向で、ブロワ18の下流に設けられている。給湯器20は、輸送されるバイオガスを燃焼させ、その熱を水(水道水等)に伝達して温水を排出する装置である。給湯器20によって温められた温水は、利用施設22へ供給可能である。また、加温装置13が温水ヒータである場合、給湯器20から排出される温水を、加温装置13に供給することも可能である。
【0024】
ガス取り出し経路34において、圧力計19と給湯器20との間にバルブ47が設けられている。バルブ47は、ガス取り出し経路34のバイオガスを、ディーゼルエンジン39と給湯器20とに分配する3方向弁である。バルブ47は、作業者による手動操作で作動するもの、または、電気的な自動制御により作動するソレノイドバルブの何れでもよい。
【0025】
利用施設22は、例えば、温室ハウス、飲食店、戸建て住宅、集合住宅、工場等を含む。
図1のように、給湯器20は、利用施設22に設けられていてもよいし、利用施設22とは異なる場所に設けられていてもよい。利用施設22は、温水を利用する床暖房装置41、電力を使用する電気設備42を有する。床暖房装置41は、飲食店、戸建て住宅、集合住宅、工場等の床下に設けられていると、対象部としての床を温めることが可能である。床暖房装置41は、温室ハウスの地面に埋め込まれていると、温水で対象部としての地面を温めることが可能である。地面は、土壌、土を含む。
【0026】
床暖房装置41の利用者は、設定温度等を任意に設定する。床暖房装置41は通信機能を有しており、床暖房装置41は、設定温度に応じた信号、床暖房装置41の稼働及び停止に応じた信号を出力する。電気設備42は、照明装置、冷蔵庫、洗濯機、パーソナルコンピュータ、テレビ受像機、電子レンジ等を含む。電気設備42の利用者は、電気設備42の稼働及び停止、利用時期、設定温度、オン・オフ等を操作する。電気設備42は通信機能を有しており、電気設備42は、利用者の操作に応じた信号を出力する。
【0027】
廃棄物供給設備23Aは、利用施設22で発生した廃棄物、例えば、温室ハウスの作物栽培途中で出る剪定ごみ、温室ハウスの作物の収穫時に取り除いた葉、生ごみ及び残飯等を、前処理工程へ送るものである。廃棄物供給設備23Aは、運搬車、コンテナ、コンベア、輸送管等を含む。飲食店、戸建て住宅、集合住宅等では、ディスポーザが設けられていてもよい。ディスポーザは、調理用の流し台の下部に接続されている排水設備に取り付けられる生ごみ粉砕機である。利用施設22とメタン発酵槽11とが、廃棄物供給設備23Aに含まれるコンベア、輸送管等によって接続されていてもよい。廃棄物供給設備23Bは、利用施設22以外の施設44で発生した廃棄物を、前処理工程へ送るものである。施設44は、フードプロセッサ等の粉砕機25によって、生ごみを処理可能である。
【0028】
消化液取り出し経路21は、メタン発酵槽11の排出口37に接続されている。消化液取り出し経路21と循環経路26とが、メタン発酵槽11に対して並列に接続されている。消化液取り出し経路21は、メタン発酵槽11の内部でバイオガスを発生させた後に、メタン発酵槽11の内部に残る液体、つまり、バイオガス消化液を取り出す経路である。
消化液取り出し経路21を開閉するバルブ48が設けられている。バルブ48は、作業者による手動操作で作動するもの、または、電気的な自動制御により作動するソレノイドバルブの何れでもよい。バイオガス消化液は、例えば、1日あたり約40kgを得られる。
【0029】
メタン発酵装置10は、ディーゼルエンジン39及び発電機38を備えていてもよい。ディーゼルエンジン39は、燃焼室、燃料噴射バルブ49を有する。燃料噴射バルブ49は、燃焼室に対する燃料の供給量を制御する。燃料噴射バルブ49は、開閉、開度及び開いている時間を電気的に制御可能なソレノイドバルブである。そして、ディーゼルエンジン39に供給する燃料としてバイオガスを用い、ディーゼルエンジン39の出力軸の回転力で発電機38を回転させる。発電機38で発生した電力は、電気回路45を介して蓄電池40に充電可能である。蓄電池40は、充電及び放電が可能な二次電池である。ディーゼルエンジン39に対する燃料供給量が相対的に多いほど、発電機38で発生する電力量(電圧)が相対的に高くなる。
【0030】
蓄電池40の電力は、加温装置13の電気ヒータに供給すること、電動モータ30,36に供給すること、利用施設22の電気設備42に供給すること、等も可能である。なお、発電機38で発生した電力を、蓄電池40へ充電することなく、加温装置13の電気ヒータに供給すること、電動モータ30,36に供給すること、利用施設22の電気設備42に供給すること、等も可能である。
【0031】
制御回路24は、入力ポート、出力ポート、中央演算処理回路、記憶回路等を有するコンピュータである。記憶回路には、加温装置13、電動モータ30,36、発電機38、ディーゼルエンジン39等を制御するデータ、情報等が記憶されている。制御回路24には、流量計17から出力される信号、圧力計19から出力される信号、床暖房装置41から出力される信号等が入力される。制御回路24は、入力される信号、記憶回路に記憶されているデータ、及び情報に基づいて、加温装置13の温度、電動モータ30,36の回転、回転数、停止をそれぞれ別々に制御し、発電機38における発電量、ディーゼルエンジン39に対するバイオガスの供給量、運転、停止、運転時の回転数、吸入空気量等を制御する。
【0032】
バルブ31,32,35,47,48がソレノイドバルブであると、制御回路24は、バルブ31,32,35,47,48の開閉をそれぞれ別々に制御可能である。制御回路24は、電気回路45を制御することにより、発電機38で発生した電力の供給先、供給量等を制御する。給湯器20が、利用施設22に設けられている場合、利用施設22の作業者が、給湯器20の稼働及び停止、温度設定等を行う。給湯器20が利用施設22以外の場所に設けられている場合、制御回路24が、給湯器20の稼働及び停止、温度設定等を行う。
【0033】
次に、メタン発酵装置10の動作例を説明する。廃棄物供給設備23A,23Bから供給される廃棄物は、前処理工程でスラリー状に処理されて、メタン発酵槽11の内部へ投入(供給)される。加温装置23は、メタン発酵槽11を加温し、メタン発酵槽11の内部で嫌気性発酵、つまり、メタン発酵が行われ、バイオガス(バイオガス)が発生する。バイオガスは、ガスバッグ12及びガス排出口33を通ってガス取り出し経路34へ排出される。
【0034】
ブロワ18の駆動によって、ガス取り出し経路34を輸送されるバイオガスは、除湿器15で除湿され、かつ、脱硫器16で硫化水素が除去された後、給湯器20へ送られる。給湯器20では、バイオガスが燃焼された熱で水が温められ、給湯器20から温水が排出される。したがって、給湯器20から排出された温水を、利用施設22の床暖房装置41で利用できる。なお、加温装置13が温水ヒータである場合、給湯器20から排出された温水を、加温装置13へ供給することが可能である。
【0035】
メタン発酵槽11の内部でバイオガスを発生させた後に、メタン発酵槽11の内部に残るバイオガス消化液は、消化液取り出し経路21から排出される。バイオガス消化液は、窒素、カリウム等の肥料成分を含んでいるため、バイオガス消化液を液体肥料として利用可能である。例えば、スプリンクラー等によって、バイオガス消化液を利用施設22の温室ハウス内へ散布することが可能である。
【0036】
上記のように、本実施形態のメタン発酵装置10によれば、廃棄物を加温処理した場合に生じるバイオガスで水を温めて温水とし、温水を床暖房装置41で用いることが可能である。
【0037】
さらに、メタン発酵装置10で行われる制御例を、
図3のフローチャートを参照して説明する。
図3の制御例は、床暖房装置41の設定温度に基づいて、加温装置13の目標温度を設定するものである。制御回路24は、ステップS10において、床暖房装置41の設定温度を検出する。給湯器20が、利用施設22以外の場所に設けられている場合、制御回路24は、ステップS11において、床暖房装置41の設定温度に基づいて、給湯器20から出す温水の目標温度を設定する。具体的には、床暖房装置41の設定温度が相対的に高いほど、温水の目標温度が相対的に高く設定される。
【0038】
制御回路24は、ステップS12において、温水の目標温度に基づき、メタン発酵槽11から給湯器20へ輸送されるバイオガスの目標流量を決定する。具体的には、温水の目標温度が相対的に高いほど、バイオガスの目標流量が相対的に高く設定される。給湯器20へ輸送されるバイオガスの実際の流量は、メタン発酵槽11におけるバイオガスの生成量によって変化する。そこで、制御回路24は、ステップS13において、バイオガスの目標流量に基づいて、加温装置13の目標温度を設定し、
図3の制御例を終了する。具体的には、バイオガスの目標流量が相対的に多いほど、加温装置13の目標温度が相対的に高く設定される。これは、メタン菌は温度が相対的に高くなるほど活性化が促進され、発生するバイオガスの生成量が増加するからである。
【0039】
また、加温装置13は、目標温度が相対的に高いほど、消費電力が相対的に増加する。このことは、加温装置13が温水ヒータ以外の機構である場合は勿論、加温装置13が温水ヒータである場合も同様である。その理由は、加温装置13は、目標温度が相対的に高いほど、給湯器20から温水ヒータに供給する温水の目標流量が増加し、電動ポンプ13Aの駆動に必要な電力量が増加するからである。
【0040】
制御回路24が
図3の制御例を実行すると、床暖房装置41の設定温度に基づいて、給湯器20の目標温度が設定され、給湯器20の目標温度に基づいて、バイオガスの目標流量が設定され、バイオガスの目標流量に基づいて、加温装置13の目標温度が設定される。したがって、加温装置13の消費電力を、床暖房装置41の設定温度に基づいて制御可能であり、加温装置13の消費電力の増加を抑制できる。
【0041】
さらに、メタン発酵装置10で行われる他の制御例を、
図4のフローチャートを参照して説明する。制御回路24は、ステップS20において、メタン発酵装置10の所定時間あたりの必要電力量を設定する。必要電力量は、電動モータ30,36の消費電力、加温装置13の消費電力、電気設備42の消費電力等から算出可能である。消費電力が相対的に多いほど、必要電力量が相対的に多くなる。制御回路24は、ステップS21において、必要電力量を超える目標発電量を設定する。目標発電量は、発電機38における所定時間当たりの発生電力の目標値である。必要電力量が相対的に多くなるほど、目標発電量は相対的に多くなる。
【0042】
制御回路24は、ステップS22において、目標発電量に基づき、ディーゼルエンジン39に対する所定時間あたりのバイオガスの目標供給量を設定する。目標発電量に基づき、ディーゼルエンジン39に対する所定時間あたりのバイオガスの目標供給量(目標噴射量)を設定するためのデータは、予め制御回路24の記憶回路に記憶されている。具体的には、目標電力量が相対的に多くなるほど、バイオガスの目標供給量は相対的に多くなる特性である。
【0043】
制御回路24は、ステップS23において、バイオガスの目標供給量に基づき、ディーゼルエンジン39の燃料噴射バルブ49を制御し、
図4の制御例を終了する。バイオガスの目標供給量に基づき、ディーゼルエンジン39の燃料噴射バルブ49を制御するデータは、予め制御回路24の記憶回路に記憶されている。具体的には、バイオガスの目標供給量が相対的に多いほど、燃料噴射バルブ49の開度が相対的に大きく設定されるか、または、燃料噴射バルブ49が開かれている時間が相対的に長く設定され、ディーゼルエンジン39へ所定時間あたりに供給されるバイオガスの実際の供給量が相対的に多くなる。このように、制御回路24により
図4の制御例が実行されると、メタン発酵装置10の所定時間あたりの必要電力量に基づいて、ディーゼルエンジン39の所定時間あたりのバイオガスの目標供給量を算出する。したがって、ディーゼルエンジン39でバイオガスが無駄に消費されることを回避できる。
【0044】
本実施形態で説明された事項の技術的意味の一例は、次の通りである。メタン発酵装置10は、メタン発酵装置の一例であり、メタン発酵槽11は、処理槽の一例である。加温装置13は、加温装置の一例である。加温装置13は、床暖房装置を兼ねるものと定義可能である。給湯器20は、給湯器の一例である。利用施設22は、温室ハウスを含む。床暖房装置41は、床暖房装置の一例である。制御回路24は、検出部、第1温度設定部、第2温度設定部、目標流量設定部、必要電力量設定部、目標供給量設定部、目標電力量設定部の一例である。ディーゼルエンジン39は、ガスエンジンの一例である。発電機38は、発電機の一例である。循環用ポンプ14及び電動モータ30は、撹拌装置の一例である。燃料噴射バルブ49における所定時間あたりのバイオガスの目標噴射量は、ディーゼルエンジンに対するバイオガスの目標供給量の一例である。
【0045】
本実施形態で説明したメタン発酵装置は、実施形態で図面を用いて説明したものに限定されない。例えば、ガスエンジンは、ディーゼルエンジンに代えて、ガスタービンであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…メタン発酵装置、11…メタン発酵槽、13…加温装置、13A…電動ポンプ、14…循環用ポンプ、20…給湯器、22…利用施設、24…制御回路、30,36…電動モータ、38…発電機、39…ディーゼルエンジン、41…床暖房装置、49…燃料噴射バルブ