(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139590
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】カーテン塗布装置及びカーテン塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20220915BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20220915BHJP
B05C 9/10 20060101ALI20220915BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220915BHJP
B05C 13/00 20060101ALI20220915BHJP
B05D 1/30 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B05C5/00 103
B05C11/00
B05C9/10
B05C11/10
B05C13/00
B05D1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040045
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(71)【出願人】
【識別番号】000105877
【氏名又は名称】サイデン化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】本間 俊司
(72)【発明者】
【氏名】平原 裕行
(72)【発明者】
【氏名】小田 純久
(72)【発明者】
【氏名】梅宮 弘和
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC14
4D075AC72
4D075AC80
4D075AC86
4D075AC93
4D075BB56Y
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB06
4D075DB07
4D075DB18
4D075DB33
4D075DB35
4D075DB36
4D075DB38
4D075DB43
4D075DB48
4D075DB53
4D075DC27
4D075EA05
4D075EA33
4D075EA35
4F041AA12
4F041AB01
4F041CA03
4F041CA04
4F041CA07
4F041CA16
4F041CA25
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA00
4F042BA04
4F042BA05
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA12
4F042BA27
4F042CB11
4F042DA00
4F042DF23
4F042DH00
(57)【要約】
【課題】支持体の走行に伴う空気の流れによるカーテン液の揺動を簡易な手法で安定化させやすいカーテン塗布装置を提供する。
【解決手段】搬送ロールにより連続走行する支持体上に、塗布液を薄膜状のカーテン液として落下させて塗布するカーテン塗布装置であって、前記搬送ロール及び前記カーテン液の少なくとも一方の近傍において、前記支持体上における前記カーテン液の落下着地位置よりも前記支持体の進行方向上流側位置に、前記搬送ロール及び前記カーテン液とは非接触状態で設けられた空気流制御ロールを備え、前記空気流制御ロールは、その回転軸が前記搬送ロールの回転軸、及び前記カーテン液の幅方向と平行に設けられており、かつ、前記搬送ロールの回転方向と同じ方向に回転する、カーテン塗布装置を提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロールにより連続走行する支持体上に、塗布液を薄膜状のカーテン液として落下させて塗布するカーテン塗布装置であって、
前記搬送ロール及び前記カーテン液の少なくとも一方の近傍において、前記支持体上における前記カーテン液の落下着地位置よりも前記支持体の進行方向上流側位置に、前記搬送ロール及び前記カーテン液とは非接触状態で設けられた空気流制御ロールを備え、
前記空気流制御ロールは、その回転軸が前記搬送ロールの回転軸、及び前記カーテン液の幅方向と平行に設けられており、かつ、前記搬送ロールの回転方向と同じ方向に回転する、カーテン塗布装置。
【請求項2】
前記搬送ロールとして、前記カーテン液の前記落下着地位置の直下に設けられた支持ロールを備える請求項1に記載のカーテン塗布装置。
【請求項3】
前記空気流制御ロールの表面と、前記支持ロールの表面との間の距離は、1~30cmの範囲である請求項2に記載のカーテン塗布装置。
【請求項4】
前記空気流制御ロールの直径は、前記支持ロールの直径と同等又はそれより小さい請求項2又は3に記載のカーテン塗布装置。
【請求項5】
前記空気流制御ロールの直径は、前記支持ロールの直径の1/3~1倍の範囲である請求項2~4のいずれか1項に記載のカーテン塗布装置。
【請求項6】
前記空気流制御ロールは、側面視で前記支持ロールの回転軸と前記空気流制御ロールの回転軸とを結ぶ仮想直線と、側面視で前記支持ロールの回転軸から前記支持体の逆走行方向に引く仮想直線との間の角度が0~70°の範囲の位置に設けられている請求項2~5のいずれか1項に記載のカーテン塗布装置。
【請求項7】
搬送ロールにより連続走行する支持体上に、塗布液を薄膜状のカーテン液として落下させて塗布するカーテン塗布方法であって、
前記搬送ロール及び前記カーテン液の少なくとも一方の近傍において、前記支持体上における前記カーテン液の落下着地位置よりも前記支持体の進行方向上流側位置に、前記搬送ロール及び前記カーテン液とは非接触状態となる空気流制御ロールを、その回転軸が前記搬送ロールの回転軸、及び前記カーテン液の幅方向と平行に配置し、かつ、前記搬送ロールの回転方向と同じ方向に回転させて前記塗布を行う、カーテン塗布方法。
【請求項8】
前記搬送ロールとして、前記カーテン液の前記落下着地位置の直下に設けられた支持ロールを用いる請求項7に記載のカーテン塗布方法。
【請求項9】
前記空気流制御ロールの表面と、前記支持ロールの表面との間の距離が1~30cmの範囲に前記空気流制御ロールを配置して前記塗布を行う請求項8に記載のカーテン塗布方法。
【請求項10】
前記空気流制御ロールの直径は、前記支持ロールの直径と同等又はそれより小さい請求項8又は9に記載のカーテン塗布方法。
【請求項11】
前記空気流制御ロールの直径は、前記支持ロールの直径の1/3~1倍の範囲である請求項8~10のいずれか1項に記載のカーテン塗布方法。
【請求項12】
側面視で前記支持ロールの回転軸と前記空気流制御ロールの回転軸とを結ぶ仮想直線と、側面視で前記支持ロールの回転軸から前記支持体の逆走行方向に引く仮想直線との間の角度が0~70°の範囲の位置に前記空気流制御ロールを配置して前記塗布を行う請求項8~11のいずれか1項に記載のカーテン塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテン塗布装置及びカーテン塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を高速塗布可能な塗布技術として、カーテン塗布方式がある。カーテン塗布方式は、連続走行するウェブとも称される支持体上に、塗布液をカーテン状に自由落下させて塗布し、塗布液の膜を形成する方法である。カーテン塗布方式では、支持体に非常に薄い膜を高速で形成できるという利点があるが、生産性向上のため、さらなる高速塗布が要求されるようになってきている。
【0003】
しかし、高速塗布に伴い、搬送ロールにより連続走行する支持体表面には、搬送ロールの回転方向に沿って空気の流れが生じ、塗布液の落下着地位置に至る支持体に近傍の空気が同伴されて、塗布液と支持体との間に入り込む現象が生じる。この現象は、いわゆる空気同伴現象と称されており、支持体と空気との固-気界面から、支持体と塗布液との固-液界面への置換が十分に行われなかったことが原因で生じるといわれている。
【0004】
空気同伴現象は、自由落下する塗布液(カーテン液)を揺動させたり、支持体の走行方向の下流側へ湾曲状に膨らませたりして、支持体へのカーテン液の着地位置をずらしたり、支持体と塗布液との間に空気が入り込んで未塗布部を生じさせたりして、塗布ムラを発生させる原因となる。塗布速度の上昇とともに、支持体表面に同伴する空気の量及び速度は増すことから、さらなる高速化の実現には、上記の空気同伴現象を抑制することが必要となり、これまでに種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1~6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭49-24133号公報
【特許文献2】特開昭62-289264号公報
【特許文献3】特開平6-39331号公報
【特許文献4】特表昭57-500459号公報
【特許文献5】特開昭53-4053号公報
【特許文献6】特開平3-94870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、カーテン塗布装置において、ウェブとともに運ばれる空気を除去するために、ウェブがカーテン液の落下位置に進む前の位置にエアシールドを設けたことが記載されている。特許文献2には、カーテン塗布装置において、ウェブと塗布液との衝突点近傍を減圧する器具を設けたことが記載されている。特許文献3には、カーテン塗布装置において、支持ロールの角部のまわりに湾曲する空気シールドを設けたことが記載されている。特許文献4には、カーテン塗布装置において、コーティング組成物を周囲気流による妨害から保護するために、カーテン液等を囲む遮蔽手段を設けたことが記載されている。上述の特許文献1~4に開示された技術はいずれも、カーテン液の周りの空気の流動を抑える技術ではあるが、操作は受動的である。
【0007】
特許文献5には、カーテン塗布装置において、走行する被塗布物品の通路上を横切って延長する湾曲剛性部材と、湾曲剛性部材上に降下層状ガス流を作る装置とを設け、走行物品に衝突する前のカーテンを湾曲剛性部材の形状に従わせるようにしたことが記載されている。しかし、このような技術では、装置の構造が複雑となる。
【0008】
特許文献6には、カーテン塗布法により、走行するウェブの裏面を流体により支持しつつ塗布する方法において、塗布液と支持体の接触点の上流側において、支持体の塗布面側に剛体ロールを接触させつつ塗布する方法が記載されている。この方法では、剛体ロールの回転がカーテンの安定化に寄与するとされているが、副次的な効果であり、空気同伴現象の積極的な制御には至らない。
【0009】
上述したように、カーテン塗布の技術においては、塗布液と支持体との接触線が自由に移動することから、安定な操作が難しく、接触線を安定に保つため、古くから、空気同伴現象を抑える種々の試みがなされてきた。しかし、装置構造の制約上、決め手となるユニバーサルな技術は確立されていないようである。
【0010】
そこで本発明は、支持体の走行に伴う空気の流れによるカーテン液の揺動を簡易な手法で安定化させやすいカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、搬送ロールにより連続走行する支持体上に、塗布液を薄膜状のカーテン液として落下させて塗布するカーテン塗布装置であって、前記搬送ロール及び前記カーテン液の少なくとも一方の近傍において、前記支持体上における前記カーテン液の落下着地位置よりも前記支持体の進行方向上流側位置に、前記搬送ロール及び前記カーテン液とは非接触状態で設けられた空気流制御ロールを備え、前記空気流制御ロールは、その回転軸が前記搬送ロールの回転軸、及び前記カーテン液の幅方向と平行に設けられており、かつ、前記搬送ロールの回転方向と同じ方向に回転する、カーテン塗布装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、搬送ロールにより連続走行する支持体上に、塗布液を薄膜状のカーテン液として落下させて塗布するカーテン塗布方法であって、前記搬送ロール及び前記カーテン液の少なくとも一方の近傍において、前記支持体上における前記カーテン液の落下着地位置よりも前記支持体の進行方向上流側位置に、前記搬送ロール及び前記カーテン液とは非接触状態となる空気流制御ロールを、その回転軸が前記搬送ロールの回転軸、及び前記カーテン液の幅方向と平行に配置し、かつ、前記搬送ロールの回転方向と同じ方向に回転させて前記塗布を行う、カーテン塗布方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支持体の走行に伴う空気の流れによるカーテン液の揺動を簡易な手法で安定化させやすいカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態のカーテン塗布装置の構成を表す模式側面図である。
【
図2】第2の実施形態のカーテン塗布装置の構成を表す模式側面図である。
【
図3】第3の実施形態のカーテン塗布装置の構成を表す模式断面斜視図である。
【
図4】第4の実施形態のカーテン塗布装置の構成を表す模式断面斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態のカーテン塗布装置における空気流制御ロールを支持ロール及びカーテン液とともに示した模式側面図である。
【
図6】比較例1の数値流体力学シミュレーションの結果を表すグラフである。
【
図7】比較例2の数値流体力学シミュレーションの結果を表すグラフである。
【
図8】比較例3の数値流体力学シミュレーションの結果を表すグラフである。
【
図9】実施例1の数値流体力学シミュレーションの結果を表すグラフである。
【
図10】実施例2の一部の数値流体力学シミュレーションの結果を表すグラフである。
【
図11】実施例2の別の一部の数値流体力学シミュレーションの結果を表すグラフである。
【
図12】実施例2の一部の数値流体力学シミュレーションの結果を横軸にロール間距離、縦軸に水平方向速度として表したグラフである。
【
図13】実施例3の数値流体力学シミュレーションの結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明の一実施形態のカーテン塗布装置(以下、単に「カーテン塗布装置」と記載することがある。)は、搬送ロールにより連続走行する支持体上に、塗布液を薄膜状のカーテン液として落下させて塗布する装置である。カーテン塗布装置は、搬送ロール及びカーテン液の少なくとも一方の近傍において、支持体上におけるカーテン液の落下着地位置よりも支持体の進行方向上流側位置に、搬送ロール及びカーテン液とは非接触状態で設けられた空気流制御ロールを備える。空気流制御ロールは、その回転軸が搬送ロールの回転軸、及びカーテン液の幅方向と平行に設けられており、かつ、搬送ロールの回転方向と同じ方向に回転するものである。
【0017】
また、本発明の一実施形態のカーテン塗布方法(以下、単に「カーテン塗布方法」と記載することがある。)は、搬送ロールにより連続走行する支持体上に、塗布液を薄膜状のカーテン液として落下させて塗布する方法である。この方法では、搬送ロール及びカーテン液の少なくとも一方の近傍において、支持体上におけるカーテン液の落下着地位置よりも支持体の進行方向上流側位置に、搬送ロール及びカーテン液とは非接触状態となる空気流制御ロールを配置する。この際、空気流制御ロールを、その回転軸が搬送ロールの回転軸、及びカーテン液の幅方向と平行に配置する。このように配置した空気流制御ロールを、搬送ロールの回転方向と同じ方向に回転させて塗布を行う。
【0018】
上記カーテン塗布装置及びカーテン塗布方法では、支持体を連続走行させる搬送ロールとは別に、その搬送ロールの回転軸と平行な回転軸をもつロールを用いる。このロールは、搬送ロール及びカーテン液の少なくとも一方の近傍において、支持体上におけるカーテン液の落下着地位置よりも支持体の進行方向上流側位置に配置される。また、上記ロールは、搬送ロール及びカーテン液とは非接触状態、かつ、カーテン液の幅方向に平行に配置された状態で用いられる。塗布を行うに当たっては、上記ロールを搬送ロールの回転方向と同じ方向に回転させる。これにより、上記ロールは、カーテン液の幅方向に渡ってカーテン液の不安定化を引き起こす境界層を破壊するように働き、カーテン液近傍の空気の流れを制御しやすくなる。そのため、本技術では、搬送ロールとは別の上記ロールを空気流制御ロールと称する。上記の通り、本技術では、上記空気流制御ロールによって、支持体の走行に伴う空気の流れによるカーテン液の揺動を簡易な手法で安定化させやすいカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法を提供することができる。
【0019】
また、本技術では、上記空気流制御ロールについて、カーテン液や搬送ロールとの関係での設置位置、ロール自体のサイズ(例えば直径)、及び回転速度等を設定することにより、支持体の走行に伴う空気の流れを、塗布液の物性値や塗布速度等に応じて適切に制御しうることが期待できる。また、例えば、空気流制御ロールの表面に凹凸パターン等を施すことによっても、塗布液の物性値や塗布速度等に応じた適切な制御が期待できる。
【0020】
本発明の一実施形態のカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法では、搬送ロールにより支持体を連続走行させることに関する構成や、塗布液を薄膜状のカーテン液として落下させることに関する構成は、特に制限されない。それらの構成は、後述する通り、種々の構成を採ることが可能であり、公知のカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法における構成を採ることも可能である。
【0021】
以下、上述した本発明の一実施形態のカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、共通する構成部分については同一の符号を付して、その説明を省略することがある。
【0022】
図1~
図4は、本発明の一実施形態のカーテン塗布装置の構成例を表す模式図である。具体的には、
図1は、第1の実施形態のカーテン塗布装置11の構成を表す模式側面図である。
図2は、第2の実施形態のカーテン塗布装置12の構成を表す模式側面図である。
図3は、第3の実施形態のカーテン塗布装置13の構成を表す模式断面斜視図である。
図4は、第4の実施形態のカーテン塗布装置14の構成を表す模式断面斜視図である。
【0023】
図1~
図4に示すように、本発明の一実施形態のカーテン塗布装置11(12~14)は、搬送ロール21(22)により連続走行する支持体W上に、塗布液(L)を薄膜状のカーテン液Cとして落下させて塗布する装置である。カーテン塗布装置11~14は、空気流制御ロール30を備える。カーテン塗布装置11~14は、本発明の一実施形態のカーテン塗布方法に用いられることが好ましい。そのため、カーテン塗布装置11(12~14)は、空気流制御ロール30のほか、支持体Wを連続走行させるための搬送ロール21(22)、及び塗布液(L)を薄膜状のカーテン液Cとして落下させるための塗布ヘッド40(41、42)を備えて構成されたものであることが好ましい。
【0024】
以下では、まず、搬送ロール21、22及び塗布ヘッド40~42について説明した後、空気流制御ロール30について詳述することとする。
【0025】
支持体Wの連続走行に用いる搬送ロール21、22は、円筒形状であり、その回転軸がカーテン液Cの幅方向(
図1及び
図2の紙面に対して垂直方向)と平行に設けられている。搬送ロール21、22は、図示しない駆動部により、支持体Wを進行方向Xへ走行させる回転方向R
a(
図1及び
図2における反時計回り方向)に回転させられるように構成されている。搬送ロール21、22の回転方向R
aへの回転により、支持体Wがカーテン液Cの落下着地位置Pを通過する進行方向Xへ連続走行される。
図2に示すカーテン塗布装置12は、搬送ロール22に支持体Wが巻かれ、この搬送ロール22により支持体Wの搬送方向が180°転換されるように構成されている。
【0026】
支持体Wの連続走行には、1つの搬送ロールを用いることも可能であるが、例えば、カーテン塗布装置11を示す
図1に表れているように、複数の搬送ロール21を用いることもできる。
図2~
図4においては、1つの搬送ロール22が示されているが、カーテン塗布装置12~14も、図示しない別の搬送ロールをさらに備えることができる。
【0027】
また、例えば、
図2~
図4にそれぞれ示すカーテン塗布装置12~14のように、搬送ロール22として、少なくとも、カーテン液Cの落下着地位置Pの直下に設けられたもの(これを「支持ロール」と記載することがある。)が用いられることが好ましい。カーテン液Cの落下着地位置Pの直下に設けられた支持ロール22を備えるカーテン塗布装置12~14は、空気流制御ロール30を備えることの技術的意義がさらに高まると考えられる。カーテン液Cの落下着地位置Pの直下に支持ロール22が設けられている場合、カーテン液Cは、支持ロール22の回転方向R
aへの回転及び支持体Wの走行に伴う空気同伴現象の影響をより受けやすいと考えられるところ、その影響を空気流制御ロール30で抑えやすくなるためである。
【0028】
搬送ロール21、22の構成としては、
図1~
図4に示すように、支持体Wを直接支持して連続走行させる構成が好ましい。その場合、
図2~
図4に示す搬送ロール22のように、支持体Wを巻くようにして連続走行させる構成のものでもよい。また、図示しないが、搬送ロールは、支持体Wを載せて連続走行させるベルトと共にベルトコンベアを構成するものでもよい。支持体Wを直接支持して連続走行させる搬送ロール21、22が用いられる場合、上述した空気同伴現象の影響をより受けやすいと考えられ、空気流制御ロール30の技術的意義がより高まると考えられることから好ましい。
【0029】
搬送ロール21、22のサイズは、塗布液Lを塗布する対象の支持体Wのサイズや用途に応じて、適宜決めることができる。好適な搬送ロール21、22の回転軸に沿う長さは、例えば、10~200cmであることが好ましく、20~100cmであることがより好ましい。また、搬送ロール21、22の直径は、10~100cmであることが好ましく、10~50cmであることがより好ましく、20~40cmであることがさらに好ましい。
【0030】
搬送ロール21、22の回転速度も、塗布液Lを塗布する対象の支持体Wのサイズや用途、生産性等に応じて、適宜決めることができる。搬送ロール21、22の好適な回転速度としては、例えば、30~3000rpmであることが好ましく、100~1000rpmであることがより好ましい。
【0031】
図1及び
図2に示すように、塗布液を薄膜状のカーテン液Cとして支持体Wに落下させるために、塗布ヘッド40を用いることができる。塗布ヘッド40は、支持体Wに対し、支持体Wの幅方向に沿ってカーテン液Cを連続的に落下させるように構成されている。そのため、支持体W上におけるカーテン液Cの落下着地位置Pは、支持体Wの幅方向に沿うライン状の位置となる。塗布ヘッド40から支持体Wに連続的に落下してくるカーテン液Cは、落下着地位置Pにおいて、搬送ロール21、22により連続走行する支持体Wに付着する。このようにして、カーテン液C(塗布液)が付着した支持体Wが搬送ロール21、22の進行方向Xの下流側に搬送され、落下着地位置Pから進行方向Xの下流側へ塗布液が塗布されていき、塗布膜を形成させることができる。
【0032】
塗布ヘッド40の構成は、塗布液を薄膜状のカーテン液Cとして落下させることが可能であれば特に制限されない。塗布ヘッド40としては、例えば、
図3に示すように、塗布液Lをノズル型のスリット43から薄膜状のカーテン液Cとして吐出することが可能な塗布ヘッド(ノズルスリット型塗布ヘッド)41を用いることができる。また、例えば、
図4に示すように、塗布液Lをスリット(流路)44を通じてスライド面46上に移動させ、塗布液Lをスライド面46で滑らせるようにして、薄膜状のカーテン液Cとして流下させることが可能な塗布ヘッド(スライド型塗布ヘッド)42を用いることができる。さらに、図示を省略するが、支持体Wに塗布液の多層膜を形成しうるように、塗布ヘッド40~42は、例えば、上述したスリット43、44を複数備える等により、積層状態の塗布液をカーテン液Cとして落下させることが可能に構成されていてもよい。
【0033】
また、塗布ヘッド40~42は、その内部にマニホールド45を備えることが好ましい。図示を省略するが、カーテン塗布装置11~14は、塗布液Lが給液ポンプにより塗布液貯蔵タンクから配管を通って塗布ヘッド(その内部のマニホールド45)に送液されるように構成することができる。カーテン塗布装置11~14は、
図3及び
図4に示されているように、塗布ヘッド40~42に付随して、塗布液Lをカーテン状に案内するエッジガイド47、48を備えていてもよい。
【0034】
塗布液Lが支持体Wに落下している状態の好適なカーテン液Cの高さは、5~500mmであることが好ましく、20~300mmであることがより好ましい。また、そのカーテン液Cの幅は、30~2000mmであることが好ましく、150~1000mmであることがより好ましい。
【0035】
次に主に
図5を参照しながら、空気流制御ロール30について説明する。
図5は、空気流制御ロール30の好ましい構成等を説明するための図であり、空気流制御ロール30を支持ロール22及びカーテン液Cとともに示した模式側面図である。
図5において、空気流制御ロール30とともに支持ロール22を示したのは、上述したカーテン塗布装置12~14(
図2~
図4参照)のように、搬送ロールとして少なくとも支持ロール22が用いられることが好ましいためである。
【0036】
空気流制御ロール30は、支持ロール22の回転方向R
aへの回転による空気同伴現象を抑制しうるように、搬送ロール(支持ロール)22及びカーテン液Cの少なくとも一方の近傍において、支持体W上におけるカーテン液Cの落下着地位置Pよりも、支持体Wの進行方向Xの上流側位置に設けられている。また、空気流制御ロール30は、搬送ロール22及びカーテン液Cとは接触していない状態(非接触状態)で設けられている。さらに空気流制御ロール30は、円筒形状であり、その回転軸が支持ロール22の回転軸、及びカーテン液Cの幅方向(
図5の紙面に対して垂直方向)と平行に設けられており、かつ、支持ロール22の回転方向R
aと同じ方向(回転方向R
b)に回転するものとして構成されている。
【0037】
カーテン液Cの近傍における空気流制御ロール30の設置位置としては、空気流制御ロール30の表面とカーテン液Cとの距離Iが、200mm以下であることが好ましく、150mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることがさらに好ましい。また、空気流制御ロール30自体の回転方向Rbへの回転による空気流が直接的にカーテン液Cに影響を及ぼしてカーテン液Cを支持体Wの進行方向Xの方へ揺動させることを抑える観点から、距離Iは、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましい。上記の距離Iの値は、カーテン液Cから空気流制御ロール30の表面までの水平方向(支持体Wの表面に平行な方向)の最短距離をとる。
【0038】
搬送ロールとして、カーテン液Cの落下着地位置の直下に設けられた支持ロール22が用いられる場合、カーテン液Cの近傍に設けられた空気流制御ロール30は、支持ロール22の近傍にも位置することとなる。また、この場合、空気流制御ロール30の位置は、カーテン液Cとは離れた位置でも、支持ロール22の近傍の位置であればよい。支持ロール22の近傍における空気流制御ロール30の設置位置としては、空気流制御ロール30の表面と、支持ロール22の表面との間の距離G(以下、ロール間距離Gと記載することもある。)は、1~30cmであることが好ましい。これにより、支持ロール22の回転方向Raへの回転による空気同伴現象をより抑制しやすくなる。この観点から、ロール間距離Gは、2~20cmであることがより好ましく、2~10cmであることがさらに好ましい。ロール間距離Gの値は、側面視で支持ロール22の回転軸と空気流制御ロール30の回転軸とを結ぶ仮想直線S1上の支持ロール22の表面と空気流制御ロール30の表面との間の距離をとる。
【0039】
空気流制御ロール30が設けられる位置については、支持ロール22の位置との関係から、さらに次のようにすることが好ましい。すなわち、空気流制御ロール30は、側面視で支持ロール22の回転軸と空気流制御ロール30の回転軸とを結ぶ仮想直線S1と、側面視で支持ロール22の回転軸から支持体Wの逆走行方向に引く仮想直線S2との間の角度θが0~70°の範囲の位置に設けられていることが好ましい。カーテン液Cをより安定化しやすい観点から、角度θは、10~60°であることがより好ましく、20~60°であることがさらに好ましい。
【0040】
空気流制御ロール30のサイズに関しては、支持ロール22のサイズと比較すると、それらの回転軸方向の長さは、同等程度であることが好ましい。空気流制御ロール30及び支持ロール22の回転軸方向の長さは、いずれもカーテン液Cの幅方向(
図5の紙面に対して垂直方向)に沿う全幅に渡る長さがあればよい。空気流制御ロール30の直径D
bは、支持ロール22の直径D
aと同等又はそれより小さいことが好ましい。具体的には、空気流制御ロール30の直径D
bは、支持ロール22の直径D
aの1/4~1倍の範囲であることが好ましく、1/3~1倍の範囲であることがより好ましい。さらには、空気流制御ロール30の直径D
bは、支持ロール22の直径D
aよりも小さいことがさらに好ましい。具体的には、空気流制御ロール30の直径D
bは、支持ロール22の直径D
aに対して、1/4~3/4倍であることがさらに好ましく、1/3~1/2倍であることがよりさらに好ましい。
【0041】
本発明の一実施形態のカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法で使用される支持体は、特に制限されず、従来からカーテン塗布に関する技術で用いられているものをいずれも用いることができる。支持体としては、例えば、織布及び不織布等の布類;上質紙、中質紙、更紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、合成紙、及び樹脂被覆紙等の紙類;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、並びにポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアミド、及びポリイミド等の各種プラスチック製のフィルム及びシート;天然ゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、及びスチレンブタジエンゴム等のゴム製のシート;アルミニウム、銅、及び錫等の金属の箔及びシート;支持体を構成する基材表面に予備的な加工層を形成させたもの;並びに上述した各種材料を積層した複合材料等;を挙げることができる。
【0042】
本発明の一実施形態のカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法で使用される塗布液も、特に制限されず、従来からカーテン塗布に関する技術で用いられているものをいずれも用いることができる。塗布液としては、例えば、粘着剤、接着剤、塗料、インク、及び液状樹脂組成物等の液状組成物を挙げることができる。また、カーテン塗布装置及びカーテン塗布方法は、例えば、写真フィルム、写真用印画紙、磁気記録紙、感圧記録紙、感熱記録紙、インクジェット受像紙、及び熱転写受像紙等の記録製品;並びに粘着ラベル、粘着シート、及び粘着テープ等の粘着製品の製造に好適に利用しうる。
【0043】
以上詳述した本発明の一実施形態のカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法では、上述した空気流制御ロールを用いるという簡易な手法にて、支持体の走行に伴う空気の流れによるカーテン液の揺動を抑え、安定化させやすい。そのため、カーテン液を支持体の進行方向の下流側へ湾曲状に膨らまること、支持体へのカーテン液の落下着地位置をずらすこと、支持体と塗布液との間に空気が入り込んで未塗布部を生じさせることなどを抑えることができる。したがって、それらによる塗布ムラの発生を抑えることができる。
【0044】
上述の通り、本発明の一実施形態のカーテン塗布装置は、次のような構成を採ることが可能である。
[1]搬送ロールにより連続走行する支持体上に、塗布液を薄膜状のカーテン液として落下させて塗布するカーテン塗布装置であって、
前記搬送ロール及び前記カーテン液の少なくとも一方の近傍において、前記支持体上における前記カーテン液の落下着地位置よりも前記支持体の進行方向上流側位置に、前記搬送ロール及び前記カーテン液とは非接触状態で設けられた空気流制御ロールを備え、
前記空気流制御ロールは、その回転軸が前記搬送ロールの回転軸、及び前記カーテン液の幅方向と平行に設けられており、かつ、前記搬送ロールの回転方向と同じ方向に回転する、カーテン塗布装置。
[2]前記搬送ロールとして、前記カーテン液の前記落下着地位置の直下に設けられた支持ロールを備える上記[1]に記載のカーテン塗布装置。
[3]前記空気流制御ロールの表面と、前記支持ロールの表面との間の距離は、1~30cmの範囲である上記[2]に記載のカーテン塗布装置。
[4]前記空気流制御ロールの直径は、前記支持ロールの直径と同等又はそれより小さい上記[2]又は[3]に記載のカーテン塗布装置。
[5]前記空気流制御ロールの直径は、前記支持ロールの直径の1/3~1倍の範囲である上記[2]~[4]のいずれかに記載のカーテン塗布装置。
[6]前記空気流制御ロールは、側面視で前記支持ロールの回転軸と前記空気流制御ロールの回転軸とを結ぶ仮想直線と、側面視で前記支持ロールの回転軸から前記支持体の逆走行方向に引く仮想直線との間の角度が0~70°の範囲の位置に設けられている上記[2]~[5]のいずれかに記載のカーテン塗布装置。
【0045】
また、本発明の一実施形態のカーテン塗布方法は、次のような構成を採ることが可能である。
[7]搬送ロールにより連続走行する支持体上に、塗布液を薄膜状のカーテン液として落下させて塗布するカーテン塗布方法であって、
前記搬送ロール及び前記カーテン液の少なくとも一方の近傍において、前記支持体上における前記カーテン液の落下着地位置よりも前記支持体の進行方向上流側位置に、前記搬送ロール及び前記カーテン液とは非接触状態となる空気流制御ロールを、その回転軸が前記搬送ロールの回転軸、及び前記カーテン液の幅方向と平行に配置し、かつ、前記搬送ロールの回転方向と同じ方向に回転させて前記塗布を行う、カーテン塗布方法。
[8]前記搬送ロールとして、前記カーテン液の前記落下着地位置の直下に設けられた支持ロールを用いる上記[7]に記載のカーテン塗布方法。
[9]前記空気流制御ロールの表面と、前記支持ロールの表面との間の距離が1~30cmの範囲に前記空気流制御ロールを配置して前記塗布を行う上記[8]に記載のカーテン塗布方法。
[10]前記空気流制御ロールの直径は、前記支持ロールの直径と同等又はそれより小さい上記[8]又は[9]に記載のカーテン塗布方法。
[11]前記空気流制御ロールの直径は、前記支持ロールの直径の1/3~1倍の範囲である上記[8]~[10]のいずれかに記載のカーテン塗布方法。
[12]側面視で前記支持ロールの回転軸と前記空気流制御ロールの回転軸とを結ぶ仮想直線と、側面視で前記支持ロールの回転軸から前記支持体の逆走行方向に引く仮想直線との間の角度が0~70°の範囲の位置に前記空気流制御ロールを配置して前記塗布を行う上記[8]~[11]のいずれかに記載のカーテン塗布方法。
【実施例0046】
以下、実施例及び比較例を挙げて、前述の一実施形態のさらなる具体例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
本発明の一実施形態のカーテン塗布装置及びカーテン塗布方法の効果を検証するため、数値流体力学シミュレーションを行った。シミュレーションソフトには、OpenFOAM(Open source Field Operation And Manipulation)を用いた。
【0048】
以下に述べる各例では、
図5に示すような、カーテン液(C)及び支持ロール(22)、並びに実施例及び一部の比較例についてはさらに空気流制御ロール(30)の配置関係にて、上記の数値流体力学シミュレーションを行った。シミュレーションの計算領域は、支持ロール(22)の回転軸を中心として4m×4mの二次元正方形の領域とした。カーテン液(C)の垂直落下着地位置は、支持ロール(22)の上面中央に設定した。支持ロール(22)の直径(D
a)は30cmとした。また、支持ロール(22)は、回転速度320rpm(周方向速度5m/s(300m/min))にて、空気流制御ロール(30)の位置が支持体(W)の進行方向(X)の上流側位置となる回転方向(R
a;
図5における反時計回り)に回転する条件とした。周囲流体は常温(25℃)空気とした。
【0049】
また、以下に述べる各例では、上記シミュレーションソフトにより、カーテン液(C)の理想落下着地位置に対応する支持ロール(22)の中央の外表面(以下、単に「円柱壁面」と記載することがある。この位置を0cmとする。)からのカーテン液(C)の高さ位置における、カーテン液(C)に当たる空気の水平方向(支持体(W)の進行方向(X)の速度(以下、単に「水平方向速度」と記載することがある。)をシミュレーションした。なお、以下に述べるグラフにおける水平方向速度の結果は、当該グラフと
図5に表された向きとが合うように、支持体(W)の進行方向(X)向きの水平方向速度をマイナスで表記した。水平方向速度が0m/sに近いほど、カーテン液(C)が安定しているといえる。
【0050】
(比較例1)
まず、空気流制御ロール(30)を用いない場合についてシミュレーションを行った。その結果として、横軸にカーテン液(C)に当たる空気の水平方向速度(m/s)、縦軸に円柱壁面からの距離(cm)をとったグラフを
図6に示す。
【0051】
図6に示す通り、カーテン液(C)は、支持ロール(22)に近づくほど水平方向速度が速いこと、また、空気流制御ロール(30)を用いない場合、支持体(W)の進行方向(X)向きの水平方向速度が速いことが確認された。水平方向速度が遅いほどカーテン液(C)は安定といえることから、空気流制御ロール(30)を用いない場合、カーテン液(C)は、支持体(W)の走行方向下流側へ流され、落下着地位置のずれが生じることが確認された。
【0052】
(比較例2)
次に、回転をさせずに静止した状態の空気流制御ロール(30)を用いる場合についてシミュレーションを行った。空気流制御ロール(30)の直径(D
b)は、10cm、20cm、30cmの3パターンの場合を設定した。支持ロール(22)と空気流制御ロール(30)とのロール間距離(G)は、いずれの空気流制御ロール(30)を用いる場合にも3cmに設定した。また、前述の角度(θ)は55°に設定した。以上の条件のシミュレーション結果として、横軸に水平方向速度(m/s)、縦軸に円柱壁面からの距離(cm)をとったグラフを
図7に示す。
図7には、比較のために、前述の比較例1の結果も併せて示した。
【0053】
図7に示す通り、空気流制御ロール(30)を用いる場合、それが静止状態でも、空気流制御ロール(30)を用いない場合(比較例1)に比べれば、水平方向速度が抑えられるものの、まだ、改善の余地があることが確認された。空気流制御ロール(30)が静止状態でも水平方向速度をある程度抑えられるのは、静止状態の空気流制御ロール(30)が空気流の遮蔽材のように働くためと考えられる。この効果は、直径(D
b)が20cm及び30cmの空気流制御ロール(30)の場合はそれほど変わらず、直径(D
b)が10cmの空気流制御ロール(30)の場合が比較的良好であった。そのため、この直径(D
b)が10cmの空気流制御ロール(30)を用いる場合について、さらなるシミュレーションを行った。
【0054】
(比較例3)
次に、直径(D
b)が10cmの空気流制御ロール(30)を、支持ロール(22)の回転方向(R
a)とは逆回転の方向(
図5における時計回り方向)に回転させる場合について、シミュレーションを行った。支持ロール(22)の回転とは逆回転の回転速度及び周方向速度を、支持ロールの回転速度(320rpm)及び周方向速度(5m/s)と区別するために、マイナスで表記する。このシミュレーションにおける空気流制御ロール(30)の回転速度(及び周方向速度)を-95rpm(-0.5m/s)、-190rpm(-1.0m/s)、-290rpm(-1.5m/s)の3パターンに設定した。また、ロール間距離(G)は3cm、角度(θ)は55°に設定した(
図5参照)。以上の条件のシミュレーション結果として、横軸に水平方向速度(m/s)、縦軸に円柱壁面からの距離(cm)をとったグラフを
図8に示す。
図8には、比較のために、前述の比較例2(静止状態の空気流制御ロールを用いる場合)の結果も併せて示した。
【0055】
図8に示す通り、支持ロール(22)の回転方向(R
a)とは逆回転の空気流制御ロール(30)を用いる場合、静止状態の空気流制御ロール(30)を用いる場合(比較例2)に比べて、支持体(W)の進行方向(X)向きの水平方向速度が僅かに増す傾向となった。空気流制御ロール(30)を支持ロール(22)の回転と逆回転にすると、空気同伴現象を抑える効果は奏されないことが確認された。
【0056】
(実施例1)
次に、直径(D
b)が10cmの空気流制御ロール(30)を、支持ロール(22)の回転方向(R
a)と同じ回転方向(R
b)で回転させる場合について、シミュレーションを行った。このとき、空気流制御ロール(30)の回転速度(及び周方向速度)を95rpm(0.5m/s)、190rpm(1.0m/s)、290rpm(1.5m/s)の3パターンに設定した。また、ロール間距離(G)は3cm、角度(θ)は55°に設定した(
図5参照)。以上の条件のシミュレーション結果として、横軸に水平方向速度(m/s)、縦軸に円柱壁面からの距離(cm)をとったグラフを
図9に示す。
図9には、比較のために、前述の比較例2(静止状態の空気流制御ロールを用いる場合)の結果も併せて示した。
【0057】
図9に示す通り、支持ロール(22)の回転方向(R
a)と同じ回転方向(R
b)で回転させる空気流制御ロール(30)を用いる場合、静止状態の空気流制御ロール(30)を用いる場合(比較例2)に比べて、支持体(W)の進行方向(X)向きの水平方向速度を低下させうることが確認された。なかでも、空気流制御ロール(30)の回転速度が290rpmである場合に、より効果的であることが確認された。
【0058】
(実施例2)
次に、上記の実施例1における回転速度290rpmにて回転させる空気流制御ロール(30)を用いる場合について、ロール間距離(G)を2~50cmの範囲で変化させて、シミュレーションを行った。また、空気流制御ロール(30)の直径(D
b)及び角度(θ)は、それぞれ実施例1と同様、10cm及び55°である。以上の条件のシミュレーション結果として、横軸に水平方向速度(m/s)、縦軸に円柱壁面からの距離(cm)をとったグラフを
図10及び
図11に示す。
図10及び
図11には、比較のために、前述の比較例1(空気流制御ロールを用いない場合)の結果も併せて示した。
【0059】
図10及び
図11に示す通り、支持ロール(22)の回転方向(R
a)と同じ回転方向(R
b)で回転させる空気流制御ロール(30)を回転速度290rpmで用いる場合、ロール間距離(G)が30cm以内で水平方向速度を抑えられることが確認された。ロール間距離(G)が30cmを超える場合、この条件下においては、空気流制御ロール(30)がカーテン液(C)の近傍から離れた位置となったため、持体(W)の進行方向(X)向きの水平方向速度が僅かに増したと考えられる。
【0060】
実施例2におけるロール間距離(G)が2~30cmの結果について、横軸にロール間距離(G)をとり、縦軸に、支持ロール(30)の外表面(円柱壁面)から1cmの高さ位置での水平方向速度をとってプロットしたグラフを
図12に示す。
図12に示す通り、ロール間距離(G)は、2~20cm、さらには2~10cmが好ましいことが確認された。
【0061】
(実施例3)
最後に、上記の実施例1における、直径(D
b)が10cm、ロール間距離(G)が3cm、回転速度が290rpmの空気流制御ロール(30)を用いる場合について、角度(θ)を0~70°に変化させて、シミュレーションを行った。この条件のシミュレーション結果として、横軸に水平方向速度(m/s)、縦軸に円柱壁面からの距離(cm)をとったグラフを
図13に示す。
図13には、比較のために、前述の比較例1(空気流制御ロールを用いない場合)の結果も併せて示した。
図13に示す通り、角度(θ)が0~70°の範囲のなかでは大きいほど、水平方向速度が抑えられる傾向にあることが確認された。
【0062】
以上の実施例1~3及び比較例1~3の結果より、前述の空気流制御ロールを、支持ロール及びカーテン液の少なくとも一方の近傍における所定位置に設置し、支持ロールの回転方向と順方向に回転させることで、支持体の進行方向への水平方向速度を抑えられることが認められた。よって上記構成により、支持体の走行に伴う空気の流れによるカーテン液の揺動を安定化させやすいといえる。また、上記空気流制御ロールについて、カーテン液や搬送ロールとの関係での設置位置、サイズ(例えば直径)、及び回転速度等を設定することにより、実際の現場での塗布条件に応じて、支持体の走行に伴う空気の流れを適切に制御しうることが期待できる。