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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139598
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 17/02 20060101AFI20220915BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G01B17/02 B
G01N29/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040059
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000142791
【氏名又は名称】株式会社アトックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 英夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 峰人
【テーマコード(参考)】
2F068
2G047
【Fターム(参考)】
2F068AA28
2F068BB09
2F068CC09
2F068CC11
2F068CC16
2F068DD03
2F068FF12
2F068FF17
2F068JJ13
2F068JJ17
2F068KK04
2F068KK06
2F068KK12
2F068LL02
2G047AB01
2G047AC12
2G047AD03
2G047GE02
2G047GJ12
(57)【要約】
【課題】被検査体の周面が汚れている場合でも、その厚さを正確に測定できる測定装置を提供する。
【解決手段】この測定装置10は、被検査体の周面を走行し所定点における厚さを測定するものであって、装置本体11と、その両側に配置された一対のクローラ20,20と、一対のクローラ20,20の間に配置される超音波式検査装置30と、一対のクローラ20,20の間であって、超音波式検査装置30よりも進行方向前方側に配置される洗浄装置50とを備え、洗浄装置50は、洗浄用水を給水する第1給水路と、被検査体の周面を洗浄する洗浄ブラシ60と、洗浄ブラシ60よりも進行方向の後方側に配置され、洗浄後の洗浄用水を、被検査体の周面から掻き取るスクイージ70とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状又は筒状の被検査体の周面を走行し、該被検査体の所定の点における厚さを測定する測定装置であって、
装置本体と、
該装置本体の両側に配置され、前記測定装置を所定の進行方向に移動させる一対のクローラと、
前記装置本体の、前記一対のクローラの間に配置される、超音波式検査装置と、
前記装置本体の、前記一対のクローラの間であって、前記超音波式検査装置よりも前記進行方向の前方側に配置される洗浄装置とを備えており、
前記洗浄装置は、洗浄用水を給水する第1給水路と、駆動手段により回転駆動すると共に、前記洗浄用水によって、前記被検査体の周面を洗浄する洗浄ブラシと、該洗浄ブラシよりも前記進行方向の後方側に配置され、前記被検査体を洗浄後の前記洗浄用水を、前記被検査体の周面から掻き取るスクイージとを有していることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記超音波式検査装置は、
超音波探触子と、
該超音波探触子を、前記測定装置の進行方向に交差する方向にスライドさせる、スライド機構とを有しており、
前記スライド機構による超音波探触子のスライド範囲は、前記洗浄装置の横方向の幅の範囲内に収まるように構成されている請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記超音波式検査装置は、
前記超音波探触子を、前記被検査体の周面に対して、離間及び近接させるように昇降させる昇降機構を更に有する請求項2記載の測定装置。
【請求項4】
前記超音波式検査装置は、
超音波探触子と、
該超音波探触子を保持する超音波探触子保持部材と、
前記超音波探触子保持部材に固定され、前記超音波探触子の下端部を包囲すると共に、前記被検査体の周面に密着する弾性材料からなる封水パッドと、
前記封水パッドの内部に配置された、下方が開口した筒状ハウジングと、
前記超音波探触子保持部材の外側から前記封水パッドの内部に、前記洗浄用水とは別の検査用水を給水する第2給水路とを更に有する請求項1~3のいずれか1つに記載の測定装置。
【請求項5】
前記洗浄装置は、前記被検査体の周面に対して、離間及び近接する昇降フレームを有しており、
該昇降フレームに、前記洗浄ブラシ及び前記スクイージが取付けられている請求項1~4のいずれか1つに記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状又は筒状の被検査体の周面を走行し、該被検査体の所定の点における厚さを測定する、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクや配管等の厚さを測定する際には、例えば、超音波探触子を用いて人手により測定したり、或いは、超音波探触子を備えた自走式の測定装置により測定したりしている。
【0003】
後者の測定装置として、例えば、下記特許文献1には、走行軌跡の曲率半径を変更可能なステアリング機構を有し、且つ所定の曲率を有する曲面からなり投影形状が円形で形成された容器鏡部の鋼板上を走行し得る第1の走行台車と、容器鋼板に対して吸着力が作用する磁性体を搭載すると共に、左右独立して前進/後退が可能な走行駆動機構を有し、且つ前記容器鏡部と略直交する方向に連続する略円筒形状の容器胴部の鋼板上を走行し得る第2の走行台車と、複数の超音波探触子が搭載された超音波探触子ユニットとを有する、容器鋼板の板厚測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4004503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タンクや配管等の被検査体の周面が、汚れている場合には、その汚れの部分が、超音波の反射に影響してしまって、厚さを正確に測定できないことがある。そのため、超音波測定前に、被検査体の周面の汚れを清掃する必要がある。
【0006】
引用文献1の板厚測定装置においても、被検査体の周面が汚れている場合には、測定前に被検査体の周面を、例えば、水等を利用して、人手や機械などで清掃する必要があり、板厚測定に時間がかかっていた。
【0007】
また、被検査体の周面には、洗浄用の水が残る場合がある。このような洗浄後の水は、汚れており、ゴミや塵等が混ざっているため、超音波測定時に悪影響が生じる。そのため被検査体の周面から、洗浄後の水をはけさせる必要があるが、この場合も、被検査体の厚さ測定に時間がかかる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、被検査体の周面が汚れている場合でも、被検査体の厚さを正確に測定することができる、測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、管状又は筒状の被検査体の周面を走行し、該被検査体の所定の点における厚さを測定する測定装置であって、装置本体と、該装置本体の両側に配置され、前記測定装置を所定の進行方向に移動させる一対のクローラと、前記装置本体の、前記一対のクローラの間に配置される、超音波式検査装置と、前記装置本体の、前記一対のクローラの間であって、前記超音波式検査装置よりも前記進行方向の前方側に配置される洗浄装置とを備えており、前記洗浄装置は、洗浄用水を給水する第1給水路と、駆動手段により回転駆動すると共に、前記洗浄用水によって、前記被検査体の周面を洗浄する洗浄ブラシと、該洗浄ブラシよりも前記進行方向の後方側に配置され、前記被検査体を洗浄後の前記洗浄用水を、前記被検査体の周面から掻き取るスクイージとを有していることを特徴とする。
【0010】
上記発明によれば、洗浄装置は超音波式検査装置よりも進行方向の前方側に配置されているので、被検査体の測定部分は、測定の前に洗浄用水を用いて洗浄ブラシで洗浄されて、清浄な状態となる。更に、その洗浄後の洗浄用水は、スクイージで掻き取られて、測定部分から除去される。これにより、被検査体の周面が汚れていた場合であっても、その汚れそのものや、その汚れを含む洗浄用水の影響を受けずに、被検査体の厚さを正確に測定することができる。
【0011】
本発明に係る測定装置においては、前記超音波式検査装置は、超音波探触子と、該超音波探触子を、前記測定装置の進行方向に交差する方向にスライドさせる、スライド機構とを有しており、前記スライド機構による超音波探触子のスライド範囲は、前記洗浄装置の横方向の幅の範囲内に収まるように構成されていることが好ましい。
【0012】
上記態様によれば、超音波探触子が、スライド機構によって、測定装置の進行方向に交差する方向にスライドすると共に、そのスライド範囲は、洗浄装置の横方向の幅の範囲内に限定されているので、被検査体の、洗浄されていない部分で、測定が行われることを予防して、被検査体の厚さをより正確に測定することができる。
【0013】
本発明に係る測定装置においては、前記超音波式検査装置は、前記超音波探触子を、前記被検査体の周面に対して、離間及び近接させるように昇降させる昇降機構を更に有することが好ましい。
【0014】
上記態様によれば、超音波探触子が、昇降機構によって、被検査体の周面に対して、離間及び接触可能となっているので、被検査体の周面の洗浄が完了した後、同周面から、洗浄後の汚水や、洗浄により生じたゴミなどがなくなってから、超音波探触子を被検査体の周面に近接させることができ、被検査体の厚さを、より正確に測定することが可能となる。
【0015】
本発明に係る測定装置においては、前記超音波式検査装置は、超音波探触子と、該超音波探触子を保持する超音波探触子保持部材と、前記超音波探触子保持部材に固定され、前記超音波探触子の下端部を包囲すると共に、前記被検査体の周面に密着する弾性材料からなる封水パッドと、前記封水パッドの内部に配置された、下方が開口した筒状ハウジングと、前記超音波探触子保持部材の外側から前記封水パッドの内部に、前記洗浄用水とは別の検査用水を給水する第2給水路とを更に有することが好ましい。
【0016】
上記態様によれば、封水パッドの内部に、第2給水路から検査用水が給水されることで、超音波探触子と被検査体の周面との間に水膜が形成されるので、水の供給圧や流量を制御することなく、局所水浸型探触子を用いた超音波による厚さ測定が可能になる。
【0017】
また、水の消費量は、測定中に連続的に給水する場合より、はるかに減らすことができる。更に、封水パッドの内部に筒状ハウジングを設けたことにより、封水パッドの内部に発生した気泡の干渉を抑えることが可能となり、被検査体の厚さ測定が安定してなされる。また、超音波探触子の周囲が封水パッドで覆われるため、外部の突起物などに対して探触子を保護することができる。更に、封水パッドと被検査体の周面との接触面が水膜で形成されるので、両者の接触面の摩擦抵抗が小さくなる。
【0018】
本発明に係る測定装置においては、前記洗浄装置は、前記被検査体の周面に対して、離間及び近接する昇降フレームを有しており、該昇降フレームに、前記洗浄ブラシ及び前記スクイージが取付けられていることが好ましい。
【0019】
上記態様によれば、被検査体の周面の洗浄時には、昇降フレームが被検査体の周面に近接することで、洗浄ブラシ及びスクイージを下降させ、被検査体の周面に接触させることが可能となるので、被検査体の周面を適切に洗浄することができる。
【0020】
また、被検査体の周面の洗浄時以外においては、昇降フレームが被検査体の周面から離間することで、洗浄ブラシ及びスクイージを上昇させ、被検査体の周面から離間させることが可能となるので、測定装置の移動時に、洗浄ブラシ及びスクイージが摩擦抵抗となることを防止することができ、測定装置をスムーズに移動させることができる。
【0021】
更に、洗浄ブラシ及びスクイージは昇降フレームに取付けられているので、昇降フレームの昇降動作に伴って、洗浄ブラシ及びスクイージの2部材を一度に昇降させることができ、昇降機構の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る測定装置の一実施形態を示しており、その概略説明図である。
図2】同測定装置の平面図である。
図3】同測定装置の側面図である。
図4】同測定装置を構成する超音波検査装置の昇降機構等を示す説明図である。
図5】同超音波検査装置の断面説明図である。
図6】本発明に係る測定装置を構成する洗浄装置の平面図である。
図7】同洗浄装置の正面図である。
図8】同洗浄装置の側面図である。
図9】本発明に係る測定装置の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(測定装置の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る測定装置の、一実施形態について説明する。
【0024】
図1に示すように、この測定装置10は、例えば、水力発電所、火力発電所、各種プラント、放射廃棄物保管所などにおける、管(水圧鉄管等)や、円筒状のタンク等の、被検査体1の周面3を走行し、被検査体1の所定の点における厚さを測定するものである。また、被検査体1の周面3は、径方向内側の周面(内周面)でも径方向外側の周面(内周面)でもよい。なお、この実施形態においては、被検査体1の内周面を自走する、測定装置10を例に挙げて説明する。
【0025】
図2に示すように、この実施形態の測定装置10は、装置本体11と、この装置本体11の両側に配置され、測定装置10を所定の進行方向に駆動させる一対のクローラ20,20と、前記装置本体11の、一対のクローラ20,20の間に配置される、超音波式検査装置30(以下、単に「検査装置30」ともいう)と、装置本体11の、一対のクローラ20,20の間であって、前記検査装置30よりも進行方向の前方側に配置される洗浄装置50とを備えている。
【0026】
なお、図2に示すように、測定装置10の進行方向を符号「X」で示し、それに直交する方向を符号「Y」で示す。
【0027】
この実施形態における装置本体11は、全体として進行方向X(以下、「X方向」ともいう)に沿って長く延びる形状をなしている。具体的には、この装置本体11は、進行方向Xに沿って延び、互いに平行に配置された一対の側壁12,12と、一対の側壁12,12どうしを連結する複数の隔壁13,14,15とを有している。なお、装置本体11の進行方向Xの前方から、進行方向Xの後方側に向かって、隔壁13,14,15が順番に配置されている。
【0028】
また、一対の側壁12,12及び隔壁14,15で囲まれた空間S1内に、検査装置30が配置され、一対の側壁12,12及び隔壁13,14で囲まれた空間S2内に、洗浄装置50が配置される。
【0029】
更に、装置本体11の後端部には、検査装置30や洗浄装置50を制御する図示しない制御ケーブルや、両装置30,50に電気を供給するための電源コード、検査用水や洗浄用水等を供給するためのチューブ等を、配設するための、線状部材配置部17が延設されている。なお、測定装置10は、上記のようなケーブルやコード等を介して、測定装置10の外部に配置された制御コントローラや、外部電源等に接続されている。
【0030】
図3を併せて参照すると、装置本体11の両側に配置される各クローラ20は、装置本体11の各側壁12の、進行方向前方側に回転支持されるホイール21と、各側壁12の、進行方向反対側に回転支持されるホイール22と、各側壁12の、両ホイール21,22の間であって且つそれらよりも上方位置で回転支持されるホイール23と、これらのホイール21,22,23の外周に装着されるベルト25とからなる。
【0031】
また、図2に示すように、ホイール21には駆動モータ27が連結されている。そして、駆動モータ27によりホイール21が所定方向に回転することで、クローラ20が回動して、測定装置10が進行方向Xに進行可能となっている。更に、ベルト25の外側には、複数のマグネット29が取付けられており、測定装置10は、被検査体1の周面3に吸着されつつ移動可能となっている。
【0032】
なお、クローラの構造は、上記態様に限定されるものではなく、測定装置を移動させることが可能であればよい。
【0033】
図2に示すように、この実施形態における検査装置30は、被検査体1の周面3に超音波を照射して、その厚さを測定する、超音波探触子31(以下、単に「探触子31」ともいう)と、同探触子31を、測定装置10の進行方向Xに交差する方向Yにスライドさせる、スライド機構とを有している。
【0034】
この実施形態におけるスライド機構は、検査装置30のスライド方向Y(以下、「Y方向」ともいう)に沿って延設されたスライドレール32と、該スライドレール32にスライド可能に配置され、Y方向にスライド動作するスライド部材33とからなる。この実施形態の場合、スライドレール32の内部に、ネジ軸32aが内装されており、このネジ軸32aが、スライド部材33の歯に歯合している。そして、ネジ軸32aが図示しない駆動手段で回転することで、スライド部材33がY方向にスライドするようになっている。また、図1に示すように、探触子31は、上記スライド機構によって、洗浄装置50を構成する洗浄ブラシ60のローラ61の軸方向範囲内においてスライドするように構成されている。
【0035】
また、このスライド機構による探触子31のスライド範囲は、洗浄装置50の横方向の幅の範囲内に収まるように構成されている。なお、本発明における「洗浄装置の横方向の幅」とは、図2に示すように、測定装置10を平面方向から見たときに、測定装置10の進行方向Xに直交する方向である幅方向(Y方向)に沿った長さを意味する。
【0036】
なお、スライド機構のスライド構造としては、例えば、電動式や、空気圧式、油圧式のアクチュエータ等であってもよく、特に限定はされない。
【0037】
また、スライド部材33には、探触子保持部材34(以下、単に「保持部材34」ともいう)が取付けられており、この保持部材34に、一つの探触子31が保持されている。
【0038】
図4に示すように、この実施形態の保持部材34は、スライド部材33に、昇降機構35を介して間接的に取付けられている。この実施形態における昇降機構35は、エアシリンダであり、上下方向に伸縮動作するロッド35aを有しており、該ロッド35aの下端部35bに、前記保持部材34の一側部が連結されている。その結果、昇降機構35が昇降動作することで、探触子31は、保持部材34を介して、被検査体1の周面3に対して、離間及び近接するようになっている。
【0039】
図5には、探触子31の詳細な構造が示されている。この探触子31は棒状に延びており、その上端からケーブル31aが延設されている。また、前記保持部材34は、探触子31を保持可能な保持孔34aを有しており、該保持孔34aに、探触子31の軸方向下部側が挿入されて保持される。なお、探触子31の下端部31bは、保持孔34aの下端開口から所定長さ挿出されている。また、探触子31は、その軸方向が、被検査体1の周面3に対して垂直となるように、保持部材34により保持される。更に、保持部材34の下方には、下方が開口した円形枠状をなした、パッド固定具36が固着されている。
【0040】
そして、探触子31の下端部31bを包囲すると共に、被検査体1の周面3に密着可能とされた封水パッド37が、前記パッド固定具36を介して取付けられている。この実施形態における封水パッド37は、合成ゴム等の弾性材料から形成されたものであって、下方が開口すると共に、下方周縁部から外方に延びるフランジ部37aを有する、略ハット状をなしており、フランジ部37aの径方向周縁部が被検査体1の周面3に密着可能となっている。また、封水パッド37の内部であって、探触子31の下端部31bに整合する位置には、下方が開口した円筒状をなした筒状ハウジング39が、ハウジング支持部38を介して配置されている。
【0041】
更に、保持部材34の外側から、封水パッド37の内部に至る範囲には、洗浄装置50の第1給水路75(図8参照)により給水される洗浄用水とは別の、超音波検査用の検査用水を給水するための、第2給水路40が形成されている。この第2給水路40の一端開口は封水パッド37内に連通しており、他端開口には給水管41が接続されている。したがって、測定装置外部の図示しない給水源から供給される検査用水は、給水管41を介して第2給水路40を通って、封水パッド37の内部に給水される。
【0042】
また、封水パッド37は、昇降機構35による探触子31の昇降動作に伴って、昇降機構35を介して、被検査体1の周面3に対して離間及び接触するように構成されている。すなわち、測定装置10の移動時は、昇降機構35を介して封水パッド37が、被検査体1の周面3から離間するように上昇する一方、被検査体1の厚さ測定時には、昇降機構35を介して封水パッド37が下降して、そのフランジ部37aが被検査体1の周面3に接触するようになっている。
【0043】
そして、昇降機構35を介して封水パッド37が下降することで、同封水パッド37のフランジ部37aの径方向周縁部がやや弾性変形しつつ、被検査体1の周面3に接触することで、封水パッド37が被検査体1の周面に密着する。その結果、封水パッド37の内部に密閉空間が形成されることになり、この密閉空間内に検査用水が溜められることで、探触子31を利用した周知の局部水浸法による、被検査体1の壁の厚さ測定が可能となる。
【0044】
また、測定装置外部の給水源から、給水管41を介して供給された検査用水は、第2給水路40を通って、封水パッド37の内部に導入され、筒状ハウジング39内に溜められることになる。これによって、探触子31の下端部31bと被検査体1の周面3との間が、筒状ハウジング39内の水で満たされ、筒状ハウジング39内にて一定量の水が加圧封入される。その結果、検査用水を常時給水する必要がなく、検査用水の消費量を少なくすることが可能となっている。
【0045】
なお、この実施形態における検査装置30は、一つのスライド部材33に対して、一つの探触子31が、スライド部材33や保持部材34等を介して取付けられて、Y方向にスライドする構成となっているが、超音波検査装置の構造としては、この態様に限定されるものではない。例えば、複数のスライド機構によって複数の探触子をY方向にスライドさせてもよい。また、超音波探触子のスライド方向も適宜設定してよく、更に、スライド機構や、昇降機構を設けない構成としてもよい。また、昇降機構としては、エアシリンダ以外にも、油圧シリンダやリニアアクチュエータ等であってもよい。
【0046】
次に、洗浄装置50について、図2及び図6~8を参照して説明する。
【0047】
この洗浄装置50は、洗浄用水を給水する第1給水路75(図8参照)と、駆動手段により回転駆動すると共に、洗浄用水によって、被検査体1の周面3を洗浄する洗浄ブラシ60と、該洗浄ブラシ60よりも進行方向Xの後方側に隣接して配置され、被検査体1を洗浄後の洗浄用水を、被検査体1の周面3から掻き取るスクイージ70とを有している。
【0048】
図6に示すように、この洗浄装置50は、測定装置10の空間S2内に配置されて、被検査体1の周面3に対して、離間及び近接する昇降フレーム51を有している。この昇降フレーム51は、Y方向の両側部に配置されると共に、X方向に沿って互いに平行に延びる一対の側壁52,52と、これらの一対の側壁52,52の、X方向側の端部どうしを連結する前壁53と、一対の側壁52,52の、X方向とは反対側の端部どうしを連結する後壁54とを有している。また、図7に示すように、一対の側壁52,52の高さ方向中間部は、支持壁55によっても連結されている。
【0049】
そして、一対の側壁52,52の間であって、支持壁55の下方側に、洗浄ブラシ60が配置されている。図7に示すように、この洗浄ブラシ60は、測定装置10のY方向に所定長さで長く延びると共に、その軸方向両端部が、軸受け61a,61aを介して、一対の側壁52,52に回転可能に支持されるローラ61と、該ローラ61の外周から起立した毛62とからなる。なお、図6に示すように、ローラ61は、その軸心Cが、測定装置10のY方向に沿った向きに配置されている。また、毛62は、ローラ61の外周に固着したブラケット63を介して、ローラ61の外周に複数配置されている。
【0050】
図7に示すように、前記支持壁55上には、モータ等の駆動源65が載置されており、また、一方の側壁52には、図示しない複数のギヤが内蔵された駆動部66が固設されている。これらの駆動源65及び駆動部66が、本発明における「駆動手段」をなしている。また、前記ローラ61の軸方向一端部は、軸受け61aを介して駆動部66に連結されている。
【0051】
そして、図8に示すように、洗浄用水が洗浄ブラシ60に給水された状態で、駆動源65が駆動することで、駆動部66を介して、ローラ61が所定方向に回転して、洗浄用水によって被検査体1の周面3を清掃可能となっている。
【0052】
前記スクイージ70は、合成ゴム等の弾性材料から形成された長板状をなしている。図8に示すように、スクイージ70は、昇降フレーム51を構成する後壁54の下端部に固着されており、その下端部が後壁54から突出している。また、スクイージ70は、その長手方向が前記ローラ61の軸心Cと平行となるように配置されている(図6参照)。より具体的には、図6に示すように、スクイージ70は、洗浄ブラシ60に対して測定装置10の進行方向Xとは反対側で、かつ、洗浄ブラシ60の外周と一定隙間を空けて隣接して配置されている。また、この実施形態におけるスクイージ70は、ローラ61の軸方向長さよりも長く延びており、ローラ61の軸方向全範囲をカバー可能となっている(図6参照)。
【0053】
そして、図9に示すように、このスクイージ70は、洗浄ブラシ60によって被検査体1の周面3を洗浄した後に、周面3に溜る洗浄用水を掻き取って、被検査体1の周面3から水はけ(排水)することができ、その結果、洗浄装置50よりも測定装置10の進行方向Xの後方側に配置された検査装置30に、洗浄後の洗浄用が浸水しないようにすることが可能となっている。
【0054】
図8に示すように、昇降フレーム51は、前記後壁54の背面側(進行方向Xの反対側)に、所定高さで立設した立壁56を有している。この立壁56は、例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ、リニアアクチュエータ等からなる、図示しない昇降手段に固定されており、昇降可能となっている。また、立壁56の上端には、天井部57が固設されている。この天井部57は、一端部側が立壁56の上端に固定されており、他端部側からは、軸部58が垂設されている。この軸部58の下端側には、バネ受け部59が昇降可能に配置されている。
【0055】
また、軸部58の外周であって、天井部57及びバネ受け部59の間には、コイルバネ59aが介装されている。その結果、バネ受け部59は、コイルバネ59aによって天井部57から離反する方向に付勢されている。また、バネ受け部59に、昇降フレーム51を構成する後壁54の上端部が連結されている。その結果、図示しない昇降手段によって、立壁56が昇降動作することで、天井部57や、バネ受け部59、後壁54等を介して、昇降フレーム51全体が昇降動作するようになっている。
【0056】
また、昇降フレーム51に取付けられた洗浄ブラシ60及びスクイージ70は、昇降フレーム51の昇降動作に伴って、被検査体1の周面3に対して、離間及び接触するように構成されている。すなわち、測定装置10の移動時は、昇降フレーム51が上昇し、同昇降フレーム51を介して、洗浄ブラシ60及びスクイージ70が、被検査体1の周面3から離間する。一方、被検査体1の周面3の洗浄時には、昇降フレーム51が下降し、同昇降フレーム51を介して、洗浄ブラシ60及びスクイージ70が、被検査体1の周面3に接触するようになっている。
【0057】
なお、上記のように、バネ受け部59がコイルバネ59aにより付勢されているので、昇降フレーム51が下降し、洗浄ブラシ60及びスクイージ70が、被検査体1の周面3に接触した状態で、被検査体1の周面3に凹凸等があっても、後壁54や支持壁55等を介して、洗浄ブラシ60やスクイージ70が上下方向に微動して、被検査体1の周面3に、洗浄ブラシ60やスクイージ70が接触した状態を維持可能となっている。
【0058】
更に図8に示すように、昇降フレーム51を構成する支持壁55の上方であって、後壁54側の位置には、内部に洗浄用水を給水する第1給水路75を形成した給水管76が配設されている。更に、支持壁55の下方であって、後壁54側の位置からは、図示しない排出口を下方に向けた排出ノズル77が固設されている。この排出ノズル77は、給水管76内部の第1給水路75に連通している。その結果、測定装置外部の給水源から供給された洗浄用水は、第1給水路75を通って、排出ノズル77の図示しない排出口から、噴霧状に排出されるようになっている。
【0059】
なお、この実施形態における洗浄装置50は、軸方向に長く延びる一つのローラ61の外周に無数に毛62が配置され、昇降フレーム51を介して昇降可能な構成となっているが、洗浄装置としては、この態様に限定されるものではない。例えば、幅狭の複数のローラを、測定装置のY方向に並べて配置したり、本実施形態と同様の測定装置のY方向に長く延びるローラを、測定装置のX方向に複数並列して配置したりしてもよい。また、これに対応して、スクイージの配置箇所や個数等を適宜選択することができる。更に、洗浄装置は、昇降機構を設けない構成としてもよい。
【0060】
(作用効果)
次に、上記構成からなる測定装置10の作用効果について説明する。
【0061】
この測定装置10を用いて、被検査体1の壁の厚さを測定する際には、図1に示すように、被検査体1の周面3(ここでは内周面)に、測定装置10を載置する。すると、一対のクローラ20,20が、同クローラ20に設けたマグネット29によって、被検査体1の周面3に吸着される。
【0062】
なお、測定装置10を移動させる際には、昇降機構35を介して、探触子31や封水パッド37等を上昇させて、被検査体1の周面3から離間させると共に、昇降フレーム51を介して、洗浄ブラシ60やスクイージ70を、被検査体1の周面3から離間させておく。この状態で、一対のクローラ20,20を介して、測定装置10を進行方向Xに移動させ、被検査体1の周面3の、所望の厚さ測定点にまで到達させる。
【0063】
その後、洗浄装置50を作動させて、被検査体1の周面3の測定部分を洗浄する。すなわち、昇降フレーム51を介して、洗浄ブラシ60やスクイージ70を下降させて、被検査体1の周面3に接触させ、第1給水路75等を介して洗浄ブラシ60の外周に、洗浄用水を供給しつつ、洗浄ブラシ60を回転駆動させることで、被検査体1の周面3を洗浄して、被検査体1の測定部分を清浄な状態にすることができる。この際、洗浄後の洗浄用水が検査装置30側へと流れようとしても、スクイージ70によって阻止されて、図9の矢印に示すように、測定装置10の進行方向Xに交差する方向へと流されるため、洗浄後の洗浄用水が検査装置30に浸入することを抑制できる。
【0064】
その後、測定装置10を更に進行方向Xに移動させることで、図9の矢印Fに示すように、洗浄後の洗浄用水は、スクイージ70によって掻き取られて、測定装置10の進行方向Xに交差する方向へと排水されるため、被検査体1の周面3から洗浄用水を水はけさせることができる。
【0065】
次いで、昇降機構35を介して、探触子31や封水パッド37等を下降させて、封水パッド37のフランジ部37aの周縁部を、被検査体1の周面3に接触させると共に、第2給水路40等を介して封水パッド37内に検査用水を充填させた後、探触子31によって、被検査体1の周面3の所定点の厚さを測定することができる。
【0066】
そして、この測定装置10においては、洗浄装置50は検査装置30よりも進行方向Xの前方側に配置されているので、被検査体1の測定部分は、厚さ測定の前に洗浄用水を用いて、洗浄ブラシ60で洗浄されて、清浄な状態となった後、洗浄後の洗浄用水は、スクイージ70で掻き取られて、測定部分から除去される。これによって、被検査体1の周面3が汚れていた場合であっても、その汚れそのものや、その汚れを含む洗浄用水の影響を受けずに、被検査体1の厚さを正確に測定することができる。
【0067】
また、図2に示すように、この実施形態においては検査装置30は、探触子31と、該探触子31を、測定装置10の進行方向Xに交差する方向Yにスライドさせる、スライド機構とを有しており、更にスライド機構による探触子31のスライド範囲は、洗浄装置50の横方向の幅の範囲内に収まるように構成されている。
【0068】
上記のように、探触子31が、スライド機構によって、測定装置10の進行方向Xに交差する方向にスライドすると共に、そのスライド範囲は、洗浄装置50の横方向の幅の範囲内に限定されているので、被検査体1の、洗浄されていない部分で、測定が行われることを予防して、被検査体1の厚さをより正確に測定することができる。
【0069】
更に図4に示すように、この実施形態においては、検査装置30は、探触子31を、被検査体1の周面3に対して、離間及び近接させるように昇降させる昇降機構35を有している。すなわち、探触子31が、昇降機構35によって、被検査体1の周面3に対して、離間及び接触可能となっているので、被検査体1の周面3の洗浄が完了した後、同周面3から、洗浄後の汚水(洗浄後の洗浄用水)や、洗浄により生じたゴミなどがなくなってから、探触子31を被検査体1の周面3に近接させることができ、被検査体1の厚さを、より正確に測定することが可能となる。
【0070】
また、この実施形態においては、前記昇降機構35は、エアシリンダとなっている。このように、昇降機構35をエアシリンダにすることで、探触子31を、被検査体1の周面3に対して、適度な接触圧で押し付けることができるので、被検査体1の厚さ測定の精度を向上させることが可能となる。
【0071】
更にこの実施形態においては、図5に示すように、検査装置30は、探触子31と、探触子31を保持する保持部材34と、保持部材34に固定され、探触子31の下端部31bを包囲すると共に、被検査体1の周面3に密着する弾性材料からなる封水パッド37と、封水パッド37の内部に配置された、下方が開口した筒状ハウジング39と、保持部材34の外側から封水パッド37の内部に、洗浄用水とは別の検査用水を給水する第2給水路40とを更に有する。
【0072】
上記態様によれば、封水パッド37の内部に、第2給水路40から検査用水が給水されることで、探触子31と被検査体1の周面3との間に水膜が形成されるので(図5参照)、水の供給圧や流量を制御することなく、局所水浸型探触子を用いた超音波による厚さ測定が可能になる。
【0073】
また、水の消費量は、測定中に連続的に給水する場合より、はるかに減らすことができる。更に、封水パッド37の内部に筒状ハウジング39を設けたことにより、封水パッド37の内部に発生した気泡の干渉を抑えることが可能となり、被検査体1の厚さ測定が安定してなされる。また、探触子31の周囲が封水パッド37で覆われるため、外部の突起物などに対して探触子31を保護することができる。更に、封水パッド37と被検査体1の周面3との接触面が水膜で形成されるので、両者の接触面の摩擦抵抗が小さくなる。
【0074】
また、図7図8に示すように、この実施形態においては、洗浄ブラシ60は、装置本体11の両側において、軸方向両端部が回転支持されたローラ61と、該ローラ61の外周から起立した毛62とからなり、探触子31は、前記スライド機構によって、ローラ61の軸方向範囲内にてスライドするように構成されている。
【0075】
上記態様によれば、探触子31のスライド範囲は、ローラ61の軸方向範囲内に限定されているので、被検査体1の、洗浄されていない部分で測定を行ってしまうことを予防して、厚さを不正確に測定してしまうことを抑制することができる。
【0076】
また、図8に示すように、この実施形態においては、洗浄装置50は、被検査体1の周面3に対して、離間及び近接する昇降フレーム51を有しており、昇降フレーム51に、洗浄ブラシ60及びスクイージ70が取付けられている。
【0077】
上記態様によれば、被検査体1の周面3の洗浄時には、昇降フレーム51が被検査体1の周面3に近接することで、洗浄ブラシ60及びスクイージ70を下降させ、被検査体1の周面3に接触させることが可能となるので、被検査体1の周面3を適切に洗浄することができる。
【0078】
また、被検査体1の周面3の洗浄時以外においては、昇降フレーム51が被検査体1の周面3から離間することで、洗浄ブラシ60及びスクイージ70を上昇させ、被検査体1の周面3から離間させることが可能となるので、測定装置10の移動時に、洗浄ブラシ60及びスクイージ70が摩擦抵抗となることを防止することができ、測定装置10をスムーズに移動させることができる。
【0079】
更に、洗浄ブラシ60及びスクイージ70は昇降フレーム51に取付けられているので、昇降フレーム51の昇降動作に伴って、洗浄ブラシ60及びスクイージ70の2部材を一度に昇降させることができ、昇降機構の簡素化を図ることができる。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 被検査体,3 周面,10 測定装置,11 装置本体,12 側壁,13,14,15 隔壁,17 線状部材配置部,20 クローラ,21,22,23 ホイール,25 ベルト,27 駆動モータ,29 マグネット,30 超音波式検査装置(検査装置),
31 超音波探触子(探触子),31a ケーブル,31b 下端部,32 スライドレール,32a ネジ軸,33 スライド部材,34 探触子保持部材(保持部材),
34a 保持孔,35 昇降機構,35a ロッド,35b 下端部,36 パッド固定具,37 封水パッド,37a フランジ部,38 ハウジング支持部,39 筒状ハウジング,40 第2給水路,41 給水管,50 洗浄装置,51 昇降フレーム,52 側壁,53 前壁,54 後壁,55 支持壁,56 立壁,57 天井部,58 軸部,59 バネ受け部,59a コイルバネ,60 洗浄ブラシ,61 ローラ,62 毛,63 ブラケット,65 駆動源,66 駆動部,70 スクイージ,75 第1給水路,76 給水管,77 排出ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9