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特開2022-139611発電装置、制御装置、始動方法、コンピュータプログラム及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139611
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】発電装置、制御装置、始動方法、コンピュータプログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/08 20060101AFI20220915BHJP
   F01D 15/10 20060101ALI20220915BHJP
   F01D 19/00 20060101ALI20220915BHJP
   F01K 13/02 20060101ALI20220915BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H02P9/08 A
F01D15/10 A
F01D15/10 C
F01D19/00 R
F01K13/02 B
H02P9/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040082
(22)【出願日】2021-03-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100202201
【弁理士】
【氏名又は名称】兒島 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】森本 篤史
【テーマコード(参考)】
3G071
5H590
【Fターム(参考)】
3G071BA22
3G071CA01
3G071DA11
3G071FA03
3G071FA06
5H590CA01
5H590CC02
5H590CD03
5H590CE01
5H590EA01
5H590EB21
5H590FA01
5H590FA08
5H590FB02
5H590FB07
5H590FC01
5H590FC12
5H590GA04
5H590GA10
5H590GB05
5H590HA02
5H590HA04
5H590HA15
5H590HA18
5H590HA27
5H590JA02
5H590JA12
5H590JA13
5H590JA14
5H590JA19
5H590JB02
(57)【要約】
【課題】ランキンサイクル装置の始動の信頼性を向上させることに適した技術を提供する。
【解決手段】発電機6は、膨張機10の入口における作動流体の圧力と膨張機10の出口における作動流体の圧力との圧力差によりシャフト45が回転することによって発電する。始動運転では、第1回転運転、第2回転運転及び第3回転運転がこの順に実行される。第1回転運転では、シャフト45の回転が開始するように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第2回転運転では、第2回転運転の終了時点における発電機6の電流の大きさが第2回転運転の開始時点における発電機6の電流の大きさよりも小さくなるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第3回転運転では、シャフト45が上記圧力差により回転しかつシャフト45の回転数が制御されるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張機と、シャフトによって前記膨張機に連結された発電機と、を有し、前記膨張機の入口における作動流体の圧力と前記膨張機の出口における前記作動流体の圧力との圧力差により前記シャフトが回転することによって前記発電機が発電するランキンサイクル装置と、
前記発電機を制御するコンバータを有し、前記ランキンサイクル装置の始動運転を実行する制御装置と、を備え、
前記始動運転では、第1回転運転、第2回転運転及び第3回転運転がこの順に実行され、
前記第1回転運転では、前記シャフトの回転が開始するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第2回転運転では、前記第2回転運転の終了時点における前記発電機の電流の大きさが前記第2回転運転の開始時点における前記発電機の電流の大きさよりも小さくなるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第3回転運転では、前記シャフトが前記圧力差により回転しかつ前記シャフトの回転数が制御されるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する、
発電装置。
【請求項2】
前記第1回転運転が行われる期間は、前記発電機の電流の大きさが一定に維持される期間を含む、
請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記第1回転運転が行われる期間は、力行期間を含み、
前記力行期間は、前記第1回転運転の開始時点を含み、
前記制御装置は、前記力行期間において、前記発電機が力行駆動を行うように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する、
請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記第2回転運転が行われる期間は、非ゼロの長さの電流低下期間を含み、
前記電流低下期間では、前記発電機の電流の大きさが低下する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項5】
前記第2回転運転では、前記発電機の駆動状態が回生駆動から力行駆動に切り替わることが回避されるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項6】
前記第2回転運転が行われる期間の長さは、前記第2回転運転が開始される前に設定されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項7】
前記第2回転運転が行われる期間の長さは、前記第2回転運転における前記シャフトの回転加速度に応じて変化する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項8】
前記第2回転運転の開始時点における前記発電機の電流の大きさに対する前記第2回転運転の終了時点における前記発電機の電流の大きさの比率は、0.1以上1.0未満である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項9】
前記発電機は、前記シャフトとともに回転するロータを有し、
前記第3回転運転では、特定制御が開始され、
前記特定制御では、推定された前記ロータの回転位置に基づいて前記ロータの回転数を制御する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項10】
前記発電機は、前記シャフトとともに回転するロータを有し、
前記第3回転運転では、前記ロータの回転数が目標回転数に追従するように、前記コンバータを用いて前記ロータの回転数のフィードバック制御を実行する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項11】
前記第3回転運転が行われる期間は、前記発電機の電流の大きさが一定に維持される期間を含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項12】
前記発電機は、同期発電機である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項13】
前記ランキンサイクル装置は、オイル室をさらに有し、
前記シャフトが回転することによって、前記オイル室から前記膨張機にオイルが供給される、
請求項1から12のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項14】
膨張機と、シャフトによって前記膨張機に連結された発電機と、を有し、前記膨張機の入口における作動流体の圧力と前記膨張機の出口における前記作動流体の圧力との圧力差により前記シャフトが回転することによって前記発電機が発電するランキンサイクル装置の始動運転を実行する制御装置であって、
前記発電機を制御するコンバータを有し、
前記始動運転では、第1回転運転、第2回転運転及び第3回転運転がこの順に実行され、
前記第1回転運転では、前記シャフトの回転が開始するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第2回転運転では、前記第2回転運転の終了時点における前記発電機の電流の大きさが前記第2回転運転の開始時点における前記発電機の電流の大きさよりも小さくなるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第3回転運転では、前記圧力差が存在するときに前記シャフトが前記圧力差により回転することが許可されかつ前記シャフトの回転数が制御されるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する、
制御装置。
【請求項15】
膨張機と、シャフトによって前記膨張機に連結された発電機と、を有し、前記膨張機の入口における作動流体の圧力と前記膨張機の出口における前記作動流体の圧力との圧力差により前記シャフトが回転することによって前記発電機が発電するランキンサイクル装置を、前記発電機を制御するコンバータを用いて始動する始動方法であって、
第1回転運転を実行することと、前記第1回転運転を実行した後に第2回転運転を実行することと、前記第2回転運転を実行した後に第3回転運転を実行することと、を含み、
前記第1回転運転では、前記シャフトの回転が開始するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第2回転運転では、前記第2回転運転の終了時点における前記発電機の電流の大きさが前記第2回転運転の開始時点における前記発電機の電流の大きさよりも小さくなるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第3回転運転では、前記シャフトが前記圧力差により回転しかつ前記シャフトの回転数が制御されるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する、
始動方法。
【請求項16】
コンピュータによる実行時において、ランキンサイクル装置の始動方法をコンピュータに実行させる指示を備えた、コンピュータプログラムであって、
前記ランキンサイクル装置は、膨張機と、シャフトによって前記膨張機に連結された発電機と、を有し、前記膨張機の入口における作動流体の圧力と前記膨張機の出口における前記作動流体の圧力との圧力差により前記シャフトが回転することによって前記発電機が発電する装置であり、
前記始動方法では、前記発電機を制御するコンバータが用いられ、
前記始動方法は、第1回転運転を実行することと、前記第1回転運転を実行した後に第2回転運転を実行することと、前記第2回転運転を実行した後に第3回転運転を実行することと、を含み、
前記第1回転運転では、前記シャフトの回転が開始するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第2回転運転では、前記第2回転運転の終了時点における前記発電機の電流の大きさが前記第2回転運転の開始時点における前記発電機の電流の大きさよりも小さくなるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第3回転運転では、前記圧力差が存在するときに前記シャフトが前記圧力差により回転することが許可されかつ前記シャフトの回転数が制御されるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する、
コンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電装置、制御装置、始動方法、コンピュータプログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ランキンサイクル装置を制御する制御器を開示する。制御器は、第1の制御、第2の制御及び第3の制御をこの順に実行する。第1の制御は、コンバータを用いて発電機に直流電流を流してロータを拘束して、膨張機が作動流体を膨張することを禁止する。第2の制御は、コンバータを用いて発電機の端子間電圧をゼロにして又は発電機を流れる電流をゼロにして、膨張機が作動流体を膨張させることを許可する。第3の制御は、発電機の回転数を調整するように、コンバータを用いて発電機を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-83829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ランキンサイクル装置の始動の信頼性を向上させることに適した技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
膨張機と、シャフトによって前記膨張機に連結された発電機と、を有し、前記膨張機の入口における作動流体の圧力と前記膨張機の出口における前記作動流体の圧力との圧力差により前記シャフトが回転することによって前記発電機が発電するランキンサイクル装置と、
前記発電機を制御するコンバータを有し、前記ランキンサイクル装置の始動運転を実行する制御装置と、を備え、
前記始動運転では、第1回転運転、第2回転運転及び第3回転運転がこの順に実行され、
前記第1回転運転では、前記シャフトの回転が開始するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第2回転運転では、前記第2回転運転の終了時点における前記発電機の電流の大きさが前記第2回転運転の開始時点における前記発電機の電流の大きさよりも小さくなるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第3回転運転では、前記シャフトが前記圧力差により回転しかつ前記シャフトの回転数が制御されるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する、
発電装置を提供する。
【0006】
本開示は、
膨張機と、シャフトによって前記膨張機に連結された発電機と、を有し、前記膨張機の入口における作動流体の圧力と前記膨張機の出口における前記作動流体の圧力との圧力差により前記シャフトが回転することによって前記発電機が発電するランキンサイクル装置の始動運転を実行する制御装置であって、
前記発電機を制御するコンバータを有し、
前記始動運転では、第1回転運転、第2回転運転及び第3回転運転がこの順に実行され、
前記第1回転運転では、前記シャフトの回転が開始するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第2回転運転では、前記第2回転運転の終了時点における前記発電機の電流の大きさが前記第2回転運転の開始時点における前記発電機の電流の大きさよりも小さくなるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第3回転運転では、前記圧力差が存在するときに前記シャフトが前記圧力差により回転することが許可されかつ前記シャフトの回転数が制御されるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する、
制御装置を提供する。
【0007】
本開示は、
膨張機と、シャフトによって前記膨張機に連結された発電機と、を有し、前記膨張機の入口における作動流体の圧力と前記膨張機の出口における前記作動流体の圧力との圧力差により前記シャフトが回転することによって前記発電機が発電するランキンサイクル装置を、前記発電機を制御するコンバータを用いて始動する始動方法であって、
第1回転運転を実行することと、前記第1回転運転を実行した後に第2回転運転を実行することと、前記第2回転運転を実行した後に第3回転運転を実行することと、を含み、
前記第1回転運転では、前記シャフトの回転が開始するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第2回転運転では、前記第2回転運転の終了時点における前記発電機の電流の大きさが前記第2回転運転の開始時点における前記発電機の電流の大きさよりも小さくなるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第3回転運転では、前記シャフトが前記圧力差により回転しかつ前記シャフトの回転数が制御されるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する、
始動方法を提供する。
【0008】
本開示は、
コンピュータによる実行時において、ランキンサイクル装置の始動方法をコンピュータに実行させる指示を備えた、コンピュータプログラムであって、
前記ランキンサイクル装置は、膨張機と、シャフトによって前記膨張機に連結された発電機と、を有し、前記膨張機の入口における作動流体の圧力と前記膨張機の出口における前記作動流体の圧力との圧力差により前記シャフトが回転することによって前記発電機が発電する装置であり、
前記始動方法では、前記発電機を制御するコンバータが用いられ、
前記始動方法は、第1回転運転を実行することと、前記第1回転運転を実行した後に第2回転運転を実行することと、前記第2回転運転を実行した後に第3回転運転を実行することと、を含み、
前記第1回転運転では、前記シャフトの回転が開始するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第2回転運転では、前記第2回転運転の終了時点における前記発電機の電流の大きさが前記第2回転運転の開始時点における前記発電機の電流の大きさよりも小さくなるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御し、
前記第3回転運転では、前記圧力差が存在するときに前記シャフトが前記圧力差により回転することが許可されかつ前記シャフトの回転数が制御されるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する、
コンピュータプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る技術は、ランキンサイクル装置の始動の信頼性を向上させることに適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る発電装置の構成図
図2】実施の形態に係るコンバータの構成図
図3】実施の形態に係るコンバータ制御部の構成図
図4】dq座標系及びγδ座標系の説明図
図5】実施の形態に係るコンバータ制御部の動作シーケンス図
図6】実施の形態に係る膨張機の構成図
図7】実施の形態に係る膨張機の構成部品の位置関係を説明する上面視図
図8】実施の形態に係る発電機の電流波形を示す図
図9】実施の形態に係るポンプ用駆動回路の構成図
図10】実施の形態に係る系統連系用電力変換器の構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者が本開示に想到するに至った当時、ランキンサイクル装置において、シャフトによって発電機を膨張機に連結し、膨張機の入口及び出口の作動流体の圧力差によりシャフトを回転させることによって発電機に発電させることが行われていた。このようなランキンサイクル装置を始動するときに、第1の運転を行い、その後、第2の運転を行うことを考える。第1の運転は、シャフトの回転が開始するように発電機を制御する運転である。第2の運転は、シャフトが上記圧力差により回転しかつシャフトの回転数が制御されるように発電機を制御する運転である。
【0012】
ランキンサイクル装置を始動する過渡期間には、発電機に印加される電流から期待される程にはシャフトを回転させるトルクが得られない可能性がある。トルク不足は、ランキンサイクル装置の始動の信頼性を低下させうる。第1の運転において、上記可能性を見越して大きな電流を発電機に印加することも考えられる。しかし、そのようにすると、後続する第2の運転の回転数制御への移行直後にも大きな電流が発電機に印加されうる。さらに、上述のように、ランキンサイクル装置は、その発電原理上、膨張機の入口及び出口の作動流体の圧力差が生じるように構成されている。上記の大きな電流に由来するトルクと、上記の圧力差に由来するトルクとが相俟って、シャフトの回転数が一時的に想定を上回るオーバーシュートの程度が大きくなりうる。オーバーシュートの程度は、特に、シャフトの回転数制御として発電機に印加される電流の大きさに対する発電機のトルクの比率が高くなり易い制御が採用されている場合に大きくなり易い。大きなオーバーシュートは、ランキンサイクル装置の始動の信頼性を低下させうる。
【0013】
上記の信頼性の低下について、発電機が同期発電機であり第2の運転の回転数制御が位置センサレス制御である具体例を挙げてさらに説明する。この具体例においては、第1の運転において、発電機のロータの回転位置が発電機に印加される電流の位相に同期しきらず、これらの間にずれが生じうる。このずれにより、ロータ及びシャフトを回転させるトルクが想定を下回り、ランキンサイクル装置の始動の信頼性が低下しうる。上記のずれが生じる可能性を見越して大きな電流を発電機に印加することも可能である。しかし、そのようにすると、後続する第2の運転の位置センサレス制御への移行直後にも大きな電流が発電機に印加されうる。典型例に係る位置センサレス制御では、発電機に印加される電流の大きさに対する発電機のトルクの比率が高くなり易い。このため、位置センサレス制御への移行直後において、上記の大きな電流と大きな比率とが相俟って、発電機のロータを加速する方向の過剰なトルクが発生しうる。このトルクの過剰性は、膨張機の入口及び出口における作動流体の圧力差由来のロータを加速する方向のトルクによって、増大しうる。ランキンサイクル装置を始動するときに過剰なトルクが生じると、膨張機及び発電機の回転系が急加速し、回転系の回転数の大きなオーバーシュートが生じ、回転系に大きなストレスが与えられうる。このことは、膨張機及び発電機の信頼性を低下させうる。
【0014】
本発明者が行った上記具体例に関する実験例によれば、位置センサレス制御におけるロータの目標回転数が500rpmである場合、位置センサレス制御への移行直後にロータの回転数が一旦1000rpm以上にまで跳ね上がり、その後、ロータの回転数が500rpmに収束する。この跳ね上がりは、位置センサレス制御への移行直後における発電機の電流が過度に大きくそのため発電機のロータを加速する方向のトルクが過度に大きいが故に生じたと考えられる。
【0015】
そこで、本開示は、ランキンサイクル装置の始動の信頼性を向上させることに適した技術を提供する。
【0016】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0017】
添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0018】
(実施の形態)
以下、図1から図10を用いて、実施の形態を説明する。
【0019】
[1-1.構成]
[1-1-1.発電装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る発電装置1の構成図である。図1に示すように、発電装置1は、ランキンサイクル装置2及び発電制御装置3を備える。発電装置1は、外部の電力系統4に接続されうる。電力系統4は、ランキンサイクル装置2に電力を供給することができる。電力系統4には、ランキンサイクル装置2から電力が供給されることもある。電力系統4は、例えば、商用の交流電源である。
【0020】
ランキンサイクル装置2は、流体回路5、発電機6及び電動機7を有する。流体回路5では、作動流体が流れる。流体回路5は、ランキンサイクルを構成している。
【0021】
流体回路5は、ポンプ8、蒸発器9、膨張機10及び凝縮器11を有する。これらは複数の配管によってこの順で環状に接続されている。流体回路5における蒸発器9の出口と膨張機10の入口との間の部分には、温度センサ12が設けられている。流体回路5は、さらに、バイパス路13を有する。バイパス路13は、膨張機10をバイパスしている。バイパス路13の上流端は、流体回路5における蒸発器9の出口と膨張機10の入口との間の部分に接続されている。バイパス路13の下流端は、流体回路5における膨張機10の出口と凝縮器11の入口との間の部分に接続されている。バイパス路13は、開閉装置14を有する。本実施の形態では、開閉装置14は、バイパス弁である。以下、バイパス弁14という表記を用いる。ただし、以下の説明において、「バイパス弁14」を「開閉装置14」と読み替えてもよい。
【0022】
温度センサ12で検出された蒸発器9を通過した作動流体の温度に基づき、蒸発器9の出口の作動流体に液体成分が含まれているか否かが判断される。
【0023】
発電機6は、膨張機10に連結されている。電動機7は、ポンプ8に連結されている。発電機6は、膨張機10によって駆動される。電動機7は、ポンプ8を駆動する。
【0024】
ポンプ8は、電動式のポンプである。ポンプ8は、液体の作動流体を循環させることができる。本実施の形態では、ポンプ8は、容積型のポンプである。具体的には、ポンプ8はギヤポンプである。本実施の形態では、ポンプ8は、膨張機10とは連結されていないため、膨張機10から独立して動作できる。
【0025】
本実施の形態では、ランキンサイクル装置2の熱源は、工場、焼却炉等の施設である。つまり、ランキンサイクル装置2は、排熱エネルギーを利用して発電を行う。蒸発器9は、そのような施設から排出された排熱エネルギーを吸収する熱交換器である。蒸発器9は、フィンチューブ熱交換器である。施設からの排気ガスとランキンサイクル装置2の作動流体とが蒸発器9において熱交換する。これにより、作動流体が加熱され、蒸発する。
【0026】
膨張機10は、作動流体を膨張させることによって作動流体の熱エネルギーを回転動力に変換する。膨張機10及び発電機6は、シャフト45を共有している。膨張機10によって発電機6が駆動される。本実施の形態では、膨張機10は、容積型の膨張機である。具体的には、膨張機10は、レシプロ膨張機である。
【0027】
凝縮器11は、膨張機10から吐出された作動流体を、図示を省略する熱媒体回路の中の熱媒体等と熱交換させる。これにより、作動流体が冷却される。熱媒体は、例えば、冷却水、冷却空気等である。本実施の形態では、凝縮器11は、フィンチューブ熱交換器である。
【0028】
本実施の形態では、バイパス弁14は、開度を変更可能である。バイパス弁14の開度を変更することによって、膨張機10をバイパスする作動媒体の流量を調節できる。バイパス弁14として、電磁式の開閉弁を用いてもよい。
【0029】
本実施の形態では、発電機6は、同期発電機である。具体的には、発電機6は、永久磁石同期発電機である。また、本実施の形態では、発電機6は、4極の発電機である。
【0030】
本実施の形態では、電動機7は、同期電動機である。具体的には、電動機7は、永久磁石同期電動機である。
【0031】
本実施の形態では、ランキンサイクル装置2の作動流体は、有機作動流体である。有機作動流体として、ハロゲン化炭化水素が例示される。
【0032】
ランキンサイクル装置2の動作の概要は以下のとおりである。ポンプ8は、作動流体を圧送し、循環させる。蒸発器9は、熱源からの熱を用いて作動流体を加熱する。これにより、作動流体が過熱蒸気の状態となる。膨張機10には、過熱蒸気の作動流体が流入する。流入した作動流体は、膨張機10内で断熱膨張する。これにより、膨張機10に駆動力が生じ、膨張機10が動作する。つまり、膨張機10によって、熱エネルギーが機械エネルギーへと変換される。膨張機10の動作に伴い、発電機6が発電する。つまり、発電機6によって、機械エネルギーが電気エネルギーへと変換される。凝縮器11は、冷却水、冷却空気等を用いて、膨張機10から吐出された作動流体を冷却する。これにより、作動流体が凝縮して液体の状態となる。液体の作動流体は、ポンプ8に吸い込まれる。温度センサ12は、蒸発器9を通過した作動流体の温度を検出する。この温度を表す検出信号等に基づいて、図示しないバイパス弁制御回路は、バイパス弁14の開度を制御する。これにより、バイパス路13を流れる作動流体の流量が調整される。
【0033】
発電制御装置3は、ランキンサイクル装置2を制御する。発電制御装置3は、コンバータ15、ポンプ用駆動回路16、系統連系用電力変換器17及び制御器18を備える。コンバータ15は、3相配線19を介して発電機6に接続されている。ポンプ用駆動回路16は、3相配線20を介して電動機7に接続されている。系統連系用電力変換器17は、電力系統4に接続されうる。コンバータ15と系統連系用電力変換器17とは、直流配線21によって接続されている。
【0034】
制御器18は、ランキンサイクル装置2の始動運転において、ポンプ8が動作中で、蒸発器9の出口の作動流体に液体成分が含まれているとき、膨張機10が作動流体を膨張させることを禁止するように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する禁止運転を実行する。制御器18は、図示しない演算処理部及び記憶部を備える。演算処理部としては、MPU、CPUが例示される。記憶部は、制御プログラムを記憶する。記憶部としては、メモリが例示される。
【0035】
系統連系用電力変換器17は、電力系統4から得た交流電力を直流電力へと変換する。得られた直流電力は、ポンプ用駆動回路16に供給される。得られた直流電力は、コンバータ15にも供給される。発電機6が発電しているときには、コンバータ15は、発電機6で発電された交流電力を直流電力へと変換する。得られた直流電力は、ポンプ用駆動回路16に供給される。得られた直流電力がポンプ用駆動回路16に供給するべき直流電力よりも大きい場合には、得られた直流電力の一部である余剰電力は系統連系用電力変換器17によって交流電力へと変換される。この交流電力は、電力系統4へと逆潮流される。発電制御装置3のこのような構成により、コンバータ15は、発電機6を介して膨張機10に制動トルク又は駆動トルクを与えることができる。また、ポンプ用駆動回路16は、別途の電源回路を要さずとも、電動機7を介してポンプ8を駆動することができる。
【0036】
図2は、本実施の形態に係るコンバータ15の構成図である。図2に示すように、コンバータ15は、発電機6を制御する。コンバータ15は、コンバータ回路部22、コンバータ制御部23及び電流センサ24を備える。
【0037】
コンバータ回路部22は、直流配線21により、系統連系用電力変換器17に結線されている。直流配線21は、プラス側配線25及びマイナス側配線26を有する。コンバータ回路部22は、3相配線19により、発電機6に結線されている。3相配線19は、U相配線27、V相配線28及びW相配線29を有する。U相配線27にはU相電流iuが流れる。V相配線28にはV相電流ivが流れる。W相配線29にはW相電流iwが流れる。コンバータ回路部22は、コンバータ制御部23から出力された制御信号30に基づいて駆動する。これにより、コンバータ回路部22において、3相交流電力が直流電力へと変換される。また、コンバータ回路部22において、直流電力が3相交流電力へと変換される。本実施形態では、制御信号30は、いわゆるPWM(Pulse Width Modulation)信号である。また、コンバータ回路部22は、パルス幅変調を行うためのスイッチング素子を有している。
【0038】
コンバータ制御部23は、発電機6の目標回転数ω*、U相電流iu及びV相電流ivに基づいて、制御信号30を出力する。U相電流iu及びV相電流ivは、電流センサ24により検出される。
【0039】
図3は、本実施の形態に係るコンバータ制御部23の構成図である。図3に示すように、コンバータ制御部23は、電流指令生成部31、電圧指令生成部32、座標変換部33A、PWM信号生成部34、位置・回転数推定部35及び座標変換部33Bを備える。
【0040】
[1-2.動作]
[1-2-1.コンバータ制御部23の動作]
図4は、dq座標系及びγδ座標系の説明図である。コンバータ制御部23の構成要素の動作は、γδ座標系を用いて説明される。γδ座標系について、dq座標系を参照しつつ、図4を用いて説明する。
【0041】
dq座標系は、回転座標系である。d軸及びq軸は、永久磁石6Aが作る磁束の回転数と同じ回転数で回転する。図面の見易さを考慮して、図4ではq軸を省略している。反時計回り方向が、位相の進み方向である。永久磁石6Aは、発電機6のロータ6Xにおける永久磁石を表す。d軸は、永久磁石6Aが作る磁束の方向に延びる軸として設定されている。q軸は、d軸を進み方向に90度回転させた軸として設定されている。U軸はU相巻線、V軸はV相巻線、W軸はW相巻線にそれぞれ対応する。U軸、V軸及びW軸は、ロータ6Xが回転しても、回転しない。つまり、U軸、V軸及びW軸は、固定軸である。実ロータ位置θは、U軸からみたd軸の進み角である。回転数ωは、ロータ6Xの回転数を表す。この文脈において、角度は電気角を意味する。
【0042】
γδ座標系は、回転座標系である。γ軸は、d軸に対応する推定軸又は制御軸として設定されている。δ軸は、γ軸を進み方向に90度回転させた軸として設定されている。図面の見易さを考慮して、図4ではδ軸を省略している。推定位置θeは、U軸からみたγ軸の進み角である。推定回転数ωeは、γ軸の回転数である。
【0043】
軸誤差Δθは、γ軸から見たd軸の進み角である。軸誤差Δθは、Δθ=θ-θeで与えられる。
【0044】
図3に戻って、コンバータ制御部23の各要素について説明する。以下では、説明の便宜上、コンバータ制御部23にU相電流iu及びV相電流ivが入力されてから、コンバータ制御部23から制御信号30が出力されるまでが、同一の制御周期内に行われることとする。
【0045】
座標変換部33Aは、U相電流iu、V相電流iv及び推定位置θeに基づいて、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδを算出し、出力する。U相電流iu及びV相電流ivは、電流センサ24によって検出された電流の値である。座標変換部33Aが用いる推定位置θeは、過去の制御周期において位置・回転数推定部35によって算出された位置である。過去の制御周期は、例えば1制御周期前である。
【0046】
位置・回転数推定部35は、γ軸電流iγ、δ軸電流iδ、γ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *に基づいて、推定位置θe及び推定回転数ωeを算出し、出力する。位置・回転数推定部35が用いるγ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *は、過去の制御周期において電圧指令生成部32によって算出された電圧値である。過去の制御周期は、例えば1制御周期前である。
【0047】
電流指令生成部31は、目標回転数ω*と推定回転数ωeとに基づいて、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *を算出し、出力する。目標回転数ω*は、図示を省略する上位制御装置で生成されうる。
【0048】
電圧指令生成部32は、γ軸電流iγ、δ軸電流iδ、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *に基づいて、γ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *を算出し、出力する。
【0049】
座標変換部33Bは、推定位置θe、γ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *に基づいて、3相目標電圧vu *、vv *、vw *を算出し、出力する。3相目標電圧vu *、vv *、vw *は、U相目標電圧vu *、V相目標電圧vv *及びW相目標電圧vw *をまとめて記載したものである。
【0050】
PWM信号生成部34は、3相目標電圧vu *、vv *、vw *に基づいて、制御信号30を生成し、出力する。制御信号30は、コンバータ回路部22に入力される。コンバータ回路部22は、3相目標電圧vu *、vv *、vw *に対応する3相電圧が発電機6に印加されるように動作する。
【0051】
[始動運転]
次に、始動運転時のコンバータ制御部23の動作シーケンスについて説明する。図5は、本実施の形態に係るコンバータ制御部23の動作シーケンス図である。
【0052】
始動運転は、ランキンサイクル装置2の運転を開始すべき旨の指令が外部から発電制御装置3の制御器18に入力されたときに開始される。指令は、典型的には信号である。
【0053】
ステップS100は、系統連系を開始するステップである。ステップS100では、まず、系統連系用電力変換器17の運転を開始する。これにより、電力系統4から系統連系用電力変換器17へと交流電力が供給される。この交流電力は、系統連系用電力変換器17によって、直流電力へと変換される。これにより、プラス側配線25とマイナス側配線26との間に直流電圧がかかる。系統連系用電力変換器17は、この直流電圧の大きさが所定の大きさとなるように、電力系統4から系統連系用電力変換器17へと供給される電力の大きさを調整する。
【0054】
次に、ステップS110では、バイパス弁14を開く。ステップS110において、バイパス弁14の開度をゼロから全開にする。また、バイパス弁14を一気に開く。
【0055】
次に、ステップS120では、制御器18がコンバータ15を用いて発電機6を制御することにより、膨張機10が作動流体を膨張させることを禁止する禁止運転を実行する。本実施形態では、制御器18がコンバータ15を用いて発電機6に直流電流を流すことにより、膨張機10が作動流体を膨張させることを禁止する。膨張機10及び発電機6がシャフト45を共有しているので、発電機6に電流を流すと、膨張機10に制動力が働く。膨張機10の入口と出口との間に圧力差が生じても膨張機10は動かない。
【0056】
次に、ステップS130は、ポンプ8の運転を開始するステップである。ポンプ8は流体回路5の内部で作動流体を循環させる。また、ポンプ8の動作を開始したときは、作動流体の温度が低く作動流体に液体成分が含まれている可能性が高い。しかし、ステップS120により膨張機10が作動流体を膨張させることが禁止されているめ、作動流体が膨張機10に流れ込むことはない。従って、全ての作動流体が、ポンプ8、蒸発器9、バイパス路13及び凝縮器11を、この順に流れる。
【0057】
次に、ステップS140では、膨張機10の入口の作動流体の温度が閾値温度よりも大きいか否かを判断する。ステップS140において、作動流体の温度が閾値温度を上回ったと判断されると、ステップS150に進む。本実施形態では、膨張機10の入口の作動流体の温度として、温度センサ12による検出値が使用される。このステップの閾値温度は、膨張機10の入口の作動流体に液体成分が含まれない作動流体の温度に設定される。
【0058】
ここで、ステップS150以降の説明をする前に、膨張機10の構成及び動作について説明する。図6は、本実施の形態に係る膨張機10の構成図である。図7は、本実施の形態に係る膨張機10の構成部品の位置関係を説明する上面視図である。
【0059】
図6に示すように、膨張機10及び発電機6は、筐体10h内に収容されている。シャフト45は、膨張機10の回転軸及び発電機6の回転軸を兼ねている。
【0060】
図6に示す膨張機10はレシプロ式の膨張機である。膨張機10は、吸入口36、バルブ37、第1ピストン38A、第2ピストン38B、第3ピストン38C、第4ピストン38D、第5ピストン38E、第6ピストン38F、吐出口39、シリンダブロック42及び斜板43を有する。図6において、シリンダブロック42は、シャフト45を取り囲むように拡がる側壁部と、側壁部に接続された上壁部と、を有する。この例では、上壁部は、環状かつ板状の部材である。上壁部は、ピストン38Aから38Fの上方において拡がっている。上壁部は、ヘッドと称されうる。バルブ37において、吸入溝40及び吐出溝41が、互いに対向する位置に設けられている。
【0061】
シリンダブロック42とピストン38Aから38Fとの間には、作動室が形成されうる。以下、シリンダブロック42と第1ピストン38Aとの間に形成される作動室を、第1作動室38ASと称する。シリンダブロック42と第2ピストン38Bとの間に形成される作動室を、第2作動室38BSと称する。シリンダブロック42と第3ピストン38Cとの間に形成される作動室を、第3作動室38CSと称する。シリンダブロック42と第4ピストン38Dとの間に形成される作動室を、第4作動室38DSと称する。シリンダブロック42と第1ピストン38Eとの間に形成される作動室を、第5作動室38ESと称する。シリンダブロック42と第1ピストン38Fとの間に形成される作動室を、第6作動室38FSと称する。
【0062】
吸入口36は、筐体10hの外部から筐体10hの内部へと作動流体を導く吸入管に設けられている。作動流体は、吸入口36からバルブ37に流れ、次に作動室38ASから38FSに流れ、次に吐出口39に流れる。その後、作動流体は、吐出管44により筐体10hの外に流出する。吸入口36は、上述の説明における膨張機10の入口に対応する。吐出口39は、上述の説明における膨張機10の出口に対応する。
【0063】
筐体10hの最下部には、オイル室46が設けられている。オイル室46からシャフト45の内部を経由して可動部へと、オイルが供給される。可動部は、ピストン38Aから38F、斜板43、バルブ37等である。
【0064】
バルブ37が回転すると、膨張機10内の連通状態が変化する。また、バルブ37が回転すると、斜板43も回転し、これにより作動室38ASから38FSの容積が変化する。以下、これらについて説明する。なお、膨張機10の入口と出口との間の圧力差により膨張機10が駆動されるとき、バルブ37は、図7の時計回りに回転する。発電機6の力行駆動により膨張機10が駆動されるときについても同様である。
【0065】
バルブ37の回転位置に応じて、吸入口36及び吸入溝40に作動室38ASから38FSのいずれが連通するのかが定まる。バルブ37の回転位置に応じて、作動室38ASから38FSのいずれが吐出溝41に連通するのかが定まる。バルブ37の回転位置に応じて、ピストン38Aから38Fのいずれが吸入口36にも吐出溝41にも連通しないのかが定まる。
【0066】
ある回転位置にバルブ37があるときに、高温高圧の作動流体が、作動室38ASから38FSのうち吸入口36及び吸入溝40に連通したものに流入する。バルブ37の回転に伴い、その作動室が吸入口36にも吐出溝41にも連通しない状態となる。この非連通状態でバルブ37が回転することにより、斜板43も回転し、作動室の容積が増大し、これにより作動流体が膨張する。バルブ37の回転により作動室が吐出溝41に連通したときに、非連通状態が解除され、膨張した作動流体が吐出溝41から吐出される。吐出された作動流体は、吐出口39から筐体10hの外部へと流出する。
【0067】
図7に示す状態において、吸入口36及び吸入溝40は、第1作動室38ASと連通している。このため、作動流体は、吸入口36から吸入溝40を介して第1作動室38ASに流入する。作動室38BS及び38CSは、吸入口36にも吐出溝41にも連通していない。このため、作動室38BS及び38CSにおける作動流体は、バルブ37の回転に伴い膨張する。作動室38DSから38FSは、吐出溝41と連通している。このため、作動室38DSから38FSの作動流体は、吐出溝41から吐出される。作動室38DSから38FSの作動流体は、低圧状態にある。
【0068】
膨張機10及び発電機6による発電は、連通状態が順次切り替わることにより行われる。具体的には、図7のピストン38Aのような、高温高圧の作動流体が流入する期間にある作動室を区画するピストンが、斜板43を押し下げる。この押し下げにより、斜板43とともにシャフト45及びバルブ37が回転する。バルブ37の回転により、作動室は、吸入口36にも吐出溝41にも連通しない非連通状態となり、作動室における作動流体は膨張する。作動室はやがて吐出溝41と連通し、その作動室の膨張期間は終了する。この連通状態において、膨張期間を経た作動流体が、作動室から吐出溝41及び吐出空間をこの順に経由して吐出管44へと流れ、吐出管44から吐出される。これにより、残圧が解放される。このように、作動室及びそこに位置する作動流体の状態が順次切り替わりながら、斜板43とともにシャフト45及び発電機6のロータ6Xが回転する。こうして、発電機6が発電する。
【0069】
図5に戻って、ステップS150では、第1回転運転を実行する。本実施の形態の第1回転運転では、制御器18は、発電機6が力行駆動するように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。これにより、発電機6のロータ6Xの回転が開始する。
【0070】
具体的には、本実施の形態では、発電機6のステータ6Yは、周方向に並んだ複数の巻線を有する。第1回転運転では、複数の巻線への励磁電流の通電状態が順次切り替わることによって、回転磁界が形成される。これにより、発電機6のロータ6Xが回転する。ロータ6Xの回転に伴い、シャフト45及び斜板43が回転する。この説明から理解されるように、本実施の形態では、発電機6のロータ6Xの回転が強制的に開始させられることにより、シャフト45及び斜板43の回転が強制的に開始させられる。
【0071】
また、本実施の形態の第1回転運転では、制御器18は、発電機6に第1電流I1が印加されるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。本実施の形態では、第1電流I1の大きさは十分に大きい。このため、発電機6のロータ6X、シャフト45及び斜板43の回転を開始するに足りるトルクが得られる。第1電流I1の大きさは、具体的には、交流電流である第1電流I1の振幅である。
【0072】
ステップS150の第1回転運転の作用について説明する。図7に示す作動室38BS及び38CSのような、膨張期間にある作動室は、吸入溝40と連通していないため、高温高圧の作動流体は供給されない。膨張期間では、斜板43の回転により、作動室の容積が増大し、作動室における作動流体の圧力は低下する。作動室における作動流体の圧力は、やがて吐出口39の圧力よりも低くなる。
【0073】
ランキンサイクル装置2の始動時において、図7に示すピストン38B及び38Cのような、低い圧力の作動流体を収容する作動室を区画するピストンは、斜板43を静止させるように作用する。また、膨張機10及び発電機6の回転系における摺動部の静止摩擦力も、斜板43を静止させるように作用する。しかし、ステップS150の第1回転運転により、これらの静止力に打ち勝つ回転力が、膨張機10に与えられる。このようにして斜板43を強制的に回転させる。
【0074】
ステップS150の第1回転運転の一例では、ステップS150の第1回転運転により、発電機6のロータ6Xは、機械角又は電気角で予め定められた角度回転する。この角度は、典型的には、機械角で360度以上である。
【0075】
本実施の形態では、ステップS150の第1回転運転中に、発電機6のロータ6Xの回転位置の指令に応じて回転磁界が形成され、回転磁界に応じてロータ6Xが回転する。第1回転運転で用いたロータ6Xの回転位置の指令は、後述のステップS160における推定位置θeの初期値として利用される。なお、本実施の形態では、回転位置は、磁極位置とも称されうる。この文脈において、ロータ6Xの回転位置、推定位置θe及び磁極位置は、電気角に基づいた位置である。
【0076】
次に、ステップS160では、第2回転運転を実行する。本実施の形態の第2回転運転では、膨張機10の入口における作動流体の圧力と膨張機10の出口における作動流体の圧力との差に基づいて、膨張機10が動作する。ステップS160では、作動流体が、バイパス路13のみならず、膨張機10にも流れる。
【0077】
第2回転運転では、発電機6のロータ6X、シャフト45及び斜板43等の回転系を回転させることに、発電機6の電流に由来するトルクのみならず、上記圧力差に由来するトルクを利用する。このため、第2回転運転では、発電機6の電流の大きさを小さくしても、回転系の回転が維持されうる。なお、上記圧力差に由来するトルクは、第1回転運転でも利用されうる。ただし、始動運転では、時間経過に伴い作動流体の温度が上昇し、上記圧力差が上昇しうる。このため、第2回転運転では、第1回転運転に比べ、上記圧力差に由来するトルクが大きくなり易い。
【0078】
第2回転運転では、制御器18は、発電機6の電流が第1電流I1から第2電流I2に変化するように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第2電流I2の大きさは第1電流I1の大きさよりも小さい。第1電流I1の大きさは、具体的には、交流電流である第1電流I1の振幅である。第2電流I2の大きさは、具体的には、交流電流である第2電流I2の振幅である。
【0079】
第2回転運転において、コンバータ制御部23は、発電機6のロータ6Xの位置及び回転数を推定する。つまり、発電機6の推定位置θe及び推定回転数ωeを算出する。ただし、本実施の形態の第2回転運転では、図3の電流指令生成部31が行うような、推定回転数ωeを目標回転数ω*に追従させるような制御は行われない。この文脈において、推定位置θe及び推定回転数ωeは、電気角に基づいた位置及び回転数である。
【0080】
次に、ステップS170では、コンバータ制御部23が、推定回転数ωeが切替回転数BCよりも大きいか否かを判断する。ステップS170において、推定回転数ωeが切替回転数BCよりも大きいと判断されると、ステップS180に進む。
【0081】
次に、ステップS180では、第3回転運転を実行する。本実施の形態の第3回転運転では、制御器18は、コンバータ15を用いた発電機6の回転数の調整により、発電機6の回転数を制御する。この制御では、発電機6の回転数をさらに増加させる。本実施の形態では、コンバータ制御部23は、発電機6の推定回転数ωeが、制御器18から指令された目標回転数ω*に追従するよう、発電機6の回転数を制御する。この追従制御は、図3の電流指令生成部31によって行われうる。第3回転運転における目標回転数ω*は、一定でありうる。
【0082】
本実施の形態の第3回転運転の開始時点では、発電機6の電流は、第2電流I2である。第2電流I2は、第3回転運転において発電機6のロータ6Xに過剰なトルクがかかることが防止されるように、十分に小さい値に設定されている。これにより、第3回転運転において、ロータ6X、シャフト45及び斜板43等の回転系が急加速することが防止されうる。具体的には、第2電流I2は、第2電流I2に由来するトルクと、膨張機10の入口及び出口における作動流体の圧力差由来に由来するトルクと、の両方を考慮して、回転系が急加速することが防止されるように設定されうる。
【0083】
次に、ステップS190では、推定回転数ωeが切替回転数CNよりも大きいか否かを判断する。ステップS190において、推定回転数ωeが切替回転数CNよりも大きいと判断されると、ステップS200に進む。
【0084】
次に、ステップS200では、バイパス弁14を閉じる。バイパス弁14を閉じると、膨張機10を流れる作動流体の流量が増える。ステップS200では、バイパス弁14の開度を全開からゼロにする。また、バイパス弁14を、一気に閉じる。
【0085】
その後、ステップS210では、通常運転に移行する。これにより、始動運転は終了する。
【0086】
通常運転では、公知の制御を行うことができる。膨張機10の出入口の状態量の差に基づき膨張機10の回転数が制御される。状態量としては、圧力、温度等が例示される。例えば、膨張機10の入口における作動流体の圧力と膨張機10の出口における作動流体の圧力との差が所定の大きさとなるように、発電機6の回転数を制御する。これらの圧力は、図示しない圧力センサにより検出されうる。また例えば、蒸発器9の出口における作動流体の圧力すなわちいわゆる高圧側圧力の推定値に基づいて、発電機6の回転数を制御する。高圧側圧力の推定値は、発電機6を流れる電流と、蒸発器9の出口における作動流体の温度とから得ることができる。高圧側圧力の推定値を用いた制御によれば、圧力センサを省略できる。これらの技術については、例えば特開2008-106946号公報を参照されたい。
【0087】
上述の説明から理解されるように、本実施の形態では、ステップS120の禁止運転により、膨張機10が作動流体を膨張させることが禁止される。この膨張禁止は、ステップS150への移行に伴い解除される。ステップS150の第1回転運転では、シャフト45の回転が開始される。その後、ステップS160の第2回転運転の開始により、発電機6のロータ6Xの回転位置の推定すなわち推定位置θeの算出が開始される。第2回転運転では、膨張機10の入口及び出口における作動流体の圧力差により、シャフト45及びロータ6Xの回転数が上昇する。回転数の上昇に伴い、推定位置θeの算出精度が向上する。推定位置θeの算出精度が向上した状態で、ステップS180の第3回転運転が開始される。第3回転運転で、位置センサレス制御が開始される。位置センサレス制御は、エンコーダ、レゾルバ等の位置センサを用いずに行われる制御である。本実施の形態の位置センサレス制御では、推定位置θeに基づいて、発電機6が制御される。位置センサレス制御でも、上記圧力差によりシャフト45及びロータ6Xが回転する。本実施の形態の位置センサレス制御は、図3の構成によって実現されうる。本実施の形態の位置センサレス制御は、位置センサレスベクトル制御とも称されうる。第3回転運転の後のステップS210の通常運転でも、位置センサレス制御が行われる。
【0088】
図8は、本実施の形態に係る発電機6の電流波形を示す図である。具体的には、図8は、ステップS120からステップS180における発電機6の電流波形を示す。図8において、横軸は、時間である。縦軸は、電流である。
【0089】
期間Aは、ステップS120の禁止運転に対応する。期間Aでは、発電機6に直流電流が印加されている。直流電流の印加により、膨張機10の膨張動作が禁止されうる。
【0090】
期間Bは、ステップS150の第1回転運転に対応する。期間Bでは、発電機6の電流は、第1電流I1である。図示の例では、第1電流I1の大きさは、期間Aにおける直流電流の大きさよりも大きい。第1電流I1が十分に大きいため、発電機6のロータ6X、シャフト45及び斜板43を回転させるに足りるトルクが得られる。
【0091】
具体的には、期間Bでは、複数の巻線への励磁電流の通電状態が順次切り替えられている。これにより、疑似的な交流電流が形成され、回転磁界が形成される。回転磁界の形成により、発電機6のロータ6Xと、膨張機10のシャフト45及び斜板43等と、が強制的に回転させられる。図示の例では、期間Bにおける疑似的な交流電流の振幅は、期間Aにおける直流電流の大きさよりも大きい。この疑似的な交流電流が、第1電流I1に対応する。疑似的な交流電流の振幅が、第1電流I1の大きさに対応する。
【0092】
期間Cは、ステップS160の第2回転運転に対応する。期間Cでは、発電機6の電流の周波数が上昇する。期間Cでは、発電機6の電流は、第1電流I1から第2電流I2に変化する。第2電流I2の大きさは、第1電流I1の大きさよりも小さい。
【0093】
具体的には、期間Cでは、疑似的な交流電流の周波数が上昇する。期間Cの終了時点における疑似的な交流電流の振幅は、期間Cの開始時点における疑似的な交流電流の振幅よりも小さい。期間Cの開始時点における疑似的な交流電流が、第1電流I1に対応する。期間Cの開始時点における疑似的な交流電流の振幅が、第1電流I1の大きさに対応する。期間Cの終了時点における疑似的な交流電流が、第2電流I2に対応する。期間Cの終了時点における疑似的な交流電流の振幅が、第2電流I2の大きさに対応する。
【0094】
期間Dは、ステップS180の第3回転運転に対応する。期間Dでは、発電機6の電流は、第2電流I2である。第2電流I2が十分に小さいため、発電機6のロータ6X、シャフト45及び斜板43を加速させるトルクが抑制されうる。そのため、これらの回転数のオーバーシュートの程度が抑制されうる。期間Dの後、ステップS210の通常運転に移行する。
【0095】
[1-2-2.ポンプ用駆動回路16の詳細な構成と動作]
図9は、本実施の形態に係るポンプ用駆動回路16の構成図である。上述のとおり、電動機7は、ポンプ8を駆動する。ポンプ用駆動回路16は、その電動機7を制御する。
【0096】
ポンプ用駆動回路16は、駆動回路部47、駆動回路制御部48及び電流センサ49を備える。駆動回路部47は、直流配線21のプラス側配線25及びマイナス側配線26により、系統連系用電力変換器17に結線されている。駆動回路部47は、3相配線20により、電動機7に結線されている。3相配線20の各相の配線は、電動機7の対応する相に接続されており、これにより該対応する相に電流が流れる。駆動回路部47は、駆動回路制御部48から出力された制御信号50に基づいて駆動する。これにより、駆動回路部47において、直流電力が3相交流電力へと変換される。本実施形態では、制御信号50は、いわゆるPWM(Pulse Width Modulation)信号である。また、駆動回路部47は、パルス幅変調を行うためのスイッチング素子を有している。
【0097】
[1-2-3.系統連系用電力変換器17の構成と動作]
図10は、本実施の形態に係る系統連系用電力変換器17の構成図である。系統連系用電力変換器17は、電力系統4に接続されうる。
【0098】
発電装置1が始動する際には、電力系統4から系統連系用電力変換器17に電力が給電される。一方、膨張機10及び発電機6からの回生電力によってポンプ8等の補機の消費電力を上回る発電電力が得られた際には、余剰電力が系統連系用電力変換器17を介して電力系統4へ逆潮流される。
【0099】
系統連系用電力変換器17は、系統連系回路部51、系統連系制御部52、出力フィルタ53、電圧センサ54、出力電流センサ55、系統電圧センサ56、出力回路57を備える。電圧センサ54は、直流配線21の電圧を検出する。直流配線21の電圧は、詳細には、プラス側配線25とマイナス側配線26との間の電圧である。出力電流センサ55は、電力系統4への出力電流を検出する。系統電圧センサ56は、電力系統4の電圧を検出する。出力回路57は、高周波フィルタ及び連系リレーを有する。
【0100】
以下、逆潮流時における、系統連系用電力変換器17の制御動作を説明する。系統連系制御部52は、制御信号58を出力する。制御信号58は、系統連系回路部51の半導体スイッチをオンオフ制御する。これにより、余剰電力が、直流配線21、系統連系回路部51、出力フィルタ53及び出力回路57をこの順に介して電力系統4へと出力される。
【0101】
具体的には、以下のようにして、指令電流が生成される。指令電流は、出力フィルタ53を流れる電流の指令である。すなわち、系統電圧センサ56が、電力系統4の電圧を検出する。電圧センサ54は、直流配線21の電圧を検出する。出力電流センサ55は、電力系統4への出力電流を検出する。系統連系制御部52は、センサ56、54及び55の検出値に基づいて、指令電流を生成する。系統連系制御部52は、指令電流に相当する電流を出力フィルタ53に流すための、系統連系回路部51の変調率を演算する。系統連系制御部52は、この変調率を実現するための制御信号58を生成する。制御信号58は、系統連系回路部51の複数の半導体スイッチのスイッチング信号である。これらの半導体スイッチは、スイッチング信号に基づいてオンオフ動作する。
【0102】
本実施の形態では、電力系統4との保護協調の観点から、電圧に関する保護継電器、周波数に関する保護継電器、単独運転に関する保護継電器、出力電力に関する保護継電器等が設けられている。これらは一般的な保護継電器であるため、説明は省略する。
【0103】
[1-3.実施の形態に適用可能な特徴]
上記の実施の形態では、温度センサ12は、蒸発器9の出口から膨張機10の入口に至るまでの流体回路5に設けられている。ただし、温度センサは、蒸発器9を通過した作動流体の温度を検出可能であるなら、いずれの箇所に設けられてもよい。ここで、蒸発器9を通過した作動流体の温度とは、蒸発器9の出口から凝縮器11の入口に至るまでの流体回路5を流れる作動流体の温度を意味する。蒸発器9を通過した作動流体の温度として、バイパス路13に設けられた温度センサでバイパス路13を流れる作動流体の温度を検出してもよい。また、バイパス路13の下流端から凝縮器11に至るまでの流体回路5に設けられた温度センサで、この流体回路5を流れる作動流体の温度を検出してもよい。バイパス路13を作動流体が流れているときに、これらの位置に設けられた温度センサの検出温度に基づき蒸発器9の出口の作動流体に液体成分が含まれているか否かを判断できる。
【0104】
膨張機10の出口から凝縮器11の入口に至るまでの流体回路5に設けられた温度センサでこの流体回路5を流れる作動流体の温度を検出してもよい。膨張機10を作動流体が流れているときに、この位置に設けられた温度センサの検出温度と推定される膨張機10での作動流体の温度低下量に基づき蒸発器9の出口の作動流体に液体成分が含まれているか否かを判断できる。
【0105】
上記の実施の形態では、ポンプ8として、容積型のポンプを例示した。容積型のポンプとして、ピストンポンプ、ギヤポンプ、ベーンポンプ、ロータリポンプ等が例示される。ポンプ8は、ターボ型のポンプであってもよい。ターボ型のポンプとして、遠心ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプ等が例示される。
【0106】
上記の実施の形態では、ランキンサイクル装置2は、排熱エネルギーを利用して発電を行う。蒸発器9は、そのような施設から排出された排熱エネルギーを吸収する熱交換器である。ただし、ランキンサイクル装置2は、ボイラーの熱を利用して発電を行うものであってもよい。
【0107】
上記の実施の形態では、膨張機10はレシプロ膨張機である。ただし、膨張機10は、スクロール膨張機、ロータリ膨張機等の他の種類の容積型膨張機であってもよい。
【0108】
上記の実施の形態では、凝縮器11は、フィンチューブ熱交換器である。ただし、凝縮器11は、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器等の他の種類の熱交換器であってもよい。具体的には、凝縮器11の種類は、熱媒体回路における熱媒体の種類に応じて適宜選択されうる。熱媒体回路における熱媒体が空気等の気体である場合、凝縮器11としてフィンチューブ熱交換器が採用されうる。熱媒体回路における熱媒体が水等の液体である場合、凝縮器11としてプレート式熱交換器又は二重管式熱交換器が採用されうる。
【0109】
上記の実施の形態では、作動流体は、ハロゲン化炭化水素等の有機作動流体である。ハロゲン化炭化水素としては、R-123、R-245fa、R-1234ze等が例示される。作動流体は、炭化水素であってもよい。炭化水素として、アルカンが例示される。アルカンとして、プロパン、ブタン、ペンタン、イソペンタン等が例示される。作動流体は、アルコールであってもよい。アルコールとして、エタノール等が例示される。作動流体は、単一の有機作動流体であってもよく、2種類以上の有機作動流体の混合物であってもよい。作動流体は、無機作動流体であってもよい。無機作動流体として、水、二酸化炭素、アンモニア等が例示される。
【0110】
上記の実施の形態では、ステータ6Yが複数の巻線を有し、ロータ6Xが永久磁石6Aを有する。ただし、ステータ6Yが永久磁石を有し、ロータ6Xが複数の巻線を有していてもよい。
【0111】
制御器18は、集中制御を行う単独の制御器であってもよく、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。また、制御器18には、コンバータ制御部23、駆動回路制御部48、系統連系制御部52の制御機能の一部又は全部が組み込まれていてもよい。
【0112】
上記の実施の形態では、ステップS110において、バイパス弁14の開度をゼロから全開にする。また、ステップS110において、バイパス弁14を一気に開く。ただし、バイパス弁14の開度が全開にならない程度に、バイパス弁14の開度を大きくしてもよい。また、バイパス弁14を徐々に開いてもよい。要するに、ステップS110は、バイパス弁14の開度を大きくするステップである。
【0113】
上記の実施の形態では、ステップS120の後にステップS130を実行する。ただし、ステップS120を、ステップS130と同時に実行してもよい。始動運転において、ポンプ8の動作開始前又は動作開始時に膨張機10により作動流体が膨張されることを禁止すれば、液体成分を含む作動流体が膨張機10に流れ込む可能性が低くなる。
【0114】
ステップS120の前にステップS130を実行してもよい。ポンプ8の動作期間と、膨張機10による作動流体の膨張が禁止される期間とが少なくとも部分的に重複していてば、膨張機10への作動流体の液体成分の流入が抑制されうる。
【0115】
上記の実施の形態では、膨張機10の入口の作動流体の温度として、温度センサ12による検出値を使用する。ただし、膨張機10の入口の作動流体の圧力を圧力センサにより検出し、検出された圧力から膨張機10の入口の作動流体の温度を推定してもよい。
【0116】
上記の実施の形態では、膨張機10の入口の作動流体の温度を検出する。ただし、蒸発器9の出口の温度を検出してもよい。
【0117】
上記の実施の形態では、ステップS200において、バイパス弁14の開度を全開からゼロにする。また、バイパス弁14を一気に閉じる。ただし、バイパス弁14の開度がゼロにならない程度に、バイパス弁14の開度を小さくしてもよい。また、バイパス弁14を、徐々に閉じてもよい。要するに、ステップS200は、バイパス弁14の開度を小さくするステップである。
【0118】
一具体例では、ステップS200でバイパス弁14を閉じてから所定時間経過後に始動運転が終了する。ただし、実際の制御では、バイパス弁14を閉じた時点を始動運転の終了時点としてもよい。
【0119】
第1回転運転が行われる期間は、発電機6が力行駆動する期間を含みうる。つまり、第1回転運転が行われる期間は、発電機6が電動機として機能する期間を含みうる。第1回転運転が行われる期間は、発電機6が回生駆動する期間を含むうる。つまり、第1回転運転が行われる期間が、発電機6が発電する期間を含むこともありうる。
【0120】
第2回転運転が行われる期間は、発電機6が力行駆動する期間を含みうる。つまり、第2回転運転が行われる期間は、発電機6が電動機として機能する期間を含みうる。第2回転運転が行われる期間は、発電機6が回生駆動する期間を含むうる。つまり、第2回転運転が行われる期間が、発電機6が発電する期間を含むこともありうる。
【0121】
本実施の形態の第2回転運転では、時間経過に対する発電機6の電流の大きさの低下の比率は一定である。ただし、この比率は、一定でなくてもよい。また、第2回転運転が行われる期間は、電流の大きさが一定である期間を含んでいてもよい。第2回転運転が行われる期間は、電流の大きさが増加する期間を含んでいてもよい。
【0122】
一具体例では、第2回転運転が行われる期間は、第1期間及び第2期間をこの順に含む。第1期間において、発電機6は力行駆動し、時間経過に伴い発電機6の電流の大きさは低下する。第1期間から第2期間への切り替わり時点において、発電機6の電流の位相が反転する。第2期間において、発電機6は回生駆動し、時間経過に伴い発電機6の電流の大きさは増加する。回生駆動により、発電機6は発電する。
【0123】
[1-4.本開示から導かれうる技術及び効果等]
以下、本開示から導かれうる技術及び効果等を説明する。
【0124】
発電装置1は、ランキンサイクル装置2及び制御装置3を備える。ランキンサイクル装置2は、ポンプ8、蒸発器9、膨張機10、オイル室46及び発電機6を有する。ランキンサイクル装置2では、ポンプ8、蒸発器9及び膨張機10をこの順に作動流体が流れる流体回路5が構成されている。制御装置3は、コンバータ15を有する。ポンプ8は、作動流体を送出する。蒸発器9は、作動流体を蒸発させる。発電機6は、シャフト45によって膨張機10に連結されている。シャフト45が回転することによって、オイル室46から膨張機10にオイルが供給される。発電機6は、ロータ6Xを有する。ロータ6Xは、シャフト45とともに回転する。ランキンサイクル装置2では、膨張機10の入口における作動流体の圧力と膨張機10の出口における作動流体の圧力との圧力差によってシャフト45が回転することによって発電機6が発電する。コンバータ15は、発電機6を制御する。制御装置3は、ランキンサイクル装置2の始動運転を実行する。
【0125】
始動運転では、第1回転運転、第2回転運転及び第3回転運転がこの順に実行される。第1回転運転では、シャフト45の回転が開始するように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第2回転運転では、第2回転運転の終了時点における発電機6の電流の大きさが第2回転運転の開始時点における発電機6の電流の大きさよりも小さくなるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第3回転運転では、シャフト45が圧力差により回転しかつシャフト45の回転数が制御されるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。ここで、上記圧力差は、膨張機10の入口における作動流体の圧力と膨張機10の出口における作動流体の圧力との間に圧力差である。この構成は、ランキンサイクル装置2の始動の信頼性を向上させることに適している。
【0126】
具体的には、上記の構成によれば、第1回転運転においては電流の大きさを大きくし易く、一方、第3回転運転への移行直後における電流の大きさを小さくし易い。第1回転運転において電流の大きさを大きくし易いため、第1回転運転においてシャフト45の回転の開始をアシストし易い。一方、第3回転運転への移行直後において電流の大きさを小さくし易いため、シャフト45の回転数が一時的に想定を上回るオーバーシュートの程度を抑制し易い。
【0127】
なお、第3回転運転において、シャフト45の回転数が低下するように、発電機6のロータ6Xの回転にブレーキがかかることもある。第3回転運転への移行直後において電流が過度に大きいと、このブレーキが過度にかかり、シャフト45の回転数が過度に低くなることがありうる。つまり、シャフト45の失速を招きうる。しかし、上記の構成によれば、第3回転運転への移行直後において電流の大きさを小さくし易いため、このような事態を回避し易い。
【0128】
上述のように、第2回転運転により、第3回転運転の開始時点における発電機6の電流の大きさが、第1回転運転の終了時点における発電機6の電流の大きさよりも小さくなりうる。第3回転運転が行われる期間の全期間における発電機6の電流の大きさが、第1回転運転が行われる期間の全期間における発電機6の電流の大きさよりも小さくてもよい。
【0129】
膨張機10は、レシプロ式膨張機である。レシプロ式膨張機は、始動に必要なトルクが大きい膨張機である。また、レシプロ式膨張機は、始動に必要なトルクがばらつき易い膨張機である。また、レシプロ式膨張機は、得られる回生トルクが大きい膨張機である。これらのことは、膨張機10がレシプロ式膨張機である場合、始動運転における膨張機10のトルクが変動し易いことを意味する。このため、膨張機10がレシプロ式膨張機である場合には、本開示に係る始動運転によりランキンサイクル装置の始動の信頼性が向上するという効果を享受し易い。
【0130】
膨張機10がレシプロ式膨張機である場合における膨張機10の始動に必要な力行トルクのばらつきについて、詳細に説明する。図7の例では、ピストンの数が6つの6気筒の構成が採用されている。図7の例では、機械角にして360°÷6=60°毎に、膨張機10を始動するのに必要なトルクが極大となる極大位置が現れる。例えば、第2回転運転開始時におけるバルブ37の回転位置を、図7の状態から時計回りにずらしていくことを考える。時計回りにずらしていくと、膨張機10を動かすのに必要なトルクは増大していく。そして、吐出溝41が作動室38CSに連通する直前に、シャフト45の位置は極大位置となる。極大位置を超え、吐出溝41が作動室38CSに連通すると、膨張機10を動かすのに必要なトルクは低下する。このことから理解されるように、始動運転を開始する前のバルブ37の位置により、膨張機10の始動に必要な力行トルクがばらつくのである。必要なトルクのばらつきは、膨張機10の始動を不安定にしうる。しかし、第1回転運転により膨張機10における膨張機構内の圧力の均一性を高めることができる。このことは、膨張機10を始動する際に必要なトルクのばらつきを抑制し、膨張機10の始動の不安定を緩和しうる。このため、この構成は、ランキンサイクル装置2における膨張機10の始動の信頼性を向上させることに適している。より詳細には、ランキンサイクル装置2の始動運転を実行する前において、膨張機10内に、大きな負圧を有する領域が偏在することがある。例えば、図7の例では、作動室38BS及び38CSが、そのような領域に該当する。しかし、第1回転運転によれば、この偏在が緩和され、膨張機10内の圧力が全体として均一化されうる。
【0131】
始動運転では、第1回転運転を実行する前に、禁止運転が実行される。禁止運転では、膨張機10が作動流体を膨張させることを禁止するように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。この構成によれば、禁止運転により、作動流体の液体成分が膨張機10に流入することを防止できる。このことは、膨張機10の信頼性を向上させる観点から有利である。具体的には、仮に、液体成分を含む作動流体が膨張機10に吸い込まれるとする。この場合、液体成分は、膨張機10から潤滑オイルを吐出させ、膨張機10における潤滑オイルの不足を招く。潤滑オイルの不足は、膨張機10の摩耗を早めたり、膨張機10における損失を大きくしたりする。また、膨張機10がターボ型膨張機のような潤滑オイルを使用しない膨張機である場合、液体の作動流体は、膨張機10の物理的な腐食を招く。しかし、この構成によれば、このような事態を回避できる。
【0132】
ここで、流体回路5における蒸発器9よりも下流側かつ膨張機10よりも上流側における部分を、特定流路5xと定義する。禁止運転が行われる期間は、ポンプ8が動作しており、かつ、特定流路5xにおける作動流体に液体成分が含まれている期間を含みうる。第1回転運転が行われる期間では、禁止運転が行われる期間に比べ、特定流路5xにおける作動流体の温度が高い。第1回転運転が行われる期間では、禁止運転が行われる期間に比べ、特定流路5xにおける作動流体に含まれる液体成分は少ない。第1回転運転が行われる期間において、特定流路5xにおける作動流体が液体成分を含んでいなくてもよい。
【0133】
禁止運転では、コンバータ15を用いて発電機6に直流電流を流すことによって、ロータ6Xを拘束し、これによりシャフト45を拘束する。この構成によれば、ロータ6X及びシャフト45を拘束するための拘束力を確保し易い。
【0134】
第1回転運転が行われる期間は、発電機6の電流の大きさが一定に維持される期間を含む。この構成によれば、第1回転運転が安定し易い。このことは、膨張機10の始動の安定性向上に寄与しうる。図8の例では、第1回転運転が行われる期間の全期間において、発電機6の電流の大きさが一定に維持される。ただし、第1回転運転が行われる期間の一部の期間のみにおいて、発電機6の電流の大きさが一定に維持されてもよい。
【0135】
第1回転運転が行われる期間は、シャフト45の回転速度が上昇する期間を含む。第1回転運転が行われる期間の全期間がシャフト45の回転速度が上昇する期間であってもよく、第1回転運転が行われる期間の一部の期間のみがシャフト45の回転速度が上昇する期間であってもよい。
【0136】
第1回転運転が行われる期間は、力行期間を含む。力行期間は、第1回転運転の開始時点を含む。制御装置3は、力行期間において、発電機6が力行駆動を行うように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。この構成によれば、膨張機10の始動をアシストし易い。第1回転運転が行われる期間の全期間が力行期間であってもよく、第1回転運転が行われる期間の一部の期間のみが力行期間であってもよい。
【0137】
第1回転運転では、回転磁界が形成されることによってロータ6Xが回転し、これによりシャフト45が回転する。この構成の具体例は、以下のとおりである、すなわち、発電機6は、周方向に並んだ複数の巻線を有する。第1回転運転では、複数の巻線への通電状態が切り替わり回転磁界が形成されることによって、ロータ6Xが回転する。典型的には、ロータ6Xは、回転磁界の回転に応じて回転する。
【0138】
第1回転運転では、予め定められた回転を行う回転磁界が形成されることによってロータ6Xが回転し、これによりシャフト45が回転する。この構成は、第1回転運転の制御構成の簡易化に寄与しうる。この構成の具体例は、以下のとおりである、すなわち、発電機6は、周方向に並んだ複数の巻線を有する。第1回転運転では、複数の巻線への通電状態が予め定められたタイミングで切り替わり回転磁界が形成されることによって、ロータ6Xが回転する。
【0139】
第1回転運転では、一定の速度で回転する回転磁界が形成されることによってロータ6Xが回転し、これによりシャフト45が回転する。この構成によれば、第1回転運転においてシャフト45の回転を安定させ易い。このことは、膨張機10の始動の信頼性を向上させうる。具体的には、第2回転運転のみならず、第1回転運転にも、膨張機10の入口における作動流体の圧力と膨張機10の出口における作動流体の圧力の圧力差は存在しうる。この構成によれば、第1回転運転において回転磁界が一定の速度で回転するため、第1回転運転由来のトルクを安定させ易い。このため、第1回転運転由来のトルクと上記の圧力差に基づくトルクとの合計トルクも安定し易い。この構成の具体例は、以下のとおりである、すなわち、発電機6は、周方向に並んだ複数の巻線を有する。第1回転運転では、複数の巻線への通電状態が一定の期間毎に切り替わり回転磁界が形成されることによって、ロータ6Xが回転する。
【0140】
第1回転運転における発電機6の回転数は、第2回転運転における発電機6の回転数よりも低い。この構成によれば、回転磁界の回転へのロータ6Xの回転の追従性を高め易い。このため、第1回転運転により膨張機10の始動の信頼性が向上するという効果を享受し易い。
【0141】
発電機6は、同期発電機である。発電機6が同期発電機である構成では、第1回転運転において発電機6の電流の大きさが小さい場合に、発電機6のロータ6Xの回転位置が発電機6に印加される電流の位相に同期しきらず、これらの間にずれが生じうる。しかし、本開示に係る始動運転では、第1回転運転において発電機6の電流の大きさを大きくし易い。このような理由で、この構成では、本開示に係る始動運転によりランキンサイクル装置の始動の信頼性が向上するという効果を享受しうる。
【0142】
第1回転運転において発電機6に印加される第1電流I1の大きさは、禁止運転において発電機6に印加される直流電流の大きさ以上である。この構成によれば、回転磁界の回転へのロータ6Xの回転の追従性を高め易い。このため、第1回転運転により膨張機10の始動の信頼性が向上するという効果を享受し易い。具体的には、第1回転運転において発電機6に印加される第1電流I1の大きさは、禁止運転において発電機6に印加される直流電流の大きさよりも大きい。なお、第1電流I1の大きさは、発電機6に印加される交流電流の振幅に対応しうる。発電機6に印加される交流電流は、図8を参照して説明した疑似的な交流電流を包含する概念である。
【0143】
第2回転運転が行われる期間は、非ゼロの長さの電流低下期間を含む。電流低下期間では、発電機6の電流の大きさが低下する。この構成によれば、発電機6の電流の大きさがある時点で第2回転運転の最大値から最小値までステップ状に低下する構成に比べ、第2回転運転が安定し易い。このことは、膨張機10の始動の安定性向上に寄与しうる。第2回転運転が行われる期間の全期間が電流低下期間であってもよく、第2回転運転が行われる期間の一部の期間のみが電流低下期間であってもよい。なお、発電機6の電流の大きさがある時点で第2回転運転の最大値から最小値までステップ状に低下する構成を採用することも可能である。
【0144】
第2回転運転では、発電機6の駆動状態が回生駆動から力行駆動に切り替わることが回避されるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。この構成によれば、第2回転運転において発電機6の力行駆動が行われる期間を制限できる。このことは、ロータ6X、シャフト45及び斜板43等の回転系に与えるストレスを抑制する観点から有利である。
【0145】
一具体例では、第2回転運転が行われる期間の途中で発電機6の駆動状態が力行駆動から回生駆動に切り替わり、第2回転運転のその後の全期間にわたって発電機6の回生駆動が継続される。ただし、第2回転運転が行われる期間の全期間において、発電機6の回生駆動が継続されることもありうる。
【0146】
発電機6の駆動状態が回生駆動から力行駆動に切り替わることを回避する観点からは、長い期間にわたって第2回転運転を行い、発電機6の電流の大きさをゆっくりと低下させることが有利である。一方、第3回転運転に素早く移行する観点からは、第2回転運転において発電機6の電流の大きさを急低下させ、第2回転運転が行われる期間を短くすることが有利である。
【0147】
第3回転運転に素早く移行する利点の1つに、オイル室46から膨張機10にオイルを素早く供給できることが挙げられる。具体的には、第2回転運転では、シャフト45を十分に高い回転数で回転させることは必ずしも容易ではない。これに対し、第3回転運転では、シャフト45を高い回転数で回転させ易い。このため、第2回転運転が行われる期間を短くして第3回転運転に素早く移行すれば、シャフト45の回転数が十分に高い状態を素早く実現し、オイル室46から膨張機10にオイルを素早く供給し易い。これにより、膨張機10における潤滑が必要な箇所にオイルを素早く行き渡らせることができる。
【0148】
第1の例では、第2回転運転が行われる期間の長さは、第2回転運転が開始される前に設定されている。第1の例は、第2回転運転の制御をシンプルにする観点から有利である。具体的には、第1の例において、第2回転運転における時間経過に対する発電機6の電流の大きさの変化の比率は、第2回転運転が開始される前に設定されている。この比率は、第2回転運転が行われる所定長さの期間で発電機6の電流が第1電流I1から第2電流I2まで変化するように設定されうる。この比率は、図8の期間Cにおける電流波形の包絡線の傾きに対応しうる。第1の例では、目標電流プロファイルが第2回転運転が開始される前に設定されており、第2回転運転では目標電流プロファイルに従って発電機6に電流が印加されるようにコンバータ15を用いて発電機6を制御するとも言える。ここで、電流プロファイルは、時間に対する発電機6の電流の関係である。目標電流プロファイルは、電流プロファイルの目標値である。
【0149】
第1の例は、例えば、シャフト45の回転加速度が高いときに採用されうる。シャフト45の回転加速度が高いときであれば、第2回転運転が行われる期間の長さを短くしても、発電機6の駆動状態が回生駆動から力行駆動に切り替わることが回避されうる。また、この期間を短くすることにより、第3回転運転に素早く移行することができる。ただし、第1の例を、シャフト45の回転加速度が低いときに採用してもよい。
【0150】
第1の例では、第2回転運転が行われる期間の長さすなわち上記の所定長さは、第2回転運転が開始される前のシャフト45の回転加速度に応じて設定されうる。
【0151】
第1の例では、上記の所定長さは、第2回転運転が開始される前の発電機6の電流の検出値に応じて設定されうる。具体的には、第2回転運転が開始される前のシャフト45の回転加速度は、第2回転運転が開始される前の発電機6の電流の検出値に基づいて演算されうる。上記の所定長さは、その演算値に応じて設定されうる。発電機6の電流の検出値は、電流センサ24により取得されうる。上記の所定長さを、第2回転運転が開始される前の温度センサ12の検出値に応じて設定することも可能である。
【0152】
第1の例において、ランキンサイクル装置2の始動運転の開始前から制御装置3の記憶装置に上記の所定長さが記憶されていてもよい。この場合、第2回転運転を開始する際に、制御装置3は、記憶装置から上記の所定長さを読み出すことができる。
【0153】
第2の例では、第2回転運転が行われる期間の長さは、第2回転運転におけるシャフト45の回転加速度に応じて変化する。第2の例によれば、作動流体の圧力のような、発電装置1の外部の影響で変動しうるパラメータに応じて第2回転運転が行われる期間の長さを調整できる。具体的には、第2の例では、第2回転運転における時間経過に対する発電機6の電流の大きさの変化の比率は、第2回転運転におけるシャフト45の回転加速度に応じて変化する。例えば、シャフト45の回転加速度が小さいほど、上記比率を小さくすることによって発電機6の電流の大きさをゆっくりと低下させることが可能である。第2の例では、第2回転運転では発電機6の電流プロファイルは第2回転運転におけるシャフト45の回転加速度に応じて変化するとも言える。
【0154】
第2の例は、例えば、シャフト45の回転加速度が低いときに採用されうる。第2の例によれば、シャフト45の回転加速度が低いときにおいて、発電機6の駆動状態が回生駆動から力行駆動に切り替わることを回避しつつ、できるだけ第2回転運転が行われる期間を短くして第3回転運転への移行のタイミングを早めることができる。ただし、第2の例を、シャフト45の回転加速度が高いときに採用してもよい。
【0155】
第2の例では、第2回転運転が行われる期間の長さは、第2回転運転における発電機6の電流の検出値に応じて変化しうる。具体的には、第2回転運転におけるシャフト45の回転加速度は、第2回転運転における発電機6の電流の検出値に基づいて演算されうる。第2回転運転が行われる期間の長さは、その演算値に応じて変化しうる。第2回転運転が行われる期間の長さを、第2回転運転における温度センサ12の検出値に応じて変化させることも可能である。
【0156】
第2回転運転が行われる期間は、膨張機10の入口における作動流体の圧力と膨張機10の出口における作動流体の圧力の圧力差によってシャフト45の回転数が上昇する期間を含む。この構成によれば、シャフト45の回転数が高い状態において第3回転運転へと移行させ易い。このことは、第3回転運転においてロータ6の回転位置の推定に基づいた制御を行う場合に、その推定精度を高める観点から有利である。図8の例では、第2回転運転が行われる期間の全期間において、上記圧力差によってシャフト45の回転数が上昇する。ただし、第2回転運転が行われる期間の一部の期間のみにおいて、上記圧力差によってシャフト45の回転数が上昇してもよい。
【0157】
第3回転運転では、特定制御が開始される。特定制御では、推定されたロータ6Xの回転位置に基づいてロータ6Xの回転数を制御する。特定制御は、位置センサレス制御でありうる。典型例に係る特定制御では、発電機6に印加される電流の大きさに対する発電機6のトルクの比率が高くなり易い。この点、この構成では、第3回転運転の開始時点における発電機6の電流の大きさを小さくし易い。このため、この構成では、本開示に係る始動運転によりランキンサイクル装置の始動の信頼性が向上するという効果を享受し易い。
【0158】
図3の例では、特定制御では、発電機6の電流の検出値に基づいて推定されたロータ6Xの回転位置に基づいてロータ6Xの回転数を制御する。
【0159】
第3回転運転では、ロータ6Xの回転数が目標回転数ω*に追従するように、コンバータ15を用いてロータ6Xの回転数のフィードバック制御を実行する。この構成では、シャフト45の回転数が、一旦目標回転数ω*を上回り、その後目標回転数ω*に収束しうる。このため、この構成では、本開示に係る始動運転により回転数のオーバーシュートを抑制しランキンサイクル装置の始動の信頼性が向上するという効果を享受しうる。図3の例では、フィードバック制御は、電流指令生成部31において行われうる。具体的には、電流指令生成部31は、フィードバック制御によって、推定回転数ωeが目標回転数ω*に追従するようにγ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *を生成する。フィードバック制御は、例えば、比例制御、積分制御及び微分制御から選択される少なくとも1つを含みうる。また、フィードバック制御は、発電機6の電流の検出値に基づいて行われうる。フィードバック制御は、第3回転運転において開始されうる。
【0160】
第3回転運転が行われる期間は、発電機6の電流の大きさが一定に維持される期間を含む。この構成によれば、第3回転運転が安定し易い。このことは、膨張機10の始動の安定性向上に寄与しうる。図8の例では、第3回転運転が行われる期間の全期間において、発電機6の電流の大きさが一定に維持される。ただし、第3回転運転が行われる期間の一部の期間のみにおいて、発電機6の電流の大きさが一定に維持されてもよい。
【0161】
第2回転運転の開始時点における発電機6の電流の大きさに対する第2回転運転の終了時点における発電機6の電流の大きさの比率は、例えば、0.1以上1.0未満である。この比率は、0.2以上1.0未満であってもよい。この比率を小さくすると、第3回転運転への移行時における発電機6の電流を小さくし易い。このことは、第3回転運転において生じうる回転数のオーバーシュートの程度を小さくする観点から有利である。一方、この比率を適度に大きくすると、第3回転運転において発電機6の電流の大きさある程度確保できる。このことは、第3回転運転において発電機6の電流の検出値に基づいて発電機6を制御するのに好都合である。例えば、このことは、第3回転運転において発電機6の電流の検出値に基づいてロータ6Xの回転位置を推定する場合において、その推定精度を確保する観点から有利である。
【0162】
第1電流I1の大きさに対する第2電流I2の大きさの比率は、例えば、0.1以上1.0未満である。この比率は、0.2以上1.0未満であってもよい。
【0163】
第2回転運転の終了時点における発電機6の電流の大きさは、禁止運転において発電機6に印加される直流電流の大きさ以下である。具体的には、第2回転運転の終了時点における発電機6の電流の大きさは、禁止運転において発電機6に印加される直流電流の大きさよりも小さい。
【0164】
第3回転運転の開始時点における発電機6の電流の大きさは、禁止運転において発電機6に印加される直流電流の大きさ以下である。具体的には、第3回転運転の開始時点における発電機6の電流の大きさは、禁止運転において発電機6に印加される直流電流の大きさよりも小さい。
【0165】
第2電流I2の大きさは、禁止運転において発電機6に印加される直流電流の大きさ以下である。具体的には、第2電流I2の大きさは、禁止運転において発電機6に印加される直流電流の大きさよりも小さい。なお、第2電流I2の大きさは、発電機6に印加される交流電流の振幅に対応しうる。
【0166】
図8の例では、禁止運転から第1回転運転への移行は、直接的に行われる。第1回転運転から第2回転運転への移行は、直接的に行われる。第2回転運転から第3回転運転への移行は、直接的に行われる。第3回転運転から通常運転への移行は、直接的に行われる。
【0167】
ただし、禁止運転から第1回転運転への移行は、間接的に行われてもよい。第1回転運転から第2回転運転への移行は、間接的に行われてもよい。第2回転運転から第3回転運転への移行は、間接的に行われてもよい。第3回転運転から通常運転への移行は、間接的に行われてもよい。なお、ある運転から別の運転への移行が間接的に行われるとは、それらの運転の間にさらに別の運転が介在することを意味する。
【0168】
制御装置3が実行する始動運転では、第1回転運転、第2回転運転及び第3回転運転がこの順に実行される。第1回転運転では、シャフト45の回転が開始するように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第2回転運転では、第2回転運転の終了時点における発電機6の電流の大きさが第2回転運転の開始時点における発電機6の電流の大きさよりも小さくなるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第3回転運転では、圧力差が存在するときにシャフト45が該圧力差により回転することが許可されかつシャフト45の回転数が制御されるように、コンバータ15を用いて発電機を制御6する。ここで、上記圧力差は、膨張機10の入口における作動流体の圧力と膨張機10の出口における作動流体の圧力との間に圧力差である。
【0169】
ランキンサイクル装置2の始動方法は、第1回転運転を実行することと、第1回転運転を実行した後に第2回転運転を実行することと、第2回転運転を実行した後に第3回転運転を実行することと、を含む。第1回転運転では、シャフト45の回転が開始するように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第2回転運転では、第2回転運転の終了時点における発電機6の電流の大きさが第2回転運転の開始時点における発電機6の電流の大きさよりも小さくなるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第3回転運転では、シャフト45が圧力差により回転しかつシャフト45の回転数が制御されるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。ここで、上記圧力差は、膨張機10の入口における作動流体の圧力と膨張機10の出口における作動流体の圧力との間に圧力差である。
【0170】
ランキンサイクル装置2の始動方法は、以下のようにも説明されうる。すなわち、ランキンサイクル装置2の始動方法は、第1回転運転を実行することと、第1回転運転を実行した後に第2回転運転を実行することと、第2回転運転を実行した後に第3回転運転を実行することと、を含む。第1回転運転では、シャフト45の回転が開始するように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第2回転運転では、第2回転運転の終了時点における発電機6の電流の大きさが第2回転運転の開始時点における発電機6の電流の大きさよりも小さくなるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。第3回転運転では、圧力差が存在するときにシャフト45が該圧力差により回転することが許可されかつシャフト45の回転数が制御されるように、コンバータ15を用いて発電機6を制御する。
【0171】
コンピュータによる実行時において、ランキンサイクル装置2の上記始動方法をコンピュータに実行させる指示を備えた、コンピュータプログラムを実現可能である。上記コンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体を実現可能である。記録媒体は、オフラインの記録媒体であってもよく、オンライン上の記録媒体であってもよい。オフラインの記録媒体は、例えば、HDD、SDカード、USBメモリ等の半導体記録媒体、フレキシブルディスク等の磁気記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、CD、DVD等の光学記録媒体、等である。オンライン上の記録媒体は、例えば、クラウドサーバー、FTPサーバー、ネットワークストレージ等である。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本開示は、膨張機を用いた熱発電装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0173】
1 発電装置
2 ランキンサイクル装置
3 発電制御装置
4 電力系統
5 流体回路
5x 特定流路
6 発電機
6A 永久磁石
6X ロータ
6Y ステータ
7 電動機
8 ポンプ
9 蒸発器
10 膨張機
10h 筐体
11 凝縮器
12 温度センサ
13 バイパス路
14 バイパス弁(開閉装置)
15 コンバータ
16 ポンプ用駆動回路
17 系統連系用電力変換器
18 制御器
19、20 3相配線
21 直流配線
22 コンバータ回路部
23 コンバータ制御部
24 電流センサ
25 プラス側配線
26 マイナス側配線
27 U相配線
28 V相配線
29 W相配線
30 制御信号
31 電流指令生成部
32 電圧指令生成部
33A、38B 座標変換部
34 PWM信号生成部
35 位置・回転数推定部
36 吸入口
37 バルブ
38A~38F ピストン
38AS~38FS 作動室
39 吐出口
40 吸入溝
41 吐出溝
42 シリンダブロック
43 斜板
44 吐出管
45 シャフト
46 オイル室
47 駆動回路部
48 駆動回路制御部
49 電流センサ
50 制御信号
51 系統連系回路部
52 系統連系制御部
53 出力フィルタ
54 電圧センサ
55 出力電流センサ
56 系統電圧センサ
57 出力回路
58 制御信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10