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特開2022-139628水流揚鉱システムおよびこれを用いた水流揚鉱方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139628
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】水流揚鉱システムおよびこれを用いた水流揚鉱方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 23/10 20060101AFI20220915BHJP
   F04B 15/02 20060101ALI20220915BHJP
   E21C 50/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F04B23/10
F04B15/02 Z
E21C50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040105
(22)【出願日】2021-03-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)経済産業省資源エネルギー庁 令和2年度 海洋鉱物資源開発に向けた資源量評価・生産技術等調査、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504117958
【氏名又は名称】独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】林元 和智
【テーマコード(参考)】
2D065
3H071
3H075
【Fターム(参考)】
2D065FA12
2D065FA23
3H071AA01
3H071AA13
3H071AA15
3H071BB15
3H071CC11
3H071CC35
3H071DD14
3H071DD31
3H075AA12
3H075BB02
3H075BB20
3H075BB21
3H075CC25
3H075CC37
3H075DA09
3H075DA24
(57)【要約】
【課題】海洋資源の移送効率を向上させるとともにメンテナンス性に優れた水流揚鉱システムおよびこれを用いた水流揚鉱方法を提供する。
【解決手段】この水流揚鉱システム300Aは、往路水流管311および復路水流管312を有するとともに往路水流管311から復路水流管312に向かう水流を形成するように構成される循環管路310と、往路水流管311に高圧水を注入可能に設置される高圧ポンプ320と、揚鉱機器200Aによる海洋資源を復路水流管312に注入可能に設置されるピストンポンプ1と、ピストンポンプ1で注入された海洋資源を復路水流管312から回収可能に設置される回収ホッパ330と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋資源を水流中に注入して移送する水流揚鉱システムであって、
往路水流管および復路水流管を有するとともに前記往路水流管から前記復路水流管に向かう水流を形成するように構成される循環管路と、
前記往路水流管に高圧水を注入可能に設置される高圧ポンプと、
前記海洋資源を前記循環管路に注入可能に設置されるピストンポンプと、
前記海洋資源を前記復路水流管から回収可能に設置される回収ホッパと、
を備えることを特徴とする水流揚鉱システム。
【請求項2】
前記海洋資源は、海底の鉱床で掘削された鉱石であり、
前記高圧ポンプは、前記往路水流管に高圧水を注入可能に洋上基地に設置され、
前記ピストンポンプは、前記海洋資源を前記循環管路に注入可能に海底またはその近傍に配置される揚鉱機器に設置され、
前記循環管路は、前記往路水流管が前記洋上基地から前記揚鉱機器まで延設されるとともに、前記復路水流管が前記揚鉱機器から前記洋上基地の前記回収ホッパに前記海洋資源を回収可能に延設され、前記洋上基地から前記揚鉱機器側に向かう水流を再び前記洋上基地まで戻す水流を形成するように構成されている請求項1に記載の水流揚鉱システム。
【請求項3】
前記ピストンポンプは、当該ピストンポンプ内の前記海洋資源を前記復路水流管に注入可能に前記復路水流管に接続される吐出配管と、該吐出配管の側からの前記海洋資源の逆流を防止する逆流防止機構と、を有する請求項1または2に記載の水流揚鉱システム。
【請求項4】
前記ピストンポンプは、当該ピストンポンプ内の前記海洋資源を前記復路水流管に注入可能に前記復路水流管に接続される吐出配管を有し、
前記復路水流管には、当該復路水流管に前記吐出配管が接続された箇所に対向する位置に、前記吐出配管が接続された箇所を開閉する逆止弁機構が配設されている請求項1または2に記載の水流揚鉱システム。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載の水流揚鉱システムを用いて海洋資源を移送する方法であって、
前記ピストンポンプにより前記循環管路に海洋資源を注入し、その海洋資源を前記循環管路の水流に乗せて洋上基地まで移送することを特徴とする水流揚鉱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば海底熱水鉱床で採鉱される鉱石などの海洋資源を海底から揚鉱する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種産業機器を製造する上で必要不可欠な金属であり存在量が少ない有用金属の価格が高騰している。有用金属は産業上必要不可欠なものである。しかし、可採量が少ないだけでなく、産出国が限られているため地政学的リスクが存在している。そこで、有用金属含有鉱物の中でも、海底熱水鉱床などに存在する海洋資源が注目されている。
【0003】
海底熱水鉱床などから海洋資源を揚鉱する方法として、揚鉱ポンプを用いたポンプリフト方式が試みられている。これまで、この種の鉱床において、ドラムカッタやカッタヘッド等の掘削ヘッドを備えた採鉱機により海中で鉱石を破砕し、その破砕した鉱石の礫を海中でスラリとし、そのスラリを揚鉱ポンプに向けて移送する採鉱装置が提案されている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】海底熱水鉱床開発計画 第一期最終評価報告書(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、海底熱水鉱床の鉱石を移送する揚鉱ポンプとしては、多段遠心ポンプが採用されている。多段遠心ポンプは、複数のインペラと複数のボリュート室とを有する複雑な接液部形状となっており、接液部品は、スーパー2相ステンレスや高クロム鋳鉄等が採用される。
【0006】
しかしながら、陸上での遠心ポンプを用いたスラリ移送では、接液部品が摩耗した場合、その場所での接液部品の交換も可能であるものの、海底熱水鉱床などの海洋資源が存在する深海からの多段遠心ポンプを用いたスラリ移送にあっては、接液部品を交換する場合、深海から船上に多段遠心ポンプを引き上げて部品の交換作業を行う必要がある。
そのため、商業化レベルでの稼働においては、複雑な接液部形状を持つ多段遠心ポンプの接液部品が早期摩耗した場合、接液部品の交換に多くの時間と費用が必要なことが問題と考えられている。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、海洋資源の移送効率を向上させるとともにメンテナンス性に優れたシンプルな構成で海底から洋上までの揚鉱が可能な、水流揚鉱システムおよびこれを用いた水流揚鉱方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る水流揚鉱システムは、海洋資源を水流中に注入して移送する水流揚鉱システムであって、往路水流管および復路水流管を有するとともに前記往路水流管から前記復路水流管に向かう水流を形成するように構成される循環管路と、前記往路水流管に高圧水を注入可能に設置される高圧ポンプと、前記海洋資源を前記循環管路に注入可能に設置されるピストンポンプと、前記海洋資源を前記復路水流管から回収可能に設置される回収ホッパと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る水流揚鉱システムによれば、高圧ポンプから圧送される高圧水により、往路水流管から復路水流管に向かう水流をつくり、その水流中にピストンポンプで海洋資源を注入して海洋資源を移送するという、水流を利用した移送システムを構築している。これにより、極めてシンプルな構成によって海洋資源の長距離移送が可能になる。よって、海洋資源の移送効率を向上させるとともにメンテナンス性に優れている。
【0010】
ここで、本発明の一態様に係る水流揚鉱システムにおいて、前記海洋資源は、海底の鉱床で掘削された鉱石であり、前記高圧ポンプは、前記往路水流管に高圧水を注入可能に洋上基地に設置され、前記ピストンポンプは、前記海洋資源を前記循環管路に注入可能に海底またはその近傍に配置される揚鉱機器に設置され、前記循環管路は、前記往路水流管が前記洋上基地から前記揚鉱機器まで延設されるとともに、前記復路水流管が前記揚鉱機器から前記洋上基地の前記回収ホッパに前記海洋資源を回収可能に延設され、前記洋上基地から前記揚鉱機器側に向かう水流を再び前記洋上基地まで戻す水流を形成するように構成されていることは好ましい。
【0011】
このような構成であれば、洋上基地に設置した高圧ポンプから圧送される高圧水により洋上基地と揚鉱機器との間に往路水流管から復路水流管に向かう水流をつくり、揚鉱機器に配置したピストンポンプで海洋資源を水流中に注入して海洋資源を移送する、水流を利用した移送システムを構築できる。
そのため、極めてシンプルな構成によって、揚鉱機器から洋上基地までの海洋資源の長距離移送が可能になる。そして、洋上基地と揚鉱機器との間の水流をつくるための高圧ポンプは洋上基地に設置されるため、そのメンテナンスが容易である。さらに、この高圧ポンプは、専ら海水を圧送する運転なので、接液部品の摩耗は極めて少なく、多段遠心ポンプによる鉱石圧送の場合のような接液部品の早期摩耗が生じるおそれがほとんどない。そのため、メンテナンス費用も大幅に削減できる。
【0012】
さらに、循環管路の水流中に海洋資源を注入するために、揚鉱機器に配置したピストンポンプは、摺動部品の定期的な交換は必要なものの、メンテナンスを必要とするポンプとしては、海洋資源を水流中に注入するピストンポンプが一台のみで済む。
そのため、運転管理の簡便化が図れるうえ、シンプルな構成によって海洋資源を水流中に注入可能である。よって、多段遠心ポンプで海洋資源のスラリを圧送する場合と比較して、部品の交換作業をするメンテナンス頻度が少なく、稼働効率を向上させることができる。
【0013】
また、多段遠心ポンプで鉱石スラリを圧送する場合、圧送可能なスラリ濃度は15vol%以下であって、さらに安全をみると10vol%以下に制限されるところ、本発明の一態様に係る水流揚鉱システムであれば、圧送可能なスラリ濃度が15vol%以上の高濃度スラリであっても移送可能となる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る水流揚鉱方法は、本発明の一態様に係る水流揚鉱システムを用いて海洋資源を移送する方法であって、前記ピストンポンプにより前記循環管路に海洋資源を注入し、その海洋資源を前記循環管路の水流に乗せて洋上基地まで移送することを特徴とする。
本発明の一態様に係る水流揚鉱方法によれば、本発明の一態様に係る水流揚鉱システムを用いて、海底で掘削した鉱石等の海洋資源を循環管路の水流に乗せて洋上基地まで移送するので、海洋資源の移送効率を向上させることができるとともにメンテナンス性に優れている。
【発明の効果】
【0015】
上述のように、本発明によれば、海洋資源の移送効率を向上させるとともにメンテナンス性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一態様に係る水流揚鉱システムを用いた水流揚鉱方法の第一実施形態を示す模式的全体構成図である。
図2】本発明の一態様に係る逆流防止機構付のピストンポンプの一実施形態の縦断面図である。
図3図2のピストンポンプをポンプシリンダ側から見たY-Y断面図である。
図4】スラスト荷重を受けるウェアプレートの支持部部分の構造を説明する図であり、同図(a)は図2の要部拡大図、(b)は図2(a)のZ-Z断面図である。
図5図2に示すピストンポンプにおける逆流防止機構の作動説明図(a)、(b)、(c)であり、同図は、図2のX-X断面から見た動作のイメージを示している。
図6】従来の揺動管方式のピストンポンプの一例を説明する縦断面図である。
図7】従来の揺動管方式のピストンポンプの作動説明図(a)、(b)、(c)であり、各図はポンプシリンダ側から見た断面を示している。
図8】本発明に係る水流揚鉱システムの循環管路への鉱石の注入装置として、逆流防止機構を有しないピストンポンプと逆止弁とを用いた、第二実施形態の水流揚鉱システムの全体構成図である。
図9】第二実施形態の水流揚鉱システムにおいて、逆流防止機構を有しないピストンポンプのスイングバルブの切り替え時に、逆止弁を閉じた状態の説明図である。
図10】第二実施形態の水流揚鉱システムにおいて、逆止弁を開いた状態にて、逆流防止機構を有しないピストンポンプで循環管路に鉱石を注入する状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0018】
まず、第一実施形態の水流揚鉱システムおよびこれを用いた水流揚鉱方法について説明する。本実施形態は、図1に示すように、海底SBの海底熱水鉱床Tを、採鉱機(不図示)を用いて掘削し、海洋資源である掘削した鉱石を、本発明に係る水流揚鉱システム300Aによって洋上SLの洋上基地Gまで揚鉱する水流揚鉱方法である。
水流揚鉱システム300Aは、同図に示すように、洋上基地Gから海底SBに垂下される揚鉱機器200Aと、循環管路310と、を備える。揚鉱機器200Aには、逆流防止機構付きのピストンポンプ1が装備されている。循環管路310は、海底SBの近傍まで延設された往路水流管311と、海底SBの近傍から洋上基地Gまで延設された復路水流管312と、を有する。
【0019】
洋上基地Gは例えば船舶であり、洋上基地Gには高圧ポンプ320が設置されている。本実施形態の水流揚鉱システム300Aは、この高圧ポンプ320で往路水流管311に高圧水を注入して、往路水流管311により洋上基地Gから海底SBに向かう水流を、復路水流管312で再び洋上基地Gまで戻す循環流が形成されるようになっている。
さらに、本実施形態の水流揚鉱システム300Aは、復路水流管312に対して、逆流防止機構付きのピストンポンプ1で掘削した鉱石を注入して、循環管路310の水流に乗せて鉱石を洋上基地Gまで移送するように構成されている。
【0020】
より詳しくは、同図に示すように、本実施形態の水流揚鉱システム300Aは、一台のピストンポンプ1が装備された揚鉱機器200Aと、往路水流管311および復路水流管312を有する循環管路310と、洋上基地Gに設置された高圧ポンプ320と、洋上基地Gに設置された回収ホッパ330と、を備える。回収ホッパ330は、海洋資源(この例では、採鉱機器を用いて海底で掘削された鉱石)を復路水流管312から回収可能に設置される。
【0021】
洋上基地Gには、クレーン350が設置され、クレーン350からアンビリカブルケーブル360を介して揚鉱機器200Aに対して、駆動に必要な電力や圧油の供給および信号の授受が可能になっている。
また、洋上基地Gに設置された回収ホッパ330には不図示の分級機が付設され、分級機は鉱石成分と海水とを分けて海水のみをタンク340に導出する。そして、高圧ポンプ320は、タンク340に貯留された海水を、往路水流管311に高圧水として注入可能に設置されている。
【0022】
循環管路310は、往路水流管311から復路水流管312に向かう循環水流を形成するように、洋上基地Gから海底SBの海底熱水鉱床Tの近傍に設置された揚鉱機器200Aまで配管される。ピストンポンプ1は、循環管路310に対して海洋資源を注入可能なように揚鉱機器200Aに設置される。
なお、往路水流管311および復路水流管312の敷設範囲は適宜設定できる。本実施形態では、揚鉱機器200A近傍の、U字状の折り返し部分よりも上流側が往路水流管311であり、U字状の折り返し部分よりも下流側が復路水流管312である。そして、ピストンポンプ1は、復路水流管312に吐出配管6を介して海洋資源を注入可能に揚鉱機器200Aの筐体210内に設置されている。
【0023】
本実施形態の揚鉱機器200Aは、筐体210の上部には、不図示の採鉱機器で掘削した鉱石が投入される投入ホッパ211が設けられ、投入ホッパ211下部の吐出口にはベルトフィーダ等による切り出し装置212が付設されている。
筐体210の内部上方には、スクリューコンベヤ225が配置され、切り出し装置212で切り出された鉱石がスクリューコンベヤ225に導入される。スクリューコンベヤ225の前端部(取出口)は、ピストンポンプ1のホッパ9の後部を貫通してホッパ9内に連通しており、スクリューコンベヤ225の駆動により、ホッパ9に向けて鉱石を所定量ずつ送出可能になっている。
【0024】
第一実施形態のピストンポンプ1は、図2に拡大図示するように、上部に開口するホッパ9を備える。ホッパ9内部には、略S字状に屈曲形成された揺動管2が、揺動可能に収容されている。ホッパ9内の揺動管2は、その基端部2bがホッパ9の前壁1fの下部の位置に回動可能に支持されている。
【0025】
揺動管2の基端部2bには、図1に示す復路水流管312への吐出配管6に接続されるカップリング5が設けられている。カップリング5には、吐出配管6の一端が接続され、揺動管2の基端部2bが吐出配管6に連通するように配置される。
揺動管2の中間部2mの上部には、軸線が水平な揺動管軸10の一端が固定されている。揺動管軸10の一端は、ホッパ9の背壁1bに回動可能に支持される。揺動管軸10の他端は、ホッパ9の背壁1bの外側に延出され、切換レバー11が固着されている。揺動管軸10の回転中心CL1と、揺動管2の基端部2bの回転中心CL2とは、水平な一の揺動軸線CL上にある。
【0026】
ホッパ9の背壁1bの下部には、図3にも示す、一対の吸込吐出口1L、1Rを左右に有するメガネ板8が設けられている。メガネ板8は、揺動管2の先端部2tが、ウェアプレート(wear plate)12を介して摺接する部分に配置されている。メガネ板8は、ホッパ9の背面側から交換可能に装着される。
つまり、揺動管2の先端部2tは、メガネ板8に圧接された状態で摺動するため、本実施形態では、揺動管2の先端部2tには、交換可能なウェアプレート12が取付けられている。メガネ板8およびウェアプレート12には、耐摩耗材が使用されている。
ホッパ9の背部には、メガネ板8の一対の吸込吐出口1L、1Rに対向する位置に、それぞれ一端が開口した一対のポンプシリンダ4L、4Rが、互いの軸線を揺動軸線CLと平行にして取付けられている。
【0027】
一対のポンプシリンダ4L、4Rは、各ポンプシリンダ4L、4R内に搬送ピストン7をそれぞれ有する。各搬送ピストン7は、図1に示す一対の駆動シリンダ15L、15Rによって、油圧駆動で交互に往復動される。
これにより、各ポンプシリンダ4L、4Rは、対応する吸込吐出口1L、1Rが揺動管2との非連通時にはホッパ9内の海洋資源を吸引し、揺動管2との連通時にはその吸引した海洋資源を復路水流管312に向けて吐出するように駆動される。
【0028】
図3に示すように、上記切換レバー11とホッパ9との間には、一対の切換シリンダ3L、3Rがアクチュエータとして取付けられている。一対の切換シリンダ3L、3Rは、切換シリンダ3L、3Rの一方が伸長するとき、他方が縮小するようになっている。
一対の切換シリンダ3L、3Rの伸縮に対応して、揺動管軸10が揺動軸線CLまわりに所定タイミングで回動し、揺動管2が所定の回動範囲にて左右に揺動される。これにより、図2に示す揺動管2の先端部2tが、左右の吸込吐出口1L、1Rのいずれかに臨む位置に交互に移動するようになっている。
【0029】
ここで、本実施形態のピストンポンプ1は逆流防止機構を備える。
本実施形態のピストンポンプ1では、図4に要部を拡大して示すように、揺動管2の先端部2tに、ウェアプレート12の中央の開口部13と同軸となる位置に、円筒状のウェアリング(wear ring)20が装着されている。
そして、本実施形態の逆流防止機構は、図5(b)に示すように、メガネ板8の左右の吸込吐出口1L、1Rの間隔が、ウェアプレート12と一体で回動するウェアリング20の開口部20mの幅以上とされている。
【0030】
ウェアプレート12は、図5に示すように、ウェアプレート12の開口部13(図4参照)の左右両端にシール部14L、14Rを有する。本実施形態のシール部14L、14Rは、揺動管2の回動方向において、メガネ板8に形成された一対の吸込吐出口1L、1Rの開口幅以上の広さにそれぞれ設けられる。なお、本実施形態において、一対の吸込吐出口1L、1Rの開口形状は円形であり、相互の開口径は同一である。
【0031】
本実施形態のウェアリング20は、図4に示すように、揺動管2の先端部2tの内周面に、内周面の端面に対してOリング30を介装してインロー篏合されている。これにより、揺動管2のウェアリング20は、先端部2tの内周面に対して揺動軸線CLの方向にスライド可能になっている。
ウェアリング20の後端面は、メガネ板8の対向面と摺接するように装着される。ウェアリング20の内径の開口形状は円形であり、その開口径は、メガネ板8の一対の吸込吐出口1L、1Rの開口径と同一である。本実施形態のウェアリング20は、図2に示すカップリング5側からの水流による内圧を利用したメカニカルシール機能を奏する。
【0032】
つまり、ウェアリング20は、非連通位置においてカップリング5側からの水流により揺動管2の内圧が上昇すると、Oリング30の介装端面が受圧面となって、ウェアリング20が軸方向背面側に向けて押圧される。これにより、ウェアリング20の後端面がメガネ板8の対向面に向けて押圧されるシール構造になっており、揺動管2の内圧が上がるほどシール力が強くなるように構成されている。
そして、本実施形態のウェアプレート12は、揺動管2の先端部2tの外周面に、当該先端部2tの外周面およびウェアリング20の外周面に対して、揺動軸線CLの方向にスライド可能にインロー篏合される。本実施形態の例では、揺動管2の先端部2tとウェアプレート12の端面との間には、円環状の加圧ピース32が介装される。
【0033】
このように、本実施形態のピストンポンプ1では、ウェアリング20およびウェアプレート12は、揺動管2の先端部2tとの嵌合部が、それぞれインロー関係になっており、組み立てる際は、揺動行程の中間位置(図5(b)の位置)で、搬送ピストン7側から各部品を図2に示されている順に軸方向に嵌め込むことで組み立てられる。
また、本実施形態では、ウェアリング20の開口部20mが、メガネ板8の左右の吸込吐出口1L、1Rに合致する位置においても、ホッパ9側とセットプレート40側とにそれぞれ固定された複数の軌道盤60a,60b,60c,60dに装着された複数の転動体61,62,63,64でウェアプレート12が前後から支承されるように、ウェアプレート12の内周部と外周部がウィング状の形状を呈するように構成している。
【0034】
つまり、本実施形態のピストンポンプ1では、ウェアプレート12は、図3図5に示すように、揺動管2の揺動範囲の全体に亘って、ウェアプレート12の内周側が、円弧状の軌道盤60a,60bに装着された複数の転動体61,62で揺動軸線CLの前後から支承されるとともに、ウェアプレート12の外周側が、円弧状の軌道盤60c,60dに装着された複数の転動体63,64で揺動軸線CLの前後から支承されるように構成されている。
【0035】
本実施形態では、各転動体61,62、63,64には円筒ころが用いられており、各軌道盤60a,60b、60c,60dは、各転動体61,62、63,64を自転自在に保持する保持器とされている。また、各転動体61,62、63,64に対して、ウェアプレート12とは反対の側には、各転動体61,62、63,64に対応する凹の円筒面が形成された複数の受動体65a,65b,65c,65dが介装され、各受動体65a,65b,65c,65dによって、各転動体61,62、63,64の揺動軸線CLに沿った方向での位置および姿勢を保持している。
【0036】
さらに、本実施形態では、ウェアプレート12とメガネ板8の間には、常にわずかな隙間が保持されるように、受動体65b,65dとの間に、調整シム66bおよび調整シム66dを介装することによって、セットプレート40側上下の軌道盤60b,60dの装着面から転動体62,64とウェアプレート12との接触面までの対向方向での距離を調整している。
これにより、ウェアプレート12とメガネ板8との直接の接触摺動を無くすことで、揺動管2と左右のポンプシリンダ4L、4Rとの連結状態の切り替え時における摺動抵抗の低減を図っている。
【0037】
さらにまた、本実施形態では、ホッパ9側上下についても、受動体65a,65cとの間に、調整シム66aおよび調整シム66cを介装することによって、ホッパ9側の軌道盤60a,60cの装着面から転動体61,63とウェアプレート12の接触面までとの対向距離を調整している。これにより、本実施形態では、ホッパ9側の軌道盤60a,60cの装着面から転動体61,63とウェアプレート12との接触面間に適切な隙間を確保する構造としている。
【0038】
ここで、揺動管2と左右のポンプシリンダ4L、4Rとの連結状態を切替える途中では、復路水流管312からの水圧により、揺動管2とポンプシリンダ4L、4Rを通してポンプシリンダ4L、4R側から吐出方向にウェアプレート12に向けた推力がかかる。
これに対し、本実施形態では、ウェアプレート12が、上述のように、ホッパ9側に固定された軌道盤60a内に、周方向に沿って装着された複数の受動体63によって回転自在に保持される。また、複数の転動体63とホッパ9に固定された軌道盤60c内に装着された複数の受動体65cとによって回転自在に保持される複数の転動体63でウェアプレート12への吐出方向に推力を受けることができる。
【0039】
ウェアプレート12の揺動部分の各部に配置される複数の転動体61,62,63,64および複数の受動体65a,65b,65c,65dは、耐久性を向上させるために、耐摩耗性に優れるジルコニア若しくは窒化珪素などのセラミックスや、超硬合金若しくはSKS、SKD、SKHなどの工具鋼で構成することが好ましい。
【0040】
さらに、本実施形態のピストンポンプ1では、ウェアプレート12の揺動部分の各部に配置される複数の転動体61,62,63,64と複数の受動体65a,65b,65c,65dとの間には、耐海水仕様のグリス67を封入しており、グリス67を充填することにより、各部に配置される複数の転動体61,62,63,64と複数の受動体65a,65b,65c,65dとの間の摺動抵抗を軽減させている。
これにより、本実施形態のピストンポンプ1は、ウェアプレート12が揺動管2と共に揺動したときに、メガネ板8の左右の吸込吐出口1L、1Rに合致する位置においても、ウェアプレート12両側のシール部14L、14Rが、径方向上下に配置された、複数の転動体61,62および複数の転動体63,64を介して確実に支承されるとともに円滑な揺動が可能になっている。
【0041】
次に、第一実施形態の水流揚鉱システム300Aの動作および作用効果について説明する。
第一実施形態の水流揚鉱システム300Aは、上述したように、高圧ポンプ320から循環管路310に圧送される高圧水により循環水流をつくり、揚鉱機器200Aに装備されたピストンポンプ1で海洋資源を復路水流管312から循環水流中に注入して海洋資源を洋上基地まで移送するという、循環水流を利用した移送システムを構築したので、極めてシンプルな構成によって海洋資源の長距離移送が可能になる。よって、海洋資源の移送効率を向上させるとともにメンテナンス性に優れている。
【0042】
特に、第一実施形態のピストンポンプ1では、ホッパ9内の海洋資源を圧送する際は、揺動用の切換シリンダ3L、3Rの駆動により、揺動管2を左右方向に揺動させるとともに、2本のポンプシリンダ4L、4R内の搬送ピストン7を駆動して交互に前進後退させる。
これにより、ホッパ9内の海洋資源が、一方の吸込吐出口1Lまたは1Rから対応するポンプシリンダ4Lまたは4R内に吸入される。このとき、他方の吸込吐出口1Rまたは1Lは、対応するポンプシリンダ4Rまたは4Lが揺動管2と連通し、内部に吸入されていた海洋資源が、対応するポンプシリンダ4Rまたは4Lの搬送ピストン7の前進により圧送されて揺動管2から吐出配管6へと吐出される。
【0043】
吐出配管6との連通位置では、搬送ピストン7側から海洋資源を押し出すときには、揺動管2内で逆向きに作用するカップリング5側からの水流圧(例えば7MPa)よりも大きな力で押し出すことができる。
よって、本実施形態のピストンポンプ1によれば、2本のポンプシリンダ4L、4R内の搬送ピストン7の前後進の動作に合わせて、切換シリンダ3L、3Rを所定のタイミングで駆動することにより揺動管2を左右に揺動させ、ホッパ9内の海洋資源を、揺動管2から吐出配管6を通して復路水流管312中に連続的に吐出して注入できる。
【0044】
ここで、例えば多段遠心ポンプで海洋資源を圧送する場合、圧送可能なスラリ濃度は、15vol%以下であり、より安全をみると10vol%以下に制限されるところ、本実施形態の水流揚鉱システム300Aであれば、ピストンポンプ1を用いて圧送可能なスラリ濃度は、15vol%以上の高濃度スラリであっても移送可能であり、稼働効率を向上させる上で優れている。
【0045】
さらに、本実施形態によれば、循環管路310の循環水流中に海洋資源を注入するために、揚鉱機器200Aに配置したピストンポンプ1は、摺動部品の定期的な交換は必要なものの、メンテナンスを必要とするポンプが海洋資源を循環水流中に注入するピストンポンプ1の一台のみで済む。
そのため、運転管理の簡便化が図れる上、シンプルな構成によって海洋資源を循環水流中に注入可能である。そのため、多段遠心ポンプで海洋資源のスラリを圧送する場合と比較して、部品の交換作業をするメンテナンス頻度が少なく稼働効率を向上させることができる。
【0046】
ここで、一般に、従来の揺動管式のピストンポンプ100は、図6図7に一例を示すように、左右一対の吸込吐出口101L、101Rを有するメガネ板108をホッパ109の背壁109bに設けている。
各吸込吐出口101L、101Rの背部には、それぞれポンプシリンダ104L、104Rが配設されている。ホッパ109内には、先端部102tを左右の吸込吐出口101L、101Rに臨む位置に交互に切換え移動可能な揺動管102が設けられる。揺動管102は、切換レバー111の揺動駆動により、揺動管軸110の揺動軸線CLまわりに揺動可能になっている。
【0047】
しかし、従来の揺動管方式のピストンポンプ100では、上述したような逆流防止機構を有していない。そのため、図7(b)に示すように、左側の吐出吸入口101Lから右側の吐出吸入口101Rへと切り替える途中で、左右の吐出吸入口101L、101Rが連通する状態が生じる。
そのため、船上から海底に向かう水流を復路水流管312で再び船上まで戻す循環流を形成して、この復路水流管312に対して、単に、従来の揺動管方式のピストンポンプ100で鉱石を注入する場合、復路水流管312の高圧水が左側の吐出吸入口101Lから右側の吐出吸入口101Rへと切り替える途中で、復路水流管312内の高圧水が、揺動管102を通じて瞬間的にホッパ109内に多量に逆流して、復路水流管312の循環水流の流量変動が発生するという問題があり、また、振動や衝撃が発生するおそれもある。
【0048】
これに対し、第一実施形態のピストンポンプ1によれば、上述したように、ウェアプレート12を用いた逆流防止機構を備えるので、揺動管2を揺動させてその先端部2tを一方の吸込吐出口1Lから他方の吸込吐出口1Rへ(ウェアプレート12を図5(a)の位置から図5(c)の位置へ)、または、他方の吸込吐出口1Rから一方の吸込吐出口1Lへ(ウェアプレート12を図5(c)の位置から図5(a)の位置へ)、切換える過程において、図5(b)に示す途中の位置に達しても、左右の吸込吐出口1L、1R相互が連通する状態が生じることがなく、循環管路310からの逆流を確実に防止できる。
【0049】
さらに、第一実施形態のピストンポンプ1によれば、ウェアプレート12とウェアリング20とを分離構造としたので、ウェアプレート12の回動動作を円滑にすることができるとともに、圧送圧力が高くなるほど、メカニカルシール機能を有するウェアリング20が、メガネ板8により強く密着してシール力を一層高めることができる。
つまり、第一実施形態のピストンポンプ1によれば、揺動管2の先端部2tの内周面に設けられたウェアリング20がメカニカルシールとして機能するので、圧送圧力が高くなるほど、メガネ板8との対向面にウェアリング20が強く密着してシール力を高めることができる。さらに、別箇に設けられたウェアプレート12によって逆流防止機能を奏しつつ、メガネ板の左右の吸込吐出口1L、1Rとの連通位置に揺動管2を確実に切替えることができる。
【0050】
また、第一実施形態のピストンポンプ1によれば、ウェアプレート12とメガネ板8の間に、常にわずかな隙間が保持されるように、調整シム66b、66dを介装する等による揺動時の摺動抵抗低減構造を有するので、揺動管2と左右のポンプシリンダ4L、4Rとの連結状態の切り替え時における摺動抵抗を低減できる。
そのため、例えばウェアプレート12とウェアリング20とを一体構造とした場合に比べて、高圧圧送時であっても、シール力を高めるとともに、逆流防止機能を奏し且つ揺動管2を揺動させる力をより小さくして、揺動管2を左右のメガネ板の吸込吐出口1L、1Rとの連通位置に確実に切替る構成として極めて優れているといえる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の水流揚鉱システム300Aおよびこれを用いた水流揚鉱方法によれば、海洋資源の移送効率を向上させるとともに揚鉱システムのメンテナンス性に優れている。
なお、本発明に係る水流揚鉱システムおよびこれを用いた水流揚鉱方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、上記第一実施形態では、逆流防止機構を有するピストンポンプ1を用いた例を示したが、これに限定されず、例えば、以下の第二実施形態のように、逆流防止機構を有しないピストンポンプによって水流揚鉱システムを構築してもよい。
【0052】
以下、第二実施形態の水流揚鉱システムについて説明する。
図8および図9に示すように、第二実施形態の水流揚鉱システム300Bでは、ピストンポンプとして、図6に示した逆流防止機構を有しないピストンポンプ100を装備している。但し、第二実施形態の水流揚鉱システム300Bでは、逆流防止機能を担保するために、上記第一実施形態の逆流防止機構に替えて、逆止弁機構140を備える点が上記第一実施形態の水流揚鉱システム300Aと相違する。
なお、第二実施形態において、ピストンポンプ100および逆止弁機構140以外の構成は上記第一実施形態と共通なので、以下、相違点について説明し、上記第一実施形態と同様または対応する構成には同一符号を付すとともにその説明は適宜省略する。
【0053】
第二実施形態のピストンポンプ100は、図6に示したように、ポンプ自体には逆流防止機構を有しておらず、そのため、吐出と吸込みの切り替えに揺動管102を用いる構造上、図7に模式図を示すように、吐出と吸込みの切り替え時に、同図左側の吐出吸入口101Lから右側の吐出吸入口101Rに揺動管102の連通口102tの位置を切り替える途中で、図7(b)に示すように、吐出側と吸込み側とが連通する瞬間が発生する。
【0054】
これに対し、第二実施形態の水流揚鉱システム300Bでは、図9および図10に示すように、復路水流管312に海洋資源を注入する吐出配管106の開口部に対向するように、逆止弁機構140が配設されている。
逆止弁機構140は、油圧シリンダ141と、油圧シリンダ141の駆動により進退するポペット弁142と、を有する。ポペット弁142の先端には、円盤状のバルブディスク142dが設けられ、吐出配管106の開口部の周囲には、バルブディスク142dの周囲に対向する位置に、円環状のバルブリング143が嵌め込まれている。
【0055】
ポペット弁142は、図9に示す前進位置では、吐出配管106の開口部を閉止し、図10に示す後退位置では、吐出配管106の開口部を全開にするとともに、復路水流管312の流路を妨げない位置まで後退可能に構成されている。
これにより、第二実施形態の水流揚鉱システム300Bのピストンポンプ100においても、復路水流管312からの逆流を防止して、上記第一実施形態同様の作用効果を奏することができる。
【0056】
なお、第二実施形態のピストンポンプ100は、逆止弁機構140が復路水流管312の側に設けられているので、第一実施形態でのピストンポンプ1のような、ウェアプレート12両側のシール部14L、14Rには、上下に配置された、複数の転動体61,62および複数の転動体63,64を介して支承される構成を不要とすることができる。
また、復路水流管312の側に設けた逆止弁機構140についても、ポペット弁142は、循環管路310の循環水流中に常にさらされているので、海洋資源の礫がポペット弁142およびその駆動部分に詰まるような不具合が生じることがない。
【符号の説明】
【0057】
1 ピストンポンプ
1L 吸込吐出口
1R 吸込吐出口
1b 背壁
1f 前壁
2 揺動管
2b 基端部
2m 中間部
2t 先端部
3L、3R 切換シリンダ
4L ポンプシリンダ
4R ポンプシリンダ
5 カップリング
6 吐出配管
7 搬送ピストン
8 メガネ板
9 ホッパ
10 揺動管軸
11 切換レバー
12 ウェアプレート
13 開口部
14L、14R シール部
15L、15R 駆動シリンダ
20 ウェアリング
20m 開口部
30 Oリング
32 加圧ピース
40 セットプレート
60a,60b,60c,60d 軌道盤
61,62,63,64 転動体
65a,65b,65c,65d 受動体
67 グリス
100 ピストンポンプ
101L 吐出吸入口
101R 吐出吸入口
101b 背壁
102 揺動管
102t 連通口
104L、104R ポンプシリンダ
106 吐出配管
108 メガネ板
109 ホッパ
110 揺動管軸
111 切換レバー
140 逆止弁機構
141 油圧シリンダ
142 ポペット弁
200A、200B 揚鉱機器
210 筐体
211 投入ホッパ
212 切り出し装置
225 スクリューコンベヤ
300A、300B 水流揚鉱システム
310 循環管路
311 往路水流管
312 復路水流管
320 高圧ポンプ
330 回収ホッパ
340 タンク
350 クレーン
360 アンビリカブルケーブル
CL 揺動軸線
CL1 回転中心
CL2 回転中心
G 洋上基地
T 海底熱水鉱床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10