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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139636
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】車両用制動装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/00 20060101AFI20220915BHJP
   F16D 51/22 20060101ALI20220915BHJP
   F16D 65/22 20060101ALI20220915BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20220915BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20220915BHJP
   F16D 125/48 20120101ALN20220915BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
F16D51/22
F16D65/22
B60T13/74 G
F16D121:24
F16D125:48
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040116
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 悠介
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB51
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH58
3D048HH66
3D048HH68
3D048RR25
3J058AA08
3J058AA13
3J058AA17
3J058AA24
3J058AA29
3J058AA37
3J058BA60
(57)【要約】
【課題】荷重センサの配置自由度を向上させることができる車両用制動装置を提供する。
【解決手段】本発明は、車輪と共に回転するブレーキ回転体2と、制動時にブレーキ回転体2に押し当てられる摩擦部材31、32と、摩擦部材31、32の回転を阻止することにより、車輪に制動力を付与するトルク受け部4、41と、摩擦部材31、32を駆動させてブレーキ回転体2に押し当てる駆動装置5と、駆動装置5及びトルク受け部4、41の少なくとも一方に設けられ、駆動装置5が摩擦部材31、32を駆動する方向に対して異なる方向の力を検出する荷重センサ61、62と、荷重センサ61、62の検出値に基づいて制動力を算出する算出部71と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するブレーキ回転体と、
制動時に前記ブレーキ回転体に押し当てられる摩擦部材と、
前記摩擦部材の回転を阻止することにより、前記車輪に制動力を付与するトルク受け部と、
前記摩擦部材を駆動させて前記ブレーキ回転体に押し当てる駆動装置と、
前記駆動装置及び前記トルク受け部の少なくとも一方に設けられ、前記駆動装置が前記摩擦部材を駆動する方向に対して異なる方向の力を検出する荷重センサと、
前記荷重センサの検出値に基づいて前記制動力を算出する算出部と、
を備える、車両用制動装置。
【請求項2】
前記荷重センサは、前記駆動装置に設けられている、請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記荷重センサは、
前記摩擦部材の一部を囲むように、前記トルク受け部及び前記駆動装置の少なくとも一方に固定された起歪体と、
前記起歪体の上面及び下面の少なくとも一方に固定されたひずみゲージと、
前記起歪体の内側に位置し、前記摩擦部材が受けた前記異なる方向の力を前記起歪体に伝えるように前記摩擦部材に固定された補助部材と、
を備える、請求項1に記載の車両用制動装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用制動装置として、例えば特開2010-274689号公報に記載のようにドラムブレーキを用いたものが知られている。この車両用制動装置では、制動力を算出するために、アンカに荷重センサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-274689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車両用制動装置では、荷重センサが、ホイール(車輪)内の下部に配置されるアンカに設けられている。この配置では、荷重センサの配線は、下部から上部までホイールを縦断するように配策しなければならず、ハブ、ブレーキシュー、及びアーム等の可動部品の間を通過する配線の取り回しが煩雑になりやすい。荷重センサの配置位置がアンカだけとなると、上記配線の煩雑化の解消が困難となる。つまり、従来の構成には、荷重センサの配置自由度の点が改良の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、荷重センサの配置自由度を向上させることができる車両用制動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用制動装置は、車輪と共に回転するブレーキ回転体と、制動時にブレーキ回転体に押し当てられる摩擦部材と、前記摩擦部材の回転を阻止することにより、前記車輪に制動力を付与するトルク受け部と、前記摩擦部材を駆動させて前記ブレーキ回転体に押し当てる駆動装置と、前記駆動装置及び前記トルク受け部の少なくとも一方に設けられ、前記駆動装置が前記摩擦部材を駆動する方向に対して異なる方向の力を検出する荷重センサと、前記荷重センサの検出値に基づいて前記制動力を算出する算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
例えば車両用制動装置が2つの摩擦部材(ブレーキシュー)を備える場合、車両前進中に制動トルクが発生すると、リーディングシューにはトルクの反作用により下向きの力が加わり、トレーリングシューには上向きの力が加わる。すなわち、ブレーキシューには、駆動装置が摩擦部材を駆動する方向(移動させる方向)に対して異なる方向の力が加わる。これら上下方向の力の大きさは、制動トルク(制動力)の大きさに対応している。したがって、制動時に駆動装置が摩擦部材を駆動する方向に対して異なる方向の力を検出することで、制動トルクを算出することができる。
【0008】
従来の構成において、荷重センサは、駆動装置が摩擦部材を押圧する方向(車両前後方向)の力を検出するために、車両前後方向の力が直接的に加わる部位(アンカ等のトルク受け部分)に設けられている。しかし、本発明によれば、荷重センサは、駆動装置が摩擦部材を駆動する方向に対して異なる方向の力を受けるように配置されればよい。このため、荷重センサの設置対象物は、摩擦部材の荷重を直接受ける部分に限られず、例えば駆動装置であってもよい。このように、本発明によれば、荷重センサが、駆動装置が摩擦部材を駆動する方向に対して異なる方向の力を検出することで、荷重センサの配置自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の車両用制動装置の構成図(車両左側から見た断面図)である。
図2】第1実施形態の車両用制動装置の構成図(車両上方から見た断面図)である。
図3】第2実施形態の荷重センサの構成図(車両左側から見た断面図)である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】第3実施形態の荷重センサの構成図(車両左側から見た断面図)である。
図6】第4実施形態の荷重センサの構成図(車両左側から見た断面図)である。
図7】第2実施形態の変形態様の構成図(車両左側から見た断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。また、説明に用いる各図は概念図である。以下の説明において、車両前方を前方と称し、車両後方を後方と称する。また、説明において、車輪は、車両の左側の車輪を例とする。図2では、バックプレート4等の表示が省略されている。
【0011】
<第1実施形態>
図1及び図2に示すように、第1実施形態の車両用制動装置1は、いわゆるリーディング・トレーリング式ドラムブレーキであって、回転ドラム(「ブレーキ回転体」に相当する)2と、第1ブレーキシュー(「摩擦部材」に相当する)31と、第2ブレーキシュー(「摩擦部材」に相当する)32と、バックプレート(「トルク受け部」に相当する)4と、アンカ(「トルク受け部」に相当する)41と、駆動装置5と、第1荷重センサ61と、第2荷重センサ62と、ブレーキECU7と、を備えている。
【0012】
回転ドラム2は、車輪と共に回転する部材である。第1ブレーキシュー31及び第2ブレーキシュー32は、制動時に回転ドラム2に押し当てられる摩擦部材である。第1ブレーキシュー31及び第2ブレーキシュー32は、それぞれ外周側にライニング30を備える凸弧状の部材である。第1ブレーキシュー31は、相対的に前方に配置され、車両前進時のリーディングシューである。第2ブレーキシュー32は、相対的に後方に配置され、車両前進時のトレーリングシューである。第1ブレーキシュー31及び第2ブレーキシュー32は、円弧状に配置されている。
【0013】
バックプレート4は、車輪を回転可能に支持している車体部材(図示略)に固定されている。バックプレート4の下部にはアンカ41が固定され、バックプレート4の上部には駆動装置5が固定されている。アンカ41の前端部には、第1ブレーキシュー31の下端部が回動及び上下動可能に支持されている。アンカ41の後端部には、第2ブレーキシュー32の下端部が回動及び上下動可能に支持されている。
【0014】
アンカ41の支持があることで、第1ブレーキシュー31の上端部及び第2ブレーキシュー32の上端部は、前後方向に開く(離間する)ことが可能となる。アンカ41及びバックプレート4は、第1ブレーキシュー31及び第2ブレーキシュー32の回転を阻止することにより、車輪に制動力を付与するトルク受け部として機能する。なお、第1ブレーキシュー31及び第2ブレーキシュー32は、リターンスプリング90で接続されており、駆動装置5から力が加わってないときに初期位置に戻るように構成されている。
【0015】
駆動装置5は、第1ブレーキシュー31及び第2ブレーキシュー32を駆動させて回転ドラム2に押し当てる装置(アクチュエータ)である。第1実施形態の駆動装置5は、電気モータ55で第1ピストン52及び第2ピストン53を駆動させる電動メカニカルブレーキ(EMB)を構成している。駆動装置5は、第1ブレーキシュー31の上端部と第2ブレーキシュー32の上端部との間に配置されている。
【0016】
駆動装置5は、固定部51と、第1ピストン52と、第2ピストン53と、直動変換部54と、電気モータ55と、を備えている。固定部51は、駆動装置5のうちバックプレート4に固定されている部分である。固定部51は、駆動装置5のハウジングともいえる。より詳細に、固定部51は、第1シリンダ部511と、第2シリンダ部512と、収容部513と、を備えている。
【0017】
第1シリンダ部511は、固定部51の車両前方部分を構成し、第1ブレーキシュー31に対向するように配置されている。第1シリンダ部511は、車両前方に開口する筒状に形成されている。第1シリンダ部511内には、直動変換部54のねじ軸541の前端部が配置されている。
【0018】
第2シリンダ部512は、固定部51の車両後方部分を構成し、第2ブレーキシュー32に対向するように配置されている。第2シリンダ部512は、車両後方に開口する筒状に形成されている。第2シリンダ部512は、第1シリンダ部511と同軸的に配置されている。つまり、第1シリンダ部511の中心軸と第2シリンダ部512の中心軸とは、同一直線上に位置する。第2シリンダ部512内には、直動変換部54のねじ軸541の後端部が配置されている。
【0019】
収容部513は、直動変換部54を収容する部分であって、第1シリンダ部511と第2シリンダ部512との間に位置している。収容部513は、第1シリンダ部511及び第2シリンダ部512と車体側に位置する電気モータ55とを接続するように、車両左右方向に延びている(一部図示略)。収容部513は、バックプレート4の貫通孔に挿通され、バックプレート4に固定されている。
【0020】
第1ピストン52は、第1ブレーキシュー31を駆動させて回転ドラム2に押し当てる可動部を構成している。第1ピストン52は、第1ブレーキシュー31の上端部に対向配置されている。第1ピストン52は、第1シリンダ部511内を前後に移動可能に配置されている。第1ピストン52は、ナット部521と、ナット部521の前端に設けられた当接部522と、を備えている。
【0021】
ナット部521は、第1シリンダ部511に対して前後方向に移動可能で且つ回転不能に配置されている。つまり、第1ピストン52及び第1シリンダ部511には、第1ピストン52が第1シリンダ部511に対して軸回りに回転しないように、図示略の回転止め機構(例えばレール溝とレールとの係合)が形成されている。
【0022】
ナット部521は、直動変換部54のねじ軸541に螺合し、ねじ軸541の回転に応じて前後に移動する。つまり、ねじ軸541が正回転すると第1ピストン52が前方(第1ブレーキシュー31側)に移動し、ねじ軸541が逆回転すると第1ピストン52が後方に移動する。
【0023】
当接部522は、ナット部521の前端部に設けられ、第1ブレーキシュー31と当接する部分である。当接部522は、円柱状部材の前端面に後方に延びるスリット522aが形成された形状、すなわち全体として凹形状に形成されている。スリット522aは、前方と上下に開口している。つまり、当接部522は、左右の側壁522bと後方の底壁522cとで構成されている。当接部522は、ナット部521から前方にU字状に突出しているともいえる。第1ブレーキシュー31の上後端部は、当接部522のスリット522a内に配置されている。当接部522の底壁522cと第1ブレーキシュー31の上後端部とが当接している。
【0024】
第2ピストン53は、第2シリンダ部512内に前後方向に移動可能に配置されたピストン部材である。第2ピストン53は、第1ピストン52の当接部522と同様の形状(前後反転)に形成されている。つまり、第2ピストン53は、円柱状部材の後端面に前方に延びるスリット53aが形成された形状、すなわち全体として凹形状に形成されている。スリット53aは、後方と上下に開口している。つまり、第2ピストン53は、左右の側壁53bと前方の底壁53cとで構成されている。
【0025】
第2ブレーキシュー32の上前端部は、第2ピストン53のスリット53a内に配置されている。第2ピストン53の底壁53cと第2ブレーキシュー32の上前端部とが当接している。第2ピストン53は、ねじ軸541から力を受けるように配置されている。したがって、第1ピストン52が前進して第1ブレーキシュー31を押圧すると、その反力である第1ブレーキシュー31が第1ピストン52を後方に押圧する力が、ねじ軸541を介して第2ピストン53に伝わる。つまり、第2ピストン53は、第1ピストン52が第1ブレーキシュー31を押圧する力と同じ力で、第2ブレーキシュー32を後方に押圧する。作用と反作用の法則により、第1ピストン52の前進に伴って第2ピストン53も後進する。
【0026】
直動変換部54は、電気モータ55の出力軸551の回転運動を第1ピストン52の直線運動に変換する機構である。直動変換部54は、出力軸551から減速機を介してねじ軸541に動力を伝達するように構成されている。第1ピストン52は、直動変換部54の一部を構成しているといえる。
【0027】
電気モータ55は、駆動装置5の駆動源であって、ブレーキECU7により制御される。電気モータ55の駆動力は、出力軸551及び直動変換部54を介して第1ピストン52に伝達される。
【0028】
第1荷重センサ61及び第2荷重センサ62は、駆動装置5及びトルク受け部(ここではバックプレート4とアンカ41)の少なくとも一方に設けられ、制動時に回転ドラム2の回転により第1ブレーキシュー31及び第2ブレーキシュー32に加わる上下方向の力を検出するように構成されている。ここで、上下方向の力は、駆動装置が摩擦部材を駆動する方向である前後方向に対して異なる方向の力の一例である。第1荷重センサ61は、第1ブレーキシュー31に加わる下向きの力を検出するように構成されている。第2荷重センサ62は、第2ブレーキシュー32に加わる上向きの力を検出するように構成されている。第1荷重センサ61及び第2荷重センサ62は、駆動装置5に設けられている。
【0029】
より詳細に、第1荷重センサ61は、第1ピストン52及び第1ブレーキシュー31に固定されている。第1荷重センサ61は、ひずみゲージ式であって、ひずみゲージ(図示略)が貼られた起歪体611と、ひずみゲージの信号を増幅してブレーキECU7に送信する送信部612と、を備えている。
【0030】
起歪体611は、荷重により弾性変形することが想定された円柱状の金属部材である。起歪体611は、当接部522及び第1ブレーキシュー31の上後端部を左右方向に貫通して配置されている。起歪体611は、当接部522の各側壁522bに形成された左右方向に貫通する貫通孔91と、第1ブレーキシュー31の上後端部に形成された左右方向に貫通する貫通孔92とに挿通されている。送信部612は、起歪体611の車体側端部に固定されている。
【0031】
車両前進中に制動トルクが発生すると、図1の矢印に示すように、第1ブレーキシュー31にはトルクの反作用により下向きの力が加わる。第1ブレーキシュー31が下向きの力を受けて下方に移動しようとすると、第1ピストン52に固定された起歪体611がその下方への移動を妨げる。つまり、第1ブレーキシュー31に加わる下向きの力は、起歪体611に加わり、起歪体611の中央部分が下方に弾性変形する。この変形から第1ブレーキシュー31に加わる下向きの力(荷重)が検出される。
【0032】
第2荷重センサ62は、第2ピストン53及び第2ブレーキシュー32に固定されている。第2荷重センサ62は、第1荷重センサ61同様、ひずみゲージ式であって、ひずみゲージ(図示略)が貼られた起歪体621と、ひずみゲージの信号を増幅してブレーキECU7に送信する送信部622と、を備えている。
【0033】
起歪体621は、円柱状部材であって、第2ピストン53及び第2ブレーキシュー32の上前端部を左右方向に貫通して配置されている。起歪体621は、第2ピストン53の各側壁53bに形成された左右方向に貫通する貫通孔93と、第2ブレーキシュー32の上前端部に形成された左右方向に貫通する貫通孔94とに挿通されている。送信部622は、起歪体621の車体側端部に固定されている。
【0034】
車両前進中に制動トルクが発生すると、図1の矢印に示すように、トルクの反作用により、第2ブレーキシュー32には上向きの力が加わる。第2ブレーキシュー32が上向きの力を受けて上方に移動しようとすると、第2ピストン53に固定された起歪体621がその上方への移動を妨げる。つまり、第2ブレーキシュー32に加わる上向きの力は、起歪体621に加わり、起歪体621の中央部分が上方に変形する。この変形から第2ブレーキシュー32に加わる上向きの力(荷重)が検出される。
【0035】
ブレーキECU7は、プロセッサやメモリ等を備える電子制御ユニットである。ブレーキECU7は、制動要求に応じて駆動装置5を制御する。ブレーキECU7が制動要求に応じて電気モータ55の出力軸551を正回転させると、第1ピストン52が前進して第1ブレーキシュー31を回転ドラム2に押し当てるとともに、第2ピストン53が後進して第2ブレーキシュー32を回転ドラム2に押し当てる。これにより、車輪及び回転ドラム2の回転に対して摩擦力(抵抗力)が発生し、制動力が付与される。
【0036】
ブレーキECU7は、各荷重センサ61、62の検出値に基づいて制動力(制動トルク)を算出する算出部71を備えている。車両前進中において、第1ピストン52が第1ブレーキシュー31を押圧する力及び第2ピストン53が第2ブレーキシュー32を押圧する力が大きいほど、発生する摩擦力が大きくなり、第1ブレーキシュー31に加わる下向きの力及び第2ブレーキシュー32に加わる上向きの力は大きくなる。つまり、車両走行中に付与される制動力が大きいほど、各ブレーキシュー31、32に加わる上下方向の力が大きくなる。制動力と各ブレーキシュー31、32に加わる上下方向の力とは対応している。したがって、算出部71は、各ブレーキシュー31、32に加わる上下方向の力に基づいて制動力を算出することができる。
【0037】
車両後進中に制動力を発生させた場合、第1ブレーキシュー31には上向きの力が加わり、第2ブレーキシュー32には下向きの力が加わる。荷重センサ61、62が、それぞれ上下方向いずれの荷重も検出できるように構成されている場合や初期荷重が設定されている場合、車両後進時の制動で加わる上下方向の力も検出可能となる。この場合、車両が後進していることは他のECUからの情報でブレーキECU7は把握可能であるため、算出部71は、荷重センサ61、62の検出値に基づいて車両後進時の制動力も算出することができる。
【0038】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態によれば、荷重センサ61、62は、対応するブレーキシュー31、32に加わる上下方向の力を受けるように配置されればよい。このため、荷重センサ61、62の設置対象物は、各ブレーキシュー31、32の荷重を直接受けるアンカ41に限られず、上記実施形態のように駆動装置5とすることができる。このように、第1実施形態によれば、荷重センサ61、62の検出方向を上下方向とすることで、荷重センサ61、62の配置自由度を向上させることができる。
【0039】
また、第1実施形態によれば、荷重センサ61、62が駆動装置5に設けられているため、荷重センサ61、62の配線が車輪内の上部に配置される。これにより、配線の煩雑化が抑制される。
【0040】
<第2実施形態>
第2実施形態の構成は、第1実施形態の構成と比較して、主に荷重センサの構成の点で異なっている。以下、図3及び図4を参照して、当該異なっている部分について説明する。第2実施形態の説明において、第1実施形態の説明及び図面は適宜参照できる。
【0041】
第2実施形態の荷重センサ63は、第1ブレーキシュー31に加わる上下方向の力を検出するセンサである。荷重センサ63は、起歪体631と、ひずみゲージ632、633と、補助部材634と、を備えている。
【0042】
起歪体631は、荷重により弾性変形することが想定された環状の金属部材である。起歪体631は、例えば複数の締結部材(図示略)を介して、バックプレート4に固定されている。起歪体631は、バックプレート4により移動が規制されている。起歪体631は、補助部材634を介して第1ブレーキシュー31の一部を囲むように配置されている。まとめると、起歪体631は、第1ブレーキシュー31の一部を囲むように、バックプレート4に固定された環状部材である。なお、起歪体631は、駆動装置5に固定されてもよい。なお、本例では起歪体631は環状に形成されているが、第1ブレーキシュー31の一部を囲うように形成されていれば環状でなくてもよい。例えば、起歪体631が四角形状に形成されていてもよい。起歪体631は、円環状に限らず、外形が多角形の角環状でもよいともいえる。
【0043】
ひずみゲージ632、633は、第1実施形態同様、物体のひずみ(変形)を計測するセンサであって、加えられた力によって電気抵抗が変化する。ひずみゲージ632は、板状であって、起歪体631の上面に固定されている。ひずみゲージ633は、板状であって、起歪体631の下面に固定されている。
【0044】
補助部材634は、第1ブレーキシュー31と起歪体631との間に配置され、第1ブレーキシュー31が受けた上下方向の力を起歪体631に伝えるための部材である。補助部材634は、第1ブレーキシュー31の上後端部に固定されている。この例の補助部材634は、長軸が上下方向に延び短軸が左右方向に延びる楕円形状の断面を有する楕円柱形状に形成されている。この長軸の長さは、起歪体631の内径より僅かに小さい。まとめると、補助部材634は、起歪体631の内側に位置し、第1ブレーキシュー31が受けた上下方向の力を起歪体631に伝えるように第1ブレーキシュー31に固定された部材である。補助部材634が楕円柱形状であるため、補助部材634の起歪体631への応力集中は抑制される。
【0045】
なお、荷重センサ63には、送信部635、636が設けられてもよい。送信部635は、ひずみゲージ632の信号を増幅してブレーキECU7に送信する。同様に、送信部636は、ひずみゲージ633の信号を増幅してブレーキECU7に送信する。ひずみゲージ632、633と対応する送信部635、636とは、例えば配線で接続することができる。送信部635、636の配置位置は任意に設定できる。
【0046】
第2実施形態の構成によれば、車両前進中の制動において、第1ブレーキシュー31に下向きの力が加わると、その力が補助部材634を介して起歪体631に伝わる。起歪体631は、移動が規制されているため、起歪体631の下部内周面が補助部材634に押圧され、起歪体631が変形する。この変形は、少なくともひずみゲージ633により検出される。
【0047】
また、車両後進中の制動では、第1ブレーキシュー31に上向きの力が加わり、起歪体631の上部内周面が補助部材634に押圧され、起歪体631が変形する。この変形は、少なくともひずみゲージ632により検出される。これにより、第1実施形態同様、起歪体631の変形量がブレーキECU7に送信され、それに基づいて算出部71により制動力が算出される。
【0048】
このように、第2実施形態の構成であっても、配置自由度を生かして車輪内の上部に荷重センサ63を配置することができ、第1実施形態同様の効果が発揮される。なお、荷重センサ63と同様の構成を、第2ブレーキシュー32に対して設けてもよい。また、ひずみゲージ632、633のうち一方のみが設けられてもよい。
【0049】
<第3実施形態>
第3実施形態の構成は、第1実施形態の構成と比較して、主に荷重センサの構成の点で異なっている。以下、図5を参照して、当該異なっている部分について説明する。第3実施形態の説明において、第1、第2実施形態の説明及び図面は適宜参照できる。
【0050】
第3実施形態の荷重センサ64は、駆動装置5の第1ピストン52に設けられたセンサであって、第1ブレーキシュー31に加わる上下方向の力を検出する。荷重センサ64は、起歪体641と、ひずみゲージ642と、を備えている。起歪体641は、当接部522のスリット522a内に配置されている。起歪体641は、第1ブレーキシュー31の下方に配置されている。
【0051】
起歪体641は、一端(後端)が当接部522の底壁522cに固定され、他端(前端)の上面が第1ブレーキシュー31に当接又は隙間をあけて対向するように構成された、前後方向に延びる板状部材である。起歪体641の前端部は、上方に突起している。起歪体641は、上下方向に弾性変形しやすいように、上下幅が左右幅より小さく形成されている。
【0052】
ひずみゲージ642は、起歪体641の下面に固定されている。ひずみゲージ642の信号は、例えば信号を増幅する送信部(図示略)を介してブレーキECU7に送信される。車両前進中の制動において、第1ブレーキシュー31に下向きの力が加わると、第1ブレーキシュー31が起歪体641を下方に押圧し、起歪体641の一端(前端)を下方に変形させる。この変形がブレーキECU7に送信され、算出部71により制動力が算出される。
【0053】
また、起歪体641を予め第1ブレーキシュー31に押し当てて変形させた状態を初期状態とすることで、荷重センサ64に初期荷重を設定することができる。これにより、第1ブレーキシュー31が上向きの力を受けて上方に移動した場合、起歪体641の変形量が初期状態よりも小さくなり、その変化が検出可能となる。この構成であれば、車両後進中の制動においても、起歪体641の荷重の変化が検出され、算出部71は制動力を算出することができる。荷重センサに初期荷重を加える構成は、例えば第1実施形態にも適用可能である。
【0054】
第3実施形態の構成によっても、荷重センサ64が駆動装置5に設けられ、第1実施形態と同様の効果が発揮される。なお、荷重センサ64の構成は、第2ピストン53に設けられてもよい。この場合、起歪体641は、例えば、スリット53a内における第2ブレーキシュー32の上方に配置される。
【0055】
<第4実施形態>
第4実施形態の構成は、第1実施形態の構成と比較して、主に荷重センサ及びピストンの構成の点で異なっている。以下、図6を参照して、当該異なっている部分について説明する。第4実施形態の説明において、第1~第3実施形態の説明及び図面は適宜参照できる。
【0056】
第4実施形態の第1ピストン52のスリット522aは、第1実施形態とは異なり、前方と左右方向に開口している。つまり、当接部522は、上下の各側壁522dと底壁522cとで構成されている。第1ブレーキシュー31の上後端部は、スリット522a内に配置される。
【0057】
第4実施形態の荷重センサ65は、駆動装置5の第1ピストン52に設けられたセンサであって、第1ブレーキシュー31に加わる上下方向の力を検出する。荷重センサ65は、圧電素子(図示略)を備えるセンサ部651と、センサ部651に初期荷重を加える予荷重部652と、を備えている。
【0058】
センサ部651は、第1ブレーキシュー31の下方に配置され、自身の上面に加わる下方への力を検出する部分である。センサ部651は、当接部522の下側壁522d上に固定されている。センサ部651の上面は、第1ブレーキシュー31に当接している。
【0059】
予荷重部652は、当接部522の上側壁522dに設けられている。センサ部651と予荷重部652とは、第1ブレーキシュー31を上下で挟むように配置されている。予荷重部652は、押圧部652aと、スプリング652bと、台座部652cと、を備えている。押圧部652aは、第1ブレーキシュー31に当接して下方に押圧する部材である。押圧部652aは、球状に形成されている。押圧部652aは、第1ブレーキシュー31を介してセンサ部651に対向配置されている。
【0060】
スプリング652bは、下端が押圧部652aに固定され、上端が台座部652cに固定された、押圧部652aを下方に付勢する付勢部材である。台座部652cは、スプリング652bの台座として機能し、当接部522に固定される部材である。台座部652cは、上側壁522dに形成された上下に貫通する貫通孔522e内に、例えば圧入により固定されている。台座部652cは、上側壁522dの一部で構成されてもよい。
【0061】
初期状態すなわち電気モータ55が駆動していない状態で、予荷重部652は、所定の力で、第1ブレーキシュー31をセンサ部651に向けて押圧している。これにより、初期状態において、センサ部651は下方への力を検出している。換言すると、荷重センサ65の初期値が0より大きい値となっている。
【0062】
車両前進中の制動において、第1ブレーキシュー31に下向きの力が加わると、センサ部651が下方に押圧され、荷重センサ65の検出値が初期値(初期値>0)から増大する。車両後進中の制動において、第1ブレーキシュー31に上向きの力が加わると、第1ブレーキシュー31が押圧部652aを上方に押し上げ、センサ部651に対する下方への押圧力は初期状態よりも小さくなる。これにより、荷重センサ65の検出値は、初期値よりも小さくなる。つまり、この構成の荷重センサ65であれば、車両前進中だけでなく車両後進中の制動力も検出することができる。
【0063】
第4実施形態の構成であっても、荷重センサ65を駆動装置5に設けることができ、第1実施形態同様の効果が発揮される。なお、荷重センサ65の構成を第2ピストン53に設けてもよい。この場合でも、センサ部651と予荷重部652とが、第2ブレーキシュー32を上下で挟むように配置される。例えば、センサ部651が第2ピストン53の上側壁の下面に固定され、予荷重部652が第2ピストン53の下側壁に設けられる。
【0064】
<その他>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、本発明は、駆動装置が摩擦部材を駆動する方向に対して異なる方向の力に基づいて制動力を算出すればよく、ブレーキシュー(摩擦部材)に加わる上下方向の力に限らず、上下方向に対して傾いた方向の力に基づいて制動力を算出してもよい。例えば、ブレーキシューに対して、補助部材、起歪体、ひずみゲージを意図的に傾けるように取り付けてもよい。もののばらつきにより、ブレーキシューに対して補助部材の組付けが傾いた場合、ブレーキシューが前方に移動する際に補助部材と起歪体が接触することにより、ブレーキシューが前方に移動する動きを妨げることが考えられる。この現象を抑制するため、図7に示すように、補助部材634、起歪体631、ひずみゲージ632、633を意図的に傾け、第1ブレーキシュー31が前進する際に補助部材634と起歪体631が接触する側の隙間を大きくする。これにより、第1ブレーキシュー31に対して補助部材634の組付けがばらついた場合においても、補助部材634と起歪体631が接触することによる制動力低下を抑制することができる。荷重センサ6は、上下方向の力成分を含む力を検出するともいえる。また、ドラムブレーキのタイプによらず、例えばデュオサーボ式ドラムブレーキであっても適用可能である。また、駆動装置5は、油圧によりピストンを駆動する油圧式の駆動装置でもよい。また、リーディングシューの荷重が検出できれば、トレーリングシューの荷重は推定可能である。したがって、第1ブレーキシュー31及び第2ブレーキシュー32の一方に対してのみ荷重センサを設けてもよい。
【0065】
また、ブレーキシューの上下方向の力を検出する荷重センサは、アンカ41に設けられてもよい。例えばアンカ41と第1ブレーキシュー31との接続部分に荷重センサを設け、アンカ41に対する第1ブレーキシュー31の下方への移動を検出してもよい。例えば荷重センサ64がアンカ41に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…車両用制動装置、2…回転ドラム(ブレーキ回転体)、31…第1ブレーキシュー(摩擦部材)、32…第2ブレーキシュー(摩擦部材)、4…バックプレート(トルク受け部)、41…アンカ(トルク受け部)、5…駆動装置、61~65…荷重センサ、71…算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7