IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本特殊陶業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-配線基板 図1
  • 特開-配線基板 図2
  • 特開-配線基板 図3
  • 特開-配線基板 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139646
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/05 20060101AFI20220915BHJP
   C25D 11/00 20060101ALI20220915BHJP
   C25D 11/18 20060101ALI20220915BHJP
   C25D 11/24 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H05K1/05 A
H05K1/05 B
C25D11/00 308
C25D11/18 311
C25D11/24 302
H01L23/12 J
H01L23/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040127
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】牛田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 直樹
【テーマコード(参考)】
5E315
5F136
【Fターム(参考)】
5E315AA03
5E315BB03
5E315BB11
5E315CC19
5E315DD13
5E315GG16
5F136BB05
5F136FA02
(57)【要約】
【課題】アルミニウムを主成分とする金属材料から成る基材と、基材表面上に形成された酸化被膜層を有する配線基板において、酸化被膜層のクラックの発生または進展を抑制する他の技術を提供する。
【解決手段】配線基板は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属材料から成る基材と、金属材料の陽極酸化被膜であり、基材表面上に形成された酸化被膜層と、導電性を有し、酸化被膜層の上に形成された配線部と、を備え、酸化被膜層は、配線部が形成された第1酸化被膜部と、第1酸化被膜部と離間して形成され、配線部が形成されていない第2酸化被膜部と、を有し、第1酸化被膜部と第2酸化被膜部との間は、基材表面が露出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板であって、
アルミニウム(Al)を主成分とする金属材料から成る基材と、
前記金属材料の陽極酸化被膜であり、前記基材表面上に形成された酸化被膜層と、
導電性を有し、前記酸化被膜層の上に形成された配線部と、
を備え、
前記酸化被膜層は、
前記配線部が形成された第1酸化被膜部と、
前記第1酸化被膜部と離間して形成され、前記配線部が形成されていない第2酸化被膜部と、
を有し、
前記第1酸化被膜部と前記第2酸化被膜部との間は、前記基材表面が露出していることを特徴とする、
配線基板。
【請求項2】
配線基板であって、
アルミニウム(Al)を主成分とする金属材料から成る基材と、
前記金属材料の陽極酸化被膜であり、前記基材表面上に形成された酸化被膜層と、
導電性を有し、前記酸化被膜層の上に形成された配線部と、
を備え、
前記酸化被膜層は、
前記配線部が形成された第1酸化被膜部と、
前記第1酸化被膜部と離間して形成され、前記基材表面が露出した給電部を有する第2酸化被膜部と、
を有し、
前記第1酸化被膜部と前記第2酸化被膜部との間は、前記基材表面が露出していることを特徴とする、
配線基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配線基板であって、
前記基材は、
前記酸化被膜層が形成された第1主面と、前記第1主面の裏面である第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを繋ぎ前記酸化被膜層が形成されていない側面と、を備え、
前記配線基板は、
前記基材の前記第1主面の周縁部の少なくとも一部に、前記酸化被膜層が形成されておらず、前記基材が露出することを特徴とする、
配線基板。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の配線基板であって、
前記基材は、
前記第1酸化被膜部が形成された第1主面と、前記第1主面の裏面である第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを繋ぐ側面と、を備え、
前記第2酸化被膜部は、前記第2主面、および前記側面の少なくともいずれか一方に形成されていることを特徴とする、
配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED(発光ダイオード:light emitting diode)やパワー半導体などの熱を多く発生する素子が搭載される配線基板としては、高放熱性の配線基板が用いられている。高放熱性の配線基板として、アルミニウム基板にアルマイト被膜を施して電子基板(以下、アルマイト基板とも呼ぶ)として扱う技術が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。アルマイト基板は、絶縁性を備えつつ、アルミニウム基板の熱伝導率、および熱拡散率を維持することができるため、高放熱化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-124324号公報
【特許文献2】特開2012-201891号公報
【特許文献3】特許第6190791号公報
【特許文献4】特許第6257944号公報
【特許文献5】特開昭59-224192号公報
【特許文献6】国際公開第2013/018344号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
次世代自動車においては、多くの車外表示(光)に高輝度LEDが多用される。車載LEDの使用数が飛躍的に増えるため高密度化が必要となり、また、昼間点灯のために高出力が必要になる。LED使用数の増加およびLEDの高出力化に伴い、LEDが搭載される配線基板のさらなる高放熱化が望まれている。
【0005】
そこで、高放熱性の配線基板として、アルマイト基板が検討されている。しかしながら、アルマイト被膜は耐熱性が低く、加温されるとアルマイト表面にクラックが生じやすいため、絶縁性の保証が難しいという課題があった。特許文献1では、配線電極が形成される部分のアルミニウム基板の厚みを厚くし、当該部分のアルマイト層を薄くすることにより、配線電極形成のプロセス時に発生する熱を、アルミニウム基板に放熱しやすくすることにより、配線電極形成のプロセス時のクラックの発生を抑制する技術が提案されている。特許文献2では、基材として用いるアルミニウム合金における化学成分組成および陽極酸化皮膜中に存在する金属間化合物の大きさや個数を適切に規定すること、陽極酸化皮膜の少なくとも一部を絶縁物で被覆または表面修飾した複合皮膜構造にすることにより、高温耐クラック性を実現する技術が提案されている。特許文献4には、アルミニウム合金の表面に、非晶質アルマイト層と結晶化アルマイト層とをこの順に設けることにより、クラックを抑制する技術が提案されている。
【0006】
しかしながら、アルマイト被膜は些細な欠陥からでもクラックを生じやすく、上記従来技術によっても、クラックが発生する虞がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、アルミニウムを主成分とする金属材料から成る基材と、基材表面上に形成された酸化被膜層を有する配線基板において、酸化被膜層のクラックの発生または進展を抑制する他の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本発明の一形態によれば、配線基板が提供される。この配線基板は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属材料から成る基材と、前記金属材料の陽極酸化被膜であり、前記基材表面上に形成された酸化被膜層と、導電性を有し、前記酸化被膜層の上に形成された配線部と、を備え、前記酸化被膜層は、前記配線部が形成された第1酸化被膜部と、前記第1酸化被膜部と離間して形成され、前記配線部が形成されていない第2酸化被膜部と、を有し、前記第1酸化被膜部と前記第2酸化被膜部との間は、前記基材表面が露出している。
【0010】
この構成によれば、配線部が形成された第1酸化被膜部と、配線部が形成されていない第2酸化被膜部とが離間して形成され、かつ第1酸化被膜部と第2酸化被膜部との間は、基材表面が露出している。すなわち、第1酸化被膜部と第2酸化被膜部とは繋がっていない。そのため、第2酸化被膜部にクラックが生じ、進展したとしても、酸化被膜層が形成されておらず基材表面が露出している部分でクラックの進展が食い止められ、第1酸化被膜部まではクラックが進展しない。そのため、配線部が形成されており、電子部品が搭載される製品領域である第1酸化被膜部におけるクラックを抑制することができ、配線基板の信頼性を向上させることができる。
【0011】
(2)本発明の他の形態によれば、配線基板が提供される。この配線基板は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属材料から成る基材と、前記金属材料の陽極酸化被膜であり、前記基材表面上に形成された酸化被膜層と、導電性を有し、前記酸化被膜層の上に形成された配線部と、を備え、前記酸化被膜層は、前記配線部が形成された第1酸化被膜部と、前記第1酸化被膜部と離間して形成され、前記基材表面が露出した給電部を有する第2酸化被膜部と、を有し、前記第1酸化被膜部と前記第2酸化被膜部との間は、前記基材表面が露出している。
【0012】
この構成によれば、配線部が形成された第1酸化被膜部と、基材表面が露出した給電部を有する第2酸化被膜部とが離間して形成され、かつ第1酸化被膜部と第2酸化被膜部との間は、基材表面が露出している。すなわち、第1酸化被膜部と第2酸化被膜部とは繋がっていない。そのため、第2酸化被膜部に給電部を起点としてクラックが生じ、進展したとしても、酸化被膜層が形成されておらず基材表面が露出している部分でクラックの進展が食い止められ、第1酸化被膜部まではクラックが進展しない。そのため、配線部が形成されており、電子部品が搭載される製品領域である第1酸化被膜部におけるクラックを抑制することができ、配線基板の信頼性を向上させることができる。
【0013】
(3)上記形態の配線基板であって、前記基材は、前記酸化被膜層が形成された第1主面と、前記第1主面の裏面である第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを繋ぎ前記酸化被膜層が形成されていない側面と、を備え、前記配線基板は、前記基材の前記第1主面の周縁部の少なくとも一部に、前記酸化被膜層が形成されておらず、前記基材が露出してもよい。基材の縁、角等に酸化被膜層が形成されると、酸化被膜層の厚さが不均一になり、クラックが発生しやすい。この形態の配線基板によれば、第1主面の周縁部の少なくとも一部に酸化被膜層が形成されていないため、クラックの発生を抑制することができる。
【0014】
(4)上記形態の配線基板であって、前記基材は、前記第1酸化被膜部が形成された第1主面と、前記第1主面の裏面である第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを繋ぐ側面と、を備え、前記第2酸化被膜部は、前記第2主面、および前記側面の少なくともいずれか一方に形成されていてもよい。このようにすると、配線部が形成された第1酸化被膜部が第2酸化被膜部と異なる面に形成されているため、電子部品を搭載可能な領域を大きくすることができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、配線基板を含む製品、配線基板の製造方法、配線基板を含む製品の製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の配線基板の平面構成を概略的に示す説明図である。
図2】第1実施形態の配線基板の断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】第2実施形態の配線基板の平面構成を概略的に示す説明図である。
図4】第3実施形態の配線基板の構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の配線基板100の平面構成を概略的に示す説明図であり、図2は、配線基板100の断面構成を概略的に示す説明図である。図2では、図1におけるA-A断面を示している。配線基板100は、平面形状が略正方形状の平板状の基材10と、基材10の表面上に形成された酸化被膜層20と、酸化被膜層20の上に形成された配線部30と、を備える。酸化被膜層20は、配線部30が形成された第1酸化被膜部21と、配線部30が形成されていない第2酸化被膜部22と、を有する。第2酸化被膜部22は、基材10の表面が露出した給電部23を有する。
【0018】
基材10は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属材料から成る。基材10はアルミニウムを主成分とする金属材料から成るため、熱伝導率および熱拡散率が高い。本実施形態において、主成分とは、質量%が最も高い成分である。
【0019】
基材10は、図2に示すように、第1主面11と、第1主面11の裏面である第2主面12と、第1主面11と第2主面12とを繋ぐ側面13と、を備える平板状である。本実施形態では、基材10の第1主面11に、第1酸化被膜部21および第2酸化被膜部22が形成されており、第2主面12と側面13には、酸化被膜層20が形成されていない。
【0020】
酸化被膜層20は、アルミニウムを主成分とする金属材料から成る平板(以下、「元板」とも呼ぶ)に陽極酸化処理をして表面を変質させて形成された酸化被膜(アルマイト)である。すなわち、本実施形態において、元板に陽極酸化処理をして形成された酸化被膜部分が酸化被膜層20であり、変質していない素地の部分が基材10である。酸化被膜層20は、絶縁性を有する。
【0021】
上述の通り、酸化被膜層20は、配線部30が形成された1つの第1酸化被膜部21と、配線部30が形成されていない2つの第2酸化被膜部22と、を有する。第1酸化被膜部21は、図1に示すように、平面形状が角丸長方形状、換言すると、角が丸面取りされた長方形状である。第1酸化被膜部21の上には配線部30が形成されており、第1酸化被膜部21は、電子部品が搭載される領域(以下、製品領域とも呼ぶ)である。
【0022】
配線部30は、主成分が互いに異なる3種の金属薄膜が積層されて構成されている。具体的には、チタン(Ti)を主成分とする金属薄膜と、白金(Pt)を主成分とする金属薄膜と、金(Au)を主成分とする金属薄膜と、が酸化被膜層20側から順に積層されている。チタンは、酸化被膜層20との密着性が良好であり、白金は金との密着性がチタンよりも良好であり、金は高導電性、抗腐食性でありボンディング性が良好であるため、この構成によれば、配線部30の剥離が抑制され、高導電性、抗腐食性でありボンディング性が良好な配線層を実現することができる。なお、図2では、各薄膜を区別して図示していない。配線部30は、蒸着、スパッタリング等の公知の方法により形成することができる。
【0023】
2つの第2酸化被膜部22は、略同一の形状に形成されており、図1に示すように、それぞれ、平面形状が角丸長方形状である。第2酸化被膜部22の上には配線部30が形成されておらず、電子部品が搭載される領域ではない。第2酸化被膜部22は、基材10の表面が露出した給電部23を有する。給電部23は、上述の陽極酸化処理を行う際の通電用治具との接点であり、陽極酸化が行われた後も基材10の表面が露出している。給電部23は、平面形状が真円状(図1)の貫通孔(図2)である。給電部23の平面形状は、真円でなくてもよく、略楕円状、略多角形状等、種々の形状であってもよい。給電部は、通電するための電極痕、通電痕、治具痕とも呼ばれる。
【0024】
図示するように、第1酸化被膜部21と第2酸化被膜部22とは離間して形成され、第1酸化被膜部21と第2酸化被膜部22との間は、基材10の表面が露出している。すなわち、第1酸化被膜部21と第2酸化被膜部22とは、繋がっていない。換言すると、第1酸化被膜部21と第2酸化被膜部22とは、分断されている。
【0025】
酸化被膜層20は、アルマイトであり、振動、加熱等によってクラックが生じやすい。特に、第2酸化被膜部22は給電部23を有するため、給電部23を起点としてクラックが生じやすい。本実施形態において、上述の通り、第1酸化被膜部21と第2酸化被膜部22とは離間して設けられており、第1酸化被膜部21と第2酸化被膜部22との間は、基材10の表面が露出しているため、第2酸化被膜部22にクラックが生じ、進展したとしても、酸化被膜層20が形成されておらず基材10の表面が露出している部分でクラックの進展が食い止められ、第1酸化被膜部まではクラックが進展しない。そのため、配線が形成されており、製品領域となる第1酸化被膜部21におけるクラックを抑制することができる。
【0026】
また、図1に示すように、基材10の第1主面11の周縁部には、酸化被膜層20が形成されておらず、基材10が露出している。換言すると、酸化被膜層20は、基材10の縁から離して形成されている。すなわち、加熱や衝撃によってクラックの起点になる可能性が高い基材10の端部(縁、角)から離して酸化被膜層20が形成されているため、酸化被膜層20のクラックを、抑制することができる。
【0027】
本実施形態の配線基板100では、第1酸化被膜部21と第2酸化被膜部22とが、離間して形成されている。このように、基材10の表面に部分的に酸化被膜を形成する方法としては、例えば、元板の表面全面にアルマイトを形成した後に、不要部(基材10の表面を露出させる部分)を、湿式の化学処理、レーザー加工等により除去する方法(第1の方法)を用いることができる。また、例えば、元板の表面の不要部(基材10の表面を露出させる部分)に、フォトリソグラフィでマスキングを施した後にアルマイトを形成する方法(第2の方法)を用いることもできる。
【0028】
第1の方法にて第1酸化被膜層21および第2酸化被膜部22を形成した場合、基材10の厚さは略一様であり、元板の厚さより薄い。一方、第2の方法にて第1酸化被膜層21および第2酸化被膜部22を形成した場合、基材10の第1主面11が露出している部分(図1において斜線ハッチングを付して表示している部分)の基材10の厚さは、元板の厚さと略同じであり、第1酸化被膜層21および第2酸化被膜部22が形成されている部分の基材10の厚さは、基材10の第1主面11が露出している部分より厚さが薄くなっている。すなわち、第2の方法にて第1酸化被膜層21および第2酸化被膜部22を形成した場合は、基材10の厚みが部分的に異なっている。
【0029】
一般に、アルマイトは、被膜上に欠陥(微小な傷、凹み)が存在したり、基材10の角、縁など突出部する部分に形成されている場合、振動や加熱によって容易にクラックを生じる。アルマイトは、一度クラックが生じると激しく進展し、別の欠陥に突き当たるまで止まらないため、基板上をクラックが横断するような事態になる虞がある。本実施形態の配線基板100において、酸化被膜層20はアルマイトであり、第2酸化被膜部22は給電部23を有するため、給電部23を起点としてクラックが生じやすい。これに対し、本実施形態の配線基板100によれば、第1酸化被膜部21と、第2酸化被膜部22とは繋がっていないため、第2酸化被膜部22にクラックが生じ、進展したとしても、基材10の表面が露出している部分でクラックの進展が食い止められ、第1酸化被膜部21まではクラックが進展しない。第1酸化被膜部21の上には配線部30が形成されており、第1酸化被膜部21は電子部品が搭載される領域(製品領域)である。すなわち、本実施形態の配線基板100によれば、製品領域において、クラックの発生を抑制することができ、絶縁性を確保することができるため、配線基板100の信頼性を向上させることができる。
【0030】
また、上述の通り、基材10の縁、角等に酸化被膜層20が形成されると、酸化被膜層20の厚さが不均一になり、クラックが発生しやすい。これに対し、本実施形態の配線基板100によれば、基材10の第1主面11の周縁部には酸化被膜層20が形成されていないため(換言すると、酸化被膜層20は、基材10の縁から離して形成されているため)、クラックの発生を抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態の配線基板100では、基材10の第1主面11の周縁部と、側面13と、第2主面12には酸化被膜層20を形成しないため、酸化被膜層20を上述の第2の方法で形成する場合、酸化被膜層20を形成しない部分にレジストによりマスキングを施す。マスキング後にアルマイト処理(陽極酸化被膜処理)を施す際、元板の縁や角にレジストの端が配置されると、レジストの剥離が生じる可能性がある。これに対し、本実施形態の配線基板100では、レジストの端が元板の縁や角に配置されないため、レジストの剥離がより抑制され、酸化被膜層20の端部の厚さの不均一を抑制することができ、欠陥を抑制することができる。その結果、酸化被膜層20のクラックの発生を抑制することができる。
【0032】
さらに、第1酸化被膜部21の平面形状は、角丸長方形状であり、応力が集中する角が形成されていないため、クラックの発生を抑制することができる。
【0033】
本実施形態の配線基板100によれば、製品領域のクラックを抑制することができるため、第1酸化被膜部21により絶縁性を担保しつつ、熱伝導率が高いアルミニウムを主成分とする基材10により高放熱性を得ることができる。そのため、例えば、発熱量が大きい高輝度LEDを高密度化して搭載する配線基板として用いることができる。その他、CPU(Central Processing Unit)、パワーデバイス、太陽電池等の半導体や液晶等に適用することもできる。
【0034】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態の配線基板100Aの平面構成を概略的に示す説明図である。本実施形態の配線基板100Aが、第1実施形態の配線基板100と異なる点は、第2酸化被膜部22Aの平面形状および配置である。以下に説明する実施形態において、第1実施形態の配線基板100と同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する。
【0035】
本実施形態の第2酸化被膜部22Aは、図示するように、平面形状が長方形状であり、図3に示す平面視において、第2酸化被膜部22Aの長辺の一方が基材10の第1主面11の一辺と一致するように配置されている。すなわち、基材10の第1主面11の周縁部の一部に、酸化被膜層20が形成されておらず、基材10が露出している。このようにしても、第1酸化被膜部21は、基材10の縁から離して形成されているため、第1酸化被膜部21におけるクラックの発生を抑制することができる。また、第1実施形態の配線基板100と同様に、第1酸化被膜部21と第2酸化被膜部22Aとが繋がっていないため、第2酸化被膜部22Aにおいてクラックが発生しても、第1酸化被膜部21まで進展することを抑制することができる。
【0036】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態の配線基板100Bの構成を概略的に示す説明図である。図4(B)は基材10の第1主面11を示し、図4(B)に示す平面図の紙面左側の側面13Lを図4(A)、紙面右側の側面13Rを図4(C)に、それぞれ示す。図4(A)、(C)において、第1酸化被膜部21Bおよび配線部30の図示を省略している。本実施形態の配線基板100Bが、第1実施形態の配線基板100と異なる点は、第1酸化被膜部21Bの平面形状、第2酸化被膜部22Bの平面形状、およびその配置である。
【0037】
第1酸化被膜部21Bの平面形状は、図4(B)に示すように、角丸正方形状であり、第1実施形態の第1酸化被膜部21より、面積が広い。第1酸化被膜部21Bは、第1実施形態と同様に、基材10の縁から離して形成されている。
【0038】
第2酸化被膜部22Bの平面形状は、図4(A)、(C)に示すように、長方形状であり、第2酸化被膜部22Bは、基材10の側面13の一部に形成されている。他の実施形態では、第2酸化皮膜部は、基材10の側面13の全面に形成されてもよい。
【0039】
本実施形態の配線基板100Bによれば、第2酸化被膜部22Bが側面13に形成されており、第1酸化被膜部21Bが形成されている第1主面11と異なる面に形成されているため、第1酸化被膜部21Bの面積を第1実施形態の第1酸化被膜部21より大きくすることができる。すなわち、製品領域を大きくすることができる。
【0040】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0041】
・配線部30の主成分、および構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、Al、Au、Pt、Ti、Cu、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Ag等の金属又はこれらの合金の単層又は積層構造で形成することができる。また、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)等の導電性材料を用いてもよい。
【0042】
・上記実施形態において、1つの第1酸化被膜部21が形成された配線基板100を例示したが、第1酸化被膜部21が2つ以上形成されてもよい。いわゆる、多数個取りの配線基板として、配線基板を形成してもよい。配線基板が、2つ以上の第1酸化被膜部21を備える場合にも、第1酸化被膜部21と第2酸化被膜部22とが離間して形成されており、第1酸化被膜部21と第2酸化被膜部22との間は基材10の表面が露出していればよい。同様に、第2酸化被膜部22は、1つであってもよいし、3つ以上形成されてもよい。
【0043】
・上記実施形態において、第1酸化被膜部21が基材10の縁から離れて形成されている例を示したが、第1酸化被膜部21の端(縁)が、基材10の縁(周縁)と一致するように形成されてもよい。このようにしても、第2酸化被膜部22が第1酸化被膜部21と離間して形成されており、第2酸化被膜部22と第1酸化被膜部21との間は基材10の表面が露出していることにより、第2酸化被膜部22でクラックが発生した場合に、クラックが第1酸化被膜部21まで進展することを抑制することができる。
【0044】
・上記実施形態において、基材10の第2主面12には酸化被膜層20が形成されていない例を示したが、第2主面12にも酸化被膜層20が形成されていてもよい。このようにすると、基材10の第2主面12側にも電子部品を搭載することができる。
【0045】
・上記実施形態において、第2酸化被膜部22が1つの給電部23を備える例を示したが、第2酸化被膜部22が給電部23を備えなくてもよいし、2つ以上の給電部23を備えてもよい。
【0046】
・上記実施形態において、第2酸化被膜部22に配線部30が形成されていない例を示したが、配線部30が形成されていてもよい。このようにしても、給電部23を有する第2酸化被膜部22においてクラックが発生した場合に、第2酸化被膜部22と離間して形成された第1酸化被膜部21にクラックが進展することを抑制することができる。
【0047】
・第1酸化被膜部21が基材10の第1主面11に形成され、第2酸化被膜部22が第2主面12に形成されてもよい。また、第1酸化被膜部21が基材10の第1主面11に形成され、第2酸化被膜部22が第2主面12および側面13に形成されてもよい。
【0048】
・酸化被膜層20の平面形状は、上記実施形態に限定されない。例えば、第1酸化被膜部21が角が面取りされていない四角形状であってもよい。また、酸化被膜層20の平面形状は、三角形、五角形、六角形等の多角形状であってもよいし、円形状、楕円形状等の多角形以外の形状であってもよい。多角形状の場合には、角が面取りされていてもされていなくてもよい。
【0049】
・上記実施形態において、給電部23が第2酸化被膜部22の中心に形成されている例を示したが、給電部23の配置は上記実施形態に限定されず、例えば、第2酸化被膜部22の端(基材10の端を含む)に配置されてもよい。
【0050】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0051】
10…基材
11…第1主面
12…第2主面
13、13L、13R…側面
20…酸化被膜層
21…第1酸化被膜部
21、21B…第1酸化被膜部
22、22A、22B…第2酸化被膜部
23…給電部
30…配線部
100、100A、100B…配線基板
図1
図2
図3
図4