(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139652
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20220915BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220915BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20220915BHJP
G01R 31/378 20190101ALI20220915BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M4/587
G01R31/387
G01R31/378
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040135
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】安谷屋 皓子
(72)【発明者】
【氏名】波多野 順一
(72)【発明者】
【氏名】須藤 勇一郎
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
2G216AA03
2G216AB01
2G216BA63
2G216BA64
2G216BA66
2G216CB03
2G216CB31
2G216CB41
2G216CB55
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF41
5H030FF43
5H030FF51
5H030FF52
5H050AA02
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB08
5H050GA18
5H050HA19
(57)【要約】
【課題】リチウムイオンを吸蔵及び放出するグラファイトを用いた負極を有するリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定する。
【解決手段】第1の時点での充電停止時または放電停止時から電池Bの分極が解消するまでの第1の分極解消時間と、第1の時点よりも後の第2の時点での充電停止時または放電停止時から電池Bの分極が解消するまでの第2の分極解消時間とに基づいて判断されるステージの切り替わりタイミングを基準として測定される基準容量と、記憶部11に記憶されているステージ容量とに基づいて、電池Bの満充電容量を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを吸蔵及び放出するグラファイトを用いた負極を有するリチウムイオン電池と、
記憶部と、
前記リチウムイオン電池の満充電容量を推定する推定部と、
を備え、
前記リチウムイオン電池は、横軸が前記リチウムイオン電池の充電状態を示し縦軸が前記リチウムイオン電池の開回路電圧を示す2次元座標において、単位充電状態あたりの開回路電圧の変化量の割合が所定値以下である複数のプラトー領域と、前記割合が前記所定値より大きい複数の変化領域とを有すると共に、前記複数のプラトー領域のうちの所定のプラトー領域と前記所定のプラトー領域に隣接する1つ以上の変化領域とからなるステージを複数有し、
前記記憶部は、複数の前記ステージのうち、少なくとも1つ以上の前記ステージに対応する劣化前の基準容量を記憶し、
前記推定部は、
前記ステージが隣接する別のステージに切り替わるタイミングまで、または、切り替わるタイミングから前記ステージに対応するステージ容量を測定し、
前記基準容量及び前記ステージ容量に基づいて前記リチウムイオン電池の満充電容量を推定し、
前記ステージの切り替わりは、第1の時点での充電停止時または放電停止時から前記リチウムイオン電池の分極が解消するまでの第1の分極解消時間と、前記第1の時点よりも後の第2の時点での充電停止時または放電停止時から前記リチウムイオン電池の分極が解消するまでの第2の分極解消時間と、に基づいて前記推定部が判断する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置であって、
前記推定部は、前記第2の分極解消時間が前記第1の分極解消時間より小さいとき、前記第2の時点での充電停止時または放電停止時の前記ステージが別のステージに切り替わったと判断する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電装置であって、
前記推定部は、前記第1の分極解消時間と、前記第2の分極解消時間との差が分極解消時間閾値以上であり、かつ、前記第2の分極解消時間が前記第1の分極解消時間より小さいとき、前記第2の時点での充電停止時または放電停止時の前記ステージが切り替わったと判断する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
請求項2に記載の蓄電装置であって、
前記推定部は、前記第1の分極解消時間が第1の閾値以上であり、かつ、前記第2の分極解消時間が前記第1の閾値より小さい第2の閾値以下であり、かつ、前記第1の時点の前記リチウムイオン電池の充電状態と前記第2の時点の前記リチウムイオン電池の充電状態との差が充電状態閾値以下であるとき、前記第2の時点での充電停止時または放電停止時の前記ステージが切り替わったと判断する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の蓄電装置であって、
複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、を含み、
前記基準容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、完全放電状態の前記リチウムイオン電池の容量との差であり、
前記ステージ容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングから、前記リチウムイオン電池が満充電状態になるまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、
前記推定部は、前記基準容量と前記ステージ容量との加算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載の蓄電装置であって、
複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、を含み、
前記基準容量は、前記放電停止時の前記ステージが第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、完全放電状態の前記リチウムイオン電池の容量との差であり、
前記ステージ容量は、前記リチウムイオン電池が満充電状態であるときから、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、
前記推定部は、前記基準容量と前記ステージ容量との加算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項7】
請求項1~4の何れか1項に記載の蓄電装置であって、
複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、前記第1のステージに隣接する第3のステージと、を含み、
前記基準容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、前記充電停止時の前記ステージが前記第3のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、
前記ステージ容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第3のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングから、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、
前記記憶部は、前記リチウムイオン電池が劣化する前の満充電容量である基準満充電容量をさらに記憶し、
前記推定部は、前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、前記基準満充電容量と前記収縮率との乗算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項8】
請求項1~4の何れか1項に記載の蓄電装置であって、
複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、前記第1のステージに隣接する第3のステージと、を含み、
前記基準容量は、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、前記放電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第3のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、
前記ステージ容量は、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングから、前記放電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第3のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、
前記記憶部は、前記リチウムイオン電池が劣化する前の満充電容量である基準満充電容量をさらに記憶し、
前記推定部は、前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、前記基準満充電容量と前記収縮率との乗算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項9】
請求項1~4の何れか1項に記載の蓄電装置であって、
複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、を含み、
前記基準容量は、満充電状態の前記リチウムイオン電池の容量と、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、
前記ステージ容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングから、前記リチウムイオン電池が満充電状態になるまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、
前記記憶部は、前記リチウムイオン電池が劣化する前の満充電容量である基準満充電容量をさらに記憶し、
前記推定部は、前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、前記基準満充電容量と前記収縮率との乗算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項10】
請求項1~4の何れか1項に記載の蓄電装置であって、
複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、を含み、
前記基準容量は、満充電状態の前記リチウムイオン電池の容量と、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、
前記ステージ容量は、前記リチウムイオン電池が満充電状態であるときから前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、
前記記憶部は、前記リチウムイオン電池が劣化する前の満充電容量である基準満充電容量をさらに記憶し、
前記推定部は、前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、前記基準満充電容量と前記収縮率との乗算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項11】
請求項1~4の何れか1項に記載の蓄電装置であって、
複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、前記第1のステージに隣接する第3のステージと、を含み、
前記基準容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、前記充電停止時の前記ステージが前記第3のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、
前記ステージ容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第3のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングから、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、
前記記憶部は、前記充電停止時の前記ステージが前記第3のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、完全放電状態の前記リチウムイオン電池の容量との差である基準完全放電側容量をさらに記憶し、
前記推定部は、
前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングから前記リチウムイオン電池が満充電状態になるまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量を満充電側容量として取得し、
前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、
前記基準完全放電側容量と前記収縮率との乗算値を、完全放電側容量とし、
前記完全放電側容量と、前記ステージ容量と、前記満充電側容量との加算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項12】
請求項1~4の何れか1項に記載の蓄電装置であって、
複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、前記第1のステージに隣接する第3のステージと、を含み、
前記基準容量は、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、前記放電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第3のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、
前記ステージ容量は、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングから、前記放電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第3のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、
前記記憶部は、前記放電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第3のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、完全放電状態の前記リチウムイオン電池の容量との差である基準完全放電側容量をさらに記憶し、
前記推定部は、
前記リチウムイオン電池が満充電状態であるときから前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングになるまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量を満充電側容量として取得し、
前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、
前記基準完全放電側容量と前記収縮率との乗算値を、完全放電側容量とし、
前記完全放電側容量と、前記ステージ容量と、前記満充電側容量との加算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定する
ことを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の満充電容量を推定する蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置として、電池の開回路電圧により充電前後の電池の充電率(満充電容量に対する残容量の割合)を求めるとともに、充電中の電池に流れる電流の積算値を求め、電流の積算値を充電前後の充電率の差で除算した結果を電池の満充電容量として推定するものがある。
【0003】
ところで、単位充電状態あたりの開回路電圧の変化量の割合が所定値以下であるプラトー領域と、単位充電状態あたりの開回路電圧の変化量の割合が所定値より大きい変化領域とを有する電池が存在する。特に、リチウムイオンを吸蔵及び放出するグラファイト(黒鉛)を用いた負極を有するリチウムイオン電池は、プラトー領域に比べて変化領域が少ない場合がある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0004】
そのため、上記蓄電装置では、グラファイトを用いた負極を有するリチウムイオン電池の満充電容量を推定する場合、開回路電圧がプラトー領域に入っていると、開回路電圧の測定誤差の影響により充電率の推定精度が低下するため、満充電容量の推定精度も低下するという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、グラファイトを用いた負極を有するリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定することが可能な蓄電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である蓄電装置は、リチウムイオンを吸蔵及び放出するグラファイトを用いた負極を有するリチウムイオン電池と、記憶部と、前記リチウムイオン電池の満充電容量を推定する推定部とを備える。
【0008】
前記リチウムイオン電池は、横軸が前記リチウムイオン電池の充電状態を示し縦軸が前記リチウムイオン電池の開回路電圧を示す2次元座標において、単位充電状態あたりの開回路電圧の変化量の割合が所定値以下である複数のプラトー領域と、前記割合が前記所定値より大きい複数の変化領域とを有すると共に、前記複数のプラトー領域のうちの所定のプラトー領域と前記所定のプラトー領域に隣接する1つ以上の変化領域とからなるステージを複数有する。
【0009】
前記記憶部は、複数の前記ステージのうち、少なくとも1つ以上の前記ステージに対応する劣化前の基準容量を記憶する。
【0010】
前記推定部は、前記ステージが隣接する別のステージに切り替わるタイミングまで、または、切り替わるタイミングから前記ステージに対応するステージ容量を測定し、前記基準容量及び前記ステージ容量に基づいて前記リチウムイオン電池の満充電容量を推定する。
【0011】
前記ステージの切り替わりは、第1の時点での充電停止時または放電停止時から前記リチウムイオン電池の分極が解消するまでの第1の分極解消時間と、前記第1の時点よりも後の第2の時点での充電停止時または放電停止時から前記リチウムイオン電池の分極が解消するまでの第2の分極解消時間と、に基づいて前記推定部が判断する。
【0012】
グラファイトを用いた負極を有するリチウムイオン電池では、ステージが切り替わるタイミングにおいて、単位充電状態あたりの分極解消時間の変化量の割合が比較的大きくなるという特性を有している。そのため、ステージが切り替わるタイミングを用いてステージ容量を測定し、記憶部に記憶されている基準容量及び測定したステージ容量に基づいて満充電容量を推定することにより、開回路電圧の測定誤差の影響をなくして満充電容量を推定することができるため、満充電容量を精度よく推定することができる。
【0013】
また、前記推定部は、前記第2の分極解消時間が前記第1の分極解消時間より小さいとき、前記第2の時点での充電停止時または放電停止時の前記ステージが別のステージに切り替わったと判断するように構成してもよい。
【0014】
これにより、ステージの切り替わりを精度よく判断することができる。
【0015】
また、前記推定部は、前記第1の分極解消時間と、前記第2の分極解消時間との差が分極解消時間閾値以上であり、かつ、前記第2の分極解消時間が前記第1の分極解消時間より小さいとき、前記第2の時点での充電停止時または放電停止時の前記ステージが切り替わったと判断するように構成してもよい。
【0016】
これにより、ステージの切り替わりを精度よく判断することができる。
【0017】
また、前記推定部は、前記第1の分極解消時間が第1の閾値以上であり、かつ、前記第2の分極解消時間が前記第1の閾値より小さい第2の閾値以下であり、かつ、前記第1の時点の前記リチウムイオン電池の充電状態と前記第2の時点の前記リチウムイオン電池の充電状態との差が充電状態閾値以下であるとき、前記第2の時点での充電停止時または放電停止時の前記ステージが切り替わったと判断するように構成してもよい。
【0018】
これにより、ステージの切り替わりを精度よく判断することができる。
【0019】
また、複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、を含み、前記基準容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、完全放電状態の前記リチウムイオン電池の容量との差であり、前記ステージ容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングから、前記リチウムイオン電池が満充電状態になるまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、前記推定部は、前記基準容量と前記ステージ容量との加算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定するように構成してもよい。
【0020】
これにより、劣化後のリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定することができる。
【0021】
また、複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、を含み、前記基準容量は、前記放電停止時の前記ステージが第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、完全放電状態の前記リチウムイオン電池の容量との差であり、前記ステージ容量は、前記リチウムイオン電池が満充電状態であるときから、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、前記推定部は、前記基準容量と前記ステージ容量との加算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定するように構成してもよい。
【0022】
これにより、劣化後のリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定することができる。
【0023】
また、複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、前記第1のステージに隣接する第3のステージと、を含み、前記基準容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、前記充電停止時の前記ステージが前記第3のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、前記ステージ容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第3のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングから、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、前記記憶部は、前記リチウムイオン電池が劣化する前の満充電容量である基準満充電容量をさらに記憶し、前記推定部は、前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、前記基準満充電容量と前記収縮率との乗算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定するように構成してもよい。
【0024】
これにより、劣化後のリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定することができる。
【0025】
また、複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、前記第1のステージに隣接する第3のステージと、を含み、前記基準容量は、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、前記放電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第3のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、前記ステージ容量は、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングから、前記放電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第3のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、前記記憶部は、前記リチウムイオン電池が劣化する前の満充電容量である基準満充電容量をさらに記憶し、前記推定部は、前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、前記基準満充電容量と前記収縮率との乗算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定するように構成してもよい。
【0026】
これにより、劣化後のリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定することができる。
【0027】
また、複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、を含み、前記基準容量は、満充電状態の前記リチウムイオン電池の容量と、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、前記ステージ容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングから、前記リチウムイオン電池が満充電状態になるまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、前記記憶部は、前記リチウムイオン電池が劣化する前の満充電容量である基準満充電容量をさらに記憶し、前記推定部は、前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、前記基準満充電容量と前記収縮率との乗算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定するように構成してもよい。
【0028】
これにより、劣化後のリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定することができる。
【0029】
また、複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、を含み、前記基準容量は、満充電状態の前記リチウムイオン電池の容量と、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、前記ステージ容量は、前記リチウムイオン電池が満充電状態であるときから前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、前記記憶部は、前記リチウムイオン電池が劣化する前の満充電容量である基準満充電容量をさらに記憶し、前記推定部は、前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、前記基準満充電容量と前記収縮率との乗算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定するように構成してもよい。
【0030】
これにより、劣化後のリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定することができる。
【0031】
また、複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、前記第1のステージに隣接する第3のステージと、を含み、前記基準容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、前記充電停止時の前記ステージが前記第3のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、前記ステージ容量は、前記充電停止時の前記ステージが前記第3のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングから、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、前記記憶部は、前記充電停止時の前記ステージが前記第3のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、完全放電状態の前記リチウムイオン電池の容量との差である基準完全放電側容量をさらに記憶し、前記推定部は、前記充電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第2のステージに切り替わるタイミングから前記リチウムイオン電池が満充電状態になるまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量を満充電側容量として取得し、前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、前記基準完全放電側容量と前記収縮率との乗算値を、完全放電側容量とし、前記完全放電側容量と、前記ステージ容量と、前記満充電側容量との加算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定するように構成してもよい。
【0032】
これにより、劣化後のリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定することができる。
【0033】
また、複数の前記ステージは、少なくとも第1のステージと、前記第1のステージに隣接する第2のステージと、前記第1のステージに隣接する第3のステージと、を含み、前記基準容量は、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、前記放電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第3のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量との差であり、前記ステージ容量は、前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングから、前記放電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第3のステージに切り替わるタイミングまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量であり、前記記憶部は、前記放電停止時の前記ステージが前記第1のステージから前記第3のステージに切り替わるタイミングにおける前記リチウムイオン電池の容量と、完全放電状態の前記リチウムイオン電池の容量との差異である基準完全放電側容量をさらに記憶し、前記推定部は、前記リチウムイオン電池が満充電状態であるときから前記放電停止時の前記ステージが前記第2のステージから前記第1のステージに切り替わるタイミングになるまでの間に前記リチウムイオン電池に流れる電流の積算値から測定される容量を満充電側容量として取得し、前記基準容量に対する前記ステージ容量の収縮率を求め、前記基準完全放電側容量と前記収縮率との乗算値を、完全放電側容量とし、前記完全放電側容量と、前記ステージ容量と、前記満充電側容量との加算値を、前記リチウムイオン電池の満充電容量として推定するように構成してもよい。
【0034】
これにより、劣化後のリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、グラファイトを用いた負極を有するリチウムイオン電池の満充電容量を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】充電状態開回路電圧曲線及び電池の容量と分極解消時間との相関を示す情報D1の一例を示す図である。
【
図3】充電状態開回路電圧曲線及び電池の容量と分極解消時間との相関を示す情報D2の一例を示す図である。
【
図4】実施例1における推定部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】実施例1における推定部の動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図6】電池が劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D1´の一例を示す図である。
【
図7】電池が劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D2´の一例を示す図である。
【
図8】電池が劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D1´´の一例を示す図である。
【
図9】電池が劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D2´´の一例を示す図である。
【
図10】実施例2における推定部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11】実施例2における推定部の動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図12】電池が劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D1´´´の一例を示す図である。
【
図13】電池が劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D2´´´の一例を示す図である。
【
図14】実施例3における推定部の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
【0038】
図1に示す蓄電装置BP(電池パック)は、電気自動車などの車両Veに搭載され、電池ECU(Electronic Control Unit)1と、電池Bと、電流計2と、温度計3と、スイッチSW1、SW2、SW3と、監視ECU4とを備える。なお、車両Veは、電気自動車に限らず、例えば、電動フォークリフトなどの産業車両としてもよい。
【0039】
車両Veは、蓄電装置BPの他に、車両Veの走行用のモータMと、モータMを駆動するインバータ回路Invと、インバータ回路Invの動作を制御するとともに車両Veの外部に設けられる充電器Chと通信を行う車両ECU5とを備える。
【0040】
インバータ回路Invは、複数のスイッチを備え、各スイッチが繰り返しオン、オフすることにより、電池Bから供給される直流電力を交流電力に変換してモータMに供給する。また、インバータ回路Invは、各スイッチが繰り返しオン、オフすることにより、モータMから供給される交流電力(回生電力)を直流電力に変換して電池Bに供給する。
【0041】
車両ECU5は、インバータ回路Invの各スイッチのオン、オフを制御する制御信号のデューティ比を変化させることにより、インバータ回路Invから電池Bに供給される電力または電池Bからインバータ回路Invに供給される電力を変化させる。車両ECU5の機能を電池ECU1の機能に含ませて電池ECU1と車両ECU5とを統合し、その統合後の電池ECU1を蓄電装置BPまたは車両Veに設けてもよい。
【0042】
電池Bは、1つ以上の二次電池により構成されるリチウムイオン電池である。二次電池は、リチウムイオンを吸蔵及び放出するグラファイトを用いた負極と、複合酸化物、金属リチウム、又は硫黄等を用いた正極とを有する。本願では、例えば正極としてLFP(LiFePO4)が用いられる。LFPが用いられる場合、プラトー領域に比べて変化領域が少ない充電状態開回路電圧曲線を有する。また、負極に用いられるグラファイトは、電池Bの充電及び放電に伴ってリチウムイオンを吸蔵及び放出を行うにつれて結晶構造が変化する。本発明者らは、グラファイトを用いた負極を有する電池Bは、この結晶構造の切り替わりに起因して電池Bの分極解消時間が変化することから、電池Bの充電状態と電池Bの分極解消時間との相関関係を有することを見出した。プラトー領域は、単位充電状態あたりの開回路電圧の変化量の割合が所定値以下になるときの開回路電圧の範囲または充電状態の範囲とする。変化領域は、単位充電状態あたりの開回路電圧の変化量の割合が所定値より大きくなるときの開回路電圧の範囲または充電状態の範囲とする。分極解消時間は、電池Bの充電停止時または放電停止時から電池Bの分極が解消されたとみなせるまでの時間とする。電池Bのプラス端子は、インバータ回路Invのプラス入力端子に接続される。または、電池Bのプラス端子は、充電器Chのプラス出力端子に接続される。電池Bのマイナス端子は、電流計2、スイッチSW1、及びスイッチSW3を介してインバータ回路Invのマイナス入力端子に接続される。または、電池Bのマイナス端子は、電流計2、スイッチSW1、及びスイッチSW2を介して充電器Chのマイナス出力端子に接続される。
【0043】
電流計2は、シャント抵抗などにより構成され、電池Bに流れる電流を検出し、その検出した電流を監視ECU4に送る。
【0044】
温度計3は、サーミスタなどにより構成され、電池Bの温度を検出し、その検出した温度を監視ECU4に送る。
【0045】
監視ECU4は、プロセッサや記憶部などを備えて構成され、電池Bの電圧を検出する。また、監視ECU4は、CAN(Controller Area Network)通信などを用いて、検出した電圧、電流計2により検出された電流、及び温度計3により検出された温度を電池ECU1に送信する。
【0046】
スイッチSW1、SW2、SW3は、それぞれ、半導体リレー(例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor))または電磁式リレーなどにより構成される。なお、スイッチSW1、SW2、SW3は、電池Bのプラス端子側に接続されていてもよい。スイッチSW1、SW3が導通し、スイッチSW2が遮断すると、インバータ回路Invから電池Bに電力を供給することが可能な状態になるとともに、電池Bからインバータ回路Invに電力を供給することが可能な状態になる。また、スイッチSW1、SW2が導通し、スイッチSW3が遮断すると、充電器Chから電池Bに電力が供給することが可能な状態になる。インバータ回路Invまたは充電器Chから電池Bに電力が供給されると、電池Bが充電され電池Bの容量、充電率、または電圧が増加し、電池Bからインバータ回路Invに電力が供給されると、電池Bが放電され電池Bの容量、充電率、または電圧が低下する。AC充電方式により電池Bが充電される場合、車両Veにおいて、充電器Chから供給される交流電力が直流電力に変換され、その直流電力が電池Bに供給されることで電池Bが充電されるものとする。
【0047】
電池ECU1は、記憶部11と、プロセッサ12とを備える。
【0048】
記憶部11は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成される。なお、記憶部11は、上記充電状態開回路電圧曲線の他に、後述する情報D1、D2や完全放電側容量Ca、基準ステージ容量Cb、基準満充電側容量Cc、基準合計容量Cab、及び基準満充電容量Cabcなどを記憶している。記憶部11に記憶される情報は、試験やシミュレーション等によって求められ得る。
【0049】
プロセッサ12は、充放電制御部121と、推定部122とを備える。なお、プロセッサ12が記憶部11に記憶されているプログラムを実行することにより、充放電制御部121及び推定部122が実現される。
【0050】
充放電制御部121は、充電開始指示が入力されると、スイッチSW1、SW2を導通させ、スイッチSW3を遮断させた後、電池Bの充電制御処理を開始し、電池Bが満充電状態または満充電状態とみなせる充電状態や電圧になると、電池Bの充電制御処理を終了し、スイッチSW1~SW3を遮断させる。例えば、充放電制御部121は、電池Bの電圧が所定電圧になるまで電池Bに流れる電流を一定電流に保ち、電池Bの電圧が所定電圧になると、電池Bに流れる電流が所定電流以下になるまで、電池Bに流れる電流を徐々に低下させ、電池Bに流れる電流が所定電流以下になると、電池Bに流れる電流をゼロにする、いわゆる、定電流定電圧充電制御処理を実行する。
【0051】
また、充放電制御部121は、充電制御処理の実行中、推定タイミングになると、充電制御処理を一時停止し、推定部122により満充電状態の推定処理を実行させた後、充電制御処理を再開する。なお、充電制御処理が一時停止しているとき、電池Bの分極が解消したとみなせる時間にわたって電池Bに電流が流れないものとする。
【0052】
また、充放電制御部121は、車両Veのイグニッションスイッチがオンした旨を受け取ると、スイッチSW1、SW3を導通させるとともにスイッチSW2を遮断させることで、電池Bからインバータ回路Invに電力を供給することが可能な状態にし、イグニッションスイッチがオフした旨を受け取ると、スイッチSW1~SW3を遮断させる。
【0053】
また、充放電制御部121は、イグニッションスイッチがオンした旨を受け取ってからイグニッションスイッチがオフするまでの間(車両Veの起動中)、車両Veのアイドリングストップが開始された旨(インバータ回路Invなど電池Bに接続される負荷の駆動が停止した旨)を受け取ると、スイッチSW1~SW3を遮断させることで、電池Bに流れる電流をゼロにさせ、推定部122により満充電状態の推定処理を実行させた後、アイドリングストップが終了した旨(インバータ回路Invなど電池Bに接続される負荷の駆動が再開した旨)を受け取ると、スイッチS1、SW3を導通させるとともにスイッチSW2を遮断させることで、電池Bからインバータ回路Invに電力を供給することが可能な状態にする。なお、推定部122は、電池Bに流れる電流がゼロになった時間が電池Bの分極が解消したとみなせる時間以上であった場合のみに、推定タイミングであると判定して満充電状態の推定処理を実行してもよい。
【0054】
推定部122は、電池Bの満充電容量を推定する。
【0055】
ここで、
図2は、充電状態開回路電圧曲線及び電池Bの容量と分極解消時間との相関を示す情報D1の一例を示す図である。なお、
図2に示す上側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの開回路電圧[V]を示し、実線は電池Bに電流が流れておらず、分極が解消されたとみなせるときの容量と開回路電圧(電池Bの正極電位と負極電位との差)との相関を示す充電状態開回路電圧曲線を示している。また、
図2に示す下側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの分極解消時間[sec]を示し、実線は充電停止時の電池Bの容量と分極解消時間との相関を示す情報D1を示している。なお、情報D1に示される各分極解消時間は、逐次取得される複数の分極解消時間の移動平均値としてもよい。
【0056】
図2に示す充電状態開回路電圧曲線において、電池Bの開回路電圧は完全放電状態付近及び満充電状態付近において急峻に変化し、それ以外において容量の変化に伴って段階的に変化する。すなわち、
図2に示す充電状態開回路電圧曲線では、単位容量(単位充電状態)あたりの開回路電圧の変化量の割合である傾きが所定値以下である「プラトー領域」を3つ(プラトー領域P1~P3)有し、単位容量(単位充電状態)あたりの開回路電圧の変化量の割合が所定値より大きい「変化領域」を4つ(変化領域C1~C4)有している。なお、所定値は、監視ECU4の電圧測定精度に基づいて設定され得る。
【0057】
また、
図2に示す充電状態開回路電圧曲線において、完全放電状態の電池Bの容量を基準として充電により電池Bの容量が満充電状態の電池Bの容量になるまで増加する場合、充電停止時の電池Bの容量が含まれる領域は、その容量の増加に伴って、「変化領域C1」、「プラトー領域P1」、「変化領域C2」、「プラトー領域P2」、「変化領域C3」、「プラトー領域P3」、「変化領域C4」の順に変化する。すなわち、充電状態開回路電圧曲線において、少なくとも1つの変化領域が2つのプラトー領域の間に位置する。
【0058】
また、
図2に示す充電状態開回路電圧曲線において、「変化領域C1」と「プラトー領域P1」と「変化領域C2」とからなるステージを「ステージSt11」(第3のステージ)とし、「プラトー領域P2」と「変化領域C3」とからなるステージを「ステージSt12」(第1のステージ)とし、「プラトー領域P3」と「変化領域C4」とからなるステージを「ステージSt13」(第2のステージ)とする。
【0059】
また、「ステージSt11」の「プラトー領域P1」における容量と分極解消時間との相関を示す情報、「ステージSt12」の「プラトー領域P2」における容量と分極解消時間との相関を示す情報、並びに「ステージSt13」の「プラトー領域P3」及び「変化領域C4」における容量と分極解消時間との相関を示す情報では、それぞれ、電池Bの容量の増加に伴って、分極解消時間が増加する。また、「ステージSt11」の「変化領域C1」及び「変化領域C2」における容量と分極解消時間との相関を示す情報、並びに、「ステージSt12」の「変化領域C3」における容量と分極解消時間との相関を示す情報では、それぞれ、電池Bの容量の増加に伴って、分極解消時間が減少する。なお、電池Bの容量の増加によって、その容量が含まれるステージが、「ステージSt11」から「ステージSt12」に切り替わるときに、または、「ステージSt12」から「ステージSt13」に切り替わるときに電池Bの分極解消時間が減少する現象は、ステージの切り替わりに伴って電池Bの負極の内部構造が不安定状態から安定状態に変わることに起因すると考えられる。
【0060】
このように、
図2に示す情報D1では、車両Veの起動中、分極解消時の電池Bの容量が含まれるステージが隣接するステージに切り替わるとき、分極解消時間が比較的大きく変化する。これにより、ステージが切り替わるタイミングを比較的容易に判断することができる。
【0061】
例えば、推定部122は、今回の推定タイミングより前の推定タイミング(第1の時点)で取得した第1の分極解消時間T11が第1の閾値以上であり、かつ、今回の推定タイミング(第1の時点よりも後の第2の時点)で取得した第2の分極解消時間T12が第1の閾値より小さい第2の閾値以下であり、かつ、第1の時点の電池Bの充電状態と、第2の時点の電池Bの充電状態との差が充電状態閾値以下であるとき、第2の時点での充電停止時のステージが切り替わったと判断する。ここで、第1の分極解消時間T11が第1の閾値以上になったときの電池Bの容量及び第2の分極解消時間T12が第2の閾値以下になったときの電池Bの容量は、電池Bの開回路電圧や、電流の積算値に基づいて算出され得る。
【0062】
または、推定部122は、第1の分極解消時間T11と、第2の分極解消時間T12との差が分極解消時間閾値以上であり、かつ、第2の分極解消時間T12が第1の分極解消時間T11より小さいとき、第2の時点での充電停止時のステージが切り替わったと判断する。
【0063】
すなわち、推定部122は、第1の時点での充電停止時から電池Bの分極が解消するまでの第1の分極解消時間と、第1の時点よりも後の第2の時点での充電停止時から電池Bの分極が解消するまでの第2の分極解消時間とに基づいて、ステージの切り替わりを判断する。より具体的には、推定部122は、第2の分極解消時間が第1の分極解消時間より小さいとき、第2の時点での充電停止時のステージが切り替わったと判断する。
【0064】
なお、第1の閾値は、分極解消時の電池Bの容量が含まれるステージが所定ステージから隣接ステージに切り替わる直前の分極解消時間の最大値から所定値を減算して求められ得る。また、第2の閾値は、分極解消時の電池Bの容量が含まれるステージが所定ステージから隣接ステージに切り替わった直後の分極解消時間の最小値から所定値を加算して求められ得る。また、充電状態閾値は、一つのステージでの最大容量と最小容量との差により求められ得る。また、分極解消時間閾値は、第1の閾値と第2の閾値との差により求められ得る。
【0065】
完全放電側容量Caは、充電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt11からステージSt12に切り替わるタイミングに対応する電池Bの容量C11と、完全放電状態の電池Bの容量C10との差とする。
【0066】
基準ステージ容量Cbは、充電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt12からステージSt13に切り替わるタイミングに対応する電池Bの容量C12と、容量C11との差とする。
【0067】
基準満充電側容量Ccは、満充電状態の電池Bの容量C13と、容量C12との差とする。
【0068】
基準合計容量Cabは、容量C12と容量C10との差とし、基準完全放電側容量Caと基準ステージ容量Cbとの加算値と同様とする。すなわち、
図2に示す基準ステージ容量Cb、基準満充電側容量Cc、または基準合計容量Cabは、少なくとも1つ以上のステージに対応する電池Bが劣化する前の基準容量である。
【0069】
基準満充電容量Cabcは、容量C13と容量C10との差とし、基準合計容量Cabと基準満充電側容量Ccとの加算値、または、完全放電側容量Caと基準ステージ容量Cbと基準満充電側容量Ccとの加算値と同様とする。すなわち、基準満充電容量Cabcは電池Bが劣化する前の満充電容量である。
【0070】
図3は、充電状態開回路電圧曲線及び電池Bの容量と分極解消時間との相関を示す情報D2の一例を示す図である。なお、
図3に示す上側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの開回路電圧[V]を示し、実線は電池Bに電流が流れておらず、分極が解消されたとみなせるときの容量と開回路電圧との対応関係を示す充電状態開回路電圧曲線を示している。
図3に示す充電状態開回路電圧曲線は、
図2に示す充電状態開回路電圧曲線と同様である。また、
図3に示す下側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの分極解消時間[sec]を示し、実線は放電停止時の電池Bの容量と分極解消時間との相関を示す情報D2を示している。なお、情報D2に示される各分極解消時間は、逐次取得される複数の分極解消時間の移動平均値としてもよい。
【0071】
図3に示す充電状態開回路電圧曲線において、満充電状態の電池Bの容量を基準として放電により電池Bの容量が完全放電状態の電池Bの容量になるまで減少する場合、放電停止時の電池Bの容量が含まれる領域は、その容量の減少に伴って、「変化領域C4」、「プラトー領域P3」、「変化領域C3」、「プラトー領域P2」、「変化領域C2」、「プラトー領域P1」、「変化領域C1」の順に変化する。
【0072】
また、
図3に示す充電状態開回路電圧曲線において、「変化領域C4」と「プラトー領域P3」と「変化領域C3」とからなるステージを「ステージSt21」(第3のステージ)とし、「プラトー領域P2」と「変化領域C2」とからなるステージを「ステージSt22」(第1のステージ)とし、「プラトー領域P1」と「変化領域C1」とからなるステージを「ステージSt23」(第2のステージ)とする。
【0073】
また、「ステージSt21」の「変化領域C4」及び「プラトー領域P3」における容量と分極解消時間との相関を示す情報、「ステージSt22」の「プラトー領域P2」における容量と分極解消時間との相関を示す情報、並びに「ステージSt23」の「プラトー領域P1」及び「変化領域C1」における容量と分極解消時間との相関を示す情報では、それぞれ、電池Bの容量の減少に伴って、分極解消時間が増加する。また、「ステージSt21」の「変化領域C3」における容量と分極解消時間との相関を示す情報、並びに、「ステージSt22」の「変化領域C2」における容量と分極解消時間との相関を示す情報では、それぞれ、電池Bの容量の減少に伴って、分極解消時間が減少する。なお、電池Bの容量の減少によって、その容量が含まれるステージが、「ステージSt21」から「ステージSt22」に切り替わるときに、または、「ステージSt22」から「ステージSt23」に切り替わるときに電池Bの分極解消時間が減少する現象は、ステージの切り替わりに伴って電池Bの負極の内部構造が不安定状態から安定状態に変わることに起因すると考えられる。
【0074】
このように、
図3に示す情報D2では、
図2に示す情報D1と同様に、車両Veの起動中、分極解消時の電池Bの容量が含まれるステージが隣接するステージに切り替わるとき、分極解消時間が比較的大きく変化する。これにより、ステージが切り替わるタイミングを比較的容易に判断することができる。
【0075】
例えば、推定部122は、第1の時点で取得した第1の分極解消時間T11が第1の閾値以上であり、かつ、第1の時点よりも後の第2の時点で取得した第2の分極解消時間T12が第1の閾値より小さい第2の閾値以下であり、かつ、第1の時点の電池Bの充電状態と、第2の時点の電池Bの充電状態との差が充電状態閾値以下であるとき、第2の時点での放電停止時のステージが切り替わったと判断する。
【0076】
または、推定部122は、第1の分極解消時間T11と、第2の分極解消時間T12との差が分極解消時間閾値以上であり、かつ、第2の分極解消時間T12が第1の分極解消時間T11より小さいとき、第2の時点での放電停止時のステージが切り替わったと判断する。
【0077】
すなわち、推定部122は、第1の時点での放電停止時から電池Bの分極が解消するまでの第1の分極解消時間と、第1の時点よりも後の第2の時点での放電停止時から電池Bの分極が解消するまでの第2の分極解消時間とに基づいて、ステージの切り替わりを判断する。より具体的には、推定部122は、第2の分極解消時間が第1の分極解消時間より小さいとき、第2の時点での放電停止時のステージが切り替わったと判断する。
【0078】
基準完全放電側容量Caは、放電時停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt22からステージSt23に変化したときの電池Bの容量C22と、完全放電状態の電池Bの容量C23との差とする。
【0079】
基準ステージ容量Cbは、放電時停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt21からステージSt22に変化したときの電池Bの容量C21と、容量C22との差とする。
【0080】
基準満充電側容量Ccは、満充電状態の電池Bの容量C20と、容量C21との差とする。
【0081】
基準合計容量Cabは、容量C21と容量C23との差とし、基準完全放電側容量Caと基準ステージ容量Cbとの加算値と同様とする。すなわち、
図3に示す基準ステージ容量Cb、基準満充電側容量Cc、または基準合計容量Cabは少なくとも1つ以上のステージに対応する電池Bが劣化する前の基準容量である。
【0082】
基準満充電容量Cabcは、容量C20と容量C23との差とし、基準合計容量Cabと基準満充電側容量Ccとの加算値、または、完全放電側容量Caと基準ステージ容量Cbと基準満充電側容量Ccとの加算値と同様とする。
【0083】
このように、複数のステージを有する電池Bの満充電容量を推定する場合、本実施形態の推定部122では、まず、ステージが所定ステージに切り替わってから、電池Bが満充電状態になるときまでの間に電池Bに流れる電流の積算値により所定ステージに対応するステージ容量を測定する。または、推定部122は、電池Bが満充電状態であるときから、ステージが所定ステージから隣接する別のステージに切り替わるタイミングまでの間に電池Bに流れる電流の積算値により所定ステージに対応するステージ容量を測定する。または、推定部122は、ステージが所定ステージに切り替わってから、さらに所定ステージに隣接する別のステージに切り替わるまでの間に電池Bに流れる電流の積算値により所定ステージに対応するステージ容量を測定する。
【0084】
そして、推定部122は、記憶部11に記憶されている劣化前の基準容量と、測定したステージ容量とに基づいて、電池Bの満充電容量を推定する。
【0085】
これにより、電池Bの開回路電圧を用いて満充電容量を推定する場合に比べて、開回路電圧の測定誤差の影響をなくして満充電容量を推定することができるため、満充電容量の推定精度を向上させることができる。
【0086】
<実施例1>
実施例1における推定部122は、充電停止時のステージがステージSt12(第1のステージ)からステージSt13(第2のステージ)に切り替わるタイミングから、電池Bが満充電状態になるまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から満充電側容量Cc´(ステージ容量)を測定するとともに、記憶部11から基準合計容量Cab(基準容量)を取得し、基準合計容量Cabと満充電側容量Cc´との加算値を、電池Bの満充電容量として推定する。
【0087】
または、実施例1における推定部122は、電池Bが満充電状態であるときから、放電停止時のステージがステージSt21(第2のステージ)からステージSt22(第1のステージ)に切り替わるタイミングまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から満充電側容量Cc´(ステージ容量)を測定するとともに、記憶部11から基準合計容量Cab(基準容量)を取得し、基準合計容量Cabと満充電側容量Cc´との加算値を、電池Bの満充電容量として推定する。
【0088】
図4は、充電時に満充電容量Cabc´を推定する際の推定部122の動作の一例を示すフローチャートである。なお、基準合計容量Cabは、予め記憶部11に記憶されているものとする。
【0089】
まず、推定部122は、電池Bの充電が停止したと判断すると(ステップS31:Yes)、分極解消時間を取得する(ステップS32)。例えば、推定部122は、充電停止時から、単位時間あたりの電池Bの開回路電圧の変化量が閾値以下になるまでの時間を、充電停止時の電池Bの分極解消時間とする。または、推定部122は、単位時間あたりの電池Bの開回路電圧の変化量と分極解消時間との相関を示す情報を記憶部11から読み出し、充電停止後に求められる、単位時間あたりの電池Bの開回路電圧の変化量に対応する分極解消時間を、充電停止時の電池Bの分極解消時間とする。
【0090】
次に、推定部122は、情報D1の各ステージのうち、充電停止時の電池Bの容量が含まれるステージを特定する(ステップS33)。例えば、推定部122は、電池Bの充電開始時から今回の推定タイミングまでの間に電池Bに流れる電流の積算値が
図2に示す情報D1における容量Ce1に相当する場合、容量Ce1が含まれるステージとしてステージSt12を特定する。または、推定部122は、充電停止時の電池Bの開回路電圧が
図2に示す充電状態開回路電圧曲線の開回路電圧OCV1である場合、開回路電圧OCV1が含まれるステージとしてステージSt12を特定する。
【0091】
次に、推定部122は、ステップS32で取得した分極解消時間に基づいて、充電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt12(第1のステージ)からステージSt13(第2のステージ)に切り替わったと判断すると(ステップS34:Yes)、記憶部11から読み出すことで基準合計容量Cabを取得する(ステップS35)。なお、推定部122は、基準合計容量Cabを取得した後、電池Bの充電を再開させる。
【0092】
次に、推定部122は、電池Bが満充電状態になったと判断すると(ステップS36:Yes)、充電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt12からステージSt13に切り替わるタイミングから、電池Bが満充電状態になるまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から測定される容量を満充電側容量Cc´として取得する(ステップS37)。
【0093】
そして、推定部122は、ステップS35で取得した基準合計容量Cabと、ステップS37で取得した満充電側容量Cc´との加算値を、電池Bの満充電容量Cabc´として推定する(ステップS38)。
【0094】
図5は、放電時に満充電容量Cabc´を推定する際の推定部122の動作の一例を示すフローチャートである。なお、基準合計容量Cabは、予め記憶部11に記憶されているものとする。
【0095】
まず、推定部122は、電池Bの放電が停止したと判断すると(ステップS41:Yes)、分極解消時間を取得する(ステップS42)。例えば、推定部122は、放電停止時から、単位時間あたりの電池Bの開回路電圧の変化量が閾値以下になるまでの時間を、放電停止時の電池Bの分極解消時間とする。または、推定部122は、単位時間あたりの電池Bの開回路電圧の変化量と分極解消時間との相関を示す情報を記憶部11から読み出し、放電停止後に求められる、単位時間あたりの電池Bの開回路電圧の変化量に対応する分極解消時間を、放電停止時の電池Bの分極解消時間とする。
【0096】
次に、推定部122は、情報D2の各ステージのうち、放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージを特定する(ステップS43)。例えば、推定部122は、電池Bの放電開始時から今回の推定タイミングまでの間に電池Bに流れた電流の積算値が
図3に示す情報D2における容量Ce2に相当する場合、容量Ce2が含まれるステージとしてステージSt22を特定する。または、推定部122は、放電停止時の電池Bの開回路電圧が
図3に示す充電状態開回路電圧曲線の開回路電圧OCV2である場合、開回路電圧OCV2が含まれるステージとしてステージSt22を特定する。
【0097】
次に、推定部122は、ステップS42で取得した分極解消時間に基づいて、放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt21(第2のステージ)からステージSt22(第1のステージ)に切り替わったと判断すると(ステップS44:Yes)、記憶部11から読み出すことで基準合計容量Cabを取得する(ステップS45)。
【0098】
また、推定部122は、ステップS45において、電池Bが満充電状態であるときから、放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt21からステージSt22に切り替わるタイミングまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から測定される容量を満充電側容量Cc´として取得する(ステップS45)。
【0099】
そして、推定部122は、ステップS45で取得した基準合計容量Cabと満充電側容量Cc´との加算値を、電池Bの満充電容量Cabc´として推定する(ステップS46)。
【0100】
図6は、電池Bが劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D1´の一例を示す図であり、
図7は、電池Bが劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D2´の一例を示す図である。なお、
図6及び
図7に示す上側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの開回路電圧[V]を示し、実線は劣化後の電池Bに電流が流れておらず、分極が解消されたとみなせるときの容量と開回路電圧との相関を示す充電状態開回路電圧曲線を示している。また、
図6に示す下側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの分極解消時間[sec]を示し、実線は劣化後の電池Bの容量と分極解消時間との相関を示す情報D1´を示している。また、
図7に示す下側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの分極解消時間[sec]を示し、実線は劣化後の電池Bの容量と分極解消時間との相関を示す情報D2´を示している。
【0101】
図6及び
図7に示す劣化後の電池Bの満充電側容量Cc´は、電池Bの劣化によって、
図2及び
図3に示す劣化前の電池Bの基準満充電側容量Ccと比べて、第1所定容量Cα分減少しているものとする。また、
図6及び
図7に示す劣化後の電池Bの基準合計容量Cabは、
図2及び
図3に示す劣化前の電池Bの基準合計容量Cabと比べて、変化していないものとする。そのため、
図6及び
図7に示す劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´は、
図2及び
図3に示す劣化前の電池Bの基準満充電容量Cabcと比べて、第1所定容量Cα分減少しているものとする。
【0102】
このように、電池Bの劣化に伴って基準満充電側容量Ccが満充電側容量Cc´に減少し基準合計容量Cabが変化しない場合では、満充電側容量Cc´を求めることができれば、基準合計容量Cabと満充電側容量Cc´との加算値を、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´として推定することができる。
【0103】
すなわち、推定部122は、
図4に示すフローチャートのステップS37において、満充電側容量Cc´を取得し、ステップS38において、基準合計容量Cabと満充電側容量Cc´との加算値を、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´として推定する。
【0104】
また、推定部122は、
図5に示すフローチャートのステップS45において、満充電側容量Cc´を取得し、ステップS46において、基準合計容量Cabと満充電側容量Cc´との加算値を、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´として推定する。
【0105】
このように、実施例1における蓄電装置BPでは、充電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt12からステージSt13に変化するタイミングまたは放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt21からステージSt22に変化するタイミングを用いて基準合計容量Cab及び満充電側容量Cc´を取得し、基準合計容量Cabと満充電側容量Cc´との加算値を満充電容量Cabc´とする構成である。
【0106】
これにより、開回路電圧と充電状態開回路電圧曲線とを用いて充電前後の電池Bの充電率を取得し、充電前後の充電率と充電中に電池Bに流れる電流の積算値とにより満充電容量を推定する場合に比べて、開回路電圧の測定誤差の影響をなくして満充電容量を推定することができるため、劣化後の電池Bの満充電容量の推定精度も向上させることができる。
【0107】
<実施例2>
実施例2における推定部122は、劣化前の電池Bの基準ステージ容量Cb(基準容量)に対する劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´(ステージ容量)の収縮率、または、劣化前の電池Bの基準満充電側容量Cc(基準容量)に対する劣化後の電池Bの満充電側容量Cc´´(ステージ容量)の収縮率を取得する。そして、劣化前の電池Bの基準満充電容量Cabcと、取得した収縮率との乗算値を、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´として推定する。
【0108】
なお、ステージ容量Cb´´及び満充電側容量Cc´´は、電池Bに流れる電流の積算値により測定されるものとする。すなわち、ステージ容量Cb´´は、充電停止時のステージがステージSt11(第3のステージ)からステージSt12(第1のステージ)に切り替わるタイミングから、充電停止時のステージがステージSt12(第1のステージ)からステージSt13(第2のステージ)に切り替わるタイミングまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から測定される容量である。または、ステージ容量Cb´´は、放電停止時のステージがステージSt21(第2のステージ)からステージSt22(第1のステージ)に切り替わるタイミングから、放電停止時のステージがステージSt22(第1のステージ)からステージSt23(第3のステージ)に切り替わるタイミングまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から測定される容量である。また、満充電側容量Cc´´は、充電停止時のステージがステージSt12(第1のステージ)からステージSt13(第2のステージ)に切り替わるタイミングから、電池Bが満充電状態になるまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から測定される容量である。または、満充電側容量Cc´´は、電池Bが満充電状態であるときから、放電停止時のステージがステージSt21(第2のステージ)からステージSt22(第1のステージ)に切り替わるタイミングまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から測定される容量である。
【0109】
また、基準ステージ容量Cb、基準満充電側容量Cc、及び基準満充電容量Cabcは、記憶部11から読み出すものとする。
【0110】
また、取得可能なステージ容量が2つ以上ある場合で、かつ、各ステージ容量の大きさが互いに異なる場合、電流検出誤差の影響を考えて、容量が最も大きいステージ容量を採用してもよい。
【0111】
図8は、電池Bが劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D1´´の一例を示す図であり、
図7は、電池Bが劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D2´´の一例を示す図である。なお、
図8及び
図9に示す上側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの開回路電圧[V]を示し、実線は劣化後の電池Bに電流が流れておらず、分極が解消されたとみなせるときの容量と開回路電圧との相関を示す充電状態開回路電圧曲線を示している。また、
図8に示す下側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの分極解消時間[sec]を示し、実線は劣化後の電池Bの容量と分極解消時間との相関を示す情報D1´´を示している。また、
図9に示す下側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの分極解消時間[sec]を示し、実線は劣化後の電池Bの容量と分極解消時間との相関を示す情報D2´´を示している。
【0112】
図8及び
図9に示すように、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´は、電池Bの劣化によって所定の収縮率で収縮することで、
図2及び
図3に示す劣化前の電池Bの基準満充電容量Cabcに比べて、第2所定容量Cβ分減少しているものとする。
【0113】
また、劣化前の電池Bの基準ステージ容量Cbに対する劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´の収縮率、劣化前の電池Bの基準満充電側容量Ccに対する劣化後の電池Bの満充電側容量Cc´´の収縮率、及び劣化前の電池Bの基準満充電容量Cabcに対する劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´の収縮率は、互いに同じものとする。
【0114】
このように、電池Bの劣化に伴う満充電容量Cabc´´の収縮率と、ステージ容量Cb´´の収縮率または満充電側容量Cc´´の収縮率とが互いに同じ場合では、その収縮率を求めることができれば、劣化前の電池Bの基準満充電容量Cabcと収縮率との乗算値を、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´として推定することができる。
【0115】
図10は、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´を推定する際の推定部122の動作の一例を示すフローチャートである。なお、基準満充電容量Cabc及び基準ステージ容量Cbは、予め記憶部11に記憶されているものとする。
【0116】
まず、推定部122は、電池Bの充電または放電が停止したと判断すると(ステップS51:Yes)、分極解消時間を取得する(ステップS52)。
【0117】
次に、推定部122は、情報D1または情報D2の各ステージのうち、充電停止時または放電停止時の電池Bの充電状態が含まれるステージを特定する(ステップS53)。
【0118】
次に、推定部122は、ステップS52で取得した分極解消時間に基づいて、充電停止時または放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージが切り替わったと判断すると(ステップS54:Yes)、充電停止時または放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージが2回切り替わったか否かを判断する(ステップS55)。なお、推定部122は、ステージが2回切り替わっていない場合(ステップS55:No)、ステップS51に戻り、ステップS51~S55の処理を繰り返し実行する。また、推定部122は、ステージが1回切り替わると、ステージ容量Cb´´を求めるために電池Bに流れる電流の積算値の算出を開始する。
【0119】
次に、推定部122は、ステージが2回切り替わったと判断すると(ステップS55:Yes)、ステージが1回切り替わってからステージが2回切り替わるまでの間に電池Bに流れる電流の積算値を、ステージ容量Cb´´として取得する(ステップS56)。例えば、推定部122は、充電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt11(第3のステージ)からステージSt12(第1のステージ)に切り替わった後、ステージSt12(第1のステージ)からステージSt13(第2のステージ)に切り替わると、ステージが2回切り替わったと判断する。または、推定部122は、放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt21(第2のステージ)からステージSt22(第1のステージ)に切り替わった後、ステージSt22(第1のステージ)からステージSt23(第3のステージ)に切り替わると、ステージが2回切り替わったと判断する。
【0120】
次に、推定部122は、記憶部11から基準満充電容量Cabc及び基準ステージ容量Cbを読み出すことで取得する(ステップS57)。
【0121】
次に、推定部122は、ステップS57で取得した基準ステージ容量Cbに対するステップS56で取得したステージ容量Cb´´の収縮率を求める(ステップS58)。例えば、推定部122は、ステージ容量Cb´´を基準ステージ容量Cbで除算した値を収縮率とする。
【0122】
そして、推定部122は、ステップS57で取得した基準満充電容量CabcにステップS58で求めた収縮率を乗算した値を、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´として推定する(ステップS59)。
【0123】
図11は、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´を推定する際の推定部122の動作の他の例を示すフローチャートである。なお、基準満充電容量Cabc及び基準満充電側容量Ccは、予め記憶部11に記憶されているものとする。また、電池Bは満充電状態とする。
【0124】
まず、推定部122は、電池Bの放電が停止したと判断すると(ステップS61:Yes)、分極解消時間を取得する(ステップS62)。
【0125】
次に、推定部122は、情報D2の各ステージのうち、放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージを特定する(ステップS63)。
【0126】
次に、推定部122は、ステップS62で取得した分極解消時間に基づいて、放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt21からステージSt22に切り替わったと判断すると(ステップS64:Yes)、電池Bが満充電状態であるときから放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージがステージSt21からステージSt22に切り替わるまでの間に電池Bに流れる電流の積算値を、満充電側容量Cc´´として取得する(ステップS65)。
【0127】
次に、推定部122は、記憶部11から基準満充電容量Cabc及び基準満充電側容量Ccを取得する(ステップS66)。
【0128】
次に、推定部122は、ステップS66で取得した基準満充電側容量Ccに対するステップS65で取得した満充電側容量Cc´´の収縮率を求める(ステップS67)。例えば、推定部122は、満充電側容量Cc´´を基準満充電側容量Ccで除算した値を収縮率とする。
【0129】
そして、推定部122は、ステップS66で取得した基準満充電容量CabcにステップS67で求めた収縮率を乗算した値を、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´として推定する(ステップS68)。
【0130】
このように、実施例2における蓄電装置BPでは、劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´または満充電側容量Cc´´の収縮率を求め、その収縮率を用いて劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´を求める構成である。
【0131】
これにより、開回路電圧と充電状態開回路電圧曲線とを用いて充電前後の電池Bの充電率を取得し、充電前後の充電率と充電中に電池Bに流れる電流の積算値とにより満充電容量Cabc´´を推定する場合に比べて、開回路電圧の測定誤差の影響をなくして満充電容量Cabc´´を推定することができるため、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´の推定精度も向上させることができる。
【0132】
<実施例3>
実施例3における推定部122は、劣化前の電池Bの基準ステージ容量Cb(基準容量)に対する劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´(ステージ容量)の収縮率と、劣化前の電池Bの基準完全放電側容量Caとの乗算値を、劣化後の電池Bの完全放電側容量Ca´´として推定し、劣化後の電池Bの完全放電側容量Ca´´とステージ容量Cb´´と満充電側容量Cc´´´との加算値を、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´´とする。
【0133】
なお、ステージ容量Cb´´及び満充電側容量Cc´´´は、電池Bに流れる電流の積算値により測定されるものとする。すなわち、ステージ容量Cb´´は、充電停止時のステージがステージSt11(第3のステージ)からステージSt12(第1のステージ)に切り替わるタイミングから、充電停止時のステージがステージSt12(第1のステージ)からステージSt13(第2のステージ)に切り替わるタイミングまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から測定される容量である。または、ステージ容量Cb´´は、放電停止時のステージがステージSt21(第2のステージ)からステージSt22(第1のステージ)に切り替わるタイミングから、放電停止時のステージがステージSt22(第1のステージ)からステージSt23(第3のステージ)に切り替わるタイミングまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から測定される容量である。また、満充電側容量Cc´´´は、充電停止時のステージがステージSt12(第1のステージ)からステージSt13(第2のステージ)に切り替わるタイミングから、電池Bが満充電状態になるまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から測定される容量である。または、満充電側容量Cc´´´は、電池Bが満充電状態であるときから、放電停止時のステージがステージSt21(第2のステージ)からステージSt22(第1のステージ)に切り替わるタイミングまでの間に電池Bに流れる電流の積算値から測定される容量である。
【0134】
また、基準ステージ容量Cb及び基準完全放電側容量Caは、記憶部11から読み出すものとする。
【0135】
図12は、電池Bが劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D1´´´の一例を示す図であり、
図13は、電池Bが劣化した後の充電状態開回路電圧曲線及び情報D2´´´の一例を示す図である。なお、
図12及び
図13に示す上側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの開回路電圧[V]を示し、実線は劣化後の電池Bに電流が流れておらず、分極が解消されたとみなせるときの容量と開回路電圧との対応関係を示す充電状態開回路電圧曲線を示している。また、
図12に示す下側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの分極解消時間[sec]を示し、実線は劣化後の電池Bの容量と分極解消時間との相関を示す情報D1´´´を示している。また、
図13に示す下側の2次元座標において、横軸は電池Bの容量[Ah]を示し、縦軸は電池Bの分極解消時間[sec]を示し、実線は劣化後の電池Bの容量と分極解消時間との相関を示す情報D2´´´を示している。
【0136】
図12及び
図13に示す劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´´は、電池Bの劣化によって、満充電側容量Cc´´´が減少するとともに、満充電容量Cabc´´が収縮することにより、
図2及び
図3に示す劣化前の電池Bの基準満充電容量Cabcに比べて、第1所定容量Cαと第2所定容量Cβとの合計容量分減少しているものとする。
【0137】
また、劣化前の電池Bの基準完全放電側容量Caに対する劣化後の電池Bの完全放電側容量Ca´´の収縮率、及び、劣化前の電池Bの基準ステージ容量Cbに対する劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´の収縮率は、互いに同じものとする。
【0138】
このように、劣化前の電池Bの基準完全放電側容量Caに対する劣化後の電池Bの完全放電側容量Ca´´の収縮率と、劣化前の電池Bの基準ステージ容量Cbに対する劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´の収縮率とが互いに同じ場合では、劣化前の電池Bの基準ステージ容量Cbに対する劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´の収縮率と、劣化前の電池Bの基準完全放電側容量Caとの乗算値を、劣化後の電池Bの完全放電側容量Ca´´として推定することができる。
【0139】
また、劣化後の電池Bの完全放電側容量Ca´´と劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´と劣化後の電池Bの満充電側容量Cc´´´との加算値を、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´´として推定することができる。
【0140】
図14は、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´´を推定する際の推定部122の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図14に示すステップS51~S56は、
図10に示すステップS51~S56と同様であるため、その説明を省略する。また、基準完全放電側容量Ca及び基準ステージ容量Cbは、予め記憶部11に記憶されているものとする。
【0141】
推定部122は、ステージが2回切り替わったと判断してから電池Bが満充電状態になった判断するまでの間に電池Bに流れる電流の積算値、または、電池Bが満充電状態であるときからステージが1回切り替わったと判断するまでの間に電池Bに流れる電流の積算値を、満充電側容量Cc´´´として取得する(ステップS71)。
【0142】
次に、推定部122は、記憶部11から基準完全放電側容量Ca及び基準ステージ容量Cbを取得する(ステップS72)。
【0143】
次に、推定部122は、ステップS72で取得した基準ステージ容量Cbに対するステップS56で取得したステージ容量Cb´´の収縮率を求める(ステップS73)。例えば、推定部122は、ステージ容量Cb´´を基準ステージ容量Cbで除算した値を収縮率とする。
【0144】
次に、推定部122は、ステップS72で取得した基準完全放電側容量CaにステップS73で求めた収縮率を乗算した値を、劣化後の電池Bの完全放電側容量Ca´´として取得する(ステップS74)。
【0145】
そして、推定部122は、ステップS74で取得した完全放電側容量Ca´´と、ステップS56で取得したステージ容量Cb´´と、ステップS71で取得した満充電側容量Cc´´´との加算値を、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´´として推定する(ステップS75)。
【0146】
このように、実施例3における蓄電装置BPでは、充電停止時または放電停止時の電池Bの容量が含まれるステージが2回切り替わるタイミングを用いて劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´及び満充電側容量Cc´´´を取得するとともに、劣化前の電池Bの基準ステージ容量Cbと劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´とを用いて劣化後の電池Bのステージ容量Cb´´の収縮率を求め、その収縮率を用いて劣化後の電池Bの完全放電側容量Ca´´を取得し、それら完全放電側容量Ca´´、ステージ容量Cb´´、及び満充電側容量Cc´´´の加算値を劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´´として推定する構成である。
【0147】
これにより、開回路電圧と充電状態開回路電圧曲線とを用いて充電前後の電池Bの充電率を取得し、充電前後の充電率と充電中に電池Bに流れる電流の積算値とにより満充電容量Cabc´´´を推定する場合に比べて、開回路電圧の測定誤差の影響をなくして満充電容量Cabc´´´を推定することができるため、劣化後の電池Bの満充電容量Cabc´´´の推定精度も向上させることができる。
【0148】
<実施例4>
実施例4における推定部122は、下記式1により電池Bの満充電容量を推定する。なお、完全放電側容量Ca´´とステージ容量Cb´´と満充電側容量Cc´´´との加算値を満充電容量Cabc´´´として推定する場合の重みαを、基準合計容量Cabと満充電側容量Cc´との加算値を満充電容量Cabc´として推定する場合または基準満充電容量Cabcと収縮率との乗算値を満充電容量Cabc´´として推定する場合の重みαより大きくする。すなわち、実施例4における推定部122は、実施例3により満充電容量を推定する場合の重みαを、実施例1または実施例2により満充電容量を推定する場合の重みαより大きくする。
【0149】
満充電容量=前回推定した満充電容量×(1-重みα)+今回推定した満充電容量×重みα ・・・式1
【0150】
これにより、満充電容量の算出に使用されるパラメータ(例えば、ステージ容量や満充電側容量)の数が比較的多く、今回算出した満充電容量が真の満充電容量に近いと推測されるとき、重みαを大きくし、満充電容量の算出に使用されるパラメータの数が比較的少なく、今回算出した満充電容量が真の満充電容量にあまり近くないと推測されるとき、重みαを小さくすることができるため、満充電容量の算出に使用されるパラメータの数の変動に伴う満充電容量の推定精度の変動を抑制することができる。
【0151】
<プロセッサ12の他の動作>
プロセッサ12は、スイッチSW1、SW2、SW3の動作を制御するとともに、CAN通信などにより監視ECU4及び車両ECU5と通信を行う。
【0152】
すなわち、プロセッサ12は、ユーザによるイグニッションスイッチの操作によりイグニッションオフからイグニッションオンに切り替わった旨を車両ECU5から受信すると、スイッチSW1、SW3を遮断状態から導通状態に切り替えるとともにスイッチSW2を遮断状態のままにする。
【0153】
また、プロセッサ12は、推定タイミングになると、電池Bの充電状態を推定し、補正タイミングになると、電池Bの充電状態を補正する。
【0154】
また、プロセッサ12は、その充電状態に応じた入力電力指令値Winまたは出力電力指令値Woutを車両ECU5に送信する。
【0155】
また、プロセッサ12は、電池Bの充電状態が第1の下限閾値以下になると、制限後の出力電力指令値Woutを車両ECU5に送信し、電池Bの充電状態が第1の上限閾値以上になると、制限後の入力電力指令値Winを車両ECU5に送信する。車両ECU5は、出力電力指令値Woutに応じた電力が電池Bからインバータ回路Invに供給されるようにインバータ回路Invの動作を制御するとともに、入力電力指令値Winに応じた電力がインバータ回路Invから電池Bに供給されるようにインバータ回路Invの動作を制御する。車両ECU5は、出力電力指令値Woutまたは入力電力指令値Winが制限されると、インバータ回路Invのスイッチのオン、オフを制御する制御信号のデューティ比を小さくすることにより、電池Bからインバータ回路Invに供給される電力またはインバータ回路Invから電池Bに供給される電力を制限する。
【0156】
また、プロセッサ12は、電池Bの充電状態が第1の下限閾値より小さい第2の下限閾値以下になると、または、電池Bの充電状態が第1の上限閾値より大きい第2の上限閾値以上になると、スイッチSW1、SW2、SW3を遮断することにより、電池Bからインバータ回路Invに電力が供給されること、インバータ回路Invから電池Bに電力が供給されること、及び充電器Chから電池Bに電力が供給されることを禁止する。なお、第2の下限閾値は、電池Bが過放電状態になる直前の電池Bの充電状態とし、第2の上限閾値は、電池Bが過充電状態になる直前の電池Bの充電状態とする。これにより、電池Bが過充電状態または過放電状態になることを防止することができる。
【0157】
また、プロセッサ12は、スイッチSW1及びスイッチSW2またはスイッチSW1及びスイッチSW3を導通させているとき、監視ECU4から送信される電圧が過電圧閾値以上になると、または、監視ECU4から送信される電流が過電流閾値以上になると、または、監視EUC4から送信される温度が過温度閾値以上になると、電池Bに異常が発生したと判断し、その旨を車両ECU5に送信する。車両ECU5は、電池Bに異常が発生した旨を受信すると、電池Bからインバータ回路Invに電力が供給されること、インバータ回路Invから電池Bに電力が供給されること、及び充電器Chから電池Bに電力が供給されることを禁止する。
【0158】
また、プロセッサ12は、ユーザによるイグニッションスイッチの操作によりイグニッションオンからイグニッションオフに切り替わった旨を車両ECU5から受信すると、スイッチSW1、SW3を導通状態から遮断状態に切り替えるとともにスイッチSW2を遮断状態のままにする。
【0159】
また、プロセッサ12は、充電器Chと車両Veとが充電ケーブルなどを介して電気的に接続された後、電池Bの充電開始指示を車両ECU5から受信すると、スイッチSW1、SW2を導通させるとともにスイッチSW3を遮断状態にする。
【0160】
また、プロセッサ12は、電池Bの充電状態に応じた電流指令値を車両ECU5に送信する。車両ECU5は、電流指令値に応じた電流が充電器Chから電池Bに供給されるように電流指令値を充電器Chに送信する。
【0161】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0162】
1 電池ECU
2 電流計
3 温度計
4 監視ECU
5 車両ECU
11 記憶部
12 プロセッサ
121 取得部
122 推定部
Ve 車両
BP 蓄電装置
Inv インバータ回路
M モータ
Ch 充電器
SW1、SW2、SW3 スイッチ