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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139694
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】シート及びシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20220915BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B32B27/40
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040192
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】593139123
【氏名又は名称】株式会社ロジャースイノアック
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹原 和則
(72)【発明者】
【氏名】桐山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大智
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 瑛二
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100CA18B
4F100DD01C
4F100DJ01B
4F100EJ02B
4F100EJ08B
4F100EJ39C
4F100EJ42B
4F100GB81
4F100JA13B
4F100JK16C
(57)【要約】
【課題】基本的な性能に優れ、表面の耐摩耗性及び裏面の滑りにくさが向上したシートを提供する。
【解決手段】シート10は、第1ポリウレタンフィルムで構成された第1フィルム層11と、ポリウレタンフォームで構成された発泡層12と、第2ポリウレタンフィルムで構成された第2フィルム層13と、をこの順に備えている。ポリウレタンフォームの平均セル径が50μm以上300μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリウレタンフィルムで構成された第1フィルム層と、
ポリウレタンフォームで構成された発泡層と、
第2ポリウレタンフィルムで構成された第2フィルム層と、をこの順に備え、
前記ポリウレタンフォームの平均セル径が50μm以上300μm以下である、シート。
【請求項2】
前記ポリウレタンフォームは難燃剤を含有する、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記第2フィルム層は、前記発泡層側とは反対側の面が設置対象物に対して接触する設置面であり、前記設置面に凹凸形状を有する、請求項1又は請求項2に記載のシート。
【請求項4】
JIS K7125に準じて測定した、前記第2フィルム層側の面の静摩擦係数が、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で0.3以上10.0以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシートの製造方法であって、
一方向に走行する前記第1ポリウレタンフィルムと前記第2ポリウレタンフィルムの間にポリウレタンフォーム原料を供給し、前記ポリウレタンフォーム原料を反応及び硬化させて前記ポリウレタンフォームを形成する、シートの製造方法。
【請求項6】
供給された前記ポリウレタンフォーム原料に対して前記第2ポリウレタンフィルムが上側に位置する姿勢で、前記ポリウレタンフォーム原料を加熱し、反応及び硬化させて前記ポリウレタンフォームを形成する、請求項5に記載のシートの製造方法。
【請求項7】
第1ポリウレタンフィルムで構成された第1フィルム層と、
難燃剤を含有するポリウレタンフォームで構成された発泡層と、
第2ポリウレタンフィルムで構成された第2フィルム層と、をこの順に備えたシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート及びシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、床マット等として利用できる発泡ウレタン成形品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-255995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のポリウレタンフォームを用いたシートは、表面の耐摩耗性及び裏面の滑りにくさの点で改善が望まれている。また、シートは、設置目的、設置場所等に応じて、衝撃吸収性、防炎性等の基本的な性能を向上することも望まれている。
本開示は、基本的な性能に優れ、表面の耐摩耗性及び裏面の滑りにくさが向上したシート、及び基本的な性能に優れ、表面の耐摩耗性及び裏面の滑りにくさが向上したシートの製造方法を提供することを目的とする。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1ポリウレタンフィルムで構成された第1フィルム層と、
ポリウレタンフォームで構成された発泡層と、
第2ポリウレタンフィルムで構成された第2フィルム層と、をこの順に備え、
前記ポリウレタンフォームの平均セル径が50μm以上300μm以下である、シート。
【0006】
上記のシートの製造方法であって、
一方向に走行する前記第1ポリウレタンフィルムと前記第2ポリウレタンフィルムの間にポリウレタンフォーム原料を供給し、前記ポリウレタンフォーム原料を反応及び硬化させて前記ポリウレタンフォームを形成する、シートの製造方法。
【0007】
第1ポリウレタンフィルムで構成された第1フィルム層と、
難燃剤を含有するポリウレタンフォームで構成された発泡層と、
第2ポリウレタンフィルムで構成された第2フィルム層と、をこの順に備えたシート。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、基本的な性能に優れ、表面の耐摩耗性及び裏面の滑りにくさが向上したシート、及び基本的な性能に優れ、表面の耐摩耗性及び裏面の滑りにくさが向上したシートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るシートの断面図である。
図2】シートの好ましい一態様を示す断面図である。
図3】シートの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
【0011】
前記ポリウレタンフォームは難燃剤を含有する、シート。
【0012】
前記第2フィルム層は、前記発泡層側とは反対側の面が設置対象物に対して接触する設置面であり、前記設置面に凹凸形状を有する、シート。
【0013】
JIS K7125に準じて測定した、前記第2フィルム層側の面の静摩擦係数が、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で0.3以上10.0以下である、シート。
【0014】
供給された前記ポリウレタンフォーム原料に対して前記第2ポリウレタンフィルムが上側に位置する姿勢で、前記ポリウレタンフォーム原料を加熱し、反応及び硬化させて前記ポリウレタンフォームを形成する、シートの製造方法。
【0015】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0016】
以下、本開示を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態のシート10は、第1ポリウレタンフィルムで構成された第1フィルム層11と、ポリウレタンフォームで構成された発泡層12と、第2ポリウレタンフィルムで構成された第2フィルム層13と、をこの順に備えている。
【0017】
1.発泡層12
発泡層12は、ポリウレタンフォームで構成されている。ポリウレタンフォームは、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応、及びメカニカルフロス法により発泡させて得ることができる。なお、メカニカルフロス法は、混合原料中に特定の発泡剤を添加することなく、混合原料を攪拌・混合する際に、不活性ガス等の圧縮気体を混入することによって気泡を形成させる方法である。
【0018】
ポリオール類として、少なくとも(A)ポリマーポリオールからなる第1のポリオール、(B)ポリエーテルポリオールからなる第2のポリオール、及び(C)ポリエステルポリオールからなる第3のポリオールの3種のポリオールが組合せて用いられることが好ましい。このようにポリオールを組合せて用いることで、シート10の低圧縮残留歪性及び耐衝撃吸収性を向上できる。
【0019】
第1のポリオールは、例えば、数平均分子量1500~4500(好ましくは2000~4000)、官能基数3又は2のポリマーポリオールである。第1のポリオールは、第2のポリオール及び第3のポリオールとの併用によりポリウレタンフォームに引張強度等の強度、用途に応じた硬度及び柔軟性を付与する。第1のポリオールとしては、例えば、ベースポリオールとしての官能基数3のポリエーテルポリオール中でアクリロニトリル及びスチレン等のビニルモノマーをグラフト共重合させてなるポリマーポリオールを好適に用いることができる。上記ベースポリオールとしては、例えば、グリセリン等の3価の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオールが挙げられる。官能基数2のポリマーポリオールの場合には、ベースポリオールとして、例えば、グリコール等の2価の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオールを用いてもよい。なお、上記第1のポリオールの数平均分子量は、ベースポリオールの数平均分子量を意味する。
【0020】
また、第1のポリオールのポリマーコンテント(ポリマーポリオール全体に対するベースポリオール以外の部分の質量割合)は15質量%~45質量%であることが好ましく、20質量%~40質量%であることがより好ましい。ポリウレタンフォームの強度を向上させるという観点においては、第1のポリオールのポリマーコンテントは大きいほうが好ましいが、同ポリマーコンテントが45質量%を超えると、粘度が高くなりすぎて作業性が低下するおそれがある。なお、第1のポリオールとしては、一種のポリマーポリオールのみが含有されてもよいし、数平均分子量やポリマーコンテント等が異なる二種以上のポリマーポリオールが組み合わされて含有されてもよい。
【0021】
混合原料中における第1のポリオールの含有量は、ポリオール類全体を100質量部としたとき、好ましくは80質量部~95質量部であり、より好ましくは85質量部~90質量部である。この含有量が下限値以上であれば、引張強度等の強度、硬度、及び柔軟性を向上できる。この含有量が上限値以下であれば、引張強度や引裂強度等における強度を確保できる。
【0022】
第2のポリオールは、例えば、数平均分子量300~900(好ましくは、450~750)、官能基数3のポリエーテルポリオールである。第2のポリオールは、第1のポリオールとの併用によりポリウレタンフォームに引張強度等の強度及び低圧縮残留歪性を付与するとともに、第3のポリオールとの併用によりポリウレタンフォームの引張強度等の強度及び低圧縮残留歪性をさらに向上させる。
【0023】
第2のポリオールとしては、例えば、グリセリン等の3価の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオールを好適に用いることができる。また、第2のポリオールは、アミノ基等の水酸基以外の官能基を有していてもよい。そして、第2のポリオールとして、一種のポリエーテルポリオールのみが含有されていてもよいし、数平均分子量や官能基等の異なる二種以上のポリエーテルポリオールが組み合わされて含有されてもよい。
【0024】
混合原料中における第2のポリオールの含有量は、ポリオール類全体を100質量部としたとき、好ましくは5質量部~15質量部である。この含有量が下限以上であれば、低圧縮残留歪性を十分に得ることができる。また上記の含有量が、上限を超えると低反発性が発現する。高反発性のポリウレタンフォームを得るという観点においては、上記含有量を上限以下にすることが好ましい。また、第2のポリオールの上記含有量を5質量部~15質量部とした場合には、ポリウレタンフォームに高反発性を付与することができる。
第2のポリオールの含有量と第3のポリオールの含有量は、加水分解性及び硬度のバランスを考慮して適宜調整される。第2のポリオールの含有量は、特に限定されないが、第3のポリオールの含有量よりも多くてもよい。
【0025】
第3のポリオールは、例えば、官能基数2又は3のポリエステルポリオールである。第3のポリオールは、第1のポリオールとの併用によりポリウレタンフォームに耐熱性及び耐薬品性を付与するとともに、第2のポリオールとの併用によりポリウレタンフォームの引張強度及び低圧縮残留歪性を向上させる。また、第3のポリオールは、ポリウレタンフォームのセルを微細化、及び均一化する作用も有している。
【0026】
第3のポリオールの分子量(数平均分子量)は、400~2500の範囲であることが好ましく、450~1500の範囲であることがより好ましい。第3のポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール、アジペート系ポリエステルポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等を用いることができる。ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を開環付加重合させて得たポリエステルポリオールが挙げられる。アジペート系ポリエステルポリオールとしては、例えば、多官能カルボン酸と多官能ヒドロキシ化合物との重縮合によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。これらのポリエステルポリオールの中でも、加水分解を生じ難くする観点及び揮発性有機化合物含量の低減という観点から官能基数3のポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
【0027】
混合原料中における第3のポリオールの含有量は、ポリオール類全体を100質量部としたとき、好ましくは1質量部~6質量部であり、より好ましくは2質量部~5質量部である。この含有量が1質量部未満である場合には低反発性が発現する。高反発性のポリウレタンフォームを得るという観点においては、上記含有量を下限値以上にすることが好ましい。また、上記含有量が6質量部以下であれば、圧縮残留歪の増大を抑えて、低圧縮残留歪性を確保できる。
【0028】
また、ポリオール類として、上記第1~3のポリオール以外のその他のポリオールを含有してもよい。その他のポリオールとしては、ポリウレタンフォームに一般に用いられるポリオールであれば特に限定されることなく用いることができる。なお、上記ポリオール類には、成分の酸化を抑制するために酸化防止剤が配合される場合があるが、揮発性有機化合物含量の低減という観点から、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を使用していないBHTフリーのポリオール類を用いることが好ましい。BHTフリーのポリオール類としては、例えば、分子量300以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用したポリオールが挙げられる。
【0029】
ポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数有する化合物である。ポリイソシアネート類は、例えば、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ポリイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート類、又はこれらとポリオールとの反応による遊離イソシアネートプレポリマー類、カルボジイミド変性ポリイソシアネート類等の変性ポリイソシアネート類を用いることができる。また、これらのポリイソシアネート類は、一種のみ含有されていてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されていてもよい。
【0030】
なお、ポリイソシアネート類は、ハロゲン含量(特に塩素含量)の低減という観点から、モノメリックイソシアネート(たとえば、モノメリックMDI)、カルボジイミド変性イソシアネート、又はそれらを出発原料として得られるイソシアネート基末端を有するプレポリマーを用いることが好ましい。また、ポリイソシアネート類の官能基数は2.0~2.2の範囲であることが好ましい。
【0031】
なお、ポリイソシアネート類のイソシアネートインデックスは0.9~1.1の範囲であることが好ましい。イソシアネートインデックスは、ポリオール類におけるイソシアネートと反応し得る水酸基等の反応基に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比である。従って、その値が1未満の場合には水酸基等の反応基がイソシアネート基より過剰であることを意味し、1を越える場合にはイソシアネート基が水酸基等の反応基より過剰であることを意味する。イソシアネートインデックスが0.9以上であれば、ポリオール類がポリイソシアネート類と十分に反応し得る。イソシアネートインデックスが1.1以下であれば、低圧縮残留歪性の向上、高反発性の観点で好ましい。
【0032】
混合原料は好ましくは難燃剤を含有する。難燃剤としては、例えば、膨張黒鉛、リン系難燃剤、メラミン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤が挙げられる。難燃剤は、環境負荷物質を使用しないという点で、非ハロゲン系難燃剤であることが好ましく、膨張黒鉛及びリン系難燃剤からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0033】
難燃剤は、ブリードやブルームを抑制する観点から、膨張黒鉛を用いることが好ましい。膨張黒鉛は、鱗片状の黒鉛の層間に化学物質が挿入(インターカレーション)されたものである。挿入される化学物質としては、硝酸、過マンガン酸カリウム、硫酸等が挙げられる。これらの中でも、膨張開始温度の高い硫酸が好ましい。膨張黒鉛の膨張開始温度は、シート10の製造時における膨張を抑制する観点から、170℃以上であることが好ましい。なお、膨張黒鉛の膨張開始温度は、通常、200℃以下である。
【0034】
膨張黒鉛の含有量は、ポリオール類100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、20質量部以上45質量部以下であることがより好ましく、25質量部以上40質量部以下であることが更に好ましい。膨張黒鉛の含有量が下限以上であれば、難燃性を向上できる。膨張黒鉛の含有量が上限以下であれば、ポリウレタンフォームの発泡性の観点で好ましい。
【0035】
難燃剤は、ポリウレタンフォームの物性を確保しつつ難燃性を向上する観点から、膨張黒鉛とリン系難燃剤を併用することが好ましい。リン系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステル、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン及びエチレンジアミンリン酸塩、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ビス(1,3-フェニレンジフェニル)ホスフェートなどの化合物、リン酸トリアリール、リン酸トリアルキル、リン酸アルキルアリールなどの化合物、赤リン等が挙げられる。膨張黒鉛と併用されるリン系難燃剤は、ブリードやブルームを抑制する観点から、固体(粉体)のリン系難燃剤が好ましく、粉体のポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
【0036】
リン系難燃剤の含有量は、ポリオール類100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、20質量部以上45質量部以下であることがより好ましく、25質量部以上40質量部以下であることが更に好ましい。リン系難燃剤の含有量が下限以上であれば、難燃性を向上できる。リン系難燃剤の含有量が上限以下であれば、ポリウレタンフォームの発泡性の観点で好ましい。
膨張黒鉛とリン系難燃剤の質量比(膨張黒鉛:リン系難燃剤)は、好ましくは5:1~1:5であり、より好ましくは2:1~1:2である。
【0037】
混合原料は好ましくは整泡剤を含有する。整泡剤は混合原料の発泡を円滑に行うために用いられるものである。整泡剤としては、メカニカルフロス法を採用した場合に通常使用される公知の整泡剤、例えば、シリコーン系整泡剤を用いることができる。こうした整泡剤は粘度が高いことから、通常、アルキルベンゼン等の溶剤により希釈した状態として混合原料中に配合される。上記溶剤として粘度500cps以下(好ましくは粘度40cps~500cps)の低粘度ポリオールを用いてもよい。低粘度ポリオールとしては、例えば、分子量(数平均分子量)1700以下のポリエーテルポリオールや、常温で液体のポリオールが挙げられる。
【0038】
混合原料中における整泡剤の含有量は、ポリオール類100質量部に対して、3質量部~15質量部であることが好ましい。この含有量が3質量部以上であれば、整泡力が十分となり、均一なセル構造の形成や低密度化することできる。また、15質量部を超えて含有させても、これ以上の飛躍的な整泡力の向上は期待できない。また、整泡剤を溶剤により希釈する場合には、質量比(整泡剤:溶剤)で15:85~85:15の範囲とすることが好ましい。
【0039】
触媒は主としてポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応を促進するためのものであり、混合原料は好ましくは触媒を含有する。触媒としては、ポリウレタンフォームに通常使用される公知の触媒、例えば、アセチルアセトン第二鉄、スタナスオクトエート、オクチル酸スズ(スズオクトエート)等の有機金属化合物、亜鉛アミン触媒等の金属錯体触媒、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N´,N´-トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン、酢酸塩、アルカリ金属アルコラートを用いることができる。触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
これらの中でも、アセチルアセトン第二鉄が少なくとも含まれることが、その安定性、良好な触媒活性及び無毒性のために特に好ましい。その効果は、例えば、米国特許第5,733,945号明細書等に開示されている。
【0040】
混合原料中における触媒の含有量は、ポリオール類100質量部に対して、0.1質量部~12.0質量部であることが好ましい。この含有量が0.1質量部以上であれば、ウレタン化反応を十分に促進できる。上記の含有量が12.0質量部以下であれば、ウレタン化反応が過剰に促進されることを抑えて、セル構造の形成が均一にされ、物理的な物性を安定化することができる。
【0041】
架橋剤はポリオール類間に架橋を形成して強度等を向上させるために用いられるものであり、混合原料は好ましくは架橋剤を含有する。架橋剤としては、ポリウレタンフォームに通常使用される公知の架橋剤、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、及びこれらの活性水素化合物にエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等を付加した化合物を挙げることができる。架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0042】
混合原料中における架橋剤の含有量は、ポリオール類100質量部に対して、2.0質量部~15.0質量部であることが好ましい。この含有量が2.0質量部以上であれば、引張強度等の強度を確保できる。また、上記の含有量が、15.0質量部以下であれば、適度な硬度とし、高反発性を付与することができる。
【0043】
混合原料は必要に応じて上記以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、可塑剤、抗菌剤、及び着色剤が挙げられる。なお、酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられるが、揮発性有機化合物含量の低減という観点から、分子量300以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが特に好ましい。増粘剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。これらの増粘剤は、ポリウレタンフォームに難燃性を付与することも知られており、シート10の難燃性を向上する観点でも好ましい。
【0044】
ポリウレタンフォームは、耐衝撃吸収性の観点から、連続気泡構造及び半連続気泡構造のいずれかを有することが好ましく、連続気泡構造を有することがより好ましい。連続気泡構造及び半連続気泡構造は、独立気泡構造と違い、気泡に気孔がある構造である。ポリウレタンフォームの気泡構造は、ポリウレタンフォームの通気度を測定することによって、評価できる。ポリウレタンフォームの通気度は、例えば、JIS L1096:2010に定められた通気性測定B法(ガーレ形法)に準じて求めた空気透過度(ガーレ通気度)として求めることができる。ポリウレタンフォームのガーレ通気度は、例えば0.5秒/100mL以上、50秒/100mL以下である。
【0045】
ポリウレタンフォームの平均セル径は、製品の一様さの保持の観点から、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが更に好ましい。ポリウレタンフォームの平均セル径は、50μm以上であることが好ましい。これらの観点から、ポリウレタンフォームの平均セル径は、50μm以上300μm以下であることが好ましく、50μm以上250μm以下であることがより好ましく、50μm以上200μm以下であることが更に好ましい。
ポリウレタンフォームの平均セル径は、ポリウレタンフォームの断面を走査型電子顕微鏡により倍率200倍で観察したときの、25mmの直線に接触するセルについて、セル径の累計をセルの個数で除して算出することができる。
また、セルを構成するセル膜の厚さは、ポリウレタンフォームの弾性を維持する観点から、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0046】
セル径の分布は、製品の一様さの保持の観点から、70%以上のセルが平均セル径の±50μm以内であることが好ましく、±30μm以内であることがより好ましく、±20μm以内であることが特に好ましい。セル径の分布は、上述した平均セル径を測定した際のセル径に基づいて算出することができる。
【0047】
セルの形状は、衝撃吸収性の観点から、略球状であることが好ましい。セルの形状は、ポリウレタンフォームの断面を顕微鏡で観察して確認できる。
例えば、セルは、下記式(1)により算出される円形度の平均値(以下、平均円形度ともいう)が0.6以上であることが好ましい。
円形度=4π(セルの断面積(mm))/(セル断面の周囲長(mm))
(1)
上記円形度は、セル断面がどの程度真円に近いかを表すものであり、円形度が1に近いほど真円に近いことを表す。平均円形度の測定は、例えば、画像解析ソフトを用いて、1mm×1mmの範囲内にある全ての気泡について気泡周長と気泡面積を測定し、それぞれの円形率を算出し、平均化して算出できる。
【0048】
なお、ポリウレタンフォームの気泡構造、平均セル径、セル径の分布、及びセルの形状等は、メカニカルフロス法における製造条件、混合原料の配合組成、及び混合原料の粘度等を調整して制御できる。
【0049】
ポリウレタンフォームの厚さは、特に限定されない。ポリウレタンフォームの厚さは、耐衝撃吸収性の観点から、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。ポリウレタンフォームの厚さは、敷設面との段差低減の観点から、20.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、5.0mm以下が更に好ましい。これらの観点から、ポリウレタンフォームの厚さは、0.5mm以上20.0mm以下が好ましく、1.0mm以上10.0mm以下がより好ましく、2.0mm以上5.0mm以下が更に好ましい。
【0050】
ポリウレタンフォームの比重は、特に限定されない。ポリウレタンフォームの比重は、硬度の観点から、0.05g/cm以上が好ましく、0.08g/cm以上がより好ましく、0.15g/cm以上が更に好ましい。ポリウレタンフォームの比重は、衝撃吸収性の観点から、0.70g/cm以下が好ましく、0.60g/cm以下がより好ましく、0.50g/cm以下が更に好ましい。これらの観点から、ポリウレタンフォームの比重は、0.05g/cm以上0.70g/cm以下が好ましく、0.08g/cm以上0.60g/cm以下がより好ましく、0.15g/cm以上0.50g/cm以下が更に好ましい。
【0051】
2.第1フィルム層11
第1フィルム層11は、第1ポリウレタンフィルムで構成されている。本実施形態では、第1フィルム層11が、シート10の表面10Aに表れる表面層であるものを例示する。第1ポリウレタンフィルムは、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応させて得ることができる。
【0052】
ポリオール類として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール、及びこれらの混合物を用いることができる。これらの中でも、耐摩耗性の観点から、ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
【0053】
上記ポリエステルポリオールは、例えば、ジカルボン酸とグリコールとを常法に従って反応させることにより得ることができる。上記ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、それらのエステル形成性誘導体等を挙げることができる。上記グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、p-キシレンジオール等の芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。これらによるポリエステルポリオール類は線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を用いて分枝状ポリエステルとすることもできる。
【0054】
混合原料中におけるポリエステルポリオールの含有量は、ポリオール類全体を100質量部としたとき、好ましくは50質量部~100質量部であり、より好ましくは70質量部~98質量部であり、さらに好ましくは85質量部~95質量部である。ポリエステルポリオールの含有量が上記の下限値以上であれば、耐摩耗性が良好となる。ポリエステルポリオールの含有量が上記の上限値以下であれば、物理的強度の観点で好ましい。
【0055】
ポリイソシアネート類は、イソシアネート基を複数有する化合物である。ポリイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0056】
第1ポリウレタンフィルムは、難燃剤、接着促進剤、着色剤、可塑剤、及びそれらの組み合わせなどの添加物をさらに含有することができる。添加物は、第1ポリウレタンフィルムの所望する特性に大きな悪影響を及ぼすことがないように選択される。
ポリウレタンフォームが難燃剤として膨張黒鉛を含有する構成においては、着色剤を含有する第1ポリウレタンフィルムを用いることが好適である。仮に第1ポリウレタンフィルムが無色透明である場合には、第1フィルム層を通してポリウレタンフォーム中の膨張黒鉛が視認され、シート10の色が制約される。着色剤を含有する第1ポリウレタンフィルムを用いることで、シート10の色の自由度を高めることができる。
【0057】
第1ポリウレタンフィルムの厚さは、特に限定されない。第1ポリウレタンフィルムの厚さは、耐摩耗性及び成型性の観点から、0.001mm以上が好ましく、0.005mm以上がより好ましく、0.010mm以上が更に好ましい。第1ポリウレタンフィルムの厚さは、伸縮性及びコストの面から、0.200mm以下が好ましく、0.100mm以下がより好ましく、0.050mm以下が更に好ましい。これらの観点から、第1ポリウレタンフィルムの厚さは、0.001mm以上0.200mm以下が好ましく、0.005mm以上0.100mm以下がより好ましく、0.010mm以上0.050mm以下が更に好ましい。
【0058】
第1ポリウレタンフィルムの比重は、特に限定されない。第1ポリウレタンフィルムの比重は、通気性の観点から、0.8g/cm以上が好ましく、0.9g/cm以上がより好ましく、0.95g/cm以上が更に好ましい。第1ポリウレタンフィルムの比重は、柔軟性の観点から、2.0g/cm以下が好ましく、1.5g/cm以下がより好ましく、1.2g/cm以下が更に好ましい。これらの観点から、第1ポリウレタンフィルムの比重は、0.8g/cm以上2.0g/cm以下が好ましく、0.9g/cm以上1.5g/cm以下がより好ましく、0.95g/cm以上1.2g/cmが更に好ましい。
【0059】
第1ポリウレタンフィルムの伸びは、特に限定されない。第1ポリウレタンフィルムの伸びは、150%以上であることが好ましく、より好ましくは150%~500%、更に好ましくは200%~500%である。この伸びが下限値以上である場合には、一般的なPETフィルム等を用いた場合に比して、追随性に優れる。
なお、この伸びは、JIS K 6251に準じて測定される値である。
【0060】
第1ポリウレタンフィルムは、非発泡性のポリウレタンフィルムであることが好ましい。第1ポリウレタンフィルムは、実質的に無孔のフィルムを用いるのがより好ましい。第1ポリウレタンフィルムの製膜方法としては、湿式法、乾式法等が挙げられるが、実質的に無孔の第1ポリウレタンフィルムを得るには乾式法を用いるのが好ましい。具体的には通常のコーティング法、例えばナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター等を用いて離型紙、離型フィルム等の離型性のある第1基材21に塗布しフィルム化する。
第1ポリウレタンフィルムが実質的に無孔であることは、第1ポリウレタンフィルムの通気度を測定することによって、評価できる。例えば、第1ポリウレタンフィルムは、上記ガーレ通気度により表して1万秒/100mLを超えるフィルムであるとよい。
【0061】
第1フィルム層11は、図2に示すように、表面10Aに凹凸形状11Aを有することが好ましい。凹凸形状11Aは、例えば、シボ模様や幾何学模様を構成する。凹凸形状11Aは、第1ポリウレタンフィルムに一体に形成できる。例えば、凹凸形状11Aは、後述するシート10の製造方法で説明する第1基材21に付与された形状が転写されることによって形成され得る。
【0062】
3.第2フィルム層13
第2フィルム層13は、第2ポリウレタンフィルムで構成されている。本実施形態では、第2フィルム層13が、シート10の裏面10Bに表れる裏面層であるものを例示する。すなわち、本実施形態の第2フィルム層13は、発泡層12側とは反対側の面が設置対象物に対して接触する設置面である。第2ポリウレタンフィルムは、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応させて得ることができる。
【0063】
ポリオール類として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール、及びこれらの混合物を用いることができる。これらの中でも、摩擦係数を高くする為に、柔軟性を確保しつつ強度を向上する観点から、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールを併用することが好ましい。
【0064】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、グリセリン、グリコール等の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオールを好適に用いることができる。ポリエーテルポリオールとして、一種のポリエーテルポリオールのみが含有されていてもよいし、数平均分子量や官能基等の異なる二種以上のポリエーテルポリオールが組み合わされて含有されてもよい。
【0065】
ポリエステルポリオールは、例えば、ジカルボン酸とグリコールとを常法に従って反応させることにより得ることができる。上記ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、それらのエステル形成性誘導体等を挙げることができる。上記グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、p-キシレンジオール等の芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。これらによるポリエステルポリオール類は線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を用いて分枝状ポリエステルとすることもできる。
【0066】
混合原料中におけるポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの含有量は、第2フィルム層13に求められる物性に合わせて適宜調整される。
ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの質量比(ポリエーテルポリオール:ポリエステルポリオール)は、好ましくは5:95~50:50であり、より好ましくは8:92~40:60であり、さらに好ましくは10:90~30:70である。
ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの合計の含有量は、ポリオール類全体を100質量部としたとき、好ましくは50質量部以上であり、より好ましくは60質量部以上であり、さらに好ましくは70質量部以上である。
【0067】
ポリイソシアネート類は、イソシアネート基を複数有する化合物である。ポリイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0068】
第2ポリウレタンフィルムは、難燃剤、接着促進剤、着色剤、可塑剤、及びそれらの組み合わせなどの添加物をさらに含有することができる。添加物は、第2ポリウレタンフィルムの所望する特性に大きな悪影響を及ぼすことがないように選択される。
【0069】
第2ポリウレタンフィルムの厚さは、特に限定されない。第2ポリウレタンフィルムの厚さは、耐久性及び成型性の観点から、0.001mm以上が好ましく、0.005mm以上がより好ましく、0.010mm以上が更に好ましい。第2ポリウレタンフィルムの厚さは、伸縮性及びコストの面から、0.200mm以下が好ましく、0.100mm以下がより好ましく、0.050mm以下が更に好ましい。これらの観点から、第2ポリウレタンフィルムの厚さは、0.001mm以上0.200mm以下が好ましく、0.005mm以上0.100mm以下がより好ましく、0.010mm以上0.050mm以下が更に好ましい。
【0070】
第2ポリウレタンフィルムの比重は、特に限定されない。第2ポリウレタンフィルムの比重は、耐久性を高める観点から、0.8g/cm以上が好ましく、0.9g/cm以上がより好ましく、0.95g/cm以上が更に好ましい。第2ポリウレタンフィルムの比重は、軽量化による製品の取り扱い易さの観点から、2.0g/cm以下が好ましく、1.5g/cm以下がより好ましく、1.2g/cm以下が更に好ましい。これらの観点から、第2ポリウレタンフィルムの比重は、0.8g/cm以上2.0g/cm以下が好ましく、0.9g/cm以上1.5g/cm以下がより好ましく、0.95g/cm以上1.2g/cmが更に好ましい。
【0071】
第2フィルム層13は、図2に示すように、設置面に凹凸形状13Aを有することが好ましい。凹凸形状13Aは、例えば、柱状、半球(ドーム)状等の複数の滑り止め突起を有して構成される。凹凸形状13Aは、エンボス加工を施して、第2ポリウレタンフィルムに一体に形成できる。このような凹凸形状13Aを有する構成では、シートを形成した後に別途滑り止め加工等を行うことなく、シート10の滑り止め性を向上でき好ましい。例えば、凹凸形状13Aは、後述するシート10の製造方法で説明する第2基材23に付与された形状が転写されることによって形成され得る。
【0072】
4.シートの構成
シート10は、例えば、エステル系ポリウレタンの第1フィルム層11と、エーテル系ポリウレタンの発泡層12と、エーテル/エステル系ポリウレタンの第2フィルム層13と、がこの順で積層した積層体である。発泡層12と第1フィルム層11は、直接接触して接着されていることが好ましい。また、発泡層12と第2フィルム層13は、直接接触して接着されていることが好ましい。
【0073】
シート10は、敷物(カーペット、床材)として好適である。敷物として用いられる場合には、シート10は、表面10Aを上にして、室内、通路、及び乗り物のフロア等の敷設面に設置される。
第1フィルム層11は、発泡層12とは反対側に露出して、表面10A側を歩行する人や表面10A側に置かれる物等と接触する。すなわち、表面10A側を歩行する人や表面10A側に置かれる物等と発泡層12との間に第1フィルム層11が介在する。このため、発泡層12に膨張黒鉛等の脱落や色移りが懸念される添加剤を添加した場合であっても、添加剤が人や物に付くことを抑制できる。
第2フィルム層13は、発泡層12とは反対側に露出して、床等の設置対象物に接触する。すなわち、床材等の設置対象物と発泡層12との間に第2フィルム層13が介在する。このため、発泡層12に膨張黒鉛等の脱落や色移りが懸念される添加剤を添加した場合であっても、添加剤が設置対象物に付くことを抑制できる。
なお、シートの構成はこれに限られない。例えば、本実施形態とは異なり、シートは、第1フィルム層の上側や、第1フィルム層と発泡層との間に、任意の層を更に備えていてもよい。また、シートは、第2フィルム層の下側や、発泡層と第2フィルム層との間に、任意の層を更に備えていてもよい。
【0074】
シート10は、第1フィルム層11側の面10Aのテーバー摩耗量が250mg以下であることが好ましく、200mg以下であることがより好ましく、150mg以下であることがさらに好ましい。テーバー摩耗量が低いことは、耐摩耗性が高いことの一つの指標となる。なお、発泡層12単体のテーバー摩耗量は、第1フィルム層11側の面のテーバー摩耗量よりも大きく、例えば、250mg以上300mg以下である。
このテーバー摩耗量は、JIS K7204に準じ、摩耗輪H-22、回転速度60rpm、荷重250g、及び回転数1000回の条件で測定する。
【0075】
シート10は、第2フィルム層13側の面10Bの静摩擦係数が、0.3以上10.0以下であることが好ましく、0.5以上7.0以下であることがより好ましく、1.0以上4.0以下であることがさらに好ましい。静摩擦係数が高いことは、グリップ性が高いことの一つの指標となる。
この静摩擦係数は、JIS K7125に準じて温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で測定される。
【0076】
第2フィルム層13の発泡層12側とは反対側の面が設置対象物に対して接触する設置面である場合には、第2フィルム層13は、敷設面に対する滑り止め層として機能する。このため、敷設面との間に粘着層等を設けない構成であっても敷設面に対するシート10のグリップ性を確保できる。
【0077】
シート10の25%圧縮荷重は、特に限定されない。シート10の25%圧縮荷重(25%CLD、JIS K 6254:2010)は、0.01~0.5MPaが好ましい。
【0078】
シート10の衝撃吸収性は、特に限定されない。後述する測定方法で測定した、シート10の衝撃荷重は、0.35kN以下であることが好ましい。
【0079】
5.シート10の製造方法
シート10の製造方法は、例えば、一方向に走行する第1ポリウレタンフィルムと第2ポリウレタンフィルムの間にポリウレタンフォーム原料を供給し、ポリウレタンフォーム原料を反応及び硬化させてポリウレタンフォームを形成する。シート10の製造方法は、表面10Aに現れる第1ポリウレタンフィルムのガス浮きを抑制する観点で、供給されたポリウレタンフォーム原料に対して第2ポリウレタンフィルムが上側に位置する姿勢で、ポリウレタンフォーム原料を加熱し、反応及び硬化させてポリウレタンフォームを形成することが好ましい。本実施形態のシート10の製造方法は、メカニカルフロス法によってポリウレタンフォームを製造する。シート10は、例えば、図3に示す、製造装置30を用いて製造できる。
【0080】
製造装置30は、図示しない混合部と、供給ロール33,34及び製品回収ロール35を含むロール機構32と、吐出ノズル36と、加熱部37とを備えている。混合部は、原料を混合してポリウレタンフォーム原料Mを得る部分である。第1供給ロール33は、第1基材21付きの第1ポリウレタンフィルムが巻かれ、図示しない駆動源により第1ポリウレタンフィルムを供給する部分である。第2供給ロール34は、第2基材23付きの第2ポリウレタンフィルムが巻かれ、図示しない駆動源により第2ポリウレタンフィルムを供給する部分である。製品回収ロール35は、シート10をロール状に巻いて、回収する部分である。吐出ノズル36は、第1ポリウレタンフィルムと第2ポリウレタンフィルムの間にポリウレタンフォーム原料Mを供給する部分である。加熱部37は、供給されたポリウレタンフォーム原料Mを加熱するヒーター等によって構成されている。さらに、製造装置30は、第1ポリウレタンフィルムから第1基材21を剥がして回収する第1基材回収ロール38と、第2ポリウレタンフィルムから第2基材23を剥がして回収する第2基材回収ロール39を備えている。
【0081】
シート10は次のようにして製造できる。まず、第1供給ロール33から、第1基材21付きの第1ポリウレタンフィルムを連続的に供給し、第2供給ロール34から、第2基材23付きの第1ポリウレタンフィルムを連続的に供給する。第1ポリウレタンフィルムと第2ポリウレタンフィルムが連続的に供給される過程で、吐出ノズル36からポリウレタンフォーム原料Mを第1ポリウレタンフィルムと第2ポリウレタンフィルムの間に供給する。この際、第1ポリウレタンフィルムと第2ポリウレタンフィルムの間の距離に応じて、シート10の厚さを設定できる。
【0082】
続いて、加熱部37でポリウレタンフォーム原料Mを加熱して反応及び硬化させる。この際、製品温度が膨張黒鉛の膨張開始温度(例えば、170℃以下)となる条件でポリウレタンフォーム原料Mを加熱する。加熱部37による加熱は、第2ポリウレタンフィルムが上側に位置する姿勢で行われる。このようにすれば、仮にポリウレタンフォーム原料に添加された膨張黒鉛が一部膨張しガスが発生した場合であっても、第1ポリウレタンフィルム側へガスが移動しにくく、シート10の表面10A側にガス浮きが生じることを抑制できる。その後、積層状態にある第1ポリウレタンフィルム、ポリウレタンフォーム、及び第2ポリウレタンフィルムが固着した後に第1基材21及び第2基材23を剥離して、シート10を製品回収ロール35に巻き取る。
【0083】
このようにして得られたシート10は、所定の形状に裁断されて敷物(カーペット、床材)として用いることができる。シート10は、敷物以外にも、コースターや鍋敷き、シューズインソール、及び車載用シート等に適用できる。
【0084】
6.本実施形態における作用効果
従来から、パーソナルユースおよび家庭での取り外し可能な敷物(カーペット材、床材)において、繊維材や、ポリエチレンフォーム、EVAなどの樹脂フォームが使われている。敷物には、クリーニング性、簡易設置性、歩行性、耐久性などの基本機能が求められる。さらに近年、特に介護や子育てに対応した住宅(施設)においては、バリアフリー化、転倒時の安全性確保の問題から、段差が少なく(厚みが薄く)、かつ、衝撃吸収性能に優れた敷物が要求されている。このように、敷物の基本機能を併せ持ち、衝撃吸収性の高いシートへの需要が高まっている。また、介護施設や宿泊施設などの不特定多数の人が出入りする施設や建築物においては、消防法により定められた防炎性能基準を満たす性能が必要であるが、全てを満たすような敷物がないのが実情である。
【0085】
本実施形態のシート10は、第1フィルム層11と、発泡層12と、第2フィルム層13と、をこの順に備えることにより、衝撃吸収性、難燃性等の基本的な性能を確保しつつ、表面10Aの耐摩耗性及び裏面10Bの滑りにくさを向上できる。
シート10は衝撃吸収性が高いから、要介護者や幼少児が必要とする車椅子や歩行器等に対応して厚さを低減して、段差を小さくできる。さらに、転倒時には衝撃を吸収して、安全性を確保できる。発泡層12が高反発性である場合には、歩行時に足が沈み込み過ぎず、歩行性がよい。同様に、発泡層12が高反発性である場合には、走行時に車椅子や歩行器の車輪が沈み込み過ぎず、走行しやすい。
【0086】
シート10は、第1フィルム層11の耐摩耗性が高いから、耐久性を確保できる。例えば敷物として利用した場合に、車椅子や歩行、清掃に伴う擦れによる摩耗を抑制して、シート10の破損を抑制できる。このため、シート10の寿命を長くすることができる。
また、シート10は、第1フィルム層11に溶剤や汚れが染み込みにくく、また、第1フィルム層11に付いた付着物をふき取りやすい。このため、シート10は、クリーニング性が良好である。また、第1フィルム層11は耐薬品性が高く、シート10の耐久性の向上に寄与できる。
【0087】
シート10は、第2フィルム層13のグリップ性が高いから、簡易設置性に優れる。具体的には、シート10は、第2フィルム層13を敷設面に接触させて置くだけでも敷設面に対して滑りにくい。このため、シート10を設置する際に、従来のように粘着剤又は接着剤を用いることなく、直接敷設面に設置できる。さらに、粘着剤又は接着剤を用いない場合には、敷物を取り外した際に敷設面に残った粘着剤又は接着剤を、溶剤を用いて剥がす手間が掛からない。
ポリウレタンフォームが難燃剤を含有する場合には、発泡層12単体の静摩擦係数が低下することが懸念される。本実施形態では、発泡層12と共に第2フィルム層13を備えるから、発泡層12によって衝撃吸収性や難燃性等の機能を確保しつつ、第2フィルム層13によってグリップ力も確保できる。
【0088】
ポリウレタンフォームが難燃剤を含有する場合には、シート10の難燃性を向上できる。具体的には、シート10に、消防法施行規則第4条の3の基準に適用できる防炎性能を付与することができる。また、難燃剤にハロゲン由来の材料を使用しない場合には、環境に良い処方とすることも可能である。
さらに、本実施形態では、発泡層12が第1フィルム層11及び第2フィルム層13に被覆されるから、難燃剤と人及び物との接触を抑制でき、また、ポリウレタンフォーム中の難燃剤の脱落を抑制できる。
【0089】
本実施形態のシート10の製造方法は、第1フィルム層11と発泡層12と第2フィルム層13を一体に成形するから、第1フィルム層11、発泡層12、及び第2フィルム層13を接着するための手間がかからない。また、第1フィルム層11、発泡層12、及び第2フィルム層13は共にポリウレタン樹脂で構成されるから、接着強度が確保され、剥離が生じ難い。
【0090】
本実施形態のシート10の製造方法は、シート10を一方向に長い長尺状に形成しやすい。このようなシート10は、一枚で大きい面積の敷設面に設置可能であり、敷物として利用し易い。また、シート10は、所定の大きさに裁断してサイズを調整しやすい。
【0091】
さらに、本実施形態のシート10の製造方法は、シート10をロール状に巻き取った場合であっても、先に巻かれた発泡層12と後に巻かれた発泡層12の間に第1フィルム層11及び第2フィルム層13が介在する。仮に、先に巻かれた発泡層12と後に巻かれた発泡層12が接触する場合には、発泡層12同士がブロッキングしないように、例えば、発泡層12に離型紙等を積層したり、UV(ultraviolet)コートを施したりする対策が取られる。本実施形態のシート10は、先に巻かれた発泡層12と後に巻かれた発泡層12の間に第1フィルム層11及び第2フィルム層13が介在するから、離型紙等を積層したり、発泡層12にUVコートを施したりすることなく、ブロッキングを抑制できる。このように、本実施形態の第1フィルム層11及び第2フィルム層13はブロッキングを抑制する層としての機能も有する。本実施形態のシート10がロール状に巻き取られた構成である場合には、シート10を製造し易く、また、取り扱いやすい。
【実施例0092】
次に、実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。
1.シートの作製
まず、実施例及び比較例2の第1ポリウレタンフィルムとして、ポリエステル系ポリウレタン(セイコー化成製、ラックスキン U2245)のフィルムを準備した。第1ポリウレタンフィルムの厚さは0.04mmとした。第1ポリウレタンフィルムの比重は1.1g/cmであった。
また、実施例の第2ポリウレタンフィルムとして、ポリエーテル/エステル系ポリウレタン(セイコー化成製、ラックスキン U2462)のフィルムを準備した。第2ポリウレタンフィルムの厚さは0.02mmとした。第2ポリウレタンフィルムの比重は1.1g/cmであった。第2ポリウレタンフィルムの設置面には、エンボス加工を施して凹凸形状を設けた。なお、凹凸形状を有するフィルムの厚さは、裏面から凹凸形状の凸部の頂面までの寸法として測った。
【0093】
次に、実施例及び比較例1,2のポリウレタンフォームに用いた混合原料の成分を以下に示す。
ポリマーポリオール1:数平均分子量3,000、官能基数3、ポリマーコンテント22質量%のポリマーポリオール(旭硝子社製、EXCENOL914)
ポリマーポリオール2:数平均分子量3,000、官能基数2、ポリマーコンテント20質量%のポリマーポリオール(旭硝子社製、EXCENOL913)
ポリマーポリオール3:数平均分子量3,000、官能基数3、ポリマーコンテント40質量%のポリマーポリオール(三洋化成工業社製、シャープフローFS-7301)
ポリエーテルポリオール:数平均分子量600、官能基数3のポリオキシプロピレングリセリルエーテル(三洋化成工業社製、サンニックスGP-600)
ポリエステルポリオール:分子量540、官能基数3のポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業社製、プラクセル305)
架橋剤1:ジプロピレングリコール(旭硝子社製)
架橋剤2:MPO(2-メチル-1,3-プロパンジオール)(大連化学社製)
増粘剤:水酸化アルミニウム(住友化学社製、C-31)
整泡剤:ジメチルポリシロキサンとポリエーテルのブロック共重合体(東レ・ダウコーニング株式会社製、SZ-1952 ADDITIVE)
触媒1:鉄触媒(日本化学産業株式会社製、FIN-P1)
触媒2:亜鉛アミン触媒(KING INDUSTRIES社製、K-KAT XK-622)
難燃剤1:膨張黒鉛(Shijiazhuang ADT Carbonic Material Factory社製、SYZR-802FP)
難燃剤2:ポリリン酸アンモニウム(CBC株式会社製、テラージュC-30)
ポリイソシアネート:ポリメリックMDI(BASF INOACポリウレタン社製、フォームライト500B)
【0094】
【表1】

上記各成分を表1に示す配合割合で調製し、実施例及び比較例のポリウレタンフォームの混合原料を得た。なお、表1及び2中の(A)~(C)の標記は実施形態に記載の各成分に対応する化合物を示す。表1中の各成分の数値は質量部を表す。
【0095】
実施例のシートは、次のようにして作製した。まず、混合原料をミキシングヘッド内に投入し、不活性ガス(窒素)を10体積%~90体積%の範囲で混入しながら均質となるように攪拌して混合した。その後、混合された混合原料を連続的に供給される上記の第1ポリウレタンフィルムと第2ポリウレタンフィルムの間に供給し、120℃~170℃にて加熱硬化させた。このようにして、第1ポリウレタンフィルムで構成された第1フィルム層と、ポリウレタンフォームで構成された発泡層と、第2ポリウレタンフィルムで構成された第2フィルム層と、がこの順で積層されたシートを得た。
【0096】
比較例1のシートは、次のようにして作製した。発泡層は、ポリウレタンフィルムにかえて離型性のある基材を用いた他は、実施例の発泡層と同様にして得た。離型性のある基材を除いた後に、得られた発泡層の両面にUVコートを施した。UVコートは、アクリル系樹脂を塗布し、UVを照射して行った。このようにして、両面にコーティング層を有し、ポリウレタンフォームで構成された発泡層からなるシートを得た。
【0097】
このようにして得られた比較例1のシートは、コーティング層が裏面側に露出している。比較例1のシートは、主にブロッキングを抑制することを目的としてUVコートを施している。換言すれば、比較例1のシートは、製造及び取り扱いの都合上、コーティング層を廃止できないのが実情である。他方、実施例のシートは、第1フィルム層及び第2フィルム層によってブロッキングを抑制することができ、コーティング層を有していない。
【0098】
比較例2のシートは、次のようにして作製した。発泡層は、混合された混合原料を連続的に供給される上記の第1ポリウレタンフィルム上に供給し、120℃~170℃にて加熱硬化させた他は、実施例の発泡層と同様にして得た。このようにして、第1ポリウレタンフィルムで構成された第1フィルム層と、ポリウレタンフォームで構成された発泡層と、がこの順で積層されたシートを得た。すなわち、比較例2のシートは、第2フィルム層を有さず、発泡層が裏面に露出する点が実施例と相違する。
【0099】
2.平均セル径の測定
実施例のシートについて、実施形態に記載の方法で平均セル径を測定した。
実施例のポリウレタンフォームの平均セル径は、50μm以上300μm以下であった。このようなセルを有するポリウレタンフォームは衝撃吸収性に優れる。
【0100】
3.シートの観察
実施例のシートの断面を、顕微鏡を用いて観察した。
第1ポリウレタンフィルムの断面を1200μmに渡って観察したところ、孔は観察されなかった。このような第1ポリウレタンフィルムはクリーニング性に優れる。
また、ポリウレタンフォームの断面を観察したところ、略球形状のセルが観察された。セルの大きさは、均一性が高かった。このようなセルを有するポリウレタンフォームは衝撃吸収性に優れる。
【0101】
4.評価
次に、得られた実施例及び比較例1,2のシートについて、以下の条件で、25%圧縮荷重、防炎性、表面のテーバー摩耗量(mg)、裏面の静摩擦係数、ガーレ通気度(秒/100mL)、衝撃吸収性の評価を行った。なお、実施例では、表面は第1ポリウレタンフィルム(第1フィルム層)側の面であり、裏面は第2ポリウレタンフィルム(第1フィルム層)側の面である。比較例1では、ポリウレタンフォームの両面が表面及び裏面である。比較例2では、表面は第1ポリウレタンフィルム側の面であり、裏面はポリウレタンフォーム(発泡層)側の面である。結果を表2に示す。
【0102】
[25%圧縮荷重]
25%圧縮荷重(MPa)(25%CLD、JIS K 6254:2010)は、φ50mmのサンプルを1mm/minの速度で25%圧縮したときの圧縮応力として測定した。なお、市販のパイルカーペット(厚さ8.0mm)の25%圧縮荷重は、0.09MPaであった。
[防炎性]
消防法施行規則第4条の3に準じて、45°エアーミックスバーナー法により試験した。判定基準に適合する場合に、表2に「適合」と記した。なお、比較例1は防炎性に関する試験は行っていない。
[表面の摩耗量]
JIS K7204に準じ、摩耗輪H-22、回転速度60rpm、荷重250g、及び回転数1000回の条件で測定した。なお、各条件は、シートの材料に応じて適宜規定した。
[裏面の静摩擦係数]
JIS K7125に準じて、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で測定した。
[ガーレ通気度]
JIS L1096:2010 8.26.2に定められた通気性測定B法(ガーレ形法)に準じて求めた。圧縮量50%、レンジ100mLとした。なお、実施例及び比較例2は、300秒/100mLを超えたため、測定を中断し表2に「通気無し」と記した。
[衝撃吸収性]
プラスチックタイル(Pタイル)の上にサンプルを置き、112gの鋼球を、落下高さ200mmで自由落下させ、衝撃荷重(kN)を測定した。なお、サンプルを置かないで測定した衝撃荷重は、0.97kNであった。市販のパイルカーペット(厚さ8.0mm)の衝撃荷重は、0.36kNであった。
【0103】
【表2】

【0104】
表2に示すように、実施例は、比較例1よりも表面の摩耗量が小さく、耐摩耗性に優れることが分かった。また、実施例は、比較例1及び比較例2よりも裏面の静摩擦係数が大きく、グリップ性に優れることが分かった。さらに、実施例は、通気性がほとんどなく、クリーニング性に優れることが示唆された。さらに、実施例は、25%圧縮荷重、防炎性、衝撃吸収性等の基本的な性能に優れることが確認された。
【0105】
5.実施例の効果
以上の実施例によれば、基本的な性能に優れ、表面の耐摩耗性及び裏面の滑りにくさが向上したシート、及び、基本的な性能に優れ、表面の耐摩耗性及び裏面の滑りにくさが向上したシートの製造方法を提供することができる。
【0106】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、本開示の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0107】
10 …シート
10A…表面
10B…裏面(第2フィルム層側の面)
11 …第1フィルム層
11A…凹凸形状
12 …発泡層
13 …第2フィルム層
13A…凹凸形状
21 …第1基材
23 …第2基材
30 …製造装置
32 …ロール機構
33 …第1供給ロール
34 …第2供給ロール
35 …製品回収ロール
36 …吐出ノズル
37 …加熱部
38 …第1基材回収ロール
39 …第2基材回収ロール
図1
図2
図3