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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139702
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】浴室暖房乾燥システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 15/00 20220101AFI20220915BHJP
   F24H 15/196 20220101ALI20220915BHJP
【FI】
F24D15/00 B
F24H1/00 602P
F24H1/00 602X
F24H1/00 602Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040202
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 福郎
(72)【発明者】
【氏名】波多野 文美
【テーマコード(参考)】
3L024
3L072
【Fターム(参考)】
3L024CC17
3L024CC30
3L024DD37
3L024EE02
3L024FF04
3L024FF05
3L024FF11
3L024FF16
3L024GG02
3L072AB06
3L072AE06
3L072AE10
3L072AF01
3L072AF03
3L072AF04
(57)【要約】
【課題】浴室での給湯使用前にヒートショックのリスクの有無を予測して、リスク有の場合にリスクを回避するための対応を行うことができる浴室暖房乾燥システムを提供する。
【解決手段】浴室暖房乾燥システム1は、浴室内温度検出部10と、屋外温度検出部12と、浴室内温度検出部10の検出温度、検出日時、屋外温度検出部12の検出温度、給湯使用又は不使用を関連付けて保存する温度関連情報格納部20と、所定の日の入浴時間を推定する入浴時間推定部22と、温度関連情報格納部20に保存された外気温に対応する給湯使用時の浴室内温度に基づき給湯使用時の浴室内温度を推定すると共に、給湯不使用時の浴室内温度に基づき給湯不使用時の浴室内温度を推定する浴室内温度推定部24と、給湯使用時の浴室内温度と給湯不使用時の浴室内温度との差異を算出する演算部26と、差異に基づいてヒートショック発生のリスクを判定する判定部28と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の浴室内温度を検出する浴室内温度検出部と、
前記浴室の近傍の外気温を検出する屋外温度検出部と、
前記浴室内温度検出部で複数回検出したときの夫々の前記浴室内温度、夫々の前記浴室内温度の検出時の日時、夫々の前記検出時に前記屋外温度検出部で検出した前記外気温、及び、夫々の前記検出時の給湯使用又は不使用を関連付けて保存する温度関連情報格納部と、
前記温度関連情報格納部に保存された前記給湯使用の時間に基づいて所定の日の入浴時間を推定入浴時間として推定する入浴時間推定部と、
前記所定の日の所定の外気温条件を充足する、前記温度関連情報格納部に保存された前記外気温に対応する給湯使用時の前記浴室内温度に基づいて給湯使用時の浴室内温度を推定給湯使用時浴室内温度として推定すると共に、前記温度関連情報格納部に保存された前記外気温に対応する給湯不使用時の前記浴室内温度に基づいて給湯不使用時の浴室内温度を推定給湯不使用時浴室内温度として推定する浴室内温度推定部と、
前記推定給湯使用時浴室内温度と前記推定給湯不使用時浴室内温度との差異を算出する演算部と、
前記差異に基づいてヒートショック発生のリスクの有無を判定する判定部と、を有する浴室暖房乾燥システム。
【請求項2】
前記所定の外気温条件は、前記推定入浴時間における前記外気温である請求項1に記載の浴室暖房乾燥システム。
【請求項3】
前記所定の外気温条件は、前記外気温のうち最低気温である請求項1に記載の浴室暖房乾燥システム。
【請求項4】
気象庁又は気象予報事業者が発出する前記浴室が設置された地域の予想気温を受信する受信部をさらに備え、
前記所定の外気温条件は、前記推定入浴時間における前記予想気温に相当する前記外気温である請求項1に記載の浴室暖房乾燥システム。
【請求項5】
気象庁又は気象予報事業者が発出する前記浴室が設置された地域の予想気温を受信する受信部をさらに備え、
前記所定の外気温条件は、前記予想気温のうち最低気温に相当する前記外気温である請求項1に記載の浴室暖房乾燥システム。
【請求項6】
給湯使用時の前記浴室内温度は、浴槽へ湯張りする温度、浴室内で使用される温水シャワーの温度、給湯使用時の浴室内の空間温度の何れか1つであり、
給湯不使用時の前記浴室内温度は、給湯不使用時の浴室内の前記空間温度である請求項1から5の何れか一項に記載の浴室暖房乾燥システム。
【請求項7】
前記判定部がヒートショック発生のリスク有と判定したときに、予め設定された連絡先に判定の結果が報知される報知部をさらに備えた請求項1から6の何れか一項に記載の浴室暖房乾燥システム。
【請求項8】
前記判定部がヒートショック発生のリスクが有と判定したときに、前記判定部がヒートショック発生のリスクが無と判定されるような前記差異になるように、予め浴室内を暖める暖房部をさらに備えた請求項1から7の何れか一項に記載の浴室暖房乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室暖房乾燥システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室内で発生する事故の一つとして、ヒートショックがある。これは特に冬季において、脱衣室の温度と浴室の温度との差異や、浴室の温度と浴槽やシャワーの湯温との差異により、これらの場所を行き来したときに血圧が急激に変動して身体に過度の負担がかかって引き起こされるものである。
【0003】
浴室内でのヒートショックを回避する構成として、浴槽への湯張り開始時に、浴室の温度や外気温度を計測し、当該温度が所定温度以下のときに、ヒートショックのリスクがあるとして報知する風呂給湯機が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-48795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の風呂給湯機では、湯張りが開始される前においては、ヒートショックのリスクの有無を判別することができない。このため、例えば、湯張りをせずに浴室で温水シャワーを浴びる場合や、遠隔地に居住する高齢者が浴室を利用する場合等において、事前にヒートショックのリスクの有無を判定してリスク有の場合に浴室の暖房を予め行っておくことや、遠隔地に居住する高齢者に対してヒートショックのリスク有の注意喚起を行うこと等の対応を行うことができない。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、浴室での給湯使用前にヒートショックのリスクの有無を予測して、リスク有の場合にリスクを回避するための対応を行うことができる浴室暖房乾燥システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る浴室暖房乾燥システムの特徴構成は、浴室の浴室内温度を検出する浴室内温度検出部と、前記浴室の近傍の外気温を検出する屋外温度検出部と、前記浴室内温度検出部で複数回検出したときの夫々の前記浴室内温度、夫々の前記浴室内温度の検出時の日時、夫々の前記検出時に前記屋外温度検出部で検出した前記外気温、及び、夫々の前記検出時の給湯使用又は不使用を関連付けて保存する温度関連情報格納部と、前記温度関連情報格納部に保存された前記給湯使用の時間に基づいて所定の日の入浴時間を推定入浴時間として推定する入浴時間推定部と、前記所定の日の所定の外気温条件を充足する、前記温度関連情報格納部に保存された前記外気温に対応する給湯使用時の前記浴室内温度に基づいて給湯使用時の浴室内温度を推定給湯使用時浴室内温度として推定すると共に、前記温度関連情報格納部に保存された前記外気温に対応する給湯不使用時の前記浴室内温度に基づいて給湯不使用時の浴室内温度を推定給湯不使用時浴室内温度として推定する浴室内温度推定部と、前記推定給湯使用時浴室内温度と前記推定給湯不使用時浴室内温度との差異を算出する演算部と、前記差異に基づいてヒートショック発生のリスクの有無を判定する判定部と、を有する点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、所定の日の所定の外気温条件を充足する、推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度との差異に基づいてヒートショック発生のリスクの有無を判定することができる。したがって、浴室での給湯使用前にヒートショックのリスクを予測することができ、リスク有の場合にリスクを回避するための対応を行うことができる。
【0009】
本発明に係る浴室暖房乾燥システムの別の特徴構成は、前記所定の外気温条件は、前記推定入浴時間における前記外気温である点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、推定入浴時間における外気温に基づいて給湯不使用時の浴室内温度を推定することができるので、より正確なヒートショック発生のリスクの有無を判定することができる。
【0011】
本発明に係る浴室暖房乾燥システムの別の特徴構成は、前記所定の外気温条件は、前記外気温のうち最低気温である点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、外気温のうち最低気温であれば、推定される給湯不使用時の浴室内温度が最も低くなるので、推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度との差異が最も大きくなる。したがって、最も厳しい条件でヒートショック発生のリスク判定を行うことにより、より確実にヒートショック発生のリスクを回避することができる。
【0013】
本発明に係る浴室暖房乾燥システムの別の特徴構成は、気象庁又は気象予報事業者が発出する前記浴室が設置された地域の予想気温を受信する受信部をさらに備え、前記所定の外気温条件は、前記推定入浴時間における前記予想気温に相当する前記外気温である点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、屋外温度検出部で検出した外気温のうち、気象庁等が発出する当該推定入浴時間における予想気温に相当する外気温に対応する推定給湯不使用時浴室内温度を用いてヒートショック発生のリスク判定を行うことにより、より精度の高いリスク判定を行うことができる。
【0015】
本発明に係る浴室暖房乾燥システムの別の特徴構成は、気象庁又は気象予報事業者が発出する前記浴室が設置された地域の予想気温を受信する受信部をさらに備え、前記所定の外気温条件は、前記予想気温のうち最低気温に相当する前記外気温である点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、屋外温度検出部で検出した外気温のうち、気象庁等が発出する予想気温のうち最低気温に相当する外気温に対応する推定給湯不使用時浴室内温度を用いてヒートショック発生のリスク判定を行うことにより、より精度が高く確実なリスク判定を行うことができる。
【0017】
本発明に係る浴室暖房乾燥システムの別の特徴構成は、給湯使用時の前記浴室内温度は、浴槽へ湯張りする温度、浴室内で使用される温水シャワーの温度、給湯使用時の浴室内の空間温度の何れか1つであり、給湯不使用時の前記浴室内温度は、給湯不使用時の浴室内の前記空間温度である点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、浴室内温度の対象により、ヒートショック発生のリスク有と判定する基準を変更することができるので、より確実なリスク判定を行うことができる。
【0019】
本発明に係る浴室暖房乾燥システムの別の特徴構成は、前記判定部がヒートショック発生のリスク有と判定したときに、予め設定された連絡先に判定の結果が報知される報知部をさらに備えた点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、報知を受けた者や浴室の利用者が実際の入浴時間の前に浴室内を暖房して暖めるなど、ヒートショック発生のリスクを回避する適切な措置を講じることができる。
【0021】
本発明に係る浴室暖房乾燥システムの別の特徴構成は、前記判定部がヒートショック発生のリスクが有と判定したときに、前記判定部がヒートショック発生のリスクが無と判定されるような前記差異になるように、予め浴室内を暖める暖房部をさらに備えた点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、判定部がヒートショック発生のリスク無と判定する温度になるまで暖房することにより、浴室内が暖められた状態で入浴できるので、ヒートショック発生のリスクを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る浴室暖房乾燥システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】温度関連情報格納部に保存されているデータの例を示す表である。
図3】温度関連情報格納部に保存された給湯使用の時間とその頻度の関係を示すグラフである。
図4】給湯使用時と不使用時とにおける外気温と浴室内の空間温度との関係を示すグラフである。
図5】浴室暖房乾燥システムの処理を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る浴室暖房乾燥システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る浴室暖房乾燥システムの実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0025】
〔第1実施形態〕
図1に、本実施形態に係る浴室暖房乾燥システム1の概略構成のブロック図を示す。浴室X内で使用される浴室暖房乾燥システム1は、浴室内温度センサ10(浴室内温度検出部の一例)、外気温センサ12(屋外温度検出部の一例)、コントローラ(リモコン)14(浴室内温度検出部の一例)、熱源機16(暖房部の一例)、流量センサ18、温度関連情報格納部20、入浴時間推定部22、浴室内温度推定部24、演算部26、判定部28、報知部30、及び、これらを制御する制御部32を有している。浴室暖房乾燥システム1は、熱源機16で加熱された温水により、浴室Xで浴槽に湯張りをしたり、温水シャワーを使用したり(以下、湯張りによる湯の供給と温水シャワーの使用による湯の供給とをまとめて、単に「給湯」というときもある)、浴室Xに温風を送って浴室Xの暖房、乾燥を行うことができるシステムである。
【0026】
浴室内温度センサ10は、浴室X内の空間温度(浴室内温度の一例。以下、単に「浴室空間温度」ともいう)を検出(測定)し、温度に応じた電気信号を出力する機能を有する。本実施形態では、浴室内温度センサ10は、浴室X内で人の上半身の高さである床から1.2m~1.6mの高さに設置されている。浴室内温度センサ10は、制御部32からの指示に応じて、1時間毎に浴室空間温度を検出して(複数回検出して)、温度に応じた電気信号を温度関連情報格納部20に向けて出力する。浴室内温度センサ10による温度の検出間隔は1時間毎でなくてもよく、任意の間隔で検出してもよい。また、検出間隔も必ずしも等間隔である必要はなく、検出間隔が異なっていてもよい。例えば、浴室Xを使用しないことが多い昼間の検出間隔を長くして、浴室Xを使用することが多い夜間の検出間隔を短くしてもよい。浴室内温度センサ10による浴室空間温度の検出は、365日24時間継続して行われる。これにより、季節や時間に応じた浴室空間温度を検出し、温度関連情報格納部20に保存することができる。なお、給湯を使用していないときの浴室空間温度は、脱衣室の温度に近似できる。
【0027】
外気温センサ12は、浴室Xの近傍の屋外の気温(以下、単に「外気温」ともいう)を検出(測定)し、温度に応じた電気信号を出力する機能を有する。本実施形態では、外気温センサ12は、屋外に設置されている熱源機16の外側で熱源機16が発する熱の影響を受けない箇所に設置されている。外気温センサ12は、制御部32からの指示に応じて、浴室内温度センサ10が温度を検出するタイミングと同タイミングで外気温を検出して、温度に応じた電気信号を温度関連情報格納部20に向けて出力する。外気温センサ12による外気温の検出も、365日24時間継続して行われる。
【0028】
コントローラ14は、浴室X内及び/又は浴室X外に設置され、浴室X内への給湯の温度(浴室内温度の一例)や浴室X内の暖房、乾燥の機能を作動させる設定を行う。コントローラ14で設定された給湯温度や暖房、乾燥の設定に係る電気信号は、制御部32に入力され、制御部32は、設定された動作を熱源機16に実行させる。
【0029】
熱源機16は、コントローラ14で設定された温度で給湯したり、コントローラ14の設定により浴室Xの暖房及び乾燥を行ったりする際に、温水を必要な温度まで加熱する機能を有する。また、流量センサ18は、熱源機16で加熱された給湯用の温水の流量を検出し、給湯の使用状態と不使用状態とを判別する。判別結果は、温度関連情報格納部20に向けて出力される。なお、給湯の使用状態と不使用状態は、その他の任意の手法により判別してもよく、例えば、コントローラ14から給湯操作が指示されたか否かにより判別してもよい。
【0030】
温度関連情報格納部20は、浴室内温度センサ10で検出した浴室空間温度、外気温センサ12で検出した外気温、これらの温度を検出した日時、流量センサ18で検出した給湯使用又は不使用の判別結果、及び、給湯使用時にはコントローラ14で設定された給湯使用時の給湯温度を関連付けて保存する(図2参照)。検出の日時は、浴室内温度センサ10や制御部32に内蔵された時計から取得する、時刻情報の電波を受信して取得する等、任意の方法で取得してよい。
【0031】
入浴時間推定部22は、温度関連情報格納部20に保存された検出時毎の給湯使用の頻度を読み込み、推定を行う所定の日(以下、「推定日」という)における入浴時間を推定する(以下、推定された入浴時間を「推定入浴時間」という)。すなわち、給湯使用の頻度が高い時間帯(検出時)を推定入浴時間として推定する。図3に、温度関連情報格納部20に保存された給湯使用の時間とその頻度の関係を示す。推定入浴時間は、浴室Xで給湯を使用する時間であり、浴槽への湯張りであれば湯張りが行われその後入浴する時間、温水シャワーであればシャワーを使用して入浴する時間である。推定入浴時間としては、給湯使用頻度が最も高い時間帯に推定してもよいし、所定の頻度以上の時間帯の中で最も早い時間帯に推定してもよい。なお、季節によって、入浴時間が異なることも考えられるので、推定日における給湯使用の頻度が高い時間帯の推定は、冬期、中間期、夏期のように分けて、当該季節における給湯使用の頻度が高い時間帯を抽出し、それに基づいて推定日の入浴時間を推定するようにしてもよい。若しくは、推定日を特定の日だけに限定せず、推定日が含まれる季節(冬期、中間期、夏期)における給湯使用の頻度が高い時間帯を抽出するようにしてもよい。以下では、「推定日」には、「推定日が含まれる季節」の意味も含まれるものとする。推定日の推定入浴時間は、浴室内温度推定部24に向けて出力される。
【0032】
浴室内温度推定部24は、入浴時間推定部22で推定された推定日の推定入浴時間が入力されたら、温度関連情報格納部20に保存された給湯使用時の浴室空間温度と給湯不使用時の浴室空間温度とを読み込む。当該時間における夫々の浴室空間温度が複数ある場合には、浴室内温度推定部24は、それらの平均値を算出して、給湯使用時の浴室空間温度と給湯不使用時の浴室空間温度とを推定する。以下、推定された給湯使用時の浴室空間温度を「推定給湯使用時浴室内温度」、推定された給湯不使用時の浴室空間温度を「推定給湯不使用時浴室内空間温度」と、夫々いう。なお、浴室内温度推定部24は、平均値以外に、中央値、最頻値など、任意の統計量を算出して、推定給湯使用時浴室内温度、推定給湯不使用時浴室内温度としてもよい。
【0033】
図4に示すように、給湯使用時の浴室空間温度は季節(外気温)に関係なくほぼ一定であるが、給湯不使用時の浴室空間温度は、季節(外気温)により変化する。すなわち、外気温が高ければ給湯不使用時の浴室空間温度は高くなり、外気温が低ければ給湯不使用時の浴室空間温度は低くなる。したがって、給湯不使用時の浴室空間温度を推定する際には、推定日の推定入浴時間における外気温(所定の外気温条件の一例)に基づいて、給湯不使用時の浴室空間温度を推定する。算出された推定給湯使用時浴室内温度、推定給湯不使用時浴室内温度は、演算部26に向けて出力される。なお、本実施形態では、脱衣室の温度を給湯不使用時の浴室空間温度に基づいて推定し、浴室Xの温度を給湯使用時の浴室空間温度に基づいて推定している。
【0034】
演算部26は、浴室内温度推定部24が推定した推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度を読み込み、推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度との差異(温度差)を算出する。そして、算出された差異を判定部28に向けて出力する。
【0035】
ヒートショックは、特に冬季において、脱衣室の温度と浴室Xの温度との差異や、浴室Xの温度と浴槽や温水シャワーの給湯温度との差異により、これらの場所を行き来したときに血圧が急激に変動して身体に過度の負担がかかって引き起こされるものである。そのため、例えば、脱衣室の温度が高くて浴室X内の温度が低い場合に、浴室Xに入ると血圧が急激に変動してヒートショックが発生するリスクがある。また、浴室X内の温度が低い場合に、浴槽に浸かったり温水シャワーを浴びたりすると、血圧が急激に変動してヒートショックが発生するリスクがある。ヒートショックは、温度の低い箇所と温度の高い箇所の温度の差異が大きいと発生するリスクが高まる。
【0036】
判定部28は、演算部26で算出された推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度の差異が、所定の差異(例えば20℃)を超える差異であるか否かを判定する。判定部28は、推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度の差異が所定の差異を超えていれば、推定入浴時間に入浴した場合にヒートショック発生のリスクがあると判定し、所定の差異を超えていなければ、ヒートショック発生のリスク無と判定する。
【0037】
入浴時間推定部22による推定日の入浴時間の推定、及び、浴室内温度推定部24、演算部26、判定部28による推定入浴時間におけるヒートショック発生のリスク判定は、推定日のうち浴室暖房乾燥システム1において予め設定された時間に1回行う。例えば、推定日の午前7時、午後12時、午後5時等、任意の時間に設定できるが、最も早く入浴する時間(最も早く入浴のために給湯を使用する時間)の数時間前までの時間で設定することが好ましい。すなわち、給湯使用前に推定入浴時間におけるヒートショック発生のリスク判定を行う。時間の設定はコントローラ14を用いて行うことができる。
【0038】
判定部28が、推定日の推定入浴時間に入浴した場合にヒートショック発生のリスクがあると判定した場合には、制御部32は、報知部30に、図1に示す携帯情報端末50のように予め登録された連絡先に、判定の元になった推定入浴時間と該推定入浴時間に入浴するとヒートショック発生のリスクがある旨の報知を行う。例えば、予め登録された携帯情報端末50の電話番号やメールアドレス宛にメッセージを送信したり、プッシュ通知を行ったりする。予め登録された連絡先の例としては、判定部28に判定された浴室Xを利用する利用者(居住者)や、利用者が高齢の場合は、遠隔地に居住する当該利用者の親族等が該当する。
【0039】
このように、浴室暖房乾燥システム1は、推定入浴時間に入浴した場合にヒートショック発生のリスクがあるとの判定した場合に、給湯使用前に、報知部30が携帯情報端末50のような予め登録された連絡先にリスクがある旨の報知をすることにより、実際の入浴時間(必ずしも推定入浴時間に一致していなくてもよい)の前に報知を受けた者や浴室Xの利用者が浴室X内を暖房して暖めるなど、ヒートショック発生のリスクを回避する適切な措置を講じることができる。
【0040】
また、制御部32は、報知部30による報知に代えて、又は、報知と共に、熱源機16を作動させて、推定入浴時間に推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度の差異がヒートショック発生のリスク無と判定される差異になるように、推定入浴時間より前(例えば30分~1時間前)から浴室X内を暖房して暖めておく。具体的には、浴室X内を暖房することにより、推定入浴時間に浴室空間温度が推定給湯不使用時浴室内温度よりも高い温度になり、推定給湯使用時浴室内温度と浴室空間温度との差異が、判定部28がヒートショック発生のリスク無と判定する条件(所定の差異以下)を充足するようにする。なお、熱源機16による暖房中は、浴室内温度センサ10及び外気温センサ12による温度の検出は行われない。
【0041】
このように、推定入浴時間に浴室空間温度がヒートショック発生のリスク無と判定する条件を充足していると、浴室空間温度と給湯温度との差異が小さいため、浴室X内で浴槽に浸かったり温水シャワーを浴びたりしてもヒートショックが発生するリスクが小さくなる。
【0042】
次に、浴室暖房乾燥システム1の処理フローについて、図5を用いて説明する。
【0043】
浴室内温度センサ10と外気温センサ12は、検出時間になれば(ステップS1のYes)、温度を検出し、検出した温度は温度関連情報格納部20に保存される(ステップS2)。このとき、温度関連情報格納部20は、これらの温度を検出した日時、流量センサ18で検出した給湯使用又は不使用の判別結果、及び、給湯使用時にはコントローラ14で設定された給湯使用時の給湯温度を併せて保存する。
【0044】
コントローラ14で設定した時間になると(ステップS3のYes)、入浴時間推定部22は、温度関連情報格納部20に保存された検出時毎の給湯使用又は不使用の頻度を読み込み、入浴時間を推定する(ステップS4)。そして、浴室内温度推定部24は、入浴時間推定部22で推定された推定入浴時間における温度関連情報格納部20に保存された給湯使用時の浴室空間温度と給湯不使用時の浴室空間温度とを読み込み、給湯使用時の浴室内温度と給湯不使用時の浴室内温度とを推定する(ステップS5)。
【0045】
演算部26は、浴室内温度推定部24が推定した推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度を読み込み、推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度との差異(温度差)を算出する(ステップS6)。そして、差異の算出結果に基づいて判定部28がヒートショックのリスク有と判定すれば(ステップS7のYes)、制御部32は、報知部30にリスクを報知させたり、熱源機16を作動させて推定入浴時間にヒートショックのリスク無と判定される条件を充足するように、浴室X内を暖房させる(ステップS8)。
【0046】
このように、浴室暖房乾燥システム1は、推定入浴時間に入浴した場合にヒートショック発生のリスクがあるとの判定した場合に、給湯使用前に、熱源機16が、推定入浴時間に浴室空間温度が推定給湯不使用時浴室内温度よりも高い温度になり、推定給湯使用時浴室内温度と浴室空間温度との差異が、判定部28がヒートショック発生のリスク無と判定する温度になるまで暖房することにより、浴室X内が暖められた状態で入浴できるので、ヒートショック発生のリスクを回避することができる。特に推定給湯不使用時浴室内温度は、推定日の推定入浴時間における外気温に基づいて推定されるので、ヒートショックのリスクを精度良く判定することができる。
【0047】
このように、浴室暖房乾燥システム1を用いることにより、浴室Xでの給湯使用前(推定入浴時間前)にヒートショックのリスクを予測して、リスク有の場合にリスクを回避するための対応を行うことができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
第1実施形態の浴室暖房乾燥システム1では、推定入浴時間における給湯不使用時の浴室空間温度が浴室内温度推定部24に入力されていた。上述したように、温度関連情報格納部20には、浴室内温度センサ10で検出した浴室空間温度と外気温センサ12で検出した外気温が関連付けられて保存されているので、推定入浴時間における給湯不使用時の浴室空間温度は、推定入浴時間における外気温に対応する温度である。本実施形態に係る浴室暖房乾燥システム1においては、気象庁又は気象予報事業者(以下、「気象庁等」という)が発出する、浴室Xが設置された地域の推定日の推定入浴時間の予想気温(所定の外気温条件の一例)が外気温として浴室内温度推定部24に入力され、当該外気温に対応する給湯不使用時の浴室空間温度を用いて、給湯不使用時の浴室内温度を推定する。
【0049】
本実施形態に係る浴室暖房乾燥システム1は、図6に示すように、気象庁からの予想気温の情報(データ)を受信する受信部34を備えている。その他の構成は、第1実施形態の浴室暖房乾燥システム1と同じである。上述したリスク判定のために設定された時間になると、受信部34には、入浴時間推定部22で推定した推定入浴時間が入力され、気象庁等が発出する当該推定入浴時間における予想気温をインターネット等を介して受信する。受信した予想気温は浴室内温度推定部24に向けて出力される。浴室内温度推定部24は、外気温センサ12で検出した複数の外気温のうち、入力された予想気温と同じ温度に対応する給湯不使用時の浴室内温度を温度関連情報格納部20から読み込む。それ以外の判定手順は、第1実施形態と同じであるため詳細な記載は省略する。
【0050】
このように、外気温センサ12で検出した外気温のうち、気象庁等が発出する当該推定入浴時間における予想気温に相当する外気温に対応する給湯不使用時の浴室内温度を用いてヒートショック発生のリスク判定を行うことにより、より精度の高いリスク判定を行うことができる。
【0051】
〔その他の実施形態〕
(1)上記各実施形態は、推定日の推定入浴時間における外気温に基づいて給湯不使用時の浴室内温度を推定していたが、推定日の外気温のうち最低気温(所定の外気温条件の一例)に基づいて給湯不使用時の浴室内温度を推定してもよい。図4に示すように、給湯使用時の浴室空間温度は外気温に関係なくほぼ一定であるが、給湯不使用時の浴室空間温度は、外気温に対して正の相関を有しているため、推定日の外気温のうち最低気温を推定給湯不使用時浴室内温度に用いると、推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度との差異が最も大きくなる。したがって、最も厳しい条件でヒートショック発生のリスク判定を行うことにより、より確実にヒートショック発生のリスクを回避することができる。
【0052】
(2)上記実施形態は、推定日の推定入浴時間における給湯使用時の浴室内温度として浴室X内の空間温度を用いてヒートショック発生のリスク判定をしていたが、温度関連情報格納部20に保存された給湯使用時の給湯温度(湯張り温度、温水シャワー温度。浴室内温度の一例)を推定給湯使用時浴室内温度としてヒートショック発生のリスク判定をしてもよい。通常、給湯使用時の浴室空間温度よりも、給湯温度の方が高い。したがって、判定部28によるヒートショックのリスク判定を行う推定給湯使用時浴室内温度と推定給湯不使用時浴室内温度との所定の差異(温度差)は、浴室空間温度を用いたときの差異(例えば20℃)よりも、給湯温度を用いたときの差異を大きく(例えば25℃)するとよい。実際に、ヒートショックは、脱衣室から浴室Xに入ったときよりも、浴室Xで浴槽に浸かったときや温水シャワーを浴びたときに発生しやすい。したがって、ヒートショックが発生しやすい条件でヒートショック発生のリスク判定を行うことにより、より確実にヒートショック発生のリスクを回避することができる。
【0053】
(3)温度関連情報格納部20に保存された浴室空間温度や外気温の数が少ない場合は、外気温に対する適切な給湯使用時の浴室空間温度及び給湯不使用時の浴室空間温度を抽出することが困難である。このような場合は、例えば、温度関連情報格納部20は、予め季節や毎月の時間毎の給湯使用時の浴室空間温度及び給湯不使用時の浴室空間温度の代表値を保存しており、それらを参照することにより、浴室空間温度や外気温の数が少ない場合であってもヒートショック発生のリスク判定を行うことができる。
【0054】
上記の各実施形態の構成は、可能な限り組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、浴室暖房乾燥システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 浴室暖房乾燥システム
10 浴室内温度センサ(浴室内温度検出部)
12 外気温センサ(屋外温度検出部)
14 コントローラ(浴室内温度検出部)
16 熱源機(暖房部)
20 温度関連情報格納部
22 入浴時間推定部
24 浴室内温度推定部
26 演算部
28 判定部
30 報知部
34 受信部
X 浴室
図1
図2
図3
図4
図5
図6