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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139761
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
B62D3/12 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040276
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】榎本 将俊
(57)【要約】
【課題】リテーナ部材とハウジングとの当接による打音の発生を抑制することができるステアリング装置を提供する。
【解決手段】本発明では、ラック軸3の背面3bを支持するリテーナ部材61の第1端部の外周側に第1弾性部材65が設けられている。これにより、外部入力Foによりラック軸3が上方へ移動した際、ハウジング5(リテーナ収容部53の円筒内周面53a)に対して、リテーナ本体部611ではなく、第1弾性部材65を積極的に当接させることが可能となる。これにより、第1弾性部材65によってラック軸3の上方移動に伴うリテーナ部材61の変位が吸収され、リテーナ本体部611がハウジングに当接することによる打音の発生を抑制することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵力を転舵輪に伝達するステアリング装置であって、
ステアリングホイールに連係するピニオン軸と、
前記ピニオン軸と噛み合い、前記ピニオン軸の回転力を軸方向の移動力に変換して前記転舵輪に伝達するラック軸と、
前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸と前記ラック軸とが噛み合う位置にて前記ラック収容部に臨むように設けられたリテーナ収容部と、を有するハウジングと、
前記リテーナ収容部に配置され、前記ラック軸の背面に向けて付勢力を発揮する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力に基づいて前記ラック軸の背面に押し付けられるリテーナ部材であって、
前記ラック軸の背面を当接支持する第1端部と、前記ラック軸とは反対に位置する前記付勢部材と当接する第2端部と、を有する円柱状のリテーナ本体部と、
前記リテーナ本体部の前記第1端部に設けられ、前記ラック軸の背面に沿って曲面状に凹み、前記ラック軸の背面を支持するラック支持面と、
を有するリテーナ部材と、
前記リテーナ本体部の前記第1端部側の外周面を包囲する第1弾性部材と、
を備えたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記リテーナ部材は、前記リテーナ本体部の前記第2端部側の外周面を包囲する第2弾性部材を有することを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のステアリング装置であって、
前記リテーナ本体部は、前記第1端部と前記第2端部との中間部に設けられ、前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材が配置されない一般部と、前記一般部よりも前記第1端部側に前記一般部に対して段差状に縮径形成され、外周側に前記第1弾性部材が取り付けられる第1弾性部材取付部と、前記一般部よりも前記第2端部側に前記一般部に対して段差状に縮径形成され、外周側に前記第2弾性部材が取り付けられる第2弾性部材取付部と、を有し、
前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材の自由状態において、前記第1弾性部材取付部に取り付けられた前記第1弾性部材の外径と、前記第2弾性部材取付部に取り付けられた前記第2弾性部材の外径は、前記一般部の外径よりも大きくなるように設定されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項2に記載のステアリング装置であって、
前記リテーナ部材の前記第2端部側に、前記付勢部材の付勢力の調整に供するねじ状の調整部材が設けられていて、
前記リテーナ部材は、前記リテーナ本体部の前記第2端部側に設けられた第2弾性部材取付部に前記第2弾性部材を有し、
前記第2弾性部材の前記軸方向の幅は、前記第2弾性部材取付部の前記軸方向の幅よりも小さいことを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記第1弾性部材は、前記リテーナ本体部の外周面の全体に設けられていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のステアリング装置であって、
前記第1弾性部材の外周側は、前記第1端部側から前記第2端部側に向かって前記第1弾性部材の外径が徐々に拡径するテーパ状に形成されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記リテーナ本体部は、前記第1弾性部材が配置されない一般部と、前記一般部よりも前記第1端部側に前記一般部に対して段差状に縮径形成され、外周側に前記第1弾性部材が取り付けられる第1弾性部材取付部と、を有し、
前記第1弾性部材は、前記一般部よりも大きい外径を有する大径部と、前記大径部よりも前記一般部側に設けられ、前記一般部よりも小さい外径を有する小径部と、を有することを特徴とするステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のステアリング装置の一例として、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
このステアリング装置は、互いに噛み合うピニオン軸とラック軸とを有するラック・ピニオン機構を介して、ステアリングホイールの回転操作がラック軸の軸方向移動に変換されて車両のナックルが押し引きされることで、転舵輪の向きを変更する。すなわち、当該ステアリング装置は、ステアリングホイールに連係される操舵軸としてのピニオン軸と、軸方向の両端が転舵輪に連係され、ピニオン軸に噛み合うラック軸と、を備える。また、かかるステアリング装置では、ラック軸の背面をピニオン軸側へ付勢する付勢機構によって、ピニオン軸とラック軸との適正な噛み合いが維持されるようになっている。
【0004】
具体的には、前記付勢機構は、ラック軸の背面を支持するリテーナ部材と、このリテーナ部材を付勢する付勢部材と、この付勢部材の付勢力(予圧)を調整する調整部材と、リテーナ部材の基端部の外周側に配置され、リテーナ部材とハウジングとの間に介在してハウジング内部を液密に保持する環状のシール部材と、を備える。すなわち、この付勢機構は、調整部材のねじ込み量に基づいて調整された付勢部材の付勢力がリテーナ部材を介してラック軸に付与されることで、ピニオン軸とラック軸との適正な噛み合いを維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-185933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のステアリング装置によれば、転舵輪を介して入力される外部入力によってラック軸が上下方向に変位した際に、当該ラック軸の変位に伴い、ラック軸の背面を抱くように支持するリテーナ部材も同様に変位することとなる。その結果、ラック軸の上端側及び下端側を支持するリテーナ部材のうち、特に一対の突出部がハウジングに当接することによって、打音を生じてしまうおそれがあり、なおも改善の余地を残していた。
【0007】
とりわけ、リテーナ部材は、基端部の外周側に前記シール部材が配置されているため、前記外部入力が生じた際に、当該シール部材を支点として上下方向に揺動するように変位することとなる。これにより、リテーナ部材の前記一対の突出部がハウジングの内側面により強く当接してしまうおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、前記従来のステアリング装置の技術的課題に鑑みて案出されたものであり、リテーナ部材とハウジングとの当接による打音の発生を抑制することができるステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、その一態様として、リテーナ本体部の第1端部側の外周面を包囲する第1弾性部材を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リテーナ部材とハウジングとの当接による打音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るステアリング装置の概略図である。
図2】本発明の第1実施形態を示し、図1に示すラック支持機構の縦断面図である。
図3】(a)は図2に示すリテーナ部材の縦断面図、(b)は同図(a)のA部拡大図である。
図4】(a)は図2の要部拡大図、(b)は同図(a)のB部拡大図である。
図5】本発明の第2実施形態を示し、(a)は第1、第2弾性部材が自由状態のリテーナ部材の縦断面図、(b)は同図(a)のC部拡大図である。
図6】(a)は図5に示すリテーナ部材をハウジングに組み込んでなるラック支持機構の要部拡大断面図、(b)は同図(a)のD部拡大図である。
図7】本発明の第3実施形態を示し、(a)は第1弾性部材の自由状態を示すリテーナ部材の斜視図、(b)は同図(a)に示すリテーナ部材の縦断面図である。
図8図7に示すリテーナ部材をハウジングに組み込んでなるラック支持機構の要部拡大断面図である。
図9】本発明の第4実施形態を示し、第1弾性部材が自由状態のリテーナ部材の縦断面図である。
図10】従来のステアリング装置に係るラック支持機構の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るステアリング装置の実施形態について、図面に基づいて詳述する。
【0013】
(ステアリング装置の構成)
図1は、本発明に係るステアリング装置の構造を示す当該ステアリング装置の概略図である。
【0014】
図1に示すように、ステアリング装置は、ステアリングホイールSWに連係された入力軸1と、この入力軸1に図示外のトーションバーを介して相対回転可能に連結され、先端側にピニオンギヤ2aを有するピニオン軸2と、ピニオンギヤ2aと噛合するラックギヤ3aが前面側の所定の軸方向範囲に形成され、両端が車両の左右の転舵輪WL,WRに連係されたラック軸3と、を備える。
【0015】
すなわち、ステアリング装置は、ステアリングホイールSWが回転することで、入力軸1が回転して前記図示外のトーションバーが捩られることとなり、このトーションバーの捩れ変形に基づいて生ずる当該トーションバーの弾性力により、入力軸1に追従してピニオン軸2が回転する。そして、ピニオンギヤ2aとラックギヤ3aとが噛み合うことで構成されたラック・ピニオン機構をもってピニオン軸2の回転運動がラック軸3の直線運動に変換され、ラック軸3が軸方向に沿って車両の左右方向に移動することで、両転舵輪WL,WRの向きが変更される。
【0016】
また、ステアリング装置においては、入力軸1とピニオン軸2との間の前記図示外のトーションバーを介した連結部にトルクセンサTSが配設されている。このトルクセンサTSは、入力軸1とピニオン軸2の相対回転量、すなわち前記図示外のトーションバーの捩れ量に基づき、運転者がステアリングホイールSWを操作する操舵トルクを検出する。そして、この操舵トルクの検出結果に基づいて制御される電動モータMから減速機構4を介してピニオン軸2に操舵アシストトルクが付与され、運転者の操舵がアシストされる。本実施形態では、減速機構4として、いわゆるウォーム歯車機構が採用されている。
【0017】
[第1実施形態]
図2図4は、本発明に係るステアリング装置の第1実施形態を示している。なお、以下では、説明の便宜上、図2図4の中心軸線Yに沿う方向を「軸方向」、中心軸線Yに直交する方向を「径方向」、中心軸線Y周りの方向を「周方向」として説明する。
【0018】
(ラック支持機構の構成)
図2は、図1に示すラック支持機構の縦断面図を示している。図3(a)は図2に示すリテーナ部材の縦断面図、図3(b)は同図(a)のA部の拡大図を示している。図4(a)は図2の要部拡大図、図4(b)は同図(a)のB部の拡大図を示している。また、以下では、説明の便宜上、図2図4の図中左側を「前」、図中右側を「後」と定義して説明する。また、リテーナ部材61については、説明の便宜上、軸方向におけるラック軸3側の端部を「第1端部」、ラック軸3とは反対側の端部(コイルばね62側の端部)を「第2端部」と定義して説明する。
【0019】
図2に示すように、ステアリング装置は、当該ステアリング装置の下部側に車両の左右方向(X軸方向)に沿って設けられたハウジング5のラック収容部51内にラック軸3が収容されると共に、ハウジング5においてラック軸3の前面側に臨みつつラック収容部51と交差するようにZ軸方向に沿って設けられたピニオン収容部52内にピニオン軸2が収容されている。
【0020】
また、ステアリング装置は、ラック軸3の背面側に、ピニオン軸2とラック軸3の適正な噛み合いを維持するようにラック軸3を支持するラック支持機構6が設けられている。ラック支持機構6は、ラック収容部51に対して直交するようにY軸方向に沿ってラック軸3の背面3b側に臨むように設けられたリテーナ収容部53の前端側に収容されるリテーナ部材61と、リテーナ部材61をラック軸3側へ付勢する付勢部材としてのコイルばね62と、リテーナ収容部53の後端側の開口部にねじ込まれ、コイルばね62の付勢力の調整に供する調整部材としてのアジャストスクリュ63と、を有する。
【0021】
リテーナ部材61は、図2図4に示すように、所定の金属材料により概ね円柱状に形成されたものであり、リテーナ収容部53の円筒内周面53aとの間に微小隙間Cを介してY軸方向に沿って摺動可能に収容される。具体的には、リテーナ部材61は、横断面ほぼ円形となる円柱外周面611aを有する概ね円柱状のリテーナ本体部611と、軸方向の第1端部に設けられ、ラック軸3の背面3bを支持するラック支持面612と、軸方向の第2端部に形成され、内周側にコイルばね62の前端部を受容する凹状の第1ばね受容部613と、を有する。
【0022】
リテーナ本体部611は、リテーナ収容部53の円筒内周面53aとの間に微小隙間Cを介して対向する円柱状の一般部614と、この一般部614よりも第1端部側に中心軸線Yを挟んで対称となるように突出形成され、内周側にラック支持面612を構成する一対の突出部615と、を有する。すなわち、リテーナ本体部611は、円柱状に形成された一般部614における第1端部側の端面を図2のX軸方向に沿ってラック軸3の背面3bに対応する円弧状に切り欠くことによって、中心軸線Yを挟んで対称となる一対の突出部615が形成されると共に、当該一対の突出部615の内周側に凹円弧状のラック支持面612が形成されている。
【0023】
ラック支持面612は、リテーナ本体部611の第1端部においてX軸方向に沿って形成され、ラック軸3の背面3bに対応する凹状の円弧面を有する。また、ラック支持面612の表面には、低摩擦材であるフッ素系樹脂材料からなる摩擦低減部材64が、ラック支持面612の全体を覆うように設けられている。この摩擦低減部材64は、前記低摩擦材からなる薄板を湾曲させてなるもので、ラック支持面612と対向する内側面の中央部に突出形成された係合突起640をラック支持面612の中央部に形成された係合孔612aに係合させることによって、ラック支持面612に取付固定されている。
【0024】
また、リテーナ部材61の第1端部の外周側には、例えばゴム材料など所定の弾性材料からなる第1弾性部材65が設けられている。すなわち、リテーナ本体部611の第1端部の外周側、すなわち一対の突出部615の外周側に、一般部614に対して外径を段差状に縮小してなる第1弾性部材取付部616が周方向に沿って一定の幅をもって切欠形成されていて、かかる第1弾性部材取付部616に第1弾性部材65が加硫接着によって取り付けられている。
【0025】
第1弾性部材65は、前端面(第1端部側の端面)がリテーナ本体部611の先端に臨むようにラック支持面612の外周縁部と面一に配置されると共に、後端面(第2端部側の端面)が第1弾性部材取付部616の段差部616aに密着した状態でもって、一定の内径からなる内周面が第1弾性部材取付部616の外周面に接着されている。
【0026】
より具体的には、第1弾性部材65は、リテーナ本体部611の一般部614の外径R0よりも大きい外径R1を有する大径部651と、大径部651よりも一般部614側に設けられ、一般部614の外径R0よりも小さい外径R2を有する小径部652と、を有する。なお、大径部651と小径部652は上記のような段差径状に形成されているが、大径部651と小径部652の間はR部653によって滑らかに接続されることで、第1弾性部材65の圧縮時における応力集中の発生が抑制されている。
【0027】
大径部651は、第1弾性部材65における第1端部側の大半の軸方向領域に延設されていて、リテーナ部材61をリテーナ収容部53内に挿入(収容)した際に圧縮されて円筒内周面53aに対して弾性的に接触可能となっている。すなわち、大径部651は、リテーナ収容部53の円筒内周面53aに対して常時弾接することにより、外部入力に伴うリテーナ部材61の揺動変位を吸収可能となっている。
【0028】
小径部652は、大径部651よりも第2端部側であって第1弾性部材取付部616の段差部616aに隣接する軸方向領域に設けられていて、リテーナ部材61をリテーナ収容部53内に挿入(収容)した際、前記圧縮されて第1弾性部材取付部616の段差部616a側へと膨出する膨出変形部651aが段差部616aに接触することを抑制する、いわゆる逃げ溝として機能する。換言すれば、この小径部652は、大径部651の圧縮変形に伴って発生する膨出変形部651aと第1弾性部材取付部616の段差部616aとの接触を回避可能となるように、当該小径部652の外径及び軸方向領域が設定されている。
【0029】
コイルばね62は、軸方向において一定の内外径を有する周知のコイルばねであって、前端側がリテーナ本体部611の後端部(第2端部)に設けられた第1ばね受容部613の底面613aに着座すると共に、後端側がアジャストスクリュ63の前端部に設けられた第2ばね受容部633の底面633aに着座することにより、リテーナ部材61とアジャストスクリュ63との間に所定の予圧をもって介装されている。
【0030】
アジャストスクリュ63は、前端側に設けられ、コイルばね62を保持する有底円筒状のばね保持部631と、リテーナ収容部53の後端側開口部の内周面に形成された雌ねじ部53bにねじ込まれる雄ねじ部632と、を有する。ばね保持部631は、雌ねじ部53bよりも若干小さい外径を有し、雄ねじ部632に対して段差状に縮径形成され、内周側にコイルばね62の後端部を受容する第2ばね受容部633が形成されている。雄ねじ部632は、外部に開口する工具係合溝632aを有し、当該工具係合溝632aに係合する図示外の工具を介してリテーナ収容部53の雌ねじ部53bにねじ込まれる。また、雄ねじ部632は、後端部がリテーナ収容部53の開口部から外部へ突出するように設けられていて、この開口部から突出した雄ねじ部632に螺着されたロックナット66によって、緩み止めがなされた状態でリテーナ収容部53の後端部に固定される。
【0031】
また、リテーナ収容部53の後端側であって雌ねじ部53bに隣接する位置に、周方向に沿って連続する環状のシール溝53cが段差状に拡径形成されている。このシール溝53c内には、Oリングに代表されるゴム製の環状シール部材67が嵌め込まれている。すなわち、この環状シール部材67がシール溝53cの底面とアジャストスクリュ63のばね保持部631の外周側とに弾性的に当接することによって、リテーナ収容部53内が液密に保持されている。
【0032】
(本実施形態の作用効果)
図10は、従来のステアリング装置のラック支持機構6の縦断面図を示している。
【0033】
図10に示すように、従来のステアリング装置は、路面から転舵輪を介して入力される外部入力Foによってラック軸3が上方に変位することで、ラック軸3の背面3bを上下方向から挟み込むように支持するリテーナ部材61には、ラック軸3側の端部(第1端部)及び反ラック軸3側の端部(第2端部)に、リテーナ部材61を上方へ押圧する押圧力F1,F2が作用すると共に、リテーナ部材61の外周側に設けられたOリング60を支点として回転方向にはたらくモーメントM1,M2が作用することになる。このように、従来のステアリング装置では、リテーナ部材61の第1端部に合力Ft1(=F1+M1)が作用し、リテーナ部材61の第2端部に合力Ft2(=F2-M2)が作用することで、前記合力Ft1,Ft2のうち最も大きい合力Ft1に基づいて一対の突出部615がハウジング5(リテーナ収容部53の円筒内周面53a)に比較的強く当接し、打音を生じてしまうおそれがあり、なおも改善の余地を残していた。
【0034】
これに対して、本実施形態に係るステアリング装置によれば、以下の効果が奏せられることにより、前記従来のステアリング装置の技術的課題を解決することができる。
【0035】
前記ステアリング装置は、操舵力を転舵輪WL,WRに伝達するステアリング装置であって、ステアリングホイールSWに連係するピニオン軸2と、ピニオン軸2と噛み合い、ピニオン軸2の回転力を軸方向の移動力に変換して転舵輪WL,WRに伝達するラック軸3と、ラック軸3の少なくとも一部を収容するラック収容部51と、ピニオン軸2とラック軸3とが噛み合う位置にてラック収容部51に臨むように設けられたリテーナ収容部53と、を有するハウジング5と、リテーナ収容部53に配置され、ラック軸3の背面に向けて付勢力を発揮する付勢部材であるコイルばね62と、コイルばね62の付勢力に基づいてラック軸3の背面に押し付けられるリテーナ部材であって、ラック軸3の背面を当接支持する第1端部と、ラック軸3とは反対に位置するコイルばね62と当接する第2端部と、を有する円柱状のリテーナ本体部611と、リテーナ本体部611の前記第1端部に設けられ、ラック軸3の背面に沿って曲面状に凹み、ラック軸3の背面を支持するラック支持面612と、を有するリテーナ部材61と、リテーナ本体部611の前記第1端部側の外周面を包囲する第1弾性部材65と、を備えている。
【0036】
このように、本実施形態では、ラック軸3の背面3bを支持するリテーナ部材61の第1端部の外周側に第1弾性部材65が設けられている。これにより、外部入力Fo(図2参照)によりラック軸3が上方へ移動した際、ハウジング5(リテーナ収容部53の円筒内周面53a)に対し、リテーナ本体部611ではなく、第1弾性部材65を積極的に当接させることが可能となる。これにより、第1弾性部材65によってラック軸3の上方移動に伴うリテーナ部材61の変位が吸収されることとなり、リテーナ本体部611がハウジングに当接することによる打音の発生を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態では、リテーナ部材61がハウジング5に当接することにより第1弾性部材65の摩耗が生じた場合でも、当該第1弾性部材65は弾性材料によって形成されているため、当該第1弾性部材65が摩耗して摩耗粉が生じても、当該摩耗粉によるリテーナ部材61の固着を抑制することができる。
【0038】
また、第1弾性部材65の外径R1がリテーナ本体部611の一般部614の外径R0と同じであっても当該第1弾性部材65による弾性効果(リテーナ収容部53の円筒内周面53aとの当接を緩衝又は吸収する効果)を得ることができるが、本実施形態では、第1弾性部材65の外径R1がリテーナ本体部611の一般部614の外径R0よりも大きく設定されている。これにより、第1弾性部材65の肉厚を稼ぐことできるため、第1弾性部材65の弾性効果が向上し、リテーナ本体部611の第1端部側とハウジング5(リテーナ収容部53の円筒内周面53a)との当接に伴う打音の発生を、より効果的に抑制することができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、リテーナ本体部611は、第1弾性部材65が配置されない一般部614と、一般部614よりも第1端部側に一般部614に対して段差状に縮径形成され、外周側に第1弾性部材65が取り付けられる第1弾性部材取付部616と、を有し、第1弾性部材65は、一般部614よりも大きい外径を有する大径部651と、大径部651よりも一般部614側に設けられ、一般部614よりも小さい外径を有する小径部652と、を有する。
【0040】
このように、本実施形態では、第1弾性部材65において、一般部614側の軸方向領域、すなわち一般部614と第1弾性部材取付部616との間に形成される段差部616aに隣接する軸方向領域に、一般部614よりも小径となる小径部652が設けられている。このため、第1弾性部材65の圧縮状態において、リテーナ本体部611が第1弾性部材取付部616の段差部616aに圧接することや、一般部614とリテーナ収容部53の円筒内周面53aとの間(微小隙間C)に第1弾性部材65が挟み込まれる不具合を抑制することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図5図6は、本発明に係るステアリング装置の第2実施形態を示し、前記第1実施形態に係るラック支持機構6におけるリテーナ部材61の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成には、前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0042】
図5は、本発明の第2実施形態を示し、(a)は第1弾性部材65及び第2弾性部材68の自由状態に係るリテーナ部材61の縦断面図、(b)は同図(a)のC部の拡大図を示している。また、図6(a)は、図5に示すリテーナ部材61をハウジング5に組み込んでなるラック支持機構6の要部拡大断面図、(b)は同図(a)のD部の拡大図を示している。
【0043】
図5図6に示すように、本実施形態に係るステアリング装置は、リテーナ部材61の第2端部の外周側に、例えばゴム材料など第1弾性部材65と同様の弾性材料からなる第2弾性部材68が設けられている。すなわち、リテーナ本体部611の第2端部の外周側に、一般部614に対して外径を段差状に縮小してなる第2弾性部材取付部617が周方向に沿って一定の幅をもって切欠形成されていて、かかる第2弾性部材取付部617に第2弾性部材68が加硫接着によって取り付けられている。
【0044】
第2弾性部材68は、後端面(第2端部側の端面)がリテーナ本体部611の後端側に臨むように設けられると共に、前端面(第1端部側の端面)が第2弾性部材取付部617の段差部617aに密着した状態でもって、一定の内径からなる内周面が第2弾性部材取付部617の外周面に接着されている。
【0045】
より具体的には、第2弾性部材68は、リテーナ本体部611の一般部614の外径R0よりも大きい外径R1を有する大径部681と、大径部681よりも一般部614側に設けられ、一般部614の外径R0よりも小さい外径R2を有する小径部682と、を有する。なお、大径部681と小径部682は上記のような段差径状に形成されているが、大径部681と小径部682の間はR部683によって滑らかに接続されることで、第2弾性部材68の圧縮時における応力集中の発生が抑制されている。
【0046】
大径部681は、第2弾性部材68における第2端部側の大半の軸方向領域に延設されていて、リテーナ部材61をリテーナ収容部53内に挿入(収容)した際に圧縮されて円筒内周面53aに対して弾性的に接触可能となっている。すなわち、大径部681は、リテーナ収容部53の円筒内周面53aに対して常時弾接することにより、外部入力に伴うリテーナ部材61の揺動変位を吸収可能となっている。
【0047】
また、第1弾性部材65は、当該第1弾性部材65の前端とリテーナ部材61の前端とが概ね面一となるように配置されているのに対し、第2弾性部材68は、リテーナ部材61の後端よりも内側にオフセットして配置されている。すなわち、第2弾性部材68の軸方向幅L1が第2弾性部材取付部617の軸方向幅L2よりも小さく設定されていて、第2弾性部材68の後端とリテーナ部材61の後端とが所定の間隔Dをもって離間している。なお、この第2弾性部材68の後端とリテーナ部材61の後端との間隔Dは、大径部681の圧縮変形に伴って発生する膨出変形部681aとアジャストスクリュ63との接触を回避可能となる間隔に設定されている。
【0048】
小径部682は、大径部681よりも第1端部側であって第2弾性部材取付部617の段差部617aに隣接する軸方向領域に設けられていて、リテーナ部材61をリテーナ収容部53内に挿入(収容)した際、前記圧縮されて第2弾性部材取付部617の段差部617a側へと膨出する膨出変形部681aが段差部617aに接触することを抑制する、いわゆる逃げ溝として機能する。換言すれば、この小径部682は、大径部681の圧縮変形に伴って発生する膨出変形部681aと第2弾性部材取付部617の段差部617aとの接触を回避可能となるように、当該小径部682の外径及び軸方向領域が設定されている。
【0049】
以上のように、本実施形態に係るステアリング装置では、リテーナ部材61は、リテーナ本体部611の前記第2端部側の外周面を包囲する第2弾性部材を有している。
【0050】
外部入力Foによってリテーナ部材61が上方に変位する際、リテーナ部材61の第2端部側にも押圧力F2が作用することになる。このため、当該押圧力F2によって少なからずリテーナ本体部611の第2端部側もハウジング5(リテーナ収容部53の円筒内周面53a)に当接することになる。
【0051】
そこで、本実施形態のように、リテーナ本体部611の第2端部側にも第1端部側と同様の弾性部材である第2弾性部材68が設けられていることにより、リテーナ本体部611の第2端部側とハウジング5(リテーナ収容部53の円筒内周面53a)との当接に伴う打音の発生を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、リテーナ本体部611は、前記第1端部と前記第2端部との中間部に設けられ、第1弾性部材65及び第2弾性部材68が配置されない一般部614と、一般部614よりも前記第1端部側に一般部614に対して段差状に縮径形成され、外周側に第1弾性部材65が取り付けられる第1弾性部材取付部616と、一般部614よりも前記第2端部側に一般部614に対して段差状に縮径形成され、外周側に第2弾性部材68が取り付けられる第2弾性部材取付部617と、を有し、第1弾性部材65及び第2弾性部材68の自由状態において、第1弾性部材取付部616に取り付けられた第1弾性部材65の外径R1と、第2弾性部材取付部617に取り付けられた第2弾性部材68の外径R1は、一般部614の外径R0よりも大きくなるように設定されている。
【0053】
このように、第1、第2弾性部材65,68の外径R1がリテーナ本体部611の一般部614の外径R0よりも大きく設定されていることで、当該第1、第2弾性部材65,68の肉厚を稼ぐことできる。これにより、第1、第2弾性部材65,68の弾性効果が向上し、リテーナ本体部611の第2端部側とハウジング5(リテーナ収容部53の円筒内周面53a)との当接に伴う打音の発生をより効果的に抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、リテーナ部材61の前記第2端部側に、コイルばね62の付勢力の調整に供するねじ状の調整部材であるアジャストスクリュ63が設けられていて、リテーナ部材61は、リテーナ本体部611の前記第2端部側に設けられた第2弾性部材取付部617に第2弾性部材68を有し、第2弾性部材68の前記軸方向の幅は、第2弾性部材取付部617の前記軸方向の幅よりも小さい。
【0055】
第2弾性部材68の軸方向幅が第2弾性部材取付部617の軸方向幅と同じか、第2弾性部材取付部617の軸方向幅よりも大きい場合は、第2弾性部材68が圧縮された際に、当該圧縮によって軸方向に膨出変形する膨出変形部がリテーナ部材61とアジャストスクリュ63の間に挟み込まれてしまうおそれがある。
【0056】
そこで、本実施形態のように、第2弾性部材68の軸方向幅L1が第2弾性部材取付部617の軸方向幅L2よりも小さく設定されていることによって、圧縮状態において第2弾性部材68がリテーナ部材61とアジャストスクリュ63との間に挟み込まれることによる当該第2弾性部材68の損傷を抑制することができる。
【0057】
[第3実施形態]
図7図8は、本発明に係るステアリング装置の第3実施形態を示し、前記第1実施形態に係るラック支持機構6におけるリテーナ部材61の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成には、前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0058】
図7は、本発明の第3実施形態を示し、(a)は第1弾性部材65の自由状態に係るリテーナ部材61の斜視図、(b)は同自由状態に係るリテーナ部材61の縦断面図を示している。また、図8は、図7に示すリテーナ部材61をハウジング5に組み込んでなるラック支持機構6の要部拡大断面図を示している。
【0059】
図7図8に示すように、本実施形態に係るステアリング装置は、リテーナ本体部611の円柱外周面611aが軸方向全域において平坦状に形成されると共に、当該円柱外周面611aの外周側の全体に、概ね一定の肉厚を有する第1弾性部材65が、加硫接着によって取り付けられている。すなわち、第1弾性部材65は、前端がリテーナ本体部611の第1端部の端面と面一となるように、かつ後端がリテーナ本体部611の第2端部の端面と面一となるように、一般部614の軸方向全域に亘って延在している。
【0060】
以上のように、本実施形態に係るステアリング装置では、第1弾性部材65は、リテーナ本体部611の外周面(円柱外周面611a)の全体に設けられている。
【0061】
このように、第1弾性部材65が、リテーナ本体部611の外周面(円柱外周面611a)の全体に設けられていることにより、前記第1実施形態のように、リテーナ本体部611の外周側の一部に第1弾性部材取付部616を形成(加工)する必要がなく、リテーナ本体部611の形状(外形)を簡素化することができる。これにより、リテーナ部材61の生産性の向上及び製造コストの低廉化を図ることができる。
【0062】
[第4実施形態]
図9は、本発明に係るステアリング装置の第4実施形態を示し、前記第3実施形態に係るラック支持機構6における第1弾性部材65の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成には、前記第3実施形態と同様であるため、当該第3実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0063】
図9は、本発明の第4実施形態を示し、第1弾性部材65の自由状態に係るリテーナ部材61の縦断面図を示している。なお、図9に示すリテーナ部材61をハウジング5に組み込んでなるラック支持機構6の縦断面は図8と同じになるため、リテーナ部材61の組み付け状態については、適宜図8を参照するものとする。
【0064】
図9に示すように、本実施形態に係るステアリング装置は、リテーナ本体部611の円柱外周面611aの軸方向全域に亘って延在する第1弾性部材65の外径がリテーナ本体部611の第1端部側から第2端部側へと向かって拡大するように形成されている。すなわち、本実施形態に係る第1弾性部材65は、内周側が軸方向において一定の内径を有し、リテーナ本体部611の第1端部側から第2端部側へ向かって肉厚が徐々に増大する円錐テーパ状に形成されている。
【0065】
以上のように、本実施形態に係るステアリング装置では、第1弾性部材65の外周側は、前記第1端部側から前記第2端部側に向かって第1弾性部材65の外径が徐々に拡径するテーパ状に形成されている。
【0066】
このように、本実施形態では、第1弾性部材65の外周側が軸方向において第2端部側に向かって漸次拡径するテーパ状に形成されていて、リテーナ収容部53に挿入する先端側が先細り状に形成されている。これにより、リテーナ収容部53にリテーナ部材61を挿入する際の、当該リテーナ部材61の挿入作業性を向上させることができる。
【0067】
また、第1弾性部材65の外周側が第2端部側に向かって拡径するテーパ状に形成されていることにより、外部入力Foによってリテーナ部材61の第1端部が上方に変位した際に、第1弾性部材65の弾性力をリテーナ収容部53の円筒内周面53aに対して概ね均等に作用させることが可能となる。これにより、第1弾性部材65によるリテーナ部材61の保持性を向上させることができる。
【0068】
本発明は、前記実施形態で例示した構成や態様に限定されるものではなく、前述した本発明の作用効果を奏し得るような形態であれば、適用対象の仕様やコスト等に応じて自由に変更可能である。
【0069】
特に、前記第1、第2実施形態では、第1、第2弾性部材65,68の外径がリテーナ本体部611の一般部614の外径よりも大きく設定した態様を例示して説明したが、本発明は前記第1、第2実施形態の構成に限定されるものではなく、第1、第2弾性部材65,68の外径はリテーナ本体部611の一般部614の外径と同じであってもよいし、また、ラック軸3に外部入力が作用した際のリテーナ部材61の上方変位時に一般部614がリテーナ収容部53の円筒内周面53aに当接しない程度に第1、第2弾性部材65,68の外径がリテーナ本体部611の一般部614の外径よりも若干小さくてもよい。
【0070】
以上説明した実施形態等に基づくステアリング装置としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0071】
すなわち、当該ステアリング装置は、その1つの態様において、操舵力を転舵輪に伝達するステアリング装置であって、ステアリングホイールに連係するピニオン軸と、前記ピニオン軸と噛み合い、前記ピニオン軸の回転力を軸方向の移動力に変換して前記転舵輪に伝達するラック軸と、前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸と前記ラック軸とが噛み合う位置にて前記ラック収容部に臨むように設けられたリテーナ収容部と、を有するハウジングと、前記リテーナ収容部に配置され、前記ラック軸の背面に向けて付勢力を発揮する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に基づいて前記ラック軸の背面に押し付けられるリテーナ部材であって、前記ラック軸の背面を当接支持する第1端部と、前記ラック軸とは反対に位置する前記付勢部材と当接する第2端部と、を有する円柱状のリテーナ本体部と、前記リテーナ本体部の前記第1端部に設けられ、前記ラック軸の背面に沿って曲面状に凹み、前記ラック軸の背面を支持するラック支持面と、を有するリテーナ部材と、前記リテーナ本体部の前記第1端部側の外周面を包囲する第1弾性部材と、を備えている。
【0072】
前記ステアリング装置の好ましい態様において、前記リテーナ部材は、前記リテーナ本体部の前記第2端部側の外周面を包囲する第2弾性部材を有する。
【0073】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記リテーナ本体部は、前記第1端部と前記第2端部との中間部に設けられ、前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材が配置されない一般部と、前記一般部よりも前記第1端部側に前記一般部に対して段差状に縮径形成され、外周側に前記第1弾性部材が取り付けられる第1弾性部材取付部と、前記一般部よりも前記第2端部側に前記一般部に対して段差状に縮径形成され、外周側に前記第2弾性部材が取り付けられる第2弾性部材取付部と、を有し、前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材の自由状態において、前記第1弾性部材取付部に取り付けられた前記第1弾性部材の外径と、前記第2弾性部材取付部に取り付けられた前記第2弾性部材の外径は、前記一般部の外径よりも大きくなるように設定されている。
【0074】
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記リテーナ部材の前記第2端部側に、前記付勢部材の付勢力の調整に供するねじ状の調整部材が設けられていて、前記リテーナ部材は、前記リテーナ本体部の前記第2端部側に設けられた第2弾性部材取付部に前記第2弾性部材を有し、前記第2弾性部材の前記軸方向の幅は、前記第2弾性部材取付部の前記軸方向の幅よりも小さい。
【0075】
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1弾性部材は、前記リテーナ本体部の外周面の全体に設けられている。
【0076】
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1弾性部材の外周側は、前記第1端部側から前記第2端部側に向かって前記第1弾性部材の外径が徐々に拡径するテーパ状に形成されている。
【0077】
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記リテーナ本体部は、前記第1弾性部材が配置されない一般部と、前記一般部よりも前記第1端部側に前記一般部に対して段差状に縮径形成され、外周側に前記第1弾性部材が取り付けられる第1弾性部材取付部と、を有し、前記第1弾性部材は、前記一般部よりも大きい外径を有する大径部と、前記大径部よりも前記一般部側に設けられ、前記一般部よりも小さい外径を有する小径部と、を有する。
【符号の説明】
【0078】
2…ピニオン軸、3…ラック軸、5…ハウジング、51…ラック収容部、53…リテーナ収容部、61…リテーナ部材、611…リテーナ本体部、612…ラック支持面、614…一般部、615…突出部、616…第1弾性部材取付部、617…第2弾性部材取付部、62…コイルばね(付勢部材)、63…アジャストスクリュ(調整部材)、65…第1弾性部材、68…第2弾性部材、SW…ステアリングホイール、WL,WR…転舵輪、
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10