(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139762
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】油圧制御弁および内燃機関のバルブタイミング制御装置
(51)【国際特許分類】
F01L 1/356 20060101AFI20220915BHJP
F16K 15/14 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F01L1/356 E
F16K15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040277
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】横澤 宙
(72)【発明者】
【氏名】中野 海大
【テーマコード(参考)】
3G018
3H058
【Fターム(参考)】
3G018AB02
3G018BA09
3G018CA12
3G018CA18
3G018DA20
3G018DA59
3G018DA60
3G018DA68
3G018FA01
3G018GA03
3H058AA13
3H058BB22
3H058CA36
3H058EE18
(57)【要約】
【課題】遅角油圧室から進角油圧室への作動油圧の応答性を向上させる。
【解決手段】制御弁26が、進角ポート35および遅角ポート34を有した筒状のバルブボディ13と、バルブボディ13の内部に配置されたスリーブ30と、バルブボディ13の内周とスリーブ30の外周との間にバルブボディ13の軸方向へ摺動可能に配置され、内周に内側環状凹部31fを有するスプール弁31と、内側環状凹部31fに設けられた第2逆止弁57と、を備える。第2逆止弁57は、その外周面に所定の作動油圧が作用したときに縮径することで第2逆止弁57の外周と内側環状凹部31fとの間に進角ポート35と遅角ポート34とを連通する連通路65を形成する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポートおよび第2ポートが径方向に貫通形成された筒状のバルブボディと、
前記バルブボディの内部に配置されて、内部に油通路を有するスリーブと、
前記バルブボディの内周と前記スリーブの外周との間に前記バルブボディの軸方向へ摺動可能に配置され、内周に凹部を有するスプール弁と、
前記凹部に配置され、丸められた板状の逆止弁であって、拡径することで前記油通路から前記第1ポートへの作動油の流れを許容し、縮径することで前記逆止弁の外周と前記凹部との間に前記第1ポートと前記第2ポートとを連通する連通路を形成する前記逆止弁と、
を備えることを特徴とする油圧制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御弁において、
前記スプール弁は、前記凹部の底部から前記径方向に貫通形成された第1スプール孔および第2スプール孔を有し、
前記逆止弁は、前記第1スプール孔および前記第2スプール孔に跨っていることを特徴とする油圧制御弁。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧制御弁において、
前記逆止弁は、該逆止弁の軸方向中央位置よりも前記第1スプール孔側に設けられた貫通部を有し、径方向外側へ広がった状態において前記貫通部を介して前記油通路と前記第1ポートまたは前記第2ポートが連通することを特徴とする油圧制御弁。
【請求項4】
請求項3に記載の油圧制御弁において、
前記逆止弁は、前記逆止弁の軸方向において前記貫通部よりも外側に設けられた第1端部を有し、
前記第1端部は、前記凹部の軸方向端面に当接することを特徴とする油圧制御弁。
【請求項5】
請求項3に記載の油圧制御弁において、
前記逆止弁が径方向外側に広がった状態において、前記第1スプール孔と前記油通路とが前記貫通部を介して連通し、前記第2スプール孔と前記油通路との間の作動油の流れが抑制されることを特徴とする油圧制御弁。
【請求項6】
請求項2に記載の油圧制御弁において、
前記貫通部は、複数の貫通孔であることを特徴とする油圧制御弁。
【請求項7】
請求項2に記載の油圧制御弁において、
前記貫通部は、前記逆止弁の軸方向端部に対して軸方向内側に窪む複数の軸方向凹部であることを特徴とする油圧制御弁。
【請求項8】
請求項2に記載の油圧制御弁において、
前記油圧制御弁は、内燃機関のバルブタイミング制御装置に用いられ、
前記バルブタイミング制御装置は、クランクシャフトからの回転力が伝達される駆動回転体と、カムシャフトと一体に回転する従動回転体と、前記駆動回転体と前記従動回転体との間に設けられた複数の油圧室と、を有し、
前記油圧制御弁は、前記従動回転体の内部に配置されて前記複数の油圧室への作動油の供給および排出を行うことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧制御弁および内燃機関のバルブタイミング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧制御弁としては、以下の特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載の油圧制御弁は、進角ポートおよび遅角ポートを有したバルブボディと、バルブボディの内部に配置されたスリーブと、バルブボディとスリーブとの間に摺動可能に配置され、遅角ポート側に位置する遅角ポート側スプール孔および進角ポート側に位置する進角ポート側スプール孔を有するスプール弁と、を有している。スプール弁の内周面には、遅角ポート側に位置する第1内側環状凹部と、進角ポート側に位置する第2内側環状凹部とが形成されている。第1内側環状凹部内には、周方向両端部が互いに重なるように丸められた板状の逆止弁が配置されている。逆止弁の進角ポート側の軸方向端部の近傍には、複数の貫通孔が逆止弁の周方向等間隔位置に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の油圧制御弁では、例えばカムシャフトの交番トルクによってバルブタイミング制御装置の各遅角油圧室の内圧が高くなったときに、作動油圧によって、逆止弁が縮径変形する。そして、作動油圧は、遅角ポート側スプール孔と、第1内側環状凹部の底面と逆止弁の外周面との間に形成された連通路と、逆止弁の各貫通孔とを通ってスリーブ内の油通路へ流入してから、第2内側環状凹部、進角ポート側スプール孔および進角ポートを介して各進角油圧室へ供給される。
【0006】
しかし、このようにスリーブ内の油通路を経由する作動油圧の流路は複雑で比較的長いので、遅角ポートから進角ポートへの作動油圧の応答性が低下する虞があった。
【0007】
本発明は、従来の実情に鑑みて案出されたもので、遅角ポートから進角ポートへの作動油圧の応答性を向上させることが可能な油圧制御弁および内燃機関のバルブタイミング制御装置を提供することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、その一態様として、油圧制御弁は、周方向両端部が互いに重なるように丸められた板状の逆止弁を有し、該逆止弁は、拡径することで油通路から第1ポートへの作動油の流れを許容し、縮径することで逆止弁の外周と凹部との間に第1ポートと第2ポートとを連通する連通路を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2ポートから第1ポートへの作動油圧の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】内燃機関の吸気側に適用した第1の実施形態のバルブタイミング制御装置の断面図である。
【
図2】第1の実施形態のバルブタイミング制御装置をフロントプレートを外した状態で示した正面図である。
【
図5A】縮径した状態を示す第1の実施形態の第2逆止弁の斜視図である。
【
図5B】展開した状態を示す第1の実施形態の第2逆止弁の斜視図である。
【
図6】第1の実施形態の制御弁におけるスプール弁の第1移動位置を示す縦断面図である。
【
図7】第1の実施形態の制御弁におけるスプール弁の第2移動位置を示す縦断面図である。
【
図8】第1の実施形態の制御弁におけるスプール弁の第3移動位置を示す縦断面図である。
【
図9】第1の実施形態の制御弁におけるスプール弁の第4移動位置を示す縦断面図である。
【
図10A】縮径した状態を示す第2の実施形態の第2逆止弁の斜視図である。
【
図10B】展開した状態を示す第2の実施形態の第2逆止弁の斜視図である。
【
図11A】縮径した状態を示す第3の実施形態の第2逆止弁の斜視図である。
【
図11B】展開した状態を示す第3の実施形態の第2逆止弁の斜視図である。
【
図12A】縮径した状態を示す第4の実施形態の第2逆止弁の斜視図である。
【
図12B】展開した状態を示す第4の実施形態の第2逆止弁の斜視図である。
【
図13】第5の実施形態の第2逆止弁の側面図である。
【
図14】第6の実施形態の第2逆止弁の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る油圧制御弁および内燃機関のバルブタイミング制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は内燃機関の吸気側に適用した第1の実施形態のバルブタイミング制御装置の断面図、
図2は第1の実施形態のバルブタイミング制御装置をフロントプレート11を外した状態で示した正面図、
図3は制御弁26の分解斜視図、
図4は第1の実施形態の制御弁26の縦断面図である。
図5Aは縮径した状態を示す第1の実施形態の第2逆止弁57の斜視図である。
図5Bは展開した状態を示す第1の実施形態の第2逆止弁の斜視図である。
【0013】
バルブタイミング制御装置は、
図1及び
図2に示すように、機関のクランクシャフトにより図外のタイミングチェーンを介して回転駆動される駆動回転体であるタイミングスプロケット1と、該タイミングスプロケット1に対して相対回転可能に設けられた吸気側のカムシャフト2と、タイミングスプロケット1とカムシャフト2との相対回転位相を変換する位相変更機構3と、該位相変更機構3を最遅角位相位置でロックさせるロック機構4と、位相変更機構3とロック機構4を作動させる油圧回路5と、を備えている。なお、駆動回転体としては、タイミングベルトによって回転力が伝達されるタイミングプーリであっても良い。
【0014】
タイミングスプロケット1は、円盤状に形成されて、外周にタイミングチェーンが巻回される歯車部1aが設けられている。また、タイミングスプロケット1は、後述するハウジング本体6aと一体に設けられている。タイミングスプロケット1は、駆動回転体の一部を構成している。
【0015】
カムシャフト2は、図外のシリンダヘッド上に複数のカム軸受を介して回転可能に支持され、外周面には図外の機関弁である吸気弁を開作動させる複数の卵型の回転カムが軸方向の位置に一体的に固定されている。また、カムシャフト2の回転軸方向の一端部2aの内部軸心方向には、後述するバルブボディ(カムボルト)13がねじ留めされる雌ねじ孔2bが形成されている。
【0016】
位相変更機構3は、
図1及び
図2に示すように、タイミングスプロケット1に軸方向から一体的に設けられたハウジング6と、該ハウジング6内に相対回転可能に収容された従動回転体であるベーンロータ7と、を備えている。ハウジング6の後述するハウジング本体6aの内周面に一体に形成された4つのシュー8a~8dとベーンロータ7によって、ハウジング本体6aとベーンロータ7との間の空間が、複数(本実施形態では4つ)の遅角作動室である遅角油圧室9および複数(本実施形態では4つ)の進角作動室である進角油圧室10に仕切られている。
【0017】
ハウジング6は、円筒状のハウジング本体6aと、ハウジング本体6aの前端開口を閉塞するフロントプレート11と、後端開口を閉塞するリアプレート12と、から構成されている。
【0018】
ハウジング本体6aは、圧粉金属を焼結して成形されたいわゆる焼結金属材によってほぼ円筒状に形成されている。ハウジング本体6aの内周面には4つのシュー8a~8dが突出形成されており、該各シュー8a~8dの内部軸方向に4つのボルト挿入孔6bがそれぞれ貫通形成されている。
【0019】
フロントプレート11は、プレス成形によって、リアプレート12よりも小さな肉厚に形成されて、中央に大径な挿入孔11aが貫通形成されている。また、フロントプレート11は、挿入孔11aを除く内周面とベーンロータ7の対向一側面との間で各遅角油圧室9内及び各進角油圧室10内をシールするようになっている。また、フロントプレート11の外周部の周方向4箇所に、それぞれ固定部材、例えばボルトBが挿入される4つのボルト挿入孔11bが貫通形成されている。
【0020】
リアプレート12は、フロントプレート11と同径の鉄系金属によって円盤状に形成され、その肉厚はフロントプレート11よりも僅かに大きく形成されている。このリアプレート12は、中央にカムシャフト2の一端部2aが軸方向から摺動可能に挿入される挿入孔12aが貫通形成されている。また、リアプレート12は、挿入孔12aを除く内周面とベーンロータ7の対向する他側面との間のサイドクリアランスで各遅角油圧室9内および各進角油圧室10内をシールするようになっている。また、リアプレート12は、外周部の周方向のほぼ等間隔位置にボルトBがねじ留めされる4つの雌ねじ孔12bが貫通形成されている。なお、リアプレート12は、ハウジング本体6a側の内側面の所定位置に、後述するロック穴21が設けられている。
【0021】
そして、リアプレート12とハウジング本体6a及びフロントプレート11は、それぞれのボルト挿入孔11bを挿入してタイミングスプロケット1の各雌ねじ孔12bにねじ留めされる4本のボルトBによって軸方向から結合されている。
【0022】
ベーンロータ7は、同じく焼結金属材によって一体に形成され、カムシャフト2の一端部2aにバルブボディ13によって固定されたロータ部7aと、該ロータ部7aの外周面に周方向のほぼ90°等間隔位置に放射状に突出形成された4つのベーン14a~14dと、から構成されている。
【0023】
ロータ部7aは、比較的大径な円筒状に形成され、中央の内部軸方向にカムシャフト2の雌ねじ孔2bと連続するボルト挿入孔15が貫通形成されている。ロータ部7aの後端面に形成された円形状の嵌合溝16には、カムシャフト2の一端部2aの先端部が回転軸方向から嵌合している。
【0024】
各ベーン14a~14dは、その径方向の突出長さが比較的短く形成されて、それぞれ各シュー8a~8dの間に配置されている。また、1つのベーン14a以外の3つのベーン14b~14dは、周方向の幅がほぼ同一に設定されて比較的薄肉なプレート状に形成されている。上記1つのベーン14aは、周方向の幅が大きく形成されて、内部にロック機構4の一部が設けられている。
【0025】
各ベーン14a~14dの外周面の先端には、ハウジング本体6aの内周面とロータ部7aの外周面との間をシールするシール部材17が設けられている。
【0026】
また、ベーンロータ7は、
図2に示すように、遅角側へ相対回転すると、ベーン14aの一側面が対向する1つのシュー8aの対向側面に当接して最遅角側の回転位置が規制されるようになっている。また、
図2に一点鎖線で示すように進角側へ相対回転すると、同じくベーン14aの他端面が対向する他のシュー8bの対向側面に当接して最進角側の回転位置が規制されるようになっている。
【0027】
このとき、他のベーン14b~14dは、両側面が周方向から対向する各シュー8c,8d,8aの対向面に当接せずに離間状態にある。したがって、ベーンロータ7とシュー8aとの当接精度が向上すると共に、各遅角油圧室9及び各進角油圧室10への油圧の供給速度が速くなってベーンロータ7の正逆回転応答性が良好になる。
【0028】
各ベーン14a~14dの正逆回転方向の両側面と各シュー8a~8dの両側面との間に、前述したそれぞれ4つの遅角油圧室9と進角油圧室10が設けられている。各遅角油圧室9と各進角油圧室10は、ロータ部7aの内周面から内部径方向に沿って形成されたそれぞれ4つの遅角通路孔18と進角通路孔19に連通している。各遅角通路孔18及び各進角通路孔19は、後述する制御弁26を介して油圧回路5に連通している。
【0029】
ロック機構4は、ハウジング6に対してベーンロータ7を最遅角側の回転位置(
図2の位置)に保持するものである。
【0030】
このロック機構4は、
図1及び
図2に示すように、リアプレート12側に対して進退可能に設けられたロックピン20と、ロックピン20の先端部20aが挿入されてベーンロータ7をロックするロック穴21と、機関の始動状態に応じてロックピン20の先端部20aをロック穴21に挿入あるいは挿通を解除する挿脱機構と、から構成されている。
【0031】
ロックピン20は、ベーン14aの内部軸方向に貫通形成された摺動用孔22に摺動可能に収容されている。ロックピン20は、先端部20aを含めた全体がほぼ円柱状に形成されて、ロック穴21内に軸方向から挿入し易い形状になっている。ロックピン20は、後端側から内部軸方向に形成された凹溝底面とフロントプレート11の内端面との間に弾装されて、ロックピン20を進出方向(挿入する方向)へ付勢するコイルスプリング23が設けられている。ロックピン20は、ロック穴21内の受圧室21aに油圧が供給されていないときに、コイルスプリング23のばね力によって先端部20aがロック穴21内部に挿入されて、ベーンロータ7のハウジング6に対する相対回転を規制するようになっている。
【0032】
ロック穴21は、リアプレート12の径方向のほぼ中央所定位置に形成されている。ロック穴21は、環状スリーブ21bを介してロックピン20の先端部20aの外径よりも十分に大径な円形状に形成されていると共に、リアプレート12の内側面のベーンロータ7の最遅角側の回転位置に対応した位置に形成されている。
【0033】
上記挿脱機構は、ロックピン20を進出方向へ付勢するコイルスプリング23と、ロック穴21内の受圧室21aに油圧を供給してロックピン20を後退させる図外の解除用油圧回路とから構成されている。この解除用油圧回路は、遅角油圧室9と進角油圧室10にそれぞれ選択的に供給された油圧が所定の油孔を介して受圧室21aに供給されてロックピン20に後退方向へ作用するようになっている。
【0034】
油圧回路5は、
図1に示すように、供給部24と、吐出通路25aから供給部24に作動油圧を吐出するオイルポンプ25と、機関運転状態に応じて供給部24に対して各遅角通路孔18と各進角通路孔19の流路を切り換える制御弁(油圧制御弁)26と、各油圧室9,10からの作動油を、制御弁26を介してオイルパン27に排出する排出通路28と、を備えている。
【0035】
供給部24は、カムシャフト2の軸受部やカムシャフト2の内部軸方向に形成されている。供給部24の下流側端部は、オイルポンプ25の吐出通路25aと連通している。また、供給部24の上流側端部は、カムシャフト2の雌ねじ孔2bの底部2cに連通していると共に、該底部2cを介して、後述するバルブボディ13に設けられた供給通路29に臨んでいる。
【0036】
オイルポンプ25は、例えばベーンタイプあるいはトロコイドタイプのものが用いられている。
【0037】
制御弁26は、ロータ部7aの内部軸方向に設けられている。制御弁26は、
図1、
図3及び
図4に示すように、円筒状のバルブボディ13と、このバルブボディ13内に配置される円筒状のスリーブ30と、該スリーブ30とバルブボディ13との間に配置される円筒状のスプール弁31と、該スプール弁31を
図1、
図3及び
図4の左方向に付勢する圧縮コイルばね32と、該圧縮コイルばね32の付勢力に抗してスプール弁31を押圧可能な電磁アクチュエータ33と、から主に構成されている。
【0038】
ここで、以下の説明の便宜上、円筒状のバルブボディ13の長手方向に沿った方向を「軸方向」と定義し、該軸方向と直交する方向を「径方向」と定義し、さらに、軸方向周りの方向を「周方向」と定義する。また、バルブボディ13の軸方向の両端部のうち第2ストッパ部材56が配置される側を「軸方向の一方側」とし、第1ストッパ部材48が配置される側を「軸方向の他方側」とする。
【0039】
バルブボディ13は、鉄系金属材からなり、ベーンロータ7をカムシャフト2の一端部2aに軸方向から固定するカムボルトとして機能する。バルブボディ13は、軸方向に貫通形成されたバルブ孔13aによって内部中空状の円筒状に形成されている。バルブボディ13は、外周面が六角面に形成された頭部13bと、ベーンロータ7のロータ部7aのボルト挿入孔15に挿入する軸部13cと、該軸部13cの先端部外周に形成されて、カムシャフト2の雌ねじ孔2bにねじ留めされる雄ねじ部13dとを有している。
【0040】
頭部13bは、バルブボディ13がカムシャフト2に締結された状態では、頭部13bの付け根側のフランジ部13eがフロントプレート11の挿入孔11a内に配置されて、フランジ部13eの着座面13fがロータ部7aのボルト挿入孔15の開口縁側の周面に着座している(
図1参照)。
【0041】
軸部13cは、
図1、
図3及び
図4に示すように、軸方向の頭部13b寄りの位置に、第1ポートである4つの遅角ポート34が周壁の周方向の90°等間隔位置に貫通形成されている。また、軸部13cの各遅角ポート34から雄ねじ部13d寄りの位置には、第2ポートである4つの進角ポート35が周壁の周方向の90°等間隔位置に貫通形成されている。なお、各遅角ポート34と各進角ポート35は、それぞれの内径が同じ大きさに形成されている。
【0042】
各遅角ポート34と各進角ポート35は、それぞれの内側開口がバルブ孔13aに臨み、外側開口が各遅角通路孔18(
図1参照)と各進角通路孔19(
図1参照)に径方向から連通している。
【0043】
スリーブ30は、例えば、合成樹脂材あるいは金属材によって円筒状に形成されて、スリーブ本体36と、該スリーブ本体36の軸方向の他方側の端部に形成されたフランジ部37と、から構成されている。
【0044】
スリーブ本体36は、軸方向一端側に位置する小径筒部36aと、該小径筒部36aと一体に形成され、小径筒部36aから軸方向他端側へ向かって拡径する傾斜筒壁部36bと、該傾斜筒壁部36bと一体に形成され、小径筒部36aよりも大径に形成された大径筒部36cとを有している。小径筒部36aは、内部に一体に形成された仕切壁36dによって第1スリーブ油通路38と第2スリーブ油通路39が軸方向に沿って仕切られている。小径筒部36aは、内部にバルブ収容凹部40が形成されている。
【0045】
仕切壁36dは、
図3に示すように、径方向に沿った断面が十字形状に形成されている。第1スリーブ油通路38の軸方向の他方側の開口部は、バルブ収容凹部40と連通している。仕切壁36dのうち遅角ポート34と径方向にオーバーラップする位置には、第1スリーブ油通路38のバルブ収容凹部40とは反対側の軸方向端部を閉塞する第1端壁36eが一体に形成されている。
【0046】
また、仕切壁36dのバルブ収容凹部40側の軸方向端部には、第2スリーブ油通路39のフランジ部37側の軸方向端部を閉塞する第2端壁36fが一体に形成されている。また、第2スリーブ油通路39の軸方向の一方側の開口部は、後述する円筒部材54の内部に形成されたドレイン通路64と連通している。
【0047】
第1スリーブ油通路38及び第2スリーブ油通路39は、バルブボディ13の軸方向に沿って並行に形成されて、上記十字状の仕切壁36dを介して互いに径方向の対称位置、つまり180°の対称位置に2つずつ形成されている。また、第1スリーブ油通路38及び第2スリーブ油通路39は、仕切壁36dによってそれぞれが径方向断面扇状に形成されており、これによって、大きな通路断面積を確保している。
【0048】
スリーブ本体36は、第1スリーブ油通路38側の軸方向端部にバルブ収容凹部40に臨む導入口38aが形成されている。スリーブ本体36のうち第1端壁36e近傍の位置には、第1スリーブ油通路38に開口した長方形の第1開口孔36gが径方向に貫通形成されている。この第1開口孔36gは、スプール弁31の後述する遅角ポート側スプール孔52及び進角ポート側スプール孔53を介して各遅角ポート34あるいは各進角ポート35に適宜連通するようになっている。
【0049】
また、スリーブ本体36のうち第2端壁36fの近傍の位置には、第2スリーブ油通路39に臨む矩形の第2開口孔36hが径方向に貫通形成されている。この第2開口孔36hは、スプール弁31の移動位置に応じて進角ポート35と第2スリーブ油通路39とを連通するようになっている。また、第2スリーブ油通路39の軸方向一端部には、排出口36iが形成され、この排出口36iが後述する円筒部材54のドレイン通路64及び排出通路28を介してオイルパン27に連通している。
【0050】
また、第1端壁36eは、遅角ポート34または進角ポート35からスプール弁31を介して第1スリーブ油通路38の方向へと作動油を案内する第1傾斜面を有している。一方、第2端壁36fは、進角ポート35からスプール弁31を介して第2スリーブ油通路39の方向へと作動油を案内する第2傾斜面を有している。
【0051】
フランジ部37は、
図1に示すように、軸部13cの先端部の内周面に形成された環状突出部13gの環状段部13hの内部に配置されている。フランジ部37は、圧縮コイルばね32の軸方向一端部が弾性的に接触する環状突出部13gと後述するバルブシート44との間に軸方向から挟み込まれるように配置されている。
【0052】
バルブ収容凹部40には、供給通路29から第1スリーブ油通路38へ向かう方向のみの作動油の流入を許容する第1逆止弁42が収容されている。この第1逆止弁42は、弁部材43と、該弁部材43が離着座するバルブシート44と、弁部材43をバルブシート44側に付勢するチェックスプリング45と、から構成されている。
【0053】
弁部材43は、硬度の比較的高い例えば鉄系金属材をプレス成形によってほぼカップ状に形成されているとともに、外径がバルブ収容凹部40の内径よりも十分小さく形成されて、両者間に比較的大きな隙間が形成されている。
【0054】
弁部材43は、
図3に示すように、バルブシート44に離着座する凸状の弁部46と、該弁部46の一端外周から軸方向に延びて外面がバルブ収容凹部40の内壁面に微小クリアランスをもって摺動案内されるガイド部47と、を備えている。
【0055】
弁部46は、その先端部に球面状に形成された第1球面部46aを有している。第1球面部46aは、供給通路29から第1スリーブ油通路38へ向かう方向の作動油の油圧を受けるようになっている。また、第1球面部46aは、バルブシート44の通路孔44aの軸方向の一方側の内周縁部に軸方向から当接あるいは離間する、つまり離着座するようになっている。また、弁部46は、第1球面部46aとは反対側に形成された第2球面部46bを有しており、この第2球面部46bは、チェックスプリング45によって軸方向の他方側に付勢されるようになっている。
【0056】
ガイド部47は、
図1、
図3および
図4に示すように、弁部46との付け根部において弁部材43の周方向等間隔位置に、概ね矩形の4つの連通穴47aを有している。ガイド部47は、第1球面部46aに作用する油圧によって、弁部材43がチェックスプリング45の付勢力に抗して軸方向の一方側へ移動したときに、先端部47bがスリーブ本体36の傾斜筒壁部36bの傾斜端面に当接するようになっている。
【0057】
バルブシート44は、円板プレート状に形成されて、弁部材43側に膨出変形した中央部位に通路孔44aが軸方向に沿って貫通形成されている。また、バルブシート44は、外周部が環状段部13hに隣接して挿入配置されている。そして、バルブシート44は、概ねC字状の第1ストッパ部材48によりバルブボディ13の外部への脱落が抑制された状態で、外周部の前端面がOリング49、固定部50および濾過フィルタ51を介して環状突出部13gの環状段部13hに当接するようになっている。
【0058】
弁部材43は、通路孔44aの孔縁に離着座して通路孔44aを開閉するようになっている。
【0059】
チェックスプリング45は、そのばね力が通路孔44aから弁部材43の第1球面部46aに作用する所定の作動油圧によって圧縮変形して弁部材43を軸方向の一方側へ後退移動させて通路孔44aを開く程度の大きさに設定されている。
【0060】
第1ストッパ部材48は、金属材によって概ねC字状に形成されている。第1ストッパ部材48は、外周部がバルブボディ13の軸方向他端部の内周面に形成された溝部13j内に嵌め込まれることで、濾過フィルタ51やバルブシート44等が軸方向の他方側に移動してバルブボディ13の外部へと脱落することを抑制している。第1ストッパ部材48の中央には、供給通路29と通路孔44aとを連通する通孔48aが形成されている。
【0061】
固定部50は、金属材あるいは合成樹脂材によって形成されて、外周面がバルブボディ13の軸方向他端部の内周面に軸方向から圧入されている。また、固定部50の中央には、カムシャフト2の雌ねじ孔2bの底部側と通路孔44aとを連通する通孔50aが貫通形成されている。なお、固定部50は、バルブボディ13の軸方向他端部の内周面に対して雌雄ねじによるねじ込みにより固定することも可能である。
【0062】
また、固定部50と第1ストッパ部材48との間には、濾過フィルタ51が挟み込まれて固定されている。この濾過フィルタ51は、一般的なもので、外周部51aが固定部50と第1ストッパ部材48との間に挟まれて固定され、中央部のフィルタ部51bを通過する作動油内の塵等を捕集する。
【0063】
Oリング49は、ゴムから構成され、バルブシート44と固定部50との間に配置されている。Oリング49は、その弾性力により、濾過フィルタ51および固定部50を介して第1ストッパ部材48を溝部13jの軸方向の他方側の壁面に押し付けることで、濾過フィルタ51等の軸方向のがたつきを抑制している。
【0064】
スプール弁31は、
図3に示すように、概ね円筒状に形成されており、内周面がスリーブ本体36の外周面と軸方向へ摺動可能となるように設けられている。また、スプール弁31は、軸方向一端部、軸方向中央部および軸方向他端部の外周面に第1~第3ランド部31a~31cを有している。バルブボディ13の軸方向に沿った第1ランド部31aの幅は、バルブボディ13の軸方向に沿った第2、第3ランド部31b,31cの幅よりも短く形成されている。
【0065】
第1ランド部31aと第2ランド部31bとの間には、遅角ポート34と第1スリーブ油通路38または後述するドレイン通路55とを適宜連通する遅角ポート側スプール孔52が径方向に貫通形成されている。
【0066】
遅角ポート側スプール孔52は、
図3及び
図4に示すように、スプール弁31の外周面に形成された第1外側環状凹部31dの底部における周方向等間隔位置に複数(本実施形態では8つ)形成されている。遅角ポート側スプール孔52は、第1外側環状凹部31dの底部から後述の内側環状凹部31fの底部へと貫通するように形成されている。
【0067】
また、第2ランド部31bと第3ランド部31cとの間には、遅角ポート34または進角ポート35と第1スリーブ油通路38とを適宜連通する進角ポート側スプール孔53が径方向に貫通形成されている。
【0068】
進角ポート側スプール孔53は、
図3及び
図4に示すように、スプール弁31の外周面に形成された第2外側環状凹部31eの底部における周方向等間隔位置に複数(本実施形態では8つ)形成されている。進角ポート側スプール孔53は、第2外側環状凹部31eの底部から後述の内側環状凹部31fの底部へと貫通するように形成されている。
【0069】
また、スプール弁31の内周面には、遅角ポート側スプール孔52および進角ポート側スプール孔53の双方に跨る位置に、第1外側環状凹部31dおよび第2外側環状凹部31eよりも深い内側環状凹部31fが形成されている。即ち、スプール弁31の内周面には、第1外側環状凹部31dの軸方向一端縁よりも軸方向一端側の位置から第2外側環状凹部31eの軸方向他端縁よりも僅かに他端側の位置の間において、第1外側環状凹部31dおよび第2外側環状凹部31eよりも深い内側環状凹部31fが形成されている。この内側環状凹部31fには、後述する第2逆止弁57が設けられている。
【0070】
付勢部材である圧縮コイルばね32は、その軸方向一端部がスプール弁31の軸方向他端面に弾性的に接触し、かつ軸方向他端部が環状突出部13gの軸方向一端面に弾性的に接触するように、スプール弁31と環状突出部13gとの間に配置されている。これにより、圧縮コイルばね32は、スプール弁31を軸方向の一方側へ付勢するようになっている。
【0071】
スプール弁31の軸方向一端面には、電磁アクチュエータ33によってスリーブ30側への押圧力を受けてスプール弁31に伝達する円筒部材54が設けられている。
【0072】
この円筒部材54は、金属材によって一体に形成され、
図3に示すように、外径が環状突起部54aを挟んで軸方向で大小径状に形成されている。円筒部材54は、スプール弁31側の大径筒状部54bと、電磁アクチュエータ33のプッシュロッド61側の小径筒状部54cと、大径筒状部54bと小径筒状部54cとの間に一体に設けられた環状突起部54aとを有している。
【0073】
大径筒状部54bは、開口端面がスプール弁31の軸方向一端面に軸方向から当接している。大径筒状部54bには、該大径筒状部54bの外周側を通った作動油を内部に供給する複数(本実施形態では4つ)の供給孔部54dが径方向に沿って貫通形成されている。この各供給孔部54dは、径方向から見たときの形状が円形状に形成されて、円筒部材54の周方向の90°等間隔位置に配置されている。
【0074】
小径筒状部54cは、有底状に形成されて、底壁の先端面に電磁アクチュエータ33のプッシュロッド61の押圧部61aが軸方向から当接している。電磁アクチュエータ33が最大の通電量で通電している場合は、小径筒状部54cは、スプール弁31を、圧縮コイルばね32のばね力と協働して軸方向の所定位置に保持している。さらに、小径筒状部54cには、第2スリーブ油通路39内を通った作動油を外部に排出する複数(本実施形態では4つ)の排出用孔54eが径方向に沿って貫通形成されている。この各排出用孔54eは、径方向から見たときの形状が円形状に形成されて、円筒部材54の周方向の90°等間隔位置に配置されている。
【0075】
環状突起部54aは、大径筒状部54bの軸方向一端部の外周部から径方向外側に突出形成された環状をなしている。
図3に示すように、環状突起部54aは、円筒部材54の周方向の90°等間隔位置に形成された4つの切り欠き部54fを有しており、円筒部材54の周方向に隣接した2つの切り欠き部54fの間には、扇形状に形成された扇状部54gが設けられており、該扇状部54gの外側面は、バルブボディ13の内周面と摺動可能となっている。
【0076】
円筒部材54とバルブボディ13の内周面との間の空間は、圧縮コイルばね32の付勢力によりスプール弁31が軸方向の一方側へ移動したときに第1外側環状凹部31dを介して遅角ポート34と連通可能なドレイン通路55となっている。このドレイン通路55には、各遅角油圧室9からの作動油圧が、遅角ポート34及び第1外側環状凹部31dを介して供給される。そして、ドレイン通路55に供給された作動油圧は、後述する第2ストッパ部材56の通孔56aと小径筒状部54cの外周面との間の隙間を通って排出通路28へ排出される。
【0077】
バルブボディ13の頭部13b側の一端部には、第2ストッパ部材56が設けられている。第2ストッパ部材56は、金属材によって概ねC字状に形成されており、外周部がバルブボディ13の内周面に形成された環状の溝部内に嵌め込まれることで、円筒部材54等が軸方向の一方側に移動してバルブボディ13の外部へと脱落することを抑制している。第2ストッパ部材56は、軸方向に貫通する概ね円形の通孔56aを有している。この通孔56aの内径は、小径筒状部54cの外径よりも大きく形成されている。これにより、小径筒状部54cが、通孔56aを通して軸方向に移動可能となっている。
【0078】
第2逆止弁57は、金属薄板、例えば板ばね鋼を周方向両端部が互いに重なるように丸めることにより縮径及び拡径が可能となるように構成されており、丸めた状態で内側環状凹部31f内に配置されている。第2逆止弁57は、拡径することで第1スリーブ油通路38から遅角ポート34または進角ポート35への作動油の流れ、もしくは第1スリーブ油通路38から遅角ポート34および進角ポート35の双方への作動油の流れを許容し、縮径することで遅角ポート34から進角ポート35への作動油の流れを許容する。第2逆止弁57の縮径時には、第2逆止弁57の外周と内側環状凹部31fの底面との間に進角ポート35と遅角ポート34とを連通する後述の連通路65が形成される。
【0079】
第2逆止弁57は、
図4に示すように、第2逆止弁57の進角ポート35側の軸方向端部である第1端部57aと、遅角ポート34側の軸方向端部である第2端部57bとを有している。第1端部57aおよび第2端部57bは、内側環状凹部31fの軸方向端面31g,31hに所定の隙間を介して当接している。第2逆止弁57は、
図4、
図5A及び
図5Bに示すように、第1端部57aの近傍に、第2逆止弁57の径方向に貫通する貫通部である複数(本実施形態では6つ)の円形の第1貫通孔57cを有している。逆に言えば、第2逆止弁57は、該第2逆止弁57の軸方向において複数の円形の第1貫通孔57cよりも外側に軸方向端部である第1端部57aを有している。6つの第1貫通孔57cは、第2逆止弁57の周方向の等間隔位置に設けられている。第1端部57aは、内側環状凹部31fの進角ポート35側の軸方向端面31gに当接することで、内側環状凹部31fに対する第2逆止弁57の位置決めを行う。また、第2端部57bは、内側環状凹部31fの遅角ポート34側の軸方向端面31hに当接することで、内側環状凹部31fに対する第2逆止弁57の位置決めを行う。なお、
図3、
図5A及び
図5Bでは、説明の便宜上、第1貫通孔57cの大きさを誇張して示してあるが、第1貫通孔57cの実際の孔径は、
図4等に示すように、スプール孔52,53の孔径よりも小さくなっている。
【0080】
電磁アクチュエータ33は、
図1に示すように、ケーシング58と、ソレノイド59と、可動鉄心60と、プッシュロッド61と、から主に構成されている。
【0081】
ケーシング58は、合成樹脂材からなり、上端部にECUであるコントロールユニット62に電気的に接続されるコネクタ部58aが設けられている。このコネクタ部58aは、ほぼ全体がケーシング58内に埋め込まれた一対の端子片58bの各一端部がソレノイド59に接続されている。一方、外部に露出した各他端部がコントロールユニット62側の雄コネクタの端子に接続されている。
【0082】
可動鉄心60は、円柱状をなしており、ボビン63の内部に軸方向へ摺動可能に設けられている。可動鉄心60は、ソレノイド59への非通電時には、圧縮コイルばね32のばね力によってスプール弁31、円筒部材54およびプッシュロッド61を介して軸方向一方側に後退移動するようになっている。
【0083】
ソレノイド59は、ケーシング58の内部に磁性材のボビン63を介して収容されている。ソレノイド59は、コントロールユニット62から通電されることによって励磁されて可動鉄心60を進出移動、つまりスプール弁31を圧縮コイルばね32のばね力に抗して軸方向の他方側へ移動させる。
【0084】
プッシュロッド61は、可動鉄心60の先端部に一体的に結合されて、先端部の押圧部61aが円筒部材54の小径筒状部54cの底壁に軸方向から当接する。
【0085】
スプール弁31は、ソレノイド59への非通電と通電中の通電量に応じて軸方向の最大他方側の位置から最大一方側の位置の間で連続的に移動制御される。
【0086】
すなわち、ソレノイド59に対するコントロールユニット62から非通電あるいは通電量に応じて可動鉄心60及び押圧部61aを圧縮コイルばね32のばね力に抗して軸方向の他方側へ押圧してスプール弁31の位置を連続的に移動させるようになっている。
【0087】
コントロールユニット62は、内部のコンピュータが図外のクランク角センサ(機関回転数検出)やエアーフローメータ、機関水温センサ、機関温度センサ、スロットルバルブ開度センサおよびカムシャフト2の現在の回転位相を検出するカム角センサなどの各種センサ類からの情報信号を入力している。これによって、現在の機関運転状態を検出するようになっている。また、コントロールユニット62は、電磁アクチュエータ33のソレノイド59への通電を遮断してスプール弁31を第1移動位置に制御するか、ソレノイド59へパルス信号を出力して通電量(デューティ比)を制御してスプール弁31を第2~第4移動位置へ連続的に可変制御するようになっている。
【0088】
図6は第1の実施形態の制御弁26におけるスプール弁31の第1移動位置を示す縦断面図である。
図7は第1の実施形態の制御弁26におけるスプール弁31の第2移動位置を示す縦断面図である。
図8は第1の実施形態の制御弁26におけるスプール弁31の第3移動位置を示す縦断面図である。
図9は第1の実施形態の制御弁26におけるスプール弁31の第4移動位置を示す縦断面図である。
【0089】
機関停止状態になると、オイルポンプ25も停止されて吐出通路25aからの作動油が供給されないとともに、コントロールユニット62からソレノイド59への通電が遮断される。このため、スプール弁31は、
図6に示すように、圧縮コイルばね32の付勢力によって軸方向の最大一方側の位置に保持される(第1移動位置)。この第1移動位置では、円筒部材54の環状突出部13gが第2ストッパ部材56の通孔56aの孔縁に当接した状態となっている。
【0090】
そして、この状態では、遅角ポート34が、第2外側環状凹部31e、進角ポート側スプール孔53、第2逆止弁57の第1貫通孔57c、内側環状凹部31f及び第1開口孔36gを介して第1スリーブ油通路38に連通している。同時に、進角ポート35が、スリーブ30の外周面とバルブボディ13の内周面との間に配置された圧縮コイルばね32の隙間と、スリーブ本体36の第2開口孔36hとを介して、第2スリーブ油通路39と連通している。このため、各進角油圧室10内の作動油は、
図6に矢印Aで示すように、各進角ポート35から上記圧縮コイルばね32の隙間及び第2開口孔36hを通って第2スリーブ油通路39に流入し、この第2スリーブ油通路39から円筒部材54内のドレイン通路64を通って各排出用孔54eからバルブボディ13の外部へ排出される。
【0091】
次に、イグニッションスイッチをオン操作して機関を始動させると、これに伴いオイルポンプ25も駆動して吐出通路25aに吐出された作動油圧は、供給通路29、第1ストッパ部材48の通孔48a及び濾過フィルタ51のフィルタ部51bを通って弁部材43の弁部46の第1球面部46aに作用する。これにより、弁部材43は、チェックスプリング45の付勢力に抗してバルブボディ13の軸方向の一方側へ移動し、第2端壁36fの軸方向端面に当接する。この弁部材43の移動に伴い、弁部46は、バルブシート44から離間し、作動油圧が、
図6に矢印Bで示すように、弁部46とバルブシート44との隙間及び弁部材43の連通穴47aを通って第1スリーブ油通路38に流入する。そして、この第1スリーブ油通路38から、作動油圧は、第1開口孔36g、内側環状凹部31f、進角ポート側スプール孔53、第2外側環状凹部31e及び遅角ポート34を介して各遅角油圧室9に供給される。このため、各遅角油圧室9内が高圧になる。
【0092】
次に、機関運転状態の変化に伴って、コントロールユニット62からソレノイド59への通電量が大きくなると、スプール弁31は、
図7に示す第2移動位置まで僅かに軸方向他端側へ移動する。これにより、遅角ポート34が、第2外側環状凹部31e、進角ポート側スプール孔53、第2逆止弁57の第1貫通孔57c、内側環状凹部31fおよび第1開口孔36gを介して第1スリーブ油通路38に連通し、同時に、進角ポート35が、第2外側環状凹部31e、進角ポート側スプール孔53、第2逆止弁57の第1貫通孔57c、内側環状凹部31fおよび第1開口孔36gを介して第1スリーブ油通路38に連通する。
【0093】
弁部46とバルブシート44との隙間等を通って第1スリーブ油通路38に流入した作動油圧は、
図7に矢印Cで示すように、第1スリーブ油通路38に流入する。そして、第1スリーブ油通路38から、作動油圧は、
図7に矢印Cで示すように、第1開口孔36g、内側環状凹部31f、第2逆止弁57の第1貫通孔57c、進角ポート側スプール孔53を介して第2外側環状凹部31eに流入し、各遅角ポート34及び各進角ポート35へと流れ、各遅角油圧室9及び各進角油圧室10に供給される。このため、各遅角油圧室9及び各進角油圧室10が高圧になり、ベーンロータ7が保持される。
【0094】
続いて、コントロールユニット62からソレノイド59への通電量がさらに大きくなると、スプール弁31は、第3移動位置まで軸方向他端側へ移動する。これにより、遅角ポート34が第1外側環状凹部31dを介してドレイン通路55に連通し、さらに、進角ポート35が、第2外側環状凹部31e、進角ポート側スプール孔53、第2逆止弁57の第1貫通孔57c、内側環状凹部31f及び第1開口孔36gを介して第1スリーブ油通路38に連通する。各遅角油圧室9内の作動油圧は、
図8に矢印Dで示すように、各遅角ポート34及び第1外側環状凹部31dを通ってドレイン通路55へと流れ、このドレイン通路55から、大径筒状部54bの供給孔部54dと、第2ストッパ部材56の通孔56aと小径筒状部54cとの間の隙間とを通ってバルブボディ13の外部に排出される。このため、各遅角油圧室9内が低圧になる。
【0095】
また、オイルポンプ25から吐出通路25aへ吐出された作動油圧は、供給通路29、第1ストッパ部材48の通孔48a及び濾過フィルタ51のフィルタ部51b(
図3参照)を通って弁部材43の弁部46の第1球面部46aに作用する。これにより、弁部材43は、チェックスプリング45の付勢力に抗してバルブボディ13の軸方向の一方側へ移動し、第2端壁36fの軸方向端面に当接する。この弁部材43の移動に伴い、弁部46は、バルブシート44から離間し、作動油圧が、
図8に矢印Eで示すように、弁部46とバルブシート44との隙間および弁部材43の連通穴47aを通って第1スリーブ油通路38に流入する。そして、この第1スリーブ油通路38から、作動油圧は、第1開口孔36g、内側環状凹部31f、第2逆止弁57の第1貫通孔57c、進角ポート側スプール孔53、第2外側環状凹部31e及び進角ポート35を介して各進角油圧室10に供給される。このため、各進角油圧室10内が高圧になる。
【0096】
続いて、例えば車両の急加速時などにアクセルペダルを急激に踏み込んだ場合などは、コントロールユニット62からのソレノイド59への通電量(デューティ比)を最大付近まで上昇している。このとき、スプール弁31は、
図9に示すように、可動鉄心60と押圧部61aによって圧縮コイルばね32のばね力に抗して押圧されることにより軸方向の最大他方側に位置である第4移動位置へ移動する。このため、このスプール弁31は、第1ランド部31aがドレイン通路55を閉じて第1外側環状凹部31d及び遅角ポート34との連通を遮断することから、各遅角油圧室9内の作動油圧の排出が停止されている。同時に、遅角ポート34が第1外側環状凹部31dを介して遅角ポート側スプール孔52と連通している。
【0097】
各遅角油圧室9内の作動油圧は、遅角ポート34から第1外側環状凹部31d及び遅角ポート側スプール孔52を通って第2逆止弁57の外周面に作用する。そして、カムシャフト2の交番トルクによって各遅角油圧室9の内圧が高くなったときに、作動油圧によって内側環状凹部31fの底面に弾性的に接触していた第2逆止弁57が縮径変形し、これにより、第2逆止弁57の外周面と内側環状凹部31fの底壁との間の連通路65が形成される。そして、各遅角油圧室9内の作動油圧が、
図9に矢印Fで示すように、第1外側環状凹部31dおよび遅角ポート側スプール孔52を通って連通路65へと流入する。次に、この連通路65から、作動油圧は、進角ポート側スプール孔53および第2外側環状凹部31eを通って各進角油圧室10に速やかに供給される。したがって、各進角油圧室10の内圧を速やかに立ち上げ、ベーンロータ7を最進角側へ速やかに相対回転させることができる。
【0098】
第1の実施形態では、拡径および縮径可能な第2逆止弁57が内側環状凹部31fに配置されている。そして、第2逆止弁57は、縮径することで進角ポート35と遅角ポート34とを連通する。より詳細には、スプール弁31が第4の移動位置にある高応答モードにおいて、カムシャフト2の交番トルクによって各遅角油圧室9の内圧が高くなったときに、作動油圧によって第2逆止弁57が縮径変形することに伴い、第2逆止弁57の外周面と内側環状凹部31fの底壁との間の連通路65が形成される。そして、遅角油圧室9からの作動油圧が、遅角ポート34、遅角ポート側スプール孔52、連通路65および進角ポート側スプール孔53および進角ポート35を介して進角油圧室10へ比較的短い流路でもって供給される。換言すれば、遅角油圧室9からの作動油圧は、第2逆止弁57の内周側へ流入することなく、第2逆止弁57の外周側のみを通って進角油圧室10へ供給される。従って、作動油圧が第2逆止弁57の内側を経由する場合と比べて、遅角油圧室9から進角油圧室10への作動油圧の応答性を向上させることができる。
【0099】
また、第1の実施形態では、第2逆止弁57は、内側環状凹部31fの底部から径方向に貫通形成された遅角ポート側スプール孔52および進角ポート側スプール孔53に跨っている。これにより、第2逆止弁57の外周側に、遅角ポート側スプール孔52と進角ポート側スプール孔53とを連通する連通路65を確実に形成し、遅角油圧室9から進角油圧室10への作動油圧の応答性を向上させることができる。
【0100】
さらに、第1の実施形態では、第2逆止弁57は、該第2逆止弁57の軸方向中央位置よりも進角ポート側スプール孔53側に設けられた第1貫通孔57cを有し、径方向外側へ広がった状態において第1貫通孔57cを介して第1スリーブ油通路38と進角ポート35が連通する。従って、スプール弁31が第3移動位置にあるときに、第1貫通孔57cを介して進角ポート35に作動油圧を容易に供給することができる。
【0101】
また、第1の実施形態では、第2逆止弁57は、該第2逆止弁57の軸方向において第1貫通孔57cよりも外側に設けられた第1端部57aを有しており、該第1端部57aは、内側環状凹部31fの軸方向端面31gに当接する。このため、第1端部57aと軸方向端面31gとの当接により、内側環状凹部31fに対して第2逆止弁57を位置決めし、内側環状凹部31fにおいて第2逆止弁57を安定的に保持することができる。
【0102】
[第2の実施形態]
図10Aは縮径した状態を示す第2の実施形態の第2逆止弁57の斜視図である。
図10Bは展開した状態を示す第2の実施形態の第2逆止弁57の斜視図である。
【0103】
第2の実施形態では、第2逆止弁57は、該第2逆止弁57の第1端部57aに対して軸方向内側に矩形状に窪む複数(本実施形態では3つ)の軸方向凹部57dを有している。この軸方向凹部57dは周方向に沿って比較的大きな開口面積を有しているので、作動油圧が軸方向凹部57dを介して進角油圧室10へ供給され易くなる。第2逆止弁57の周方向に隣接した2つの軸方向凹部57dの間には、内側環状凹部31fの進角ポート35側の軸方向端面31g(
図4参照)と当接する矩形状の第1端部57aが設けられている。
【0104】
従って、第2の実施形態においても、スプール弁31が第4の移動位置にある高応答モードにおいて、作動油圧によって第2逆止弁57が縮径変形することで、連通路65を介して遅角油圧室9から進角油圧室10への作動油圧の応答性を向上させることができる。
【0105】
また、スプール弁31が第3移動位置にあるときに、軸方向凹部57dを介して進角油圧室10への作動油圧を容易に供給することができる。
【0106】
[第3の実施形態]
図11Aは縮径した状態を示す第3の実施形態の第2逆止弁57の斜視図である。
図11Bは展開した状態を示す第3の実施形態の第2逆止弁57の斜視図である。
【0107】
第3の実施形態では、第2逆止弁57は、第1端部57aの近傍に形成された複数(本実施形態では3つ)の長方形の第2貫通孔57fを有している。複数の第2貫通孔57fは、第2逆止弁57の周方向に沿って細長くなるようにそれぞれ形成されており、第2逆止弁57の周方向等間隔位置に形成されている。
【0108】
従って、このような第3の実施形態においても、スプール弁31が第4の移動位置にある高応答モードにおいて、作動油圧によって第2逆止弁57が縮径変形することで、連通路65を介して遅角油圧室9から進角油圧室10への作動油圧の応答性を向上させることができる。
【0109】
また、スプール弁31が第3移動位置にあるときに、第2貫通孔57fを介して進角油圧室10への作動油圧を容易に供給することができる。
【0110】
[第4の実施形態]
図12Aは縮径した状態を示す第4の実施形態の第2逆止弁57の斜視図である。
図12Bは展開した状態を示す第4の実施形態の第2逆止弁57の斜視図である。
【0111】
第4の実施形態では、第2逆止弁57は、第1の実施形態の円形の第1貫通孔57cよりも小径に形成された複数(本実施形態では148個)の円形の第3貫通孔57gを有している。複数の第3貫通孔57gは、第2逆止弁57の周方向に形成された37個の第3貫通孔57gを第1端部57a付近から軸方向内側へ4列並べるように配置されている。このように複数の小径の第3貫通孔57gを設けることで、第1~第3の実施形態と比べて第2逆止弁57の材料部分、つまり開口部分以外の材料部分を多く残すことができ、第2逆止弁57の全体の剛性が高くなる。
【0112】
従って、第4の実施形態においても、スプール弁31が第4の移動位置にある高応答モードにおいて、作動油圧によって第2逆止弁57が縮径変形することで、連通路65を介して遅角油圧室9から進角油圧室10への作動油圧の応答性を向上させることができる。
【0113】
また、スプール弁31が第3移動位置にあるときに、第2逆止弁57の全体の剛性を高くしつつ、第3貫通孔57gを介して進角油圧室10への作動油圧を供給することができる。
【0114】
[第5の実施形態]
図13は第5の実施形態の第2逆止弁57の側面図である。
【0115】
第5の実施形態では、第2逆止弁57の互いに重ね合わされた周方向両端部のうち内側の周方向端部57hが、第2逆止弁57の軸方向から見たときに概ねU字形状をなすように折り曲げ形成された第1折り曲げ部57iを有している。このように構成された第2逆止弁57を内側環状凹部31fに配置した状態では、内側環状凹部31fの底面と第1折り曲げ部57iおよびその付近との間に隙間が形成される。この隙間により、第2逆止弁57が縮径時にスリーブ30の外周面に巻きついて固着することを抑制することができる。
【0116】
[第6の実施形態]
図14は第6の実施形態の第2逆止弁57の側面図である。
【0117】
第6の実施形態では、第5の実施形態とは異なり、第2逆止弁57の内側の周方向端部57hが、第2逆止弁57の軸方向から見たときに三角形状をなすように折り曲げ形成された第2折り曲げ部57jを有している。このように構成された第2逆止弁57を内側環状凹部31fに配置した状態では、内側環状凹部31fの底面と第2折り曲げ部57jおよびその付近との間に隙間が形成される。この隙間により、第2逆止弁57が縮径時にスリーブ30の外周面に巻きついて固着することを抑制することができる。
【0118】
なお、上記各実施形態では、バルブタイミング制御装置が吸気側のカムシャフトに適用された例について説明したが、本発明は、排気側のカムシャフトにも適用することができ、より詳細には、遅角ポート34と進角ポート35との位置が入れ替わった構成にも適用することができる。
【0119】
以上説明した実施形態に基づく油圧制御弁に用いられる制御弁としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0120】
油圧制御弁は、その一態様として、第1ポートおよび第2ポートが径方向に貫通形成された筒状のバルブボディと、前記バルブボディの内部に配置されて、内部に油通路を有するスリーブと、前記バルブボディの内周と前記スリーブの外周との間に前記バルブボディの軸方向へ摺動可能に配置され、内周に凹部を有するスプール弁と、前記凹部に配置され、丸められた板状の逆止弁であって、拡径することで前記油通路から前記第1ポートへの作動油の流れを許容し、縮径することで前記逆止弁の外周と前記凹部との間に前記第1ポートと前記第2ポートとを連通する連通路を形成する前記逆止弁と、を備える。
【0121】
前記油圧制御弁の好ましい態様において、前記スプール弁は、前記凹部の底部から前記径方向に貫通形成された第1スプール孔および第2スプール孔を有し、前記逆止弁は、前記第1スプール孔および前記第2スプール孔に跨っている。
【0122】
別の好ましい態様では、前記油圧制御弁の態様のいずれかにおいて、前記逆止弁は、該逆止弁の軸方向中央位置よりも前記第1スプール孔側に設けられた貫通部を有し、径方向外側へ広がった状態において前記貫通部を介して前記油通路と前記第1ポートまたは前記第2ポートが連通する。
【0123】
別の好ましい態様では、前記油圧制御弁の態様のいずれかにおいて、前記逆止弁は、前記逆止弁の軸方向において前記貫通部よりも外側に設けられた第1端部を有し、前記第1端部は、前記凹部の軸方向端面に当接する。
【0124】
別の好ましい態様では、前記油圧制御弁の態様のいずれかにおいて、前記逆止弁が径方向外側に広がった状態において、前記第1スプール孔と前記油通路とが前記貫通部を介して連通し、前記第2スプール孔と前記油通路との間の作動油の流れが抑制される。
【0125】
別の好ましい態様では、前記油圧制御弁の態様のいずれかにおいて、前記貫通部は、複数の貫通孔である。
【0126】
別の好ましい態様では、前記油圧制御弁の態様のいずれかにおいて、前記貫通部は、前記逆止弁の軸方向端部に対して軸方向内側に窪む複数の軸方向凹部である。
【0127】
別の好ましい態様では、前記油圧制御弁の態様のいずれかにおいて、前記油圧制御弁は、内燃機関のバルブタイミング制御装置に用いられ、前記バルブタイミング制御装置は、クランクシャフトからの回転力が伝達される駆動回転体と、カムシャフトと一体に回転する従動回転体と、前記駆動回転体と前記従動回転体との間に設けられた複数の油圧室と、を有し、前記油圧制御弁は、前記従動回転体の内部に配置されて前記複数の油圧室への作動油の供給および排出を行う。
【符号の説明】
【0128】
9・・・遅角油圧室、10・・・進角油圧室、13・・・バルブボディ、26・・・制御弁、30・・・スリーブ、31・・・スプール弁、31f・・・内側環状凹部、32・・・圧縮コイルばね、34・・・遅角ポート、35・・・進角ポート、38・・・第1スリーブ油通路、39・・・第2スリーブ油通路、52・・・遅角ポート側スプール孔、53・・・進角ポート側スプール孔、57・・・第2逆止弁、57a・・・第1端部、57c・・・第1貫通孔、57d・・・軸方向凹部、57f・・・第2貫通孔、57g・・・第3貫通孔、57i・・・第1折り曲げ部、57j・・・第2折り曲げ部