(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139777
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20220915BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20220915BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20220915BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/48 M
H01L29/48 D
H01L29/80 H
H01L21/28 B
H01L21/90 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040305
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智洋
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
5F102
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104BB05
4M104BB09
4M104BB16
4M104BB17
4M104BB36
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD08
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4M104EE06
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4M104HH20
5F033HH07
5F033HH13
5F033HH20
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5F102GV05
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5F102GV08
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC16
5F102HC19
5F102HC21
(57)【要約】
【課題】ゲート電極の特性の変化を抑制できる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の上に設けられ、開口が形成された絶縁膜と、前記開口を通じて前記半導体層に接続されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆う保護膜と、を有し、前記絶縁膜は、前記半導体層側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記ゲート電極は、前記第2面から離れて前記第2面に対向する第3面と、前記第2面と第3面とを繋ぐ第4面と、を有し、前記ゲート電極は、前記第3面及び前記第4面を構成するNi膜を含み、前記第3面及び前記第4面において前記Ni膜を覆うNi酸化膜を有し、前記保護膜は、前記Ni酸化膜の上から前記第3面及び前記第4面を覆う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層の上に設けられ、開口が形成された絶縁膜と、
前記開口を通じて前記半導体層に接続されたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆う保護膜と、
を有し、
前記絶縁膜は、
前記半導体層側の第1面と、
前記第1面とは反対側の第2面と、
を有し、
前記ゲート電極は、
前記第2面から離れて前記第2面に対向する第3面と、
前記第2面と第3面とを繋ぐ第4面と、
を有し、
前記ゲート電極は、前記第3面及び前記第4面を構成するNi膜を含み、
前記第3面及び前記第4面において前記Ni膜を覆うNi酸化膜を有し、
前記保護膜は、前記Ni酸化膜の上から前記第3面及び前記第4面を覆う半導体装置。
【請求項2】
前記保護膜の前記第3面を覆う部分と前記第2面との間に空隙が存在する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記保護膜は、Al酸化膜又はSi窒化膜を含む請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記Ni酸化膜の厚さは、3nm以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記保護膜は、更に前記絶縁膜を覆う請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記Ni膜の前記絶縁膜に接触する部分の面積は、前記Ni膜の前記Ni酸化膜に接触する部分の面積の0.10倍以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体層と、
前記半導体層の上に設けられ、開口が形成された絶縁膜と、
前記開口を通じて前記半導体層に接続されたゲート電極と、
前記ゲート電極及び前記絶縁膜を覆うAl酸化膜又はSi窒化膜を含む保護膜と、
を有し、
前記絶縁膜は、
前記半導体層側の第1面と、
前記第1面とは反対側の第2面と、
を有し、
前記ゲート電極は、
前記第2面から離れて前記第2面に対向する第3面と、
前記第2面と第3面とを繋ぐ第4面と、
を有し、
前記ゲート電極は、
前記第3面及び前記第4面を構成するNi膜と、
前記Ni膜の上に形成されたAu膜と、
を含み、
前記第3面及び前記第4面において前記Ni膜を覆うNi酸化膜を有し、
前記保護膜は、前記Ni酸化膜の上から前記第3面及び前記第4面を覆い、
前記保護膜の前記第3面を覆う部分と前記第2面との間に空隙が存在する半導体装置。
【請求項8】
半導体層の上に、前記半導体層側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有する絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に開口を形成する工程と、
前記開口を通じて前記半導体層に接続され、前記第2面から離れて前記第2面に対向する第3面と、前記第2面と第3面とを繋ぐ第4面と、を有し、前記第3面及び前記第4面を構成するNi膜を含む金属層を形成する工程と、
前記Ni膜を酸化させることで前記第3面及び前記第4面において前記Ni膜を覆うNi酸化膜を形成し、前記金属層の残部からゲート電極を形成する工程と、
前記Ni酸化膜の上から前記第3面及び前記第4面を覆いながら、前記ゲート電極を覆う保護膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)を備えた半導体装置として、基部と、基部から側方に張り出した庇部とを備えたゲート電極を有する半導体装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8741715号明細書
【特許文献2】特開2013-207086号公報
【特許文献3】特開2019-216188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の半導体装置では、ゲート電極の特性が変化することがある。
【0005】
本開示は、ゲート電極の特性の変化を抑制できる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の上に設けられ、開口が形成された絶縁膜と、前記開口を通じて前記半導体層に接続されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆う保護膜と、を有し、前記絶縁膜は、前記半導体層側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記ゲート電極は、前記第2面から離れて前記第2面に対向する第3面と、前記第2面と第3面とを繋ぐ第4面と、を有し、前記ゲート電極は、前記第3面及び前記第4面を構成するNi膜を含み、前記第3面及び前記第4面において前記Ni膜を覆うNi酸化膜を有し、前記保護膜は、前記Ni酸化膜の上から前記第3面及び前記第4面を覆う。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ゲート電極の特性の変化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る半導体装置の概要を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る半導体装置におけるゲート電極及びその周辺の詳細を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その11)である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その12)である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その13)である。
【
図16】
図16は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その14)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の上に設けられ、開口が形成された絶縁膜と、前記開口を通じて前記半導体層に接続されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆う保護膜と、を有し、前記絶縁膜は、前記半導体層側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記ゲート電極は、前記第2面から離れて前記第2面に対向する第3面と、前記第2面と第3面とを繋ぐ第4面と、を有し、前記ゲート電極は、前記第3面及び前記第4面を構成するNi膜を含み、前記第3面及び前記第4面において前記Ni膜を覆うNi酸化膜を有し、前記保護膜は、前記Ni酸化膜の上から前記第3面及び前記第4面を覆う。
【0012】
ゲート電極の表面にNi膜が露出し、保護膜として化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)法により形成されたSi窒化膜によりNi膜が覆われている場合、保護膜中にNiが拡散し、ゲート電極の特性が変化することがある。また、保護膜として原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)法により形成されたAl酸化膜によりNi膜が覆われている場合、保護膜とNi膜との界面をNiが拡散し、ゲート電極の特性が変化することがある。これに対し、本開示の一態様に係る半導体装置では、第3面及び第4面においてNi膜がNi酸化膜により覆われ、保護膜はNi酸化膜の上から第3面及び第4面を覆う。このため、Ni膜中のNiの拡散を抑制し、ゲート電極の特性の変化を抑制できる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記保護膜の前記第3面を覆う部分と前記第2面との間に空隙が存在してもよい。この場合、ゲート電極と積層構造との間の寄生容量を低減しやすい。
【0014】
〔3〕 〔1〕又は〔2〕において、前記保護膜は、Al酸化膜又はSi窒化膜を含んでもよい。この場合、ゲート電極を外部からの水分の侵入等から保護しやすい。
【0015】
〔4〕 〔1〕~〔3〕において、前記Ni酸化膜の厚さは、3nm以上であってもよい。この場合、Ni膜中のNiの拡散をより抑制しやすい。
【0016】
〔5〕 〔1〕~〔4〕において、前記保護膜は、更に前記絶縁膜を覆ってもよい。この場合、積層構造をより強固に保護できる。
【0017】
〔6〕 〔1〕~〔5〕において、前記Ni膜の前記絶縁膜に接触する部分の面積は、前記Ni膜の前記Ni酸化膜に接触する部分の面積の0.10倍以下であってもよい。この場合、Ni膜の絶縁膜に接触する部分におけるNiの拡散をより抑制しやすい。
【0018】
〔7〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の上に設けられ、開口が形成された絶縁膜と、前記開口を通じて前記半導体層に接続されたゲート電極と、前記ゲート電極及び前記絶縁膜を覆うAl酸化膜又はSi窒化膜を含む保護膜と、を有し、前記絶縁膜は、前記半導体層側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記ゲート電極は、前記第2面から離れて前記第2面に対向する第3面と、前記第2面と第3面とを繋ぐ第4面と、を有し、前記ゲート電極は、前記第3面及び前記第4面を構成するNi膜と、前記Ni膜の上に形成されたAu膜と、を含み、前記第3面及び前記第4面において前記Ni膜を覆うNi酸化膜を有し、前記保護膜は、前記Ni酸化膜の上から前記第3面及び前記第4面を覆い、前記保護膜の前記第3面を覆う部分と前記第2面との間に空隙が存在する。
【0019】
〔8〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置の製造方法は、半導体層の上に、前記半導体層側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有する絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜に開口を形成する工程と、前記開口を通じて前記半導体層に接続され、前記第2面から離れて前記第2面に対向する第3面と、前記第2面と第3面とを繋ぐ第4面と、を有し、前記第3面及び前記第4面を構成するNi膜を含む金属層を形成する工程と、前記Ni膜を酸化させることで前記第3面及び前記第4面において前記Ni膜を覆うNi酸化膜を形成し、前記金属層の残部からゲート電極を形成する工程と、前記Ni酸化膜の上から前記第3面及び前記第4面を覆いながら、前記ゲート電極を覆う保護膜を形成する工程と、を有する。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0021】
本実施形態は、窒化物半導体を主構成材料とするGaN-HEMTを含む半導体装置に関する。
図1は、実施形態に係る半導体装置の概要を示す断面図である。
図2は、実施形態に係る半導体装置におけるゲート電極及びその周辺の詳細を示す断面図である。
図1及び
図2は、ゲート幅方向に垂直な断面を示す。
【0022】
本実施形態に係る半導体装置100は、
図1に示すように、基板10と、基板10の上に形成された複数の半導体層の積層構造20とを有する。基板10は、例えば(0001)主面を有するSiC基板であり、積層構造20の積層方向は例えば[0001]方向である。積層構造20は、基板10側から順に形成される電子走行層12と、電子供給層14と、キャップ層16とを含む。電子走行層12は、例えば厚さが1000nm程度のアンドープGaN層である。電子供給層14は、例えば厚さ20nm程度のn型AlGaN層である。キャップ層16は、例えば厚さ5nm程度のn型GaN層である。積層構造20は半導体層の一例である。
【0023】
積層構造20の上に第1絶縁膜22が形成されている。第1絶縁膜22は、例えばSi窒化膜である。第1絶縁膜22及び積層構造20に、ソース用の開口31と、ドレイン用の開口32とが形成されている。積層構造20にオーミックコンタクトするソース電極41が開口31内に形成され、積層構造20にオーミックコンタクトするドレイン電極42が開口32内に形成されている。第1絶縁膜22、ソース電極41及びドレイン電極42の上に第2絶縁膜24が形成されている。第2絶縁膜24は、例えばSi窒化膜である。第1絶縁膜22及び第2絶縁膜24が絶縁膜26に含まれる。絶縁膜26は、積層構造20側の第1面26Aと、第1面26Aとは反対側の第2面26Bとを有する。第1面26Aは絶縁膜26の下面でもあり、第2面26Bは絶縁膜26の上面でもある。第1面26Aは積層構造20に接してもよい。
【0024】
図2に示すように、ソース電極41とドレイン電極42との間において、第1絶縁膜22に開口22Xが形成され、第2絶縁膜24に開口24Xが形成されている。開口24Xの開口幅、すなわちゲート長方向の寸法は、開口22Xの開口幅よりも大きい。例えば、開口24Xの開口幅は140nm程度であり、開口22Xの開口幅は90nm程度である。開口24Xは第2絶縁膜24を貫通し、開口22Xは第1絶縁膜22を貫通する。開口24Xを通じて開口22Xが露出し、開口24X及び22Xを通じて積層構造20が露出する。
【0025】
半導体装置100は、開口22X及び24Xを通じて積層構造20に接するゲート電極43を有する。ゲート電極43は、Ni膜64と、Ni膜64の上に形成されたAu膜66とを有する。例えば、Ni膜64の厚さは50nm~100nm程度であり、Au膜66の厚さは300nm~600nm程度である。ゲート電極43は、例えば断面視でTの字型の形状を備える。つまり、ゲート電極43は、基部43Sと、基部43Sから両側方に張り出した庇部43Tとを備える。そして、ゲート電極43は、絶縁膜26の第2面26Bから離れて第2面26Bに対向する第3面43Aを有する。第3面43Aは庇部43Tの下面でもある。ゲート電極43は、更に、第2面26Bと第3面43Aとを繋ぐ第4面43Bを有する。第4面43Bは、基部43Sの第2面26Bよりも上方で、第3面43Aよりも下方の部分の側面でもある。Ni膜64は第3面43A及び第4面43Bを構成する。ゲート電極43は、Ni膜64とAu膜66との間にPd膜を有してもよく、Au膜66の上にTa膜を有してもよい。
【0026】
半導体装置100は、第3面43A及び第4面43BにおいてNi膜64を覆うNi酸化膜68を有する。半導体装置100は、更に、ゲート電極43を覆う保護膜70を有する。保護膜70は、Ni酸化膜68の上から第3面43A及び第4面43Bを覆う。保護膜70は、ゲート電極43だけでなく、絶縁膜26を覆ってもよい。保護膜70は、例えばAl酸化膜又はSi窒化膜である。保護膜70の厚さは特に限定されないが、第3面43Aを覆う部分の厚さは、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは25nm以上である。
【0027】
本実施形態では、第3面43A及び第4面43BにおいてNi膜64がNi酸化膜68により覆われている。このため、Ni膜64中のNiの拡散を抑制し、ゲート電極43の特性の変化を抑制できる。
【0028】
保護膜70の第3面43Aを覆う部分と第2面26Bとの間に空隙46が存在してもよい。空隙46が存在することで、ゲート電極43の庇部43Tと積層構造20との間の寄生容量を低減しやすい。なお、空隙46に代えて、いわゆる低誘電率(low-k)材が配置されていてもよい。空隙46が存在する場合よりも、機械的強度を向上できる。低誘電率材の比誘電率は、好ましくは7.0以下であり、より好ましくは4.0以下である。
【0029】
保護膜70がAl酸化膜又はSi窒化膜を含むことで、ゲート電極43を外部からの水分の侵入等から保護しやすい。保護膜70が絶縁膜26を覆う場合、積層構造20をより強固に保護できる。
【0030】
Ni酸化膜68はNiの自然酸化膜よりも厚く、Ni酸化膜68の厚さは、例えば好ましくは3nm以上であり、より好ましくは5nm以上である。Ni膜64中のNiの拡散をより抑制しやすくするためである。
【0031】
Ni膜64の絶縁膜26に接触する部分の面積は、Ni膜64のNi酸化膜68に接触する部分の面積の0.10倍以下であることが好ましく、0.07倍以下であることがより好ましく、0.05倍以下であることがより好ましい。Ni膜64の絶縁膜26に接触する部分におけるNiの拡散をより抑制しやすくなるためである。
【0032】
絶縁膜26は、Ni膜64に接触するSi酸窒化膜を含んでもよい。例えば、第1絶縁膜22及び第2絶縁膜24が、主体としてのSi窒化膜と、このSi窒化膜の表面を覆うSi酸窒化膜とを含んでもよい。絶縁膜26がNi膜64に接触するSi酸窒化膜を含むことで、Ni膜64と絶縁膜26との界面におけるNiの拡散を抑制しやすい。
【0033】
次に、実施形態に係る半導体装置100の製造方法について説明する。
図3~
図16は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図3~
図8は、
図1に示す断面の変化を示し、
図9~
図16は、
図2に示す断面の変化を示す。
【0034】
まず、
図3に示すように、基板10上に、有機金属化学気相成長(metal organic chemical vapor deposition:MOCVD)法を用いて、複数の窒化物半導体層を含む積層構造20を成長する。次に、積層構造20の上面に接する第1絶縁膜22を、減圧(low pressure:LP)CVD法を用いて成膜する。第1絶縁膜22は、例えば厚さが40nmのSi窒化膜である。電子走行層12を形成する前に基板10の上に核形成層を形成し、核形成層の上に電子走行層12を形成してもよい。核形成層は、例えば厚さ数十nmのAlN層である。
【0035】
次に、
図4に示すように、第1絶縁膜22の上に電子線レジスト51を塗布し、電子線リソグラフィにより、電子線レジスト51に開口51Xを形成する。開口51Xを通じて第1絶縁膜22が露出する。
【0036】
次に、
図5に示すように、電子線レジスト51をマスクとして、反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)により第1絶縁膜22及び積層構造20にソース用の開口31と、ドレイン用の開口32とを形成する。例えば、第1絶縁膜22のエッチングにはフッ素(F)を含む反応性ガスが用いられ、積層構造20のエッチングには塩素(Cl)を含む反応性ガスが用いられる。
【0037】
次に、
図6に示すように、蒸着法により、開口31の内側及び開口32の内側に金属層61を形成する。金属層61は、電子線レジスト51の上面及び開口51Xの側壁面にも付着する。金属層61は、例えば、基板10側から順に形成されるTa膜と、Al膜と、Mo膜とを含む。
【0038】
次に、
図7に示すように、電子線レジスト51を除去する。電子線レジスト51の除去に伴って、金属層61の電子線レジスト51に付着した部分も除去される。その一方で、開口31及び32の内側には、金属層61が残存する。つまり、リフトオフが行われる。次いで、熱処理によって金属層61を合金化(アロイ)する。これにより、積層構造20にオーミックコンタクトするソース電極41が開口31内に形成され、積層構造20にオーミックコンタクトするドレイン電極42が開口32内に形成される。
【0039】
次に、
図8に示すように、第1絶縁膜22、ソース電極41及びドレイン電極42の上に、第2絶縁膜24を、プラズマ(plasma enhanced:PE)CVD法を用いて成膜する。第2絶縁膜24は、例えば厚さが20nmのSi窒化膜である。第1絶縁膜22及び第2絶縁膜24が絶縁膜26に含まれる。
【0040】
次に、
図9に示すように、第2絶縁膜24、ソース電極41及びドレイン電極42の上に、電子線レジスト52を塗布する。電子線レジスト52として、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)が用いられる。電子線レジスト52として、日本ゼオン株式会社製のZEP520A-7が用いられてもよい。次に、電子線リソグラフィにより、電子線レジスト52に開口52Xを形成する。開口52Xの開口幅、すなわちゲート長方向の寸法は、例えば70nm程度である。開口52Xを通じて第2絶縁膜24が露出する。
【0041】
次に、
図10に示すように、電子線レジスト52をマスクとして、フッ素を含む反応性ガスを用いたRIEにより第2絶縁膜24にゲート用の開口24Xを形成し、第1絶縁膜22にゲート用の開口22Xを形成する。開口24X及び22Xの形成では、一定の条件で第2絶縁膜24及び第1絶縁膜22をエッチングする。第2絶縁膜24に有意なサイドエッチが生じ、開口24Xの開口幅は、開口22Xの開口幅よりも大きくなる。例えば、開口24Xの開口幅は140nm程度であり、開口22Xの開口幅は90nm程度である。開口24X及び22Xを通じて積層構造20が露出する。
【0042】
次に、
図11に示すように、電子線レジスト52を除去する。次に、キャップ層16、第1絶縁膜22、第2絶縁膜24、ソース電極41及びドレイン電極42の上に、電子線レジスト53と、電子線レジスト54と、電子線レジスト55とをこの順で塗布する。電子線レジスト53及び55としてPMMAが用いられ、電子線レジスト54としてポリメチルグルタルイミド(PMGI)が用いられる。電子線レジスト53及び55は電子線レジスト54よりも微細な加工が可能である。次に、電子線リソグラフィにより、電子線レジスト55に開口55Xを形成し、電子線レジスト54に開口54Xを形成し、電子線レジスト53に開口53Xを形成する。例えば、開口55Xの開口幅は500nm程度であり、開口54Xの開口幅は580nm程度であり、開口53Xの開口幅は290nm程度である。開口55X、54X及び53Xを通じて第2絶縁膜24、第1絶縁膜22及びキャップ層16が露出する。
【0043】
次に、
図12に示すように、ベークを行い、開口53Xの下端における開口幅が上端における開口幅よりも小さくなるように電子線レジスト53を変形させる。つまり、開口53Xの側壁面をテーパ状に変形させる。自己整合的に開口53Xの下端が開口24Xの上端に一致するように電子線レジスト53を変形させてもよい。
【0044】
次に、
図13に示すように、蒸着法により、開口55X、54X、53X、24X及び22Xの内側に金属層62を形成する。金属層62の形成では、Ni膜64を形成し、Ni膜64の上にAu膜66を形成する。例えば、Ni膜64の厚さは50nm~100nm程度であり、Au膜66の厚さは300nm~600nm程度である。Ni膜64とAu膜66との間にPd膜を形成してもよく、Au膜66の上にTa膜を形成してもよい。金属層62は、電子線レジスト55の上面及び開口55Xの側壁面にも付着する。
【0045】
次に、
図14に示すように、電子線レジスト55、54及び53を除去する。電子線レジスト55、54及び53の除去に伴って、金属層62の電子線レジスト55に付着した部分も除去される。その一方で、開口24X及び22Xの内側と、第1絶縁膜22及び第2絶縁膜24の上には、金属層62が残存する。つまり、リフトオフが行われる。残存する金属層62は、例えば断面視でTの字型の形状を備える。
【0046】
次に、
図15に示すように、金属層62に含まれるNi膜64の表面を酸化させることで、Ni酸化膜68を形成する。これにより、Ni膜64及びAu膜66を有し、開口22Xを通じて積層構造20にショットキーコンタクトするゲート電極43が形成される。つまり、金属層62のうちNi酸化膜68となった部分の残部からゲート電極43が形成される。ゲート電極43は、例えば断面視でTの字型の形状を備える。Ni膜64は、例えばオゾンを用いて酸化させることができる。
【0047】
次に、
図16に示すように、ゲート電極43を覆う保護膜70を形成する。保護膜70は、Ni酸化膜68及びAu膜66に接触するが、Ni膜64に接触しない。保護膜70は、Ni酸化膜68の上からNi膜64を覆う。保護膜70は、例えばAl酸化膜又はSi窒化膜である。Al酸化膜は、例えばALD法により形成できる。Si窒化膜は、例えばプラズマCVD法により形成できる。Si窒化膜をプラズマCVD法により形成した場合、装置の特性上、Si窒化膜がフッ素(F)を含有していてもよい。
【0048】
その後、必要に応じて配線等を形成する。このようにして、GaN-HEMTを含む半導体装置100を製造することができる。
【0049】
このような製造方法によれば、Ni膜64中のNiの拡散を抑制するNi酸化膜68を形成しやすい。
【0050】
また、保護膜70としてAl酸化膜をALD法により形成する場合には、Ni膜64の表面の酸化と同一の装置を用いて成膜できる。一方、保護膜70としてSi窒化膜をCVD法により形成する場合には、保護膜70を高い成膜レートで形成できる。
【0051】
なお、絶縁膜26がSi窒化膜を含む場合、Si窒化膜の表面が酸化されていてもよい。つまり、絶縁膜26の表面がSi酸窒化膜になっていてもよい。例えば、第2絶縁膜24が形成された後でNi膜64が形成される前までの間の種々の熱処理等においてSi窒化膜の表面が酸化されてもよい。
【0052】
また、Ni膜64は積層構造20とショットキーコンタクトできていれば、積層構造20と接触する部分から第3面43Aまで連続している必要はなく、一部で分断されていてもよい。例えば、蒸着時のカバレッジ等の影響により、第1絶縁膜22の角部、第2絶縁膜24の角部等において、Ni膜64が不連続となっていてもよい。
【0053】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10:基板
12:電子走行層
14:電子供給層
16:キャップ層
20:積層構造
22:第1絶縁膜
22X:開口
24:第2絶縁膜
24X:開口
26:絶縁膜
26A:第1面
26B:第2面
31、32:開口
41:ソース電極
42:ドレイン電極
43:ゲート電極
43A:第3面
43B:第4面
43S:基部
43T:庇部
46:空隙
51、52、53、54、55:電子線レジスト
51X、52X、53X、54X、55X:開口
61、62:金属層
64:Ni膜
66:Au膜
68:Ni酸化膜
70:保護膜
100:半導体装置