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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139812
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】削孔装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 15/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
E21B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040355
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】三澤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】西山 宏一
(72)【発明者】
【氏名】山口 治
(72)【発明者】
【氏名】有川 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 純一
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA06
2D129AA08
2D129AB20
2D129AC04
2D129BA03
2D129DA21
2D129DC12
2D129DC35
(57)【要約】
【課題】削孔装置に装着されたハンマドリルの交換作業を速やかに行えるようにする。
【解決手段】ハンマドリル1、および着脱可能に接続されたコードからのエアでハンマドリル1に設けられたトリガ1fを操作する中空構造体50を備えたドリルユニットDと、上下方向に長く配置された柱状の本体部12に沿って昇降するテーブル14と、テーブル14に設置されるとともにドリルユニットDが着脱可能に搭載され、ドリルユニットDを削孔方向に対して進退移動させる進退部材2とを有し、進退部材2に搭載されたドリルユニットDを新たなドリルユニットDに交換し得るようにした。ドリルユニットDは、ハンマドリル1が載置される載置プレート51、およびハンマドリル1を載置プレート51とで挟み込んでハンマドリル1を載置プレート51に拘束する拘束部材52を備える。進退部材2には、搭載されたドリルユニットDを保持する保持フレーム2fが設けられている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の構造物を削孔する削孔機、およびコードが着脱可能に接続されて前記コードから供給される駆動力により前記削孔機に設けられたトリガを操作する操作部材を備えた削孔機ユニットと、
上下方向に長く配置された柱状の本体部に沿って昇降する昇降部材と、
前記昇降部材に設置されるとともに前記削孔機ユニットが着脱可能に搭載され、当該削孔機ユニットを削孔方向に対して進退移動させる進退部材とを有し、
前記進退部材に搭載された前記削孔機ユニットを新たな前記削孔機ユニットに交換し得るようにした、
ことを特徴とする削孔装置。
【請求項2】
前記削孔機ユニットは、前記削孔機が載置される載置プレート、および前記削孔機を前記載置プレートとで挟み込んで当該削孔機を前記載置プレートに拘束する拘束部材をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1記載の削孔装置。
【請求項3】
前記進退部材には、搭載された前記削孔機ユニットを保持する保持フレームが設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の削孔装置。
【請求項4】
前記進退部材に搭載された前記削孔機ユニットを当該進退部材に固定する固定部材をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の削孔装置。
【請求項5】
前記固定部材は、係止部を被係止部に係止して締め付ける機構で構成されており、
前記係止部および前記被係止部の一方が前記削孔機ユニットに取り付けられ、他方が前記削孔機ユニットに取り付けられ、
または、係止部と被係止部とが前記進退部材の前記削孔機ユニットを挟んだ位置に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項4記載の削孔装置。
【請求項6】
前記削孔機は、上下反転して前記進退部材に搭載される、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の削孔装置。
【請求項7】
前記操作部材は、
前記コードから供給される駆動力としてのエアにより膨張・収縮して前記トリガを操作する中空構造体、
または、前記コードから供給される駆動力としての電力により押圧・押圧解除して前記トリガを操作する電動アクチュエータである、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の削孔装置。
【請求項8】
前記削孔機は、
前記削孔機に着脱可能に接続された電源ケーブルからの給電で動作するケーブル式、
または、前記削孔機に装着されたバッテリで動作する充電式である、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の削孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の構造物を削孔する削孔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の躯体で構成された道路、橋梁、ダム、堤防などの既設の構造物では、耐力の維持や補強を目的として、躯体の側面や上下面に対し、配筋を行ってさらにコンクリートを打設する工法、すなわち増し打ち工法が行われている。
【0003】
増し打ち工法では、構造物に所定間隔で削孔してあと施工アンカーを埋め込み、当該あと施工アンカーと連結するようにして増し打ちを行う領域に鉄筋を配置する。その後、型枠を取り付けてコンクリートを打設している。
【0004】
なお、コンクリートの増し打ちをして既設の構造物を補強する技術については、例えば特許文献1(特開2018-131848号公報)が知られている。
【0005】
ここで、増し打ち工法では、あと施工アンカーを埋め込むために既設の構造物を削孔する削孔機が用いられる。具体的な削孔機としては、回転しながら打撃を加えて削孔するハンマドリルや、細かく振動しながら回転して削孔する振動ドリルなどが知られている。
【0006】
そして、削孔作業において、現場の作業者は、重量物である削孔機のハンドルおよびサイドハンドルを両手でしっかりと保持した上で、ハンドルに配置されたトリガを指で引いて電源を入れ、削孔位置にビットの先端を当てて掘り進める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-131848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
増し打ち工法では、多数のあと施工アンカーを埋め込むために構造物に多数の孔を開けなければならない。すると、削孔機を用いた人力での作業は重労働となり、結果として作業効率が悪化することになる。
【0009】
そこで、作業者の負担を軽減しつつコンクリート製の構造物を削孔することのできる装置として、前述した削孔機を昇降可能且つ進退可能に設置した削孔装置を構成し、設置された削孔機でコンクリートに連続削孔を行うようにすることが考えられる。この場合、単に削孔機を削孔装置に設置するだけではなく、削孔機のハンドルに配置されたトリガを操作する操作部材も設ける必要がある。
【0010】
さて、削孔機では、30分程度連続して削孔を行うと、過熱して動作異常が発生することが懸念される。よって、所定時間に亘って連続削孔を行ったならば、削孔機を削孔装置から取り外して別の削孔機に交換する必要が生じる。
【0011】
このとき、トリガを操作するための操作部材を削孔機から取り外してから削孔機を削孔装置から離脱し、その後、新たな削孔機を削孔装置に装着して、取り外しておいた操作部材を削孔機に取り付けなければならないので、削孔機の交換作業に時間がかかることになる。
【0012】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、削孔装置に装着された削孔機の交換作業を速やかに行うことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の削孔装置は、コンクリート製の構造物を削孔する削孔機、およびコードが着脱可能に接続されて前記コードから供給される駆動力により前記削孔機に設けられたトリガを操作する操作部材を備えた削孔機ユニットと、上下方向に長く配置された柱状の本体部に沿って昇降する昇降部材と、前記昇降部材に設置されるとともに前記削孔機ユニットが着脱可能に搭載され、当該削孔機ユニットを削孔方向に対して進退移動させる進退部材とを有し、前記進退部材に搭載された前記削孔機ユニットを新たな前記削孔機ユニットに交換し得るようにした、ことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の本発明の削孔装置は、上記請求項1に記載の発明において、前記削孔機ユニットは、前記削孔機が載置される載置プレート、および前記削孔機を前記載置プレートとで挟み込んで当該削孔機を前記載置プレートに拘束する拘束部材をさらに備える、ことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の本発明の削孔装置は、上記請求項1または2に記載の発明において、前記進退部材には、搭載された前記削孔機ユニットを保持する保持フレームが設けられている、ことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の本発明の削孔装置は、上記請求項1~3の何れか一項に記載の発明において、前記進退部材に搭載された前記削孔機ユニットを当該進退部材に固定する固定部材をさらに備える、ことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の本発明の削孔装置は、上記請求項4記載の発明において、前記固定部材は、係止部を被係止部に係止して締め付ける機構で構成されており、前記係止部および前記被係止部の一方が前記削孔機ユニットに取り付けられ、他方が前記削孔機ユニットに取り付けられ、または、係止部と被係止部とが前記進退部材の前記削孔機ユニットを挟んだ位置に取り付けられている、ことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の本発明の削孔装置は、上記請求項1~5の何れか一項に記載の発明において、前記削孔機は、上下反転して前記進退部材に搭載される、ことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の本発明の削孔装置は、上記請求項1~6の何れか一項に記載の発明において、前記操作部材は、前記コードから供給される駆動力としてのエアにより膨張・収縮して前記トリガを操作する中空構造体、または、前記コードから供給される駆動力としての電力により押圧・押圧解除して前記トリガを操作する電動アクチュエータである、ことを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の本発明の削孔装置は、上記請求項1~7の何れか一項に記載の発明において、前記削孔機は、前記削孔機に着脱可能に接続された電源ケーブルからの給電で動作するケーブル式、または、前記削孔機に装着されたバッテリで動作する充電式である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、削孔機が、当該削孔機に配置されたスイッチを操作するための操作部材とともに削孔機ユニットとしてユニット化されているので、削孔機を削孔機ユニット単位で交換することができる。よって、削孔機から操作部材を取り外した後に当該削孔機を進退部材から取り外し、新たな削孔機を進退部材に搭載してから、取り外しておいた操作部材をその削孔機に装着するという手間のかかる作業が不要になる。
【0022】
したがって、削孔装置に装着された削孔機の交換作業を速やかに行うことが可能になる。これにより、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施の形態に係る削孔システムで削孔された孔にせん断補強鉄筋を挿入して耐震補強されたコンクリート製の構造物の一部を示す説明図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る削孔装置の側面図である。
図3図2の背面図である。
図4図2の平面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る削孔装置においてエアジャッキが収縮した状態を示しており、(a)は側面図、(b)は背面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る削孔装置においてエアジャッキが伸張した状態を示しており、(a)は側面図、(b)は背面図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る削孔装置に装着されたドリルユニットを示す側面図である。
図8図7のXA線に沿った断面図である。
図9図7のYA線に沿った断面図である。
図10図7のドリルユニットおよびその周辺機構を示す側面図である。
図11図10のXB線に沿った断面図である。
図12図10のYB線に沿った断面図である。
図13図10に示す削孔装置に設けられたケーブル保護カバーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
本実施の形態の削孔装置Aは、例えば図1に示すような地盤Gに接する既設のコンクリート製の構造物Sや、鉄道や道路等の建造物に近接する地上に構築された既設のコンクリート製の構造物(道路、橋梁、ダム、堤防など)などに対して、補強工事の一工程として片側面からアンカー孔(あと施工アンカーを埋め込むための孔)などの孔Hを開けるために用いられる。開けた孔Hの内部に定着材Mを充填した後、せん断補強鉄筋Rを挿入して構造物Sと一体化させることで、構造物Sのせん断耐力を向上させる。なお、せん断補強鉄筋Rとしては、例えば、一般的に使用される鉄筋R1の片側をネジ切り、斜め切断加工し、先端部に六角ナット(定着体)R2を装着したものなどが適用される。
【0026】
図2図4に示す本実施の形態の削孔装置Aは、構造物Sを削孔するためのハンマドリル(削孔機)1を昇降可能に支持するリフタ10を備えている。このリフタ10は、リフタフレーム11と、リフタフレーム11に搭載されて上下方向に長く配置された柱状の本体部12と、昇降用モータ13により駆動されて本体部12の側面に沿って昇降するテーブル(昇降部材)14とを備えており、前述したハンマドリル1はテーブル14上に設置されている。
【0027】
本体部12内には、上下方向に配置されてテーブル14を貫通し、当該テーブル14の昇降をガイドする2本のスライドガイド15が設けられている。また、同じく上下方向に配置されて昇降用モータ13により回転し、テーブル14と螺合したボールねじ16が設けられている。したがって、リフタフレーム11に設置された昇降用モータ13の駆動でボールねじ16が回転すると、テーブル14がスライドガイド15に案内されて上昇あるいは下降し、昇降用モータ13が停止すると、そのときの高さ位置で停止する。
【0028】
リフタ10のテーブル14に設置されたハンマドリル1はドリル駆動用モータ(図示せず)に駆動されており、打撃および回転の一方あるいは併用が可能で、さらに強弱の調整も可能になっている。但し、強弱の調整は不能であってもよい。また、このハンマドリル1は後述するようにドリルユニット(削孔機ユニット)Dとしてユニット化され(図7参照)、テーブル14上において直線的に往復動可能に設置された進退部材2に搭載されており、当該進退部材2によって削孔方向に対して進退移動可能になっている。
【0029】
ここで、図4に示すように、進退部材2は、ベースプレート2p上に、相互に平行に配置された2本のガイドレール2aと、ハンマドリル1を搭載してガイドレール2aをスライド移動する板状のスライダ2bと、スライダ2bに推進力(往復移動するための推進力)を付与する推力付与部材としてのボールねじ2cおよびドリル進退用モータ2dとが設置されている。ボールねじ2cはスライダ2bに螺合しており、ドリル進退用モータ2dはボールねじ2cを回転駆動する。そして、ボールねじ2cの回転運動がスライダ2bで直線運動に変換されてガイドレール2aに沿ってスライドし、これによりスライダ2b上のハンマドリル1が進退移動する。なお、スライダ2bのスライド方向の前方および後方には、ガイドレール2aの両端が固定されるとともに、当該スライダ2bの前進端および後退端を規制するストッパ2eが設けられている(図10参照)。
【0030】
そして、ドリル駆動用モータでハンマドリル1の駆動を開始し、ドリル進退用モータ2dを回転させて削孔対象であるコンクリート製の構造物Sに接近する方向にスライダ2bを移動させて当該ハンマドリル1を前進させると、ハンマドリル1のビット1aの先端が構造物Sの削孔位置に押し当てられて削孔が実行される。また、削孔が終わり、ドリル進退用モータ2dを反転させて構造物Sから離間する方向にスライダ2bを移動させてハンマドリル1を後退移動させると、当該ハンマドリル1のビット1aが孔から抜き取られて待機位置に戻る。なお、本実施の形態において、ハンマドリル1による削孔深さは200mm程度である。但し、削孔深さはハンマドリル1に取り付けられるビット1aの長さやスライダ2bのスライド長などにより決定されるものであり、本実施の形態である200mmに限定されるものではない。
【0031】
さて、このような構成を備えたリフタ10の下部には、当該リフタ10を支持する支持フレーム20が設けられている。この支持フレーム20は、平面視で矩形枠状の形状を呈しており、内側において互いに平行に掛け渡された2本のロッド21に前述のリフタフレーム11がボルト止めされている。また、矩形の支持フレーム20における長辺の部分には、その全長に渡って中間ロッド22が溶接によって固定されている。
【0032】
支持フレーム20を跨ぐようにして、走行フレーム30が設けられている。この走行フレーム30は、中間ロッド22の直上(つまり、支持フレーム20の長辺部分の直上)に配置された2本の長尺ロッド30aと、長尺ロッド30aの両端において当該長尺ロッド30aと直交した2本の短尺ロッド30bとで構成されている。短尺ロッド30bは長尺ロッド30aの裏面に固定されており、その両端は2本並んだ長尺ロッド30aの外側へ突出している。そして、各短尺ロッド30bの両端の合計4カ所には、走行用のローラ31が取り付けられている。
【0033】
図示するように、本実施の形態において、ローラ31は、ハンマドリル1の移動方向と直交する方向に走行可能に取り付けられている。したがって、ハンマドリル1を削孔対象の構造物Sに向けた状態では、削孔装置Aはローラ31によって構造物Sの壁面と略平行に移動可能になる。
【0034】
支持フレーム20と走行フレーム30との間の4カ所には、コンプレッサ(図示せず)で伸縮駆動されるエアジャッキ(伸縮ジャッキ)40が設けられている。このエアジャッキ40は、上端が走行フレーム30に固定され、下端が支持フレーム20に固定されている。したがって、エアジャッキ40の作動により支持フレーム20と走行フレーム30との間隔が変化するようになっている。具体的には、エアジャッキ40が収縮すると、図5に示すように、支持フレーム20と走行フレーム30との間隔が狭まり、走行フレーム30に設けられたローラ31が接地する。逆に、エアジャッキ40が伸長すると、図6に示すように、支持フレーム20と走行フレーム30との間隔が広がり、支持フレーム20が接地する。
【0035】
なお、本実施の形態では、伸縮ジャッキの一例として、圧縮空気を利用したコンプレッサで伸縮するエアジャッキが用いられているが、油圧で伸縮する油圧ジャッキなどを用いてもよい。
【0036】
ここで、進退部材2により進退移動するハンマドリル1を含むドリルユニットDについて、図7図13を用いて説明する。
【0037】
図7に示すように、ハンマドリル1はドリルユニットDの一構成部材としてユニット化されて削孔装置Aの進退部材2に搭載されている。図7において、主として輪郭で表しているように、ハンマドリル1は、回転式のチェンジレバー(回転+打撃モード・回転モード・打撃モードの切り替えを行うレバー)1bが設けられた本体部1c、ビット1a(図1)などの削孔用アタッチメントが取り付けられるスリーブ1d、作業者がハンマドリル1を保持するためのハンドル1eが設けられている。また、ハンドル1eの内側には、ハンマドリル1に電源を入れるためのトリガ(スイッチ)1fが配置されている。
【0038】
ドリルユニットDには、このようなハンマドリル1に配置されたトリガ1fを操作するための中空構造体(操作部材)50が備えられている。この中空構造体50には、駆動力としてのエアが供給されるコード(図示せず)が着脱可能に接続されており、エアが注入されると膨張してトリガ1fを押圧して電源が入り、エアを抜くと収縮してトリガ1fの押圧が解除されて電源が切れるようになっている。
【0039】
このように、本実施の形態のハンマドリル1は、当該ハンマドリル1に着脱可能に接続された電源ケーブル1gからの給電で動作するケーブル式である。但し、ハンマドリル1に装着されたバッテリで動作する充電式を用いてもよい。なお、充電式を用いれば、後述するドリルユニットDの交換時に電源ケーブル1gの着脱が不要になるので、交換作業をより速やかに行うことができる。
【0040】
また、ドリルユニットDには、略L字形の載置プレート51が備えられており、図示するように、ハンマドリル1が上下反転して(つまり、比較的なだらかな部分を下にして)当該載置プレート51に載置されている。図7図9に示すように、この載置プレート51には、底面プレート部51aの2箇所、および背面プレート部51bの2箇所に、載置されたハンマドリル1が嵌まり込んで横方向への自由な動きを規制する規制突起51cが形成されている。なお、本実施の形態では、ハンマドリル1を載置プレート51に載置しやすくするためにハンマドリル1を上下反転しているが、載置プレート51の形状を変更して、ハンマドリル1を反転することなく載置されるようにしてもよい。
【0041】
さらに、ドリルユニットDには、ハンマドリル1を載置プレート51とで挟み込み、当該ハンマドリル1を載置プレート51に拘束する拘束部材52が備えられている。図8および図9に詳しく示すように、ハンマドリル1を跨いだ形状を呈する拘束部材52の両側が載置プレート51に形成された規制突起51cの両側にねじ結合されることによってハンマドリル1を挟み込み、当該ハンマドリル1を載置プレート51に拘束している。これにより、図7に示すように、ハンマドリル1は載置プレート51によって上下反転した状態で起立する姿勢が維持される。また、ハンマドリル1と拘束部材52との間、およびハンマドリル1と底面プレート部51aに形成された規制突起51cとの間には、拘束に伴いハンマドリル1が傷つくのを防止するための緩衝用ゴム板53が嵌め込まれている。なお、図7において、ハンマドリル1のハンドル1eの下部に設けられた拘束部材52は、トリガ1fを操作する中空構造体50を膨張・収縮可能に保持する機能を兼ねている。
【0042】
図10に示すように、以上のような構成を備えたドリルユニットDが進退部材2に搭載されている。つまり、ハンマドリル1が中空構造体50や載置プレート51や拘束部材52などとともにドリルユニットDとしてユニット化されて進退部材2に搭載されている。したがって、ハンマドリル1の交換作業は、ハンマドリル1のみではなく、ドリルユニットD単位で行われる。
【0043】
さて、図示するように、進退部材2には(詳しくは、進退部材2のスライダ2bには)、搭載されたドリルユニットDを保持するための保持フレーム2fが設けられている。この保持フレーム2fは、ハンマドリル1が載置された載置プレート51に対応した略L字形の形状を呈するとともに、図11および図12に示すように、幅方向の両側には側壁2faが形成されており、ドリルユニットDを嵌め込むようにして保持している。また、保持フレーム2fの後部には、削孔時にハンマドリル1に作用する後退方向への力に抗するための補強板2gが溶接されている。
【0044】
ここで、図8図9図11および図12に示すように、削孔装置Aには、進退部材2に搭載されたドリルユニットDを当該進退部材2に固定するための固定部材54が備えられている。本実施の形態の固定部材54は、フック54aaとレバー54abとの間にスプリング54acが設けられた係止部54aと、フック54aaが係止される(引っ掛けられる)略J字形をした被係止部54bとで構成されている。そして、係止部54aが進退部材2を構成する保持フレーム2fに取り付けられ、被係止部54bがドリルユニットDを構成する拘束部材52に取り付けられている。このような固定部材54において、フック54aaを被係止部54bに係止してレバー54abを倒すと、スプリング54acの引っ張り力で係止部54aと被係止部54bとが締め付けられ、ドリルユニットDが進退部材2に固定される。
【0045】
なお、固定部材54の構造は本実施の形態に限定されるものではなく、ドリルユニットDを進退部材2に固定できる限り、様々な構造のものを採用することができる。また、係止部54aと被係止部54bとの取付位置は保持フレーム2fと拘束部材52とに限定されるものではなく、進退部材2およびドリルユニットDの任意の位置であればよい。
【0046】
図10において、保持フレーム2fの背面プレート部51bに対応した部分は当該背面プレート部51bよりも高くなっており、その上端部には、ケーブルカバー55が開閉可能に取り付けられている。図13に示すように、このケーブルカバー55は、正面視で前後が開口したドーム状になっている。ドリルユニットDを保持フレーム2fに搭載する際に、ケーブルカバー55を開いておいて電源ケーブル1gの余長部分を丸めておいてケーブルカバー55を閉じることで、ハンマドリル1の電源ケーブル1gがケーブルカバー55で覆われて散在が防止される。
【0047】
なお、図10に示すように、ケーブルカバー55と保持フレーム2fとの間にも前述した固定部材54が設けられており、ケーブルカバー55を閉じた状態で当該ケーブルカバー55と保持フレーム2fとが固定されるようになっている。
【0048】
以上の構成を有する削孔装置Aを用いてコンクリート製の構造物Sに孔を開ける場合、先ず、エアジャッキ40を伸長させて支持フレーム20を接地させておき、図7に示すドリルユニットDを図10に示すように進退部材2に搭載する。すなわち、ケーブルカバー55を開いてドリルユニットDを進退部材2の保持フレーム2fに嵌め込み、ドリルユニットDと進退部材2とを固定部材54で固定する。また、ハンマドリル1に電源ケーブル1gを接続し、中空構造体50にコードを接続して、ケーブルカバー55を閉じて固定部材54で固定する。なお、これらの作業を行うときの進退部材2のスライダ2bの位置は、前進端でも後退端でも、あるいはその中間位置でもよい。
【0049】
次に、エアジャッキ40を収縮させてローラ31が接地した状態にするとともに(図5参照)、進退部材2のスライダ2bを後退端にして、削孔装置Aを構造物Sに対して所定位置に移動させる。そして、エアジャッキ40を伸張させて支持フレーム20を接地させ、削孔装置Aをその位置に固定する(図6参照)。
【0050】
続いて、ハンマドリル1が目的とする削孔位置となるように、リフタ10で高さを調整する。具体的には、昇降用モータ13によりテーブル14を昇降させてハンマドリル1の高さを調整する。
【0051】
次に、中空構造体50にエアを注入して膨張させてトリガ1fを押圧し、ハンマドリル1の電源を入れてビット1aを回転させる。そして、スライダ2bでハンマドリル1を前進移動させてビット1aの先端を構造物Sの削孔位置に押し当てて削孔する。すなわち、進退部材2であるドリル進退用モータ2dによりスライダ2bを前進させてハンマドリル1のビット1aの先端を削孔位置に押し当てて削孔を行う。
【0052】
削孔が終わったならば、構造物Sから離間する方向にスライダ2bを移動させてハンマドリル1を後退移動させ、待機位置に戻す。そして、リフタ10でハンマドリル1を昇降させながらハンマドリル1を次の削孔位置に移動させて同様に削孔を行い、以下同様にして上下方向に順次削孔を行う。
【0053】
このようにして上下1列の削孔を行ったならば、エアジャッキ40を収縮させてローラ31を接地させて削孔装置Aを構造物Sに沿って横方向に次の列まで移動させ、目的位置に調整できたならばエアジャッキ40を伸張させて支持フレーム20を接地させ、削孔装置Aを固定して前述と同様の要領で削孔を行う。そして、このような動作を繰り返して削孔を行っていく。
【0054】
ここで、ハンマドリル1である程度の時間(例えば30分程度)連続して削孔を行うと、過熱して動作異常が発生することが懸念される。そこで、所定時間に亘って連続削孔を行ったならば、ハンマドリル1の交換作業が必要になる。このとき、本実施の形態の削孔装置Aでは、ハンマドリル1がドリルユニットDとしてユニット化(中空構造体50などとともにユニット化)されて進退部材2に搭載されているので、交換作業はドリルユニットD単位で行われる。すなわち、中空構造体50内のエアを抜いてトリガ1fの押圧を解除してハンマドリル1の電源を切り、スライダ2bを後退端まで移動する。次に、ケーブルカバー55を開き、ハンマドリル1から電源ケーブル1gを外し、中空構造体50からコードを外して、固定部材54によるドリルユニットDと進退部材2との固定を解除する。そして、ドリルユニットDを進退部材2から取り外し、予め用意しておいた新たなドリルユニットDを、前述した要領で進退部材2に搭載する。
【0055】
このように、本実施の形態の削孔装置Aによれば、ハンマドリル1が、当該ハンマドリル1に配置されたトリガ1fを操作するための中空構造体50とともにドリルユニットDとしてユニット化されている。したがって、連続削孔に伴ってハンマドリル1が発熱した場合、ハンマドリル1をドリルユニットD単位で交換することができる。つまり、ドリルユニットDの交換だけで交換作業が完了する。よって、ハンマドリル1から中空構造体50を取り外した後に当該ハンマドリル1を進退部材2から取り外し、新たなハンマドリル1を進退部材2に搭載してから、取り外しておいた中空構造体50をそのハンマドリル1に装着するという手間のかかる作業が不要になる。
【0056】
これにより、削孔装置Aに装着されたハンマドリル1の交換作業を速やかに行うことが可能になり、作業効率を向上させることができる。
【0057】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0058】
たとえば、本実施の形態では、ドリルユニットDを進退部材2(の保持フレーム2f)に搭載する作業を容易にするために、ハンマドリル1を載置プレート51に載置して拘束部材52で拘束し、起立した姿勢が維持されるようにしているが、載置プレート51に載置せずに、直接進退部材2に搭載するようにしてもよい。つまり、ドリルユニットDは、少なくともハンマドリル1およびトリガ1fを備えていれば足りる。
【0059】
また、本実施の形態では、ドリルユニットDを進退部材2に固定するための固定部材54は、係止部54aが進退部材2を構成する保持フレーム2fに取り付けられ、被係止部54bがハンマドリル1を載置プレート51に構成する拘束部材52に取り付けられているが、両者の取付位置はこれに限定されるものではない。つまり、係止部54aと被係止部54bとの取付位置の関係が逆になっていてもよいのみならず、進退部材2の保持フレーム2f以外の場所、あるいはドリルユニットDの拘束部材52以外の場所に取り付けられていてもよい。さらに、固定部材54の係止部54aと被係止部54bとを進退部材2のドリルユニットDを挟んだ位置に取り付け、固定部材54でドリルユニットDを跨ぐように固定してもよい。さらに、このような固定部材54を備えることなく、ドリルユニットDと進退部材2(のスライダ2b)とが嵌まり合ってロックする機構を設けてもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、ドリルユニットDを進退部材2に装着しやすくするために、ドリルユニットDが嵌め込まれる保持フレーム2fが進退部材2に設けられているが、当該保持フレーム2fは省略してもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、操作部材として、駆動力としてのエアにより膨張・収縮してトリガ1fを操作する中空構造体50が用いられているが、例えば駆動力としての電力により押圧・押圧解除してトリガ1fを操作する電動アクチュエータなど、トリガ1fを操作できる限り様々なものを適用することが可能である。
【0062】
また、本実施の形態において、削孔機としてハンマドリル1が用いられているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば振動ドリルなど、コンクリート製の構造物Sを削孔可能な様々な削孔機を適用することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、スライダ2bに推進力を付与する推力付与部材としてボールねじ2cとドリル進退用モータ2dとが用いられているが、例えば、シリンダ装置を用い、ピストンロッドの伸縮によりスライダ2bに推進力を付与するようにしてもよい。
【0064】
さらに、ローラ31は、本実施の形態のようにハンマドリル1の移動方向と直交する方向ではなく、ハンマドリル1の移動方向に沿った方向に走行可能に取り付けてもよい。また、本実施の形態で用いられたローラ31は、走行方向が固定された固定ローラであるが、走行方向が旋回する自在ローラを用いてもよい。
【0065】
さらに、ローラ31やリフタ10(ハンマドリル1を昇降可能に支持する部材)などを電動にして、遠隔操作で削孔装置Aを目的位置に設置することができるようにしてもよい。
【0066】
さらに、本実施の形態の支持フレーム20は平面視で矩形枠状の形状を呈しているが、接地して削孔装置Aを固定可能であれば、本実施の形態の形状に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上の説明では、本発明の削孔装置を、コンクリート製の既設の構造物に対する増し打ち工法におけるアンカー孔の孔開けに用いられた場合が示されているが、これに限定されるものではなく、コンクリート製の構造物の孔開けに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ハンマドリル(削孔機)
1a ビット
1b チェンジレバー
1c 本体部
1d スリーブ
1e ハンドル
1f トリガ(スイッチ)
1g 電源ケーブル
2 進退部材
2a ガイドレール
2b スライダ
2c ボールねじ
2d ドリル進退用モータ
2e ストッパ
2f 保持フレーム
2fa 側壁
2g 補強板
2p ベースプレート
10 リフタ
11 リフタフレーム
12 本体部
13 昇降用モータ
14 テーブル(昇降部材)
15 スライドガイド
20 支持フレーム
21 ロッド
22 中間ロッド
30 走行フレーム
31 ローラ
40 エアジャッキ(伸縮ジャッキ)
50 中空構造体(操作部材)
51 載置プレート
51a 底面プレート部
51b 背面プレート部
51c 規制突起
52 拘束部材
53 緩衝用ゴム板
54 固定部材
54a 係止部
54aa フック
54ab レバー
54ac スプリング
54b 被係止部
55 ケーブルカバー
A 削孔装置
D ドリルユニット(削孔機ユニット)
S 構造物
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