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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139838
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】減圧乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/04 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
F26B5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040388
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 進太郎
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AC21
3L113AC24
3L113AC46
3L113AC49
3L113AC57
3L113AC67
3L113AC75
3L113AC86
3L113BA32
3L113BA34
3L113CB13
3L113CB16
3L113DA01
3L113DA30
(57)【要約】
【課題】チャンバ部から排出されるエアから効率よく塗布液を回収することができる減圧乾燥装置を提供する。
【解決手段】減圧環境を形成するチャンバ部と、前記チャンバ部内を減圧させる減圧ポンプと、前記減圧ポンプから排出されるエアを冷却することにより、前記エア内の液体を凝縮させつつ冷却後の前記エアを排気流路を通じて排気するコールドトラップと有し、さらに、前記コールドトラップの排気流路には、前記エアの流れを抑制する排気抵抗部が設けられている構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧環境を形成するチャンバ部と、
前記チャンバ部内を減圧させる減圧ポンプと、
前記減圧ポンプから排出されるエアを冷却することにより、前記エア内の液体を凝縮させつつ冷却後の前記エアを排気流路を通じて排気するコールドトラップと、
を備えることを特徴とする減圧乾燥装置。
【請求項2】
前記コールドトラップの排気流路には、前記エアの流れを抑制する排気抵抗部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の減圧乾燥装置。
【請求項3】
前記排気抵抗部は、前記排気流路のみの場合に比べて前記コールドトラップの圧力を増加させるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の減圧乾燥装置。
【請求項4】
前記排気抵抗部は、前記排気流路に比べて、流路断面積が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の減圧乾燥装置。
【請求項5】
前記排気抵抗部は、流路断面積を調節するバルブによって形成されていることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の減圧乾燥装置。
【請求項6】
前記排気抵抗部は、前記エアの流れを抑制する障壁部を有しており、この障壁部により前記排気流路内を流れる前記エアの流れ方向が変更されることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の減圧乾燥装置。
【請求項7】
前記排気抵抗部は、前記障壁部を複数有しており、前記障壁部には、前記排気流路に比べて流路断面積が小さい挿通孔が形成されており、それぞれの障壁部に形成された挿通孔が前記障壁部の配列方向を軸とした軸周りに変位した状態で配置されるように前記障壁部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の減圧乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ内の圧力を減圧させることにより乾燥させる減圧乾燥装置に関するものであり、特に、チャンバから排出されるエア内の液体を効率よく回収することができる減圧乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラスやフィルム等の回路基材上に線分、矩形状等、様々な形状の塗布膜(膜パターン)が形成されている。基板上の塗布膜は、インクジェット等の塗布装置により形成され、その後、減圧乾燥装置により塗布膜を乾燥させることにより形成される。
【0003】
減圧乾燥装置は、チャンバ部の基板収容部に基板が収容された状態で、基板収容部を減圧させることにより基板上の塗布膜を乾燥させるようになっている(下記特許文献1参照)。具体的には、図6に示すように、減圧乾燥装置100は、基板Wを収容し減圧環境を形成するチャンバ部101と、チャンバ部101内を減圧させる減圧ポンプ102(真空ポンプともいう)と、を有しており、減圧ポンプ102によりチャンバ部101が排気されることにより、チャンバ部101が減圧環境に形成される。そして、チャンバ部101に収容される基板Wが減圧環境に曝されることにより、基板W上に形成された塗布膜の溶媒成分が蒸発することにより塗布膜を乾燥させることができる。
【0004】
また、チャンバ部101と減圧ポンプ102との間には、コールドトラップ103が設けられており、チャンバ部101から排出されたエアがコールドトラップ103により冷却される。すなわち、チャンバ部101から排気されるエアには塗布液(実際には塗布液の溶媒。以下、単に塗布液と称す。)が含まれており、このエアが冷却されることにより、エア内に含まれる塗布液が凝縮され、コールドトラップ103の底面部に一時的に貯留される。そして、貯留された塗布液が一定量に達するとコールドトラップ103から回収され再利用されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-158157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年では、塗布液のコストが増大しており、エアに含まれる塗布液の回収も効率よく行いたいという要望がある。コールドトラップ103で凝縮により回収できる塗布液は、減圧ポンプ102の吸引状態に依存するため、コールドトラップ103のみで回収率を向上させるのは困難であるという問題があった。すなわち、減圧ポンプ102の吸引によってコールドトラップ103に入ったエアは、減圧ポンプ102が吸引し続けることにより、コールドトラップ103で滞留することなく吸引され、排出される。そして、減圧ポンプ102の運転は、チャンバ部101の圧力コントロールによって決定されているため、塗布液回収のために減圧ポンプ102の運転状態を変更することは容易にはできない。したがって、エアに含まれる塗布液の回収効率を上げることは非常に困難であるという問題があった。
【0007】
本発明では、上記問題点に鑑みてなされたものであり、チャンバ部から排出されるエアから効率よく塗布液を回収することができる減圧乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の減圧乾燥装置は、減圧環境を形成するチャンバ部と、前記チャンバ部内を減圧させる減圧ポンプと、前記減圧ポンプから排出されるエアを冷却することにより、前記エア内の液体を凝縮させつつ冷却後の前記エアを排気流路を通じて排気するコールドトラップと、を備えることを特徴としている。
上記減圧乾燥装置によれば、チャンバ部、減圧ポンプ、コールドトラップの順に配列され、コールドトラップが減圧ポンプから排出されるエアを冷却する構成であるため、減圧ポンプから直接チャンバ部の圧力コントロールを行うことができる。すなわち、減圧ポンプの運転への影響を極力少なくすることができるため、コールドトラップでガスを滞留させることが可能になる。これにより、チャンバ部から排出されるエアから効率よく塗布液を回収することができる。
【0009】
具体的なコールドトラップにガスを滞留させる様態としては、前記コールドトラップの排気流路には、前記エアの流れを抑制する排気抵抗部が設けられている構成にしてもよい。
【0010】
この構成によれば、コールドトラップの排気流路に排気抵抗部が設けられているため、排気流路から排気されるエアの流れが妨げられる。すなわち、熱交換機内でエアを滞留させることにより、エアが冷却されて凝縮される時間を稼ぐことができるため、コールドトラップにおける塗布液の回収効率を向上させることができる。
【0011】
すなわち、前記排気抵抗部は、前記排気流路のみの場合に比べて前記コールドトラップの圧力を増加させるように形成されている構成により、排気流路のみの場合に比べて、コールドトラップでエアを滞留させることができるため、エアの凝縮が進み、回収できる塗布液の量を増やすことができる。
【0012】
また、前記排気抵抗部は、前記排気流路に比べて、流路断面積が小さくなるように形成されている構成にすることができる。
【0013】
この構成によれば、排気流路のみの場合に比べて排気流路を通るエアの流れが抑制されるため、コールドトラップでエアを滞留させることができる。
【0014】
また、前記排気抵抗部は、流路断面積を調節するバルブによって形成されている構成にしてもよい。
【0015】
この構成によれば、バルブにより流路断面積が排気流路に比べて小さくなるように調節することにより、エアの流れを抑制することができコールドトラップでエアを滞留させることができる。
【0016】
また、前記排気抵抗部は、前記エアの流れを抑制する障壁部を有しており、この障壁部により前記排気流路内を流れる前記エアの流れ方向が変更される構成にしてもよい。
【0017】
この構成によれば、排気流路を流れるエアが障壁部に衝突することによりエアの流れ方向が変更され、エアの流れが抑制される。この構成であっても排気流路のみの場合に比べてコールドトラップでエアを滞留させることができる。
【0018】
また、前記排気抵抗部は、前記障壁部を複数有しており、前記障壁部には、前記排気流路に比べて流路断面積が小さい挿通孔が形成されており、それぞれの障壁部に形成された挿通孔が前記障壁部の配列方向を軸とした軸周りに変位した状態で配置されるように前記障壁部が設けられている構成してもよい。
【0019】
この構成によれば、障壁部に設けられた挿通孔が、障壁部の配列方向に見た場合に、位相差を有するように設けられているため、一の障壁部の挿通孔を通過したエアは、次の障壁部に衝突して流れの向きを変えられ、その障壁部の挿通孔を通過するようにして、複数の障壁部を通過する。これにより、エアの流れが抑制されるため、排気流路のみの場合に比べてコールドトラップでエアを滞留させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の減圧乾燥装置によれば、チャンバ部から排出されるエアから効率よく塗布液を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態における減圧乾燥装置のチャンバ蓋部とチャンバ本体が閉じた状態を示す図である。
図2】上記減圧乾燥装置のチャンバ蓋部とチャンバ本体が離間した状態を示す図である。
図3】上記実施形態におけるコールドトラップを示す図である。
図4】上記実施形態における排気抵抗部を示す図であり、(a)は、ケース本体部の内部を示す図、(b)は障壁部を示す図である。
図5】他の実施形態における排気抵抗部を示す図であり、(a)は挿通孔が傾斜して形成された状態を示す図であり、(b)は、障壁部の一部に隙間を形成した状態を示す図である。
図6】従来の減圧乾燥装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る実施の形態について図面を用いて説明する。
【0023】
図1図2は、本発明の一実施形態における減圧乾燥装置を概略的に示す図であり、図1は、減圧乾燥装置のチャンバ蓋部10とチャンバ本体20が閉じた状態を示す図であり、図2はチャンバ蓋部10とチャンバ本体20が離間した状態を示す図である。
【0024】
図1図2に示すように、減圧乾燥装置は、基板W上に塗布して形成された塗布膜を乾燥させるものであり、基板Wを収容するチャンバ部2と、このチャンバ部2を減圧させる吸引減圧部3とを備えている。そして、チャンバ部2に基板Wを収容した状態でチャンバ部2内を減圧環境に維持することにより基板W上に形成された塗布膜を乾燥できるようになっている。
【0025】
なお、以下の説明では、図1図2における紙面上側を減圧乾燥装置の上方、図1図2における紙面下側を減圧乾燥装置の下方として説明を進めることとする。
【0026】
チャンバ部2は、チャンバ本体20とチャンバ蓋部10とを備えている。チャンバ蓋部10は、チャンバ本体20に対して開閉できるように形成されており、チャンバ蓋部10が閉状態では、図1に示すように、チャンバ蓋部10とチャンバ本体20とで基板Wを収容する基板収容部30が形成されるようになっている。
【0027】
チャンバ本体20は、塗布膜が形成された基板Wを保持するものである。チャンバ本体20は、上面が開放された箱状部材であり、チャンバ本体20内に基板Wを保持することができる。具体的には、チャンバ本体20は、平板形状のプレート部22を有しており、このプレート部22上に基板Wを載置することができる。すなわち、プレート部22には、複数のピン孔が形成されており、このピン孔からリフトピン23が突出するようになっている。そして、この突出した複数のリフトピン23の先端部分に基板Wが載置されることにより基板Wが保持されるようになっている。
【0028】
具体的には、プレート部22には、ピン孔に対応する位置にピン収容孔が形成されており、このピン収容孔にリフトピン23が埋設されている。このリフトピン23は、プレート部22の下側に設けられた駆動装置(不図示)と接続されており、この駆動装置を駆動させることにより、リフトピン23が昇降動作するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。本実施形態では、リフトピン23が基部21内に収容される収容位置と、プレート部22から突出し基板Wの受渡しを行う基板受渡位置(図2参照)と、乾燥工程を行う乾燥位置(図1参照)とに停止できるように設定されている。そして、リフトピン23が基板受渡位置に位置した状態で基板Wがリフトピン23の先端部分に載置されると、リフトピン23を所定量だけ下降させて基板Wが乾燥位置に位置した状態で保持される。なお、このピン収容孔にはシールが設けられており、リフトピン23が突出した状態であってもピン収容孔から基板収容部30の大気の漏れを防止できるようになっている。
【0029】
また、チャンバ蓋部10は、チャンバ本体20とともにチャンバ部2内に基板収容部30を形成するものである。チャンバ蓋部10は、チャンバ本体20に対して開閉できるようになっており、チャンバ蓋部10がチャンバ本体20に対して、昇降動作可能に形成されている。すなわち、チャンバ蓋部10がチャンバ本体20に対して上昇することによって開状態が形成され、チャンバ蓋部10がチャンバ本体20に対して下降し当接することによって閉状態が形成される。このチャンバ蓋部10は、チャンバ本体20に保持された基板Wを覆う形状を有しており、チャンバ本体20と対面する平板状の平板部11と、この平板部11の外周縁からチャンバ本体20側に突出し、保持された基板Wを囲む形状を有する側壁部12とを有している。すなわち、チャンバ蓋部10がチャンバ本体20に当接した状態では、チャンバ蓋部10の側壁部12がチャンバ本体20に当接することにより、基板Wを収容可能な基板収容部30が形成されるようになっている。
【0030】
チャンバ蓋部10の平板部11の基板収容部30側は、平滑な平坦状に形成されている。すなわち、基板収容部30を吸引した際に発生する気流(大気の流れ)が妨げられないように形成されている。また、基板収容部30側の裏面側には、リブ(不図示)が取付けられており、基板収容部30が減圧された場合に平板部11が変形するのを防止できるようになっている。これにより、基板収容部30内の大気が吸引されて基板収容部30内が減圧された場合であっても、平板部11の基板収容部30側が平坦度を維持することができ、基板収容部30の気流の乱れによって生じる乾燥ムラの発生を抑えることができるようになっている。
【0031】
また、側壁部12の基板収容部30側は、平板部11と同様に平滑な平坦状に形成されており、基板収容部30の大気の流れが妨げられないように形成されている。また、側壁部12には、チャンバ本体20の基部21と当接する面にシール部材13が設けられている。このシール部材13は、保持された基板Wを囲むように環状に形成されている。したがって、チャンバ蓋部10を下降させてチャンバ本体20に当接させた場合に、シール部材13がチャンバ本体20に当接して押圧されることにより、基板収容部30が密封状態にすることができる。
【0032】
また、チャンバ部2には、吸引減圧部3が設けられており、吸引減圧部3により基板収容部30を減圧させることができる。吸引減圧部3は、吸引力を発生させる減圧ポンプ31(真空ポンプ31ともいう)と、この減圧ポンプ31と基板収容部30とを連結する吸引配管32とを有している。すなわち、吸引配管32が基板収容部30に接続されており、減圧ポンプ31を作動させると吸引配管32を通じて、基板収容部30が吸引される。これにより基板収容部30は、大気圧よりも小さい所定の圧力に減圧されるようになっている。
【0033】
また、吸引配管32には、コールドトラップ4が設けられている。図1の例では、減圧ポンプ31の下流側に設けられており、チャンバ部2、減圧ポンプ31、コールドトラップ4がこの順で並ぶように配置されている。このコールドトラップ4は、チャンバ部2から減圧ポンプ31によって排出されるエアを冷却し、エア内の液体(塗布液の溶媒。以下、単に塗布液とも言う。)を凝縮させて、エア中の塗布液を回収するためのものである。
【0034】
コールドトラップ4は、図3に示すように、密閉構造のコールドトラップ本体41と、熱交換の対象となる気体を取り込む取込ポート42と、熱交換後の気体を排気する排気ポート43とを有しており、対象となる気体を取り込んでコールドトラップ本体41で冷却(熱交換)した後、冷却後の気体を排気ポート43から排気できるようになっている。本実施形態では、取込ポート42に冷却配管62が接続されており、排気ポート43に排気配管33が接続されている。したがって、減圧ポンプ31から排出されたエアが取込ポート42から取り込まれてコールドトラップ本体41で冷却(熱交換)される。そして、さらに取込ポート42からエアが取り込まれることにより、冷却後のエアが排気ポート43から排気配管33を通じて排気されるようになっている。なお、排気ポート43及び排気配管33は、排気流路5であり、コールドトラップ本体41に備えられた排気ポート43と、この排気ポート43とほぼ同じ開口寸法(流路断面積)を有する汎用性のある配管(排気配管33)が本発明の排気流路5である。
【0035】
コールドトラップ本体41は、気体を一時的に貯留できるケーシング部である。図3の例では、容積が小さい上側部分41aと、上側部分41aよりも容積が大きい下側部分41bで形成されており、上側部分41aと下側部分41bとが連通して一体的に形成されている。すなわち、下側部分41bには、取込ポート42が設けられており、この取込ポート42を通じて流入したエアは、下側部分41b及び上側部分41aに収容される。すなわち、取り込まれたエアは、コールドトラップ本体41全体に広がった状態で収容されるようになっている。
【0036】
また、コールドトラップ本体41内には、熱交換器6が収容されている。本実施形態では、熱交換器6は、複数の冷却配管62を有しており、これらの冷却配管62に冷媒が流れることによりコールドトラップ本体41内の気体を冷却することができるようになっている。具体的には、コールドトラップ本体41の上側部分41aには、チラー61と接続される流入口44と流出口45とが設けられており、これらが複数の冷却配管62と接続されている。すなわち、チラー61により冷却された冷媒が流入口44から流入されると、その冷媒が複数の冷却配管62内を一方向に流れることによりコールドトラップ本体41内のエアの熱を吸収し、すべての冷却配管62内を流れた後、流出口45から排出される。そして、排出された冷媒は、チラー61により再度冷却される。したがって、取込ポート42を通じて流入されたエアは、冷却配管62に接触することにより、チラー61により冷却された冷媒を通して熱交換が行われる。
【0037】
また、コールドトラップ本体41には、エアに含まれた液体(塗布膜から蒸発した塗布液)を回収するトレイ7が設けられている。図3の例では、コールドトラップ本体41の底面部に配置されている。これにより、エアに含まれた塗布液を回収できるようになっている。すなわち、冷却配管62に触れたエアは、冷却されることによりエア内に含まれる塗布液が凝縮されることにより、液滴状の塗布液が冷却配管62に析出する。そして、時間の経過により液滴状の塗布液が合体しつつ落下し、トレイ7内に塗布液として溜められる。トレイ7には、排出口71が設けられており、トレイ7内に貯留された塗布液は、所定時間経過すると排出口71から回収されるようになっている。
【0038】
また、コールドトラップ本体41の上側部分41aには、コールドトラップ本体41内のエアを排気する排気ポート43が設けられており、排気配管33と接続されている。すなわち、コールドトラップ本体41内で滞留しているエアは、減圧ポンプ31からエアが排出されることにより継続的に取込ポート42を通じてコールドトラップ本体41に供給されるため、コールドトラップ本体41内に滞留しているエアが押し出され、排気ポート43を通じて排気される。そして、本実施形態では、排気ポート43と排気配管33とは、流路断面積がほぼ同じ大きさで形成されているため、コールドトラップ本体41から排出されたエアは、排気ポート43及び排気配管33を通じてスムーズに排気されるようになっている。
【0039】
また、排気配管33(排気流路5)には、排気抵抗部8が設けられている。排気抵抗部8は、排気流路5のエアの流れを抑制するためのものである。すなわち、排気流路5のみ(例えば、排気ポート43のみ、又は、排気ポート43と排気配管33のみ)の場合に比べて、エアが流れにくくするものであり、その結果、コールドトラップ本体41の圧力が増加し、排気流路5のみの場合に比べて、コールドトラップ本体41内にエアを長い時間滞留させることができる。
【0040】
本実施形態では、図4(a)に示すように、排気抵抗部8は、ケース本体部81と、このケース本体部81内に配置される障壁部82によって形成されている。具体的には、ケース本体部81は、円筒形状に形成されており、軸方向(長手方向)両端部には、排気配管33と接続されるインポート部83と、インポート部83の反対側にアウトポート部84とを有している。すなわち、インポート部83から取り込まれたエアをアウトポート部84から排出されるようになっている。なお、インポート部83とアウトポート部84は、その流路断面積が排気配管33とほぼ同じ大きさに形成されており、排気配管33を流れるエアは、インポート部83で実質的に抵抗を受けることなくケース本体部81に取り込まれ、アウトポート部84から実質的に抵抗を受けることなく排出されるようになっている。
【0041】
このケース本体部81は、インポート部83から供給されたエアの流れを抑制するためのものである。すなわち、ケース本体部81には、複数の障壁部82が設けられており、この障壁部82によりエアの流れが妨げられるようになっている。障壁部82は、図4(a)、図4(b)に示すように、円盤形状の板状部材であり、ケース本体部81内に厚み方向が軸方向(長手方向)と一致するように配置されている。図4(a)に示す例では、3つの障壁部82がケース本体部81内にほぼ等間隔に配置されている。すなわち、障壁部82は、ケース本体部81内では、ケース本体部81の内壁と障壁部82の外径部分とによって、ほぼ隙間が形成されることなくエアの流れを遮るように設けられている。
【0042】
また、障壁部82には、厚さ方向に貫通する挿通孔82aが2カ所形成されており、この挿通孔82aをエアが通過できるように形成されている。本実施形態では、挿通孔82aが180度方向に対抗する位置に配置されている(図4(b)において実線の挿通孔82a)。この挿通孔82aは、その断面積が排気流路5(排気ポート43及び排気配管33)の流路断面積より小さくなるように形成されている。すなわち、挿通孔82aは、排気流路5に比べてエアが流れにくくなるように形成されている。
【0043】
また、3つの障壁部82は、それぞれの隣り合う障壁部82の挿通孔82aが一方向(障壁部82の配列方向)に整列するのを避けるように配置されている。本実施形態では、図4(b)に示すように、3つの障壁部82は、その挿通孔82aが60度ずつずれた状態になるように配置されている。すなわち、図4(a)に示すように、インポート部83に最も近い障壁部82は、挿通孔82aが上下方向に対して右回りに60度傾斜した位置(図4(b)の破線で示す挿通孔82a)になるように配置されている。そして、次の障壁部82は、挿通孔82aが上下方向に一致する位置(図4(b)の実線で示す挿通孔82a)になるように配置されている。そして、次の障壁部82は、挿通孔82aが上下方向に対して左回りに60度傾斜した位置(図4(b)の2点鎖線で示す挿通孔82a)になるように配置されている。これにより、インポート部83から供給されたエアは、各挿通孔82aを通過するために軸方向に沿う一直線状に流れることができず、それぞれの挿通孔82aを経由しながら流れることになる。これにより、排気流路5のみの場合に比べて、エアの流れを抑制することができ、エアをコールドトラップ4内で排気流路5のみの場合よりも長い間、滞留させることができる。したがって、コールドトラップ4の排気流路5に排気抵抗部8を設けることにより、コールドトラップ4内でエアを滞留させることにより、より多くの塗布液を回収することができる。
【0044】
このように、上記実施形態における減圧乾燥装置によれば、チャンバ部2、減圧ポンプ31、コールドトラップ4の順に配列され、コールドトラップ4が減圧ポンプ31から排出されるエアを冷却する構成であるため、減圧ポンプ31から直接チャンバ部2の圧力コントロールを行うことができる。そして、コールドトラップ4の排気流路5に排気抵抗部8が設けられているため、排気流路5から排気されるエアの流れが妨げられる。すなわち、熱交換機内でエアを滞留させることにより、エアが冷却されて凝縮される時間を稼ぐことができるため、コールドトラップ4における塗布液の回収効率を向上させることができる。
【0045】
また、上記実施形態では、挿通孔82aが障壁部82の厚み方向に貫通する例について説明したが、厚み方向に対して傾斜する方向に貫通するものであってもよい。具体的には、図5(a)に示すように、障壁部82の厚み方向と所定角度を有する方向に貫通させることにより、エアの流れが挿通孔82aによって変更されるため、エアの流れを妨げることができる。なお、この場合、挿通孔82aの開口部分が、一方向に整列され、隣り合う障壁部82同士で対向する位置に配置されていても、挿通孔82aが傾斜されていることにより、エアの流れを抑制することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、障壁部82に挿通孔82aを2カ所設ける例について説明したが、多数の挿通孔82aを設けてもよく、1カ所のみ設けるものであってもよい。そして、各挿通孔82aが障壁部82の配列方向に並ぶのを避けるようにすることがエアの流れを抑制できる点で有効である。
【0047】
また、上記実施形態では、排気抵抗部8の障壁部82が3つ設ける例について説明したが、4つ以上設けてもよく、1つ、又は、2つ設けるものであってもよい。挿通孔82aが障壁部82の配列方向に並ぶのを避けるようにすれば、複数設けた方がエアの流れを効果的に抑制することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、排気抵抗部8の障壁部82に挿通孔82aを設ける例について説明したが、図5(b)に示すように、障壁部82の一部に隙間82bを形成するものであってもよい。すなわち、その隙間82bが排気流路5に比べて流路断面積が小さくなるように形成されることにより、挿通孔82aと同様の機能を果たすことができる。また、障壁部82を複数設けた場合には、その隙間82bが障壁部82の配列方向に並ぶのを避けるように形成されることにより、エアの流れ方向が変更され、エアの流れを効果的に抑制できる点で好ましい。
【0049】
また、上記実施形態では、排気抵抗部8に障壁部82を設ける例について説明したが、排気抵抗部8をバルブとしたものであってもよい。すなわち、排気配管33にバルブを取付け、このバルブの開口状態を排気流路5の流路断面積より小さく調節されているものであってもよい。この構成であっても排気流路5のみの場合に比べてエアの流れを抑制することができる。
【0050】
また上記実施形態では、排気抵抗部8内に排気流路5に比べて流路断面積の小さいものを形成する例について説明したが、排気抵抗部8自体の流路断面積が排気流路5に比べて小さく形成されているもの、あるいは排気抵抗部8の流路全体がエアの流れの抵抗となるように形成されているものであってもよい。例えば、排気抵抗部8が排気流路5に比べて流路断面積の小さい配管である場合、また、排気抵抗部8が配管であって、屈曲部分が形成されており、その屈曲部分がエアの流れの抵抗となり、エアの流れを抑制するものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
2 チャンバ部
4 コールドトラップ
5 排気流路
8 排気抵抗部
31 減圧ポンプ
82 障壁部
82a 挿通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6