(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139853
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23N 1/02 20060101AFI20220915BHJP
F24H 15/212 20220101ALI20220915BHJP
【FI】
F23N1/02 101
F24H1/10 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040410
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 政宏
【テーマコード(参考)】
3K003
3L034
【Fターム(参考)】
3K003AB01
3K003AB06
3K003CA04
3K003CB03
3K003DA03
3L034CA04
(57)【要約】
【課題】能力を段階的に切換可能な燃焼装置において、送風ファンの回転数上昇を抑制した上で燃焼装置の発生熱量を連続的に制御する。
【解決手段】
能力切換弁35a~35cの開閉によって、送風ファン40の下限回転数及び上限回転における燃焼機構20の発生熱量範囲、即ち、加熱能力がそれぞれ異なる複数の能力段が切換えられる。燃焼機構20への要求発生熱量が、2つの能力段の間の範囲のときには、加熱能力が高い方の能力段の最小発生熱量での燃焼機構20の燃焼期間と、燃焼機構20の燃焼停止期間とが繰り返される間欠燃焼が適用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要求発生熱量に応じて発生熱量を制御する燃焼装置であって、
燃料の燃焼によって熱量を発生する燃焼機構と、
制御下限値から制御上限値までの範囲内で回転数が制御されて、当該回転数に従った空気量を前記燃焼機構に対して供給する送風ファンと、
前記送風ファンが前記制御下限値及び前記制御上限値に制御された下で連続燃焼が適用されたときの前記燃焼機構の発生熱量範囲が異なる複数の能力段を切替えるための能力切換機構と、
前記燃焼機構、前記能力切換機構、及び、前記送風ファンの動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記要求発生熱量に応じて前記複数の能力段のうちの1つの能力段を選択するとともに、選択された当該1つの能力段において前記要求発生熱量に従って前記送風ファンの回転数を制御し、
前記複数の能力段は、
前記発生熱量範囲の最小値である最小発生熱量が最も低い第1の能力段と、
前記第1の能力段よりも前記最小発生熱量が高い、少なくとも1個の第2の能力段とを有し、
前記制御部は、前記要求発生熱量が前記第2の能力段の前記最小発生熱量よりも低い領域の一部において、前記第2の能力段を選択するとともに、前記燃焼機構の燃焼期間および燃焼停止期間が繰り返し設けられる間欠燃焼を適用して、前記要求発生熱量を前記燃焼機構が出力する様に、前記燃焼機構、前記能力切換機構、及び、送風ファンを動作させる、燃焼装置。
【請求項2】
前記間欠燃焼における前記燃焼期間および前記燃焼停止期間の期間長の和に対する前記燃焼期間の期間長の比は、前記第2の能力段の前記最小発生熱量に対する前記要求発生熱量の比に従って制御される、請求項1記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の能力段の各々において、前記要求発生熱量に比例させて前記送風ファンの回転数を制御し、かつ、
前記制御部は、前記複数の能力段のうちの前記発生熱量範囲が最も高熱量側である能力段において、前記送風ファンの回転数が予め定められた作動制限値に達するときの制限熱量よりも前記要求発生熱量が高いときに、前記燃焼機構の発生熱量を当該制限熱量に制限する、請求項1又は2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記複数の能力段は、前記最小発生熱量、及び、前記発生熱量範囲の最大値である最大発生熱量がそれぞれ異なり、かつ、前記複数の能力段のうちの加熱能力の順番が隣り合う2個の能力段の間で、当該2個の能力段のうちの加熱能力が低い一方の能力段の前記最大発生熱量が、当該2個の能力段のうちの加熱能力が高い他方の能力段の前記最小発生熱量よりも高くなる様に設けられ、
前記制御部は、前記要求発生熱量が前記他方の能力段の前記最小発生熱量よりも低い領域の一部において、前記他方の能力段を選択するとともに、前記燃焼機構の燃焼期間および燃焼停止期間が繰り返し設けられる間欠燃焼を適用して、前記要求発生熱量を前記燃焼機構が出力する様に、前記燃焼機構、前記能力切換機構、及び、送風ファンを動作させる、請求項1又は2に記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の能力段の各々において、前記要求発生熱量に比例させて前記送風ファンの回転数を制御し、かつ、
前記要求発生熱量が前記他方の能力段の前記最小発生熱量よりも低い領域のうちの、前記一方の能力段による前記連続燃焼の適用時に前記送風ファンの回転数が予め定められた作動制限値よりも高く制御される領域において、前記他方の能力段を選択した前記間欠燃焼を適用する、請求項4記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数の能力段のうちの前記発生熱量範囲が最も高熱量側の能力段において、前記送風ファンの回転数が予め定められた作動制限値に達するときの制限熱量よりも前記要求発生熱量が高いときに、前記燃焼機構の発生熱量を当該制限熱量に制限する、請求項5記載の燃焼装置。
【請求項7】
前記発生熱量範囲が最も高熱量側の能力段において、前記要求発生熱量が前記制限熱量よりも高いときに、前記燃焼機構の発生熱量を前記制限熱量に制限するモードと、当該制限を行わずに前記要求発生熱量に従って前記燃焼機構の発生熱量を制御するモードとを、第1のモード設定入力に応じて選択する、請求項3又は6に記載の燃焼装置。
【請求項8】
前記複数の能力段の各々において前記連続燃焼のみが適用される運転モードを更に有し、
当該運転モードでは、前記要求発生熱量が、前記一方の能力段の前記最大発生熱量及び前記他方の能力段の前記最小発生熱量の間の範囲であるときに、前記一方の能力段及び前記他方の能力段が切換えられ、
前記制御部は、第2のモード設定入力に応じて当該運転モードを適用する、請求項4~6のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項9】
前記燃焼装置は、室内設置型の給湯装置に搭載される、請求項1~8のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項10】
前記燃焼機構は、前記燃料を燃焼するための複数のバーナを有し、
前記能力切換機構は、前記複数のバーナのうちの、前記燃料が供給される燃焼バーナの本数を前記複数の能力段の選択に応じて切換える様に構成され、
前記第2の能力段における前記燃焼バーナの本数は、前記第1の能力段における前記燃焼バーナの本数よりも多い、請求項1~9のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置に関し、より特定的には、加熱能力を段階的に切換可能な機構を有する燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
要求発生熱量によって燃焼機構の発生熱量が制御される燃焼装置が、例えば、特開2018-100810号公報(特許文献1)に記載される。特許文献1には、燃焼機構を構成する複数のバーナのうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数を能力切換弁の開閉制御によって段階的に制御する構成が記載されている。特許文献1の燃焼装置では、要求発生熱量に対応させて、能力切換弁の開閉パターン及びガス流量(比例弁の開度)の組み合わせが予め規定されることが記載されている。
【0003】
更に、特許文献1には、燃焼装置の発生熱量範囲の下限を拡大するために間欠燃焼運転が適用されること、及び、機器の耐久性低下を抑制するための間欠燃焼運転の制御態様が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の燃焼装置では、燃料ガスが供給されるバーナ本数(以下、燃焼バーナ本数)が同一である下では、比例弁開度の増加により燃料ガス流量を増加させることで、発生熱量を増加することができる。そして、当該燃焼バーナ本数下での燃料流量が最大(比例弁最大開度)の状態から、更に発生熱量を増加する場合には、能力切換弁の制御によって、燃焼バーナ本数の増加が必要になる。従って、加熱能力を段階的に切換可能な燃焼装置では、要求発生熱量の上昇に対応して燃焼装置の発生熱量を連続的に制御する際には、燃焼バーナ本数の増加、及び、燃料流量の増加を組み合わせて対応することができる。
【0006】
尚、バーナでは燃料及び空気の混合気が燃焼されるので、当該燃焼バーナ本数が同一の下での燃料流量を増加させる際には、これに比例して、燃焼用空気を増加するために送風用ファンの回転数を上昇させることが必要である。
【0007】
一方で、送風用ファンの作動音は、回転数の上昇に応じて増大するので、燃焼装置の配置態様によっては、作動音の増大が問題視されることが懸念される。代表的には、厨房の流し台やコンロの上方等の室内に燃焼装置が配置される場合に、この様な制御のニーズが高くなる。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、加熱能力を段階的に切換可能な燃焼装置において、送風ファンの回転数上昇を抑制した上で、燃焼装置の発生熱量を連続的に制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面では、要求発生熱量に応じて発生熱量を制御する燃焼装置が提供される。燃焼装置は、燃料の燃焼によって熱量を発生する燃焼機構と、送風ファンと、能力切換機構と、燃焼機構、能力切換機構、及び、送風ファンの動作を制御する制御部とを備える。送風ファンは、制御下限値から制御上限値までの範囲内で回転数が制御されて、当該回転数に従った空気量を燃焼機構に対して供給する。能力切換機構は、送風ファンが制御下限値及び制御上限値に制御された下で連続燃焼が適用されたときの燃焼機構の発生熱量範囲が異なる複数の能力段を切替える様に構成される。制御部は、要求発生熱量に応じて複数の能力段のうちの1つの能力段を選択するとともに、選択された当該1つの能力段において要求発生熱量に従って送風ファンの回転数を制御する。複数の能力段は、発生熱量範囲の最小値である最小発生熱量が最も低い第1の能力段と、少なくとも1個の第2の能力段とを有する。第2の能力段の最小発生熱量は、第1の能力段の最小発生熱量よりも高い。制御部は、要求発生熱量が第2の能力段の最小発生熱量よりも低い領域の一部において、第2の能力段を選択するとともに、燃焼機構の燃焼期間および燃焼停止期間が繰り返し設けられる間欠燃焼を適用して、要求発生熱量を燃焼機構が出力する様に、燃焼機構、能力切換機構、及び、送風ファンを動作させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、間欠燃焼が適用される領域では、送風ファンの回転数を連続燃焼の適用時よりも低下させて要求発生熱量を燃焼機構から出力することができる。従って、加熱能力を段階的に切換可能な燃焼装置において、間欠燃焼の適用を伴って複数の能力段の間の切換を実行することで、送風ファンの回転数上昇を抑制した上で、燃焼装置の発生熱量を連続的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る燃焼装置の適用例として示される給湯装置の概略構成図である。
【
図2】燃焼機構の燃焼制御を説明する機能ブロック図である。
【
図3】連続燃焼及び間欠燃焼を説明する概念的な波形図である。
【
図4】比較例に係る能力段及びファン回転数指令の設定を説明する概念図である。
【
図5】能力段の切替に伴う燃焼態様の変化を説明する概念図である。
【
図6】本実施の形態に係る能力段及びファン回転数指令の設定を説明する概念図である。
【
図7】本実施の形態に係る燃焼制御を説明するフローチャートである。
【
図8】本実施の形態に係る燃焼装置での静音運転モードの運用例を説明するフローチャートである。
【
図9】本実施の形態に係る燃焼装置での静音運転モードの変形例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
(燃焼装置及び給湯装置の構成)
図1には、本発明の実施の形態に従う燃焼装置が搭載された給湯装置の概略構成図が示される。
【0014】
図1を参照して、給湯装置100は、熱交換器10および燃焼機構20等が格納された燃焼缶体(以下、単に「缶体」とも称する)5と、送風ファン40と、入水管50と、缶体配管55と、バイパス管60と、出湯管70と、バイパス弁80と、コントローラ300とを備える。本実施の形態では、燃焼機構20は、複数本のバーナ30を含んで構成される。
【0015】
入水管50は、バイパス弁80を経由して、缶体配管55およびバイパス管60と接続される。入水管50には、水道水等の低温水が供給される。入水管50の低温水は、バイパス弁80を経由して、缶体配管55およびバイパス管60へ分配される。
【0016】
缶体配管55は、熱交換器10に接続される。熱交換器10は、一次熱交換器11および二次熱交換器12を有する。入水管50から缶体配管55へ導入された低温水は、バーナ30の発生熱量により、熱交換器10を通過することによって加熱される。
【0017】
バーナ30へのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33および、能力切換弁35a~35cが配置される。元ガス電磁弁32は、バーナ30への燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。
【0018】
能力切換弁35a~35cは、燃焼機構20を構成するバーナ30のうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数を切換えるために開閉制御される。
図1の構成例では、10本のバーナ30のうち、能力切換弁35aの開放により5本のバーナ30に対して燃料が供給され、能力切換弁35bの開放により2本のバーナ30に対して燃料が供給され、能力切換弁35cの開放により3本のバーナ30に対して燃料が供給される。
【0019】
本実施の形態では、能力切換弁35a~35cの開放によって燃料が供給されるバーナを「燃焼バーナ」と称し、その数を「燃焼バーナ本数」とも称する。上述した能力切換弁35aの開閉により、燃焼バーナ本数、即ち、加熱能力が異なる複数の能力段を切換えることができる。能力切換弁35a~35cによって、「能力切換機構」の一実施例が構成される。
【0020】
以下では、能力1段(STG=1)~能力3段(STG=3)の3段階で、燃焼バーナの本数が切換えられるものとして説明を進める。例えば、能力1段では、能力切換弁35bのみの開放によって燃焼バーナは2本であり、能力2段では、能力切換弁35a及び35bの開放によって燃焼バーナは5本であり、能力3段では、能力切換弁35a~35cの開放によって燃焼バーナは10本であるものとする。
【0021】
燃焼機構20の発生熱量は、燃焼バーナ本数と、ガス流量との組み合わせによって決まる。即ち、各能力段において、ガス比例弁33の開度によって制御されるガス流量の増加に比例して、発生熱量は増加する。
【0022】
缶体5において、バーナ30から出力された燃料ガスは、送風ファン40からの燃焼用空気と混合される。送風ファン40による送風量は、バーナ30全体からの供給ガス量に対する燃焼用の空気量が適正値となる様に制御される。送風ファン40の送風量は、ファン回転数と比例するので、送風ファン40の回転数は、要求される発生熱量に伴って設定される回転数指令に従って制御される。送風ファン40には、ファン回転数を検出するための回転数センサ45が設けられる。
【0023】
燃料ガスと燃焼用空気との混合気が、図示しない点火装置によって着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。バーナ30からの火炎によって生じる、燃焼機構20からの燃焼熱は、缶体5内で一次熱交換器11および二次熱交換器12へ与えられる。
【0024】
二次熱交換器12は、燃焼機構20からの燃焼排ガスの潜熱によって、通流された低温水を熱交換によって予熱する。一次熱交換器11は、二次熱交換器12によって予熱された低温水を、燃焼機構20からの燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)による熱交換によってさらに加熱する。これにより、熱交換器10によって加熱された高温水が、出湯管70へ出力される。缶体5の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。
【0025】
バイパス管60および出湯管70は、合流点75において接続される。したがって、給湯装置100からは、缶体5から出力された高温水と、バイパス管60からの低温水との混合によって調温された適温の温水が、台所や浴室等の給湯栓190や、図示しない風呂への注湯回路などの所定の給湯箇所に供給される。
【0026】
図1に例示された給湯装置100は、熱交換器10を通過した高温水および熱交換器10をバイパスした低温水を混合する、いわゆるバイパスミキシング方式の構成を有している。
【0027】
バイパス弁80は、コントローラ300からの制御指令に従って弁開度が制御されることにより、缶体配管55の流量およびバイパス管60の流量の比率を制御する。たとえば、バイパス弁80による流量比率kは、図示しない弁体を開閉駆動するステッピングモータによって制御することができる。
【0028】
温度センサ110は、缶体配管55又は入水管50に配置されて、熱交換器10による加熱前の入水温度Twを検出する。缶体配管55には、流量センサ150を配置することができる。流量センサ150は、代表的には、羽根車式流量センサによって構成することができる。
【0029】
缶体配管55に配置された流量センサ150によって、缶体配管55の流量、即ち、熱交換器10を通過して加熱される流量である缶体流量Qbが検出される。尚、入水管50に流量センサ150を配置した場合には、給湯装置100に導入される全体流量Qtlを検出することができる。
【0030】
上述した流量比率kを用いて、缶体流量Qb及び全体流量Qtlの間には、Qb=k・Qtlの関係が成立する。従って、流量センサ150によって、缶体流量Qb及び全体流量Qtlの一方を検出すると、他方はバイパス弁80の開度から換算された流量比率kを用いて、計算によって求めることができる。
【0031】
出湯管70には、温度センサ120,130が設けられる。温度センサ120は、出湯管70およびバイパス管60の合流点75よりも上流側(熱交換器10側)に配置されて、熱交換器10を通過した高温水の温度(以下、缶体温度Tb)を検出する。温度センサ130は、合流点75よりも下流側(出湯側)に配置されて、上記高温水とバイパス管60からの低温水の混合後の湯温(以下、出湯温度Th)を検出する。
【0032】
更に、出湯管70には、出湯流量を制御するための流量調整弁90が設けられる。流量調整弁90の弁開度は、コントローラ300によって制御される。例えば、燃焼開始直後の加熱能力が不足する期間中において、出湯流量を絞るように流量調整弁90の開度が制御されることによって、出湯温度の低下を防止することができる。また、燃焼開始直後以外でも、最大発生熱量で運転する場合や、最大許容流量で運転する場合等において、目標温度に従って出湯するために、流量調整弁90によって出湯流量を絞る制御を実行することができる。
【0033】
コントローラ300は、CPU(Central Processing Unit)301、外部との入出力を制御するインターフェイス302、タイマ303、及び、記憶部304を含む。CPU301は、インターフェイス302を介して各センサからの出力信号(検出)およびユーザ操作を受けて、給湯装置100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を生成し、インターフェイス302を介して出力する。
【0034】
ユーザ操作には、運転スイッチ(図示せず)の操作によって入力される給湯装置100の運転オン/オフ指令、出湯温度Thの目標値に相当する給湯設定温度Tr*の設定指令、及び、後述する静音運転モード指令を含む各種モード設定操作が含まれる。代表的には、これらのユーザ操作は、リモートコントローラ(図示せず)によって入力することができる。
【0035】
CPU301は、インターフェイス302を介して各センサからの出力信号(検出)をサンプリングし、サンプリングした信号をA/D(Analog/digital)変換により検出値に変換する。これにより、温度センサ110~130及び流量センサ150の出力信号を用いて、入水温度Tw、缶体温度Tb、出湯温度Th、及び、流量検出値(ここでは、缶体流量Qb)がコントローラ300に取得される。
【0036】
コントローラ300は、例えば、記憶部304に予め格納されたプログラムを実行することによって、給湯装置100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。尚、コントローラ300の少なくとも一部は、専用の電子回路(アナログ及び/又はデジタル)によって構成することも可能である。
【0037】
代表的には、給湯装置100では、給湯設定温度Tr*に従って出湯温度Thを制御する給湯温度制御が実行される。この給湯温度制御の一環として、能力段切換機能を有する燃焼機構20が、以下に説明する様に制御される。
【0038】
(燃焼制御)
図2は、コントローラ300による燃焼機構20の燃焼制御を説明する機能ブロック図である。
図2中の各ブロックの機能は、コントローラ300が予め格納されたプログラムを実行するソフトウェア処理によって実現することができる。あるいは、専用の電子回路を用いたハードウェア処理によって各ブロックの一部または全部を実現することも可能である。
【0039】
図2を参照して、コントローラ300は、要求熱量算出部310と、バーナ制御部320とを有する。
【0040】
要求熱量算出部310は、缶体流量Qb(流量センサ150)と、入水温度Tw(温度センサ110)と、給湯設定温度Tr*とに基づいて、燃焼機構20への要求発生熱量Prqを算出する。
【0041】
缶体温度Tb(温度センサ120)の目標値である缶体目標温度Tb*を用いると、熱交換器10で必要となる昇温量ΔTは、ΔT=Tb*-Twで示される。したがって、熱交換器10において上記昇温量ΔTを得るために必要な単位時間当たりの熱量は(Qb・ΔT)で示される。即ち、式(1)に従って、要求発生熱量Prqを算出することができる。
【0042】
Prq=(Tb*-Tw)・Qb …(1)
なお、実際には、燃焼機構20(バーナ30)による発生熱量のうちの熱交換器10での昇温に用いられる熱量の比率(熱効率)を考慮する必要があるが、以下では、説明を簡略化するために、熱効率は1.0であるものとする。また、給湯装置では、要求発生熱量は「号数」を単位として演算されることが一般的である。号数=1は、q1=1(L/min)の流量下で湯温を25℃上昇させるのに必要な熱量に相当する。
【0043】
バイパスミキシング方式の給湯装置では、缶体目標温度Tb*は、給湯設定温度Tr*よりも高く設定することができる。例えば、給湯設定温度Tr*を用いて、下記の式(2)に従って、缶体目標温度Tb*を設定することができる。なお、式(2)中のαは定数である(たとえば、α=15℃)。
【0044】
Tb*=Tr*+α…(2)
バイパスミキシング方式では、バイパス弁80による流量比率kの調整を更に組み合わせて、給湯温度制御が実行される。例えば、コントローラ300は、給湯設定温度Tr*と、温度センサ110~130による検出温度(Tb,Th,Tw)とに基づいて、出湯温度Thが給湯設定温度Tr*に一致する様に、流量比率kを設定することができる。コントローラ300は、設定された流量比率kに従ってバイパス弁80の開度指令を生成する。更に、式(2)のαについても、流量比率kの現在値に連動させて可変とすることも可能である。
【0045】
尚、本実施の形態に係る燃焼装置は、バイパスミキシング方式ではない構成の給湯装置に適用することも可能である。この場合には、全体流量Qtlと缶体流量Qbが等しくなる。従って、式(2)でのαを、出湯管70での温度低下相当に設定すると、非バイパスミキシング方式においても、上記式(1)を共通に用いて、要求発生熱量Prqを算出することができる。
【0046】
バーナ制御部320は、要求発生熱量Prqに従って燃焼機構20の発生熱量を制御すするための、燃焼制御指令を生成する。燃焼制御指令は、元ガス電磁弁32の開閉指令と、ガス比例弁33の開度指令と、能力段設定指令と、送風ファン40の回転数指令(以下、「ファン回転数指令」)とを含む。コントローラ300のうちのバーナ制御部320は、「制御部」の一実施例に対応する。
【0047】
元ガス電磁弁32の開閉指令は、バーナ制御部320による燃焼制御指令のオンオフに連動して生成される。燃焼制御指令のオン時には、元ガス電磁弁32が開放されるとともに、要求発生熱量Prqに従って、能力段の設定、及び、ガス流量の設定の組み合わせが決定される。能力段設定指令は、能力段の選択に対応して生成された能力切換弁35a~35cの各々の開閉指令によって構成される。ガス比例弁33の開度指令は、設定されたガス流量に対応して生成される。ファン回転数指令は、能力段の設定、及び、要求発生熱量Prqに従って生成される。
【0048】
本実施の形態に係る燃焼装置では、
図3に示される様に、連続燃焼及び間欠燃焼の選択を伴って、燃焼機構20の発生熱量が制御される。
【0049】
図3を参照して、連続燃焼では、符号201の波形に示される様に、燃焼機構20は、要求発生熱量Prqを発生するための燃焼期間が連続的に設けられる様に制御される。これに対して、間欠燃焼では、符号202の波形に示される様に、燃焼機構20は、燃焼制御指令のオンオフによって設けられる、燃焼期間(期間長Ton)及び燃焼停止期間(期間長Toff)が交互に設けられる様に制御される。間欠燃焼時の燃焼期間の比率を示すデューティDT=Ton/(Ton+Toff)で示される(DT<1.0)。尚、tcyc=Ton+Toffは、予め定められた一定値でもよく、状況に応じて可変に設定されてもよい。
【0050】
燃焼期間での発生熱量P1を用いて、間欠燃焼の適用時の発生熱量Pdtは、下記の式(3)で与えられる。
【0051】
Pdt=P1・Ton/(Ton+Toff)=P1・DT …(3)
間欠燃焼を適用すると、燃焼期間での発生熱量P1よりも低い熱量を、燃焼機構20から発生することができる。
【0052】
次に、
図4を用いて、能力段及びファン回転数指令の設定の比較例を説明する。
【0053】
図4を参照して、能力段(STG=1~3)の各々において、ガス流量に比例して発生熱量が変化する。又、ガス流量に対する適切な燃焼空気量の供給を維持する様に、ファン回転数指令を設定する必要がある。このため、ファン回転数の制御下限値Xmin及び制御上限値Xmaxの間で、ファン回転数指令は、要求発生熱量Prqに比例して設定することができる。
【0054】
図5には、能力段の切換に伴う燃焼態様の変化を説明する概念図が示される。
【0055】
図5に示される様に、燃焼バーナ本数が2本である能力1段(STG=1)と、燃焼バーナ本数が5本である能力2段(STG=2)との間では、トータルのガス流量が同じ下でも、炎の形状が変わることによって、燃焼機構20(全てのバーナ30)で必要な空気量が変化する。より詳細には、燃焼用空気については、送風ファンからバーナ30の各々に均等に供給されるため、
図5に示される同一熱量下において、能力2段(STG=2)で各バーナ30に供給されるべき空気量は、能力1段(STG=1)での当該空気量よりも低下する。これにより、燃焼バーナ本数の増加に伴い、燃焼機構20(全てのバーナ30)で必要な燃焼空気量が低下するので、これに伴いファン回転数も低下する。
【0056】
同様に、燃焼バーナ本数が増加すると、燃料ガスの流路面積が増えることでガス供給経路の抵抗が下がり、同一のガス比例弁開度においてはガス流量が増加する。従って、燃焼バーナ本数の増加に伴い、必要なガス比例弁開度も低下する。
【0057】
この結果、能力2段(STG=2)では、同一の熱量を発生するための、ガス比例弁開度及びファン回転数は、能力1段(STG=1)の適用時よりも低く設定される。
【0058】
再び
図4を参照して、複数の能力段(STG=1~3)のそれぞれにおいて、ガス流量、及び燃焼用空気量と、発生熱量とは比例関係を有する。
図4に示された比較例では、能力段(STG=1~3)の各々にて、連続燃焼が常時適用されて、燃焼機構20から要求発生熱量Prqに従った熱量が出力される。
【0059】
例えば、能力1段(STG=1)では、連続燃焼の適用時において、ファン回転数の制御下限値Xmin~制御上限値Xmaxの範囲で供給できる空気量に対応して、燃焼機構20は、最小発生熱量P1n~最大発生熱量P1xの範囲の熱量を出力することができる。従って、図中のSTG=1の特性線上で、P1n~P1xの範囲内の要求発生熱量Prqに比例する様に、ファン回転数指令を設定することができる。
【0060】
同様に、能力2段(STG=2)では、連続燃焼の適用時において、ファン回転数の制御下限値Xmin~制御上限値Xmaxの範囲で供給できる空気量に対応して、燃焼機構20は、最小発生熱量P2n~最大発生熱量P2xの範囲の熱量を出力することができる。従って、図中のSTG=2の特性線上で、P2n~P2xの範囲内の要求発生熱量Prqに比例する様に、ファン回転数指令を設定することができる。
【0061】
又、能力3段(STG=3)では、連続燃焼の適用時において、ファン回転数の制御下限値Xmin~制御上限値Xmaxの範囲で供給できる空気量に対応して、燃焼機構20は、最小発生熱量P3n~最大発生熱量P3xの範囲の熱量を出力することができる。従って、図中のSTG=3の特性線上で、P3n~P3xの範囲内の要求発生熱量Prqに比例する様に、ファン回転数指令を設定することができる。
【0062】
この様に、能力1段~能力3段は、制御下限値Xmin及び制御上限値Xmaxに対応する最小発生熱量P1n~P3n及び最大発生熱量P1x~P3xが異なっており、連続燃焼時の燃焼機構20の発生熱量範囲、即ち、加熱能力が異なっている。
【0063】
又、図示は省略しているが、能力1段~能力3段(STG=1~3)のそれぞれにおいて、ガス比例弁開度についても、P1n≦Prq≦P1x、P2n≦Prq≦P2x、及び、P3n≦Prq≦P3xの範囲で、要求発生熱量Prqに比例する様に設定することができる。
【0064】
図4に示される様に、能力1段での最大発生熱量P1xよりも、能力2段での最小発生熱量P2nを低く設定することで、ラップ領域RP12を設けることができる。ラップ領域RP12に含まれる、P2n≦Prq≦P1xの範囲は、能力1段及び能力2段のいずれでも対応可能である。これにより、能力1段及び能力2段の間の切換を円滑化することができる。
【0065】
同様に、能力2段での最大発生熱量P2xよりも、能力3段での最小発生熱量P3nを低く設定することで、能力2段及び能力3段の間の切換を円滑化するためのラップ領域RP23を設けることができる。能力3段での最大発生熱量P3xは、燃焼機構20が対応可能な最大熱量Pmaxに相当する。又、能力1段での最小発生熱量P1nは、燃焼機構20が連続燃焼で出力可能な最小熱量Pminに相当する。
【0066】
ここで、要求発生熱量Prqが、最小熱量Pminから最大熱量Pmaxまで増加するケースを想定すると、まず、能力1段(STG=1)にて燃焼を開始して、要求発生熱量Prq>P1xとなって、能力1段で対応できなくなると、図中に矢印で表記する様に、能力1段から能力2段への切換を行うことができる。
【0067】
更に、能力2段での燃焼機構20の動作時に、要求発生熱量Prq>P2xとなって、能力2段で対応できなくなると、図中に矢印で表記する様に、能力2段から能力3段への切換を行うことができる。
【0068】
しかしながら、この様な比較例に係る能力段及びファン回転数の設定では、各能力段において、ファン回転数が制御上限値Xmaxまで上昇する可能性があるため、送風ファン40の作動音が大きくなることが懸念される。特に、燃焼装置が厨房の流し台やコンロの上方等の室内に設置される場合に、ユーザから作動音の軽減が求められる可能性がある。
【0069】
従って、本実施の形態に係る燃焼装置では、作動音低減のために、
図6に示される様に、能力段及びファン回転数指令を設定する。尚、
図6においても、各能力段(STG=1~3)における最小発生熱量P1n~P3n及び最大発生熱量P1x~P3xは、
図4と同一である。
【0070】
図6を参照して、本実施の形態では、ファン回転数が高い領域を不使用とする様に、P1n<Prq<P2nの領域AR1の一部に、能力1段が不適用とされて、能力2段での間欠燃焼が適用される中間領域INT12が設けられる。同様に、P2n<Prq<P3nの領域AR2の一部に、能力2段が不適用とされて、能力3段での間欠燃焼が適用される中間領域INT23が設けられる。
【0071】
例えば、ファン回転数の作動制限値Xlim(Xlim<Xmax)を定めることにより、能力1段(STG=1)の特性線上においてファン回転数がXlimとなる熱量P1y(P1y<P1x、かつ、P1y<P2n)を用いて、領域AR1のうちの、P1y<Prq<P2nの範囲を中間領域INT12に設定することができる。
【0072】
同様に、能力2段(STG=2)の特性線上においてファン回転数がXlimとなる熱量P2y(P2y<P2x、かつ、P2y<P3n)を用いて、領域AR2のうちの、P2y<Prq<P3nの範囲を中間領域INT23に設定することができる。
【0073】
又、能力3段(STG=3)の特性線上では、要求発生熱量Prq≧P3y(P3y<P3x)の領域において、ファン回転数がXlim以上に設定されるが、ファン回転数を制御上限値Xmaxまで上昇させれば、燃焼機構20は、最小熱量Pminから最大熱量Pmaxまでの範囲の要求発生熱量Prqに対応することが可能である。
【0074】
図7には、本実施の形態に係る燃焼制御を説明するフローチャートが示される。
図7に示された制御処理は、コントローラ300により一定の制御周期毎に実行することができる。
図7に従う制御処理によって、
図6の制御内容が適用された燃焼制御を行うことができる。
【0075】
図7を参照して、コントローラ300は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110により、現時点での要求発生熱量Prqを算出する。S110の処理は、
図2の要求熱量算出部310によって実現される。コントローラ300は、S120により、S110で算出された要求発生熱量Prqが、
図6に示された領域AR1~AR3のいずれに属するかによって、能力段を一次設定する。
【0076】
コントローラ300は、S130により、S110で算出された要求発生熱量Prqが、
図6の中間領域INT12又はINT23内であるか否かを判定する。中間領域内ではないとき(S130のNO判定時)には、S160により、S120で設定された能力段を選択して、要求発生熱量Prqに従う連続燃焼が適用される。
【0077】
図6の例では、P1n≦Prq≦P1y、P2n≦Prq≦P2y、又は、P3n≦Prqのときには、要求発生熱量Prqによる連続燃焼が実行される様に、
図2に示した燃焼制御指令が生成される(S170)。
【0078】
これに対して、コントローラ300は、要求発生熱量Prqが中間領域INT12又はINT23内であるとき(S130のYES判定時)には、S140により、能力段のアップを伴う間欠燃焼を適用する。
【0079】
図6の例では、P1y<Prq<P2nのとき、即ち、要求発生熱量Prqが中間領域INT12内であるときには、S120で一次設定された能力1段に代えて能力2段を選択する能力段アップとともに、
図3においてP1=P2nとした間欠燃焼が適用される。或いは、P2y<Prq<P3nのとき、即ち、要求発生熱量Prqが中間領域INT23内であるときには、S120で一次設定された能力2段に代えて能力3段を選択する能力段のアップともに、
図3においてP1=P3nとした間欠燃焼が適用される。
【0080】
更に、コントローラ300は、S150により、間欠燃焼のデューティDTを演算する。式(3)をDTについて解くと、DT=Pdt/P1が得られるので、P1=P2n又はP3n、及び、Pdt=Prqを代入すると、中間領域INT12及びINT23のそれぞれにおける間欠燃焼でのデューティDTは、下記の式(4)及び(5)をそれぞれ用いて算出することができる。
【0081】
DT=Prq/P2n …(4)
DT=Prq/P3n …(5)
更に、コントローラ300は、S170によりS140での能力段アップ、及び、S150で演算されたデューティDTを用いた間欠燃焼(S140)が実行される様に、
図2に示した燃焼制御指令を生成する。ラップ領域(
図4でのRP12,RP23)を有する複数の能力段の切換領域に対応して間欠燃焼を適用することにより、ファン回転数の上昇を抑制した上で、燃焼装置の発生熱量を要求発生熱量Prqに従って連続的に制御する、静音運転モードを実現することができる。
【0082】
静音運転モードでは、上記中間領域外では連続燃焼を適用するとともに、中間領域内では式(4),(5)によって算出されたデューティDTを用いた間欠燃焼を適用することで、燃焼機構20の最小熱量Pmin~最大熱量Pmaxの範囲内に設定された要求発生熱量Prqに従って、燃焼機構20の発生熱量を連続的に制御することができる。
【0083】
特に、ファン回転数に作動制限値Xlimを設けて間欠運転の適用領域(中間領域INT12,INT23)を設定することにより、送風ファン40の作動音の上限を規定することが可能となる。
【0084】
以上説明した様に、本実施の形態に係る燃焼装置では、複数の能力段のうちの最小発生熱量が最も低い能力段(STG=1)以外の能力段(STG=2,3)の最小発生熱量P2n,P3nよりも要求発生熱量が低い範囲の一部において、当該能力段を選択した間欠燃焼を行うことにより、当該一部の範囲での送風ファン40の回転数上昇を抑制した上で、燃焼機構20の発生熱量を連続的に制御することができる。即ち、能力1段は「第1の能力段」の一実施例に対応し、能力2段及び能力3段の各々は「第2の能力段」の一実施例に対応する。
【0085】
又、ラップ領域RP12,RP23を有する複数の能力段(STG=1~3)の間の切換において、中間領域INT12では、能力1段が「加熱能力が低い一方の能力段」の一実施例に対応するとともに、能力2段が「加熱能力が高い他方の能力段」の一実施例に対応する。同様に、中間領域INT23では、能力2段が「加熱能力が低い一方の能力段」の一実施例に対応するとともに、能力3段は「加熱能力が高い他方の能力段」の一実施例に対応する。尚、
図6の例では、能力3段は、「発生熱量範囲が最も高熱量側である能力段」の一実施例に対応する。
【0086】
尚、本実施の形態では、複数の能力段の発生熱量範囲については、ラップ領域を有さない様に設定することも可能である。例えば、
図4及び
図6において、P1x≦P2nとしても、Prq<P2nの領域の一部において、能力2段を選択した間欠燃焼を適用することができる。この場合には、間欠燃焼が適用される領域は、P1x<Prq<P2nの範囲を含むことで燃焼機構20の発生熱量を連続的に制御することが可能となる。更に、Prq≦P1xの範囲に間欠燃焼を適用することで送風ファン40の回転数を更に低減できるが、当該範囲に間欠燃焼を適用するか否かは任意である。
【0087】
同様に、
図4及び
図6の能力2段及び能力3段の間でP2x≦P3nとしても、Prq<P3nの領域の一部において、能力3段を選択した間欠燃焼を適用することができる。この場合には、上述の様に、間欠燃焼が適用される領域は、発生熱量を連続的に制御するためにP2x<Prq<P3nの範囲を含むが、Prq≦P2xの領域を含むか否かは任意である。この様にラップ領域を設けない場合には、ファン回転数の制御上限値Xmaxが低くても、同様の燃焼制御を実現することができる。
【0088】
(静音運転モードの運用例)
図8には、本実施の形態に係る燃焼装置での静音運転モードの運用例を説明するフローチャートが示される。
図8に示された制御処理は、
図7に示された制御処理の前に実行することができる。
【0089】
図8を参照して、コントローラ300は、S200により、静音運転モードがオンされているか否かを判定する。例えば、静音運転モードは、ユーザによるモード設定操作によってオンオフされる。或いは、給湯装置100(燃焼装置)の設置場所が屋内であるときに、静音運転モードを自動的にオンすることも可能である。
【0090】
例えば、設置場所が屋内であるときには、施工時に作業者が、コントローラ300の記憶部304に対して当該情報を書込む運用とするとともに、この情報が記憶部304に格納されているときに、S200をYES判定とすることができる。又は、室内設置用の型式の給湯装置では、工場集荷時の段階で、静音運転モードをオンするための情報をコントローラ300(記憶部304)に入力することも可能である。
【0091】
S200で判定される静音運転モードのオンオフ設定のための各種入力は「第2のモード設定入力」の一実施例に対応する。
【0092】
コントローラ300は、静音運転モードのオン時(S200のYES判定時)には、S100に処理を進める。S100では、
図7に示したS110~S170による制御処理が実行されることにより、
図6に示した様な、中間領域INT12,INT23内で間欠燃焼が適用される燃焼制御が実行される。
【0093】
これに対して、コントローラ300は、静音運転モードのオフ時(S200のNO判定時)には、S210に処理を進める。S210では、
図4に示される様に、連続燃焼のみを用いて要求発生熱量Prqに従って燃焼機構20の発生熱量を制御する様に、燃焼制御が実行される。S210の処理により、「連続燃焼のみが適用される運転モード」が適用される。
【0094】
一般的に、連続燃焼の適用時の方が、間欠燃焼の適用時よりも温度制御性能は向上する。このため、静音運転モードのオンオフを選択可能とすることで、静音性が重視されるケースに限定して、間欠燃焼を積極的に用いる静音運転モードをオンする機能を持たせることで、燃焼装置のトータル性能を向上することができる。尚、
図8に示された運転モードの選択は、ラップ領域を有する様に複数の能力段を設定した場合に使用することができる。ラップ領域を有さない場合には、連続燃焼のみでは、燃焼機構20の発生熱量を連続的に制御することが困難だからである。
【0095】
図9には、本実施の形態に係る燃焼装置での静音運転モードの変形例を説明するフローチャートが示される。
図9に示された制御処理は、
図7のS110として実行することができる。
【0096】
再び、
図6を参照して、能力3段(STG=3)の特性線上では、要求発生熱量Prq≧P3y(P3y<P3x)の領域において、ファン回転数がXlim以上に設定される。従って、静音性を最優先する場合には、要求発生熱量Prqの上限値をP3yに制限することで、ファン回転数が作動制限値Xlimを超えない様に制御する、静音運転モードの変形例である静音優先モードを更に設定することができる。
【0097】
図9を参照して、
図7のS110は、
図9に示されたS112~S118によって構成することができる。
【0098】
コントローラ300は、S112では、要求発生熱量Prqの算出処理を実行し、S114では、静音優先モードがオンされているか否かを判定する。静音優先モードについても、ユーザによるモード設定操作、或いは、施工時等にコントローラ300に格納される情報に基づいて、オンオフを判定することができる。S114で判定される静音優先モードのオンオフ設定のための各種入力は、「第1のモード設定入力」の一実施例に対応する。
【0099】
コントローラ300は、静音優先モードがオンされているとき(S114のYES判定時)には、S115により、S112で算出された要求発生熱量Prqを、能力最大の能力段(STG=3)において、ファン回転数が作動上限値Xminに達する判定値と比較する。
図6の例では、S115における判定値は、P3yに設定される。即ち、能力3段は「最大発生熱量が最も高い能力段」の一実施例に対応し、熱量P3yは「制限熱量」の一実施例に対応する。
【0100】
要求発生熱量Prqが判定値(P3y)よりも大きいとき(S115のYES判定時)には、コントローラ300は、S118により、Pref=P3yに更新する。即ち、要求発生熱量Prq>P3yを避けるためのリミット処理が行われる。これにより、「最大発生熱量が最も高い能力段において、燃焼機構の発生熱量を制限するモード」が選択される。
【0101】
一方で、要求発生熱量Prqが判定値(P3y)以下のとき(S115のNO判定時)、又は、静音優先モードのオフ時(S114のNO判定時)には、S116により、S112で算出された要求発生熱量Prqが維持される。これにより、「最大発生熱量が最も高い能力段において上記制限を行わずに要求発生熱量に従って燃焼機構の発生熱量を制御するするモード」が選択される。
【0102】
コントローラ300は、S116で維持された、或いは、S118で変更された要求発生熱量Prqを用いて、
図7のS120以降の処理を実行する。これにより、静音優先モードのオン時には、ファン回転数が作動制限値Xlimを超えない様に静音性を最優先した、静音運転モードの変形例を実現することができる。
【0103】
当該静音優先モードでは、燃焼機構20の発生熱量の最大値が、PmaxからP3yに減少するが、ユーザニーズに対応して、最大加熱能力よりも静音性を優先した燃焼運転を実現することが可能となる。
【0104】
尚、本実施の形態では、燃焼機構20についてガスを燃料とするバーナ30で構成される例を示したが、燃焼のための燃料は任意とすることができる。又、上述の様に、本実施の形態では、燃焼装置がバイパスミキシング方式の給湯装置に適用される例を説明したが、バイパスミキシング方式ではない構成の給湯装置にも適用することが可能である。
【0105】
又、本実施の形態では、能力段が3個である例を説明したが、連続燃焼の適用時に発生熱量範囲が異なる様に設定されれば、複数の能力段の段数を限定することなく本実施の形態に係る燃焼制御を適用することが可能である。更に、燃焼機構20での複数の能力段の切換についても、燃焼バーナ本数の切換に限定されるものではなく、複数の能力段の間で上述の発生熱量範囲を切換可能であれば、加熱能力を段階的に切換可能である燃焼機構については、任意の構成で実現することが可能である。
【0106】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
5 缶体、10 熱交換器、11 一次熱交換器、12 二次熱交換器、15 排気経路、20 燃焼機構、30 バーナ、31 ガス供給管、32 元ガス電磁弁、33 ガス比例弁、35a,35b,35c 能力切換弁、40 送風ファン、45 回転数センサ、50 入水管、55 缶体配管、60 バイパス管、70 出湯管、75 合流点、80 バイパス弁、90 流量調整弁、100 給湯装置、110,120,130 温度センサ、150 流量センサ、190 給湯栓、300 コントローラ、302 インターフェイス、303 タイマ、304 記憶部、310 要求熱量算出部、320 バーナ制御部、AR1~AR3 領域、INT12,INT23 中間領域、P1n~P3n 最小発生熱量(各能力段)、P1x~P3x 最大発生熱量(各能力段)、P1,Pdt 発生熱量、Pmax 最大熱量、Prq 要求発生熱量、Qtl 全体流量、RP12,RP23 ラップ領域、Tb 缶体温度、Tb* 缶体目標温度、Tb 目標温度、Th 出湯温度、Tr* 給湯設定温度、Tw 入水温度、Xlim 作動制限値(ファン回転数)、Xmax 制御上限値(ファン回転数)、Xmin 制御下限値(ファン回転数)。