(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139905
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ガスケット部材及びガスケット部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/184 20210101AFI20220915BHJP
【FI】
H01M50/184 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040484
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
(72)【発明者】
【氏名】藤波 大輔
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA17
5H011FF03
5H011GG02
5H011HH02
5H011HH13
5H011JJ12
5H011KK01
5H011KK02
5H011KK07
(57)【要約】
【課題】電池内部の液漏れ発生のリスクを抑制できるガスケット部材を提供する。
【解決手段】ガスケット部材は、電池缶の開口を封口する、筒型電池用のガスケット部材である。ガスケット部材は、前記電池缶の内部に設けられた集電棒を支持する筒状の支持部と、前記電池缶に支持される外周部と、前記支持部と前記外周部との間の前記支持部側に形成された環状の中間部とを有する。更に、ガスケット部材は、前記中間部と前記外周部との間に形成され、前記外周部を前記中間部に対して弾性変形可能にする緩衝部と、前記環状の中間部の平坦面に形成された低吸水層とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池缶の開口を封口する、筒型電池用のガスケット部材であって、
前記電池缶の内部に設けられた集電棒を支持する筒状の支持部と、
前記電池缶に支持される外周部と、
前記支持部と前記外周部との間の前記支持部側に形成された環状の中間部と、
前記中間部と前記外周部との間に形成され、前記外周部を前記中間部に対して弾性変形可能にする緩衝部と、
前記環状の中間部の平坦面に形成された低吸水層と、
を有することを特徴とするガスケット部材。
【請求項2】
前記低吸水層は、
前記環状の中間部の平坦面の内、前記電池缶の負極端子側の平坦面に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のガスケット部材。
【請求項3】
前記低吸水層は、
吸水率0.6%(24hr飽和)以下の材質を使用した層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスケット部材。
【請求項4】
前記低吸水層は、
ロックウェル硬さがR120以上を有する硬質層であることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載のガスケット部材。
【請求項5】
前記平坦面に形成された前記低吸水層の厚みは、
0.3mm~1.0mmであることを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載のガスケット部材。
【請求項6】
前記ガスケット部材の材質は、
6.12ナイロンであることを特徴とする請求項1~5の何れか一つに記載のガスケット部材。
【請求項7】
電池缶の開口を封口する、筒型電池用のガスケット部材の製造方法であって、
前記電池缶の内部に設けられた集電棒を支持する筒状の支持部と、前記電池缶に支持される外周部と、前記支持部と前記外周部との間の前記支持部側に形成された環状の中間部と、前記中間部と前記外周部との間に形成され、前記外周部を前記中間部に対して弾性変形可能にする緩衝部とを有する前記ガスケット部材をナイロンで形成し、
前記ガスケット部材の前記中間部の平坦面上に硬化樹脂で低吸水層を形成する
工程を有することを特徴とするガスケット部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット部材及びガスケット部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筒型電池では、円筒状の電池缶と、電池缶内に格納する正極材料と、電池缶内に格納する負極材料と、正極材料と負極材料との間を隔離する、円筒状のセパレータ部材と、電池缶の負極端子側の開口を封口するガスケット部材とを有する。
【0003】
ガスケット部材は、電池缶の内部に設けられた集電棒を支持する筒状の支持部と、電池缶に支持される外周部と、支持部の外周に沿って形成された環状の安全弁と、安全弁と外周部との間の安全弁側に形成された環状の中間部とを有する。更に、ガスケット部材は、中間部と外周部との間に形成され、外周部記中間部に対して弾性変可能にする緩衝部とを有する。安全弁は、電池缶の内部ガスの圧力で破断される肉薄部分である。また、ガスケット部材は、ナイロン等の材質で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルカリ電池等の筒型電池では、例えば、水酸化カリウム水溶液を電解液として用いており、カリウムの潮解性によって水分を取り込む性質がある。従って、ナイロン等の材質で形成されたガスケット部材は、外部から水分が電池内部に透過し、その水分量が多くなると、電池内圧が上昇して液漏れリスクが発生する場合がある。
【0006】
しかしながら、ガスケット部材の全体に水分透過率が低い材料を使用した場合には、加工時の緩衝によって破損し、安全弁の働きに影響を与えるおそれがある。また、電池の保存環境下では、ガスケット部材が脆化して電池内圧が上昇した場合、安全弁ではなく、中間部の平坦面が割れて電池内部の固形物が流出する液漏れ発生のリスクが高まる。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、電池内部の液漏れ発生のリスクを抑制できるガスケット部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示するガスケット部材の一態様は、電池缶の開口を封口する、筒型電池用のガスケット部材である。ガスケット部材は、電池缶の内部に設けられた集電棒を支持する筒状の支持部と、電池缶に支持される外周部と、支持部と外周部との間の支持部側に形成された環状の中間部とを有する。更に、ガスケット部材は、中間部と外周部との間に形成され、外周部を中間部に対して弾性変形可能にする緩衝部と、環状の中間部の平坦面に形成された低吸水層とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示するガスケット部材の一態様によれば、電池内部の液漏れ発生のリスクを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例の筒型電池を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施例の筒型電池の要部を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、加締め前のガスケット部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示するガスケット部材等の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示するガスケット部材が限定されるものではない。
【実施例0012】
(筒型電池の構成)
図1は、実施例の筒型電池1を示す縦断面図である。
図1に示すように、実施例の筒型電池1は、例えば、水溶液系一次電池、いわゆる乾電池である。筒型電池1は、開口3aを有する円筒状の電池缶3と、集電棒4と、正極材料5と、負極材料6と、正極材料5と負極材料6とを仕切るセパレータ部材7と、電池缶3の開口3aを封止するガスケット部材8とを備える。また、筒型電池1は、電極端子として、電池缶3の一端に形成された正極端子11と、電池缶3の他端に配置された負極端子12とを有する。
【0013】
電池缶3の一端には、正極端子11が一体に形成されている。電池缶3の他端には、電池缶3の外周に沿ってビーディング加工されたくびれ部(ビーディング部)3bが形成されている。電池缶3のくびれ部3bには、開口3aを塞ぐように負極端子12及びガスケット部材8が設けられている。集電棒4は、電池缶3の内部の中央に配置されている。集電棒4は、基端部がガスケット部材8に支持されており、先端部が正極端子11側に向かって延びている。集電棒4は、例えば、真鍮等で形成する。
【0014】
負極材料6は、電池缶3の内部における集電棒4の周囲に設けられた円筒状の材料であり、セパレータ部材7の内側に装填されている。また、負極材料6は、例えば、亜鉛を主成分とするゲル状の負極合剤が用いられる。正極材料5は、電池缶3内に、その内周面に沿って装填されている。そして、正極材料5は、電池缶3の内部に収容された負極材料6の外周側に、セパレータ部材7を挟んで設けられている。正極材料5としては、例えば、リング状の正極合剤が用いられており、集電棒4の軸方向に沿って複数のリング状の正極合剤が積層されて配置されている。セパレータ部材7は、例えば、不織布等によって円筒状に形成されており、正極材料5の内側、かつ、集電棒4の軸方向に沿って配置されている。
【0015】
(ガスケット部材の構成)
図2は、実施例の筒型電池1の要部を示す縦断面図である。
図3は、加締め前のガスケット部材8を示す断面図である。
図2に示すように、筒型電池1のガスケット部材8は、集電棒4の一端部を支持する円筒状の支持部15と、支持部15の外周に沿って形成された環状の安全弁16と、電池缶3の開口3aに支持される環状の外周部17とを有する。また、ガスケット部材8は、安全弁16と外周部17との間の安全弁16側に形成された環状の中間部18と、中間部18と外周部17との間に形成され、外周部17を中間部18に対して弾性変形可能にする緩衝部19とを有する。また、ガスケット部材8は、中間部18の平坦面20の内、電池缶3の負極端子12側の平坦面20に形成された、環状の低吸水層21を有する。
【0016】
支持部15は、集電棒4が通される支持穴15aを有しており、
図2に示すように、集電棒4が負極端子12に接するように支持穴15aに支持されている。外周部17は、電池缶3のくびれ部3b近傍と負極端子12の外周部との間に加締めで挟み込まれることで、ガスケット部材8が電池缶3に支持されている。
【0017】
中間部18には、
図2に示すように、セパレータ部材7の端部が突き当てられており、負極材料6が収容された空間が、セパレータ部材7によって塞がれている。安全弁16は、電池缶3の内部ガスの圧力で破断される溝状の肉薄部分である。
【0018】
緩衝部19は、中間部18と外周部17との間に形成されており、セパレータ部材7の外周側に配置されている。緩衝部19は、集電棒4の軸方向において外周部17から延びると共に、折り返して中間部18に連結されることで、底部19aを有するひだ状の突形状である。
【0019】
ガスケット部材8の緩衝部19は、横締め方式で、電池缶3のくびれ部3b近傍と負極端子12の外周部との間にガスケット部材8の外周部17が挟み込まれることで、外周部17を中間部18に対して、
図3の状態から
図2の状態に弾性変形する。つまり、ガスケット部材8は、電池缶3の開口3aの封口後に直径方向に撓むことになる。
【0020】
中間部18の平坦面20上に形成された低吸水層21は、例えば、吸水率0.6%(24hr飽和)以下の硬質樹脂で形成された層である。更に、低吸水層21は、例えば、ロックウェル硬さがR120以上を有する硬質層である。更に、低吸水層21の厚みは、例えば、0.3mm~1.0mmである。低吸水層21は、電池缶3の外部からの水分の透過を抑えることで電池缶3の内部への水分の透過を低減し、水分侵入による電池缶3の内圧上昇を低減しながら、ガスケット部材8の脆化による液漏れの発生を抑制できる。
【0021】
そこで、出願人は、ガスケット部材8の中間部18の平坦面20上に各種材質の低吸水層21を形成した場合のガスケット部材8における水分透過、吸水率、脆化、安全弁16の弁作動を検証した。(表1)は、各種検証結果を表にまとめたものである。
【0022】
【0023】
先ず、6.12ナイロン材質のガスケット部材8の平坦面20には、0.5mmの厚さのPAI(ポリアミドイミド)を被覆したLR6用ガスケットを準備した。そして、平坦面20に形成する低吸水層の材質としては、例えば、ロックウェル硬さ(ASTM規格D785に基づく測定)がナイロンよりも高く、吸水率(ASTM規格D570に基づく測定)が低い樹脂を選定した。その樹脂としては、例えば、PEEK(ポリエーテルエチルケトン)、PAI(ポリアミドイミド)やPI(ポリイミド)を使用した。
【0024】
そして、各条件のガスケット部材につき、試験1~3を実施し、その試験結果を検証した。試験1は、水分透過(n=20)の試験である。60℃90%R.H.の環境下で100日保存し、透過水分量が30mg以下の場合に○(適合)、透過水分量が31~99mgの場合に△、透過水分量100mg以上の場合に×(不適合)と判定した。試験1の試験結果は、水分透過の試験結果である。
【0025】
また、試験2は、脆化(n=20)の試験である。60℃90%R.H.の環境下で100日保存し、JIS C 8514に基づく誤使用充電試験において、安全弁16のみが作動した場合に○、平坦面20の破断が5%~50%の場合に△、平坦面20の破断が55%~100%の場合又は電池缶3内部の固形物が流出した場合に×と判定した。試験2の試験結果は、脆化の試験結果である。
【0026】
また、試験3は、安全弁16の弁作動(n=20)の弁作動圧測定試験である。安全弁16が正常に作動した場合を○、安全弁16が正常に作動しなかった場合を×と判定した。試験3の試験結果は、弁動作の試験結果である。
【0027】
先ず、従来例のガスケット部材は、平坦面20上に低吸水層21がない場合とする。この場合、従来のガスケット部材における水分透過の試験結果は×、吸水率は0.60%、脆化の試験結果は△、弁作動の試験結果は〇である。
【0028】
実施例1のガスケット部材8は、その平坦面20に低吸水層21を形成し、低吸水層21の材質をPEEK、低吸水層21の厚みを0.5mm、低吸水層21のロックウェル硬さをR120とする。この場合、実施例1のガスケット部材8における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.50%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0029】
実施例2のガスケット部材8は、その平坦面20に低吸水層21を形成し、低吸水層21の材質をPI、低吸水層21の厚みを0.5mm、低吸水層21のロックウェル硬さをR126とする。この場合、実施例2のガスケット部材8における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.40%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0030】
比較例1のガスケット部材は、その平坦面に低吸水層を形成し、低吸水層の材質をPAI、低吸水層の厚みを0.1mm、低吸水層のロックウェル硬さをR127とする。この場合、比較例1のガスケット部材における水分透過の試験結果は×、吸水率は0.60%、脆化の試験結果は△、弁作動の試験結果は〇である。
【0031】
比較例2のガスケット部材は、その平坦面に低吸水層を形成し、低吸水層の材質をPAI、低吸水層の厚みを0.2mm、低吸水層のロックウェル硬さをR127とする。この場合、比較例2のガスケット部材における水分透過の試験結果は△、吸水率は0.55%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0032】
実施例4のガスケット部材8は、その平坦面20に低吸水層21を形成し、低吸水層21の材質をPAI、低吸水層21の厚みを0.3mm、低吸水層21のロックウェル硬さをR127とする。この場合、実施例4のガスケット部材8における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.33%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0033】
実施例5のガスケット部材8は、その平坦面20に低吸水層21を形成し、低吸水層21の材質をPAI、低吸水層21の厚みを0.4mm、低吸水層21のロックウェル硬さをR127とする。この場合、実施例5のガスケット部材8における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.33%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0034】
実施例3のガスケット部材8は、その平坦面20に低吸水層21を形成し、低吸水層21の材質をPAI、低吸水層21の厚みを0.5mm、低吸水層21のロックウェル硬さをR127とする。この場合、実施例3のガスケット部材8における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.33%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0035】
実施例6のガスケット部材8は、その平坦面20に低吸水層21を形成し、低吸水層21の材質をPAI、低吸水層21の厚みを0.6mm、低吸水層21のロックウェル硬さをR127とする。この場合、実施例6のガスケット部材8における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.33%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0036】
実施例7のガスケット部材8は、その平坦面20に低吸水層21を形成し、低吸水層21の材質をPAI、低吸水層21の厚みを0.7mm、低吸水層21のロックウェル硬さをR127とする。この場合、実施例7のガスケット部材8における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.33%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0037】
実施例8のガスケット部材8は、その平坦面20に低吸水層21を形成し、低吸水層21の材質をPAI、低吸水層21の厚みを0.8mm、低吸水層21のロックウェル硬さをR127とする。この場合、実施例8のガスケット部材8における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.33%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0038】
実施例9のガスケット部材8は、その平坦面20に低吸水層21を形成し、低吸水層21の材質をPAI、低吸水層21の厚みを0.9mm、低吸水層21のロックウェル硬さをR127とする。この場合、実施例9のガスケット部材8における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.33%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0039】
実施例10のガスケット部材8は、その平坦面20に低吸水層21を形成し、低吸水層21の材質をPAI、低吸水層21の厚みを1.0mm、低吸水層21のロックウェル硬さをR127とする。この場合、実施例10のガスケット部材8における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.33%、脆化の試験結果は〇、弁作動の試験結果は〇である。
【0040】
比較例3のガスケット部材は、その平坦面に低吸水層を形成し、低吸水層の材質をPAI、低吸水層の厚みを1.1mm、低吸水層のロックウェル硬さをR127とする。この場合、比較例3のガスケット部材における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.33%、脆化の試験結果は〇、低吸水層の厚みが厚すぎるため、弁作動の試験結果は×である。
【0041】
比較例4のガスケット部材は、その平坦面に低吸水層を形成し、低吸水層の材質をPAI、低吸水層の厚みを1.2mm、低吸水層のロックウェル硬さをR127とする。この場合、比較例4のガスケット部材における水分透過の試験結果は〇、吸水率は0.33%、脆化の試験結果は〇、低吸水層の厚みが厚すぎるため、弁作動の試験結果は×である。
【0042】
今回選定した樹脂では低吸水層21を1.1mm以上に厚くした場合、平坦面20での緩衝ができなくなり、安全弁16が正常に作動しなくなった。しかしながら、低吸水層21を例えば、0.3mm~1.0mmの厚さに設定した場合、水分透過、脆化及び弁作動の何れの試験でも良好な検証結果が得られた。
【0043】
(ガスケット部材の製造工程)
ガスケット部材8の製造工程について工程順に説明する。
(1)電池缶3の内部に設けられた集電棒4を支持する円筒状の支持部15と、電池缶3に支持される外周部17と、支持部15と外周部17との間の支持部15側に形成された環状の中間部18と、中間部18と外周部17との間に形成され、外周部17を中間部18に対して弾性変形可能にする緩衝部19とを有するガスケット部材8を6.12ナイロンで形成する。
(2)ガスケット部材8の中間部18の平坦面20上に硬化樹脂で低吸水層21を形成する。
【0044】
その結果、中間部18の平坦面20上に低吸水層21を形成したガスケット部材8が製造されることになる。
【0045】
(筒型電池1の製造工程)
以上のように構成された筒型電池1の製造工程について、工程順に説明する。
(1)例えば、電解二酸化マンガン、黒鉛、バインダー、水酸化カリウム溶液を用いて、正極材料5としての正極合剤を作り、正極合剤をリング状に成型する。
(2)亜鉛合金粉、電解液等を用いて、負極材料6としてのゲル状の負極合剤を作る。
(3)電池缶3の内部に、リング状の正極合剤を収容する。
(4)電池缶3の端部にビーディング加工によってくびれ部3bを形成し、ガスケット部材8と電池缶3との接触面にシール剤を塗布する。
(5)電池缶3に収容した正極合剤の内側にセパレータ部材7を挿入する。
(6)セパレータ部材7に水酸化カリウム電解液を含浸させる。
(7)電池缶3に設けられたセパレータ部材7の内側に負極端子12側の開口3aからゲル状の負極合剤を注入する。
(8)ガスケット部材8、集電棒4、負極端子12を組み付けた集電体を作る。
(9)集電体を電池缶3の開口3aに組み付けて、電池缶3の開口3aに対して集電体のガスケット部材8をガスケット部材8の直径方向である横方向から加締めることで、ガスケット部材8で開口3aを封口する。
【0046】
(実施例の効果)
本実施例の筒型電池1では、環状の中間部18の平坦面20に形成された低吸水層21を有するガスケット部材8で電池缶3の開口3aを封口する。その結果、電池缶3の外部からの水分の透過を抑えることで電池缶3の内部への水分の透過を低減する。更に、水分透過による電池缶3の内圧上昇を低減しながら、ガスケット部材8の脆化による電池内部の液漏れの発生を抑制できる。