(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139917
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】活物質層形成装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20220915BHJP
【FI】
H01M4/139
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040500
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 桃香
(72)【発明者】
【氏名】上薗 知之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 壮吉
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 汀
(72)【発明者】
【氏名】松山 美由紀
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA00
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】歩留まりを向上させることができる活物質層形成装置を提供する。
【解決手段】活物質層形成装置103は、複合粒子15と磁性キャリア粒子200とを混合して、磁性キャリア粒子200の表面に複合粒子15が付着した複合キャリア粒子205を作製する粒子混合部120と、集電箔3を搬送するバックアップロール130と、粒子混合部120に位置する複合キャリア粒子205を外周面に磁気吸着して周方向に搬送するマグネットロール140と、バックアップロール130とマグネットロール140との間に直流電圧を印加する直流電源150と、粒子混合部120の上方において、マグネットロール140の外周面140mに対して第2間隙K2を空けてマグネットロール140の側方に配置されたスキージ127とを備える。スキージ127は、当該スキージ127上に落下した複合粒子15を粒子混合部120へ戻す構造を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の集電箔上に、活物質粒子及びバインダ粒子を含む活物質層を形成する、活物質層形成装置において、
前記活物質粒子の表面に前記バインダ粒子が結合した複合粒子と、磁性キャリア粒子とを混合して、前記磁性キャリア粒子の表面に前記複合粒子が付着した複合キャリア粒子を作製する粒子混合部と、
前記集電箔をその長手方向に沿った搬送方向に搬送するバックアップロールと、
前記バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される前記集電箔に第1間隙を空けて、前記バックアップロールに平行に配置されると共に、前記粒子混合部の上方に配置されたマグネットロールであって、前記粒子混合部に位置する前記複合キャリア粒子を、当該マグネットロールの外周面に磁気吸着して前記第1間隙に向けて当該マグネットロールの周方向に搬送するマグネットロールと、
前記バックアップロールと前記マグネットロールとの間に直流電圧を印加して、前記第1間隙を含む成膜領域において、前記マグネットロールによって搬送されている前記複合キャリア粒子に含まれていた前記複合粒子を、前記バックアップロールによって搬送されている前記集電箔に向けて空中移動させて、前記集電箔上に前記複合粒子を堆積させる直流電源と、
前記粒子混合部の上方において、前記マグネットロールの外周面に対して第2間隙を空けて前記マグネットロールの側方に配置されたスキージであって、前記マグネットロールの前記外周面に磁気吸着して前記第1間隙に向かって搬送される前記複合キャリア粒子からなる複合キャリア粒子層を均して、前記複合キャリア粒子層の厚みを前記第2間隙の寸法に調整するスキージと、を備え、
前記スキージは、当該スキージ上に落下した前記複合粒子を前記粒子混合部へ戻す構造を有する
活物質層形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の活物質層形成装置であって、
前記スキージは、前記粒子混合部の上方に固定された剛体であり、
前記スキージの上面は、前記マグネットロール側とは反対側を向く傾斜面であって、その傾斜角度が前記複合粒子の安息角よりも大きい傾斜面であり、
前記スキージの前記傾斜面上に落下した前記複合粒子が、前記傾斜面を滑り落ちて前記粒子混合部に戻るように構成されている
活物質層形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の活物質層形成装置であって、
前記スキージは、
前記粒子混合部の上方において前記マグネットロールに平行に配置されて、前記マグネットロールの回転方向とは逆方向に回転するロールからなるスキージロールであり、
前記スキージロールの外周面上に落下した前記複合粒子が、前記スキージロールの回転によって前記スキージロールの外周面から下方に落ちて前記粒子混合部に戻るように構成されている
活物質層形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質層形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、帯状の集電箔上に、活物質粒子及びバインダ粒子を含む活物質層を形成する、活物質層形成装置が開示されている。この活物質層形成装置は、粒子混合部とバックアップロールとマグネットロールと直流電源とスキージとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
このうち、粒子混合部は、活物質粒子の表面にバインダ粒子が結合した複合粒子と、磁性キャリア粒子とを混合して、磁性キャリア粒子の表面に複合粒子が付着した複合キャリア粒子を作製する。また、バックアップロールは、集電箔をその長手方向に沿った搬送方向に搬送する。また、マグネットロールは、バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される集電箔に第1間隙を空けて、バックアップロールに平行に配置されると共に、粒子混合部の上方に配置されている。このマグネットロールは、粒子混合部に位置する複合キャリア粒子を、当該マグネットロールの外周面に磁気吸着して前記第1間隙に向けて当該マグネットロールの周方向に搬送する。
【0005】
また、直流電源は、バックアップロールとマグネットロールとの間に直流電圧を印加して、前記第1間隙を含む成膜領域(飛翔領域)において、マグネットロールによって搬送されている複合キャリア粒子に含まれていた複合粒子を、バックアップロールによって搬送されている集電箔に向けて空中移動させて、集電箔上に複合粒子を堆積させる。また、スキージは、粒子混合部の上方において、マグネットロールの外周面に対して第2間隙を空けてマグネットロールの側方に配置されている。このスキージは、マグネットロールの外周面に磁気吸着して前記第1間隙に向かって搬送される複合キャリア粒子からなる複合キャリア粒子層を均して、複合キャリア粒子層の厚みを前記第2間隙の寸法に調整する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複合キャリア粒子がマグネットロールによって搬送されて前記第2間隙(マグネットロールの外周面とスキージとの間隙)を通過した後、当該複合キャリア粒子を構成する磁性キャリア粒子の表面から複合粒子が脱落し、スキージ上に落下して、スキージ上に堆積してしまうことがあった。スキージ上に堆積した複合粒子は、活物質層の形成に寄与しないので、スキージ上に堆積する複合粒子が増えるほど、歩留まりが低下することになる。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、歩留まりを向上させることができる活物質層形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、帯状の集電箔上に、活物質粒子及びバインダ粒子を含む活物質層を形成する、活物質層形成装置において、前記活物質粒子の表面に前記バインダ粒子が結合した複合粒子と、磁性キャリア粒子とを混合して、前記磁性キャリア粒子の表面に前記複合粒子が付着した複合キャリア粒子を作製する粒子混合部と、前記集電箔をその長手方向に沿った搬送方向に搬送するバックアップロールと、前記バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される前記集電箔に第1間隙を空けて、前記バックアップロールに平行に配置されると共に、前記粒子混合部の上方に配置されたマグネットロールであって、前記粒子混合部に位置する前記複合キャリア粒子を、当該マグネットロールの外周面に磁気吸着して前記第1間隙に向けて当該マグネットロールの周方向に搬送するマグネットロールと、前記バックアップロールと前記マグネットロールとの間に直流電圧を印加して、前記第1間隙を含む成膜領域(飛翔領域)において、前記マグネットロールによって搬送されている前記複合キャリア粒子に含まれていた前記複合粒子を、前記バックアップロールによって搬送されている前記集電箔に向けて空中移動させて、前記集電箔上に前記複合粒子を堆積させる直流電源と、前記粒子混合部の上方において、前記マグネットロールの外周面に対して第2間隙を空けて前記マグネットロールの側方に配置されたスキージであって、前記マグネットロールの前記外周面に磁気吸着して前記第1間隙に向かって搬送される前記複合キャリア粒子からなる複合キャリア粒子層を均して、前記複合キャリア粒子層の厚みを前記第2間隙の寸法に調整するスキージと、を備え、前記スキージは、当該スキージ上に落下した前記複合粒子を前記粒子混合部へ戻す構造を有する活物質層形成装置である。
【0009】
上述の活物質層形成装置では、スキージが、当該スキージ上に落下した複合粒子を粒子混合部へ戻す構造を有する。これにより、例えば、マグネットロールによって搬送されて第2間隙(マグネットロールの外周面とスキージとの間隙)を通過した複合キャリア粒子を構成する磁性キャリア粒子の表面から脱落して、当該スキージ上に落下した複合粒子を、粒子混合部へ戻すことができる。粒子混合部に戻った複合粒子は、再び、磁性キャリア粒子との混合によって磁性キャリア粒子の表面に付着して、複合キャリア粒子を構成する。この複合キャリア粒子は、活物質層を形成するため、マグネットロールによって搬送される。このように、上述の活物質層形成装置では、スキージ上に堆積して活物質層の形成に寄与しなくなる複合粒子の量を低減することができるので、歩留まりを向上させることができる。
【0010】
なお、「スキージ上に落下した複合粒子を粒子混合部へ戻す構造」としては、例えば、「スキージの上面であって複合粒子が滑り落ちる傾斜面」や「スキージであるスキージロールが回転する構造」などを挙げることができる。
【0011】
さらに、前記の活物質層形成装置であって、前記スキージは、前記粒子混合部の上方に固定された剛体であり、前記スキージの上面は、前記マグネットロール側とは反対側を向く傾斜面であって、その傾斜角度が前記複合粒子の安息角よりも大きい傾斜面であり、前記スキージの前記傾斜面上に落下した前記複合粒子が、前記傾斜面を滑り落ちて前記粒子混合部に戻るように構成されている活物質層形成装置とすると良い。
【0012】
上述の活物質層形成装置では、スキージとして、粒子混合部の上方に固定された剛体であるスキージ(例えば、スキージブレード)を備える。このスキージの上面は、マグネットロール側とは反対側を向く傾斜面(下方に向かうにしたがってマグネットロールから遠ざかる形態の傾斜面)であって、その傾斜角度が複合粒子(複合粒子が堆積した堆積物)の安息角よりも大きい傾斜面となっている。なお、傾斜面の傾斜角度とは、傾斜面が水平面となす角度のうち小さい方の角度である。このようなスキージを備える活物質層形成装置は、スキージの傾斜面上に落下した複合粒子が、スキージの傾斜面を滑り落ちて粒子混合部に戻るように構成されている。
【0013】
すなわち、上述の活物質層形成装置では、前述の「スキージ上に落下した複合粒子を粒子混合部へ戻す構造」として、前述の「傾斜面」を有する。このため、例えば、マグネットロールによって搬送されて第2間隙(マグネットロールの外周面とスキージとの間隙)を通過した複合キャリア粒子を構成する磁性キャリア粒子の表面から脱落して、当該スキージ上(傾斜面上)に落下した複合粒子を、粒子混合部へ戻すことができる。これにより、スキージ上に堆積して活物質層の形成に寄与しなくなる複合粒子の量を低減することができるので、歩留まりを向上させることができる。
【0014】
また、前記の活物質層形成装置であって、前記スキージは、前記粒子混合部の上方において前記マグネットロールに平行に配置されて、前記マグネットロールの回転方向とは逆方向に回転するロールからなるスキージロールであり、前記スキージロールの外周面上に落下した前記複合粒子が、前記スキージロールの回転によって前記スキージロールの外周面から下方に落ちて前記粒子混合部に戻るように構成されている活物質層形成装置とすると良い。
【0015】
上述の活物質層形成装置では、スキージとして、ロールからなるスキージロールを備える。このスキージロールは、粒子混合部の上方においてマグネットロールに平行に配置され、マグネットロールの回転方向とは逆方向に回転する構造を有する。このようなスキージロールを備える活物質層形成装置は、スキージロールの外周面上に落下した複合粒子が、スキージロールの回転によってスキージロールの外周面から下方に落ちて、粒子混合部に戻るように構成されている。
【0016】
すなわち、上述の活物質層形成装置では、前述の「スキージ上に落下した複合粒子を粒子混合部へ戻す構造」として、前述の「スキージロール(スキージロールが回転する構造)」を有する。このため、例えば、マグネットロールによって搬送されて第2間隙(マグネットロールの外周面とスキージロールの外周面との間隙)を通過した複合キャリア粒子を構成する磁性キャリア粒子の表面から脱落して、スキージ上(スキージロールの外周面上)に落下した複合粒子を、粒子混合部へ戻すことができる。これにより、スキージ上に堆積して活物質層の形成に寄与しなくなる複合粒子の量を低減することができるので、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態にかかる活物質層形成装置を有する電極シート製造装置の側面視概略図である。
【
図3】実施形態にかかるスキージの説明図であり、
図2のC部拡大図に相当する。
【
図5】複合粒子が集電箔に向けて空中移動して活物質層が形成される工程を説明する図である。
【
図6】集電箔上に活物質層が形成された電極シートの断面図である。
【
図7】変形形態にかかるスキージを有する活物質層形成装置の部分拡大図である。
【
図8】変形形態にかかるスキージの説明図であり、
図7のE部拡大図に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施形態にかかる電極シート製造装置100は、活物質層形成装置103とロールプレス装置105とを備える。活物質層形成装置103は、帯状の集電箔3の第1表面3b上に、活物質粒子11及びバインダ粒子13を含む活物質層5を形成する。この活物質層形成装置103は、粒子供給部110と粒子混合部120とバックアップロール130とマグネットロール140と直流電源150とスキージ127とを備える(
図1参照)。
【0019】
粒子供給部110は、粒子混合部120の上方に配置されており、複合粒子15を収容する収容部111と、この収容部111内に設けられた攪拌翼113及び送りロール115とを有する。この粒子供給部110は、複合粒子15を一時的に収容すると共に、複合粒子15を粒子混合部120へ供給する。なお、複合粒子15は、溶媒を含むことなく、活物質粒子11と、活物質粒子11の表面に結合したバインダ粒子13とからなる(
図1~
図3参照)。本実施形態では、活物質粒子11として、カーボン粒子からなる負極活物質粒子を用いている。
【0020】
また、粒子混合部120は、複合粒子15と磁性キャリア粒子200とを混合して、磁性キャリア粒子200の表面に複合粒子15が付着した複合キャリア粒子205を作製する。この粒子混合部120は、粒子供給部110及びマグネットロール140の下方に配置されており、複合粒子15及び磁性キャリア粒子200を収容する収容部121bと、この収容部121b内に設けられた3つの攪拌翼(第1攪拌翼123、第2攪拌翼124、及び第3攪拌翼125)とを有する(
図1参照)。なお、収容部121bは、箱体121の一部である。箱体121は、収容部121bと、収容部121bの第1側壁部121dの上端から上方に延びる上方側壁部121cとを有する。また、磁性キャリア粒子200は、粒子混合部120の収容部121b内に一定量収容されている。
【0021】
なお、本実施形態では、前述の粒子供給部110は、複合粒子15による磁性キャリア粒子200の表面の被覆率が理論値で50%となるように、複合粒子15を粒子混合部120へ供給する。ここで、被覆率の理論値(理論上の被覆率)とは、粒子混合部120内の全ての複合粒子15が、粒子混合部120内の全ての磁性キャリア粒子200の表面に均等に付着した場合における、複合粒子15による磁性キャリア粒子200の表面の被覆率である。複合粒子15によって磁性キャリア粒子200の表面の全体が被覆された場合が被覆率100%になり、複合粒子15によって磁性キャリア粒子200の表面の半分が被覆された場合が被覆率50%になる。本実施形態では、理論上の被覆率が50%になる量の複合粒子15が粒子混合部120の収容部121b内に存在しているように、複合粒子15を粒子混合部120へ供給する。
【0022】
ここで、磁性キャリア粒子200について説明する。この磁性キャリア粒子200は、主として強磁性体からなる粒子である。本実施形態では、主としてフェライトからなる粒子、詳細には、フェライト粒子の表面にシリコーン系の樹脂がコーティングされた粒子である。なお、磁性キャリア粒子200の平均粒径D50は、100μmであり、複合粒子15の平均粒径D50は、7μmである。
【0023】
粒子混合部120のうち、
図1において最も左側に位置する第1攪拌翼123は、
図1において反時計回りに回転し、粒子供給部110から粒子混合部120の収容部121b内に供給された複合粒子15と、予め収容部121b内に収容されている磁性キャリア粒子200とを混合しつつ、複合粒子15及び磁性キャリア粒子200を、
図1において中央に位置する第2攪拌翼124に送る。
【0024】
第1攪拌翼123と第3攪拌翼125との間に位置する第2攪拌翼124は、
図1において反時計回りに回転し、第3攪拌翼125は、
図1において時計回りに回転する。これにより、複合粒子15と磁性キャリア粒子200とを更に混合して、磁性キャリア粒子200の表面に複合粒子15が付着した複合キャリア粒子205を作製しつつ、第2攪拌翼124と第3攪拌翼125との中間部分において、複合キャリア粒子205を上方のマグネットロール140に向けて送る。なお、磁性キャリア粒子200と複合粒子15は、両者間に働く静電気力やファンデルワールス力によって結合して、複合キャリア粒子205を形成する。
【0025】
バックアップロール130は、マグネットロール140の上方に配置されている。また、バックアップロール130の近傍には、バックアップロール130と平行に搬送ロール135が配置されている。バックアップロール130及び搬送ロール135は、集電箔3を、その長手方向DLに沿った搬送方向DMに搬送する(
図1参照)。具体的には、搬送ロール135は、集電箔3の第1表面3bに接触して、集電箔3をバックアップロール130に向けて搬送する。
【0026】
また、バックアップロール130には、バックアップロール130を回転駆動させるモータ(不図示)が連結されている。これにより、バックアップロール130は、
図1において時計回りに回転し、当該バックアップロール130の外周面130mに集電箔3の第2表面3cが接触する態様で、搬送ロール135から送られてきた集電箔3を外周面130mに巻き付けるようにして、集電箔3をロールプレス装置105に向けて搬送する。
【0027】
マグネットロール140は、バックアップロール130の外周面130mに沿って周方向に搬送される集電箔3の下方に第1間隙K1を空けて、バックアップロール130に平行に配置されると共に、粒子混合部120の上方に配置されている。なお、マグネットロール140は、バックアップロール130の下方に第3間隙K3を空けて配置されている。本実施形態では、第3間隙K3の大きさは4.0mmであり、第1間隙K1の大きさは、第3間隙K3よりも集電箔3の厚み分だけ(本実施形態では12μm)小さい。
【0028】
マグネットロール140は、外周面140mに生じた磁力Fgによって、複合キャリア粒子205を外周面140mに吸着可能に構成されている。このマグネットロール140は、粒子混合部120に存在する複合キャリア粒子205を、当該マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着しつつ、第1間隙K1(成膜領域MR)に向けて当該マグネットロール140の周方向に搬送する。なお、マグネットロール140の外周面140mに生じる磁力Fgの大きさは、マグネットロール140の周方向位置によって異なっており、外周面140mのうち、後述する成膜領域MRを形成する成膜領域形成部140mp(第1磁石143N1が径方向内側に存在する部位、
図4参照)において最も強い。
【0029】
具体的には、マグネットロール140は、
図4に示すように、アルミニウムからなる円筒状の金属筒141と、この金属筒141の内部に金属筒141と同軸に配置された、5極構造を有する円柱状のマグネット部143とを有する。金属筒141の外周面141mは、マグネットロール140の外周面140mをなす。この金属筒141には、金属筒141を回転駆動させるモータ(不図示)が連結されており、これにより、金属筒141は、
図1において反時計回りに回転する。なお、この金属筒141の周速(マグネットロール140の周速)を変更することにより、活物質層5の目付量を調整できる。
【0030】
一方、マグネット部143は、固定されており回転しない。マグネット部143は、マグネットロール140のロール軸に直交する断面が、それぞれ扇状の5つのフェライト磁石からなる磁石(第1磁石143N1、第2磁石143S1、第3磁石143S2、第4磁石143N2、及び第5磁石143S3)により構成されている。第1磁石143N1及び第4磁石143N2は、それぞれ、径方向外側にN極を有する磁石であり、第2磁石143S1、第3磁石143S2、及び第5磁石143S3は、それぞれ、径方向外側にS極を有する磁石である(
図1及び
図4参照)。このうち第1磁石143N1は、上方に配置されており、金属筒141、及び、バックアップロール130で搬送される集電箔3を介して、バックアップロール130に対向する。
図1において、この第1磁石143N1から反時計回りに、第2磁石143S1、第3磁石143S2、第4磁石143N2、第5磁石143S3が配置されている。
【0031】
直流電源150は、バックアップロール130とマグネットロール140との間に直流電圧Vdを印加して、第1間隙K1を含む成膜領域MRにおいて、マグネットロール140によって搬送されている複合キャリア粒子205に含まれていた複合粒子15を、バックアップロール130によって搬送されている集電箔3に向けて空中移動(飛翔)させて、集電箔3の第1表面3b上に複合粒子15を堆積させる(
図1及び
図5参照)。
【0032】
具体的には、直流電源150は、その正極がマグネットロール140に、負極がバックアップロール130に電気的に接続されている。なお、バックアップロール130は接地されている。本実施形態では、この直流電源150により、マグネットロール140の電位が-600V、バックアップロール130の電位が0Vとなるため、マグネットロール140とバックアップロール130との間に直流電圧Vd=-600Vが掛けられる(
図5参照)。
【0033】
これにより、バックアップロール130に巻きつけられて搬送される集電箔3とマグネットロール140との第1間隙K1を含む成膜領域MRにおいて、静電気力Fsが生じる。本実施形態では、マグネットロール140に吸着して搬送されている複合キャリア粒子205に含まれていた複合粒子15が、第1間隙K1を含む成膜領域MR(飛翔領域)において、集電箔3に向けて空中移動(飛翔)して、集電箔3との間に働く静電気力Fsによって集電箔3の第1表面3bに引きつけられて付着(吸着)する(
図1及び
図5参照)。
【0034】
スキージ127は、粒子混合部120の上方において、マグネットロール140の外周面140mに対して第2間隙K2を空けてマグネットロール140の側方に配置されている。また、このスキージ127は、箱体121の上方側壁部121cに対して第4間隙K4を空けて上方側壁部121cの側方に配置されている。すなわち、スキージ127は、マグネットロール140の外周面140mに対して第2間隙K2を空けて、且つ、箱体121の上方側壁部121cに対して第4間隙K4を空けて、マグネットロール140と上方側壁部121cとの間に配置されている(
図1及び
図2参照)。なお、
図1及び
図2では、複合キャリア粒子205等の図示を一部省略している。
【0035】
このスキージ127は、マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着して第1間隙K1(成膜領域MR)に向かって搬送される複合キャリア粒子205からなる複合キャリア粒子層210を均して、複合キャリア粒子層210の厚みを第2間隙K2の寸法に調整する(
図1及び
図3参照)。このスキージ127は、剛体(金属体)である平板状のスキージブレードであり、粒子混合部120の上方で、箱体121の図示しない側壁部(
図1において紙面手前側と奥側に位置する2つの側壁部)に固定されて、不動とされている。
【0036】
また、ロールプレス装置105は、第1加熱加圧ロール171と、この第1加熱加圧ロール171の下方に第5間隙K5を空けて第1加熱加圧ロール171に平行に配置された第2加熱加圧ロール173とを有する。第1加熱加圧ロール171及び第2加熱加圧ロール173には、それぞれ、これらを回転駆動させるモータ(不図示)が連結されている。また、第1加熱加圧ロール171及び第2加熱加圧ロール173には、それぞれヒータ(不図示)が内蔵されている。このロールプレス装置105は、活物質層形成装置103によって作製されて搬送される電極シート1(集電箔3上に活物質層5が形成されたシート)を、第1加熱加圧ロール171と第2加熱加圧ロール173との間で、ホットロールプレスする。
【0037】
次に、本実施形態の電極シート1の製造方法について説明する。まず、粒子混合部120において、複合粒子15と磁性キャリア粒子200とを混合して、磁性キャリア粒子200の表面に複合粒子15が付着した複合キャリア粒子205を作製する。続いて、粒子混合部120において作製された複合キャリア粒子205を、マグネットロール140の下側において、マグネットロール140の外周面140mに吸着させる。具体的には、粒子混合部120の第2攪拌翼124と第3攪拌翼125によって上方のマグネットロール140に向けて送られた複合キャリア粒子205が、マグネットロール140の外周面140mに生じている磁力Fgによって、マグネットロール140の外周面140mに吸着する。
【0038】
マグネットロール140の外周面140mに吸着した複合キャリア粒子205からなる複合キャリア粒子層210は、マグネットロール140の回転に伴って上方に移動し、スキージ127によって均される(
図3参照)。その後、この複合キャリア粒子層210は、マグネットロール140の回転に伴って、第1間隙K1を含む成膜領域MRまで移動する。また、バックアップロール130によって、集電箔3が長手方向DLに沿った搬送方向DM搬送される。
【0039】
ところで、マグネットロール140の外周面140mに生じる磁力Fgの大きさは、成膜領域MRを形成する成膜領域形成部140mp(
図4参照)において最も強くなる。このため、マグネットロール140によって搬送されて成膜領域MRに達した複合キャリア粒子205(複合キャリア粒子層210を形成していた複合キャリア粒子205)は、複数の複合キャリア粒子205が線状に連なった磁気穂220を形成する(
図5参照)。そして、成膜領域MRにおいて、磁気穂220が形成されるときに複合キャリア粒子205に加わる振動や、磁気穂220の揺動(振動)などによって、複合キャリア粒子205に含まれる複合粒子15が磁性キャリア粒子200の表面から脱離して、集電箔3に向けて空中移動(飛翔)する。そして、この複合粒子15は、集電箔3との間に働く静電気力Fsによって集電箔3の第1表面3bに引きつけられて、集電箔3の第1表面3bに付着(吸着)する(
図1及び
図5参照)。これにより、集電箔3の第1表面3b上には、複合粒子15(活物質粒子11とバインダ粒子13)が堆積した活物質層5が連続して形成される。なお、マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着している磁性キャリア粒子200は、そのまま外周面140m上に残る。
【0040】
その後、マグネットロール140の外周面140mに吸着したまま残った磁性キャリア粒子200は、マグネットロール140の回転に伴って反時計回りに下方に移動する。そして、S極同士が隣り合う第2磁石143S1と第3磁石143S2との境界部140mq(
図4参照)で、外周面140mから剥がれ落ち、粒子混合部120の収容部121b内に戻る。その後、この磁性キャリア粒子200は、粒子混合部120において複合粒子15と混合され、新たな複合粒子15が付着して複合キャリア粒子205を形成する。このようにして、帯状の集電箔3と、集電箔3の第1表面3b上に形成された活物質層5とを備える電極シート1(
図6参照)が作製される。
【0041】
続いて、上述のようにして、活物質層形成装置103によって作製されて搬送される電極シート1(集電箔3上に活物質層5が形成されたシート)を、ロールプレス装置105によってホットロールプレスする。これにより、集電箔3上の活物質層5が圧密化されると共に、活物質層5中のバインダ粒子13が軟化(または溶融)して結着作用を生じる。これにより、活物質層5中の活物質粒子11同士がバインダ粒子13によって結着すると共に、活物質層5がバインダ粒子13によって集電箔3に結着した電極シート1(
図6参照)が作製される。この電極シート1は、例えば、リチウムイオン二次電池の電極シート(負極シートまたは正極シート)として用いることができる。また、本実施形態では、集電箔3の第1表面3bのみに活物質層5を形成したが、第2表面3cにも活物質層5を形成するようにしても良い。
【0042】
ところで、従来の活物質層形成装置では、複合キャリア粒子205がマグネットロール140によって搬送されて第2間隙K2(マグネットロール140の外周面140mとスキージとの間隙)を通過した後、当該複合キャリア粒子205を構成する磁性キャリア粒子200の表面から複合粒子15が脱落し、スキージ上に落下して、スキージ上に堆積してしまうことがあった。スキージ上に堆積した複合粒子15は、活物質層5の形成に寄与しないので、スキージ上に堆積する複合粒子15が増えるほど、歩留まりが低下することになる。
【0043】
これに対し、本実施形態の活物質層形成装置103では、スキージ127が、当該スキージ127上に落下した複合粒子15を粒子混合部120へ戻す構造を有する。具体的には、スキージ127の上面(上側を向く面)が、マグネットロール140側(
図1において左側)とは反対側(
図1において右側)を向く傾斜面127b(下方に向かうにしたがってマグネットロール140から遠ざかる形態の傾斜面127b)とされている。この傾斜面127bの傾斜角度θは、
図2に示すように、複合粒子15(複合粒子15が堆積した堆積物)の安息角よりも大きい。なお、傾斜面127bの傾斜角度θとは、傾斜面127bが水平面HLとなす角度のうち小さい方の角度である(
図2参照)。本実施形態では、スキージ127(スキージブレード)の平面状の上面が、マグネットロール140側とは反対側を向いて水平面HLに対して角度θをなすように、平板形状のスキージ127を斜めに取り付けている。なお、本実施形態の複合粒子15(複合粒子15が堆積した堆積物)の安息角は約50°であり、傾斜面127bの傾斜角度θは60°である。
【0044】
このようなスキージ127を備える活物質層形成装置103では、
図3に示すように、スキージ127の傾斜面127b上に落下した複合粒子15は、スキージ127の傾斜面127bを滑り落ち、第4間隙K4を通って下方に落下し、スキージ127の下方に位置する粒子混合部120に戻る。すなわち、本実施形態の活物質層形成装置103では、「スキージ127上に落下した複合粒子15を粒子混合部120へ戻す構造」として、「傾斜面127b」を有する。これにより、本実施形態の活物質層形成装置103では、スキージ127上に堆積して活物質層5の形成に寄与しなくなる複合粒子15の量を低減することができるので、歩留まりを向上させることができる。
【0045】
<実施例1と比較例1>
実施例1として、前述の活物質層形成装置103を用いて、長さ1mの電極シート1を作製した。なお、本実施例1では、粒子混合部120(収容部121b)に、250gの磁性キャリア粒子200と26.5gの複合粒子15を収容して、電極シート1の作製を開始している。また、比較例1として、実施例1の活物質層形成装置103と比較して、スキージ127の取り付け角度のみが異なる活物質層形成装置を用いて、長さ1mの電極シート1を作製した。その後、スキージ127上に堆積した複合粒子15の量を調査した。この比較例1では、スキージ127の上面を水平にしている。
【0046】
実施例1と比較例1について、長さ1mの電極シート1を作製した後、スキージ127上に堆積した複合粒子15の量を調査した。比較例1では、約0.9gの複合粒子15がスキージ127上に堆積していた。すなわち、粒子混合部120(収容部121b)に収容した複合粒子15の約3.4%が、スキージ127上に堆積していた。
【0047】
一方、実施例1では、スキージ127上に複合粒子15が存在せず、粒子混合部120(収容部121b)に残存する複合粒子15の量が、比較例1に比べて、比較例1のスキージ127上に堆積した複合粒子15の量だけ多かった。すなわち、実施例1では、スキージ127の傾斜面127b上に落下した複合粒子15が、スキージ127の傾斜面127bを滑り落ちて、スキージ127の下方に位置する粒子混合部120に戻った。以上の結果より、本実施形態の活物質層形成装置103では、スキージ127上に堆積して活物質層5の形成に寄与しなくなる複合粒子15の量を低減することができるので、歩留まりを向上させることができるといえる。
【0048】
<変形形態>
本変形形態の活物質層形成装置303は、実施形態の活物質層形成装置103と比較して、スキージ327のみが異なり、その他は同様である(
図7参照)。本変形形態のスキージ327は、
図7に示すように、ロールからなるスキージロール327である。このスキージロール327は、粒子混合部120の上方においてマグネットロール140に平行に配置され、マグネットロール140の回転方向とは逆方向に回転する構造を有する。詳細には、スキージロール327は、マグネットロール140の外周面140mに対して第2間隙K2を空けてマグネットロール140の側方に配置されると共に、箱体121の上方側壁部121cに対して第4間隙K4を空けて上方側壁部121cの側方に配置されている(
図7参照)。
【0049】
このスキージロール327は、マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着して第1間隙K1(成膜領域MR)に向かって搬送される複合キャリア粒子205からなる複合キャリア粒子層210を均して、複合キャリア粒子層210の厚みを第2間隙K2の寸法に調整する(
図8参照)。なお、スキージロール327の周速は、マグネットロール140の周速よりも速い。
【0050】
さらに、このようなスキージロール327を備える活物質層形成装置303では、
図8に示すように、スキージロール327の外周面327b上に落下した複合粒子15が、スキージロール327の回転によって、第4間隙K4を通ってスキージロール327の外周面327bから下方に落ちて、粒子混合部120に戻る。すなわち、本変形形態の活物質層形成装置303では、「スキージ327上に落下した複合粒子15を粒子混合部120へ戻す構造」として、「スキージロール327(スキージロール327が回転する構造)」を有する。これにより、本変形形態の活物質層形成装置303では、スキージ327上に堆積して活物質層5の形成に寄与しなくなる複合粒子15の量を低減することができるので、歩留まりを向上させることができる。
【0051】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。例えば、実施形態では、複合粒子として、活物質粒子11と、活物質粒子11の表面に結合したバインダ粒子13とからなる複合粒子15を用いたが、活物質粒子と、活物質粒子の表面に結合したバインダ粒子及び導電粒子とからなる複合粒子を用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 電極シート
3 集電箔
5 活物質層
11 活物質粒子
13 バインダ粒子
15 複合粒子
103 活物質層形成装置
120 粒子混合部
127 スキージ(スキージブレード)
327 スキージロール(スキージ)
130 バックアップロール
140 マグネットロール
150 直流電源
200 磁性キャリア粒子
205 複合キャリア粒子