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特開2022-139918ロールプレス装置及び圧密化済み帯状電極板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139918
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ロールプレス装置及び圧密化済み帯状電極板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20220915BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220915BHJP
   B30B 3/00 20060101ALI20220915BHJP
   B21D 53/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/139
B30B3/00 B
B21D53/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040501
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 健吾
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 智史
(72)【発明者】
【氏名】中村 洸太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 知哉
(72)【発明者】
【氏名】内藤 秀次
(72)【発明者】
【氏名】榎本 吉秀
【テーマコード(参考)】
4E090
5H050
【Fターム(参考)】
4E090AA04
4E090AB01
4E090AB07
4E090BA02
4E090HA10
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050DA04
5H050FA05
5H050GA03
5H050GA08
5H050GA29
5H050GA30
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】各々帯状をなす活物質部及び非活物質部を有する帯状電極板をロールプレスする際に、非活物質部に皺が生じるのを抑制できるロールプレス装置等を提供する。
【解決手段】ロールプレス装置100は、第1プレスロール110及び第2プレスロール120を備える。第1プレスロール110は、帯状電極板1Zの活物質部11に接触する第1接触部111と、帯状電極板1Zの非活物質部12に接触する第2接触部112とを有する。第2接触部112は、帯状電極板1Zの非活物質部12との間に生じる摩擦力F2が、仮に第1接触部111に帯状電極板1Zの非活物質部12を接触させたときに生じる仮想摩擦力F1よりも大きくなる摩擦力増大形態を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の集電箔及び上記集電箔上に上記集電箔の長手方向に延びる帯状の活物質層を備え、
上記長手方向に延びる帯状で、上記集電箔の厚み方向に上記活物質層を有する活物質部と、
上記長手方向に延びる帯状で、上記活物質部と上記集電箔の幅方向に並び、上記厚み方向に上記活物質層を有せず、上記活物質部よりも厚みの薄い非活物質部と、を有する
帯状電極板を、上記長手方向に搬送しつつロールプレスして上記活物質層を圧密化する
ロールプレス装置であって、
ロール間隙を空けて平行に配置された第1プレスロール及び第2プレスロールを備え、
上記第1プレスロールは、
上記帯状電極板の上記活物質部に接触する第1接触部と、
上記帯状電極板の上記非活物質部に接触する第2接触部と、を有し、
上記第1プレスロールの上記第2接触部は、
上記第1接触部とは異なる形態であって、
上記帯状電極板の上記非活物質部との間に生じる摩擦力F2が、仮に上記第1プレスロールの上記第1接触部に上記帯状電極板の上記非活物質部を接触させたときに生じる仮想摩擦力F1よりも大きくなる(F2>F1)摩擦力増大形態を有する
ロールプレス装置。
【請求項2】
帯状の集電箔及び上記集電箔の厚み方向に圧密化された圧密化済み帯状活物質層を備える圧密化済み帯状電極板の製造方法であって、
上記集電箔及び上記集電箔上に上記集電箔の長手方向に延びる帯状の活物質層を備え、
上記長手方向に延びる帯状で、上記厚み方向に上記活物質層を有する活物質部と、
上記長手方向に延びる帯状で、上記活物質部と上記集電箔の幅方向に並び、上記厚み方向に上記活物質層を有せず、上記活物質部よりも厚みの薄い非活物質部と、を有する
帯状電極板を形成する電極板形成工程と、
上記帯状電極板を上記長手方向に搬送しつつ、ロール間隙を空けて平行に配置された第1プレスロール及び第2プレスロールでロールプレスして、上記圧密化済み活物質層を備える上記圧密化済み帯状電極板を形成するプレス工程と、を備え、
上記第1プレスロールは、
上記帯状電極板の上記活物質部に接触する第1接触部と、
上記帯状電極板の上記非活物質部に接触する第2接触部と、を有し、
上記第1プレスロールの上記第2接触部は、
上記第1接触部とは異なる形態であって、
上記帯状電極板の上記非活物質部との間に生じる摩擦力F2が、仮に上記第1プレスロールの上記第1接触部に上記帯状電極板の上記非活物質部を接触させたときに生じる仮想摩擦力F1よりも大きくなる(F2>F1)摩擦力増大形態を有しており、
上記プレス工程は、
上記第1プレスロールの上記第2接触部に上記帯状電極板の上記非活物質部に接触させて行う
圧密化済み帯状電極板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状電極板をロールプレスして活物質層を圧密化するロールプレス装置、及び、帯状電極板をロールプレスして活物質層を圧密化し圧密化済み帯状電極板を製造する圧密化済み帯状電極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などに用いられる電極板として、帯状の集電箔上に、厚み方向にプレスされ圧密化された圧密化済み帯状活物質層を有する圧密化済み帯状電極板が知られている。更に、このような電極板の中には、図6に示すように、幅方向FHの中央部を、厚み方向GHに圧密化済み活物質層905,906を有する帯状の活物質部911とし、幅方向FHの両側部を、それぞれ厚み方向GHに圧密化済み活物質層905,906を有しない帯状の非活物質部912とした圧密化済み帯状電極板901がある。
【0003】
この圧密化済み帯状電極板901は、例えば以下の手法により製造する。即ち、まず帯状の集電箔3のうち幅方向FHの中央部に、帯状に未乾燥活物質層905X,906Xを形成し、その後、未乾燥活物質層905X,906Xを加熱乾燥させて、活物質層905Z,906Zを形成する。次に、この帯状電極板901Zを、長手方向EHに搬送しつつロールプレスして、活物質層905Z,906Zを厚み方向GHに圧密化し、圧密化済み活物質層905,906を形成する。かくして、圧密化済み帯状電極板901が出来る。なお、関連する従来技術として、例えば特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-228349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の帯状電極板901Zをロールプレスする際、非活物質部912のうち、特に活物質部911との境界近傍に、幅方向FHの内側かつ上流側EUHから、幅方向FHの外側かつ下流側EDHに向かって、斜めに延びる斜線状の皺SWが繰り返し生じることがある。
このような斜線状の皺SWが生じる理由は、以下であると考えられる。即ち、ロールプレス後の圧密化済み帯状電極板901のうち、活物質部911は長手方向EHに延ばされているのに対し、非活物質部912は、活物質部911よりも厚みが薄く殆どプレスされないため、殆ど延ばされていない。このため、ロールプレス後の圧密化済み帯状電極板901に下流側EDHに向けて掛けられた張力は、活物質部911には殆ど掛からず、非活物質部912に掛かる。このように非活物質部912に下流向きの大きな張力が掛かると、その反力は、非活物質部912のうち、幅方向FHの内側の活物質部911との境界近傍に集中する。このため、この境界近傍に集中する形態に、斜線状の皺SWが生じると考えられる。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、各々帯状をなす活物質部及び非活物質部を有する帯状電極板をロールプレスする際に、非活物質部に皺が生じるのを抑制できるロールプレス装置、及び、上記帯状電極板をロールプレスする際に、非活物質部に皺が生じるのを抑制できる圧密化済み帯状電極板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、帯状の集電箔及び上記集電箔上に上記集電箔の長手方向に延びる帯状の活物質層を備え、上記長手方向に延びる帯状で、上記集電箔の厚み方向に上記活物質層を有する活物質部と、上記長手方向に延びる帯状で、上記活物質部と上記集電箔の幅方向に並び、上記厚み方向に上記活物質層を有せず、上記活物質部よりも厚みの薄い非活物質部と、を有する帯状電極板を、上記長手方向に搬送しつつロールプレスして上記活物質層を圧密化するロールプレス装置であって、ロール間隙を空けて平行に配置された第1プレスロール及び第2プレスロールを備え、上記第1プレスロールは、上記帯状電極板の上記活物質部に接触する第1接触部と、上記帯状電極板の上記非活物質部に接触する第2接触部と、を有し、上記第1プレスロールの上記第2接触部は、上記第1接触部とは異なる形態であって、上記帯状電極板の上記非活物質部との間に生じる摩擦力F2が、仮に上記第1プレスロールの上記第1接触部に上記帯状電極板の上記非活物質部を接触させたときに生じる仮想摩擦力F1よりも大きくなる(F2>F1)摩擦力増大形態を有するロールプレス装置である。
【0008】
上述のロールプレス装置では、第1プレスロールのうち、帯状電極板の非活物質部が接触する第2接触部は、帯状電極板の活物質部が接触する第1接触部とは異なる、非活物質部との間に生じる摩擦力F2が、仮に第1接触部に非活物質部を接触させたときに生じる仮想摩擦力F1よりも大きくなる摩擦力増大形態を有する。これにより、帯状電極板をロールプレスする際、第1プレスロールの第2接触部と帯状電極板の非活物質部と第1プレスロールの第2接触部との間で、比較的大きな摩擦力F2が生じる。この摩擦力F2によって、非活物質部に下流向きに掛かる張力が分散されるため、非活物質部のうち活物質部との境界近傍に生じる反力が小さくなる。このため、この境界近傍を中心に非活物質部に斜線状の皺が生じるのを抑制できる。
【0009】
なお、「帯状電極板」としては、例えば、前述のように帯状の活物質部の幅方向の両側にそれぞれ帯状の非活物質部が並んだ帯状電極板が挙げられる。或いは、複数条の帯状の活物質部と複数条の帯状の非活物質部とが交互に幅方向に並んだ帯状電極板も挙げられる。
また、「非活物質部」としては、例えば、集電箔のみからなる非活物質部や、集電箔上に、活物質層よりも厚みの薄い保護層が形成された非活物質部などが挙げられる。
【0010】
また、他の態様は、帯状の集電箔及び上記集電箔の厚み方向に圧密化された圧密化済み帯状活物質層を備える圧密化済み帯状電極板の製造方法であって、上記集電箔及び上記集電箔上に上記集電箔の長手方向に延びる帯状の活物質層を備え、上記長手方向に延びる帯状で、上記厚み方向に上記活物質層を有する活物質部と、上記長手方向に延びる帯状で、上記活物質部と上記集電箔の幅方向に並び、上記厚み方向に上記活物質層を有せず、上記活物質部よりも厚みの薄い非活物質部と、を有する帯状電極板を形成する電極板形成工程と、上記帯状電極板を上記長手方向に搬送しつつ、ロール間隙を空けて平行に配置された第1プレスロール及び第2プレスロールでロールプレスして、上記圧密化済み活物質層を備える上記圧密化済み帯状電極板を形成するプレス工程と、を備え、上記第1プレスロールは、上記帯状電極板の上記活物質部に接触する第1接触部と、上記帯状電極板の上記非活物質部に接触する第2接触部と、を有し、上記第1プレスロールの上記第2接触部は、上記第1接触部とは異なる形態であって、上記帯状電極板の上記非活物質部との間に生じる摩擦力F2が、仮に上記第1プレスロールの上記第1接触部に上記帯状電極板の上記非活物質部を接触させたときに生じる仮想摩擦力F1よりも大きくなる(F2>F1)摩擦力増大形態を有しており、上記プレス工程は、上記第1プレスロールの上記第2接触部に上記帯状電極板の上記非活物質部に接触させて行う圧密化済み帯状電極板の製造方法とすると良い。
【0011】
上述の圧密化済み帯状電極板の製造方法では、帯状電極板の非活物質部に接触する第2接触部を、帯状電極板の活物質部に接触する第1接触部とは異なる摩擦力増大形態とした第1プレスロールを用いて、プレス工程を行う。具体的には、第1プレスロールの第2接触部は、非活物質部との間に生じる摩擦力F2が、仮に第1接触部に非活物質部を接触させたときに生じる仮想摩擦力F1よりも大きくなる摩擦力増大形態を有する。これにより、帯状電極板をロールプレスする際、前述のように、非活物質部に下流向きに掛かる張力が、比較的大きな摩擦力F2によって分散されるため、非活物質部のうち活物質部との境界近傍に生じる反力が小さくなる。このため、この境界近傍を中心に非活物質部に斜線状の皺が生じるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1,2に係る圧密化済み帯状電極板の斜視図である。
図2】実施形態1,2に係る圧密化済み帯状電極板の製造方法のフローチャートである。
図3】実施形態1,2に係るロールプレス装置の側方から見た説明図である。
図4】実施形態1に係る第1プレスロール及び第2プレスロールの下流側から見た説明図である。
図5】実施形態2に係る第1プレスロール及び第2プレスロールの下流側から見た説明図である。
図6】従来技術に係る圧密化済み帯状電極板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に本実施形態1に係る圧密化済み帯状電極板1の斜視図を示す。この圧密化済み帯状電極板1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池を製造するのに用いられる。具体的には、圧密化済み帯状電極板1は、電池を構成する扁平状捲回型或いは積層型の電極体を製造するのに用いられる帯状正極板である。なお、以下では、圧密化済み帯状電極板1の長手方向EH、幅方向FH及び厚み方向GHを、図1に示す方向と定めて説明する。
【0014】
圧密化済み帯状電極板1は、長手方向EHに延びる帯状で厚み約13μmのアルミニウム箔からなる集電箔3を有する。この集電箔3の第1主面3aのうち、幅方向FHの中央で長手方向EHに延びる領域上には、厚み方向GHにプレスされ圧密化された厚み約60μmの第1圧密化済み活物質層5(以下、単に「圧密化済み活物質層5」ともいう)が、長手方向EHに帯状に形成されている。また、集電箔3の反対側の第2主面3bのうち、幅方向FHの中央で長手方向EHに延びる領域上にも、厚み方向GHにプレスされ圧密化された厚み約60μmの第2圧密化済み活物質層6(以下、単に「圧密化済み活物質層6」ともいう)が、長手方向EHに帯状に形成されている。一方、集電箔3のうち、幅方向FHの両側部で長手方向EHに延びる部位は、それぞれ、圧密化済み活物質層5,6が存在せず、集電箔3が厚み方向GHに露出している。
【0015】
この圧密化済み帯状電極板1は、上述のように、集電箔3と、この集電箔3上に形成され帯状の圧密化済み活物質層5,6とからなる。圧密化済み帯状電極板1のうち、幅方向FHの中央部は、厚み方向GHに圧密化済み活物質層5,6を有する帯状の活物質部11である。一方、圧密化済み帯状電極板1のうち、幅方向FHの両側部(活物質部11の幅方向FHの両側に並ぶ部位)は、それぞれ厚み方向GHに圧密化済み活物質層5,6を有せず、活物質部11よりも厚みの薄い非活物質部12である。
【0016】
圧密化済み活物質層5,6は、活物質粒子、導電粒子及び結着剤から構成されている。本実施形態1では、活物質粒子として、リチウム遷移金属複合酸化物粒子、具体的にはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物粒子を用いている。また、導電粒子としてアセチレンブラック(AB)粒子を、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いている。
【0017】
次いで、圧密化済み帯状正極板1の製造方法について説明する(図2図4参照)。まず「電極板形成工程S1」(図2参照)において、プレス前の帯状電極板1Zを形成する。電極板形成工程S1は、「第1未乾燥層形成工程S11」、「第1乾燥工程S12」、「第2未乾燥層形成工程S13」及び「第2乾燥工程S14」をこの順に有する。
【0018】
まず第1未乾燥層形成工程S11において、集電箔3の第1主面3a上に第1未乾燥活物質層5Xを形成する。具体的には、活物質粒子(本実施形態1ではリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物粒子)、導電粒子(本実施形態1ではAB粒子)、結着剤(本実施形態1ではPVDF)及び分散媒(本実施形態1ではN-メチルピロリドン(NMP))を混合して、活物質ペーストを予め得ておく。この第1未乾燥層形成工程S11では、集電箔3を長手方向EHに搬送しながら、塗工ダイ(不図示)により、活物質ペーストを集電箔3の第1主面3aのうち幅方向FHの中央部に吐出して、集電箔3の第1主面3a上に帯状に第1未乾燥活物質層5Xを連続して形成する。
続いて、第1乾燥工程S12において、第1未乾燥層形成工程S11で得た帯状電極板を、乾燥装置(不図示)内に搬送し、第1未乾燥活物質層5Xに熱風を吹き付けて加熱乾燥させて、第1活物質層5Z(以下、単に「活物質層5Z」ともいう)を形成する。
【0019】
次に、第2未乾燥層形成工程S13において、第1未乾燥層形成工程S11と同様にして、集電箔3の反対側の第2主面3bのうち幅方向FHの中央部にも、帯状に第2未乾燥活物質層6Xを形成する。
続いて、第2乾燥工程S14において、第1乾燥工程S12と同様にして、第2未乾燥層形成工程S13で得た帯状電極板のうち、第2未乾燥活物質層6Xに熱風を吹き付けて加熱乾燥させて、第2活物質層6Z(以下、単に「活物質層6Z」ともいう)を形成する。かくして、プレス前の帯状電極板1Zを得る。
この帯状電極板1Zは、集電箔3と帯状の活物質層5Z,6Zとからなり、帯状電極板1Zのうち、幅方向FHの中央部は、厚み方向GHに活物質層5Z,6Zを有する帯状の活物質部11、活物質部11の幅方向FHの両側に並ぶ両側部は、それぞれ厚み方向GHに活物質層5Z,6Zを有しない帯状の非活物質部12となっている。
【0020】
次に、「プレス工程S2」(図2参照)において、ロールプレス装置100(図3及び図4参照)を用いて、電極板形成工程S1で形成した帯状電極板1Zを、長手方向EHに搬送しつつ厚み方向GHにロールプレスして、活物質層5Z,6Zをそれぞれ圧密化し、圧密化済み活物質層5,6を形成する。
まずロールプレス装置100について説明する。ロールプレス装置100は、ロール間隙KAを空けて平行に配置された第1プレスロール110及び第2プレスロール120と、これら第1プレスロール110及び第2プレスロール120よりも上流側EUH(図3中、左方)に配置された上流側搬送ロール130と、第1プレスロール110及び第2プレスロール120よりも下流側EDH(図3中、右方)に配置された下流側搬送ロール135とを備える。
【0021】
第1プレスロール110及び第2プレスロール120は、いずれもロール表面110m,120mがステンレスからなる。第1プレスロール110及び第2プレスロール120には、それぞれモータ(不図示)が連結されており、第1プレスロール110は図3中、反時計回りに、第2プレスロール120は図3中、反時計回りに回転可能に構成されている。本実施形態1では、前述の帯状電極板1Zを、第1活物質層5Zを図3及び図4中、上方に向け、第2活物質層6Zを図3及び図4中、下方に向けて搬送する。このため、第1プレスロール110は、帯状電極板1Zの第1活物質層5Zに接触し、第2プレスロール120は、帯状電極板1Zの第2活物質層6Zに接触する。
【0022】
上流側搬送ロール130及び下流側搬送ロール135は、帯状電極板1Zの第2活物質層6Zに接触するように、かつ、第1プレスロール110と第2プレスロール120とのロール間隙KAよりも図3中、上方に配置されている。これにより、第1プレスロール110と帯状電極板1Zとは、抱き角を持って接触する。また、第1プレスロール110は、幅方向FH(図4中、左右方向)のほぼ全体にわたって帯状電極板1に接触する(図4参照)。即ち、第1プレスロール110は、帯状電極板1Zのうち、厚みの厚い活物質部11(その第1活物質層5Z)に接触するだけでなく、帯状電極板1Zのうち、厚みの薄い非活物質部12(集電箔3)にも接触する。第1プレスロール110のうち、帯状電極板1の活物質部11に接触する幅方向FHの中央部が、第1接触部111であり、帯状電極板1の非活物質部12に接触する幅方向FHの両側部が、それぞれ第2接触部112である。
【0023】
第1プレスロール110の第2接触部112は、第1接触部111とは異なる摩擦力増大形態を有する。即ち、本実施形態1では、第1接触部111のロール表面111mは、鏡面研磨されており、その表面粗さRa1(以下、単に「第1接触部111の表面粗さRa1」ともいう)は、Ra1=約0.1μmである。これに対し、第2接触部112のロール表面112mの表面粗さRa2(以下、単に「第2接触部112の表面粗さRa2」ともいう)は、Ra1よりも大きく、Ra2は0.2μm以上(本実施形態1ではRa2=約0.5μmとなっている。この表面粗さRa1,Ra2の違いにより、第1プレスロール110の第2接触部112と、帯状電極板1Zの非活物質部12との間に生じる摩擦力F2は、仮に第1プレスロール110の第1接触部111に帯状電極板1Zの非活物質部12を接触させたときに生じる仮想摩擦力F1よりも大きくなる(F2>F1)。
【0024】
プレス工程S2では、第1プレスロール110及び第2プレスロール120により、帯状電極板1Zがロールプレスされ、活物質層5Z,6Zが圧密化されて、圧密化済み活物質層5,6が形成される。その際、前述のように、第1プレスロール110のうち、第2接触部112の表面粗さRa2は、第1接触部111の表面粗さRa1よりも大きくなっているため、帯状電極板1の非活物質部12と第1プレスロール110の第2接触部112との間で、比較的大きな摩擦力F2が生じる。この摩擦力F2によって、非活物質部12に下流向きに掛かる張力が分散されるため、非活物質部12のうち活物質部11との境界近傍に生じる反力が小さくなる。このため、この境界近傍を中心に非活物質部12に斜線状の皺が生じるのを抑制できる。
【0025】
なお、第1プレスロール110の第1接触部111の表面粗さRa1を大きくして、第2接触部112の表面粗さRa2と等しい大きさにすることも検討した。しかし、この場合、ロールプレスの際に、活物質層5Z,6Zが第1プレスロール110のロール表面110m(第1接触部111のロール表面111m)に付着するなどの不具合が生じ易くなる。このため、上述のように、第2接触部112の表面粗さRa2を第1接触部111の表面粗さRa1よりも大きくするのが良い。
【0026】
以上で説明したように、ロールプレス装置100及び圧密化済み帯状電極板1の製造方法では、帯状電極板1Zの非活物質部12に接触する第2接触部112を、帯状電極板1Zの活物質部11に接触する第1接触部111とは異なる摩擦力増大形態とした第1プレスロール110を用いて、プレス工程S2を行っている。具体的には、第1プレスロール110の第2接触部112は、帯状電極板1Zの非活物質部12との間に生じる摩擦力F2が、仮に第1プレスロール110の第1接触部111に帯状電極板1Zの非活物質部12を接触させたときに生じる仮想摩擦力F1よりも大きくなる摩擦力増大形態を有する。これにより、帯状電極板1Zをロールプレスする際、非活物質部12に下流向きに掛かる張力が、比較的大きな摩擦力F2によって分散されるため、非活物質部12のうち活物質部11との境界近傍に生じる反力が小さくなる。このため、この境界近傍を中心に非活物質部12に斜線状の皺が生じるのを抑制できる。
【0027】
(実施形態2)
次いで、第2の実施形態について説明する。実施形態1では、第1プレスロール110のうち、第2接触部112の表面粗さRa2が、第1接触部111の表面粗さRa1よりも大きくされた第1プレスロール110を用いて、プレス工程S2を行った(図4参照)。これに対し、本実施形態2では、第1プレスロール210のうち、第2接触部212のロール径D2が、第1接触部211のロール径D1よりも大きく(D2>D1)された第1プレスロール210を用いて、プレス工程S2を行う点が異なる(図5参照)。
【0028】
本実施形態2に係るロールプレス装置200は、円柱状のプレスロールを段付き形状に加工した第1プレスロール210を備える。この第1プレスロール210も、第2接触部212は摩擦力増大形態を有する。具体的には、第1プレスロール210のうち、帯状電極板1Zの活物質部11に接触する第1接触部211は、実施形態1の第1プレスロール210の第1接触部111と同様の形態を有する。一方、第1プレスロール210のうち、帯状電極板1Zの非活物質部12に接触する第2接触部212は、そのロール径D2が第1接触部211のロール径D1よりも、30μm大きく形成されている。また、第2接触部212のうち、第1接触部211との境界近傍部212tは、角部のないテーパ状とされている。帯状電極板1Zの非活物質部12が角部にあたって損傷するのを確実に防止するためである。
なお、本実施形態2では、第1プレスロール210のロール表面210mの全体にわたり鏡面研磨されている。従って、第1接触部211のロール表面211mの表面粗さRa1と第2接触部212のロール表面212mの表面粗さRa2は等しい(Ra1=Ra2)。
【0029】
このように第1プレスロール210の第2接触部212のロール径D2を第1接触部211のロール径D1よりも大きくすると、第2接触部112と帯状電極板1Zの非活物質部12との間に生じる摩擦力F2は、仮に第1接触部111に帯状電極板1Zの非活物質部12を接触させたときに生じる仮想摩擦力F1よりも大きくなる(F2>F1)。非活物質部12を第2接触部112に押し付ける力が増加して、摩擦力F2が増加するためである。
【0030】
本実施形態2では、このような第1プレスロール210を備えるロールプレス装置200を用いて、プレス工程S2を行う。このため、本実施形態2でも、帯状電極板1の非活物質部12と第1プレスロール210の第2接触部212との間で、比較的大きな摩擦力F2が生じる。この摩擦力F2によって、非活物質部12に下流向きに掛かる張力が分散されるため、非活物質部12のうち活物質部11との境界近傍に生じる反力が小さくなり、非活物質部12に皺が生じるのを抑制できる。
【0031】
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1,2では、圧密化済み帯状電極板1が正極板である場合に本発明を適用したが、圧密化済み帯状電極板1が負極板である場合に本発明を適用することもできる。
【0032】
また、実施形態2では、第2接触部のロール径D2が第1接触部のロール径D1よりも大きい第1プレスロールとして、段付き形状に加工した第1プレスロール210を例示したが、これに限られない。例えば、第1プレスロールは、円柱状のプレスロールのうち、第2接触部となる部位に、樹脂テープや金属テープを貼り付けたり、樹脂や金属からなるコーティング層を形成したりして、第2接触部のロール径D2を第1接触部のロール径D1よりも大きくしたプレスロールでもよい。
【0033】
また、実施形態2では、第1プレスロール210の第1接触部211の表面粗さRa1と第2接触部212の表面粗さRa2とが等しいが、実施形態1のように、第2接触部212の表面粗さRa2を第1接触部211の表面粗さRa1よりも大きくしてもよい。このように、第2接触部212のロール径D2を第1接触部211のロール径D1よりも大きした上で、更に、第2接触部212の表面粗さRa2を第1接触部211の表面粗さRa1よりも大きくすれば、第2接触部212と帯状電極板1Zの非活物質部12との間に生じる摩擦力F2を、第1接触部211と非活物質部12との間に生じる仮想摩擦力F1よりも、より一層大きくできる。このため、非活物質部12における皺の発生をより効果的に抑制できる。
【符号の説明】
【0034】
1 圧密化済み帯状電極板
1Z 帯状電極板
3 集電箔
5 第1圧密化済み活物質層
5Z 第1活物質層
6 第2圧密化済み活物質層
6Z 第2活物質層
11 活物質部
12 非活物質部
100 ロールプレス装置
110,210 第1プレスロール
111,211 第1接触部
112,212 第2接触部
120 第2プレスロール
EH 長手方向
FH 幅方向
GH 厚み方向
KA ロール間隙
F1 (第1プレスロールの第1接触部と帯状電極板の非活物質部との間に生じる)仮想摩擦力
F2 (第1プレスロールの第2接触部と帯状電極板の非活物質部との間に生じる)摩擦力
S1 電極板形成工程
S2 プレス工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6