(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139927
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】半導体製造装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220915BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
B24B27/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040511
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】説田 雄二
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA03
3C158AB04
3C158CA01
3C158CB06
5F057AA05
5F057BA11
5F057BA15
5F057BA19
5F057BB03
5F057BC02
5F057CA16
5F057DA14
5F057EB16
5F057EB18
5F057EB20
5F057FA13
5F057FA33
5F057FA46
5F057GB02
5F057GB11
(57)【要約】
【課題】半導体ウェハのエッジ部の切削中における半導体ウェハのクラックあるいはチッピングを抑制する半導体製造装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態による半導体製造装置は、ウェハを搭載面上に搭載可能なステージを備える。ブレードは、ウェハの外周部を搭載面に向かって切削する。ステージは、ウェハの外周部のうち搭載面に対向する第1面に材料膜が形成されていない第1領域に対応する位置に設けられた突出部を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを搭載面上に搭載可能なステージと、
前記ウェハの外周部を前記搭載面に向かって切削するブレードとを備え、
前記ステージは、前記ウェハの前記外周部のうち前記搭載面に対向する第1面に材料膜が形成されていない第1領域に対応する位置に設けられた突出部を備える、半導体製造装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記第1領域において前記ウェハと前記ステージとの間に設けられたパッドで構成されている、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記パッドは、前記外周部のうち、前記材料膜の成膜工程において成膜装置の支持具に接触していた接触痕に対応して設けられている、請求項2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記ステージと一体形成されている、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記突出部は、前記ウェハの前記外周部に対応する前記ステージの前記搭載面の位置全体に設けられている、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
前記パッドは、前記ウェハの前記外周部に対応する前記ステージの前記搭載面の位置全体に設けられている、請求項2に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記ステージの前記搭載面から前記突出部を突出させる突出機構と、
前記ウェハの前記第1領域の位置座標を格納するメモリと、
前記第1領域の位置座標に対応する位置に前記突出部を突出させるように前記突出機構を制御する制御部とをさらに備えた、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項8】
ウェハを搭載面上に搭載可能なステージと、前記ウェハの外周部を前記搭載面に向かって切削するブレードと、前記ウェハの前記外周部のうち前記搭載面に対向する第1面に材料膜が形成されていない第1領域に対応する前記ステージ上の位置に設けられた突出部とを備える半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記ウェハの前記第1領域に前記突出部が対応するように前記ウェハを前記ステージ上に載置し、
前記ブレードで前記ウェハの前記外周部を切削すること、を具備する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は半導体製造装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体ウェハのそれぞれに半導体素子を形成し、それらの半導体ウェハを貼合することによってそれぞれの半導体素子を電気的に接続する手法がある。このような複数の半導体ウェハを貼合する前または後に、半導体ウェハのエッジ部を切削(トリミング)する工程がある。
【0003】
しかし、半導体ウェハの表面の凹凸の影響で、半導体ウェハに局所的に負荷が集中し、切削中に半導体ウェハのエッジがクラックし、あるいは、チッピングする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体ウェハのエッジ部の切削中における半導体ウェハのクラックあるいはチッピングを抑制する半導体製造装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による半導体製造装置は、ウェハを搭載面上に搭載可能なステージを備える。ブレードは、ウェハの外周部を搭載面に向かって切削する。ステージは、ウェハの外周部のうち搭載面に対向する第1面に材料膜が形成されていない第1領域に対応する位置に設けられた突出部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による切削装置の構成例を示す概略正面図。
【
図2】第1実施形態による切削装置の構成例を示す概略平面図。
【
図3A】成膜装置の保持具の接触痕を有するウェハの概略平面図。
【
図4】第1実施形態による貼合ウェハのトリミング工程の様子を示す概略断面図。
【
図5】第1実施形態による貼合ウェハのトリミング工程の様子を示す概略斜視図。
【
図7】比較例におけるトリミング工程の様子を示す概略断面図。
【
図8】比較例におけるトリミング工程の様子を示す概略断面図。
【
図9A】第1実施形態によるステージの構成例を示す概略平面図。
【
図10】外周部のトリミング後の工程を示す概略断面図。
【
図11】外周部のトリミング後の工程を示す概略断面図。
【
図12】外周部のトリミング後の工程を示す概略断面図。
【
図13】
図12の破線枠B13の内部構成の一例を示す概略断面図。
【
図14】第1実施形態の変形例によるステージの構成例を示す概略断面図。
【
図15】第2実施形態による切削装置を用いたウェハのトリミング工程の様子を示す概略斜視図。
【
図16】第2実施形態によるステージの構成例を示す概略平面図。
【
図17】第3実施形態による切削装置の構成例を示す概略正面図。
【
図18】第3実施形態によるステージの構成例を示す概略平面図。
【
図19】第3実施形態による貼合ウェハのトリミング工程の様子を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による切削装置1の構成例を示す概略正面図である。
図2は、第1実施形態による切削装置1の構成例を示す概略平面図である。
【0010】
半導体製造装置としての切削装置1は、ステージ10と、切削ユニット20と、制御部60と、ステージ駆動部45と、撮像部50とを備える。尚、ステージ10の搭載面F1に対して略垂直方向(鉛直方向)がZ方向である。X方向およびY方向は、Z方向に対して垂直面(水平面)内において互いに直交する方向である。
【0011】
ステージ10は、例えば、搭載面F1が略平坦な円盤状のテーブルであり、その搭載面F1に真空チャックを具備している。ステージ10は、搭載面F1上に載置されたウェハ12を真空吸着して安定的に保持する。また、ステージ10は、ステージ10の中心を通り鉛直方向に延びる回転軸10aを中心として水平面(X-Y面)内で回転可能に構成されている。
【0012】
ウェハ12は、例えば、略円板形状を有するシリコン基板等の半導体基板であり、単一ウェハ12であってもよいが、
図3Bに示すように複数のウェハ12_1、12_2を貼合した貼合ウェハであってもよい。ウェハ12は、ステージ10上に載置される。ウェハ12は、
図2に示すように、ウェハ12の向き(周方向の位置)を特定するためのノッチNTを有する。
【0013】
切削ユニット20は、スピンドル24の先端部に装着された切削ブレード22と、スピンドル24を介して切削ブレード22を回転させるブレード駆動部25とを備えている。切削ブレード22は、例えば、ダイヤモンド等の砥粒をボンド材で結合して形成された極薄のリング状の切削砥石である。ブレード駆動部25は、スピンドル24を介してその軸24aを中心に切削ブレード22を高速回転させ、高速回転させた切削ブレード22をウェハ12に接触させることにより、ウェハ12を切削してカーフ(切溝)を形成する。なお、本実施形態の切削ユニット20は、ウェハ12の外周部12cの一部を周方向に沿って切削して面取り部を除去するトリミング加工を行う。この場合には、切削ブレード22には、通常の半導体素子間の直線的な切削ライン(ストリート)を切削する場合と比べて、厚いブレードが使用される。
【0014】
切削ユニット20は、図示しない切削ユニット移動機構をさらに備え、X、Y、Z方向に移動することができる。例えば、X方向は切削方向である。Y方向は切削方向(X軸方向)に対して直交する水平方向であり、スピンドル24の軸方向(スピンドル24の延伸方向)である。Z方向は切削の切込みの深さ方向(略垂直方向)である。切削ユニット20がY軸方向に移動することにより、切削ブレード22の刃先をウェハ12の切削位置(切削ライン若しくは外周部)に位置合わせすることができる。切削ユニット20がZ軸方向に移動することにより、ウェハ12に対する切削ブレード22の切り込みの深さを調整することができる。
【0015】
ステージ駆動部45は、切削加工時に、回転軸10aを中心として水平面内でステージ10を回転させることができる。これにより、ステージ10上に保持されたウェハ12も回転軸10aを中心として回転する。
【0016】
撮像部50は、CCD等の撮像素子を備える。撮像部50は、ウェハ12の外周部12cの上方に配置され、ウェハ12を撮像する。撮像部50は、ウェハ12の切削部(即ち外周部12c)を含む領域を撮像し、この撮像した画像を制御部60に出力する。これにより、制御部60は、
図2のノッチNTの位置に基づいて、ウェハ12の向き(周方向の位置)を特定することができる。
【0017】
制御部60は、切削装置1の各部、例えば、ステージ10、切削ユニット20、ステージ駆動部45等を制御する。また、制御部60は、例えば、ウェハ12のアライメント、切削加工後の切削状態(チッピング)のチェック等の目的で、撮像部50で撮像された画像を処理する画像処理部として機能する。
【0018】
このような構成を有する切削装置1は、1枚のウェハ12を切削する場合がある。しかし、近年、チップサイズまたはパッケージサイズを縮小するために、切削装置1は、複数のウェハ12を接合(貼合)させた貼合ウェハを切削することもある。
【0019】
このような切削装置1は、ステージ10を回転させながら、ウェハ12の外周部12cの一部を周方向に沿って切削する。また、切削装置1は、外周部12cをウェハ12の表面から搭載面F1に向かって略垂直方向に切削し、外周部12cのR形状の少なくとも一部分を予め除去しておく(トリミング加工)。これにより、その後、グラインダ等によってウェハ12の裏面を研削したときに、ウェハ12の厚みが切り込み深さよりも薄くなるまで研削すれば、ウェハ12の外周部12cのエッジ角(ウェハ12の表面および裏面に対する側面の角度)がほぼ90度となり、鋭角形状にならない。その結果、ウェハ12の外周部12cのクラックおよびチッピングが抑制され得る。
【0020】
一方、ウェハ12の表面または裏面に材料膜を形成する成膜工程において、成膜装置のステージ上にウェハ12を保持するために、保持具(図示せず)がウェハ12の外周部12cを部分的に接触する場合がある。このようなウェハ12の表面または裏面のうち保持具の接触部分には、材料膜が成膜されず、保持具の接触痕が残る。
【0021】
図3Aは、成膜装置の保持具の接触痕を有するウェハ12の概略平面図である。
図3Bは、
図3AのB-B線に沿った概略断面図である。本実施形態において、ウェハ12は、複数のウェハ12_1、12_2を貼合させた貼合ウェハである。以下、12を「貼合ウェハ」とも呼び、12_1および12_2は単に「ウェハ」とも呼ぶ。
【0022】
図3Aに示すように、接触痕CTが貼合ウェハ12の外周部12cに設けられている。接触痕CTは、外周部12cのうち材料膜TFcの成膜工程において成膜装置の支持具に接触していた領域である。よって、接触痕CTは、成膜装置の保持具の位置に形成され、保持具の個数と同じ数だけ形成される。例えば、
図3Aの例では、3個の保持具が成膜装置に設けられており、3つの接触痕CTが貼合ウェハ12の外周部12cの対応位置に形成される。第1領域としての接触痕CTは、ウェハ12_2の外周部12cのうち、ステージ10の搭載面F1に対向する面に材料膜TFcが形成されていない領域である。
【0023】
尚、材料膜TFcは、材料膜TFbをウェハ12_2に成膜する際にウェハ12_2の裏面に形成される材料膜でもよい。従って、材料膜TFcは、後のウェハ12_2のバックグラインド工程において除去される膜である。例えば、ウェハ12_1、12_2は、互いに対向する面に半導体素子を有し、貼合されることによって、それぞれの半導体素子または配線が電気的に接続される。本実施形態を半導体メモリに適用する場合、例えば、ウェハ12_1の貼合面にメモリセルアレイ(図示せず)を形成し、ウェハ12_2の貼合面にメモリセルアレイを制御するCMOS(Complementally Metal-Oxide-Semiconductor)回路(図示せず)を形成する。この場合、材料膜TFaは、ウェハ12_1のメモリセルアレイを被覆する層間絶縁膜またはパッシベーション膜でよく、メモリセルアレイに接続された配線の一部を露出している。材料膜TFbは、ウェハ12_2のCMOS回路を被覆する層間絶縁膜またはパッシベーション膜でよく、CMOS回路に接続された配線の一部を露出している。ウェハ12_1、12_2を貼合させることによって、ウェハ12_1のメモリセルアレイとウェハ12_2のCMOS回路とを配線を介して電気的に接続する。さらに、貼合ウェハ12の外周部12cの一部をトリミング工程で切削し、メモリセルアレイをCMOS回路上に残置させながら、バックグラインド等を用いてウェハ12_1を薄化する。これにより、コントローラとしてのCMOS回路上にメモリセルアレイを設けた半導体メモリが形成される。このように、材料膜TFcは、バックグラインド等を用いて除去されてもよい。
【0024】
図3Bに示すように、接触痕CTの位置には、成膜装置で形成される材料膜TFcが設けられておらず、その下の材料膜またはウェハ12_2が露出されている。材料膜TFa、TFb、TFcは、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等でよく、層間絶縁膜あるいは保護膜(パッシベーション膜)等でよい。ウェハ12_1、12_2は、外周部12cの側面において或る曲率を有する丸み(ベベル部)を有している。従って、接触痕CTが無い領域では、材料膜TFcは、外周部12cにおいてウェハ12の側面を回り込むように成膜されており、ウェハ12_1、12_2の外方へ行くに従って材料膜TFcの厚みは次第に薄くなっている。一方、接触痕CTの領域では、材料膜TFcが欠落しており、段差部STが形成される。
【0025】
図4は、第1実施形態による貼合ウェハ12のトリミング工程の様子を示す概略断面図である。
図5は、第1実施形態による貼合ウェハ12のトリミング工程の様子を示す概略斜視図である。
【0026】
本実施形態による切削装置1は、ステージ10上に載置された貼合ウェハ12の外周部12cの一部(ウェハ12_1の外周部12cとウェハ12_2の外周部12cの上部)を切削ブレード22で切削する。本実施形態では、貼合ウェハ12は、後のバックグラインド工程において薄化されるウェハ12_1の表面を上方(+Z方向)へ向けて載置される。ウェハ12_2の接触痕CTに対応するステージ10の領域では、ステージ10の表面とウェハ12の外周部12cとの間に空間ができる。この空間には、パッド70が設けられている。
【0027】
パッド70は、ウェハ12_2の接触痕CTとステージ10との間に設けられている。パッド70は、ウェハ12_2の外周部12cを挟んでブレード22とは反対側に配置され、外周部12cの接触痕CTの直下に設けられている。これにより、パッド70は、ステージ10と外周部12cとの間の接触痕CTの空間を埋めるスペーサとして機能し、接触痕CTにおいて外周部12cを支持する支持部として機能する。パッド70は、貼合ウェハ12または材料膜TFcが損傷しないように、ウェハ12_2または材料膜TFcよりも弾性率が低いことが好ましい。また、ステージ10は、通常、トリミング時に平坦性を確保しながら貼合ウェハ12を確実に支持するために弾性率の高い材料で構成されている。ステージ10には、例えば、セラミック、石材または金属等の材料が用いられる。これに対し、パッド70は、上述のように、パッド70に接触するウェハ12_2または材料膜TFcが損傷しないように、ステージ10よりも弾性率が低いことが好ましい。パッド70には、例えば、樹脂等の材料が用いられる。
【0028】
図6は、パッド70の構成例を示す概略斜視図である。パッド70は、外周部12cのベベル部の曲率に適合するように、1つの辺または角に窪み71を有する略直方体の形状を有する。窪み71の形状は、ウェハ12_2の外周部12cのベベル部の形状に対応する。パッド70のX方向の長さは、例えば、約30~50mmであり、Y方向の長さは、例えば、約5~10mmであり、Z方向の高さは、例えば、約2~3mmである。窪み71の部分の曲率は、例えば、1/r=約1/(1mm)~1/(2mm)である。
【0029】
図4および
図5を再度参照すると、パッド70は、接触痕CTに対応するように設けられている。例えば、接触痕CTの位置および数は、成膜装置の保持具の位置および個数に依存して決まる。よって、成膜装置の保持具の位置および個数が決まっていれば、接触痕CTの位置座標は、貼合ウェハ12のノッチNTの位置を基準として(X、Y)座標で表現することができる。このような接触痕CTの位置座標に基づいて、ステージ10に段差または溝を形成し、その段差または溝にパッド70を配置する。これにより、トリミング工程において、ノッチNTの位置を所定位置に合わせて貼合ウェハ12をステージ10上に載置すれば、パッド70は、ウェハ12_2の接触痕CTに自ずと適合し、接触痕CTにおけるウェハ12_2の外周部12cを支持することができる。即ち、接触痕CTの位置座標(X、Y)は予め判明しているので、ステージ10上においてノッチNTの位置を所定位置に設定すれば、パッド70は、接触痕CTによるステージ10とウェハ12_2との間の空間を埋めて貼合ウェハ12を支持することができる。これにより、外周部12cのトリミング工程において、切削ブレード22の切削圧力や衝撃によって貼合ウェハ12がクラックしたり、チッピングすることを抑制することができる。
【0030】
図7および
図8は、比較例におけるトリミング工程の様子を示す概略断面図である。この比較例では、パッド70が設けられていない。もし、パッド70が設けられていない場合、
図7に示すように、ウェハ12_2の外周部12cとステージ10との間の接触痕CTは、空間のままとなっている。この場合、トリミング工程において、切削ブレード22が外周部12cを切削していくと、接触痕CTの位置において、ウェハ12_2の外周部12cの残部が-Z方向に押圧され、
図8に示すように、ウェハ12_2の接触痕CTにおける下端がクラックまたはチッピングにより破損するおそれがある。このような破損は、貼合ウェハ12のその後の搬送および処理を不能にし、歩留まりの低下につながる。
【0031】
これに対し、
図4および
図5に示す本実施形態による切削装置1は、切削ブレード22で切削される外周部12cの接触痕CTとステージ10との間に設けられたパッド70を備えている。パッド70が接触痕CTにおけるウェハ12_2を支持することによって、切削ブレード22からの押圧力を分散させ、ウェハ12_2の外周部12cの残部のクラックまたはチッピングを抑制することができる。その結果、切削ブレード22は、貼合ウェハ12の外周部12cを任意の深さ(Z方向の位置)まで切削することができる。
【0032】
図9Aは、第1実施形態によるステージ10の構成例を示す概略平面図である。
図9Bは、
図9AのB-B線に沿った断面図である。ステージ10は、ウェハ12_2の接触痕(第1領域)CTに対応する位置にパッド70を備えている。本実施形態では、接触痕CTは、
図3Aに示すように、外周部12cの3か所に設けられている。これに伴い、
図9Aに示すように、段差部STは、ステージ10の外周部の3か所に設けられており、段差部STにパッド70が固定されている。パッド70は、真空チャックで段差部STに吸着固定されていてもよく、あるいは、両面テープで接着固定されていてもよい。
【0033】
図9Bに示すように、パッド70は、ステージ10の搭載面F1から突出している。パッド70の突出部P70は、接触痕CTとステージ10の搭載面F1との間の空間を埋めることができるように辺または角に窪み71が形成されている。窪み71は、ウェハ12_2のベベル部の丸みに対応するような曲率で窪んでいる。
【0034】
突出部P70の高さは、搭載面F1とウェハ12の接触痕CTとの間のZ方向の間隙とほぼ等しいかそれよりも若干高いことの好ましい。突出部P70の適切な高さは、パッド70の弾性率に依存する。パッド70は、当初、搭載面F1とウェハ12の接触痕CTとの間の間隙よりも小さく、ウェハ12の搭載後、熱または光により膨張させてウェハ12の平坦度を補完する機能を有してもよい。
【0035】
図10~
図12は、外周部12cのトリミング後の工程を示す概略断面図である。
図10に示すように、貼合ウェハ12の外周部12cは、トリミングによって所定の深さまで切削される。この段階では、ウェハ12_2の外周部12cの下部が残存している。これにより、貼合ウェハ12の搬送および他の処理が可能となる。
【0036】
次に、
図11に示すように、ウェハ12_1の裏面側からウェハ12_1を研磨し、ウェハ12_1を薄化する(バックグラインド工程)。これにより、
図12に示すようにウェハ12_2の上に材料膜TFa、TFbを設けた構造が得られる。
【0037】
図13は、
図12の破線枠B13の内部構成の一例を示す概略断面図である。ウェハ12_2上にCMOS回路31が設けられている。材料膜(層間絶縁膜)TFbがCMOS回路31を被覆するように設けられている。CMOS回路31に電気的に接続する配線38は、貼合面Sにおいて材料膜TFaから露出されている。
【0038】
メモリセルアレイMCAは、CMOS回路31の上方に設けられている。メモリセルアレイMCAは、ワード線WLとビット線BLに接続された半導体カラムCLとの交点に対応する位置に複数のメモリセルを有する。メモリセルは、3次元的に立体配置されている。材料膜(層間絶縁膜)TFaがメモリセルアレイMCAを被覆するように設けられている。メモリセルアレイMCAに電気的に接続される配線41は、貼合面Sにおいて材料膜TFaから露出されている。材料膜TFaとTFbは、貼合面Sにおいて互いに貼合されており、配線38、41は貼合面Sにおいて互いに接続されている。
【0039】
本実施形態は、このように貼合された半導体メモリの貼合ウェハ12のトリミング工程に適用することができる。
【0040】
また、本実施形態は、成膜工程における指示具の接触痕CTだけでなく、RIE(Reactive Ion Etching)法で生じるウェハ12_2の裏面の不要なエッチングに対しても適用することができる。
【0041】
(変形例)
図14、第1実施形態の変形例によるステージ10の構成例を示す概略断面図である。
図14は、第1実施形態の
図9Bに対応する部分の断面を示している。
【0042】
第1実施形態では、パッド70は、ステージ10とは別体として形成され、ステージ10の段差部STに固定されている。
【0043】
これに対し、本変形例では、パッド70は、ステージ10と一体形成される。この場合、パッド70は、ステージ10と同一材料で構成され、ステージ10の一部として連続している。突出部P70は、ステージ10の一部として搭載面F1から突出している。このように、本変形例のステージ10は、ウェハ12の接触痕CTに対応する位置に設けられた突出部P70を備える。
【0044】
このような構成であっても、第1実施形態の効果を得ることができる。また、本変形例では、ステージ10の他にパッド70を形成する必要が無いので、ステージ10および突出部P70の形成工程が容易かつ短縮される。
【0045】
(第2実施形態)
図15は、第2実施形態による切削装置1を用いたウェハ12のトリミング工程の様子を示す概略斜視図である。
図16は、第2実施形態によるステージ10の構成例を示す概略平面図である。尚、
図16のB-B線に沿った断面は、
図9Bに示す断面と同じでよい。
【0046】
第2実施形態による切削装置1のステージ10には、パッド70が、ステージ10の外周部の全体に亘って設けられている。即ち、パッド70は、ウェハ12_2の外周部12cに対応するステージ10の搭載面F1上の位置全体に設けられている。これにより、ウェハ12_2の外周部12cにおいて接触痕CTの位置または個数が変化しても、パッド70は、外周部12cの任意の位置かつ任意の個数の接触痕CTに対応することができる。その結果、第2実施形態による切削装置1は、様々な種類の成膜装置で成膜されたウェハ12のクラックまたはチッピングを抑制しつつ、該ウェハ12をトリミング処理することができる。
【0047】
第2実施形態には、上記変形例を適用してもよい。即ち、
図14に示す突出部P70がウェハ12_2の外周部12cに対応するステージ10の搭載面F1の位置全体に設けられていてもよい。これにより、第2実施形態は、上記変形例の効果も得ることができる。
【0048】
(第3実施形態)
図17は、第3実施形態による切削装置1の構成例を示す概略正面図である。第3実施形態は、ステージ10の搭載面F1からパッド70を突出させる突出機構80をさらに備えている。突出機構80は、制御部60の指令を受けてパッド70を制御し、ステージ10の搭載面F1からウェハ12の接触痕CTに対応する位置においてパッド70を突出させる。接触痕CTの位置座標はメモリ61に格納されている。突出機構80は、メモリ61から接触痕CTの位置座標を得て、その位置座標に対応する位置のパッド70を駆動させて突出させる。
【0049】
図18は、第3実施形態によるステージ10の構成例を示す概略平面図である。
図19は、第3実施形態による貼合ウェハ12のトリミング工程の様子を示す概略斜視図である。
【0050】
パッド70は、複数に分割された領域70a、70b、70c、・・・を有し、ステージ10の外周全体に亘って設けられている。領域70a、70b、70c、・・・(以下、領域70a等とも呼ぶ)は、突出機構80によって駆動され、それぞれ選択的に突出可能に構成されている。例えば、パッド70は、樹脂等の柔軟な材料で構成され、領域70a等は、それぞれ気密に分割された中空の袋体に構成されている。領域70a等の内部に気体を導入することによって、領域70a等は選択的に膨らみ、ステージ10の搭載面F1から突出する。例えば、
図19では、突出機構80は、領域70aに気体を導入し、領域70aを選択的に突出させている。一方、領域70b~70dは突出していない。
【0051】
突出機構80は、領域70a等のいずれかに気体を送るポンプと、ポンプと領域70a等との間をそれぞれ接続する配管81とを備える。突出機構80は、接触痕CTの位置座標に対応する位置の領域70a等のいずれかに気体を導入して突出させる。これにより、ウェハ12_2の外周部12cにおいて接触痕CTの位置または個数が変化しても、突出機構80は、任意の位置かつ任意の個数の接触痕CTに対応する領域70a等を突出させることができる。その結果、第3実施形態による切削装置1は、様々な種類の成膜装置で成膜されたウェハ12_2を、クラックまたはチッピングを抑制しつつ、トリミングすることができる。
【0052】
突出機構80は、空気圧でパッド70を突出させているが、他の機構を用いてパッド70を突出させてもよい。例えば、パッド70に圧電素子を用いてもよい。この場合、突出機構80は、領域70a等のそれぞれに設けられた圧電素子に電力を選択的に供給し、領域70a等のいずれかを選択的に突出させる。このような構成であっても、第3実施形態の効果は失われない。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 切削装置、10 ステージ、20 切削ユニット、60 制御部、45 ステージ駆動部、50 カメラ、12 貼合ウェハ、CT 接触痕、12c 外周部、TFa~TFc 材料膜、70 パッド、80 突出機構