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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139928
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】磁気記憶装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8239 20060101AFI20220915BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L27/105 447
H01L43/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040512
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 和広
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA19
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD17
4M119DD24
4M119DD26
4M119DD42
4M119JJ03
4M119JJ04
4M119JJ12
5F092AA11
5F092AB06
5F092AC12
5F092AD03
5F092AD23
5F092AD25
5F092BB23
5F092BB36
5F092BB43
5F092BB53
5F092BB55
5F092BC04
5F092CA02
5F092CA03
5F092CA08
(57)【要約】
【課題】 優れた特性を有する磁気抵抗効果素子を含む磁気記憶装置を提供する。
【解決手段】 実施形態に係る磁気記憶装置は、下部電極20と、下部電極上に設けられた積層構造10であって、可変の磁化方向を有する第1の磁性層と、固定された磁化方向を有する第2の磁性層と、第1の磁性層と第2の磁性層との間に設けられた非磁性層とを含む積層構造と、下部電極の側壁に設けられ、所定元素及び酸素(O)を含有する第1の側壁絶縁層30と、積層構造の側壁に設けられ、所定元素及び酸素(O)を含有する第2の側壁絶縁層40とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極と、
前記下部電極上に設けられた積層構造であって、可変の磁化方向を有する第1の磁性層と、固定された磁化方向を有する第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた非磁性層とを含む積層構造と、
前記下部電極の側壁に設けられ、所定元素及び酸素(O)を含有する第1の側壁絶縁層と、
前記積層構造の側壁に設けられ、前記所定元素及び酸素(O)を含有する第2の側壁絶縁層と、
を備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項2】
前記所定元素は、マグネシウム(Mg)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、バリウム(Ba)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
前記積層構造の積層方向に平行な方向から見て、前記第1の側壁絶縁層の上面のパターンの一部は、前記積層構造の下面のパターンの外側に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記第1の側壁絶縁層のリング状の上面の外周の直径は、前記積層構造の下面の直径よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記第1の側壁絶縁層のリング状の上面の内周の直径は、前記積層構造の下面の直径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
前記第1の側壁絶縁層の上端部分は外側に突出している
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記第2の側壁絶縁層は、前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記非磁性層の側面を覆っている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
前記積層構造は、前記第2の磁性層から前記第1の磁性層に印加される磁界をキャンセルするための第3の磁性層をさらに含み、
前記第2の側壁絶縁層は、前記第1の磁性層、前記第2の磁性層、前記第3の磁性層及び前記非磁性層の側面を覆っている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
前記第2の側壁絶縁層の側面は、前記第2の側壁絶縁層の材料とは異なる材料で形成された絶縁領域で覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項10】
前記第1の側壁絶縁層の側面は、前記第1の側壁絶縁層の材料とは異なる材料で形成された絶縁領域で覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に磁気抵抗効果素子が集積化された磁気記憶装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-94104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
優れた特性を有する磁気抵抗効果素子を含む磁気記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気記憶装置は、下部電極と、前記下部電極上に設けられた積層構造であって、可変の磁化方向を有する第1の磁性層と、固定された磁化方向を有する第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた非磁性層とを含む積層構造と、前記下部電極の側壁に設けられ、所定元素及び酸素(O)を含有する第1の側壁絶縁層と、前記積層構造の側壁に設けられ、前記所定元素及び酸素(O)を含有する第2の側壁絶縁層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の構成を模式的に示した断面図である。
図2】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の積層構造の構成を模式的に示した断面図である。
図3】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の積層構造の下面のパターンと側壁絶縁層の上面のパターンとの位置関係を模式的に示した図である。
図4A】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図4B】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図4C】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図4D】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図4E】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図4F】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図4G】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図5】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の構成を模式的に示した断面図である。
図6】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の積層構造の下面のパターンと側壁絶縁層の上面のパターンとの位置関係を模式的に示した図である。
図7A】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図7B】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図7C】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図7D】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図7E】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図7F】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図7G】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図8】第1及び第2の実施形態で示した磁気抵抗効果素子が適用される磁気記憶装置の構成を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0008】
(実施形態1)
図1は、第1の実施形態に係る磁気記憶装置の構成を模式的に示した断面図である。なお、図に示されたX方向、Y方向及びZ方向は、互いに交差する方向である。より具体的には、X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する方向である。
【0009】
図1に示すように、半導体基板100の上方に、積層構造10、下部電極20、側壁絶縁層(第1の側壁絶縁層)30、側壁絶縁層(第2の側壁絶縁層)40、下部導電層50及び絶縁領域61~64が設けられている。
【0010】
積層構造10は、磁気抵抗効果素子を構成するものである。磁気抵抗効果素子には、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子が用いられる。
【0011】
図2は、積層構造10の構成を模式的に示した断面図である。
【0012】
積層構造10は、下部電極(図示せず)上に設けられ、記憶層(第1の磁性層)11、参照層(第2の磁性層)12、トンネルバリア層(非磁性層)13、シフトキャンセリング層(第3の磁性層)14、バッファ層15、キャップ層16及び上部層17を含んでいる。
【0013】
記憶層(第1の磁性層)11は、可変の磁化方向を有する強磁性層であり、コバルト(Co)、鉄(Fe)及びボロン(B)を含有するCoFeB層で形成されている。可変の磁化方向とは、所定の書き込み電流に対して磁化方向が変わることを意味する。
【0014】
参照層(第2の磁性層)12は、固定された磁化方向を有する強磁性層である。固定された磁化方向とは、所定の書き込み電流に対して磁化方向が変わらないことを意味する。参照層12は、上層部分及び下層部分を含んでいる。上層部分は、コバルト(Co)、鉄(Fe)及びボロン(B)を含有するCoFeB層で形成されている。下層部分は、コバルト(Co)と、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)から選択された少なくとも1つの元素とを含有している。
【0015】
トンネルバリア層(非磁性層)13は、記憶層11と参照層12との間に設けられた絶縁層である。トンネルバリア層13は、マグネシウム(Mg)及び酸素(O)を含有するMgO層で形成されている。
【0016】
シフトキャンセリング層(第3の磁性層)14は、参照層12の磁化方向に対して反平行の固定された磁化方向を有する強磁性層であり、参照層12から記憶層11に印加される磁界をキャンセルする機能を有している。シフトキャンセリング層14は、コバルト(Co)と、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)から選択された少なくとも1つの元素とを含有している。
【0017】
バッファ層15は、シフトキャンセリング層14の下層側に設けられ、導電材料で形成されている。
【0018】
キャップ層16は、記憶層11上に設けられ、マグネシウム酸化物(MgO)等で形成されている。
【0019】
上部層17は、キャップ層16上に設けられ、導電材料で形成されている。
【0020】
上述した積層構造10によって構成される磁気抵抗効果素子は、垂直磁化を有するSTT(Spin Transfer Torque)型の磁気抵抗効果素子である。すなわち、記憶層11、参照層12及びシフトキャンセリング層14の磁化方向は、それぞれの膜面に対して垂直である。
【0021】
記憶層11の磁化方向が参照層12の磁化方向に対して平行である場合には、磁気抵抗効果素子は低抵抗状態であり、記憶層11の磁化方向が参照層12の磁化方向に対して反平行である場合には、磁気抵抗効果素子は高抵抗状態である。したがって、磁気抵抗効果素子は、磁気抵抗効果素子の抵抗状態に応じて2値データを記憶することが可能である。また、磁気抵抗効果素子に流れる電流の方向に応じて、磁気抵抗効果素子に低抵抗状態或いは高抵抗状態を設定することが可能である。
【0022】
なお、図2に示した磁気抵抗効果素子は、記憶層11が参照層12の上層側に位置するトップフリー型の磁気抵抗効果素子であったが、記憶層11が参照層12の下層側に位置するボトムフリー型の磁気抵抗効果素子を用いてもよい。
【0023】
下部電極20は、磁気抵抗効果素子の下部電極として機能するものであり、チタン窒化物(TiN)等の導電材料によって形成されている。
【0024】
側壁絶縁層(第1の側壁絶縁層)30は、下部電極20の側壁に設けられている。より具体的には、側壁絶縁層30は、下部電極20の側壁に沿って設けられており、下部電極20の側壁全体を覆っている(囲んでいる)。側壁絶縁層30は、所定元素及び酸素(O)を含有する絶縁材料(酸化物材料)で形成されている。具体的には、側壁絶縁層30は、所定元素(所定の金属元素)を含有する金属酸化物で形成されている。側壁絶縁層30に含有されている所定元素は、マグネシウム(Mg)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、バリウム(Ba)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)から選択される。本実施形態では、側壁絶縁層30はマグネシウム酸化物(MgO)で形成されている。
【0025】
側壁絶縁層(第2の側壁絶縁層)40は、積層構造10の側壁に設けられている。より具体的には、側壁絶縁層40は、積層構造10の側壁に沿って設けられており、積層構造10の側壁を覆っている(囲んでいる)。本実施形態では、側壁絶縁層40は積層構造10の側壁全体を覆っている。ただし、側壁絶縁層40は、少なくとも記憶層11、参照層12、トンネルバリア層13及びシフトキャンセリング層14の側面を覆っていればよい。側壁絶縁層40は、側壁絶縁層30に含有されている所定元素及び酸素(O)を含有する絶縁材料(酸化物材料)で形成されている。本実施形態では、側壁絶縁層40はマグネシウム酸化物(MgO)で形成されている。
【0026】
下部導電層50は、下部電極20の下面に接続されている。下部導電層50は、例えばワード線等の配線として用いられる。
【0027】
側壁絶縁層40の側面は、側壁絶縁層40の材料とは異なる絶縁材料で形成された絶縁領域61で覆われている(囲まれている)。例えば、絶縁領域61は、シリコン酸化物やシリコン窒化物で形成されている。
【0028】
側壁絶縁層30の側面は、側壁絶縁層30の材料とは異なる絶縁材料で形成された絶縁領域62及び63で覆われている(囲まれている)。例えば、絶縁領域62はシリコン窒化物で形成され、絶縁領域63はシリコン酸化物で形成されている。
【0029】
下部導電層50の側面は、絶縁領域64で覆われている。例えば、絶縁領域64はシリコン酸化物或いはシリコン窒化物で形成されている。
【0030】
図3は、積層構造10の下面のパターン及び側壁絶縁層30の上面のパターンの位置関係を模式的に示した図である。具体的には、図3は、積層構造10の下面のパターンの外周10s、側壁絶縁層30の上面のパターンの外周30s1及び側壁絶縁層30の上面のパターンの内周30s2の関係を模式的に示した図である。
【0031】
図3に示されるように、積層構造10の積層方向(Z方向)に平行な方向から見て、側壁絶縁層30の上面のパターンの一部は、積層構造10の下面のパターンの外側に位置している。別の観点から見ると、側壁絶縁層30のリング状の上面の外周30s1の直径d1は、積層構造10の下面の外周10sの直径d0よりも大きいことが好ましい。また、側壁絶縁層30のリング状の上面の内周30s2の直径d2は、積層構造10の下面の外周10sの直径d0よりも小さいことが好ましい。すなわち、d1>d0>d2、の関係が満たされていることが好ましい。
【0032】
なお、上述した直径d0は積層構造10の下面の外周10sの平均直径、直径d1は側壁絶縁層30のリング状の上面の外周30s1の平均直径、直径d2は側壁絶縁層30のリング状の上面の内周30s2の平均直径である。
【0033】
次に、本実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法を、図4A図4Gに示した断面図を参照して説明する。
【0034】
まず、図4Aに示すように、半導体基板(図示せず)等を含む下部領域上に、絶縁領域64及び下部導電層50を形成する。続いて、絶縁領域64及び下部導電層50上に、絶縁領域62用の絶縁層及び絶縁領域63用の絶縁層を形成する。さらに、これらの絶縁層をパターニングして、複数の穴70を形成する。
【0035】
次に、図4Bに示すように、図4Aの工程で得られた構造上に、側壁絶縁層30用の絶縁層30aとしてMgO層を、CVD(Chemical Vapor Deposition)或いはPVD(Physical Vapor Deposition)によって形成する。
【0036】
次に、図4Cに示すように、絶縁層30aに対してエッチバック処理を行う。これにより、絶縁領域62及び63の側面に側壁絶縁層30が形成される。
【0037】
次に、図4Dに示すように、図4Cの工程で得られた構造上に、下部電極20用の導電層20aとしてTiN層を形成する。これにより、複数の穴70は導電層20aで埋められる。
【0038】
次に、図4Eに示すように、導電層20aに対して平坦化処理を行う。これにより、穴70内に下部電極20が形成される。
【0039】
次に、図4Fに示すように、図4Eの工程で得られた構造上に、積層構造10用の積層膜10aを形成する。続いて、積層膜10a上にハードマスク80を形成する。具体的には、Z方向から見て、ハードマスク80のパターンの中心が下部電極20のパターンの中心と一致し、且つハードマスク80のパターンの直径が側壁絶縁層30の上面の外周の直径よりも小さくなるように、ハードマスク80のパターンを形成する。
【0040】
次に、図4Gに示すように、ハードマスク80をマスクとして用いて、IBE(Ion Beam Etching)によって積層膜10aをエッチングする。これにより、積層構造10が形成される。IBEを用いたエッチング工程において、オーバーエッチングを行うことにより、側壁絶縁層30の上面の外周近傍の露出した部分がエッチングされる。その結果、側壁絶縁層30のエッチング生成物が積層構造10の側壁に再堆積し、積層構造10の側壁に側壁絶縁層40が形成される。すなわち、積層構造10の側壁にMgO層が形成される。IBEが終了した時点でハードマスク80の一部が残っている場合には、ハードマスク80の残った部分を除去するようにしてもよい。
【0041】
なお、側壁絶縁層40を形成するMgOの組成比(Mg:O)は、IBEの条件等によって異なる場合もある。したがって、側壁絶縁層30を形成するMgOの組成比(Mg:O)と側壁絶縁層40を形成するMgOの組成比(Mg:O)とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0042】
その後、絶縁領域61用の絶縁層を堆積し、さらに平坦化処理を行うことで、図1に示すような構造が得られる。
【0043】
以上のように、本実施形態では、積層構造10の側壁に側壁絶縁層40が形成されているため、以下に述べるように、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることができる。
【0044】
磁気抵抗効果素子の側壁にMgO層等の側壁絶縁層を形成することで、磁気抵抗効果素子の特性が向上することが知られている。しかしながら、磁気抵抗効果素子の積層構造を形成した後に側壁絶縁層すると、側壁のカバレッジが十分でないといった問題が生じる。また、積層構造の上面上に形成された側壁絶縁層用の絶縁層を制御性よく除去することが難しいといった問題もある。
【0045】
本実施形態では、図4Gの工程で述べたように、積層膜10aをエッチングして積層構造10を形成する際に、下部電極20の側壁に形成された側壁絶縁層30の上面の外周近傍の部分がエッチングされ、エッチング生成物が積層構造10の側壁に再堆積されることで、側壁絶縁層40が形成される。また、積層構造10の上面はハードマスク80で保護されており、ハードマスク80の全体が除去されたとしても、積層構造10の上面にはイオンビームが照射されている。そのため、積層構造10の上面上には側壁絶縁層用の絶縁層は形成されない。
【0046】
以上のことから、積層構造10の側壁に的確且つ効率的に側壁絶縁層40を形成することができる。
【0047】
さらに、積層膜10aをエッチングして積層構造10を形成する工程で側壁絶縁層40が形成されるため、特別な工程を追加せずに側壁絶縁層40を形成することができ、製造工程を削減することも可能である。
【0048】
また、図3に示したように、側壁絶縁層30の上面のパターンの一部が積層構造10の下面のパターンの外側に位置しており、側壁絶縁層30の上面の外周30s1の直径d1が積層構造10の下面の外周10sの直径d0よりも大きい。そのため、積層構造10を形成するためのエッチング工程において、側壁絶縁層30の上面の外周近傍の部分を確実にエッチングすることができ、エッチング生成物によって積層構造10の側壁に確実に側壁絶縁層40を形成することができる。
【0049】
また、側壁絶縁層30の上面の内周30s2の直径d2が積層構造10の下面の外周10sの直径d0よりも小さい。そのため、積層構造10を形成するためのエッチング工程において、下部電極20をエッチングせずに側壁絶縁層30のみをエッチングすることが可能である。したがって、側壁絶縁層30の成分のみを的確に積層構造10の側壁に再堆積することができ、良好な側壁絶縁層40を形成することができる。
【0050】
以上のことから、本実施形態では、積層構造10の側壁に形成された側壁絶縁層40によって、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることが可能となる。
【0051】
(実施形態2)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、基本的な事項は第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態で説明した事項の説明は省略する。
【0052】
図5は、本実施形態に係る磁気記憶装置の構成を模式的に示した断面図である。
【0053】
本実施形態では、側壁絶縁層30の上端部分が外側に突出している。より具体的には、Z方向から見て、側壁絶縁層30の上端部分が外側に突出している。
【0054】
図6は、積層構造10の下面のパターン及び側壁絶縁層30の上面のパターンの位置関係を模式的に示した図である。
【0055】
本実施形態でも、積層構造10の下面の外周10s、側壁絶縁層30の上面の外周30s1及び側壁絶縁層30の上面の内周30s2の基本的な関係は、第1の実施形態の図3で示した関係と同様である。すなわち、d1>d0>d2、の関係が満たされていることが好ましい。ただし、本実施形態は、側壁絶縁層30の上端部分が外側に突出しているため、側壁絶縁層30の上面の外周30s1の直径が、図3の場合に比べて大きくなっている。
【0056】
次に、本実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法を、図7A図7Gに示した断面図を参照して説明する。
【0057】
まず、図7Aに示すように、半導体基板(図示せず)等を含む下部領域上に、絶縁領域64及び下部導電層50を形成する。続いて、絶縁領域64及び下部導電層50上に、絶縁領域62用の絶縁層及び絶縁領域63用の絶縁層を形成する。さらに、これらの絶縁層をパターニングして、複数の穴70を形成する。
【0058】
次に、上述したようにして得られた穴70の上部の外周を広げる処理を行う。具体的には、絶縁領域62及び63のパターンを形成するためのレジストマスクを絶縁領域63上に残したまま、ウェットエッチング或いはドライエッチングを行う。これにより、絶縁領域63の上面の外周部分がエッチングされ、図3に示すような穴70が得られる。
【0059】
その後の基本的な工程は、第1の実施形態と同様である。
【0060】
すなわち、図7Bの工程で側壁絶縁層30用の絶縁層30aが形成され、図7Cの工程でエッチバック処理を行うことで側壁絶縁層30が形成される。続いて、図7Dの工程で下部電極20用の導電層20aが形成され、図7Eの工程で平坦化処理を行うことで穴70内に下部電極20が形成される。続いて、図7Fの工程で積層構造10用の積層膜10a及びハードマスク80が形成される。さらに、図7Gの工程で、ハードマスク80をマスクとして用いて積層膜10aをエッチングすることで、積層構造10が形成される。その後、絶縁領域61を形成することで、図5に示すような構造が得られる。
【0061】
以上のように、本実施形態の磁気記憶装置の基本的な構成及び基本的な製造方法は、第1の実施形態と同様である。したがって、本実施形態でも、第1の実施形態で述べた効果と同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、本実施形態では、側壁絶縁層30の上端部分が外側に突出している。そのため、図7Gの工程において、側壁絶縁層30の上面の外周近傍の露出部分の面積を増大させることができる。したがって、側壁絶縁層30のエッチング面積が増大し、側壁絶縁層30のエッチング生成物を積層構造10の側壁により効率的且つ十分に堆積させることが可能である。
【0063】
(適用例)
図8は、上述した第1及び第2の実施形態で示した磁気抵抗効果素子が適用される磁気記憶装置の構成を模式的に示した斜視図である。
【0064】
図8に示した磁気記憶装置は、X方向に延伸する複数の第1の配線210と、Y方向に延伸する複数の第2の配線220と、複数の第1の配線210と複数の第2の配線220との間に接続された複数のメモリセル230とを含んでいる。例えば、第1の配線210及び第2の配線220の一方はワード線に対応し、他方はビット線に対応する。
【0065】
各メモリセル230は、磁気抵抗効果素子240と、磁気抵抗効果素子240に対して直列に接続されたセレクタ(スイッチング素子)250とを含んでいる。
【0066】
所望のメモリセル230に接続された第1の配線210と第2の配線220との間に所定の電圧を印加することで、所望のメモリセル230に含まれるセレクタ250がオン状態となり、所望のメモリセル230に含まれる磁気抵抗効果素子240に対して読み出し或いは書き込みを行うことが可能である。
【0067】
なお、図8に示した磁気記憶装置は、磁気抵抗効果素子240の上層側にセレクタ250が設けられた構成であるが、磁気抵抗効果素子240の下層側にセレクタ250が設けられた構成であってもよい。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
10…積層構造
11…記憶層(第1の磁性層) 12…参照層(第2の磁性層)
13…トンネルバリア層(非磁性層)
14…シフトキャンセリング層(第3の磁性層)
15…バッファ層 16…キャップ層 17…上部層
20…下部電極
30…側壁絶縁層(第1の側壁絶縁層) 40…側壁絶縁層(第2の側壁絶縁層)
50…下部導電層 61~64…絶縁領域
70…穴 80…ハードマスク 100…半導体基板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
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図7F
図7G
図8