(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139933
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】磁気記憶装置及び磁気記憶装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8239 20060101AFI20220915BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20220915BHJP
H01L 43/12 20060101ALI20220915BHJP
H01L 43/10 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L27/105 447
H01L43/08 Z
H01L43/12
H01L43/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040518
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直紀
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA19
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD17
4M119DD24
4M119DD37
4M119DD42
4M119DD52
4M119JJ13
5F092AA11
5F092AB07
5F092AC12
5F092AD23
5F092AD25
5F092BB36
5F092BB43
5F092BC04
5F092BC43
5F092BE11
5F092BE15
5F092BE25
5F092CA09
(57)【要約】
【課題】 磁気特性の劣化を抑制された磁気記憶装置を提供する。
【解決手段】 一実施形態による磁気記憶装置は、第1導電体と、第1導電体の上面上の可変抵抗材料と、可変抵抗材料の上面上の第2導電体と、第2導電体の上面上の、窒化物以外の第1絶縁体と、第1絶縁体の上面上の磁気抵抗効果素子と、第1絶縁体の側面上に位置し、第2導電体の側面上と磁気抵抗効果素子の側面上とに亘る第3導電体と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電体と、
前記第1導電体の上面上の可変抵抗材料と、
前記可変抵抗材料の上面上の第2導電体と、
前記第2導電体の上面上の、窒化物以外の第1絶縁体と、
前記第1絶縁体の上面上の磁気抵抗効果素子と、
前記第1絶縁体の側面上に位置し、前記第2導電体の側面上と前記磁気抵抗効果素子の側面上とに亘る第3導電体と、
を備える磁気記憶装置。
【請求項2】
前記第2導電体は、前記磁気抵抗効果素子と接しない、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
前記磁気抵抗効果素子は、
第1強磁性層と、
前記第1強磁性層の上面上の第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上面上の第2強磁性層と、
を備え、
前記第3導電体は、前記第2導電体の前記側面上と前記第1強磁性層の側面上とに亘る、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記第3導電体は、前記第2導電体に含まれる材料と同じ材料を含む、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記第2導電体は、窒化チタン、アルミニウム、タンタル、タングステン、銅、炭素の1つ以上を含み、
前記第3導電体は、窒化チタン、アルミニウム、タンタル、タングステン、銅、炭素のうちの前記第2導電体に含まれる1つ以上を含む、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
前記第2導電体は、第2側面を備え、
前記第2導電体の前記側面は、前記第2側面の前記第2側面の上方に位置し、
前記第1絶縁体の前記側面は、前記第2導電体の前記第2側面の延長線からずれている、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
第1導電体と、
前記第1導電体の上面上の可変抵抗材料と、
前記可変抵抗材料の上面上の第2導電体と、
前記第2導電体の上面上の、窒化物以外の第1絶縁体と、
前記第1絶縁体中に位置し、前記第2導電体の上面と接する底面を有する第3導電体と、
前記第1絶縁体の上面上及び前記第3導電体の上面上の磁気抵抗効果素子と、
を備える磁気記憶装置。
【請求項8】
前記第3導電体は、前記第1絶縁体の底面から上面に亘って延びる柱状の形状を有する、
請求項7に記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
前記第1絶縁体と前記第3導電体は、相違する結晶構造を有する、
請求項7に記載の磁気記憶装置。
【請求項10】
前記第3導電体は、ペロブスカイト構造又はスピネル構造を含む、
請求項7に記載の磁気記憶装置。
【請求項11】
第1導電体を形成することと、
前記第1導電体の上面上に可変抵抗材料を形成することと、
前記可変抵抗材料の上面上に第2導電体を形成することと、
前記第2導電体の上面の第1部分の上に、窒化物以外の第1絶縁体を形成することと、
前記第1絶縁体の上面上に磁気抵抗効果素子を形成することと、
前記第2導電体の側面上、前記第1絶縁体の側面上、及び前記磁気抵抗効果素子の側面上に亘る第3導電体を形成することと、
を備える磁気記憶装置の製造方法。
【請求項12】
前記第3導電体を形成することは、前記第2導電体の前記上面の第1部分から除去された材料を前記第2導電体の側面上、前記第1絶縁体の側面上、及び前記磁気抵抗効果素子の側面上に形成することを含む、
請求項11に記載に磁気記憶装置の製造方法。
【請求項13】
前記第3導電体を形成することは、前記第2導電体の前記上面の前記第1部分にイオンのビームを照射することを含む、
請求項11に記載に磁気記憶装置の製造方法。
【請求項14】
前記磁気抵抗効果素子を形成することは、前記磁気抵抗効果素子を前記第2導電体に接しないように形成することを含む、
請求項11に記載の磁気記憶装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1導電体、前記可変抵抗材料、及び前記第2導電体を部分的に除去することをさらに備える、
請求項11に記載の磁気記憶装置の製造方法。
【請求項16】
前記磁気抵抗効果素子を形成することは、
前記第1絶縁体の前記上面上に第1強磁性層を形成することと、
前記第1強磁性層の上面上に第1絶縁層を形成することと、
前記第1絶縁層の上面上に第2強磁性層を形成することと、
を含む、
請求項11に記載の磁気記憶装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2導電体は、窒化チタン、アルミニウム、タンタル、タングステン、銅、炭素の1つ以上を含み、
前記第3導電体は、窒化チタン、アルミニウム、タンタル、タングステン、銅、炭素のうちの前記第2導電体に含まれる1つ以上を含む、
請求項11に記載の磁気記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概して磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記憶装置の一種として、磁気記憶装置が知られている。磁気記憶装置は、磁気抵抗効果を奏する素子を含んだメモリセルを用いてデータを記憶する。磁気記憶装置の特性の向上のために、メモリセルの磁気特性の劣化を抑制することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気特性の劣化を抑制された磁気記憶装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態による磁気記憶装置は、第1導電体と、上記第1導電体の上面上の可変抵抗材料と、上記可変抵抗材料の上面上の第2導電体と、上記第2導電体の上面上の、窒化物以外の第1絶縁体と、上記第1絶縁体の上面上の磁気抵抗効果素子と、上記第1絶縁体の側面上に位置し、上記第2導電体の側面上と上記磁気抵抗効果素子の側面上とに亘る第3導電体と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態の磁気記憶装置の機能ブロック及び関連する要素を示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態のメモリセルアレイの回路図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のメモリセルアレイの一部の断面の構造を示す。
【
図4】
図4は、第1実施形態のメモリセルアレイの一部の断面の構造を示す。
【
図5】
図5は、第1実施形態のメモリセルの構造の例の断面を示す。
【
図6】
図6は、第1実施形態のメモリセルの構造の製造工程の間の一状態を示す。
【
図9】
図9は、第2実施形態のメモリセルの構造の例の断面を示す。
【
図10】
図10は、第2実施形態のメモリセルの構造の製造工程の間の一状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に実施形態が図面を参照して記述される。以下の記述において、略同一の機能及び構成を有する構成要素は同一の参照符号を付され、繰返しの説明は省略される場合がある。
【0008】
図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なり得る。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、或る第1要素が別の第2要素に「接続されている」とは、第1要素が直接的又は常時或いは選択的に導電性となる要素を介して第2要素に接続されていることを含む。
【0010】
以下、xyz直交座標系が用いられて、実施形態が記述される。
【0011】
1.第1実施形態
1.1.構造(構成)
1.1.1.全体の構造
図1は、第1実施形態の磁気記憶装置の機能ブロックを示す。
図1に示されるように、磁気記憶装置1は、メモリコントローラ2により制御される。磁気記憶装置1は、メモリセルアレイ11、入出力回路12、制御回路13、ロウ選択回路14、カラム選択回路15、書込み回路16、及び読出し回路17を含む。
【0012】
メモリセルアレイ11は、複数のメモリセルMC、複数のワード線WL、及び複数のビット線BLを含む。メモリセルMCは、データを不揮発に記憶することができる。各メモリセルMCは、1つのワード線WL及び1つのビット線BLと接続されている。ワード線WLは行(ロウ)と関連付けられている。ビット線BLは列(カラム)と関連付けられている。1つの行の選択及び1つの列の選択により、1つのメモリセルMCが特定される。
【0013】
入出力回路12は、メモリコントローラ2から、制御信号CNT、コマンドCMD、アドレス信号ADD、データ(書込みデータ)DATを受け取る。入出力回路12は、メモリコントローラ2にデータ(読出しデータ)DATを送信する。
【0014】
ロウ選択回路14は、入出力回路12からアドレス信号ADDを受け取り、受け取られたアドレス信号ADDにより特定される行と関連付けられた1つのワード線WLを選択された状態にする。
【0015】
カラム選択回路15は、入出力回路12からアドレス信号ADDを受け取り、受け取られたアドレス信号ADDにより特定される列と関連付けられた複数のビット線BLを選択された状態にする。
【0016】
制御回路13は、入出力回路12から制御信号CNT及びコマンドCMDを受け取る。制御回路13は、制御信号CNTによって指示される制御及びコマンドCMDに基づいて、書込み回路16及び読出し回路17を制御する。具体的には、制御回路13は、メモリセルアレイ11へのデータの書込みの間に、データ書込みに使用される電圧を書込み回路16に供給する。また、制御回路13は、メモリセルアレイ11からのデータの読出しの間に、データ読出しに使用される電圧を読出し回路17に供給する。
【0017】
書込み回路16は、入出力回路12から書込みデータDATを受け取り、制御回路13の制御及び書込みデータDATに基づいて、データ書込みに使用される電圧をカラム選択回路15に供給する。
【0018】
読出し回路17は、制御回路13の制御に基づいて、データ読出しに使用される電圧を使用して、メモリセルMCに保持されているデータを割り出す。割り出されたデータは、読出しデータDATとして、入出力回路12に供給される。読出し回路17は、センスアンプを含む。
【0019】
1.1.2.メモリセルアレイの回路構成
図2は、第1実施形態のメモリセルアレイ11の回路図である。
図2に示されるように、メモリセルアレイ11は、M+1(Mは自然数)本のワード線WLA(WLA<0>、WLA<1>、…、WLA<M>)及びM+1本のワード線WLB(WLB<0>、WLB<1>、…、WLB<M>)を含む。メモリセルアレイ11はまた、N+1(Nは自然数)本のビット線BL(BL<0>、BL<1>、…、BL<N>)を含む。
【0020】
各メモリセルMC(MCA及びMCB)は、第1ノード及び第2ノードを有する。各メモリセルMCは、第1ノードにおいて1本のワード線WLと接続され、第2ノードにおいて1本のビット線BLと接続されている。より具体的には、メモリセルMCAは、αが0以上M以下の整数の全てのケース及びβが0以上N以下の整数の全てのケースの全ての組合せについて、メモリセルMCA<α,β>を含み、メモリセルMCA<α,β>は、ワード線WLA<α>とビット線BL<β>との間に接続される。同様に、メモリセルMCBは、αが0以上M以下の整数の全てのケース及びβが0以上N以下の整数の全てのケースの全ての組合せについて、メモリセルMCB<α,β>を含み、メモリセルMCB<α,β>は、ワード線WLB<α>とビット線BL<β>との間に接続される。
【0021】
各メモリセルMCは、1つの磁気抵抗効果素子VR(VRA又はVRB)及び1つのセレクタSE(SEA又はSEB)を含む。より具体的には、αが0以上M以下の整数の全てのケース及びβが0以上N以下の整数の全てのケースの全ての組合せについて、メモリセルMCA<α、β>は、磁気抵抗効果素子VRA<α,β>及びセレクタSEA<α,β>を含む。さらに、αが0以上M以下の全てのケース及びβが0以上N以下の整数の全てのケースの全ての組合せについて、メモリセルMCB<α,β>は、磁気抵抗効果素子VRB<α,β>及びセレクタSEB<α,β>を含む。
【0022】
各メモリセルMCにおいて、磁気抵抗効果素子VRとセレクタSEは直列に接続されている。磁気抵抗効果素子VRは1本のワード線WLと接続されており、セレクタSEは1本のビット線BLと接続されている。
【0023】
磁気抵抗効果素子VRは、低抵抗の状態と高抵抗の状態との間を切り替わることができる。磁気抵抗効果素子VRは、2つの抵抗状態の違いを利用して、1ビットのデータを記憶することができる。
【0024】
セレクタSEは、例えば以下に記述されるようなスイッチング素子であることが可能である。スイッチング素子は、2つの端子を有し、2端子間に第1閾値未満の電圧が第1方向に印加されている場合、そのスイッチング素子は高抵抗状態、例えば電気的に非導通状態である(オフ状態である)。一方、2端子間に第1閾値以上の電圧が第1方向に印加されている場合、そのスイッチング素子は低抵抗状態、例えば電気的に導通状態である(オン状態である)。スイッチング素子は、さらに、このような第1方向に印加される電圧の大きさに基づく高抵抗状態及び低抵抗状態の間の切り替わりの機能と同じ機能を、第1方向と反対の第2方向についても有する。すなわち、スイッチング素子は、双方向スイッチング素子である。スイッチング素子のオン又はオフにより、当該スイッチング素子と接続された磁気抵抗効果素子VRへの電流の供給の有無、すなわち当該磁気抵抗効果素子VRの選択又は非選択が制御されることが可能である。
【0025】
1.1.3.メモリセルアレイの構造
図3及び
図4は、第1実施形態のメモリセルアレイ11の一部の断面の構造を示す。
図3は、xz面に沿った断面を示し、
図4は、yz面に沿った断面を示す。
【0026】
図3及び
図4に示されるように、半導体基板(図示せず)の上方に複数の導電体21が設けられている。導電体21は、y軸に沿って延び、x軸に沿って並ぶ。各導電体21は、1つのワード線WLとして機能する。
【0027】
各導電体21は、上面において、複数のメモリセルMCBのそれぞれの底面と接続されている。メモリセルMCBは、xy面において、例えば円の形状を有する。メモリセルMCBは各導電体21上でy軸に沿って並んでおり、このような配置によってメモリセルMCBはxy面において行列状に配列されている。各メモリセルMCBは、セレクタSEBとして機能する構造と、磁気抵抗効果素子VRBとして機能する構造を含む。セレクタSEBとして機能する構造及び磁気抵抗効果素子VRBとして機能する構造は、各々、後述のように1又は複数の層を含む。
【0028】
メモリセルMCBの上方に、複数の導電体22が設けられている。導電体22は、x軸に沿って延び、y軸に沿って並ぶ。各導電体22は、底面において、x軸に沿って並ぶ複数のメモリセルMCBのそれぞれの上面と接している。各導電体22は、1つのビット線BLとして機能する。
【0029】
各導電体22は、上面において、複数のメモリセルMCAのそれぞれの底面と接続されている。メモリセルMCAは、xy面において、例えば円の形状を有する。メモリセルMCAは各導電体22上でx軸に沿って並んでおり、このような配置によってメモリセルMCAはxy面において行列状に配列されている。各メモリセルMCAは、セレクタSEAとして機能する構造と、磁気抵抗効果素子VRAとして機能する構造を含む。セレクタSEAとして機能する構造及び磁気抵抗効果素子VRAとして機能する構造は、各々、後述のように1又は複数の層を含む。
【0030】
y軸に沿って並ぶ複数のメモリセルMCAのそれぞれの上面上に、さらなる導電体21が設けられている。
【0031】
1.1.4.メモリセルの構造
図5は、第1実施形態のメモリセルの構造の例の断面を示す。
図5は、導電体22が位置する層と、当該層からz軸に沿って1つ上の導電体21が位置する層までの構造を示す。すなわち、
図5に示されるメモリセルMCは、メモリセルMCAに相当する。
【0032】
図5に示されるように、図示せぬ半導体基板の上方に、層間絶縁体23が設けられている。層間絶縁体23中に導電体22が設けられている。各導電体22の上面上に、メモリセルMCが位置する。各メモリセルMCは、セレクタSE、絶縁体28、磁気抵抗効果素子VR、ハードマスク35、及び導電体41を含む。メモリセルMCは、さらなる層を含んでいても良い。
【0033】
各セレクタSEは、1つの導電体22の上面上に位置し、側面においてテーパー状になっている。各セレクタSEは、例えば、円錐台の形状を有し得る。セレクタSEが円錐台の形状を有する場合、セレクタSEの
図5に示される断面と異なる断面での構造は、
図5に示されるとともに以下に記述される構造と同じである。
【0034】
セレクタSEは、下部電極24、可変抵抗材料(可変抵抗材料層)25、及び上部電極26を含む。
【0035】
下部電極24は導電体22の上面上に位置し、例えば、窒化チタン(TiN)を含むか、TiNから実質的に構成される。本明細書及び特許請求の範囲において、「実質的に」を含んだ「実質的に構成される」又は「実質的になる」及び同種の記載は、「実質的に構成される」要素が、意図せぬ不純物を含むことを許容することを意味する。
【0036】
可変抵抗材料25は、例えば2端子間スイッチング素子であり、2端子のうちの第1端子は可変抵抗材料25の上面及び底面の一方であり、2端子のうちの第2端子は可変抵抗材料25の上面及び底面の他方である。2端子間に印加される電圧が閾値以下の場合、そのスイッチング素子は“高抵抗”状態、例えば電気的に非導通状態である。2端子間に印加される電圧が閾値以上の場合、スイッチング素子は“低抵抗”状態、例えば電気的に導通状態である。可変抵抗材料25は、絶縁体からなる材料で形成されており、イオン注入により導入されたドーパントを含有する。絶縁体は、例えば、酸化物を含み、SiO2或いはSiO2から実質的に構成された材料を含む。ドーパントは、例えば、ヒ素(As)、ゲルマニウム(Ge)を含む。
【0037】
上部電極26は可変抵抗材料25の上面上に位置し、例えば、窒化チタン(TiN)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、及び炭素(C)の1つ以上を含むか、TiN、Al、Ta、W、Cu、及びCの1つ以上から実質的に構成される。上部電極26は、下端を含む下部26B及び上端を含む上部26Tからなる。上部電極26は、側面のうちの、下部26Bと上部26Tの境界において階段状になっている。すなわち、上部26Tの側面は、下部26Bの側面の延長線上にない。換言すると、下部26Bの上端、すなわち、上部26Tとの境界の面積は、上部26Tの下端、すなわち、下部26Bとの境界の面積より大きい。
【0038】
各上部電極26の上面上に、絶縁体28が位置する。各絶縁体28は、窒化物以外の材料を含むか、窒化物以外の材料から実質的に構成される。各絶縁体28は、側面においてテーパー状になっている。各絶縁体28は、例えば、円錐台の形状を有し得る。絶縁体28が円錐台の形状を有する場合、絶縁体28の
図5に示される断面と異なる断面での構造は、
図5に示されるとともに以下に記述される構造と同じである。
【0039】
絶縁体28は、上部電極26と、絶縁体28の上方の絶縁層32との間隔を広げることを意図されている。すなわち、絶縁層32が、後述される理由により、上部電極26から十分に離れていることが求められ、その目的が達せられるように絶縁体28の厚さ(z軸に沿った寸法)が決定される。上部電極26と絶縁層32の間には、絶縁体28に加えて、後述のように、強磁性層31が位置する。このため、絶縁体28は、上部電極26と強磁性層31との間の望まれる間隔と強磁性層31の厚さとの差に等しい大きさの厚さを有する。
【0040】
各絶縁体28の上面上に、1つの磁気抵抗効果素子VRが位置する。磁気抵抗効果素子VRは、側面においてテーパー状になっている。各磁気抵抗効果素子VRは、例えば、円錐台の形状を有し得る。磁気抵抗効果素子VRが円錐台の形状を有する場合、磁気抵抗効果素子VRの
図5に示される断面と異なる断面での構造は、
図5に示されるとともに以下に記述される構造と同じである。例えば、各磁気抵抗効果素子VRの側面は、絶縁体28の側面と連続している。
【0041】
各磁気抵抗効果素子VRは、トンネル磁気抵抗効果を示し、例えば、磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction; MTJ)を含む素子(MTJ素子)である。以下の記述及び図面は、磁気抵抗効果素子VRが、MTJ素子である例に基づく。
【0042】
具体的には、磁気抵抗効果素子VRは、強磁性層31、絶縁層32、及び強磁性層33を含む。例として、
図5に示されるように、絶縁層32は強磁性層31の上面上に位置し、強磁性層33は絶縁層32の上面上に位置する。
【0043】
強磁性層31は、強磁性層31、絶縁層32、及び強磁性層33の界面を貫く方向に沿った磁化容易軸を有し、例えば界面に対して45°以上90°以下の角度の磁化容易軸を有し、例えば界面と直交する方向に沿った磁化容易軸を有する。強磁性層31の磁化の向きは磁気記憶装置1でのデータの読出し及び書込みによっても不変であることを意図されている。強磁性層31は、いわゆる参照層として機能することができる。強磁性層31は、複数の層を含んでいてもよい。
【0044】
絶縁層32は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)を含むか、MgOから実質的に構成され、いわゆるトンネルバリアとして機能する。
【0045】
強磁性層33は、例えば、コバルト鉄ボロン(CoFeB)又はホウ化鉄(FeB)を含むか、CoFeB又はFeBから実質的に構成される。強磁性層33は、強磁性層31、絶縁層32、及び強磁性層33の界面を貫く方向に沿った磁化容易軸を有し、例えば界面に対して45°以上90°以下の角度の磁化容易軸を有し、例えば界面と直交する方向に沿った磁化容易軸を有する。強磁性層33の磁化の向きはデータ書込みによって可変であり、強磁性層33は、いわゆる記憶層として機能することができる。
【0046】
強磁性層33の磁化の向きが強磁性層31の磁化の向きと平行であると、磁気抵抗効果素子VRは、或る低い抵抗を有する。強磁性層33の磁化の向きが強磁性層31の磁化の向きと反平行であると、磁気抵抗効果素子VRは、強磁性層31と33の磁化の向きが反平行である場合の抵抗よりも高い抵抗を有する。
【0047】
強磁性層33から強磁性層31に向かって或る大きさの書込み電流が流れると、強磁性層33の磁化の向きは強磁性層31の磁化の向きと平行になる。一方、強磁性層31から強磁性層33に向かって別の或る大きさの書込み電流が流れると、強磁性層33の磁化の向きは強磁性層31の磁化の向きと反平行になる。
【0048】
ハードマスク35は、磁気抵抗効果素子VRの上面上、例えば、強磁性層33の上面上に位置する。ハードマスク35は、導電体からなり、例えば、TiNを含むか、TiNから実質的に構成される。
【0049】
導電体41は、上部電極26の材料と同じ材料を含むか、上部電極26の材料と同じ材料から実質的に構成される。導電体41は、後述のように、上部電極26の一部から除去された材料を含む。導電体41は、絶縁体28の側面の全体を覆う。
【0050】
導電体41は、下端を含む下部において、上部電極26の側面と部分的に接しており、例えば、上部電極26の側面を部分的に覆う。すなわち、導電体41は、上部電極26の上部26Tの側面と接しており、例えば、上部電極26の上部26Tの側面を覆う。導電体41はまた、下部において、上部電極26の下部26Bの上面と接する。例えば、導電体41の側面は、導電体41の下部において、セレクタSEの側面、特に上部電極26の側面と連続している。
【0051】
導電体41は、下部において、上部電極26の側面の全体を覆っていてもよい。ただし、導電体41は、可変抵抗材料25とは接していない必要がある。磁気記憶装置1の製造の過程で導電体41が意図せずに可変抵抗材料25と接することを防止するために、導電体41の下端は、可変抵抗材料25の上端から十分に離れているとよい。例えば、導電体41の下端は、上部電極26の厚さの半分の大きさを超える大きさだけ、可変抵抗材料25の上端と離れていることが可能である。すなわち、導電体41の下端は、上部電極26のz方向での中間の位置よりもz軸に沿って上側に位置する。
【0052】
一方、導電体41は、上部電極26に対して、絶縁体28を迂回する電流経路を提供する。このため、上部電極26に流入する電流及び上部電極26から流出する電流に対する抵抗を抑制するために、導電体41と上部電極26とが接触している面積が大きくされることが可能である。接触面積は、導電体41の下端が上部電極26の下端に近いほど、大きい。よって、接触面積の確保、及び導電体41と可変抵抗材料25との間の距離の確保の2つの要素のバランスに基づいて、導電体41の下端の位置が決定されることが可能である。
【0053】
導電体41はまた、上端を含む上部において、強磁性層31の側面と部分に接しており、例えば、強磁性層31の側面を部分的に覆う。すなわち、導電体41は、上端を含む上部において、強磁性層31の側面うちの下端を含む部分と接しており、例えば、強磁性層31の側面うちの下端を含む部分を覆う。
【0054】
導電体41は、強磁性層31に対して、絶縁体28を迂回する電流経路を提供する。このため、強磁性層31に流入する電流及び強磁性層31から流出する電流に対する抵抗を抑制するために、導電体41と強磁性層31とが接触している面積が大きくされることが可能である。接触面積は、導電体41の上端が強磁性層31の上端に近いほど、大きい。
【0055】
一方、導電体41の材料が、磁気抵抗効果素子VR中の強磁性層に接することにより、導電体41の材料が付着した強磁性層の磁気特性を劣化させる可能性がある。上記のように、導電体41の材料は、上部電極26の材料と同じ材料を含む。よって、上部電極26の材料が、磁気抵抗効果素子VR中の強磁性層に接することにより、上部電極26の材料が付着した強磁性層の磁気特性を劣化させる可能性がある。このため、導電体41が、強磁性層31の側面に付着することは抑制されることが望ましい場合がある。よって、導電体41と強磁性層31の界面の抵抗の大きさと、導電体41の材料による強磁性層31の磁気特性の劣化の程度の2つの要素のバランスに基づいて、導電体41の上端の位置が決定されることが可能である。
【0056】
導電体41は、上部電極26と強磁性層31に亘って延びており、よって、導電体41は、上部電極26と強磁性層31との間の電流経路として機能できる。
【0057】
図5に示される磁気記憶装置1の構造のうちの要素を設けられていない領域は、層間絶縁体を設けられることが可能である。さらに、メモリセルMCの表面を覆う絶縁体が設けられ得る。
【0058】
1.2.製造方法
図6~
図8は、第1実施形態の磁気記憶装置の一部の製造工程の間の状態を順に示す。
図6~
図8は、
図5に示される断面と同じ断面を示す。
【0059】
図6に示されるように、導電体22、層間絶縁体23、下部電極24A、可変抵抗材料25A、上部電極26A、絶縁体28A、強磁性層31A、絶縁層32A、強磁性層33A、及びハードマスク35Aが形成される。すなわち、層間絶縁体23中に複数の導電体22が形成される。次いで、層間絶縁体23の上面及び導電体22の上面上に、下部電極24A、可変抵抗材料25A、上部電極26A、絶縁体28A、強磁性層31A、絶縁層32A、強磁性層33A、及びハードマスク35Aが、この順に堆積される。堆積の方法の例は、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition; CVD)、及びスパッタリングを含む。下部電極24A、可変抵抗材料25A、上部電極26A、絶縁体28A、強磁性層31A、絶縁層32A、及び強磁性層33Aは、後の工程によって、それぞれ、下部電極24、可変抵抗材料25、上部電極26、絶縁体28、強磁性層31、絶縁層32、及び強磁性層33へと成形される要素である。ハードマスク35Aは、磁気抵抗効果素子VRが形成される予定の領域の直上において残存し、その他の領域において開口35A1を有する。開口35A1は、ハードマスク35Aの上面から底面に亘る。
【0060】
図7に示されるように、絶縁体28B、強磁性層31B、絶縁層32B、及び強磁性層33Bの複数の組が形成される。すなわち、ここまでの工程によって得られる構造が、イオンビームエッチング(Ion Beam Etching; IBE)により部分的に除去される。
図7の工程で行われるIBEは、第1IBEと称される場合がある。
【0061】
第1IBEのイオンビームは、z軸に対して角度を有する。このようなイオンビームは、ハードマスク35Aの開口35A1の中へと侵入し、開口35A1内で露出している要素を部分的に除去する。一部のイオンビームは、ハードマスク35Aにより阻まれて、すなわち、ハードマスク35Aによるシャドーイング効果によって、開口35A1内の深い領域に到達しない。しかし、ハードマスク35Aも第1IBEによって部分的に除去され、第1IBEの進行に伴ってハードマスク35Aの上面は徐々に低下する。この結果、第1IBEの進行とともに、イオンビームは、開口35A1内のより深い領域に到達するようになる。第1IBEは、第1IBEの対象の構造をz軸を中心として回転しながら行われる。このため、第1IBEの進行に伴って、エッチングに晒される要素のxy面における縁は、当該要素の中心に向かって均等に近づいていく。第1IBEは、少なくとも、絶縁体28A、強磁性層31A、絶縁層32A、及び強磁性層33Aが部分的に除去されて上部電極26Aの上面が露出するまで継続される。
【0062】
第1IBEにより、絶縁体28A、強磁性層31A、絶縁層32A、及び強磁性層33Aは、部分的に除去されて、それぞれ、絶縁体28B、強磁性層31B、絶縁層32B、及び強磁性層33Bがへと成形される。また、第1IBEにより、ハードマスク35Aは、ハードマスク35Bとなる。
【0063】
上部電極26Aのうち、絶縁体28Bの間で露出している部分は、上部電極26Aの部分26AEとして引用される。
【0064】
図8に示されるように、導電体41が形成される。すなわち、ここまでの工程によって得られる構造が、IBEにより部分的に除去される。
図8の工程で行われるIBEは、第2IBEと称される場合がある。第2IBEは、第1IBEの実行に使用される条件と異なる条件で行われる。相違する条件は、少なくとも、イオンビームの角度を含む。第2IBEで使用されるイオンビームのz軸に対する角度は、第1IBE使用されるイオンビームのz軸に対する角度より小さく、例えば、0°に近い。
【0065】
第2IBEにより、上部電極26Aの部分26AEは部分的に除去され、部分26AEの上面が低下する。この結果、上部電極26Aのうち、部分26AE以外の部分が残存して、上部26Tが形成される。
【0066】
第2IBEは、エッチング対象の材料から除去された材料を周囲に飛散させる。例えば、第2IBEによる上部電極26Aの部分26AEの部分的除去は、上部電極26Aの材料の元素を飛散させる。飛散した元素は、飛散の起点の周囲の要素に再度堆積し得る。再堆積は、飛散の起点に最も近い、絶縁体28の側面において起こり得る。この再堆積によって、導電体41が形成される。導電体41は、このような形成のされ方に起因して、上部電極26Aの材料と同じ材料を主に含む。導電体41は、上部電極26Aの材料を主成分として含むのに加えて、第2IBEの実行に起因する他の材料も含み得る。このため、導電体41は、上部電極26Aの材料と完全に同じ材料からは構成されない場合がある。
【0067】
図5を参照して記述されるように、導電体41は、上部電極26と強磁性層31に亘って延びる。このため、第2IBEは、第2IBEによって導電体41が上部電極26と強磁性層31に亘って形成されるように再堆積が生じることを可能にする条件で行われる。条件は、イオンビームの速度(イオンビームの照射のエネルギー)、イオンビームの角度、及びイオンの元素(すなわち、質量)の1つ以上を含む。強磁性層31の側面に達する導電体41の形成のための条件は、絶縁体28(絶縁体28B)の厚さに少なくとも一部依存する。このため、条件の決定に、絶縁体28の厚さが考慮される。
【0068】
第2IBEにより、絶縁体28B、強磁性層31B、絶縁層32B、及び強磁性層33Aも、若干、部分的に除去されて、それぞれ、絶縁体28、強磁性層31、絶縁層32、及び強磁性層33へと成形される。また、第2IBEにより、ハードマスク35Bは、ハードマスク35となる。
【0069】
次に、
図5に示されるように、上部電極26、可変抵抗材料25、及び下部電極24が形成される。すなわち、上部電極26A、可変抵抗材料25A、及び下部電極24Aが部分的に除去されて、それぞれ、上部電極26、可変抵抗材料25、及び下部電極24へと成形される。上部電極26A、可変抵抗材料25A、及び下部電極24Aの部分的な除去は、任意の方法で行われることが可能である。例えば、上部電極26、可変抵抗材料25、及び下部電極24の形成は、
図8の工程のIBEが継続されることにより行われることが可能である。又は、上部電極26、可変抵抗材料25、及び下部電極24の形成は、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching; RIE)により行われることが可能である。
【0070】
1.3.利点(効果)
第1実施形態によれば、以下に記述されるように、高い特性を有するメモリセルが提供されることが可能である。
【0071】
メモリセルの参考用の構造として、第1実施形態と同じ構造のセレクタSEの上面上に、磁気抵抗効果素子VRが設けられることが可能である。そのような構造は、第1実施形態と同じく、IBEにより形成され得る。すなわち、第1実施形態の
図6と同様に、下から順に積層された下部電極24A、可変抵抗材料25A、上部電極26A、強磁性層31A、絶縁層32A、及び強磁性層33AがIBEにより成形される。第1実施形態と異なり、絶縁体28Aは設けられず、よって、上部電極26Aと強磁性層31Aは、接しており、非常に小さい距離しか離れていない。このことに基づいて、上部電極26Aに対するIBEの結果、以下の2つの現象が生じ得る。
【0072】
1つ目として、IBEによって上部電極26Aから飛散した材料が、強磁性層31Aの側面に大量に堆積し得る。上部電極26Aに含まれる材料、特に、上部電極26Aの材料がTiNである場合に、再堆積する材料は窒素を多く含む。窒素は、強磁性層に付着すると、付着した強磁性層の磁気特性を劣化させ得ると考えられている。このため、上部電極26Aの材料が強磁性層31Aの側面上に大量に堆積すると、強磁性層31Aの磁気特性、ひいては、磁気抵抗効果素子VRの特性が劣化し得る。
【0073】
2つ目として、IBEによって上部電極26Aから飛散した材料が、磁気抵抗効果素子VRが磁気抵抗効果を発現することを不能にし得る。すなわち、上部電極26Aと強磁性層31Aが非常に近いため、IBEによって、上部電極26Aから飛散した材料が、絶縁層32の側面上にまで堆積され得る。絶縁層32の側面上に堆積した材料は、強磁性層31と強磁性層33を電気的に導通させる。強磁性層31と33が電気的に導通すると、そのような強磁性層31及び33を含んだ磁気抵抗効果素子VRは、磁気抵抗効果を発現できない。このような磁気抵抗効果素子VRは、メモリセルとして機能できない。
【0074】
第1実施形態によれば、上部電極26と強磁性層31の間に絶縁体28が設けられる。このため、上部電極26と強磁性層31とは接しておらず、距離を有する。よって、上部電極26AのIBEによる成形の間に、IBEによって上部電極26Aから飛散した材料は、強磁性層31の側面上に堆積しづらい。堆積の量は、少なくとも、参考用の構造のように、絶縁体28が含まれない場合の量より少ない。よって、参考用の構造の場合よりも、強磁性層31の磁気特性の劣化を抑制されたメモリセルMCが提供されることが可能である。
【0075】
同じ理由により、上部電極26から、強磁性層31よりも遠くに位置する絶縁層32の側面上に、IBEによって上部電極26Aから飛散した材料が堆積することは、大きく抑制されるか、防止される。よって、磁気抵抗効果を発現できるメモリセルMCが提供されることが可能である。
【0076】
参考用の構造と異なり、上部電極26と強磁性層31は接していない。このため、参考用の構造のように、上部電極26と強磁性層31はこれらの界面を介する電流経路を有しない。しかしながら、第1実施形態によれば、上部電極26の側面上の領域と強磁性層31の側面上の領域とに亘る導電体41が設けられ、導電体41が、上部電極26と強磁性層31の電流経路を形成する。このため、セレクタSEと磁気抵抗効果素子VRが電気的に接続されることが可能である。IBEに晒される要素から飛散した材料の再堆積は、周囲の要素に付着すると、意図せぬ結果を引き起こし得、よって、一般に、再堆積は抑制されることを望まれる。第1実施形態では、再堆積を積極的に利用して、絶縁体28の挿入による上部電極26と強磁性層31の非接触に起因する上部電極26と強磁性層31との界面で電気的接続が形成されないことが対処される。すなわち、積極的な再堆積の利用によって、絶縁体28の側面上に導電体41が形成され、導電体41によって、上部電極26と強磁性層31との電気的接続が形成されている。
【0077】
また、第1実施形態によれば、各絶縁体28は、窒化物以外の材料を含むか、窒化物以外の材料から実質的に構成される。このため、上部電極26と強磁性層31との距離の確保のための絶縁体28の挿入によって、窒素が強磁性層31に付着することは抑制される。よって、絶縁体28の挿入による強磁性層31の磁気特性の劣化は抑制されている。
【0078】
2.第2実施形態
第2実施形態は、上部電極26と強磁性層31の電気的接続のための構成の点で、第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる特徴が主に記述される。
【0079】
第2実施形態の磁気記憶装置1、メモリセルMC、セレクタSE、上部電極26、及び絶縁体28は、それぞれ、第1実施形態の磁気記憶装置1、メモリセルMC、セレクタSE、上部電極26、及び絶縁体28と異なる。第2実施形態の磁気記憶装置1、メモリセルMC、セレクタSE、上部電極26、及び絶縁体28は、第1実施形態の磁気記憶装置1、メモリセルMC、セレクタSE、上部電極26、及び絶縁体28との区別のために、それぞれ、磁気記憶装置1b、メモリセルMCb、セレクタSEb、上部電極26b、及び絶縁体28bと称される場合がある。
【0080】
2.1.構造
図9は、第2実施形態のメモリセルの構造の例の断面を示す。
図9では、第1実施形態の
図5と同じく、メモリセルMCbは、メモリセルMCAに相当する。
【0081】
セレクタSEbは、第1実施形態での上部電極26に代えて、上部電極26bを含む。上部電極26bは、上部電極26の底面から上面に亘って連続する側面を有し、上部電極26のような階段形状の部分を有しない。セレクタSEb、絶縁体28b、磁気抵抗効果素子VRの側面は、例えば、連続している。
【0082】
各絶縁体28bは、Co、Fe、ビスマス(Bi)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、及びルテニウム(Ru)の1つ以上を含むか、Co、Fe、Bi、Ba、Ti、La、Sr、又はRuの1つ以上から実質的に構成される。各絶縁体28bは、内部において、1つ又は複数の導電体45を含む。
【0083】
各導電体45は、z軸に沿って延び、絶縁体28bの底面から絶縁体28bの上面に亘る。各導電体45は、この導電体45が含まれるメモリセルMCb中の上部電極26bの上面、及び強磁性層31の底面と接する。各導電体45は、1つの上部電極26bと1つの強磁性層31との間の電流経路として機能できる。各導電体45は、絶縁体28bに含まれ得る複数の材料の1つ以上と同じ材料を含むか、絶縁体28bに含まれ得る複数の材料の1つ以上から実質的に構成される。具体的には、各導電体45は、Co、Fe、Bi、Ba、Ti、La、Sr、及びRuの1つ以上を含むか、Co、Fe、Bi、Ba、Ti、La、Sr、又はRuの1つ以上から実質的に構成される。
【0084】
一方、各導電体45は、絶縁体28bと異なる結晶構造を有する。例えば、各導電体45は、ペロブスカイト構造又はスピネル構造を有する。
【0085】
2.2.製造方法
図10~
図12は、第2実施形態の磁気記憶装置の一部の製造工程の間の状態を順に示す。
図10~
図12は、
図9に示される断面と同じ断面を示す。
【0086】
図10に示されるように、第1実施形態の
図6を参照して記述される工程と同じく、導電体22、層間絶縁体23、下部電極24A、及び可変抵抗材料25Aが形成される。可変抵抗材料25Aの上面上に、上部電極26bAが形成される。上部電極26bAは、後の工程によって上部電極26bへと成形される要素である。
【0087】
図11に示されるように、絶縁体28bA及び導電体45が形成される。絶縁体28bAは、後の工程によって絶縁体28bへと成形される要素である。絶縁体28bA及び導電体45は、任意の方法によって形成されることが可能である。例として、絶縁体28bAの原料ガスと導電体45の原料ガスの両方を使用して、絶縁体28bAと導電体45が並行して形成されることができる。例えば、絶縁体28bAと導電体45の形成のための条件を調整することによって、絶縁体28bがCVDで堆積されつつ、導電体45が析出によって形成される。この方法によると、導電体45が形成される位置は、ランダムであり、意図される位置に必ずしも形成されない場合がある。しかしながら、導電体45の径(xy面でのいずれかの位置、例えば中心を通る長さ)は非常に小さく、絶縁体28bの径より小さい。このため、少なくとも1つの導電体45が、絶縁体28bAのうちの後の工程によって絶縁体28bへと成形されるほぼ全て又は全ての領域に含まれることが可能である。
【0088】
図12に示されるように、第1実施形態の
図6を参照して記述される工程と同様にして、絶縁体28bAの上面上に、強磁性層31A、絶縁層32A、強磁性層33A、及びハードマスク35Aが、この順に堆積される。
【0089】
図9に示されるように、ここまでの工程によって得られる構造がIBEによって部分的に除去される。これにより、下部電極24A、可変抵抗材料25A、上部電極26bA、絶縁体28bA、強磁性層31A、絶縁層32A、及び強磁性層33Aから、下部電極24、可変抵抗材料25、上部電極26b、絶縁体28b、強磁性層31、絶縁層32、及び強磁性層33が形成される。下部電極24A、可変抵抗材料25A、上部電極26bA、絶縁体28bA、強磁性層31A、絶縁層32A、及び強磁性層33Aの1つ以上の部分的除去が、RIEによって行われてもよい。
【0090】
2.3.利点
第2実施形態によれば、第1実施形態と同じく、上部電極26と強磁性層31の間に絶縁体28が設けられる。このため、第1実施形態において記述される絶縁体28を設けることによって得られる利点と同じ利点を得られる。
【0091】
3.変形例
ここまでの記述は、磁気抵抗効果素子VRにおいて強磁性層31、絶縁層32、及び強磁性層33が、この順に積層されている例に関する。磁気抵抗効果素子VRの構造は、この例に限られない。強磁性層33、絶縁層32、及び強磁性層31がこの順に、セレクタSEから離れる方向に並んで積層されていてもよい。ただし、強磁性層33はいわゆる記憶層として機能し、強磁性層31より薄い。このため、強磁性層33が磁気抵抗効果素子VRの最下に位置する場合、強磁性層31が磁気抵抗効果素子VR中で最下に位置する場合よりも、上部電極26と絶縁層32の距離が近い。このため、強磁性層31が磁気抵抗効果素子VR中で最下に位置する構造は、上部電極26Aに対するIBEによって上部電極26Aから飛散する材料が、絶縁層32の側面に堆積することを、より抑制できる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
1…磁気記憶装置、2…メモリコントローラ、11…メモリセルアレイ、12…入出力回路、13…制御回路、14…ロウ選択回路、15…カラム選択回路、16…書込み回路、17…読出し回路、MC…メモリセル、WL…ワード線、BL…ビット線、VR…磁気抵抗効果素子、SE…セレクタ、21…導電体、22…導電体、23…層間絶縁体、28…絶縁体、35…ハードマスク、41…導電体、24…下部電極、25…可変抵抗材料、26…上部電極、31…強磁性層、32…絶縁層、33…強磁性層、45…導電体