(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139995
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】乾燥剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/28 20060101AFI20220915BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20220915BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220915BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20220915BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20220915BHJP
【FI】
B01D53/28
B01J20/06 D
B01J20/30
B09B3/00 304G
B09B3/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040614
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 智洋
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 裕介
【テーマコード(参考)】
4D004
4D052
4G066
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AB03
4D004BA10
4D004CA07
4D004CA09
4D004CA34
4D004CC01
4D004DA03
4D052GA04
4D052GB13
4D052HA00
4G066AA43D
4G066AA78B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA22
4G066CA43
4G066DA03
4G066FA17
4G066FA40
(57)【要約】
【課題】省エネルギーで焼却主灰を再資源化すること。
【解決手段】乾燥剤の製造方法は、焼却主灰を分級する分級工程S11と、分級工程S11の後に所定範囲の粒径の焼却主灰に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程S12と、炭酸化工程S12の後に炭酸化処理を施された焼却主灰を成分に含む乾燥剤を製造する製造工程S13と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却主灰を分級する分級工程と、
前記分級工程の後に所定範囲の粒径の前記焼却主灰に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程と、
前記炭酸化工程の後に炭酸化処理を施された前記焼却主灰を成分に含む乾燥剤を製造する製造工程と、
を含む、乾燥剤の製造方法。
【請求項2】
前記炭酸化工程では、炭酸化処理を施す間に前記焼却主灰を攪拌する、
請求項1に記載の乾燥剤の製造方法。
【請求項3】
前記所定範囲は、150μm以上2.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の乾燥剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乾燥剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却施設で発生する焼却灰等を溶融、固化した溶融スラグを建設材料として利用することが知られている(例えば、特許文献1)。溶融化は、焼却灰等の容積を減少させるとともに、重金属類を無害化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶融化では、焼却灰等を1000℃以上の高温で溶融し、冷却して固化するため、膨大なエネルギーを必要とし、汎用化が難しいという問題があった。また、焼却灰の再資源化は、排出量に対する再資源化率が依然として低いままであり、新たな展開先が望まれている。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、省エネルギーで焼却主灰を再資源化することができる乾燥剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の乾燥剤の製造方法は、焼却主灰を分級する分級工程と、前記分級工程の後に所定範囲の粒径の前記焼却主灰に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程と、前記炭酸化工程の後に炭酸化処理を施された前記焼却主灰を成分に含む乾燥剤を製造する製造工程と、を含む。
【0007】
乾燥剤の製造方法の望ましい態様として、前記炭酸化工程では、炭酸化処理を施す間に前記焼却主灰を攪拌する。
【0008】
乾燥剤の製造方法の望ましい態様として、前記所定範囲は、150μm以上2.5mm以下である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、省エネルギーで焼却主灰を乾燥剤として再資源化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態の乾燥剤の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、実施形態に係る乾燥剤の製造システムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態の記載に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。以下の実施形態では、本開示の実施形態を例示する上で、必要となる構成要素を説明し、その他の構成要素を省略する。
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態の乾燥剤100の製造方法を示すフローチャートである。
図2は、実施形態に係る乾燥剤100の製造システム1の一例を示す模式図である。実施形態の乾燥剤100の製造方法は、焼却主灰110を成分に含む乾燥剤100の製造方法である。乾燥剤100は、吸湿性及び吸水性を有する。なお、乾燥剤100は、以下の説明では顆粒であるものとして説明するが、本開示では錠剤でもよい。
【0013】
図1に示すように、実施形態の乾燥剤100の製造方法は、分級工程S11と、炭酸化工程S12と、製造工程S13と、を含む。また、
図2に示すように、実施形態の乾燥剤100の製造システム1は、分級機10と、炭酸化処理装置20と、製造設備30と、を備える。
【0014】
分級工程S11は、焼却主灰110を分級する工程である。焼却主灰110は、焼却灰のうち焼却炉等の底部から回収される焼却残留物を示し、燃焼ガスと共に巻き上がり集塵装置で回収される焼却飛灰とは区別される。焼却主灰110の成分は、主に、酸化カルシウム(CaO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)等を含む。
【0015】
分級工程S11は、実施形態において、製造システム1の分級機10において実施される。分級機10は、
図2に示すように、焼却施設から排出された焼却主灰110を粒子径及び形状等によって分級する。焼却主灰110は、分級機10によって所定範囲の粒径の焼却主灰111と所定範囲外の粒径の焼却主灰112とに分級されて、所定範囲の粒径の焼却主灰111のみが炭酸化処理装置20へ搬送される。所定範囲は、実施形態において、150μm以上2.5mm以下である。
【0016】
分級機10は、焼却残留物から焼却主灰、鉄くず及び鉄系夾雑物等を選別する機能を有する分級選別設備であってもよい。分級選別設備は、例えば、スケルトンバケットによって焼却残留物を荒く選別する。所定サイズ未満の残渣は、例えば、最終処分される。分級選別設備は、例えば、弱磁力の磁選機によって所定サイズ以上の粒体及び紛体から大きな鉄くずを回収する。次に、分級選別設備は、例えば、強磁力の磁選機によって釘及び針金等の細かい鉄系夾雑物を除去する。回収した鉄くずは、例えば、専門業者によって処分される。次に、分級選別設備は、焼却主灰110等の粉体を粒子径及び形状等によって分級する。所定サイズより大きい残渣は、例えば、最終処分される。
【0017】
炭酸化工程S12は、所定範囲の粒径の焼却主灰111に対して炭酸化処理を施す工程である。炭酸化工程S12における炭酸化処理は、焼却主灰111に炭酸ガス(二酸化炭素(CO2))を触れさせる処理である。炭酸化工程S12で用いる炭酸ガスは、例えば、石炭、石油、天然ガス等を燃料とする火力発電所から排出される炭酸ガスである。
【0018】
炭酸化工程S12は、実施形態において、製造システム1の炭酸化処理装置20において実施される。
図2に示すように、分級機10から搬送された所定範囲の粒径の焼却主灰111が、炭酸化処理装置20に搬入される。炭酸化処理装置20には、炭酸ガスが導入される。
【0019】
炭酸化工程S12では、炭酸化処理装置20の容器(炭酸化処理槽)に焼却主灰111が配置される。容器は、例えば略直方体状の可搬式コンテナである。可搬式コンテナは、例えば車両の荷台に載せることができる。容器は、内部空間を鉛直方向に分割する隔壁を備える。隔壁は、容器の底面と平行な板状部材であって、複数の通気口を備える。焼却主灰110は、隔壁の上に置かれる。
【0020】
隔壁の上に焼却主灰111が載った状態で、隔壁の下側の空間に炭酸ガスが導入される。炭酸ガスは、隔壁の通気口を通って焼却主灰111に接触する。焼却主灰111は、炭酸ガスを吸収することで炭酸化する。具体的には、焼却主灰111に含有される酸化カルシウム等のカルシウム成分が炭酸化し、炭酸カルシウム(CaCO3)が生成される。炭酸化工程S12によって、二酸化炭素が焼却主灰111に吸収される。
【0021】
すなわち、二酸化炭素が、炭酸塩として焼却主灰111に固定化される。また、炭酸化工程S12によって、焼却主灰111に含有される鉛(Pb)等の重金属が難溶化する。なお、炭酸化工程S12では、炭酸化処理を施す間、すなわち、焼却主灰111を収容した容器に炭酸ガスを導入している間、焼却主灰111を攪拌して、焼却主灰111に対して均一に炭酸化ガスを触れさせることが好ましい。炭酸化処理を施された焼却主灰120は、製造設備30へ搬送される。
【0022】
製造工程S13は、炭酸化処理を施された焼却主灰120を成分に含む乾燥剤100を製造する工程である。製造工程S13は、実施形態において、製造システム1の製造設備30において実施される。
図2に示すように、炭酸化処理装置20から搬出された焼却主灰120は、製造設備30に搬入される。
【0023】
製造設備30は、包材に焼却主灰120を充填させる充填機等を含む。製造工程S13において、例えば、焼却主灰120の成分が100%未満である乾燥剤100を製造する場合、製造設備30は、焼却主灰120と他の成分物質とを混練する混練機等を含む。実施形態の製造工程S13では顆粒の乾燥剤100を製造するが、製造工程S13において、例えば、錠剤の乾燥剤を製造する場合、製造設備30は、打錠機、フィルムコーティング機、乾燥機、梱包機等を含む。
【0024】
以上で説明したように、実施形態の乾燥剤100の製造方法は、焼却主灰110を分級する分級工程S11と、分級工程S11の後に所定範囲の粒径の焼却主灰111に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程S12と、炭酸化工程S12の後に炭酸化処理を施された焼却主灰120を成分に含む乾燥剤100を製造する製造工程S13と、を含む。
【0025】
焼却主灰110は、多孔質な細孔構造を有し、この細孔構造によって優れた吸湿及び吸水効果を有する。分級工程S11において乾燥剤100に使用する焼却主灰110の粒径を所定の範囲内に限定することによって、焼却主灰110の細孔構造を均一化することができるので、乾燥剤100の吸湿効果及び吸水効果を均一にすることができる。また、炭酸化工程S12によって焼却主灰110に含有する鉛等の重金属を難溶化することができるので、炭酸化された焼却主灰120を成分に含む乾燥剤100からの鉛等の溶出を抑制することができる。さらに、実施形態の乾燥剤100の製造方法は、高温や高温からの冷却が必要とされる溶融化と比較して、簡易的かつ省エネルギーで焼却主灰110を再資源化することができる。
【0026】
また、実施形態の乾燥剤100の製造方法において、炭酸化工程S12では、炭酸化処理を施す間に焼却主灰111を攪拌する。これにより、炭酸化処理装置20等で炭酸化処理された焼却主灰120の炭酸化の程度を均一にできる。
【0027】
また、実施形態の乾燥剤100の製造方法において、所定範囲は、150μm以上2.5mm以下である。これにより、乾燥剤100の吸湿効果及び吸水効果を均一にすることができるとともに、吸湿効果及び吸水効果を向上させることができる。
【0028】
なお、各実施形態において説明した各構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態内の他の構成と組み合わせてもよい。また、これらの各構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態とは異なる他の実施形態内の構成と組み合わせてもよい。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の改変を行ってもよい。
【0029】
例えば、炭酸化工程S12で用いる炭酸ガスは、必ずしも石炭、石油、天然ガス等を燃料とする火力発電所から排出される炭酸ガスでなくてもよい。炭酸ガスは、例えば、セメントの製造工場等の工場、化学プラント、焼却施設等から排出される炭酸ガスであってもよい。炭酸ガスは、炭酸化工程S12に用いるために生成されたガスであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 製造システム
10 分級機
20 炭酸化処理装置
30 製造設備
100 乾燥剤
110、111、112、120 焼却主灰
S11 分級工程
S12 炭酸化工程
S13 製造工程