(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140039
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】車両用シート駆動システム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20220915BHJP
B60N 2/809 20180101ALI20220915BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20220915BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20220915BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20220915BHJP
G10L 15/22 20060101ALI20220915BHJP
G10L 15/10 20060101ALI20220915BHJP
G10L 13/00 20060101ALI20220915BHJP
G06F 3/16 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/809
B60N2/22
B60N2/06
G10L15/00 200J
G10L15/22 200Z
G10L15/10 200W
G10L13/00 100L
G06F3/16 650
G06F3/16 630
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040673
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】山田 光一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BB02
3B087BD02
3B087DC06
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】乗員の音声コマンドにより動作するシート装置が、シート装置に着座している乗員の意に反して動作するおそれを小さくする。
【解決手段】車両のフロアに支持され、少なくとも一つの特定動作を実行可能なシート装置16、18と、シート装置に設けられ、車両の乗員P1、P2が発した音声を取得する音声取得部と、音声取得部が取得した音声に含まれる音声コマンドを認識可能な音声認識部と、各特定動作とそれぞれ対応する少なくとも1つの音声コマンド例が記録された記録部と、音声認識部が認識した音声コマンドが、音声コマンド例と一致したか否かを判定するコマンド判定部と、コマンド判定部が一致したと判定した音声コマンド例に対応する特定動作をシート装置に実行させるように、シート装置を作動させる作動制御部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアに支持され、少なくとも一つの特定動作を実行可能なシート装置と、
前記シート装置に設けられ、前記車両の乗員が発した音声を取得する音声取得部と、
前記音声取得部が取得した音声に含まれる音声コマンドを認識可能な音声認識部と、
前記各特定動作とそれぞれ対応する少なくとも1つの音声コマンド例が記録された記録部と、
前記音声認識部が認識した前記音声コマンドが、前記音声コマンド例と一致したか否かを判定するコマンド判定部と、
前記コマンド判定部が一致したと判定した前記音声コマンド例に対応する前記特定動作を前記シート装置に実行させるように、前記シート装置を作動させる作動制御部と、
を備える車両用シート駆動システム。
【請求項2】
前記各音声コマンド例が、前記シート装置を表す特定の一つの言葉である第1コマンド構成部と、一つの前記特定動作を表す特定の一つの言葉である第2コマンド構成部と、からなり、
前記コマンド判定部が一致したと判定した前記音声コマンド例の前記第2コマンド構成部が表す前記特定動作を前記シート装置に実行させるように、前記作動制御部が前記シート装置を作動させる請求項1に記載の車両用シート駆動システム。
【請求項3】
前記車両が自動運転を実行しているか否かを判定可能な運転状態判定部を備え、
前記車両が前記自動運転を実行していると前記運転状態判定部が判定し且つ前記コマンド判定部が一致したと判定したときに、前記作動制御部が前記シート装置を作動させる請求項1又は請求項2に記載の車両用シート駆動システム。
【請求項4】
前記車両が自動運転を実行しているか否かを判定可能な運転状態判定部と、
前記車両の車速を取得する車速取得部と、
を備え、
前記車両が前記自動運転を実行していないと前記運転状態判定部が判定し、前記車速取得部が取得した前記車速が所定の閾値以下であると前記運転状態判定部が判定し、且つ前記コマンド判定部が一致したと判定したときに、前記作動制御部が前記シート装置を作動させる請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シート駆動システム。
【請求項5】
音声を出力可能な音声出力部を備え、
前記コマンド判定部が一致したと判定したときに、前記作動制御部が前記シート装置を作動させる前に、前記コマンド判定部が一致したと判定した前記音声コマンド例を表す音声を前記音声出力部が出力する請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用シート駆動システム。
【請求項6】
前記音声出力部が前記音声コマンド例を表す音声を出力した後に、前記音声認識部が所定の前記音声コマンドである緊急音声コマンドを認識するか又は緊急停止スイッチが操作されたときに、前記作動制御部が前記シート装置を作動させるのを禁止する作動禁止部を備える請求項5に記載の車両用シート駆動システム。
【請求項7】
前記音声出力部が前記音声コマンド例を表す音声を出力した後に前記音声認識部が所定の前記音声コマンドである許可音声コマンドを認識したときに、前記作動制御部が前記シート装置を作動させる請求項5に記載の車両用シート駆動システム。
【請求項8】
車両のフロアに支持され、少なくとも一つの特定動作を実行可能なシート装置と、
前記車両の乗員が発した音声を取得する音声取得部と、
前記音声取得部が取得した音声に含まれる音声コマンドを認識可能な音声認識部と、
前記シート装置を表す特定の一つの言葉である第1コマンド構成部と、一つの前記特定動作を表す特定の一つの言葉である第2コマンド構成部と、からなる音声コマンド例が少なくとも1つ記録された記録部と、
前記音声認識部が認識した前記音声コマンドが、前記音声コマンド例と一致したか否かを判定するコマンド判定部と、
前記コマンド判定部が一致したと判定した前記音声コマンド例の前記第2コマンド構成部が表す前記特定動作を前記シート装置に実行させるように、前記シート装置を作動させる作動制御部と、
を備える車両用シート駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には車両用シート駆動システムが開示されている。この車両用シート駆動システムは、運転者が着座するシート装置である運転席と、乗員が発した音声を取得する音声取得部と、音声取得部が取得した音声に含まれる音声コマンドを認識可能な音声認識部と、運転席に駆動力を付与可能な駆動部と、を備える。
【0003】
例えば、運転席に所定の動作を実行させるための音声コマンドを乗員が発すると、音声認識部がこの音声コマンドを認識する。これにより駆動部が運転席に駆動力を付与し、運転席が所定の動作を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記車両用シート駆動システムでは、車両のステアリングホイールに音声取得部が設けられている。そのため運転者が発した音声に加えて、運転者とは別の乗員が発した音声を、音声取得部が取得する可能性がある。
【0006】
例えば、運転者とは別の乗員が、運転席を移動させるための音声コマンドを誤って発したときに、この音声コマンドを音声取得部が取得し、この音声コマンドを音声認識部が認識するおそれがある。この場合、運転者が運転席を移動させる意思がないにも拘わらず、運転席が所定の動作を実行する。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の音声コマンドにより動作するシート装置が、シート装置に着座している乗員の意に反して動作するおそれが小さい車両用シート駆動システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、車両のフロアに支持され、少なくとも一つの特定動作を実行可能なシート装置と、前記シート装置に設けられ、前記車両の乗員が発した音声を取得する音声取得部と、前記音声取得部が取得した音声に含まれる音声コマンドを認識可能な音声認識部と、前記各特定動作とそれぞれ対応する少なくとも1つの音声コマンド例が記録された記録部と、前記音声認識部が認識した前記音声コマンドが、前記音声コマンド例と一致したか否かを判定するコマンド判定部と、前記コマンド判定部が一致したと判定した前記音声コマンド例に対応する前記特定動作を前記シート装置に実行させるように、前記シート装置を作動させる作動制御部と、を備える。
【0009】
請求項1に記載の車両用シート駆動システムは、車両のフロアに支持され、少なくとも一つの特定動作を実行可能なシート装置を備える。車両用シート駆動システムでは、車両の乗員が発した音声を、シート装置に設けられた音声取得部が取得し、音声取得部が取得した音声に含まれる音声コマンドを音声認識部が認識可能である。さらに音声認識部が認識した音声コマンドが、記録部に記録された少なくとも1つの音声コマンド例と一致したか否かをコマンド判定部が判定する。さらに、コマンド判定部が一致したと判定した音声コマンド例に対応する特定動作をシート装置に実行させるように、作動制御部がシート装置を作動させる。
【0010】
シート装置に設けられた音声取得部は、当該シート装置に着座した乗員が発した音声を取得する。一方、音声取得部は、音声取得部が設けられたシート装置とは別のシート装置に着座した乗員が発した音声を取得し難い。従って、例えば音声取得部が設けられたシート装置とは別のシート装置に着座した乗員が、当該別のシート装置を移動させるための音声コマンドを発したときに、この音声コマンドを当該シート装置の音声取得部が取得し且つこの音声コマンドを当該シート装置の音声認識部が認識するおそれが小さい。従って、請求項1に記載の車両用シート駆動システムでは、乗員の音声コマンドにより動作するシート装置が、シート装置に着座している乗員の意に反して動作するおそれが小さい。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項1に記載の車両用シート駆動システムにおいて、前記各音声コマンド例が、前記シート装置を表す特定の一つの言葉である第1コマンド構成部と、一つの前記特定動作を表す特定の一つの言葉である第2コマンド構成部と、からなり、前記コマンド判定部が一致したと判定した前記音声コマンド例の前記第2コマンド構成部が表す前記特定動作を前記シート装置に実行させるように、前記作動制御部が前記シート装置を作動させる。
【0012】
請求項2に記載の車両用シート駆動システムの音声コマンド例は、シート装置を表す特定の一つの言葉である第1コマンド構成部と、一つの特定動作を表す特定の一つの言葉である第2コマンド構成部と、からなる。そしてコマンド判定部が一致したと判定したときに、一致した音声コマンド例の第2コマンド構成部が表す特定動作をシート装置に実行させるように、作動制御部がシート装置を作動させる。そのため、シート装置に特定動作を実行させる意思を持った乗員は、特定の一つの言葉である第1コマンド構成部と特定の一つの言葉である第2コマンド構成部とによって規定された音声コマンド例と完全に一致する音声コマンドを発する必要がある。しかしシート装置に特定動作を実行させる意思を持たない乗員が発した音声に、音声コマンド例と一致する音声コマンドが含まれるおそれは小さい。従って、請求項2に記載の車両用シート駆動システムでは、乗員の音声コマンドにより動作するシート装置が、乗員の意に反して動作するおそれが小さい。
【0013】
請求項3に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シート駆動システムにおいて、前記車両が自動運転を実行しているか否かを判定可能な運転状態判定部を備え、前記車両が前記自動運転を実行していると前記運転状態判定部が判定し且つ前記コマンド判定部が一致したと判定したときに、前記作動制御部が前記シート装置を作動させる。
【0014】
請求項3に記載の車両用シート駆動システムにおいても、シート装置に特定動作を実行させる意思を持たない乗員が発した音声に、音声コマンド例と一致する音声コマンドが含まれる可能性がある。仮に車両が自動運転を実行していると運転状態判定部が判定し且つこのような乗員が発した音声に含まれる音声コマンドが音声コマンド例と一致したとコマンド判定部が判定した場合は、シート装置は乗員の意に反して動作する。即ち、シート装置が、乗員の意に反して動作する可能性が僅かながらある。しかし、車両が自動運転を実行していると運転状態判定部が判定している場合は、シート装置が乗員の意に反して動作しても、この動作は乗員に大きな影響を与えない。
【0015】
請求項4に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シート駆動システムにおいて、前記車両が自動運転を実行しているか否かを判定可能な運転状態判定部と、前記車両の車速を取得する車速取得部と、を備え、前記車両が前記自動運転を実行していないと前記運転状態判定部が判定し、前記車速取得部が取得した前記車速が所定の閾値以下であると前記運転状態判定部が判定し、且つ前記コマンド判定部が一致したと判定したときに、前記作動制御部が前記シート装置を作動させる。
【0016】
請求項4に記載の車両用シート駆動システムにおいても、シート装置に特定動作を実行させる意思を持たない乗員が発した音声に、音声コマンド例と一致する音声コマンドが含まれる可能性がある。即ち、シート装置が乗員の意に反して動作する可能性が僅かながらある。しかし、自動運転を実行していないと運転状態判定部に判定された車両の車速が閾値以下の場合は、シート装置が乗員の意に反して動作しても、この動作は乗員に大きな影響を与えない。
【0017】
請求項5に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用シート駆動システムにおいて、音声を出力可能な音声出力部を備え、前記コマンド判定部が一致したと判定したときに、前記作動制御部が前記シート装置を作動させる前に、前記コマンド判定部が一致したと判定した前記音声コマンド例を表す音声を前記音声出力部が出力する。
【0018】
請求項5に記載の車両用シート駆動システムでは、コマンド判定部が一致したと判定したときに、作動制御部がシート装置を作動させる前に、コマンド判定部が一致したと判定した音声コマンド例を表す音声を音声出力部が出力する。そのため、この音声を聞いた乗員は、これからシート装置が特定動作を実行することを認識する。そのため、シート装置が特定動作を実行したときに、乗員が違和感を覚えるおそれが小さい。
【0019】
請求項6に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項5に記載の車両用シート駆動システムにおいて、前記音声出力部が前記音声コマンド例を表す音声を出力した後に、前記音声認識部が所定の前記音声コマンドである緊急音声コマンドを認識するか又は緊急停止スイッチが操作されたときに、前記作動制御部が前記シート装置を作動させるのを禁止する作動禁止部を備える。
【0020】
請求項6に記載の車両用シート駆動システムにおいても、シート装置に特定動作を実行させる意思を持たない乗員が発した音声に、音声コマンド例と一致する音声コマンドが含まれる可能性がある。しかし請求項6の車両用シート駆動システムでは、このような場合に、音声認識部が緊急音声コマンドを認識するか又は緊急停止スイッチが操作されたときに、作動制御部がシート装置を作動させるのを作動禁止部が禁止する。従って、このような場合に、乗員の意に反して作動制御部がシート装置を作動させることを禁止できる。
【0021】
請求項7に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項5に記載の車両用シート駆動システムにおいて、前記音声出力部が前記音声コマンド例を表す音声を出力した後に前記音声認識部が所定の前記音声コマンドである許可音声コマンドを認識したときに、前記作動制御部が前記シート装置を作動させる。
【0022】
請求項7に記載の車両用シート駆動システムでは、音声出力部が音声コマンド例を表す音声を出力した後に、音声認識部が許可音声コマンドを認識したときに、作動制御部がシート装置を作動させる。許可音声コマンドを含む音声を発する乗員は、この後にシート装置が特定動作を実行することを期待していると考えられる。そのため、請求項7に記載の車両用シート駆動システムでは、シート装置が特定動作を実行したときに、乗員が不快感を覚えるおそれが小さい。
【0023】
請求項8に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、車両のフロアに支持され、少なくとも一つの特定動作を実行可能なシート装置と、前記車両の乗員が発した音声を取得する音声取得部と、前記音声取得部が取得した音声に含まれる音声コマンドを認識可能な音声認識部と、前記シート装置を表す特定の一つの言葉である第1コマンド構成部と、一つの前記特定動作を表す特定の一つの言葉である第2コマンド構成部と、からなる音声コマンド例が少なくとも1つ記録された記録部と、前記音声認識部が認識した前記音声コマンドが、前記音声コマンド例と一致したか否かを判定するコマンド判定部と、前記コマンド判定部が一致したと判定した前記音声コマンド例の前記第2コマンド構成部が表す前記特定動作を前記シート装置に実行させるように、前記シート装置を作動させる作動制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る車両用シート駆動システムによれば、乗員の音声コマンドにより動作するシート装置が、乗員の意に反して動作するおそれが小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シート駆動システムを備える車両のルーフを省略して示す模式的な平面図である。
【
図2】
図1に示される車両に設けられた運転席(助手席)の模式的な側面図である。
【
図3】
図2に示される運転席(助手席)のシートバック及びヘッドレストの模式的な正面図である。
【
図4】車両用シート駆動システムのブロック図である。
【
図6】シートECUのROMに記録された音声コマンドリストを示す図である。
【
図7】ROMに記録された特別コマンドリストを示す図である。
【
図8】ROMに記録された緊急コマンドリストを示す図である。
【
図9】シートECUが行う処理を示すフローチャートである。
【
図10】第1変形例のシートECUが行う処理を示すフローチャートである。
【
図11】第2変形例のシートECUが行う処理を示すフローチャートである。
【
図12】第3変形例の車両用シート駆動システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、
図1~
図9を用いて本発明の実施形態に係る車両用シート駆動システム10(以下、駆動システム10)について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印LHは車両左右方向(車両幅方向)の左側を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示す。
【0027】
図1に示されるように、駆動システム10が搭載された車両12の車体14の車室14Aには、右側の前席16及び左側の前席18が設けられている。なお、車体14には車両ドアが含まれる。インストルメントパネル14Cの右側部にステアリングホイール14Dが設けられている。そのため以下の説明では、右側の前席16を運転席16と称し、左側の前席18を助手席18と称する。運転席16には乗員P1が着座し、助手席18には乗員P2が着座している。
【0028】
図2に示されるように、車室14Aのフロア14Bには、運転席16及び助手席18をそれぞれ前後方向にスライド可能に支持するスライドレール装置20が設けられている。各スライドレール装置20は、フロア14Bに固定された前後方向に延在する左右一対のロアレール21と、各ロアレール21に前後方向にスライド可能に支持された左右一対のアッパレール22と、を有する。スライドレール装置20は、電動モータからなる第1アクチュエータ(作動制御部)24と、動力伝達機構(図示省略)と、を有する。第1アクチュエータ24が正転しながら駆動力を発生すると、この駆動力が動力伝達機構からアッパレール22に伝わり、アッパレール22がロアレール21に対して前方へスライドする。第1アクチュエータ24が逆転しながら駆動力を発生すると、この駆動力が動力伝達機構からアッパレール22に伝わり、アッパレール22がロアレール21に対して後方へスライドする。
【0029】
各スライドレール装置20の各アッパレール22にはリフタ機構26が設けられている。リフタ機構26は、電動モータからなる第2アクチュエータ(作動制御部)28を有する。第2アクチュエータ28が正転しながら駆動力を発生すると、この駆動力によってリフタ機構26が上下方向に伸長する。第2アクチュエータ28が逆転しながら駆動力を発生すると、この駆動力によってリフタ機構26が上下方向に短縮する。
【0030】
運転席16のリフタ機構26及び助手席18のリフタ機構26には、シート19がそれぞれ支持されている。シート19は、シートクッション19A、シートバック19B及びヘッドレスト19Cを有する。リフタ機構26の上端部にシートクッション19Aが固定されている。シートクッション19Aの後端部とシートバック19Bの下端部はリクライニング機構30を介して回転可能に接続されている。各リクライニング機構30には第3アクチュエータ(作動制御部)32が設けられている。第3アクチュエータ32が正転しながら駆動力を発生すると、この駆動力によってリクライニング機構30が回転し、シートバック19Bがシートクッション19Aに対して倒れる。換言すると、シートバック19Bがシートクッション19Aに対して前方に相対回転する。第3アクチュエータ32が逆転しながら駆動力を発生すると、この駆動力によってリクライニング機構30が回転し、シートバック19Bがシートクッション19Aに対して起きる。換言すると、シートバック19Bがシートクッション19Aに対して後方に相対回転する。
【0031】
図2及び
図3に示されるように、ヘッドレスト19Cは、クッション部19C1と、上端部がクッション部19C1に固定された左右一対のステー19C2と、を有する。左右のステー19C2は、シートバック19Bの上端部に上下方向にスライド可能に支持されている。
【0032】
図1に示されるように、フロア14Bには運転席16及び助手席18より後方側に位置する後席34が設けられている。後席34は、単一のシートクッション34Aと、単一のシートバック34Bと、3個のヘッドレスト34Cと、を有する。シートクッション34A及びシートバック34Bの車両幅方向の寸法は、車室14Aの車両幅方向の寸法と略同一である。
【0033】
図4に示されるように駆動システム10は、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28、第3アクチュエータ32、シートECU(Electronic Control Unit)40、マイク(音声取得部)42、緊急停止スイッチ43、スピーカ(音声出力部)44、車体ECU45、車速センサ(車速取得部)46及び自動運転スイッチ48を備える。第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28、第3アクチュエータ32、マイク42、緊急停止スイッチ43及びスピーカ44は、シートECU40に電気的に接続されている。運転席16及び助手席18は、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28及び第3アクチュエータ32に加えて、シートECU40、マイク42、緊急停止スイッチ43及びスピーカ44を備える。車速センサ46は車体14に設けられている。自動運転スイッチ48はインストルメントパネル14C(車体14)に設けられている。
【0034】
図5に示されるようにシートECU40は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)40A、ROM(Read Only Memory)(記録部)40B、RAM(Random Access Memory)40C、ストレージ40D、通信I/F(Inter Face)40E及び入出力I/F40Fを含んで構成されている。CPU40A、ROM40B、RAM40C、ストレージ40D、通信I/F40E及び入出力I/F40Fは、バス40Zを介して相互に通信可能に接続されている。ECU40は、タイマー(図示省略)から日時に関する情報を取得可能である。なお、車体ECU45の基本構成はシートECU40と実質的に同一である。
【0035】
CPU40Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU40Aは、ROM40B又はストレージ40Dからプログラムを読み出し、RAM40Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU40Aは、ROM40B又はストレージ40Dに記録されているプログラムに従って、各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0036】
ROM40Bは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM40Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ40Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。通信I/F40Eは、シートECU40が他の機器と通信するためのインタフェースである。入出力I/F40Fは、様々な装置と通信するためのインタフェースである。例えば、入出力I/F40Fには、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28、第3アクチュエータ32、マイク42、緊急停止スイッチ43及びスピーカ44が接続されている。
【0037】
マイク42は、乗員P1、P2が発した音声を電気信号に変換してシートECU40へ送信する。
図3に示されるように、マイク42はクッション部19C1の下面に設けられている。そのため運転席16に着座した乗員P1の頭部P1aの近傍に運転席16のマイク42が位置し、且つ、助手席18に着座した乗員P2の頭部P2aの近傍に助手席18のマイク42が位置する。さらに各マイク42の指向性は狭い。具体的には、運転席16のマイク42は運転席16のシート19の直前領域の音声のみを収音し、助手席18のマイク42は助手席18のシート19の直前領域の音声のみを収音する。そのため、乗員P1が発した音声を助手席18のマイク42が集音するおそれは小さい。同様に、乗員P2が発した音声を運転席16のマイク42が集音するおそれは小さい。
【0038】
スピーカ44は音を出力可能である。スピーカ44は、例えばヘッドレスト19Cに設けられる。各スピーカ44の指向性は狭い。そのため、乗員P1が運転席16のスピーカ44が出力した音を聞き取るのは容易であり、乗員P2が運転席16のスピーカ44が出力した音を聞き取るのは困難である。同様に、乗員P2が助手席18のスピーカ44が出力した音を聞き取るのは容易であり、乗員P1が助手席18のスピーカ44が出力した音を聞き取るのは困難である。
【0039】
緊急停止スイッチ43の機能については後述する。
【0040】
車体14には車体ECU45が設けられている。車体ECU45に車速センサ46及び自動運転スイッチ48が電気的に接続されている。
【0041】
車速センサ46は車両12の車速を検出し、検出結果を車体ECU45へ送信する。
【0042】
車両12は自動運転及び運転支援制御を実行可能である。本明細書及び特許請求の範囲における「自動運転」とは、SAE(Society of Automotive Engineers)(アメリカ自動車技術会)が定めるレベル3~5の自動運転レベルの運転を含む。また本明細書における「運転支援制御」とは、SAEが定めるレベル1、2の制御を含む。自動運転スイッチ48は乗員によって操作されることにより、ON状態とOFF状態との間を移行する。自動運転スイッチ48の初期状態はOFF状態である。自動運転スイッチ48がON状態になると、車両12は自動運転又は運転支援制御を実行可能になる。さらにON状態にある自動運転スイッチ48を操作することにより、乗員は車両12に実行させる自動運転レベルを任意に選択できる。車両12が実行中の自動運転レベルに関する情報は、自動運転スイッチ48から車体ECU45へ送信される。
【0043】
シートECU40と車体ECU45は、車内ネットワーク(図示省略)を介して、互いにデータ交換可能(通信可能)に接続されている。そのため、車速センサ46及び自動運転スイッチ48から車体ECU45に送信されたデータ及び信号は、車体ECU45からシートECU40へ送信される。
【0044】
図4に示されるようにシートECU40は、機能構成として、ウェイクアップ判定部411、音声認識部412、運転状態判定部413、コマンド判定部414、駆動制御部(作動制御部)415、返答制御部416及び作動禁止部417を有する。ウェイクアップ判定部411、音声認識部412、運転状態判定部413、コマンド判定部414、駆動制御部415、返答制御部416及び作動禁止部417は、CPU40AがROM40Bに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。ウェイクアップ判定部411、音声認識部412、運転状態判定部413、コマンド判定部414、駆動制御部415、返答制御部416及び作動禁止部417の機能については後述する。
【0045】
ROM40Bには、
図6~
図8にそれぞれ示された音声コマンドリスト54、特別コマンドリスト56及び緊急コマンドリスト58が記録されている。
【0046】
図6に示された音声コマンドリスト54は、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28及び第3アクチュエータ32の少なくとも一つの駆動力を用いて運転席16及び助手席18に少なくとも一つの特定動作を実行させるための音声コマンド例を規定する。本実施形態の運転席16及び助手席18は、6つの特定動作(前方スライド動作、後方スライド動作、上昇動作、下降動作、前方リクライニング動作及び後方リクライニング動作)を実行可能である。音声コマンドリスト54に規定された音声コマンド例(文字列)には、第1例~第6例が含まれる。音声コマンドリスト54に規定された各音声コマンド例(第1例~第6例)は、6つの特定動作のそれぞれと対応する。各音声コマンド例は、第1コマンド構成部と第2コマンド構成部とからなる。第1コマンド構成部は、コマンドの対象である運転席16及び助手席18を表す特定の一つの言葉(「シート」)である。第2コマンド構成部は、一つの特定動作を表す特定の一つの言葉である。即ち、第1例が表す文字列は「シート前」であり、第2例が表す文字列は「シート後ろ」であり、第3例が表す文字列は「シート上」であり、第4例が表す文字列は「シート下」であり、第5例が表す文字列は「シート倒す」であり、第6例が表す文字列は「シート起こす」である。なお、多数の被験者に対して行った官能評価試験の結果、第1コマンド構成部と第2コマンド構成部とからなる構成の音声コマンド例は、別構成の音声コマンド例よりも、被験者(乗員)にとって好ましいことが判明した。
【0047】
図7に示された特別コマンドリスト56は、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28及び第3アクチュエータ32の少なくとも一つの駆動力を用いて運転席16及び助手席18を所定モード(所定状態)にするための特別音声コマンド例を規定する。特別コマンドリスト56に規定された特別音声コマンド例には、第1例~第3例が含まれる。第1例に対応する上記所定モードは、運転操作を実行中の乗員にとって好ましいモードである「ドライブモード」である。第2例に対応する上記所定モードは、リラックス状態にある乗員にとって好ましいモードである「リラックスモード」である。第3例に対応する上記所定モードは、睡眠状態にある乗員にとって好ましいモードである「スリープモード」である。各所定モードにある運転席16及び助手席18の前後スライド位置、上下方向位置及びリクライニング角度に関するデータは、予めROM40Bに記録されている。これらのデータは、乗員の好みに合わせて変更可能である。
【0048】
図8に示された緊急コマンドリスト58は、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28及び第3アクチュエータ32が駆動力を発生することを禁止するための緊急音声コマンド例を規定する。緊急コマンドリスト58に規定された緊急音声コマンド例には、第1例~第3例が含まれる。これら第1例~第3例に規定された内容(文字列)は互いに異なる。但し、後述するように、第1例~第3例に規定された各内容に基づいて運転席16及び助手席18が実行する動作は同一である。
【0049】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0050】
運転席16及び助手席18の駆動システム10のシートECU40は、
図9のフローチャートの処理を繰り返し実行する。なお、以下の説明では、運転席16及び助手席18の中で当該処理が行われることにより動作させられるものを「前席16、18」と称する場合がある。
【0051】
まずステップS10において各シートECU40のウェイクアップ判定部411は、マイク42から送信された音声データを音声認識処理し、当該音声データが表す文字列(テキストデータ)を生成する。さらにウェイクアップ判定部411は、この文字列に基づいて、乗員P1、P2が「ウェイクアップ」という音声を発したと判定した場合に、ステップS10でYesと判定する。なお、ウェイクアップ判定部411及び後述する音声認識部412が実行する音声認識処理は、例えば特開2019-090945号公報、特開2020-086203号公報、特開2020-101610号公報、及び特開2019-176431号公報に開示されているように周知であり、これら各公報に開示された内容で実行可能である。
【0052】
ステップS10でYesと判定したシートECU40はステップS11へ進む。シートECU40がステップS11へ進んだとき、音声認識部412が動作可能な状態に設定される。動作可能な状態に設定された音声認識部412は、マイク42から入力された音声データに基づいて、当該音声データが示す文字列(テキストデータ)を生成する。即ち、音声認識部412は、マイク42から入力された音声を認識する。
【0053】
ステップS11においてコマンド判定部414は、マイク42から送信された音声データから音声認識部412が生成した文字列(音声コマンド)に、所定の音声コマンドが含まれているか否かを判定する。この所定の音声コマンドには、音声コマンドリスト54の各音声コマンド例、特別コマンドリスト56の各特別音声コマンド例、及びROM40Bに記録された快適動作用音声コマンド例が含まれる。この快適動作用音声コマンド例は、車両12に設けられたエアコンディショナー(図示省略)の動作に関する音声コマンドである。例えば、「エアコンオン」「エアコンオフ」「室温20℃」が快適動作用音声コマンド例に含まれる音声コマンドである。シートECU40はYesと判定するまでステップS11の処理を繰り返す。
【0054】
ステップS11においてYesと判定したとき、シートECU40はステップS12へ進み、ステップS11で一致すると判定された文字列が、前席16、18のポジション調整に関する文字列であるか否かを判定する。換言すると、シートECU40は、ステップS11で一致すると判定された文字列が、音声コマンドリスト54の各音声コマンド例又は特別コマンドリスト56の各特別音声コマンド例であるか否かを判定する。例えば、ステップS11で生成された文字列に「シート前」という文字列が含まれている場合は、シートECU40はYesと判定する。一方、ステップS11で生成された文字列に「シート前方へスライド」という文字列が含まれている場合、この文字列は音声コマンドリスト54の各音声コマンド例及び特別コマンドリスト56の各特別音声コマンド例と一致しない。そのため、この場合シートECU40はNoと判定する。
【0055】
ステップS12においてYesと判定したとき、シートECU40はステップS13へ進み、車両12が自動運転(レベル3~5の自動運転レベルの運転)を実行中か否かを運転状態判定部413が判定する。
【0056】
ステップS13においてYesと判定したとき、シートECU40はステップS14へ進み、返答制御部416が「システム返答」を表す音声データをスピーカ44へ送信し、スピーカ44に当該システム返答を表す音声を出力させる。このシステム返答は、ステップS11で一致すると判定された音声コマンドリスト54の各音声コマンド例又は特別コマンドリスト56の各特別音声コマンド例が表す音声である。例えば、ステップS11で、音声コマンドリスト54の第1例が表す文字列「シート前」と一致する文字列が含まれていると判定された場合は、スピーカ44は「シート前」という音声を出力する。また、例えば、ステップS11で、音声コマンドリスト54の第3例が表す文字列「シート上」と一致する文字列が含まれていると判定された場合は、スピーカ44は「シート上」という音声を出力する。例えば、ステップS11で、音声コマンドリスト54の第5例が表す文字列「シート倒す」と一致する文字列が含まれていると判定された場合は、スピーカ44は「シート倒す」という音声を出力する。例えば、ステップS11で、特別コマンドリスト56の第1例が表す文字列「ドライブモード」と一致する文字列が含まれていると判定された場合は、スピーカ44は「ドライブモード」という音声を出力する。
【0057】
但し、ステップS14においてスピーカ44が出力する「音声コマンドリスト54の各音声コマンド例又は特別コマンドリスト56の各特別音声コマンド例が表す音声」は、ステップS11で一致すると判定された文字列が表す意味と同じ意味の音声(言葉)であれば、当該文字列と一致しなくてもよい。例えば、ステップS11で、音声コマンドリスト54の第1例が表す文字列「シート前」と一致する文字列が含まれていると判定された場合に、スピーカ44が「シートを前方の位置へ移動させます」という音声を出力してもよい。
【0058】
ステップS14の処理を終えたシートECU40はステップS15へ進み、緊急停止処理が行われたか否かを判定する。ステップS14の処理が開始された後に、乗員P1、P2によって緊急停止スイッチ43が押されたとき、シートECU40の作動禁止部417は緊急停止処理が行われたと判定する。また、ステップS14の処理が開始された後に、マイク42からスピーカ44へ送信された音声データに基づいて音声認識部412が生成した文字列に、緊急コマンドリスト58の第1例~第3例のいずれかと一致する文字列が含まれている場合に、作動禁止部417は緊急停止処理が行われたと判定する。
【0059】
ステップS15でNoと判定したシートECU40はステップS16へ進み、ステップS14で行われたシステム返答が表す動作を前席16、18が開始するように、駆動制御部415が第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28及び第3アクチュエータ32の少なくとも一つに作動信号を送信する。
【0060】
ステップS16の処理を終えたシートECU40はステップS17へ進み、ステップS16の処理を終えた後に緊急停止処理が行われたか否かを、作動禁止部417が判定する。
【0061】
ステップS17でNoと判定したシートECU40はステップS18へ進み、ステップS16の処理が行われてから所定時間が経過したか否かを、駆動制御部415が判定する。
【0062】
ステップS14のシステム返答が音声コマンドリスト54の各音声コマンド例の動作を表す場合を想定する。この場合は、駆動制御部415が第1アクチュエータ24に正転信号を所定時間に渡って送信すると、前席16、18のシート19が所定距離だけ前方へ移動する。駆動制御部415が第1アクチュエータ24に逆転信号を所定時間に渡って送信すると、前席16、18のシート19が所定距離だけ後方へ移動する。駆動制御部415が第2アクチュエータ28に正転信号を所定時間に渡って送信すると、前席16、18のシート19が所定距離だけ上方へ移動する。駆動制御部415が第2アクチュエータ28に逆転信号を所定時間に渡って送信すると、前席16、18のシート19が所定距離だけ下方へ移動する。駆動制御部415が第3アクチュエータ32に正転信号を所定時間に渡って送信すると、前席16、18のシートバック19Bが所定角度だけ前方へ回転する。駆動制御部415が第3アクチュエータ32に逆転信号を所定時間に渡って送信すると、前席16、18のシートバック19Bが所定角度だけ後方へ回転する。
【0063】
ステップS14のシステム返答が特別コマンドリスト56の各特別音声コマンド例の動作を表す場合を想定する。この場合は、ステップS16の処理が行われてから所定時間が経過すると、システム返答が表す各動作が完了する。
【0064】
ステップS15又はステップS17でYesと判定したとき、シートECU40はステップS19へ進み、作動禁止部417が第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28及び第3アクチュエータ32へ停止信号を送信する。そのため、前席16、18の特定動作が停止される。また、ステップS18でYesと判定したシートECU40がステップS19へ進むと前席16、18が動作を停止する。
【0065】
ステップS13においてNoと判定したとき、シートECU40はステップS20へ進む。この場合は、車両12が運転支援制御を実行中か又は自動運転スイッチ48がOFF状態にある。ステップS20へ進んだシートECU40の運転状態判定部413は、車速センサ46から受信した情報に基づいて、車両12の車速が所定の閾値以下か否かを判定する。この閾値はROM40Bに記録されている。閾値は、小さい数字(低い車速)である。例えば、閾値は「ゼロ(0km/h)」であってもよい。また、閾値は「5(5km/h)」であってもよい。
【0066】
ステップS20においてYesと判定したとき、シートECU40はステップS14へ進む。
【0067】
ステップS20においてNoと判定したとき、シートECU40はステップS21へ進み、返答制御部416が「システム返答」を表す音声データをスピーカ44へ送信し、スピーカ44に当該システム返答を表す音声を出力させる。このシステム返答は、前席16、18を動作させないことを表す返答である。例えば、スピーカ44は「運転席を動作させません」という音声を発する。
【0068】
ステップS12においてNoと判定したとき、シートECU40はステップS22へ進み、返答制御部416が「システム返答」を表す音声データをスピーカ44へ送信し、スピーカ44に当該システム返答を表す音声を出力させる。このシステム返答は、ステップS11で一致すると判定された快適動作用音声コマンド例の動作を表す。例えばステップS11で「エアコンオン」を表す文字列と一致する文字列が含まれていると判定された場合は、スピーカ44はステップS22において「エアコンオン」という音声を出力する。
【0069】
ステップS22の処理を終えたシートECU40はステップS23へ進み、OFF状態にあったエアコンディショナーをON状態に移行させる。
【0070】
シートECU40は、ステップS19、S21、S23の処理を終えたとき、又は、ステップS10でNoと判定したとき、
図9のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0071】
以上説明した本実施形態の駆動システム10では、マイク42が運転席16及び助手席18に設けられている。そのため、例えば、乗員P1が運転席16に特定動作を実行させるための音声コマンドを発した場合に、助手席18のマイク42がこの音声コマンドを認識し、助手席18が特定動作を行うおそれが小さい。従って、このような場合に、助手席18が乗員P2の意に反して動作するおそれが小さい。
【0072】
さらに、ここで音声コマンドリスト54に規定された各音声コマンド例の第2コマンド構成部が、一つの特定動作を表す複数の言葉を含む場合を想定する。換言すると、第1例~第6例が、それぞれ複数の音声コマンド例(文字列)を含む場合を想定する。例えば、第1例が2つの音声コマンド例を含む場合を想定する。ここで一つの第1例を「第1-1例」と称し、別の第1例を「第1-2例」と称する。第1-1例の音声コマンド(文字列)は「シート前」であり、第1-2例の音声コマンド(文字列)は「シート前方の位置へ移動」である。このように複数種類の音声コマンドによって一つの特定動作を実行可能な場合は、前席16、18に特定動作を実行させる意思を持たない乗員P1、P2が発した音声に、音声コマンド例と一致する音声コマンドが含まれる可能性が高くなる。換言すると、前席16、18が乗員P1、P2の意に反して特定動作を実行するおそれが高くなる。
【0073】
これに対して本実施形態の駆動システム10が備える音声コマンドリスト54に規定された各音声コマンド例は、前席16、18を表す特定の一つの言葉である第1コマンド構成部と、一つの特定動作を表す特定の一つの言葉である第2コマンド構成部と、からなる。そのため、前席16、18に特定動作を実行させる意思を持った乗員P1、P2は、特定の一つの言葉である第1コマンド構成部と特定の一つの言葉である第2コマンド構成部とによって規定された音声コマンド例と完全に一致する音声コマンドを発する必要がある。そのため、前席16、18に特定動作を実行させる意思を持たない乗員P1、P2が発した音声に、音声コマンド例と一致する音声コマンドが含まれるおそれは小さい。従って、乗員P1、P2の音声コマンドにより動作する前席16、18が、乗員P1、P2の意に反して特定動作を実行するおそれが小さい。
【0074】
同様に、前席16、18に各特別音声コマンド例の動作を実行させる意思を持った乗員P1、P2は、各特別音声コマンド例と完全に一致する音声コマンドを発する必要がある。そのため、前席16、18に各特別音声コマンド例の動作を実行させる意思を持たない乗員P1、P2が発した音声に、各特別音声コマンド例と完全に一致する音声コマンドが含まれるおそれは小さい。従って、前席16、18が、乗員P1、P2の意に反して各特別音声コマンド例の動作を実行するおそれは小さい。
【0075】
さらに前席16、18に特定動作を実行させる意思を持たない乗員P1、P2が発した音声に、音声コマンド例と一致する音声コマンドが偶発的に含まれる可能性がある。即ち、前席16、18が、乗員P1、P2の意に反して動作する可能性が僅かながらある。しかし車両12が自動運転を実行していると運転状態判定部413が判定している場合は、前席16、18が乗員P1、P2の意に反して動作しても、この動作は乗員P1、P2に大きな影響を与えない。
【0076】
さらに、自動運転を実行していないと運転状態判定部413に判定された車両12の車速が閾値以下の場合に、前席16、18が乗員P1、P2の意に反して動作する可能性が僅かながらある。しかしこの場合は、前席16、18が乗員P1、P2の意に反して動作しても、この動作は乗員P1、P2に大きな影響を与えない。
【0077】
さらに駆動システム10では、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28及び第3アクチュエータ32の少なくとも一つが前席16、18に駆動力を付与する前に、前席16、18が実行しようとしている特定動作を表す音声をスピーカ44が発する。そのため、この音声を聞いた乗員P1、P2は、これから前席16、18が所定の動作を実行することを認識する。そのため前席16、18が所定の動作を実行したときに、乗員P1、P2が違和感を覚えるおそれが小さい。
【0078】
さらに駆動システム10では前席16、18が、乗員P1、P2の意に反して動作する可能性が僅かながらある。しかし駆動システム10では、このような場合に上記緊急停止処理が行われると、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28及び第3アクチュエータ32が前席16、18に駆動力を付与するのを作動禁止部417が禁止する。従って、このような場合に、前席16、18が乗員P1、P2の意に反して動作することを禁止できる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0080】
例えば、本発明は
図10に示される第1変形例の態様で実施可能である。
図10のフローチャートは、ステップS25を有する点及びステップS15、S17を備えない点を除いて、
図9のフローチャートと同一である。
【0081】
シートECU40はステップS14の処理を終えたときにステップS25へ進み、マイク42からスピーカ44へ送信された音声データに基づいて、音声認識部412が生成した文字列に、所定の許可音声コマンドと一致する文字列が含まれているか否かを判定する。許可音声コマンドの内容(文字列)は、例えば、「動作(どうさ)を許可(きょか)する」、「許可(きょか)」及び「OK(おーけー)」である。
【0082】
ステップS25でYesと判定したシートECU40はステップS16の処理を実行する。一方、ステップS25でNoと判定したシートECU40は、
図10のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0083】
第1変形例の駆動システム10では、ステップS14でスピーカ44が各音声コマンド例又は各特別音声コマンド例を表す音声を出力した後に、ステップS25で音声認識部412が許可音声コマンドを認識したときに、ステップS16で第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28及び第3アクチュエータ32の少なくとも一つが前席16、18に駆動力を付与する。許可音声コマンドを含む音声を発する乗員P1、P2は、この後に前席16、18が所定の動作を実行することを期待していると考えられる。そのため第1変形例では、前席16、18が所定の動作を実行したときに、乗員P1、P2が違和感を覚えるおそれが小さい。
【0084】
本発明は
図11に示される第2変形例の態様で実施可能である。
図11のフローチャートは、ステップS10の直後にステップS13が設定された点及びステップS12、S22、S23を備えない点を除いて、
図9のフローチャートと同一である。
【0085】
シートECU40はステップS10でYesと判定したときに、ステップS13の判定を行う。さらにステップS13でYesと判定したとき、又は、ステップS13でNo且つステップS20でYesと判定したときに、シートECU40はステップS11の判定を行う。即ち、第2変形例の駆動システム10は、車両12が自動運転を行っているとき又は自動運転を行っていない車両12の車速が閾値以下のときのみ、音声認識部412が音声認識処理を実行する。
【0086】
本発明は
図12に示される第3変形例の態様で実施可能である。第3変形例では、車体14にカーナビゲーションシステム60が設けられている。カーナビゲーションシステム60は車体ECU45に接続され、且つ、スピーカ44及びディスプレイ(図示省略)を備える。この第3変形例の駆動システム10も、上記実施形態、第1変形例及び第2変形例と同様の作用効果を発揮可能である。
【0087】
運転席16のシートECU40のROM40Bに記録された音声コマンドリスト54の各音声コマンド例の第1コマンド構成部が「運転席」であってもよい。同様に、助手席18のシートECU40のROM40Bに記録された音声コマンドリスト54の各音声コマンド例の第1コマンド構成部が「助手席」であってもよい。
【0088】
マイク42及びスピーカ44の少なくとも一方を、運転席16及び助手席18のヘッドレスト19C以外の部位に設けてもよい。
【0089】
マイク42を車体14に設けてもよい。但し、この場合は、シート装置に設けられたマイク42より指向性が狭く且つ乗員P1が発した音声のみを取得し易いマイク42と、シート装置に設けられたマイク42より指向性が狭く且つ乗員P2が発した音声のみを取得し易いマイク42と、を車体14に設けるのが好ましい。
【0090】
音声コマンドリスト54、特別コマンドリスト56及び緊急コマンドリスト58が、ストレージ40Dに記録されてもよい。
【0091】
ROM40B及びストレージ40Dに、特別コマンドリスト56及び緊急コマンドリスト58の少なくとも一方が記録されなくてもよい。
【0092】
車両12が自動運転を実行中か否かを、シートECU40が判定しなくてもよい。
車両12が自動運転を行っていないときに車速が閾値以下か否かを、シートECU40が判定しなくてもよい。
【0093】
シートECU40がステップS14の処理を行わなくてもよい。
【0094】
車両12にウェイクアップ用スイッチ(図示省略)を設けてもよい。この場合は、ウェイクアップ用スイッチが操作されたときに、シートECU40がステップS10でYesと判定する。
【0095】
後席34に本発明を適用してもよい。この場合、後席34がアクチュエータによって駆動される可動部として、スライドレール装置、リフタ機構、リクライニング機構の少なくとも一つを備える。
【0096】
運転席16、助手席18及び後席34の少なくとも一つが、可動部として、スライドレール装置、リフタ機構、リクライニング機構及びオットマンの少なくとも一つを備えてもよい。換言すると、運転席16、助手席18及び後席34の少なくとも一つが実行する特定動作は、スライドレール装置によるスライド動作、リフタ機構による上下動作、リクライニング機構によるリクライニング動作及びオットマンの移動動作の少なくとも一つであってもよい。この場合、音声コマンドリスト54は、実行される特定動作に対応する音声コマンド例のみを規定する。
【0097】
音声コマンドリスト54に規定された各音声コマンド例は、第1コマンド構成部と第2コマンド構成部とからなるものであれば、上記以外の音声コマンドであってもよい。例えば、上記第1例として「シート前」の代わりに「シート前方へスライド」を採用してもよい。
【0098】
緊急停止スイッチ43が車体14に設けられてもよい。
【0099】
音声コマンドリスト54に規定された各音声コマンド例の第2コマンド構成部が、一つの特定動作を表す複数の言葉を含んでもよい。即ち、例えば、第1例~第6例が、それぞれ複数の音声コマンド例(文字列)を含んでもよい。例えば、第1例が上記「第1-1例」及び「第1-2例」を含んでもよい。この場合、乗員が発生した音声に第1-1例と第1-2例の一方の音声コマンドが含まれているとき、シート装置が前方スライド動作を実行する。
【符号の説明】
【0100】
10 車両用シート駆動システム(駆動システム)
12 車両
14B フロア
16 前席(運転席)(シート装置)
18 前席(助手席)(シート装置)
24 第1アクチュエータ(作動制御部)
28 第2アクチュエータ(作動制御部)
32 第3アクチュエータ(作動制御部)
40B ROM(記録部)
412 音声認識部
413 運転状態判定部
414 コマンド判定部
415 駆動制御部(作動制御部)
417 作動禁止部
42 マイク(音声取得部)
43 緊急停止スイッチ
44 スピーカ(音声出力部)
46 車速センサ(車速取得部)
54 音声コマンドリスト
58 緊急コマンドリスト
P1 乗員
P2 乗員